就労継続支援B型の職員が
抱えやすい悩みと
経営者が構造から手を打つ方法
2026年8月時点で、就労継続支援B型の職員が抱えやすい悩みは、担当者の資質から生まれているのではありません。制度が事業所に課している業務の構造から生まれています。人員基準の下限は、職業指導員と生活支援員の総数が常勤換算で利用者の数を10で除した数以上です(指定障害福祉サービス基準第199条で準用する第186条第1項第1号イ)。この配置のまま、生産活動の運営、個別支援計画に沿った支援、法定の記録、委員会と研修の運営を同じ職員が担うことになります。
記録の量は減らせません。指定就労継続支援B型を提供した都度の記録が義務です(第202条で準用する第19条)。計画は少なくとも6月に1回以上見直します(同第58条第9項)。これらは5年間保存します(同第75条第2項)。
したがって経営者が動かせるのは3つです。1つ目は、記録の様式を重複しない形に整えることです。2つ目は、工賃向上の役割を目標工賃達成指導員という職種として切り出すことです。3つ目は、欠員が出たときに減算の猶予特例を使える求人体制をあらかじめ持っておくことです。この特例は令和8年5月28日の留意事項通知改正で新設されました。
- 配置の下限
- 職業指導員・生活支援員の総数が常勤換算で利用者の数÷10以上。職業指導員1以上、生活支援員1以上、うちいずれか1人以上は常勤(第199条で準用する第186条)
- 減らせない記録
- 提供の都度の記録+利用者の確認、就労継続支援B型計画とモニタリング(6月に1回以上・面接と結果の記録)、5年間の保存
- 工賃の役割分離
- 目標工賃達成指導員配置加算=常勤換算1人以上の配置に加え、目標工賃達成指導員・職業指導員・生活支援員の総数が利用者の数÷5以上。1日につき45単位(定員20人以下)から36単位(定員81人以上)
- 欠員時の防衛線
- 必要員数から1割の範囲内の減少で、求人活動等の要件を全て満たす場合に、1年に1回に限り欠如発生月の翌々月まで減算の適用を猶予。翌月までに別紙様式と有効な求人票の写しを都道府県知事へ報告
- 事業者の義務
- 従業者の研修の機会の確保、ハラスメント防止の方針の明確化等の措置(第202条で準用する第68条第3項・第4項)
- 確認できないこと
- 就労継続支援B型の職員に限定した離職率の公的統計は、今回は特定できなかった。賃金水準は令和6年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査に、処遇改善加算を取得する事業所の福祉・介護職員(常勤の者)の平均給与額として公表がある(B型は令和6年9月で289,130円/月)
目次
悩みは人柄ではなく、業務が集まる場所から生まれる
就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに就労と生産活動の機会を提供する事業です。職員は、生産活動の段取りと個別支援という目的の違う仕事を同時に持ちます。人員基準の下限は薄く設定されています。職業指導員と生活支援員の総数は、常勤換算で利用者の数を10で除した数以上です。そのうち常勤でなければならないのは、いずれか1人だけです。
利用者20人を10対1で運営すれば下限は常勤換算2人で、その体制で作業と支援と記録を回すことになります。職員が手が回らないと言うとき、その多くは本人の力量ではなく、この配置の上に法定業務が積み上がっている状態を指しています。
悩みを条文に対応させると、動かせる場所が見える
表中の条番号は、就労継続支援B型に直接適用される第201条を除き、いずれも第202条により指定就労継続支援B型に準用される規定です。
| 職員が口にすること | 発生源となる規定 | 経営者が動かせるところ |
|---|---|---|
| 記録が終わらない | 提供の都度の記録(第19条)、計画とモニタリング(第58条)、5年間の保存(第75条) | 様式の重複を消す |
| 工賃を上げろと言われる | 工賃の平均額は月3,000円以上、年度ごとの目標水準の設定・通知・報告(第201条) | 目標工賃達成指導員を置く |
| 利用者対応の判断に迷う | 身体拘束等の禁止と委員会・研修(第35条の2)、虐待防止の委員会・研修・担当者(第40条の2) | 委員会を検討の場として動かす |
| 会議と研修が多い | 業務継続計画の周知・研修・訓練(第33条の2)、非常災害の訓練(第70条) | 年間計画に固定する |
| 学ぶ時間がない | 従業者の資質向上のための研修の機会の確保(第68条第3項) | 勤務時間内に組む |
| 言い方がきつい人がいる | ハラスメント防止のための方針の明確化等の措置(第68条第4項) | 方針を文書化し相談経路を決める |
第68条第3項と第4項は努力目標ではなく、事業者に課された措置義務です。研修に行けないことも職場の関係が悪いことも、職員が我慢する問題ではなく、講じるべき措置が講じられていない状態として整理できます。
記録は量ではなく重複で膨らむ
提供の都度の記録には、利用者から提供したことについて確認を受けることまで含まれます。就労継続支援B型計画の手順は次のとおりです。
- 利用者に面接してアセスメントを行う
- 原案を担当者の会議にかける
- 文書で同意を得て交付する
- 少なくとも6月に1回以上見直す
モニタリングでは定期的に面接して結果を記録し、これらを5年間保存します。省略できる部分はなく、減らせるのは重複だけです。
同じ出来事を日誌と支援記録とモニタリング記録に三度書いている事業所は珍しくありません。条文が求めているのは各記録が残っていることであって、書く回数ではありません。様式を条文に対応させ、一度書いた内容が転記なしで各記録に載る形にするのが最初の作業になります。手順は個別支援計画のモニタリングで扱っています。
工賃向上の圧力は、職種として切り出せる
就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)から(Ⅲ)までを算定する事業所では、基本報酬が前年度の平均工賃月額に応じて決まります。工賃が経営指標である以上、それが生産活動の担当職員個人に降りていくところに無理があります。
目標工賃達成指導員配置加算の要件は2つです。1つは、常勤換算1人以上の目標工賃達成指導員を配置することです。もう1つは、目標工賃達成指導員・職業指導員・生活支援員の総数です。利用者の数を5で除して得た数以上であることが要ります。就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)または(Ⅳ)の算定が前提になります。
| 利用定員 | 目標工賃達成指導員配置加算(1日につき) |
|---|---|
| 20人以下 | 45単位 |
| 21人以上40人以下 | 40単位 |
| 41人以上60人以下 | 38単位 |
| 61人以上80人以下 | 37単位 |
| 81人以上 | 36単位 |
留意事項通知は、この職種の仕事を3つ挙げています。
- 物品や役務等の受注促進
- 地域と連携した農福連携等による新たな生産活動領域の開拓
- ICT機器等の導入による利用者の生産能力向上
営業と生産設計であって、日々の支援とは別の技能です。なお令和6年度のB型の全国平均工賃月額は24,141円(18,245か所の集計)でした。作業種目の選び方はB型の作業種目で扱います。
利用時間が4時間未満の利用者等の割合が100分の50以上になると、所定単位数は100分の70に減算されます。ただし算定から除かれる利用者が2種類あります。1つは、送迎に長時間を要する利用者です。もう1つは、個別支援計画に一般就労等に向けた利用時間延長のための支援が位置付けられ、実際に支援を実施した利用者です。通所時間を延ばすよう職員に発破をかけるのではなく、計画に位置付けて実施し記録する手順を整えるのが正しい向き合い方です。
人が抜けたときの猶予は、事前準備でしか使えない
令和8年5月28日の留意事項通知の改正で、人員欠如減算に猶予の特例が設けられました。対象になるのは、突発的で想定が困難な事象によりやむを得ない事情が生じた場合です。減少が人員基準上必要とされる員数から1割の範囲内であることも要ります。猶予されるのは1年に1回、欠如の発生が生じた日の属する月の翌々月までの間です。
主な要件は次のとおりです。
- 公共職業安定所や福祉人材センター等の無料職業紹介事業を活用して職員の確保に取り組んでいること
- 民間職業紹介事業者を使う場合は適正認定事業者を含むこと
- 適正な労働時間管理を行うこと
1割を超えて減少した場合は対象になりません。Q&Aは、やむを得ない事情の例を2つ挙げています。体調不良等により1か月を超える不在が見込まれる場合と、自己都合による急な離職等が複数重なった場合です。
見落とせないのは、報告が欠如の発生月の翌月までで、報告時点で有効な求人票の写しを添付する点です。求人を常時出していない事業所は、この一枚を用意する段階でつまずきます。
欠員に備える段取りは4つです。
- 公共職業安定所への求人を常時掲出した状態にしておく
- 民間の紹介会社を使うなら、契約前に認定の有無を確かめる
- 自法人の採用ページにも募集職種と勤務条件を載せておく
- 別紙様式と求人票の写しを一組にしたひな形を作り、誰が翌月までに提出するかまで決めておく
求人を常時掲出しておくと、特例が求める職員確保の取組に該当します。あわせて、報告に添付する有効な求人票がその場で用意できます。確かめる認定は、医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者認定制度です。採用ページに載せておけば、募集を続けている事実を示す材料が増えます。ひな形まで決めておけば、欠員が出てから様式を探さずに済みます。
記録の側では、対応表を作ってください。第19条の提供の記録、第58条の計画とモニタリング、第75条第2項の各号に掲げる記録を一覧にします。そのうえで、様式ごとにどの号を満たすかを書き込みます。様式の目的が曖昧なまま数だけ増えることが、記録の負担が膨らむ主な原因です。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
見通しを示せるかどうかは、加算の設計で決まる
令和8年6月施行の処遇改善加算の見直しは、キャリアの見通しに直接効きます。厚生労働省の改定事項資料は、2つの措置を示しています。1つは、障害福祉従事者を対象に幅広く月1.0万円(3.3%)の賃上げを実現する措置です。もう1つは、生産性向上や協働化に取り組む事業者の福祉・介護職員に月0.3万円(1.0%)を上乗せする措置です。定期昇給0.6万円を含めて最大月1.9万円(6.3%)としています。加算の対象は福祉・介護職員から障害福祉従事者に拡大され、加算Ⅰロと加算Ⅱロが新設されました。
就労継続支援B型の加算率は、加算Ⅰイが10.5%、Ⅰロが10.9%、Ⅱイが10.3%です。Ⅱロが10.7%、Ⅲが8.8%、Ⅳが7.4%と続きます。処遇改善加算を除く加減算後の総報酬単位数に乗じるため、区分の違いはそのまま賃金原資の差になります。区分を上げる鍵はキャリアパス要件と職場環境等要件で、昇給の仕組みや研修体制という、職員が見通しを持てるかどうかを問う要件です。中身は処遇改善加算の要件で扱っています。
なお、就労継続支援B型の職員に限定した離職率の公的統計は、今回の調査では特定できませんでした。賃金の水準については、令和6年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査が公表しています。対象は、処遇改善加算を取得している事業所の福祉・介護職員(常勤の者)の平均給与額です。就労継続支援B型は令和6年9月で289,130円(月額)でした。求人媒体などが示す離職率を配置の根拠にせず、自法人の在職期間と欠員の発生月を並べた表で判断してください。
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よくある質問
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