B型事業所は
「助成金目当て」なのか
収入の正体と補助金の位置
就労継続支援B型の収入の中心は補助金ではありません。障害者総合支援法第6条と第28条第2項に基づく訓練等給付費という報酬で、利用実績に応じて市町村から事業所に支払われます。令和8年6月施行分の単位数は、定員20人以下・6:1配置の就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)で1日1人あたり590単位から837単位です。
補助金が使えるのは場面が限られます。開設・改修にあたる社会福祉施設等施設整備費補助金、設備投資に使う中小企業向けの制度、単年度の時限措置の3つが中心です。いずれも公募や協議を経る一過性のお金で、毎月の運営費として継続的に入るものではありません。2026年8月23日時点の制度で整理しています。
- 収入の中心
- 障害者総合支援法第6条・第28条第2項に基づく訓練等給付費(報酬)。1日あたりの単位数×地域単価を利用実績で積み上げる
- 代表的な単位数
- 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)定員20人以下・6:1配置で1日1人あたり590〜837単位。工賃向上計画を作成しない(Ⅳ)は1日1人あたり584単位(令和8年6月施行分)
- 開設・改修の補助金
- 社会福祉施設等施設整備費補助金。原則として国1/2・都道府県等1/4・設置者1/4。窓口は都道府県(指定都市・中核市を含む)で予算の範囲内の採択。土地の買収・整地に要する費用は対象外
- 時限の補助金
- 障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金は令和7年12月からの6か月分の措置。B型の交付率は基準月1か月分の総報酬に対して11.4%で、全額を職員の賃金改善に充てる義務がある
- 工賃の位置
- 利用者が受け取るのは雇用契約に基づく賃金ではなく工賃。前年度の平均工賃月額が基本報酬の区分を左右する
目次
「助成金目当て」と言われる背景
この見方は、事業所に入るお金の名前と流れが外から見えないところから生まれます。
「b型事業所 助成金目当て」という言葉で検索する人がいます。同じ質問は、利用者や家族、求職者からも出ます。背景には2つの事情があります。1つは、B型の収入がどこから来るのかを、外に向けて説明する機会が少ないことです。もう1つは、事業所に関係するお金の名前が複数あって、外からは区別がつきにくいことです。
B型に関係するお金は、大きく3つに分かれます。
- サービス提供の対価として事業所に支払われる報酬(訓練等給付費)
- 開設・改修や設備投資に使う補助金
- 利用者が受け取る工賃
この記事では、この3つを分けて、それぞれの重みを見ていきます。事業所を批判するためでも、擁護するためでもありません。確認できる仕組みだけを並べます。
収入の中心は訓練等給付費
B型の収入の柱は、利用実績に応じて市町村から支払われる訓練等給付費という報酬です。
障害者総合支援法第6条は、自立支援給付の構成を定めています。介護給付費・特例介護給付費・訓練等給付費などの支給が、その中身です。同法第28条第2項は、就労継続支援を含む7つのサービスに訓練等給付費を支給すると定めています。条文が並べる給付の中に、補助金という名前の給付はありません。
支払われる額は、1日あたりの単位数に地域ごとの単価を掛けて決まります。令和8年6月施行分の単位数は次のとおりです。
| 区分(令和8年6月施行分) | 定員20人以下・6:1配置の単位数(1日1人あたり) |
|---|---|
| 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)最高区分(平均工賃月額4.5万円以上) | 837単位 |
| 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)最低区分(平均工賃月額1万円未満) | 590単位 |
| 就労継続支援B型サービス費(Ⅳ)(工賃向上計画を作成しない場合) | 584単位 |
1単位の価額は約10円です。ここに地域区分による0%から20%の割増が乗ります。この額が、利用者の通所した日ごとに積み上がっていきます。B型の収入は、利用実績に応じて積み上がる性質のお金です。
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援B型の報酬単価はどう決まるか 全区分の単位数と地域区分ごとの単価
訓練等給付費は補助金ではなく報酬
訓練等給付費は提供したサービスの対価であり、申請して採択を待つ補助金とは仕組みが違います。
違いは3つあります。
| 訓練等給付費(報酬) | 補助金 | |
|---|---|---|
| 受け取る条件 | 算定要件を満たしてサービスを提供すること | 募集された枠に申請し、採択されること |
| 額の決まり方 | 単位数×地域単価×利用実績 | 対象経費×補助率(上限額の範囲内) |
| 続き方 | サービスを提供している限り続く | 対象の事業が終われば終わり |
報酬は、要件を満たしてサービスを提供すれば、利用実績に応じて支払われます。補助金は、募集された枠に申請し、審査を経て採択されなければ受け取れません。社会福祉施設等施設整備費補助金は都道府県(指定都市・中核市を含む)が窓口です。予算の範囲内で自治体が整備計画を取りまとめるため、申請しても採択されないことがあります。
処遇改善についても、同じ整理になります。厚生労働省のページの見出しは「福祉・介護職員の処遇改善に係る加算の概要」です。掲載されている資料名も、一貫して「加算」という語を使っています。事業所が区分を届け出れば、サービスの対価である報酬に上乗せされます。別枠で交付される補助金ではありません。
平均工賃月額 計算シート
前年度の実績から平均工賃月額を出し、就労継続支援B型サービス費のどの区分になるかを確かめられるようにしています。
資料を見る →補助金が運営に占める位置
補助金が使えるのは開設・改修や設備投資と時限の支援に限られ、毎月の運営費には入りません。
B型が実際に使える補助金は、大きく3つの場面に分かれます。
| 場面 | 代表的な制度 | 出方(2026年8月23日時点) |
|---|---|---|
| 開設・改修 | 社会福祉施設等施設整備費補助金 | 原則として国1/2・都道府県等1/4・設置者1/4。窓口は都道府県(指定都市・中核市を含む)で、予算の範囲内の採択 |
| 設備投資 | 業務改善助成金などの中小企業向け制度 | 障害福祉専用の制度ではない。申請の受付期間・締切は制度ごとに決まっている |
| 時限の支援 | 障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金、都道府県の物価高騰支援金 | 単年度の措置。額と期間は制度・自治体ごとに違う |
施設整備費補助金の対象は、創設・増築・改築・大規模修繕等の4区分です。建物や設備の整備にかかる補助であり、土地の買収や整地に要する費用は対象外です。厚生労働省は毎年度、都道府県・指定都市・中核市に配分額を内示します。令和8年度分の内示は令和8年7月2日に公表されました。個々の事業所が国に直接申請する制度ではありません。
規模の感覚も、公表資料から取れます。令和7年度の国土強靱化対策分の内示を見ます。就労継続支援B型として、宮城県に1件・55,824千円が計上されました。1件あたりでは大きな額です。ただし施設の整備に充てるお金で、設置者には1/4の自己負担が残ります。毎年の運営費として入ってくるものではありません。
時限の支援には、報酬との比率が分かるものがあります。令和7年度補正予算による障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金です。B型の交付率は11.4%です。基準月(原則令和7年12月)1か月分の総報酬にこの率を掛けて、6か月分の補助額を算出します。受け取った額は、全額を職員の賃金改善に充てる義務があります。令和7年12月から令和8年5月までの6か月分の措置で、令和9年度以降に同種の措置が続くかどうかは実施要綱に書かれていません。
物価高騰の支援金は、都道府県ごとに設計が違います。大分県の令和8年度の補助金では、障害福祉の通所が1施設あたり82,000円の定額でした。申請期間は令和8年5月20日から7月17日までで、2026年8月23日時点では受付が終了しています。額も期間も自治体ごとに違うので、他県の数字をそのまま当てはめることはできません。
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか 開設・設備投資・雇用で使える制度の一覧
工賃はどこから出ているか
工賃は利用者が受け取るお金で、事業所に入る訓練等給付費とは別の流れになります。
B型は、利用者と雇用契約を結ばない通所のサービスです。厚生労働省の資料は、B型のサービス内容を「通所により、就労や生産活動の機会を提供(雇用契約は結ばない)」と説明しています。雇用契約がないため、利用者が受け取るのは賃金ではなく工賃です。
工賃と報酬が無関係かというと、そうではありません。基本報酬の区分は、前年度の平均工賃月額によって変わります。定員20人以下・6:1配置の就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)で見ます。平均工賃月額4.5万円以上の区分が1日1人あたり837単位、1万円未満の区分が1日1人あたり590単位です。1人1日あたり247単位の差になります。工賃が下がれば区分が下がり、報酬も下がります。平均工賃月額で区分が動く設計が、報酬の側に組み込まれています。
賃上げの補助金についても、対象は職員です。障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金の対象者は、実施要綱に定めがあります。「対象となる事業所に勤務する福祉・介護職員以外も含む障害福祉従事者」という書き方です。職員向けの制度であり、利用者本人への賃上げを行う制度ではありません。
利用者や家族から「助成金目当てではないか」と聞かれたときは、お金を3つに分けて話す順番になります。
最初に、事業所に入るお金です。訓練等給付費は通所の実績で積み上がるので、利用日数と単位数の関係から説明することになります。
次に、補助金です。直近で受けたものがあるなら、制度の名称と使途を答えられるようにしておきます。使途は制度の側で決まっていることが多いので、名称が分かれば説明は短く済みます。
最後に、工賃です。前年度の平均工賃月額が基本報酬の区分に効くことまで話すと、工賃と事業所の収入が同じ方向を向いていることが伝わります。
この順番を先に決めておくと、聞かれてから資料を探す場面が減ります。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
関連する記事を挙げます。
- 工賃の決め方 平均工賃月額の出し方と工賃向上計画
見分けるときに見る数字
外から確かめられるのは、前年度の平均工賃月額と基本報酬の区分、受けている補助金の名称と使途です。
「助成金目当てかどうか」は、気持ちの問題として問われます。確かめられるのは、数字と制度名のほうです。次の3つを見ると、お金の流れは大まかにたどれます。
- 前年度の平均工賃月額。基本報酬の区分を左右する数字で、工賃向上計画を作成しているかどうかも区分に効く
- 基本報酬の区分。定員20人以下・6:1配置なら、(Ⅰ)か(Ⅳ)かで1日1人あたり584単位から837単位まで動く
- 受けている補助金の名称と使途。施設整備費補助金なら建物や設備、賃上げの緊急支援なら職員の賃金改善というように、使途が制度の側で決まっている
ここまでに見た補助金は、名称が分かれば使途も分かります。使途が制度の側で決められているため、自由に使える資金として積み上がる性質のものではありません。一方、報酬は毎日の利用実績で積み上がります。事業所の収入は、通所の実態と工賃の実績に連動します。この2つを開いて見せるほうが、疑念には答えやすくなります。
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する 収入と費用の全体像
- 就労継続支援B型は儲かるのか 収支の実態から見た採算の考え方
よくある質問
自分の地域には、
どれくらい利用者候補がいる?
所在地をもとに、周辺人口・障害福祉事業所数・紹介元になる相談支援事業所の数などを簡易集計します。これから開設する方には出せる場所と参入余地を、すでに運営している方には商圏内の競合と紹介元の分布を、目的にあわせて整理します。
その場でダウンロードできる資料ではありません。いただいた内容をもとに1件ずつ作成し、2〜3営業日以内にメールでお送りします。
