現役の事業所運営者が書く、障害福祉の経営誌

就労継続支援B型の
工賃の決め方を
一次資料から確かめる

最終更新制度基準日
執筆:福祉経営ナビ編集部
監修:徳永 崇志(現役の就労継続支援B型事業所運営者)
初回公開
結論

就労継続支援B型の工賃は、生産活動に係る事業の収入から必要経費を控除した額を利用者に支払う仕組みです。原則として自立支援給付を工賃の支払いに充ててはなりません。利用者それぞれの一月当たり工賃の平均額は、3,000円を下回ってはなりません。これは事業所全体の平均額の下限であり、個々の利用者ごとの工賃額の下限ではありません。

利用者ごとの工賃をどう配分するか、時給制・出来高制・一律支給のどれにするかを指定する規定は、本記事で確認した省令・通知の範囲には見当たりません。ただし禁止は2つあります。技能に応じた工賃の差別を設けないこと、作業量が未達成であることを理由に工賃の減額等の制裁を課さないことです。平均工賃月額は、基本報酬(就労継続支援B型サービス費)の区分にも連動します。

工賃の原資
生産活動に係る事業の収入から、生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額
工賃の下限
利用者それぞれに支払われる一月当たりの工賃の平均額が3,000円を下回ってはならない(個々の利用者の下限ではない)
公費の充当
原則として自立支援給付を工賃の支払いに充ててはならない。災害その他やむを得ない理由がある場合は例外
平均工賃月額の算定式
前年度の工賃支払総額を、前年度の開所日1日当たり平均利用者数で割り、さらに12月で割って算出。通常の事業所に雇用され一時的に支援を受ける利用者は除く
配分方法についての規律
時給制・出来高制・一律支給等の方式そのものを指定する規定は、本記事で確認した範囲には無いが、技能に応じた工賃差別の禁止と作業量未達成を理由にした制裁の禁止がある
基本報酬との連動
就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)〜(Ⅲ)は平均工賃月額に応じて14段階に区分。(Ⅳ)〜(Ⅵ)は工賃月額による区分が無い
制度基準日2026.06.01
根拠:厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号)ほか
目次

工賃の原資は生産活動収入。公費を充てることは原則できない

就労継続支援B型の工賃は、生産活動に係る事業の収入から必要経費を控除した額を、利用者に支払う仕組みです。

運営基準の省令は、工賃の算定方法そのものをこう定めています。生産活動に係る事業の収入から、生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を、工賃として支払わなければなりません。原資は生産活動による収入に限られます。

原則として、自立支援給付を充ててはなりません。災害その他やむを得ない理由がある場合は、例外として認められます。この規定はA型の条文が、B型に読み替えて準用される形で置かれています。条文が使う語は自立支援給付です。訓練等給付費という語そのものは、条文には出てきません。

一月当たりの工賃の平均額は3,000円を下回ってはならない

省令は、利用者それぞれに支払う一月当たり工賃の平均額が、3,000円を下回ってはならないと定めています。

この下限は、事業所全体の平均額に対するものです。個々の利用者ごとの下限ではありません。1人の利用者の工賃が3,000円を下回っていても、全利用者の平均額が3,000円以上であれば、この規定に反しません。

省令は、工賃の水準を高めるよう努める義務も置いています(努力義務)。年度ごとに工賃の目標水準を設定することも求めています。目標水準と前年度の工賃の平均額を、利用者に通知するとともに、都道府県にも報告しなければなりません。

平均工賃月額の算定式と3つの特例

平均工賃月額は、前年度の工賃支払総額を、平均利用者数と12月で割って算出します。

算定は2段階です。まず、前年度の延べ利用者数を年間開所日数で割り、開所日1日当たりの平均利用者数を求めます。次に、前年度の工賃支払総額をこの平均利用者数で割ります。それをさらに12月で割ると、1人当たりの平均工賃月額になります。

ただし、通常の事業所に雇用されている利用者で、就労に必要な知識・能力の向上のための支援を一時的に受ける人は、算定から除きます。

この算定式には、特例が3つあります。

  • 重度者支援体制加算(Ⅰ)を算定している場合、算出した額に2,000円を加えた額を平均工賃月額にできる
  • 同一都道府県内の8割の事業所で工賃実績が低下し、都道府県がやむを得ないと認めた場合は、前年度に代えて前々年度の額を使える
  • 激甚災害の指定地域や災害救助法の適用地域に事業所が所在し、生産活動収入の減少が見込まれ、工賃支払額が減少する場合も、前々年度の額を使える

前々年度の額を使う特例は、事業所が自由に選べるものではありません。工賃実績の低下による特例は、都道府県がやむを得ないと認めることが必要です。災害による特例は、指定地域への所在と収入減少などの要件を満たす場合に限られます。

新規指定の事業所には、別の扱いがあります。(Ⅰ)〜(Ⅲ)の算定に当たり、初年度は平均工賃月額が1万円未満とみなされます。年度途中に指定された場合は、初年度と2年度目がみなし期間です。

関連する実務資料
計算シート

平均工賃月額 計算シート

前年度の実績から平均工賃月額を出し、就労継続支援B型サービス費のどの区分になるかを確かめる記入用シートです。

資料を見る →

(Ⅰ)〜(Ⅲ)の単位数は平均工賃月額で変わる

就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)〜(Ⅲ)は、平均工賃月額に応じて14段階に単位数が変わります。

平均工賃月額が高いほど、基本報酬の単位数も高くなります。次の表は、利用定員20人以下の列だけです。21人以上の単位数は、この記事の確認範囲に含まれていません。

平均工賃月額(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)
4万8千円以上837単位748単位682単位
4万5千円以上4万8千円未満812単位726単位662単位
3万8千円以上4万5千円未満805単位716単位653単位
3万5千円以上3万8千円未満781単位695単位634単位
3万3千円以上3万5千円未満758単位669単位611単位
3万円以上3万3千円未満738単位649単位594単位
2万8千円以上3万円未満738単位649単位594単位
2万5千円以上2万8千円未満726単位637単位577単位
2万3千円以上2万5千円未満726単位637単位572単位
2万円以上2万3千円未満705単位618単位557単位
1万8千円以上2万円未満703単位614単位557単位
1万5千円以上1万8千円未満682単位596単位541単位
1万円以上1万5千円未満673単位584単位532単位
1万円未満590単位537単位490単位

(単位数はいずれも1日につき、利用定員20人以下の場合)

(Ⅳ)〜(Ⅵ)には、平均工賃月額による区分がありません。単位数は利用定員のみで決まります。利用定員20人以下の場合、(Ⅳ)584単位、(Ⅴ)530単位、(Ⅵ)484単位です(いずれも1日につき)。

(Ⅰ)〜(Ⅲ)と(Ⅳ)〜(Ⅵ)は工賃向上計画の有無で分かれる

(Ⅰ)〜(Ⅲ)を算定するには、工賃向上計画の作成が要件です。(Ⅳ)〜(Ⅵ)にはこの要件がありません。

区分要件
(Ⅰ)工賃向上計画を作成し、従業者の員数が利用者数を6で除した数以上
(Ⅱ)工賃向上計画を作成し、従業者の員数が利用者数を7.5で除した数以上((Ⅰ)を算定している場合を除く)
(Ⅲ)工賃向上計画を作成し、従業者の員数が利用者数を10で除した数以上((Ⅰ)(Ⅱ)を算定している場合を除く)
(Ⅳ)従業者の員数が利用者数を6で除した数以上(工賃向上計画の作成は要件でない)
(Ⅴ)従業者の員数が利用者数を7.5で除した数以上((Ⅳ)を算定している場合を除く)
(Ⅵ)従業者の員数が利用者数を10で除した数以上((Ⅳ)(Ⅴ)を算定している場合を除く)

人員配置基準の分母(6・7.5・10)自体は、(Ⅰ)と(Ⅳ)、(Ⅱ)と(Ⅴ)、(Ⅲ)と(Ⅵ)でそれぞれ共通です。工賃向上計画の作成があるかどうかが違います。

区分の届出は、原則として毎年度4月に行います。年度途中に新規指定された事業所は、指定を受けた年度内で、初めて基本報酬を算定する前までに届け出ます。

いったん届け出ると、(Ⅰ)〜(Ⅲ)のグループと(Ⅳ)〜(Ⅵ)のグループの間での区分変更は、年度の途中では原則想定されていません。人員配置の変更にともなう区分変更、例えば(Ⅰ)から(Ⅱ)への変更などは、この制限の対象外です。

利用者ごとの配分は事業所の裁量。ただし禁止は2つある

利用者ごとの工賃をどう配分するか、時給制・出来高制・一律支給のどれにするかを指定する規定は、本記事で確認した省令・通知の範囲には見当たりません。

配分方式そのものを指定する規定が、本記事で確認した範囲に見当たらないことは、決まりが何も無いことを意味しません。禁止事項が2つ置かれています。

  • 技能に応じた工賃の差別は禁止されています
  • 作業量の未達成を理由にした制裁も禁止です。工賃の減額、作業員の割当の停止、資格剥奪などが対象です

この2つは、就労継続支援事業利用者の労働者性に関する留意事項についてという通知が示しています。同じ通知は、出欠・作業時間・作業量が利用者の自由であることも挙げています。生産活動における支援は、技術的指導に限られます。指揮監督に関するものは行わないこととされています。

生産活動の機会を提供する際には、別の配慮義務もあります。作業時間や作業量が、利用者にとって過重な負担にならないよう配慮しなければなりません。

実務ではこう組めます

配分方式を決める前に、まず禁止事項の2つを確認しておくと設計の軸がぶれません。技能に応じた工賃の差別を設けないことと、作業量が少なかった利用者に制裁として工賃を減らさないことです。この2つの枠のなかであれば、時給制、出来高制、一律支給のどれを選ぶかは事業所の裁量に委ねられています。

方式を決めたら、なぜ選んだかを書面に残すと、技能差か作業量差かを後から説明できます。出来高制や時給制であれば、工賃の差は作業量や作業時間の差として説明でき、技能そのものへの差別とは区別しやすくなります。一律支給を選ぶ場合は、技能差を反映させない理由を書面に残しておくと、差別ではないことを示しやすくなります。

作業量が少ない利用者についても、量が予定に届かないことを理由にした工賃の減額は制裁に当たるため避けます。出来高制のもとで作業量に応じて工賃が低くなること自体は、制裁とは区別されます。ただし工賃の平均額は、個々の利用者ではなく事業所全体で3,000円を下回らないか確認しておく設計が必要です。

※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。

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よくある質問

Q. 就労継続支援B型の工賃はいくら以上支払う必要がありますか?
A. 利用者それぞれの一月当たり工賃の平均額が、3,000円を下回ってはなりません。個々の利用者ごとの工賃額の下限ではありません。根拠は運営基準省令第201条第2項です。
Q. 工賃の配分方法は時給制・出来高制のどちらにすべきですか?
A. 配分方式を指定する規定は、確認した範囲には見当たりません。ただし禁止は2つあります。技能に応じた工賃の差別と、作業量未達成を理由にした制裁です。
Q. 事業所は工賃の支払いに訓練等給付費を充ててもよいですか?
A. 原則として充ててはなりません。災害その他やむを得ない理由がある場合は例外です。条文が使う語は自立支援給付で、訓練等給付費という語そのものは条文にありません。
Q. 平均工賃月額はどのように計算しますか?
A. 前年度の工賃支払総額を、平均利用者数と12月で割って算出します。平均利用者数は、前年度の延べ利用者数を年間開所日数で割って求めます。重度者支援体制加算(Ⅰ)を算定している場合は2,000円を加算できます。通常の事業所に雇用され、支援を一時的に受ける利用者は算定から除きます。
Q. 平均工賃月額が下がると基本報酬はどうなりますか?
A. 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)〜(Ⅲ)の単位数が下がります。(Ⅰ)〜(Ⅲ)は平均工賃月額に応じて14段階に区分され、月額が低いほど単位数も低くなります。(Ⅳ)〜(Ⅵ)には工賃月額による区分はありません。
Q. 新規指定の事業所も高い工賃区分で基本報酬を算定できますか?
A. できません。初年度は平均工賃月額が1万円未満とみなされます。年度途中に指定された場合は、初年度と2年度目がみなし期間です。対象は(Ⅰ)〜(Ⅲ)を算定する事業所です。
この記事の根拠資料
4.
厚生労働省
「1(2) A型利用者(雇用無)及びB型利用者」を確認・2026年08月19日確認
最終確認:2026.08.19

この記事の更新履歴

2026.08.19初回公開
執筆・監修
徳永 崇志

徳永 崇志

現役の就労継続支援B型事業所運営者

埼玉県志木市で実際にB型事業所を運営しています。

福祉経営ナビでは、厚生労働省・自治体・WAM NET等の一次情報を確認しながら、現場での経営判断に必要な情報を整理しています。

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