就労継続支援B型は儲かるのか
収入の上限を決める要素と
黒字化に必要な条件
就労継続支援B型の収支差率は、令和6年度決算の全国平均で6.2%です(物価高騰対策関連補助金を含まない場合。令和5年度決算は6.0%)。障害福祉サービス全体の単純平均4.6%より高く、事業として成立する水準ではあります。ただし同じ調査で、収入に対する給与費の割合は68.1%です。収入の7割近くが人件費で消えるため、手元に残るのは1割に届きません。
収入の上限は事業を始める前におおむね決まります。基本報酬は1日につきの単位数で定められ、その単位数は利用定員の区分・人員配置・前年度の平均工賃月額の3要素で決まるからです(令和8年6月1日以降)。これに地域区分ごとの1単位の単価と、実際に通った延べ利用者数を掛けたものが報酬額です。稼働率と工賃が動かなければ、収入も動きません。
令和8年6月1日以降に新規指定を受けたB型事業所には、所定単位数の1000分の984という応急的な単価が適用されます。厚生労働省はこの改定について「過度な新規参入を抑制することも必要」と明言しています。2026年8月16日時点の情報です。
- 収支差率(B型・令和6年度決算)
- 6.2%(物価高騰対策関連補助金を含まない。令和5年度決算6.0%、全サービス単純平均4.6%)
- 収入に対する給与費の割合(B型・令和6年度決算)
- 68.1%(令和5年度決算66.2%から2.0ポイント上昇。全サービス単純平均66.4%)
- 基本報酬の決まり方(令和8年6月1日以降)
- 利用定員の区分・人員配置・前年度の平均工賃月額の3要素で1日につきの単位数が決まる
- 1単位の単価(就労継続支援)
- 10円に地域区分別の割合を乗じた額。その他地域10.00円、1級地11.14円
- 令和6年度の全国平均工賃月額
- 24,141円/月(集計18,245か所。令和8年3月修正版)
- 令和8年6月1日以降の新規指定事業所
- 所定単位数の1000分の984(各種加算前の所定単位数に乗じる。令和9年度報酬改定までの間)
目次
儲かるかどうかは、公表された収支差率で見るしかない
個々の事業所の決算は表に出ません。全体の水準を知る手がかりは、厚生労働省が報酬改定の基礎資料として実施している経営概況調査です。令和7年6月から7月にかけて令和5年度・令和6年度の決算を調べたもので、有効回答数は7,263施設・事業所(有効回答率50.5%)でした。物価高騰対策関連補助金を含まない場合の収支差率は次のとおりです。
| サービス | 令和5年度決算 | 令和6年度決算 |
|---|---|---|
| 就労継続支援B型 | 6.0% | 6.2% |
| 就労継続支援A型 | 6.6% | 6.8% |
| 就労移行支援 | 8.2% | 6.0% |
| 全サービス(単純平均) | 5.0% | 4.6% |
| 全サービス(加重平均) | 6.7% | 6.5% |
全体平均より高く、前年度から微増している。この2点だけを見れば悪くない数字です。ただし収支差率は(収入額-支出額)÷収入額で、収入額には各種補助金収益や本部からの繰入金収益も含まれます。100万円の収入に対して残るのは6万円強で、1人の欠員や1件の減算で簡単に飛ぶ幅です。
収入の上限は、開設前におおむね決まっている
B型の報酬額は、おおまかに「1日につきの単位数 × 1単位の単価 × 延べ利用者数」です。このうち事業者が短期間で動かせるのは延べ利用者数だけです。
単位数は利用定員の区分(20人以下/21〜40人/41〜60人/61〜80人/81人以上)、人員配置、前年度の平均工賃月額という3つで決まります。令和8年6月1日以降、平均工賃月額に応じた報酬体系は就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)=6対1、(Ⅱ)=7.5対1、(Ⅲ)=10対1に分かれ、いずれも工賃向上計画の作成が算定要件です。前年度の実績で当年度の単位数が決まるため、今年の努力が効くのは翌年度になります。1単位の単価も動かせません。就労継続支援は10円に地域区分別の割合を乗じた額と告示で定められています。
| 地域区分 | 1級地 | 2級地 | 3級地 | 4級地 | 5級地 | 6級地 | 7級地 | その他 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 就労継続支援の1単位の単価 | 11.14円 | 10.91円 | 10.86円 | 10.68円 | 10.57円 | 10.34円 | 10.17円 | 10.00円 |
公表単価から、収入だけを組み立ててみる
以下は特定の事業所の実績ではなく、公表単価から機械的に出した数字です。定員20人・人員配置6対1でB型サービス費(Ⅰ)を算定・その他地域・年間開所日数245日・1日平均利用者数17人(稼働率85%)とし、前年度の平均工賃月額は令和6年度の全国平均24,141円と置きます。この工賃月額は令和8年6月改定後の区分では「2万3千円以上2万5千円未満」に当たり、1日につき726単位です。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 1人1日あたりの基本報酬 | 726単位 × 10.00円 | 7,260円 |
| 年間の延べ利用者数 | 17人 × 245日 | 4,165人日 |
| 年間の基本報酬 | 7,260円 × 4,165人日 | 約3,024万円 |
基本報酬だけの金額で、加算も生産活動の収入も含みません。定員20人規模のB型が公定価格から得る基本部分は年3,000万円前後の世界で、努力で数倍になる売上ではないということです。稼働率が85%から75%に落ちれば延べ利用者数は3,675人日、年間の基本報酬は約2,668万円まで下がります。稼働率10ポイントの低下が350万円を超える減収になる計算です。処遇改善加算を乗せれば総額は増えますが、受け取った額は職員の賃金改善に充てるものなので利益にはなりません(令和8年度の処遇改善加算)。
費用の側は、ほとんどが人件費で固まっている
同じ調査で、B型の収入に対する給与費の割合は令和5年度決算66.2%、令和6年度決算68.1%です。1年で2.0ポイント上がり、全サービスの単純平均66.4%より高い水準にあります。収支差率が6.2%あっても、その裏で7割近くが人件費に固定されている構造です。
しかもこの人件費は、報酬を上げようとすると増える側にあります。指定基準省令が求める職業指導員及び生活支援員の最低ラインは常勤換算で利用者の数を10で除した数以上、つまり10対1です。ところが報酬区分(Ⅰ)を算定するには従業者の員数が利用者の数を6で除した数以上でなければなりません。単位数の高い区分を取りにいくことは、最低基準のおよそ1.7倍の職員を抱えることを意味します。収入は延べ利用者数に比例して動き、費用の7割は動かない。損益分岐は「何人が何日通えば人件費と固定費を回収できるか」で置くことになり、平均工賃月額の区分は1人1日あたりの単価を上下させる係数にすぎません。費目ごとの内訳はB型の収支構造、配置と採用の実務は支援員の採用で扱います。
稼働率は減算の判定式と同じ分母で毎月出しておくと二度手間になりません。定員超過利用減算は直近3か月の延べ利用者数が利用定員×開所日数×125/100を超えたかで判定されるので、月次で「延べ利用者数 ÷(利用定員 × 開所日数)」を記録しておけば、収支の管理と減算の予防を同じ数字で兼ねられます。あわせて、利用時間が4時間未満の利用者等の割合も同じ月次の表に入れておくと安心です。これが利用者全体の50/100以上になると短時間利用減算で所定単位数が70/100になるためで、送迎のみを実施する時間はこの利用時間に含まれません。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
工賃を上げれば区分は上がるが、原資は給付費ではない
報酬区分を押し上げる唯一の要素が平均工賃月額です。ただし工賃の出どころは限られています。指定基準省令第201条第1項は、工賃を生産活動に係る事業の収入から必要経費を控除した額に相当する金額から支払うと定めています。給付費から工賃を補填する運営について、厚生労働省は令和7年11月28日のガイドラインの鑑文で、そうした不適切な運営を行っている事業所があると指摘されている旨を明記しました。工賃を上げるには生産活動そのものを伸ばすほかなく、作業種目の選び方が収支に直結します(B型の作業種目)。
同条第2項は、1月あたりの工賃の平均額が3,000円を下回ってはならないとしています。厚生労働省の留意事項通知は、この基準を満たしていない事業所に対して重点的に指導監査を実施すること、指導後も改善の見込みがない場合には地域活動支援センターへの移行や法に基づいた勧告、命令等の措置を講ずることを、都道府県等に求めています。監査に入るかどうかを決めるのは指定権者ですが、3,000円を割ったまま放置できる基準ではありません。
なお令和6年度の全国平均工賃月額は24,141円、令和5年度は22,649円です(いずれも令和8年3月修正版)。令和5年度から跳ね上がって見えるのは令和6年度改定で算定式の分母が変わったためで、それ以前の年度と単純には比較できません。
令和8年6月から、新規開設の前提が変わった
令和8年度報酬改定は臨時応急的な改定で、B型では2つのことが起きました。第一に、令和6年度改定で算定方式が変わり平均工賃月額が約6千円上昇したことへの対応として、基本報酬区分の基準額が1月あたり3千円ずつ引き上げられました。ただし令和6年度改定の前後で区分が上がっていない事業所は対象外で従前の区分が適用され、区分が下がる事業所には中間的な区分が新設されています。令和8年6月以降のB型の区分は事業所ごとに3系統に分かれ、どれに当たるかは事業者の自己申告によります。区分表を1つだけ見て判断すると間違えます。
第二に、令和8年6月1日以降に新規指定を受けた事業所には所定単位数の1000分の984が適用されます。これは各種加算がなされる前の所定単位数に乗じるもので、加算を含めた合計に乗じるものではありません。適用は令和9年度報酬改定までの間です。離島・中山間地域に主たる事業所がある場合、都道府県の公募によりサービスが不足する地域に設置された場合、自治体から開設時の経済的支援を得た場合は適用されませんが、運営への補助や人材確保のための補助はここに含まれません。
厚生労働省はQ&Aで、この改定が収支差率が高く事業所が急増しているサービス類型への対応であり「過度な新規参入を抑制することも必要」と述べ、指定権者には過剰な兼任等が疑われる場合の現地調査等を求めています。数字の上で成立する事業ではありますが、行政の姿勢は引き締めの方向です。事業類型の選択はA型とB型の違いにまとめています。
事業所数も定員も、都道府県でかなり違います。全国の就労継続支援B型は20,783事業所で、前回の公表から+874事業所でした(WAM NET 2026年3月31日時点)。自分の県の事業所数・定員・平均工賃は都道府県別データで確認できます。
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自分の地域には、
どれくらい利用者候補がいる?
所在地をもとに、周辺人口・障害福祉事業所数・紹介元になる相談支援事業所の数などを簡易集計します。これから開設する方には出せる場所と参入余地を、すでに運営している方には商圏内の競合と紹介元の分布を、目的にあわせて整理します。
その場でダウンロードできる資料ではありません。いただいた内容をもとに1件ずつ作成し、2〜3営業日以内にメールでお送りします。
