就労継続支援B型事業所の
収支構造を分解する
基本報酬は何で決まるのか
就労継続支援B型事業所の収入は、自立支援給付から支払われる障害福祉サービス費と、生産活動収入の二本立てです。このうち経営の土台になる基本報酬は、利用定員・人員配置・前年度の平均工賃月額の3つの掛け合わせで決まります。生産活動収入は工賃の原資であって、事業所の手元に残す前提の収入ではありません。指定基準省令は、生産活動に係る事業の収入から必要経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払わなければならないと定めています。
2026年8月16日時点で適用されているのは令和8年6月1日以降の区分です。令和8年6月から基本報酬区分の基準額がそれぞれ3千円(1月あたり)引き上げられたため、同じ平均工賃月額でも当てはまる区分が事業所によって変わります。令和6年度改定の前後で区分が上がっていない事業所は見直しの対象外となり、従前の区分がそのまま続きます。「平均工賃月額4万5千円以上なら1日837単位」という一本の説明は、令和8年6月以降は成り立ちません。
- 収入の構成
- 障害福祉サービス費(自立支援給付)と生産活動収入。工賃の原資は生産活動収入(指定基準省令第201条第1項)
- 基本報酬を決める3要素
- 利用定員(20人以下/21〜40人/41〜60人/61〜80人/81人以上)×人員配置(6:1/7.5:1/10:1)×前年度の平均工賃月額
- 前年度の平均工賃月額の算定式
- 年間工賃支払総額 ÷(年間延べ利用者数 ÷ 年間開所日数)÷ 12月
- 最も高い基本報酬
- 定員20人以下・6:1・平均工賃月額4万8千円以上で1日につき837単位(令和8年6月1日以降)
- 同じ定員・人員配置での最低区分
- 平均工賃月額1万円未満で1日につき590単位(1日あたり247単位の差)
- 平均工賃月額の下限
- 1月当たり3,000円を下回ってはならない(指定基準省令第201条第2項)
- 令和6年度のB型全国平均工賃月額
- 24,141円/月(集計18,245か所)
目次
入ってくるお金は性質が違う2つに分かれる
B型事業所の収入は、自立支援給付から支払われる障害福祉サービス費と、生産活動収入の二本立てです。前者は単位数に地域区分ごとの単価を掛け、利用実績に応じて月単位で決まります。後者は請負や自主生産品の売上です。
この2つを一緒の財布として見ると判断を誤ります。指定基準省令は、指定就労継続支援B型事業者は利用者に、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払わなければならないと定めています。生産活動で稼いだ分は必要経費を引いたうえで工賃として出ていく建て付けで、事業所の利益として残す設計にはなっていません。さらに、利用者それぞれに支払われる1月当たりの工賃の平均額は3千円を下回ってはならず、年度ごとに工賃の目標水準を設定して利用者に通知し、都道府県に報告する義務も置かれています。
厚生労働省は令和7年11月28日のガイドラインで、自立支援給付費から利用者への工賃を補填するなど不適切な運営を行っている事業所があると指摘されている、という認識を示しました。給付費で工賃の不足を埋める運用は、収支の設計としても運営指導の観点としても前提から外れます。
基本報酬は3つの変数の掛け合わせ
給付費の中心である基本報酬は、利用定員、人員配置、前年度の平均工賃月額の3つで決まります。就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)が平均工賃月額に応じた報酬体系で、人員配置はそれぞれ6:1、7.5:1、10:1です。いずれも工賃向上計画を作成していることが算定の要件になっています。一方の(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)は平均工賃月額を使わず、利用者の就労や生産活動等への参加等をもって一律に評価する報酬体系で、人員配置だけが区分を分けます。
ここで混同されやすいのが人員配置です。B型の人員基準そのものは、職業指導員および生活支援員の総数を常勤換算方法で利用者の数を10で除した数以上とする10:1です。6:1や7.5:1は基準ではなく、基準を超えて人を置いたことを評価する報酬区分にすぎません。単価は上がりますが人件費も同時に増えるので、両方を並べないと判断できません。職員体制の悩みはB型の職員配置と人手の問題でも扱います。
平均工賃月額の算定式は次のとおりです。
年間工賃支払総額 ÷(年間延べ利用者数 ÷ 年間開所日数)÷ 12月
分母は工賃を受け取った人数ではなく、開所日1日当たりの平均利用者数です。通常の事業所に雇用されていて一時的に支援を受ける利用者は除きます。重度者支援体制加算(Ⅰ)を算定している場合は、算出した額に2,000円を加えた額を報酬算定時の平均工賃月額とすることができます。
この式の形から確実に言えることが1つあります。年間の工賃支払総額が変わらないまま延べ利用者数が増えると、平均工賃月額は下がります。稼働率を上げる取り組みと報酬区分を維持する取り組みは、算式の上では逆方向に働く場面があるということです。
令和8年6月から区分が3系統に分かれた
令和6年度改定で平均工賃月額の算定方式が変わり、分母が「工賃支払対象者数」から「開所日1日当たりの平均利用者数」に置き換わりました。これにより平均工賃月額が約6千円上昇し、想定以上に高い報酬区分の事業所が増えたことへの対応として、令和8年6月1日から区分の基準額がそれぞれ3千円(1月あたり)引き上げられています。引上げ幅は上昇幅の2分の1にとどめられました。
同時に3つの配慮措置が置かれた結果、令和8年6月以降に適用される区分は事業所ごとに次の3系統へ分かれます。
| 系統 | 対象となる事業所 | 中身 |
|---|---|---|
| R8改定後の区分 | 令和5年度から令和6年度にかけて区分が上がった事業所(大多数) | 基準額を3千円引き上げ、(A)〜(F)の中間区分を新設 |
| 改定なしの区分 | 平均工賃月額1万5千円未満の全事業所 | (七)1万円以上1万5千円未満と(八)1万円未満は据え置き |
| 従前の区分 | 令和5年度と令和6年度で区分が変わらない、または下がった事業所 | 令和8年5月以前の区分がそのまま続く |
自事業所がどれに当たるかはシステムで判定できないため、事業者の自己申告によります。見直し対象外の事業所は区分変更の届出書ではなく、対象外であることが分かる根拠書類を提出します。二次情報の解説を読むときは、それが3系統のどれを前提にしているかを毎回確かめてください。
定員20人以下・6:1の単位数
就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)の単位数です。すべて1日につきの単位数で、R8改定後の区分にあたります。
| 前年度の平均工賃月額 | 20人以下 | 21〜40人 | 41〜60人 | 61〜80人 | 81人以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| (一)4万8千円以上 | 837 | 746 | 700 | 688 | 666 |
| (A)4万5千円以上4万8千円未満 | 812 | 724 | 679 | 668 | 647 |
| (二)3万8千円以上4万5千円未満 | 805 | 717 | 674 | 662 | 640 |
| (B)3万5千円以上3万8千円未満 | 781 | 696 | 654 | 643 | 621 |
| (三)3万3千円以上3万5千円未満 | 758 | 676 | 636 | 625 | 605 |
| (C)3万円以上3万3千円未満 | 738 | 660 | 620 | 609 | 590 |
| (四)2万8千円以上3万円未満 | 738 | 660 | 620 | 609 | 590 |
| (D)2万5千円以上2万8千円未満 | 726 | 641 | 602 | 591 | 573 |
| (五)2万3千円以上2万5千円未満 | 726 | 637 | 600 | 589 | 570 |
| (E)2万円以上2万3千円未満 | 705 | 624 | 586 | 575 | 557 |
| (六)1万8千円以上2万円未満 | 703 | 624 | 586 | 575 | 557 |
| (F)1万5千円以上1万8千円未満 | 682 | 606 | 569 | 558 | 541 |
| (七)1万円以上1万5千円未満 | 673 | 600 | 563 | 553 | 535 |
| (八)1万円未満 | 590 | 526 | 494 | 485 | 468 |
定員20人以下で見ると、最上位の837単位と最下位の590単位の差は1日247単位です。人員配置を7.5:1に落とすと(Ⅱ)となり、同じ定員20人以下でも最上位が748単位、最下位が537単位まで下がります。10:1の(Ⅲ)では682単位と490単位です。定員が大きくなるほど1人あたりの単価は下がるので、規模の拡大は単価の低下と引き換えになります。
なお、令和8年6月1日以降に新規指定を受けた事業所には、所定単位数の1000分の984という応急的な報酬単価が適用されます。所定単位数は各種加算がなされる前の単位数を指し、加算を含めた合計に掛けるものではありません。離島・中山間地域に所在する場合や、自治体の公募によりサービスが不足する地域に設置された場合などは適用されません。この応急的な報酬単価は、令和9年度報酬改定までの間のみ適用される措置とされています。
加算は基本報酬の上に日単位・月単位で乗る
基本報酬が決まったら、そこに加算が積み上がります。単位の別がばらばらなので、月額に引き直すときは注意が必要です。
| 加算 | 単位数 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 目標工賃達成指導員配置加算 | 1日につき45/40/38/37/36単位(定員区分別) | 目標工賃達成指導員を常勤換算1人以上配置し、目標工賃達成指導員・職業指導員・生活支援員の総数が利用者の数を5で除して得た数以上 |
| 重度者支援体制加算(Ⅰ) | 1日につき56/50/47/46/45単位(定員区分別) | 障害基礎年金1級受給者が利用者の100分の50以上 |
| 就労移行支援体制加算(Ⅰ)定員20人以下 | 1日につき93〜48単位(平均工賃月額の区分別) | 前年度に一般就労へ移行し6月以上就労継続している者の人数を所定単位数に乗じて加算 |
| 福祉専門職員配置等加算(Ⅰ)/(Ⅱ)/(Ⅲ) | 1日につき15/10/6単位 | 社会福祉士等の割合や常勤職員の割合による |
| 食事提供体制加算 | 1日につき30単位 | |
| 送迎加算(Ⅰ)/(Ⅱ) | 片道につき21/10単位 | 同一敷地内の場合は70/100 |
| 目標工賃達成加算 | 1日につき10単位 | 工賃向上計画に掲げた工賃目標を達成した場合 |
これらとは別に、福祉・介護職員等処遇改善加算が1月当たりの総単位数に率で乗ります。就労継続支援B型の加算Ⅰイは令和8年6月以降10.5%です。1日あたりではなく、処遇改善加算を除く加減算後の1月当たり総単位数に乗せる点が他の加算と違います。詳しくは令和8年度の処遇改善加算にまとめました。
減算も収支に直接効きます。職業指導員または生活支援員の員数が基準に満たない場合は減算適用月から2月目まで70/100、3月以上連続すると50/100です。サービス管理責任者の欠如は4月目まで70/100、5月以上連続で50/100になります。利用時間が4時間未満の利用者等の割合が利用者全体の100分の50以上になると、所定単位数が70/100に下がります。
全国の水準を自事業所と並べる
自事業所の数字を評価するには全国値が要ります。令和6年度のB型の全国平均工賃月額は24,141円で、集計は18,245か所です。令和5年度は22,649円でした。この令和5年度の数値は令和8年3月に23,053円から修正されているので、古い数字を載せた二次情報には注意してください。令和5年度実績から新しい算定方式が反映されているため、令和4年度以前との単純比較もできません。
収支の面では、令和7年障害福祉サービス等経営概況調査でB型の収支差率は令和5年度決算6.0%、令和6年度決算6.2%でした(物価高騰対策関連補助金を含まない場合)。全サービス平均は単純平均で5.0%から4.6%へ下がっており、B型は横ばいから微増という位置にあります。事業所数は20,274か所、利用者数は425,938人です(いずれも国保連令和8年3月実績)。
自事業所の収入がどう決まっているかを押さえる順番は、まず前年度の年間工賃支払総額・年間延べ利用者数・年間開所日数の3つを確定させ、算定式に入れて平均工賃月額を出すことです。次に自事業所が3系統のどれに当たるかを、令和5年度と令和6年度の区分を並べて確認します。そのうえで定員と人員配置を掛け合わせれば、1日あたりの基本報酬が一意に決まります。ここまで出せば、加算と減算を足し引きして月額の見通しが立てられます。
事業所数も定員も、都道府県でかなり違います。全国の就労継続支援B型は20,783事業所で、前回の公表から+874事業所でした(WAM NET 2026年3月31日時点)。自分の県の事業所数・定員・平均工賃は都道府県別データで確認できます。
47都道府県のデータを見る →よくある質問
自分の地域には、
どれくらい利用者候補がいる?
所在地をもとに、周辺人口・障害福祉事業所数・紹介元になる相談支援事業所の数などを簡易集計します。これから開設する方には出せる場所と参入余地を、すでに運営している方には商圏内の競合と紹介元の分布を、目的にあわせて整理します。
その場でダウンロードできる資料ではありません。いただいた内容をもとに1件ずつ作成し、2〜3営業日以内にメールでお送りします。
