現役の事業所運営者が書く、障害福祉の経営誌

処遇改善加算の要件一覧
キャリアパス・月額賃金改善・
職場環境等を区分別に整理

最終更新制度基準日
執筆:福祉経営ナビ編集部
監修:徳永 崇志(現役の就労継続支援B型事業所運営者)
初回公開
結論

令和8年6月以降の福祉・介護職員等処遇改善加算の算定要件は、①月額賃金改善要件、②から⑥のキャリアパス要件Ⅰ〜Ⅴ、⑦職場環境等要件、⑧令和8年度特例要件の8つです(従来から対象のサービス。令和8年3月31日付け障障発0331第1号・こ支障第78号による)。加算Ⅰイは①から⑦をすべて満たす必要があり、加算Ⅱイはキャリアパス要件Ⅴ、加算Ⅲはキャリアパス要件Ⅳ・Ⅴ、加算Ⅳはキャリアパス要件Ⅲ・Ⅳ・Ⅴを満たさなくても算定できます。加算Ⅰロ・Ⅱロは、それぞれ加算Ⅰイ・Ⅱイの要件に⑧を加えて満たします。

要件の数
8つ(①月額賃金改善/②〜⑥キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅴ/⑦職場環境等/⑧令和8年度特例)
加算Ⅰイ
①から⑦のすべてを満たす
加算Ⅳ
①②③⑦を満たす(キャリアパス要件Ⅲ・Ⅳ・Ⅴは不要)
加算Ⅰロ・Ⅱロ
加算Ⅰイ・Ⅱイの要件に⑧令和8年度特例要件を追加
職場環境等要件
全28項目。加算Ⅰ・Ⅱ系は区分ごとに2以上、生産性向上は3以上(⑱必須)
キャリアパス要件Ⅳ
年額460万円以上の職員を1人以上、または職場環境等要件を全体から14以上
制度基準日2026.06.01
根拠:厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和8年度分)
目次

要件は8つある。「3つの要件」ではない

処遇改善加算の要件を「キャリアパス要件・職場環境等要件・月額賃金改善要件の3つ」と説明する記事をよく見かけますが、令和8年度の通知が定めている要件は8つです。①月額賃金改善要件、②から⑥のキャリアパス要件Ⅰ〜Ⅴ、⑦職場環境等要件、⑧令和8年度特例要件に分かれており、加算区分ごとに必要な組み合わせが違います。

以下は、従来から処遇改善加算の対象だったサービス(通知別紙1の表1-1・表1-2に掲げるサービス)の話です。令和8年6月から新たに対象になった計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援は要件の立て付けが別なので、最後に触れます。

どの要件がどの区分に必要か

通知は、加算Ⅰイについて①から⑦をすべて満たすことを求めたうえで、下位区分では免除される要件を示す形をとっています。令和8年6月以降の6区分を整理すると次のようになります。

要件ⅠイⅠロⅡイⅡロ
①月額賃金改善要件
②キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系の整備等)
③キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)
④キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組みの整備等)
⑤キャリアパス要件Ⅳ(改善後の年額賃金要件)
⑥キャリアパス要件Ⅴ(配置等要件)
⑦職場環境等要件
⑧令和8年度特例要件

上の区分ほど要件が積み上がる構造です。特に⑥キャリアパス要件Ⅴは福祉専門職員配置等加算(居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護では特定事業所加算)の届出があるかどうかで機械的に決まるため、加算Ⅰイ・Ⅰロを狙えるかどうかはここで先に切り分けられます。ただし重度障害者等包括支援、施設入所支援、短期入所、就労定着支援、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援は、配置等要件に関する加算がないためこの要件自体が不要です。

①月額賃金改善要件は「付け替え」で満たせる

①は、加算Ⅳの加算額の2分の1以上を基本給等(基本給または決まって毎月支払われる手当)の改善に充てる要件です。加算Ⅳ以外の区分を算定する場合は、仮に加算Ⅳを算定したとしたら見込まれる加算額の2分の1以上が基準になります。

見落とされがちですが、通知は「処遇改善加算を未算定の事業所が新規に算定し始める場合を除き、本要件を満たすために、賃金総額を新たに増加させる必要はない」と明記しています。手当や一時金で行っている賃金改善の一部を減額し、基本給等に付け替える形でも構いません。なお、通勤手当や扶養手当は「決まって毎月支払われる手当」に含まれません。

②〜⑥キャリアパス要件は5本立て

キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ・Ⅲは書面と周知が中心です。Ⅰは職位・職責・職務内容等に応じた任用等の要件とそれに対応する賃金体系を定め、就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備して全ての福祉・介護職員に周知することを求めます。Ⅱは資質向上の目標と具体的な計画を福祉・介護職員と意見を交換しながら策定し、研修の実施または研修機会の確保を行って周知することです。Ⅲは経験や資格等に応じて昇給する仕組み、または一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けて書面で整備し、周知することを求めます。このうちⅠとⅢの書面整備は、常時雇用する者の数が10人未満など労働法規上の就業規則の作成義務がない事業所であれば、就業規則の代わりに内規等の整備と周知で足ります。

キャリアパス要件Ⅳは性格が違い、経験・技能のある福祉・介護職員のうち1人以上について、賃金改善後の賃金見込額が年額460万円以上であることを求めます(改善前に既に年額460万円以上の職員は除きます)。ここには代替ルートがあり、⑦職場環境等要件で全体から14以上の取組を実施していれば満たしているものとして扱われます。年額460万円は令和8年6月以降の金額で、令和8年4月・5月に適用される通知別紙1表2-1の見出しでは440万円と示されています。

「経験・技能のある福祉・介護職員」は、介護福祉士等の資格を持ち所属法人での勤続年数が10年以上の職員を基本としつつ、各事業者の裁量で設定できます。国のQ&Aは、介護福祉士の資格を持つ職員がいない小規模事業所では資格を有さない職員を計上して差し支えないとしています。

実務ではこう組めます

要件の確認は、上位区分から順に見るよりも、⑥配置等要件と⑤年額460万円の2つを先に潰したほうが早く終わります。⑥は福祉専門職員配置等加算等の届出があるかどうかだけで決まり、⑤は職場環境等要件を全体から14以上実施すれば代替できるためです。この2つの結論が出た時点で、狙える上限の区分がほぼ確定します。

加算Ⅰイ・Ⅰロを算定している場合は、元になる加算の算定状況を毎月見ておく必要があります。特定事業所加算を算定できない状況が常態化して4か月以上続くと、4か月目以降は区分変更が必要になります。

※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。

⑦職場環境等要件は6区分28項目

職場環境等要件は全28項目で、次の6区分に分かれます。必要な取組数は、区分と加算区分の組み合わせで決まります。

職場環境等要件の区分加算Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ加算Ⅲ・Ⅳ⑧特例要件(ア)
入職促進に向けた取組2以上1以上
資質の向上やキャリアアップに向けた支援2以上1以上
両立支援・多様な働き方の推進2以上1以上
腰痛を含む心身の健康管理2以上1以上
やりがい・働きがいの醸成2以上1以上
生産性向上のための取組3以上(⑱は必須)2以上5以上(⑱と㉑は必須)
全体通知本文に規定なし8以上

各項目は、項目内に列挙されている取組のうち1つ以上を満たせば足ります。1法人あたり1施設または1事業所のみを運営するような小規模事業者は、㉔(各種委員会の共同設置など協働化を通じた職場環境の改善)を実施していれば生産性向上区分の要件を満たします。前年度から継続して算定する場合は、従前の取組を続けていれば足ります。

加算Ⅰ・Ⅱ系の区分では、取組内容をホームページ掲載等により公表することも求められます。具体的には障害福祉サービス等情報公表制度を使い、加算の算定状況と、要件を満たすために実施した取組項目およびその具体的な取組内容を記載します。

なお「全体で14以上」は、通知本文では加算Ⅰ・Ⅱ系の必須要件ではなく、キャリアパス要件Ⅳの代替として位置づけられています。一方で通知別紙1の表2-2には加算Ⅰ・Ⅱ系の欄にも記載があるため、実際の扱いは指定権者に確認してください。

⑧令和8年度特例要件は加算Ⅰロ・Ⅱロの入口

加算Ⅰロ・Ⅱロは令和8年6月に新設された上乗せ区分で、それぞれ加算Ⅰイ・Ⅱイの要件に⑧を加えて算定します。⑧は、(ア)生産性向上区分から5以上の取組(うち⑱と㉑は必須)を実施すること、または(イ)法人が社会福祉法第128条第1号イに規定する社会福祉連携推進法人に所属していることのいずれかに加えて、(ウ)加算Ⅱロの加算額の2分の1以上を基本給等の改善に充てることで構成されます。

⑧が重要なのは、加算率の上乗せだけが理由ではありません。令和8年度に限り、キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ・Ⅲと職場環境等要件について令和9年3月末までの対応を誓約して申請できるのは、申請時点で⑧を満たす(誓約を含む)事業所に限られます。要件整備が途上の事業所ほど、⑧を満たせるかどうかが取れる区分を左右します。誓約した要件が未対応と確認された場合は、加算額の一部または全部が返還の対象になります。

相談支援3サービスは立て付けが別

令和8年6月から新たに対象になった計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援は、①令和8年度特例要件、または②加算Ⅳの取得に準ずる要件(キャリアパス要件Ⅰ、キャリアパス要件Ⅱ、職場環境等要件で区分ごとに1以上・生産性向上は2以上)のいずれかを満たせば算定できます。①の場合は(ア)または(イ)だけでよく、(ウ)の基本給等への充当は求められません。

区分ごとの加算率や届出の期日は令和8年度の処遇改善加算、改定前後の差分は令和8年度改定で処遇改善加算はどう変わったか、加算額の計算方法は処遇改善加算の計算方法で扱っています。

よくある質問

Q. 加算Ⅰイと加算Ⅱイの違いは何ですか?
A. 要件上の違いはキャリアパス要件Ⅴ(配置等要件)の1点だけです。加算Ⅰイは福祉専門職員配置等加算(居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護は特定事業所加算)の届出を行っていることが必要で、加算Ⅱイはこれを満たさなくても算定できます。他の①から⑤および⑦の要件は同じです。
Q. キャリアパス要件Ⅳの「年額460万円以上」は必ず1人以上必要ですか?
A. いいえ、職場環境等要件で全体から14以上の取組を実施している場合は、キャリアパス要件Ⅳを満たしているものとして扱われます。年額460万円の判定は手当等を含めて行い、社会保険料等の事業主負担その他の法定福利費等は含めません。法人単位で申請する場合は、一括申請する事業所の数以上の人数が法人全体でこの水準を満たしていれば足ります。
Q. 就業規則がない事業所でもキャリアパス要件Ⅰは満たせますか?
A. 満たせます。常時雇用する者の数が10人未満など労働法規上の就業規則の作成義務がない事業所は、就業規則の代わりに内規等を整備して全ての福祉・介護職員に周知することで、書面整備・周知の要件を満たすものとされています。国のQ&A(令和8年4月9日事務連絡)は、法人全体の取扱要領や内規等を想定していると説明しています。
Q. 令和8年度中に要件がまだ整っていなくても加算は算定できますか?
A. 条件付きで算定できます。令和8年度特例要件を満たす事業所に限り、キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ・Ⅲと職場環境等要件について、令和9年3月末までに対応すると処遇改善計画書で誓約すれば、申請時点から要件を満たしているものとして扱われます。加算Ⅲ・Ⅳの「全体で8以上」の取組は、特例要件を満たさない事業所でも誓約が認められます。誓約した要件が未対応と確認された場合は加算額の一部または全部が返還の対象になります。
Q. 加算Ⅰロ・Ⅱロを算定するには何が追加で必要ですか?
A. ⑧令和8年度特例要件が追加で必要です。(ア)職場環境等要件の生産性向上区分から5以上の取組(うち⑱と㉑は必須)を実施するか、(イ)法人が社会福祉連携推進法人に所属していることのいずれかに加えて、(ウ)加算Ⅱロの加算額の2分の1以上を基本給等の改善に充てることを満たします。加算Ⅱロの加算率が設定されていないサービスでは、(ウ)は加算Ⅰロの加算額の2分の1以上となります。
この記事の根拠資料
最終確認:2026.08.16

この記事の更新履歴

2026.08.16初回公開
執筆・監修
徳永 崇志

徳永 崇志

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埼玉県志木市で実際にB型事業所を運営しています。

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