特定求職者雇用開発助成金は
B型で使えるか
利用者は対象外・職員とA型は対象になりうる
令和8年度の特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、就労継続支援B型の利用者を対象にできません。この助成金は、ハローワーク等の紹介で就職困難者を雇用保険の一般被保険者として雇い入れた事業主に支給されます。B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばないため、雇用保険の被保険者になりません。この2つを合わせると、対象労働者の入口要件を満たせないという結論になります。B型を名指しして除外した条文があるわけではありません。
対象になりうる場面は2つあります。1つはA型事業所が対象労働者を自らのサービス利用者として雇い入れる場合です。過去にこのコースの対象となったA型利用者のうち、基準期間内に確認日を迎える人が5人以上いて、離職割合が25%を超えていると不支給になります。もう1つは、事業所が障害のある人を利用者としてではなく職員として採用する場合です。額は障害の区分と労働時間で分かれます。重度障害者等をフルタイムで雇い入れた中小企業なら、6か月ごとに40万円ずつ6回、1人あたりの支給総額は240万円です。
- 制度の骨格
- ハローワーク等の紹介で就職困難者を雇用保険の一般被保険者等として雇い入れた事業主に支給。紹介より前に選考を開始していた場合は対象外(令和8年度)
- B型の利用者
- 対象外。雇用契約を結ばず雇用保険の被保険者にならないため、対象労働者の要件を満たさない。B型を名指しした除外規定はなく、要件の組み合わせによる帰結
- 支給総額(中小企業・フルタイム・1人あたり)
- 重度障害者等は支給総額240万円(1期40万円×6回)。重度以外の身体障害者・知的障害者は支給総額120万円(1期30万円×4回)。1期は6か月(令和8年度)
- A型の特則
- A型事業所が対象労働者を自らの利用者として雇い入れる場合も対象になりうる。ただし過去にこのコースの対象となったA型利用者のうち、確認日を迎える人が5人以上いて離職割合が25%を超えると不支給
- 申請の単位
- 6か月ごとの支給対象期ごとに申請。各期の末日の翌日から2か月以内に、事業所を管轄する労働局またはハローワークへ提出
目次
特定求職者雇用開発助成金の骨格
特開金は、ハローワーク等の紹介で就職困難者を雇用保険の一般被保険者として雇い入れた事業主に支給される制度です。
正式には特定求職者雇用開発助成金の特定就職困難者コースといいます。実施主体は厚生労働省で、窓口は都道府県労働局とハローワークです。障害のある人のほか、高年齢者や母子家庭の母なども対象労働者に含まれます。
入口で外れやすいのが紹介の経路です。対象になるのは、次の機関の紹介で雇い入れた場合に限られます。
- ハローワーク、地方運輸局
- 適正な運用を期することのできる特定地方公共団体
- 有料・無料の職業紹介事業者、無料船員職業紹介事業者
求人サイト経由の直接応募やオンラインでの自主応募は対象外だと、事業主向けQ&Aに示されています。紹介より前に選考を始めていた場合も対象になりません。先に採用を内定してから紹介を受ける形にすると、要件から外れます。
事業主が対象労働者だと知らずに雇い入れ、あとで分かった場合も助成の対象外です。就職困難者の雇用を後押しするための制度なので、紹介の時点で事業主が承知していることが前提になります。
事業主側にも要件があります。主なものを挙げます。
- 雇用保険の適用事業主であること
- 労働保険料を滞納していないこと
- 採用日の前後6か月間に事業主都合の解雇をしていないこと
3つ目の解雇には、退職の勧奨も含まれます。
有期雇用で雇い入れる場合は、対象労働者が望む限り更新できる契約だけが対象です。勤務成績で更新の可否を判断する契約は対象になりません。
対象区分ごとの額と支給期間
額は障害の区分と労働時間で分かれ、中小企業のフルタイムなら1人あたりの支給総額は120万円か240万円です。
支給は6か月ごとの「支給対象期」に分けて行われます。起算日は雇入れ日で、賃金締切日があるときは直後の締切日の翌日です。表の支給総額は、この分割払いを合計した額にあたります。
| 対象労働者の区分(令和8年度) | 1期あたりの額 | 支給回数 | 助成対象期間 | 支給総額(1人あたり) | 中小企業以外の支給総額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 重度障害者等・フルタイム | 40万円 | 6回 | 3年間 | 240万円 | 100万円 |
| 重度以外の身体障害者・知的障害者・フルタイム | 30万円 | 4回 | 2年間 | 120万円 | 50万円 |
| 身体・知的・精神障害者・短時間 | 20万円 | 4回 | 2年間 | 80万円 | 30万円 |
1期あたりの額・支給回数・助成対象期間・支給総額の列は、中小企業事業主の場合の値です。支給要領が分けているのは、中小企業事業主かそれ以外の事業主かという企業規模の区分だけです。
重度障害者等に入るのは、次の人です。
- 重度身体障害者、45歳以上の身体障害者
- 重度知的障害者、45歳以上の知的障害者
- 精神障害者
精神障害者は年齢を問わずこの区分に含まれます。45歳以上でなければ高い区分にならない、という理解は誤りです。
短時間労働者とは、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の人を指します。30時間以上ならフルタイムの区分で計算します。
満額が出ないこともあります。支給対象期の実労働時間が基準を下回ると、その期の額は減額されます。基準はフルタイムで週30時間の8割、短時間で週20時間の8割です。対象労働者が支給対象期の途中で離職した場合、原則としてその期の助成金は支給されません。
B型の利用者が対象にならない理由
B型の利用者は対象になりません。雇用契約がなく、雇用保険の被保険者として雇い入れるという要件を満たせないからです。
この結論は、性質の違う2つの一次情報を組み合わせたものです。特開金の一次情報に、B型を名指しした除外規定はありません。
1つ目は特開金の支給要件です。厚生労働省の公式ページは、支給の要件を「雇用保険一般被保険者又は高年齢被保険者として雇い入れ、継続して雇用することが確実であると認められること」としています。雇用保険の被保険者になるには、労働者として雇用契約を結んでいる必要があります。
2つ目はB型の制度上の性格です。B型は雇用契約を結ばない通所の就労・生産活動支援で、利用者は工賃を受け取ります。A型は雇用契約に基づく就労として区分されています。
この2つを合わせると、B型の利用者は雇用保険の被保険者にならず、対象労働者の要件を満たせないことになります。要件の組み合わせによる帰結であって、厚生労働省がB型を名指しで除外したわけではありません。断り方の説明を求められたときは、この順番で伝えると誤解が残りません。
| 立場(令和8年度) | 雇用契約 | 特開金の対象になりうるか | 判定の性質 |
|---|---|---|---|
| B型の利用者 | 結ばない(工賃を受け取る利用契約) | ならない | 要件の組み合わせによる帰結 |
| A型の利用者 | 結ぶ(雇用契約に基づく労働者) | なりうる | 自らの利用者として雇う場合の特則が支給要領にある |
| 事業所の職員 | 結ぶ(通常の雇用契約) | なりうる | 通常の対象事業主・対象労働者の要件で判断 |
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援A型とB型の違い 雇用契約の有無による制度の分かれ方
雇用関係助成金 対象者早見表(B型利用者・A型利用者・職員)
特開金を含む雇用関係助成金について、B型の利用者・A型の利用者・職員の対象可否を、明記か帰結かの別つきで並べています。
資料を見る →A型が自らの利用者を雇い入れる場合の特則
A型事業所が対象労働者を自らの利用者として雇い入れる場合も対象になりえますが、離職率の条件が付きます。
前提として、一般企業がA型の利用者をハローワークの紹介で雇い入れる場合は、通常どおり対象になります。A型の利用者は雇用契約に基づく労働者だからです。
これとは別に、A型事業所が自らのサービス利用者として対象労働者を雇い入れる場合の特則が置かれています(支給要領0201ホ・ヘ)。次の2つの両方に当たると不支給になります。
- 過去にこのコースの対象となったA型利用者のうち、基準期間内に確認日を迎える人が5人以上いること
- その人たちの離職割合が25%を超えていること
確認日は2つあります。雇入れ日から1年後(確認日A)と、助成対象期間の終了から1年後(確認日B)です。裏返すと、離職割合が25%以下であれば支給の対象になります。定着の実績が支給の条件に組み込まれている形です。
過去の雇用関係を見る期間も変わります。通常は、雇入れ日の前日から1年前までの間に関係事業主が雇い入れていた人が対象外になります。A型の利用者として雇い入れる場合、この期間は3年前までさかのぼります。関係事業主には、密接な資本関係にある事業主が含まれます。
なお、トライアル雇用助成金では扱いが逆になります。額と要件はトライアル雇用助成金の記事で扱います。
職員として障害のある人を採用する場合の使い方
事業所が障害のある人を職員として採用する場合は、通常の要件だけで判断され、対象になりえます。
B型でもA型でも、利用者としてではなく従業員として雇う場合は、一般の事業主と同じ扱いになります。障害福祉サービス事業所であること自体を理由に職員の採用を除外する規定は、支給要領にもパンフレットにも見当たりません。
ただし「除外しない」と書いた条文が見つかったわけでもありません。除外規定が置かれていないことから、通常の要件だけで判断されると読める、という位置づけです。
満たす必要があるのは次の点です。
- ハローワーク等の紹介で採用すること
- 雇用保険の一般被保険者等として雇い入れ、継続して雇用することが確実であること
- 雇入れ日の前日から3年前までの間に、その事業所と雇用・請負・委任の関係がなかったこと
- その事業所で通算3か月を超える訓練・実習等を受けていないこと
- 事業主や取締役の3親等以内の親族でないこと
3年前の要件と実習の要件は、福祉の現場では実際に効いてきます。実習で来ていた人をそのまま支援員として採用する流れは、期間によっては対象から外れます。
法人格による差は確認できませんでした。社会福祉法人・NPO法人・株式会社などの別で対象可否が変わるという記載は、支給要領にもパンフレットにもありません。ただし国・地方公共団体・行政執行法人等は対象外になる場合があります。
特開金を使うつもりなら、募集をハローワークに出すところから採用活動を組み立てることになります。
紹介より前に選考を始めていた人は対象外になるため、順番を入れ替えられません。実習に来ていた人や知り合いに先に内定を伝えると、その時点で要件から外れます。
気になる人がいる場合も、内定を出す前に事業所が同じ職種の求人をハローワークに出し、紹介を受けてから選考に入る順番になります。
求人票を出す段階で、週の所定労働時間を決めておくことになります。20時間以上30時間未満なら短時間労働者の区分、30時間以上ならフルタイムの区分で額が変わるためです。
雇用保険の資格取得手続も採用時に必要になります。被保険者としての雇い入れが要件そのものだからです。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
関連する記事を挙げます。
- B型事業所の職員採用 支援員を採用するときの実務
申請の流れ
申請は6か月ごとの支給対象期ごとに行い、各期の末日の翌日から2か月以内に労働局またはハローワークへ提出します。
支給申請書は、紹介の実績に基づいて管轄の労働局から事業主に送られてきます。電子申請にも対応しています。
| 段階 | やること | 時期 |
|---|---|---|
| 1 | ハローワーク等に求人を出す | 選考を始める前 |
| 2 | 紹介を受けて選考し、雇い入れる | 紹介の後 |
| 3 | 第1期の支給申請 | 起算日から6か月経過した日の翌日から2か月以内 |
| 4 | 第2期以降の支給申請 | 各支給対象期の末日の翌日から2か月以内 |
添付する書類は、支給申請書と、雇用の実態を示す資料です。主なものを挙げます。
- 支給申請書(様式第3号)と支給要件確認申立書
- 賃金台帳、出勤簿
- 対象労働者であることの証明書類
- 雇用契約書等と、対象労働者雇用状況等申立書(様式第5号)
関係書類は支給決定から5年間の保存義務があります。不正受給があった場合は、支給決定が取り消され、既に受け取った額の全額を返還することになります。取消しの日から5年間は各種の助成金を受けられません。
事務を外に頼むときは、頼める相手が法令で決まっている点に注意してください。申請書の作成・提出代行・事務代理を、報酬を得て業として行えるのは社会保険労務士だけです。特開金は雇用保険二事業の助成金で、雇用保険法が社会保険労務士法の別表第一に掲げられているためです。事業主が自分で作成して提出することは、もちろんできます。
この助成金は公募回や締切のある補助金ではありません。対象労働者を雇い入れた都度、支給対象期ごとに申請する形です。ただし要件は見直されます。高年齢者の対象要件は年度の途中で変更され、ハローワーク等での個別支援を受けていることが加わりました(令和8年5月1日から)。障害者の区分の要件と金額に変更はありません。
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか 使える制度の全体像
よくある質問
自分の地域には、
どれくらい利用者候補がいる?
所在地をもとに、周辺人口・障害福祉事業所数・紹介元になる相談支援事業所の数などを簡易集計します。これから開設する方には出せる場所と参入余地を、すでに運営している方には商圏内の競合と紹介元の分布を、目的にあわせて整理します。
その場でダウンロードできる資料ではありません。いただいた内容をもとに1件ずつ作成し、2〜3営業日以内にメールでお送りします。
