障害者トライアル雇用助成金の
期間と月額
短時間コースの使いどころ
障害者トライアル雇用助成金は、ハローワーク等の紹介を受けた障害者を試しに雇う事業主に支給されます。正式には、トライアル雇用助成金の障害者トライアルコースと障害者短時間トライアルコースです。障害者トライアルコースの支給額は1か月あたり最大4万円で、期間は原則3か月です。精神障害者を雇い入れる場合は、最初の3か月が1か月あたり最大8万円、続く3か月が最大4万円になり、通算で最長6か月です。額はいずれも1か月あたりの上限で、期間全体の総額ではありません。令和8年4月8日版の支給要領で確認した内容です。
就労継続支援B型の利用者は、この助成金の対象労働者になりません。対象を「一般被保険者等となる者」とする定義と、B型の利用者が雇用契約を結ばないことを合わせると、そうなります。支給要領がB型を名指しして除外しているわけではありません。A型については、A型の事業を行う事業所は対象事業主とならないと支給要領が明記しています。利用者ではなく職員として雇い入れる場合は、この除外に当たりません。B型の事業所にとっての使いどころは、一般就労へ移る利用者の受け入れ先企業に説明する場面です。なお申請書の作成・提出代行や事務代理を報酬を得て業として行えるのは、社会保険労務士だけです。
- 障害者トライアルコースの額
- 1か月あたり最大4万円。精神障害者は最初の3か月が1か月あたり最大8万円、続く3か月が最大4万円(令和8年度)
- 支給期間の上限
- 障害者トライアルコースは原則3か月。精神障害者を雇い入れる場合とテレワーク勤務の場合は最長6か月。障害者短時間トライアルコースは3か月以上12か月以内
- 障害者短時間トライアルコース
- 1人につき1か月あたり最大4万円。週の所定労働時間10時間以上20時間未満で始め、期間中に20時間以上を目指す。対象は精神障害者と発達障害者に限られる
- 入口の要件
- ハローワーク等への求職申込と、そこからの職業紹介が必須。事業主が紹介より前に選考を開始していないこと
- B型・A型・職員の別
- B型の利用者は対象外(要件の組み合わせによる帰結)。A型の利用者としての雇入れは支給要領が明記して除外。利用者ではなく職員としての採用は対象になりうる
- 申請の期限
- 原則としてトライアル雇用終了日の翌日から2か月以内。試行期間が6か月を超える場合は6か月経過日も起算日にできる
目次
障害者トライアル雇用助成金の骨格
ハローワーク等の紹介を受けた障害者を、一定期間試しに雇って適性を見極めるための助成金です。
正式な名称は、トライアル雇用助成金の障害者トライアルコースと障害者短時間トライアルコースです。根拠は雇用保険法第62条第1項第6号と、雇用保険法施行規則第110条の3第3項です。支給要領は目的を、障害者を一定期間雇用して適性や業務遂行可能性を見極めることと定めています。求職者と求人者の相互理解を促し、早期就職の実現と雇用機会の創出を図る仕組みです。
入口の要件は3つです。
- ハローワーク・地方運輸局・同意職業紹介事業者等へ求職の申込みがあること
- そこからの職業紹介を経て雇い入れること
- 事業主が紹介より前に選考を開始していないこと
紹介より前に選考を開始していないことは、事業主側の要件です。先に採用の選考を進めてから求人を出す形では、この要件を満たしません。
「継続雇用する労働者」の定義も押さえておきます。支給要領は、一般被保険者等となる者で、一年を超える期間の雇用が見込まれる者と定めています。この定義には、就労継続支援A型事業所の利用者を除くという括弧書きが付いています。
事業主側には、過去の実績を見る不支給要件もあります。過去3年間にその事業所で開始したトライアル雇用等について、継続雇用への移行の実績を見る仕組みです。移行しなかった者と未報告の者の合計が3人を超え、かつ移行した者の数を上回る場合は対象外になります。懲戒解雇に相当する場合や本人都合の退職など、一定の例外は除かれます。
この助成金に公募回や締切はありません。対象者を雇い入れるたびに随時申請します。支給申請は原則として、トライアル雇用終了日の翌日から2か月以内です。
なお助成金の申請書の作成や提出代行、事務代理を報酬を得て業として行えるのは、社会保険労務士だけです。雇用保険二事業の助成金は、社会保険労務士法別表第一に掲げる法令に基づく手続にあたるためです。
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか 補助金・助成金の全体像
額と支給期間
支給額は1か月あたり最大4万円で、期間の上限はコースと障害の種別によって3か月から12か月まで分かれます。額はいずれも1か月あたりの上限です。期間全体の総額ではありません。
| コースと対象者 | 1か月あたりの支給額 | 支給期間の上限(令和8年度) |
|---|---|---|
| 障害者トライアルコース/精神障害者以外 | 最大4万円 | 原則3か月 |
| 障害者トライアルコース/精神障害者 | 最初の3か月は最大8万円、続く3か月は最大4万円 | 最長6か月 |
| 障害者トライアルコース/テレワーク勤務を行う場合 | 上の区分と同額 | 最長6か月 |
| 障害者短時間トライアルコース | 1人につき最大4万円 | 3か月以上12か月以内 |
精神障害者以外の区分には、重度身体障害者・重度知的障害者と、そのほかの障害のある人が入ります。テレワーク勤務による延長は、令和3年4月1日以降に実施する場合に使えます。
障害者トライアルコースの対象者の要件も見ておきます。重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者のいずれかに当たる人は、そのまま対象になります。これに当たらない障害者は、次の3つのいずれかを満たす必要があります。
- 紹介日において、就労経験のない職業への就職を希望していること
- 紹介日前2年以内に、離職と転職を2回以上繰り返していること
- 紹介日前の離職期間が6か月を超えていること
このほかに、短時間コースも含む両コースに共通して、紹介日の時点で満たすべき要件が4つあります。
- 継続して雇用されている者でないこと
- 週30時間以上の自営業を営む者や役員でないこと
- 学校に在学中でないこと(卒業年度の1月1日を過ぎて内定のない者を除く)
- 他のトライアル雇用の期間中でないこと
精神障害者を雇い入れる場合の月額と減額の条件
最初の3か月は1か月あたり最大8万円ですが、実際に働いた日数の割合が75%を下回ると減額されます。
試行期間を最長6か月まで延長できるのは、精神障害者を雇い入れる場合とテレワーク勤務を行う場合です。精神障害者の支給額は、最初の3か月が1か月あたり最大8万円で、続く3か月が1か月あたり最大4万円になります。
「最大」と付いているのは、実労働日数の割合で減額されるためです。割合は、実際に就労した日数を予定就労日数で割って求めます。支給要領の表1・表2が、この割合に応じた支給額を定めています。
| 実労働日数の割合(実就労日数÷予定就労日数) | 1か月あたりの支給額(令和8年度) |
|---|---|
| 75%以上 | 満額 |
| 50%以上75%未満 | 満額の4分の3に相当する額 |
| 25%以上50%未満 | 満額の2分の1に相当する額 |
| 0%超25%未満 | 満額の4分の1に相当する額 |
| 0% | 支給されない |
体調の波で欠勤が続くと、8万円の枠がそのまま入るとは限りません。受け入れ先の企業に説明するときは、この減額の仕組みまで伝えておくと誤解が起きにくくなります。
雇用関係助成金 対象者早見表(B型利用者・A型利用者・職員)
トライアル雇用助成金を含む雇用関係助成金について、対象になる人と額・期間を1枚に並べています。
資料を見る →障害者短時間トライアルコース
週20時間未満から始めて、期間中に20時間以上へ引き上げることを目指すコースです。
雇入れ時の週の所定労働時間は、10時間以上20時間未満で設定します。試行期間は3か月以上12か月以内で、支給額は1人につき1か月あたり最大4万円です。対象は精神障害者と発達障害者に限られます。ここでいう発達障害者は、発達障害者支援法第2条に規定する発達障害者(精神障害者を除く)を指します。ほかの障害種別はこのコースの対象になりません。
名前が似ている制度と混同しやすい点が1つあります。特定求職者雇用開発助成金でいう「短時間労働者」は、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の人です。短時間トライアルコースの10時間以上20時間未満とは、時間の範囲が逆になります。
申請の期限は試行期間の長さで変わります。6か月以下で終わるなら、終了日の翌日から2か月以内に申請します。6か月を超える場合は、6か月経過日と終了日の翌日の両方を起算日にできます。
B型の利用者・A型の利用者の扱い
B型の利用者は要件の組み合わせから対象外になり、A型の利用者は支給要領が名指しで除外しています。
まずB型の利用者です。支給要領は「継続雇用する労働者」を、一般被保険者等となる者と定めています。B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばず、工賃を受け取る利用契約です。この2つを合わせると、B型の利用者はこの助成金の対象労働者にならない、という結論になります。支給要領にB型を名指しした除外の記述はありません。
次にA型の利用者です。こちらは支給要領に、A型の事業を行う事業所は対象事業主とならないと明記されています。括弧書きで、対象者を当該事業所の職員等の利用者以外の者として雇い入れる場合は除く、とされています。「継続雇用する労働者」の定義自体にも、A型事業所の利用者を除くという括弧書きがあります。
| 立場 | 雇用契約 | 対象になりうるか | 判断のもと |
|---|---|---|---|
| B型の利用者 | 結ばない(工賃を受け取る利用契約) | ならない | 要件の組み合わせによる帰結 |
| A型の利用者としての雇入れ | 結ぶ | ならない | 支給要領の明記 |
| 事業所の職員(支援員・サービス管理責任者など) | 結ぶ(通常の雇用契約) | なりうる | 除外の規定が見当たらないことによる |
職員として雇う場合はどうなるか。支給要領の除外は、対象者をA型の利用者として雇い入れる場合の話です。B型でもA型でも、利用者ではなく職員として採用するなら、この除外には当たりません。ただし障害福祉サービス事業所の職員採用を除外しない、と明記した条文までは確認できていません。除外の規定が見当たらないことから、通常の要件だけで判断されると読める、という位置づけです。
一般就労へ移る利用者の受け入れ先企業に説明するなら、伝える順番を決めておくと通じやすくなります。
最初に伝えるのは、本採用の前に置く試行期間だという位置づけです。原則3か月で、その間は事業主に1か月あたり最大4万円が支給されます。
次に期間の幅を伝えます。精神障害のある人なら最長6か月まで取れます。週20時間未満から始める短時間コースは最長12か月ですが、対象は精神障害か発達障害のある人に限られます。
最後が手順です。求人をハローワークに出し、紹介を受けてから雇い入れる順番になります。先に本人と話を進めて選考を始めてしまうと、要件を満たさなくなります。
送り出す側としては、実習先の企業がハローワークに求人を出しているかを先に確認しておくことになります。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援A型とB型の違い 雇用契約の有無による制度の分かれ方
常用雇用へ移ったあとの特開金との関係
トライアル雇用の終了後も継続して雇用する場合、特定求職者雇用開発助成金の一部を受給できる場合があります。
厚生労働省のパンフレットに、その旨の記載があります。挙げられているのは、母子家庭の母等・父子家庭の父・中国残留邦人等永住帰国者、そして障害者です。これらの人をトライアル雇用助成金で雇い入れ、終了後も引き続き継続して雇用する場合の話です。
条件が1つあります。トライアル雇用の時点で継続雇用が確実とみなされた場合、特開金の第1期は支給されません。試行のための制度なので、最初から本採用が決まっている形は別扱いになります。
本採用に至った実績は、次の申請にも関わります。過去3年間の移行実績が悪いと、事業主自身がトライアル雇用助成金の対象から外れるためです。試して合わなければ終わりにできる制度ですが、移行しない前提で繰り返し使う設計にはなっていません。
特開金の額は、障害の種別・企業規模・週の所定労働時間の組み合わせで分かれます。トライアル雇用と続けて使うことを考えるなら、雇い入れる時点でどちらの区分に当たるかを確かめておくことになります。
関連する記事を挙げます。
- 就労選択支援とは何か 一般就労へ移る前の支援の仕組み
よくある質問
自分の地域には、
どれくらい利用者候補がいる?
所在地をもとに、周辺人口・障害福祉事業所数・紹介元になる相談支援事業所の数などを簡易集計します。これから開設する方には出せる場所と参入余地を、すでに運営している方には商圏内の競合と紹介元の分布を、目的にあわせて整理します。
その場でダウンロードできる資料ではありません。いただいた内容をもとに1件ずつ作成し、2〜3営業日以内にメールでお送りします。
