就労継続支援B型の仕事はきついのか
負担が集中する場所と
経営側で外せる荷物
2026年8月時点で、就労継続支援B型の職員の負担は2つに分かれます。制度が形を決めている部分と、事業所の業務設計で決まっている部分です。制度側で動かせないのは3つあります。1つ目は、職業指導員及び生活支援員の総数が常勤換算方法で利用者の数を10で除した数以上という下限です。2つ目は、工賃を生産活動に係る事業の収入から必要経費を控除した額で支払う義務です。その支払いに要する額に原則として自立支援給付を充てられません。3つ目は、記録と会議が省令上の義務であることです。支援の提供の都度の記録、個別支援計画の6月に1回以上の見直しが要ります。身体拘束等の適正化と虐待の防止に関する委員会や研修の定期実施も義務です。
この3つが重なるため、支援と生産活動の売上づくりと書類作成が同じ職員の1日に同居します。一方で、誰がどの業務を持つかは事業所が決めています。記録の様式をどうするか、生産活動の受注を誰が担うかも同じです。
令和8年6月施行の福祉・介護職員等処遇改善加算は、負担を減らす取組そのものを要件にしています。加算Ⅰ・Ⅱの職場環境等要件では、生産性向上区分から3つ以上が求められます。現場の課題の見える化は必須です。
- 職員数の下限
- 職業指導員及び生活支援員の総数は常勤換算方法で利用者の数を10で除した数以上。職業指導員1以上、生活支援員1以上で、うちいずれか1人以上が常勤(指定障害福祉サービス基準第186条、第199条で準用)
- 報酬区分と人員配置
- 令和8年6月1日以降の就労継続支援B型サービス費は、6対1が(Ⅰ)、7.5対1が(Ⅱ)、10対1が(Ⅲ)で、いずれも工賃向上計画の作成が要件。定員20人以下で前年度の平均工賃月額が3万3千円以上3万5千円未満の区分なら、1日につき758単位、669単位、611単位(令和8年6月の見直し後の区分が適用される事業所の場合)
- 制度側で外せない荷物
- 工賃は生産活動に係る事業の収入から必要経費を控除した額を支払い、その支払いに要する額は原則として自立支援給付をもって充ててはならない(同基準第201条第1項、第202条で準用する第192条第6項)
- 記録と会議の義務
- 支援の提供の都度の記録と利用者からの確認、個別支援計画の6月に1回以上の見直しとモニタリング結果の記録、記録の5年間保存、身体拘束等適正化委員会・虐待防止委員会の定期開催と研修、業務継続計画の研修と訓練
- 賃金水準(公表統計)
- 就労継続支援B型の福祉・介護職員(常勤)の平均給与額は令和6年9月で289,130円(月額)。令和5年9月の273,690円から15,440円増。同じ調査の全サービス合計は327,720円
- 経営側で動かせる範囲
- 処遇改善加算の職場環境等要件のうち生産性向上区分(現場の課題の見える化、業務手順書の作成、記録様式の工夫、業務支援ソフトの導入、間接業務の役割見直し、委員会の共同設置など)。加算Ⅰ・Ⅱは同区分から3つ以上が要件
目次
「きつい」の中身を、動かせるものと動かせないものに割る
就労継続支援B型の職員が負担を感じる場面には、2種類のものが混ざっています。制度が形を決めている部分と、事業所が運営設計で決めている部分です。経営側が最初にやるべきなのは、この2つを分けることです。分けないまま「人を増やせば楽になる」と判断すると、人件費だけが固定費として増えます。負担の偏りはそのまま残ります。
制度側の3つは、どの事業所にも同じようにかかります。
| 制度が決めていること | 根拠 | 現場に出てくる形 |
|---|---|---|
| 職業指導員及び生活支援員の総数は常勤換算方法で利用者の数を10で除した数以上 | 指定障害福祉サービス基準第186条(第199条で準用) | 利用者数(前年度の平均値)20人なら常勤換算2人から成立する。基準は利用者数だけで決まり、記録や送迎、受注先対応の業務量は反映されない |
| 工賃は生産活動に係る事業の収入から必要経費を控除した額を支払い、その支払いに要する額に原則として自立支援給付を充ててはならない | 同第201条第1項、第202条で準用する第192条第6項 | 売れるものを作って売る仕事が、支援と同じ職員の1日に同居する |
| 前年度の平均工賃月額が翌年度の基本報酬区分を決める | 令和8年5月28日改正の留意事項通知 | 工賃を上げる圧力が、工賃だけでなく給付収入にも効く |
2つ目が、他の障害福祉サービスと決定的に違うところです。工賃の原資を給付費で埋めることは、災害その他やむを得ない理由がある場合を除いて認められていません。支援の質を上げる仕事と、売上をつくる仕事が、別々の部署ではなく同じ人の予定表に並びます。
配置を厚くすると単価は上がる。ただし人件費も上がる
令和8年6月1日以降の就労継続支援B型サービス費は、従業者の員数で区分が分かれます。
- 利用者の数を6で除した数以上なら(Ⅰ)
- 7.5で除した数以上なら(Ⅱ)
- 10で除した数以上なら(Ⅲ)
いずれも工賃向上計画の作成が前提です。定員20人以下で前年度の平均工賃月額が3万3千円以上3万5千円未満の区分を例に取ります。単位数は1日につき(Ⅰ)758単位、(Ⅱ)669単位、(Ⅲ)611単位です。この区分は令和8年6月の見直し後のものです。令和6年度改定の前後で区分が上がっていない事業所には、従前の区分が適用されます。
6対1と10対1の差は、1日1人あたり147単位です。増員が単価に跳ね返る設計にはなっています。ただし1単位あたりの単価は地域区分で異なります。増えた人件費のほうは毎月の固定費になります。増員を先に決める順序ではありません。どの業務を誰から外すかを決めてから人数を決めます。収支全体の組み立ては就労継続支援B型の収支構造で扱っています。
記録と会議は、1件いくらではなく年間の固定負担
省令が求めている記録と会議は、繁忙期かどうかに関わらず一定量が発生します。ここを「頑張って回す」ものと位置づけると、特定の職員に寄ります。
| 義務 | 内容 | 根拠(第202条で準用する条文を含む) |
|---|---|---|
| 支援の提供の記録 | 提供日、内容その他必要な事項を提供の都度記録し、利用者から確認を受ける | 第19条 |
| 個別支援計画 | サービス管理責任者がアセスメント、会議、同意、交付を行い、少なくとも6月に1回以上見直す | 第58条(就労継続支援B型計画と読み替え) |
| モニタリング | 定期的に利用者に面接し、定期的に結果を記録する | 第58条第10項 |
| 記録の保存 | 計画、提供の記録、市町村への通知に係る記録、身体拘束等、苦情、事故の記録を提供日から5年間保存 | 第75条第2項 |
| 身体拘束等の適正化 | 委員会の定期開催と周知、指針の整備、研修の定期実施 | 第35条の2第3項 |
| 虐待の防止 | 委員会の定期開催と周知、研修の定期実施、担当者の設置 | 第40条の2 |
| 業務継続計画 | 策定、従業者への周知、研修及び訓練の定期実施、定期的な見直し | 第33条の2 |
省令が定めているのは、記録すべき事項と保存です。書式の枚数や転記の回数までは定めていません。同じ内容を紙とシステムに二度書く。日々の記録から月次のモニタリングへ手で転記する。こうした作業は制度の要求ではなく、事業所の設計です。委員会の開き方も事業所が決められます。身体拘束等の適正化と虐待の防止で別々に開くか、議題を分けて同じ枠で開くかを選べます。
賃金の水準は、公表統計で確認できる範囲がある
賃金の水準は、令和6年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査で確認できます。調査は令和6年10月に実施され、有効回答は7,828施設・事業所でした。以下の額は、処遇改善加算を取得している事業所の福祉・介護職員(常勤の者)の平均給与額です。就労継続支援B型は令和6年9月で289,130円、令和5年9月で273,690円でした。令和5年9月から15,440円の増です。同じ調査の全サービス合計は327,720円です。基本給に手当と一時金(4月から9月の支給額の6分の1)を加えた額になります。両時点ともに在籍していた者を比べた数字です。
同じ調査では、届出の状況も分かります。就労継続支援B型で処遇改善加算を届け出ている事業所は87.3%でした。届出をしていない事業所は12.7%です(令和6年9月30日時点)。届出をしていない理由に事務作業の煩雑さを挙げた事業所では、処遇改善計画書の作成を理由とするものが81.3%を占めます。取れるはずの加算が事務で止まる状態は、賃金にも職員の納得感にも直接効きます。
外せる荷物は、加算の要件そのものに書かれている
令和8年6月施行の福祉・介護職員等処遇改善加算には、職場環境等要件があります。そのうち生産性向上のための業務改善の取組は、加算Ⅰ・Ⅱでは3つ以上必要で、そのうち現場の課題の見える化は必須です。加算Ⅲ・Ⅳでは2つ以上が要ります。この区分に並んでいる項目が、そのまま業務設計の見直しリストになります。
- 現場の課題の見える化(課題の抽出、課題の構造化、業務時間調査の実施等)
- 業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減
- 業務支援ソフト(記録、情報共有、請求業務の転記が不要なもの)、情報端末の導入
- 業務内容の明確化と役割分担を行い、食事等の準備や片付け、清掃、ゴミ捨て等は間接支援業務に従事する者の配置や外注等で担う
- 各種委員会の共同設置、各種指針・計画の共同策定、事務処理部門の集約等の協働化
別の区分にも、外せる荷物が置かれています。有給休暇の取得促進のため、情報共有や複数担当制等により業務の属人化と業務配分の偏りを解消する取組です。負担が一人に寄っている状態を放置しないことは、心情の問題ではなく加算の評価対象です。生産性向上や協働化に取り組む事業者向けの加算Ⅰロ・Ⅱロも新設されました。就労継続支援B型の加算率は、Ⅰイ10.5%に対しⅠロ10.9%、Ⅱイ10.3%に対しⅡロ10.7%です。
生産活動の側にも制度上の担い手があります。目標工賃達成指導員配置加算の要件は3つです。
- 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)または(Ⅳ)を算定していること
- 目標工賃達成指導員を常勤換算1人以上配置すること
- この指導員と職業指導員及び生活支援員の総数が、利用者の数を5で除して得た数以上であること
留意事項通知は、この指導員の仕事を3つ挙げています。
- 受注促進
- 農福連携等による新たな生産活動領域の開拓
- ICT機器等の導入による利用者の生産能力向上
営業と支援を同じ人に持たせ続けるのかどうかは、事業所が選べる部分です。
まず着手できるのは、業務時間調査です。職場環境等要件で必須とされる「現場の課題の見える化」の例示に挙がっています。
- 1週間、職員に15分単位で業務内容を記録してもらう
- 支援、記録・書類、生産活動(受注・納品・検品)、送迎、その他に分類する
- 働きぶりの評価が目的ではないことを先に伝える
集計したら、3つに印を付けてください。同じ情報を二度書いている作業、資格や経験がなくてもできる作業、担当が1人しかいない作業です。ここに外せる荷物が集まります。二度書きは様式の統合で外せます。資格不要の作業は役割分担または外注で、属人化は複数担当制で外せます。
ここまでが生産性向上区分に該当する取組そのものです。記録を残せば加算の根拠資料にもなります。
委員会は、身体拘束等の適正化と虐待の防止で開催記録の様式を揃えてください。年間の開催予定を年度当初に決めて共有すると、期末に慌てて開く事態を避けられます。
なお、加算の要件充足の判断や届出様式は指定権者が示します。取組を要件に当てる前に、所在地の指定権者に確認してください。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
人が欠けたときに、一部の職員へ寄せない
令和8年5月28日の留意事項通知の改正で、人員欠如減算に猶予の仕組みが設けられました。対象になるのは、突発的で想定が困難な事象によりやむを得ない事情が生じた場合です。減少が必要とされる員数から1割の範囲内であることも要ります。猶予されるのは1年に1回に限り、欠如が生じた日の属する月の翌々月までの間です。ただし猶予の要件は4つあり、そのすべてに該当する必要があります。1つ目は、公共職業安定所や福祉人材センター等の無料職業紹介事業を活用した確保の取組です。2つ目は、民間の職業紹介事業者を使う場合に適正認定事業者であることです。3つ目は、自ら採用情報をウェブサイトで公表するなど、積極的に取り組むことです。4つ目は、一部の職員に負担が寄らないようにすることです。取組とやむを得ない事情を別紙様式に記載し、翌月までに都道府県知事へ報告することも求められます。
4つ目は、事業所への努力義務として書かれています。一時的に職員を確保できないことにより、一部の職員へ過度な業務負担とならないようにすることです。職員の適正な労働時間管理を行い、体制の整備を図るよう努めることと定められています。欠員が出たときに残った職員へ黙って寄せる運用は、制度の側からも想定されていません。
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