就労継続支援A型とB型は
何が違うのか、雇用契約から
報酬構造・開設判断まで
A型とB型の違いは、利用者と雇用契約を結ぶかどうかから始まります。根拠は障害者総合支援法施行規則第6条の10です。同条はA型を「雇用契約に基づく就労が可能である」障害者に対するサービスとしています。B型は「雇用契約に基づく就労が困難である」障害者に対するサービスです。A型の利用者は労働者になります。最低賃金法をはじめとする労働関係法令が適用され、事業者が支払うのは賃金です。B型は雇用契約を結ばず、生産活動の収支から工賃を支払います。
経営から見て決定的なのは、A型だけにかかる生産活動収支の規制です。生産活動に係る事業の収入から必要な経費を控除した額が、利用者に支払う賃金の総額以上となるようにしなければなりません。根拠は指定障害福祉サービス基準第192条第2項です。その達成状況は、基本報酬のスコアを最大80点分動かします。B型にこの規制はありません。基本報酬の軸も違います。A型は評価点、B型は平均工賃月額で決まります。令和8年6月1日以降は、B型の区分基準だけが引き上げられました(2026年8月16日時点)。
- 対象者の書き分け
- 施行規則第6条の10第1号(A型)は雇用契約に基づく就労が可能な者、第2号(B型)は雇用契約に基づく就労が困難な者
- 事業者が支払うもの
- A型は賃金(最低賃金法の適用あり)、B型は工賃(平均月額3,000円を下回ってはならない。第201条第2項)
- A型だけにかかる収支規制
- 生産活動収支が利用者に支払う賃金の総額以上となるようにしなければならない(基準省令第192条第2項)
- 共通する原資の規制
- 賃金・工賃の支払いに要する額は原則として自立支援給付をもって充ててはならない(第192条第6項。B型は第202条で準用)
- 基本報酬の決まり方
- A型は利用定員×人員配置(7.5対1/10対1)×評価点、B型は利用定員×人員配置(6対1/7.5対1/10対1)×平均工賃月額等
- 人員基準
- どちらも職業指導員及び生活支援員の総数が常勤換算で利用者の数を10で除した数以上(第186条。B型は第199条で準用)
- 実施主体の制限
- A型は社会福祉法人以外なら専ら社会福祉事業を行う者に限られ、障害者雇用促進法第44条の子会社は不可(第189条)。B型にこの制限はない
- 令和8年度改定での扱い
- 基本報酬区分の見直しと新規指定事業所の応急的な報酬単価(1000分の984)はB型が対象で、A型は対象外
目次
出発点は施行規則の一語の差
A型とB型の違いは、障害者総合支援法施行規則第6条の10まで戻ると見通しが良くなります。同条第1号は、A型の対象を「通常の事業所に雇用されることが困難な障害者であって雇用契約に基づく就労が可能であるもの」としています。第2号は、B型の対象を「雇用契約に基づく就労が困難であるもの」としています。可能か困難かという一語の差が、労働法の適用、支払う金銭の性質、報酬の決まり方までを分けていきます。これを受けて、A型事業者は利用者と雇用契約を締結しなければなりません(指定障害福祉サービス基準第190条第1項)。
経営に効く違いを対比する
| 項目 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 |
|---|---|---|
| 雇用契約と労働法 | 締結する。利用者は労働者となり最低賃金法等が適用される | 締結しない。労働関係法令は適用されない |
| 生産活動収支の縛り | 生産活動収支が利用者に支払う賃金の総額以上となるようにしなければならない(第192条第2項) | 同様の規定はない。工賃は生産活動収支に相当する額(第201条第1項) |
| 人員基準 | 職業指導員及び生活支援員の総数が常勤換算で利用者の数を10で除した数以上(第186条) | 同じ(第199条で準用) |
| 実施主体の制限 | 社会福祉法人以外は専ら社会福祉事業を行う者に限る。障害者雇用促進法第44条の子会社は不可(第189条) | 相当する規定はない |
| 基本報酬の軸 | 利用定員×人員配置(7.5対1/10対1)×評価点 | 利用定員×人員配置(6対1/7.5対1/10対1)×平均工賃月額等 |
| 事業所数・利用者数 | 4,367か所・86,929人 | 20,274か所・425,938人 |
事業所数と利用者数は、いずれも国保連の令和8年3月実績です。B型の事業所数はA型の約4.6倍あります。
賃金と工賃では、原資の縛り方が違う
A型には、生産活動収支についての規制がかかります。生産活動に係る事業の収入から必要な経費を控除した額が、利用者に支払う賃金の総額以上となるようにしなければなりません(第192条第2項)。A型の賃金は生産活動の利益から出すのが原則で、給付費で穴埋めする設計は想定されていません。
B型では、工賃がそもそも生産活動収支に相当する額と定義されています(第201条第1項)。同じ趣旨が定義に織り込まれている形です。
両者に共通する規制もあります。賃金と工賃の支払いに要する額は、原則として自立支援給付をもって充ててはなりません。例外は、災害その他やむを得ない理由がある場合です。根拠は第192条第6項で、B型は第202条で準用しています。B型なら給付費から工賃を出してよい、ということにはなりません。収支の組み立ては就労継続支援B型の収支構造で扱っています。
基本報酬の決まり方が根本的に違う
B型の基本報酬は平均工賃月額の区分で決まります。A型は評価点、いわゆるスコアで決まります。スコアの中身は「厚生労働大臣が定める事項及び評価方法」(令和3年厚生労働省告示第88号)が定める7項目です。配点は次のとおりです。
- 労働時間 … 最高90点
- 生産活動 … 最高60点
- 多様な働き方 … 最高15点
- 支援力向上のための取組 … 最高15点
- 地域連携活動 … 最高10点
- 利用者の知識・能力の向上 … 最高10点
- 経営改善計画を期限までに提出していない場合 … マイナス50点
生産活動の項目は、生産活動収支が賃金総額以上だった年度がいくつあるかで決まります。
- 過去3年度すべて … 60点
- 過去2年度 … 50点
- 前年度だけ … 40点
- 前年度と前々年度がいずれも下回る … 10点の減点
- 3年度すべて下回る … 20点の減点
幅は最高60点から最低マイナス20点までの80点分です。A型の報酬区分は、この1項目で動きます。
次の表は就労継続支援A型サービス費です。定員20人以下の場合の、1日につきの単位数を示します。
| 評価点 | 7.5対1(Ⅰ) | 10対1(Ⅱ) |
|---|---|---|
| 170点以上 | 791 | 727 |
| 150点以上170点未満 | 733 | 671 |
| 130点以上150点未満 | 701 | 641 |
| 105点以上130点未満 | 666 | 608 |
| 80点以上105点未満 | 533 | 486 |
| 60点以上80点未満 | 419 | 382 |
| 60点未満 | 325 | 296 |
上下で2.4倍以上の開きがあります。新規指定のA型事業所は初年度、評価点が80点以上105点未満とみなして算定します。
令和8年度改定でA型とB型の扱いは分かれた
令和8年度の臨時応急的な改定は、B型に厚く当たりました。B型は基本報酬区分の基準額が、1月あたり3,000円ずつ引き上げられました。適用は令和8年6月1日からです。同日以降に新規指定を受けるB型事業所には、応急的な報酬単価もかかります。所定単位数の1000分の984を適用するものです。この特例の対象は次の4サービスで、A型は含まれていません。
- 就労継続支援B型
- 共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型)
- 児童発達支援
- 放課後等デイサービス
A型に関係する改定は2つです。1つは令和8年6月施行の処遇改善加算の拡充で、A型の加算率は加算Ⅰイ10.8%、Ⅰロ11.2%、Ⅲ9.1%などとなります。もう1つは、令和8年4月施行の就労移行支援体制加算の見直しです。見直しの背景には、同じ利用者がA型事業所と一般企業の間で離転職を繰り返し、その都度算定される事例の報道があります。これを受けて、一事業所で算定できる年間の就職者数の上限を定員数までとしました。A型の基本報酬の単位数そのものは、令和8年度改定で変わっていません。
どちらを開設するかを分ける論点
判断に効くのは3点です。第一に法人格です。A型は社会福祉法人以外なら、専ら社会福祉事業を行う者に限られます(第189条)。特例子会社も指定を受けられません。第二に賃金の原資です。最低賃金を満たす賃金を、生産活動の利益から支払える計画が要ります。第三に人材です。A型が利用者及び従業者以外の作業員を雇う場合は、人数に上限がかかります(第196条)。定員10人以上20人以下なら、定員の50%までです。
令和6年度の実績では、A型の平均賃金月額が91,451円、B型の平均工賃月額が24,141円でした。差は約3.8倍です。それでも令和7年経営概況調査の収支差率(補助金を含まない)は、A型6.8%、B型6.2%とほぼ並びます。利用者に渡る金額が3.8倍違って事業者の収支差率が並ぶのは、A型の生産活動が賃金分だけ余計に稼いでいるからです。B型側の採算感は就労継続支援B型は儲かるのかにまとめました。
どちらで指定を取るかを検討するときは、収支シミュレーションの前に定款を開くことをおすすめします。社会福祉法人以外のA型事業者は、専ら社会福祉事業を行う者でなければなりません(第189条)。他の事業を営む会社のままでは、指定にたどり着かない場合があります。確認事項は指定権者ごとに異なります。事業計画を固める前に事前相談で確かめておくと、手戻りが減ります。
A型で進める場合の試算は、収支の見込みよりも先に賃金を置くと判断が早くなります。まず、想定する最低賃金額に1日の平均労働時間、利用者数、年間の稼働日数を掛けて、年間の賃金総額を出します。次に、その金額を生産活動の粗利で賄えるかどうかを確かめます。この水準以上を保つことを求めているのが第192条第2項です。届かなければスコアの生産活動が減点側に振れ、報酬区分も下がります。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
事業所数も定員も、都道府県でかなり違います。全国の就労継続支援B型は20,783事業所で、前回の公表から+874事業所でした(WAM NET 2026年3月31日時点)。自分の県の事業所数・定員・平均工賃は都道府県別データで確認できます。
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どれくらい利用者候補がいる?
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