運営指導で指摘されやすい項目と
個別支援計画・記録・人員基準を
事前に潰しておく順番
運営指導で何を見られるかは、令和8年(2026年)6月8日付けの厚生労働省通知(障発0608第1号)別添1「指定障害福祉サービス事業者等指導指針」で範囲が示されました。運営指導は①実施状況指導、②最低基準等運営体制指導、③報酬請求指導の3つに分かれ、このうち①と②については「確認項目以外の項目は、特段の事情がない限り確認を行わないものとし、確認文書以外の文書は原則求めない」とされています。サービス種別ごとの確認項目及び確認文書は厚生労働省が公表しており、就労継続支援B型は22項目です。
一方、③報酬請求指導はこの限定の外にあります。集団指導・運営指導マニュアルは、加算については、人員体制に関するものなどを除き「確認文書に限定せず、それぞれの要件にかかる文書等を求め」るとしています。つまり、範囲が読めるのは基準の側で、読めないのは加算の側です。事前に潰す順番も、監査に切り替わる事由、報酬の返還につながる加算要件、減算、記録や届出という順になります(2026年8月16日時点)。
目次
見られる範囲は通知に書かれている
令和8年(2026年)6月8日、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知「指定障害福祉サービス事業者等の指導監査について」(障発0608第1号)が発出され、別添1「指導指針」、別添2「集団指導・運営指導マニュアル」、別添3「監査指針」、別添4「監査マニュアル」の4本が新たに定められました。従前の平成26年1月23日付け障発0123第2号は、この通知の発出をもって廃止されています。
指導指針は、運営指導を3つの内容に分けています。①自立支援給付対象サービス等の実施状況指導、②最低基準等運営体制指導、③報酬請求指導です。そのうえで①と②については、「確認項目以外の項目は、特段の事情がない限り確認を行わないものとし、確認文書以外の文書は原則求めないものとする」と書かれています。何を見られるかが事前に読める、という設計になりました。
ただし③は別です。マニュアルは、加算に係る請求の確認について「人員体制に関するもの等の他は、確認文書に限定せず、それぞれの要件にかかる文書等を求め、それにより算定要件の適合状況を確認することになります」と説明しています。基準の側は範囲が閉じていて、加算の側は閉じていません。この差が、事前に潰す順番を決めます。
就労継続支援B型の確認項目は22項目
「確認項目及び確認文書」はサービス種別ごとに22シートで公表されています。就労継続支援B型のシートは、サービスの質に関する事項が6項目、質を確保するための体制に関する事項が16項目で、合計22項目です。うち、書類が揃っていないと指摘に直結しやすいものを抜き出すと次のようになります。
| 区分 | 確認項目(かっこ内は準用元の条番号) | 確認文書として挙がっているもの |
|---|---|---|
| 質 | 内容及び手続の説明及び同意(第9条) | 重要事項説明書、利用契約書、説明・交付記録 |
| 質 | 心身の状況等の把握(第16条) | アセスメント記録、ケース記録 |
| 質 | サービスの提供の記録(第19条) | サービス提供記録、利用者等の確認が分かる記録 |
| 質 | 身体拘束等の禁止(第35条の2) | 個別支援計画、身体拘束等に関する記録、委員会議事録、指針、研修を実施したことが分かる書類 |
| 質 | 就労継続支援B型計画の作成等(第58条) | 計画、アセスメント記録、モニタリング記録、面接記録、会議記録、説明・同意・交付記録、計画変更記録 |
| 体制 | 従業者の員数(第186条) | 勤務実績表、出勤簿、資格証、勤務体制一覧表、利用者数が分かる書類 |
| 体制 | 勤務体制の確保等(第68条) | 勤務表、勤務形態一覧表、研修計画、研修実施記録、ハラスメント防止関係書類 |
| 体制 | 業務継続計画の策定等(第33条の2) | 業務継続計画、周知記録、研修・訓練記録、見直し記録 |
| 体制 | 虐待の防止(第40条の2) | 委員会議事録、研修を実施したことが分かる書類、担当者を配置していることが分かる書類 |
| 体制 | 運営規程(第89条) | 運営規程、重要事項説明書、掲示物、従業者への周知状況が分かる書類 |
残る12項目は、設備、管理者、緊急時等の対応、受給資格の確認、秘密保持等、情報の提供等、苦情解決、事故発生時の対応、定員の遵守、非常災害対策、衛生管理等、利用者負担額等の受領です。他のサービスを運営している場合は、同じExcelの該当シートを開いてください。項目名も準用元の条番号もサービスごとに違います。
確認文書は「原則として運営指導の前年度から直近の実績に係る書類」で、提出部数は1部、自治体が既に保有している文書は再提出を求めないとされています。利用者の記録を確認する対象は、特に必要と判断する場合を除き原則3名以内です。全利用者分を持ち出す準備は求められていません。
自治体が公表している指摘事項はどこに集中しているか
国の確認項目は「何を見るか」のリストであって、「どこでつまずいたか」は書かれていません。そこは指定権者が公表している資料に出ます。
宮城県は集団指導の資料として「令和7年度運営指導の結果について」を公開し、主な指摘事項を領域別に列挙しています。仙台市は「よくある指摘事項事例集」を令和7年5月版まで更新しており、18項目立てで事例と注意点をまとめています。
| 領域 | 公表資料に挙がっている具体的な指摘 |
|---|---|
| 個別支援計画 | アセスメントが利用契約日より前に行われていた/面接の記録が確認できない/原案が記録として残っていない/作成に係る会議が開催されておらず会議録がない/同意がサービス提供開始前に行われていない/6か月ごとの見直しがされていない/直接支援員が確認できる場所に計画がない |
| 記録 | 研修や避難訓練を実施しているが実施結果を記録していない/サービス提供の記録について利用者から確認を受けていない/実績記録票を月末にまとめて確認・押印している |
| 人員基準 | 人員配置上必要な職員が不在のままサービスを提供していた/県に届け出ている勤務形態一覧表と実際の職員配置(職員数や勤務時間)が異なっていた |
| 加算 | 欠席時対応加算で欠席の確認のみで相談援助の記録が残っていない/算定要件に係る職員の退職で要件を満たさなくなったのに算定を終了していない/送迎加算で運行の記録がない/個別支援計画が未作成なのに減算していない |
| 虐待防止・身体拘束 | 虐待防止に関する対応マニュアルや研修計画が策定されていない/虐待防止委員会が開催されておらず会議録が残っていない |
| 運営・届出 | 運営規程の概要や重要事項、勤務の体制、各種マニュアルが掲示されていない/人員や設備の用途を変更したのに変更届が出ていない/福祉事業会計と就労支援事業会計が区分されていない |
並べてみると、指摘の多くは「やっていない」ではなく「やったが記録がない」「順番が逆になっている」に寄っています。仙台市の事例集は記録の章で、適切に運営していても記録がなければ「行わなかった」ことになりかねない、記録がないために一度受け取った給付費を返還しなければならないこともある、と書いています。宮城県の資料にも、令和7年度に要件を満たさないまま請求しており給付費を返還した事例があったと記載されています。
これらは特定の自治体が公表している資料です。指定権者が違えば公表の有無も内容も変わりますので、自分の指定権者が同種の資料を出していないか確認してください。
潰す順番は「監査に切り替わるか」から決める
優先順位を付ける基準は、指摘されたときに何が起きるかです。指導指針は、運営指導中に次の状況を確認した場合は運営指導を中止して直ちに監査を行うと定めています。①人員・設備・運営基準に従っていない状況が著しい、②給付費の請求に不正がある、③不正の手段による指定を受けている、④障害者虐待等により利用者の生命または身体の安全に危害を及ぼしている。いずれも「その疑いがあると認められる場合」を含みます。
| 順番 | 潰す対象 | 放置したときに起きること |
|---|---|---|
| 1 | 虐待防止委員会・研修・担当者、身体拘束等の記録と委員会・指針・研修 | 虐待等の疑いと判断されれば運営指導が中止され、その場で監査に切り替わる |
| 1 | 勤務形態一覧表と実際の勤務実績の一致 | 基準違反が著しいと判断されれば監査へ。人員基準減算が設定されているのに減算せず通常の単位数で請求していた場合、解釈誤りや単純な事務的ミスである場合を除き不正請求と同等に扱われうる |
| 2 | 算定している加算の要件と挙証資料 | 要件を一つでも満たしていなければ是正。不正の疑いがなければ自己点検と過誤調整、疑いがあれば監査 |
| 3 | 個別支援計画の一連の業務 | 個別支援計画未作成減算(減算適用月から3か月未満は所定単位数の100分の70、連続3か月以上は100分の50) |
| 3 | 業務継続計画の策定 | 業務継続計画未策定減算 |
| 4 | 掲示物、変更届、会計の区分、サービス提供記録の利用者確認 | 文書による指摘と、改善報告書の提出 |
順番1と順番2の違いは、返還の有無ではなく監査に移るかどうかです。順番2と順番4の違いは、報酬の返還につながるかどうかです。マニュアルは、基本報酬部分については運営基準違反、たとえばサービス記録の不備だけでは返還や過誤調整の根拠にならないとしたうえで、サービスを提供していないのに請求した場合や減算せずに請求した場合は不正請求と判断され監査を経て返還が求められることがある、と整理しています。記録の不備そのものより、記録がないために加算の要件充足を説明できなくなることのほうが金額的な影響は大きくなります。
個別支援計画は順番3に置いていますが、宮城県・仙台市どちらの資料でも指摘の量がいちばん多い領域です。手順そのものは条文に順番どおり並んでいるので、個別支援計画の作成手順で条文と突き合わせ、書き方とモニタリングで運用側を確認してください。
自己点検は、確認項目及び確認文書のExcelから自事業所のシートだけを印刷し、確認文書の欄に挙がっている書類名をそのまま用意リストに写すところから始めると、抜けが出にくくなります。マニュアルは、業務管理体制の届出で選任している法令遵守責任者の指揮の下で自己点検を実施することが期待される、としています。担当者任せにせず、責任者の名前で回す仕組みにしておくと、指導の場で誰が答えるかも決まります。
集める書類の期間は、前年度から直近の実績に係る分に絞れます。利用者の記録は原則3名以内しか見られないので、直近に計画を見直した利用者を3名選び、その3名分だけアセスメント記録から会議録、同意書、交付記録、モニタリング記録までを通しで並べて、抜けがないかを先に確かめる方法が効率的です。1名で抜けが見つかれば、他の利用者でも同じ抜け方をしている可能性が高くなります。
加算については、算定している加算を一覧にし、それぞれの算定要件と、要件を満たしていることを示す書類を1行ずつ突き合わせておくと、当日の説明が短く済みます。要件に人の配置が絡む加算は、職員が退職・異動した月をまたいで要件が切れていないかも合わせて確かめてください。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
運営指導の頻度は上がっている
厚生労働省は令和8年6月の資料で、事業所数、特に営利法人が運営する事業所数が急増するなか、多くの利用者に影響を及ぼす処分事例も発生していることを背景に、令和7年度から運営指導・監査の強化を進めているとしています。重点化の対象は就労継続支援A型、就労継続支援B型、共同生活援助、児童発達支援、放課後等デイサービスの5サービスで、3年に1回以上の頻度で実施するよう都道府県等に通知されました。
対象5サービス平均の運営指導実施率は令和5年度18.0%、令和6年度19.0%で、令和7年度の実績は令和8年夏以降に集計するとされています(2026年8月16日時点で未公表)。3年に1回は年33%程度の実施率にあたるため、当面は実施率が上がっていく前提で考えておくのが現実的です。
指導指針は事業所側への配慮も明記しています。担当者の主観に基づく指導や、前回の指導内容と根拠なく大きく異なる指導を行わないよう留意すること、対応者は管理者に限定する必要がなく、実情に詳しい従業者や法人の労務・会計担当者が同席して差し支えないことが書かれています。指定基準は都道府県や市の条例に委任されているため、確認項目の細部や様式は指定権者によって異なります。実際の運用は指定権者が公表している資料と条例で確認してください。
- 確認される範囲
- 実施状況指導・最低基準等運営体制指導は「確認項目及び確認文書」に限定される。報酬請求指導は限定されない
- 就労継続支援B型の確認項目数
- サービスの質に関する事項6項目、体制に関する事項16項目の計22項目
- 見られる書類の期間
- 原則として運営指導の前年度から直近の実績に係る書類。提出部数は1部
- 利用者記録の確認人数
- 特に必要と判断する場合を除き、原則として3名以内
- 事前通知
- 原則、実施予定日の1か月前まで。虐待が疑われる等の場合は指導開始時に通知(=事前通知なし)
- 実施頻度
- 就労継続支援A型・就労継続支援B型・共同生活援助は3年に1回以上
- 監査に切り替わる場合
- 基準違反が著しい/請求に不正/不正の手段による指定/虐待等で利用者の生命・身体に危害(いずれも疑いを含む)
- 返還の境目
- 基本報酬は運営基準違反(記録の不備等)だけでは返還・過誤調整の根拠にならない。加算は算定要件を一つでも満たさなければ是正の対象
よくある質問
自分の地域には、
どれくらい利用者候補がいる?
所在地をもとに、周辺人口・障害福祉事業所数・紹介元になる相談支援事業所の数などを簡易集計します。これから開設する方には出せる場所と参入余地を、すでに運営している方には商圏内の競合と紹介元の分布を、目的にあわせて整理します。
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