障害者雇用の助成金一覧
「職員として雇う」「利用者を送り出す」
2つの場面で整理する
障害者雇用の助成金は、雇う側の事業主が申請する制度です。令和8年度に使える主なものは、雇い入れの場面で使う3つ(特定求職者雇用開発助成金・トライアル雇用助成金・キャリアアップ助成金)と、雇ったあとの環境整備で使うJEEDの助成金に分かれます。B型事業所の立場では、自法人で障害のある職員を雇う場面と、利用者の就職先の企業が使う場面の2つがあります。いずれも公募回や締切のある補助金ではなく通年受付で、雇い入れや転換のたびに個別の申請期限が発生します。
B型の利用者は事業所と雇用契約を結びません。雇用保険の被保険者として雇い入れることを求める要件と合わせると、雇い入れの3制度はいずれも対象になりません。A型の利用者は雇用契約に基づく労働者ですが、トライアル雇用助成金とキャリアアップ助成金の正社員化系2コースは要領・パンフレットで明示的に除外されています。事業所の職員として雇う場合は、除外規定がなく一般の要件で判断されます。
- 場面の分け方
- 申請するのは雇用契約を結ぶ側の事業主。自法人で職員として雇う場面と、利用者の就職先の企業が使う場面の2つに分かれる
- 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
- 令和8年度・中小企業で、重度障害者等をフルタイムで雇う場合は1人あたりの支給総額240万円(40万円×6期・起算日から3年間)
- トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)
- 令和8年度・1人あたり月額最大4万円。精神障害者は最初の3か月が月額最大8万円、その後3か月が月額最大4万円で最長6か月
- キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)
- 令和8年度・中小企業で、重度身体・重度知的・精神障害者を有期から正規に転換した場合は1人あたりの支給総額120万円(60万円×2期)
- B型の利用者の扱い
- 雇用契約を結ばないため、雇い入れの3制度もJEEDの助成金も対象にならない。名指しの除外はJEEDの作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金だけで、他は要件との組み合わせによる帰結
- 申請の代行
- 申請書の作成・提出代行・事務代理を報酬を得て業として行えるのは社会保険労務士のみ
目次
障害者雇用の助成金は「自法人で雇う場面」と「利用者の就職先が使う場面」に分かれる
障害者雇用の助成金は、自法人が事業主として申請するものと、利用者の就職先の企業が申請するものに分かれます。
B型事業所の経営者がこの言葉で調べるとき、動機はたいてい2つに分かれます。1つは、障害のある人を自法人の職員として雇う場面です。もう1つは、利用者の一般就労を進めるなかで、受け入れ先の企業に説明する場面です。制度そのものは、どちらの場面でも同じものを使います。違うのは申請する主体で、助成金を受け取るのは雇用契約を結ぶ側の事業主です。
| 場面 | 申請するのは | 使う制度の中心 |
|---|---|---|
| 自法人で職員として雇う | B型事業所を運営する法人 | 雇い入れの3制度・JEEDの助成金 |
| 利用者が一般企業に就職する | 就職先の企業 | 雇い入れの3制度 |
| 利用者としてB型に受け入れる | なし | 該当する雇用関係助成金はない |
3つ目の場面には、使える雇用関係の助成金がありません。B型の利用者とは雇用契約を結ばないからです。この線引きは要領の書き方によって強さが違うので、後の章で分けて説明します。
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか 収入の仕組みと使える制度の全体像
雇い入れのときに使う3つの制度
雇い入れの場面で使うのは、特定求職者雇用開発助成金・トライアル雇用助成金・キャリアアップ助成金の3つです。
いずれも厚生労働省の制度で、窓口は都道府県労働局とハローワークです。公募回や締切のある補助金ではなく、通年で受け付けています。そのかわり、雇い入れや転換のたびに個別の申請期限が発生します。
| 制度(令和8年度) | 対象になる雇い入れ | 事前に必要なこと |
|---|---|---|
| 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) | ハローワーク等の紹介で、雇用保険の一般被保険者等として継続雇用する雇い入れ | 紹介より前に選考を開始していないこと |
| トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース) | ハローワーク等の紹介による原則3か月の試行雇用 | ハローワーク等への計画書の提出 |
| トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース) | 週の所定労働時間10時間以上20時間未満で始め、期間中に20時間以上を目指す試行雇用 | 同上。対象は精神障害者と発達障害者に限られる |
| キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース) | 障害のある有期雇用労働者等の正規雇用等への転換 | 実施日の前日までのキャリアアップ計画の提出 |
特定求職者雇用開発助成金は、略して特開金と呼ばれます。対象になるのは、ハローワーク等の紹介による雇い入れだけです。求人サイトからの直接応募は対象外になります。事業主が雇い入れの時点で対象労働者だと知らなかった場合も、助成の対象になりません。
トライアル雇用助成金は、試行雇用のあとに継続雇用へ移行することを前提にした制度です。A型事業所が対象者をA型の利用者として雇い入れる場合は、対象事業主から除外されると支給要領に明記されています。同じA型事業所でも、支援員などの職員として雇う場合は除外の対象外です。
キャリアアップ助成金は転換の助成なので、雇い入れそのものではありません。有期雇用で採用した障害のある職員を、あとから正規雇用に転換する場面で使います。計画の提出は転換の実施日の前日までです。転換したあとに出しても間に合いません。
雇用関係助成金 対象者早見表(B型利用者・A型利用者・職員)
この記事で挙げた制度について、B型の利用者・A型の利用者・職員のそれぞれが対象になるかを、根拠つきで1枚にまとめています。
資料を見る →雇ったあとの環境整備で使うJEEDの助成金
雇ったあとの環境整備に使うのは、障害者雇用納付金を財源とするJEEDの助成金です。
JEEDは独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の略称です。財源は、法定雇用率を達成していない常用労働者100人超の企業から集める障害者雇用納付金です。民間企業の法定雇用率は令和8年7月から2.7%になりました。納付金の額は、不足1人あたり月額5万円です。
| 助成金(令和8年度・中小企業) | 助成の対象 | 額 |
|---|---|---|
| 職場適応援助者助成金(企業在籍型) | 社内のジョブコーチによる支援 | 精神障害者・一般労働者で月額支給限度額12万円。支給期間は最長6か月 |
| 職場支援員助成金(配置) | 精神障害者・発達障害者等の職場定着支援を行う職場支援員の配置 | 一般労働者で月額4万円。最大2年間(精神障害者は最大3年間) |
| 職場介助者助成金(配置) | 重度身体障害者等の介助を担当する職場介助者の配置 | 費用の4分の3。配置1人あたり月15万円まで、最長10年間 |
| 第1種作業施設設置等助成金 | 買取り等による作業施設・設備の設置整備 | 費用の3分の2。支給対象障害者1人につき450万円まで(作業設備は1人につき150万円まで) |
| 障害者福祉施設設置等助成金 | 保健室・休憩室・食堂などの整備 | 費用の3分の1。支給対象障害者1人につき225万円まで |
額はいずれも中小企業の場合です。資本金のない社会福祉法人やNPO法人は、常時雇用する労働者数だけで中小企業かどうかを判定します。
JEEDの助成金はどれも通年受付です。ただし認定申請は措置の実施や工事の着手より前が原則です。あとからの遡及は原則できません。
就労継続支援を行う事業所からの申請には、名指しの制限があります。作業施設設置等助成金と障害者福祉施設設置等助成金のパンフレットが、この点を明記しています。A型・B型の事業を行うために本来必要な施設・設備は対象外です。利用者を支給対象障害者として申請することもできません。一方で、利用者が使う部分と明確に区別できる措置に限り、施設職員は対象になると同じパンフレットに書かれています。
設備の導入で使えた制度が、すでに終わっている場合もあります。人材確保等支援助成金の介護福祉機器助成コースは、令和6年3月31日で廃止されました。同じ助成金の雇用管理制度・雇用環境整備助成コースは続いています。
額と支給期間の比較
額を比べるときは、1人あたりの支給総額か、1期あたりの額か、月額かを取り違えないことが要点です。
制度によって金額の数え方が違います。特開金は6か月ごとの支給対象期に分けて支払われます。次の表の240万円は、40万円を6回受け取った合計です。一度に240万円が入るわけではありません。
| 制度・区分(令和8年度・中小企業) | 額 | 額の単位 | 支給期間 |
|---|---|---|---|
| 特開金 重度障害者等(重度身体・重度知的・45歳以上の身体・知的・精神)・フルタイム | 240万円 | 1人あたりの支給総額(40万円×6期) | 起算日から3年間 |
| 特開金 身体・知的障害者(重度でも45歳以上でもない)・フルタイム | 120万円 | 1人あたりの支給総額(30万円×4期) | 起算日から2年間 |
| 特開金 身体・知的・精神障害者・短時間 | 80万円 | 1人あたりの支給総額(20万円×4期) | 起算日から2年間 |
| 障害者トライアルコース 精神障害者 | 最初の3か月は月額最大8万円、その後3か月は月額最大4万円 | 1人あたりの月額 | 最長6か月 |
| 障害者トライアルコース 精神障害者以外 | 月額最大4万円 | 1人あたりの月額 | 原則3か月 |
| 障害者短時間トライアルコース | 月額最大4万円 | 1人あたりの月額 | 3か月以上12か月以内 |
| 障害者正社員化コース 重度身体・重度知的・精神障害者(有期→正規) | 120万円 | 1人あたりの支給総額(60万円×2期) | 支給対象期間1年 |
| 障害者正社員化コース 重度以外の身体・知的障害者、発達障害者、難病患者、高次脳機能障害者(有期→正規) | 90万円 | 1人あたりの支給総額(45万円×2期) | 支給対象期間1年 |
| JEED 職場支援員助成金(配置・一般労働者) | 月額4万円 | 1人あたりの月額 | 最大2年間(精神障害者は最大3年間) |
| JEED 企業在籍型職場適応援助者助成金(精神障害者・一般労働者) | 月額12万円 | 月額支給限度額 | 最長6か月 |
特開金の重度障害者等には、精神障害者が年齢を問わず全員含まれます。重度の身体障害者・知的障害者や、45歳以上の身体障害者・知的障害者と同じ最高額の区分です。
トライアル雇用助成金の月額は上限額です。実就労日数の割合が75%未満になると、段階的に減額されます。
障害者正社員化コースは、第1期と第2期に分けて申請します。第1期で不支給になると、第2期は申請できません。
表の額はすべて中小企業のものです。特開金・障害者正社員化コース・表に挙げたJEEDの2つの助成金は、大企業だとこれより低い額になります。たとえば特開金の重度障害者等・フルタイムは、大企業だと支給総額100万円です。
B型の利用者が助成金の対象にならない理由
B型の利用者が対象にならないのは、事業所と雇用契約を結ばず、雇用保険の被保険者にならないからです。
この結論は、1つの条文から出てくるものではありません。性質の違う2つの一次情報を組み合わせた帰結です。1つ目は、B型が雇用契約を結ばない通所の就労・生産活動支援だという制度の性格です。
2つ目は、助成金が求める入口の要件です。特開金は、雇用保険の一般被保険者等としての雇い入れを求めています。トライアル雇用助成金も、「継続雇用する労働者」を一般被保険者等となる者と定義しています。キャリアアップ助成金の「有期雇用労働者等」は、労働契約を締結する労働者を指します。この2つを合わせると、B型の利用者はどの制度の入口にも立てない、という結論になります。
厚生労働省がB型の利用者を名指しして対象外と書いているわけではありません。名指しの除外が確認できたのは、JEEDの作業施設設置等助成金と障害者福祉施設設置等助成金です。A型の利用者については、名指しの除外がいくつもあります。
| 対象 | 事業所との契約 | 雇い入れの3制度 | JEEDの助成金 | 判定の強さ |
|---|---|---|---|---|
| B型の利用者 | 利用契約(工賃を受け取る) | 対象にならない | 対象にならない | 要件との組み合わせによる帰結。JEEDの2つの設置等助成金だけ名指しの除外がある |
| A型の利用者 | 雇用契約 | 制度によって分かれる | 対象にならないものが多い | 支給要領・パンフレットに明記されている |
| 事業所の職員(支援員・サビ管・管理者等) | 雇用契約 | 対象になりうる | 対象になりうる | 除外規定がなく、一般の要件で判断される |
A型の利用者の扱いは、制度ごとに正反対になります。トライアル雇用助成金は、A型の利用者としての雇い入れを対象事業主から除外しています。一方の特開金は、離職率などの条件つきで対象になりうる形をとっています。キャリアアップ助成金は、正社員化コースと障害者正社員化コースの対象労働者要件でA型の利用者を除いています。賃金規定等改定コースなど処遇改善系の3コースには、パンフレット上、同じ除外の文言が見当たりません。
職員として雇う場合は、障害福祉サービス事業所であることを理由に除外する規定が見当たりません。一般の要件だけで判断されます。
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援A型とB型の違い 雇用契約の有無による制度の分かれ方
申請は誰がやるか
申請するのは雇う側の事業主で、報酬を得て代行できるのは社会保険労務士だけです。
雇用保険二事業の助成金と、障害者雇用納付金制度に基づくJEEDの助成金が該当します。申請書の作成・提出代行・事務代理は、社会保険労務士法が定める独占業務です。無資格のコンサルタントが報酬を得て代行することはできません。事業所が自分で申請するか、社会保険労務士に依頼するかの二択になります。
もう1つ、期限の管理が事業主の仕事として残ります。
| 制度 | 事前の手続 | 支給申請の期限 |
|---|---|---|
| 特定求職者雇用開発助成金 | ハローワーク等への求人と紹介 | 支給対象期の末日の翌日から2か月以内 |
| トライアル雇用助成金 | ハローワーク等への計画書の提出 | トライアル雇用終了日の翌日から2か月以内 |
| キャリアアップ助成金 | 実施日の前日までのキャリアアップ計画の提出 | 6か月分の賃金を支給した日の翌日から2か月以内 |
| JEEDの各助成金 | 措置の実施・工事の着手前の認定申請 | 助成金ごとに定められた期間 |
不正受給の扱いは重く設定されています。返還額に加えて、年3%の延滞金と返還額の20%の違約金が請求されます。取消しから5年間は各種の助成金を受けられません。支給申請書と添付書類の写しは、支給決定から5年間の保存が必要です。
利用者の就職先の企業から助成金の有無を聞かれたときは、答える前に確認する順番を決めておくことになります。
最初に確認するのは、就職の入り口がハローワーク等の紹介かどうかです。特開金もトライアル雇用助成金も、紹介より前に選考が始まっていると対象外になります。求人サイトからの直接応募で決まった就職には使えません。
次に、雇い入れの形を確認します。試行雇用から始めるならトライアル雇用助成金、最初から継続雇用に進むなら特開金という分かれ方になります。
週の所定労働時間も、先に聞いておく順番になります。特開金は20時間以上30時間未満が短時間労働者の区分で、額の段が変わるためです。
伝える相手は企業の事業主です。事業所は申請の当事者ではないので、額を断定せずに、労働局とハローワークに確認してもらう形が無難です。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
関連する記事を挙げます。
- B型事業所の職員採用 支援員を採用するときの実務
よくある質問
自分の地域には、
どれくらい利用者候補がいる?
所在地をもとに、周辺人口・障害福祉事業所数・紹介元になる相談支援事業所の数などを簡易集計します。これから開設する方には出せる場所と参入余地を、すでに運営している方には商圏内の競合と紹介元の分布を、目的にあわせて整理します。
その場でダウンロードできる資料ではありません。いただいた内容をもとに1件ずつ作成し、2〜3営業日以内にメールでお送りします。
