障害者雇用納付金制度と
JEEDの助成金|A型は雇用率に算入、
B型は算入されない
障害者雇用納付金制度は、法定雇用率が未達成の事業主から納付金を集め、達成した事業主に調整金・報奨金を支給する制度です。令和8年度の額は、納付金が不足1人あたり月額50,000円、調整金が超過1人あたり月額29,000円、報奨金が超過1人あたり月額21,000円です。民間企業の法定雇用率は令和8年(2026年)7月から2.7%になり、雇用義務の対象は常用雇用労働者37.5人以上の事業主です。納付金の徴収と調整金の支給は常用労働者100人超、報奨金は100人以下の事業主が対象になります。
A型の利用者は事業所と雇用契約を結びます。納付金制度が対象にするのは雇用契約に基づく労働者です。この2つを合わせると、A型の利用者はA型事業所の常用雇用労働者数にも雇用障害者数にも算入され、雇用契約を結ばないB型の利用者はどちらにも算入されないことになります。一方でJEEDの助成金は扱いが違います。障害者作業施設設置等助成金と障害者福祉施設設置等助成金は、就労継続支援(A型・B型)の事業に本来必要な施設・設備を対象外とし、その利用者を支給対象障害者にできないと明記しています。利用者が使用する部分と明確に区別できる措置に限り、施設職員は対象になります。
目次
障害者雇用納付金制度の骨格
障害者雇用納付金制度は、法定雇用率が未達成の企業から納付金を徴収し、達成した企業に調整金・報奨金を支給する制度です。
柱は3つあります。
- 法定雇用率が未達成の企業(常用労働者100人超)から障害者雇用納付金を徴収する
- その原資で、法定雇用率を達成した企業に障害者雇用調整金を支給する
- 報奨金を支給するほか、作業施設・設備の整備等に一時に多額の費用がかかる事業主に助成金を支給する
根拠法は障害者の雇用の促進等に関する法律と、同法の施行規則です。制度を運営するのは独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)です。申請窓口はJEEDの都道府県支部の高齢・障害者業務課で、東京と大阪は高齢・障害者窓口サービス課が担当します。提出方法は書面の持参・郵送か、e-Gov電子申請サービスのどちらかです。
対象になる「事業主」は、常用雇用労働者を雇用する事業主です。国・地方公共団体と特殊法人等は、この助成金の対象事業主に含まれません。
法定雇用率と対象になる事業主の規模
民間企業の法定雇用率は令和8年7月から2.7%で、雇用義務の対象は常用雇用労働者37.5人以上の事業主です。
引き上げは2段階で行われました。
| 適用時期 | 民間企業の法定雇用率 | 雇用義務の対象になる常用雇用労働者数 |
|---|---|---|
| 令和6年4月から | 2.5% | 40.0人以上 |
| 令和8年7月から(現行) | 2.7% | 37.5人以上 |
2026年8月時点の現行値は2.7%です。すでに引き上げは済んでおり、これから上がる数値ではありません。次回以降の引き上げ予定は、本記事で確認した一次情報には書かれていません。
「37.5人」は端数を含む算定基準の人数です。自社が対象かどうかの判定は、所定の雇用義務数の算出式によります。数えるのは常用「労働者」数ではなく、常用雇用労働者数という規則上の人数です。
納付金と調整金には、これとは別の規模の線が引かれています。納付金の徴収対象は常用労働者100人超、調整金の支給対象は常時雇用労働者100人超の事業主です。報奨金は常時雇用労働者100人以下の事業主が対象です。
納付金・調整金・報奨金の額
令和8年度は、納付金が不足1人あたり月額50,000円、調整金が超過1人あたり月額29,000円です。
額はいずれも1人あたり1か月あたりで定められています。
| 区分(令和8年度) | 対象になる事業主 | 額(1人あたり1か月あたり) |
|---|---|---|
| 障害者雇用納付金 | 法定雇用率が未達成・常用労働者100人超 | 不足1人につき50,000円を徴収 |
| 障害者雇用調整金 | 法定雇用率を超えて雇用・常時雇用労働者100人超 | 超過1人につき29,000円を支給 |
| 報奨金 | 一定数を超えて雇用・常時雇用労働者100人以下 | 超過1人につき21,000円を支給 |
調整金と報奨金には、年間の支給対象人数による減額があります。調整金は年間の支給対象人数が120人月超になると、その超過分が1人あたり月額23,000円に下がります。報奨金は年間の支給対象人数が420人月を超えると、その超過分が1人あたり月額16,000円に下がります。
納付金の申告と、調整金・報奨金の申請は年1回です。前年度分をまとめて申告・申請する年度単位の手続きで、公募回のような締切はありません。具体的な受付期間は本記事では確認していないため、JEEDが公開する令和8年度の申告申請書記入説明書で確認してください。
雇用関係助成金 対象者早見表(B型利用者・A型利用者・職員)
JEEDの助成金を含む雇用関係助成金について、B型の利用者・A型の利用者・職員の対象可否を根拠つきで並べています。
資料を見る →A型の利用者は雇用率に算入され、B型の利用者は算入されない
雇用率の算定に入るかどうかは雇用契約の有無で分かれ、A型の利用者は入り、B型の利用者は入りません。
この線引きは、2つの事実を組み合わせた結論です。
1つ目は、A型とB型の制度上の違いです。A型は「雇用契約有」、B型は「雇用契約無」として区分されています(障害者総合支援法施行規則第6条の10第1号・第2号。JEEDの各パンフレットが引用)。
2つ目は、納付金制度が対象にする人の範囲です。障害者雇用促進法の雇用義務と納付金制度は、雇用契約に基づいて雇われる労働者を対象にしています。
この2つを合わせると、次のようになります。A型の利用者は事業所と雇用契約を結ぶので、A型事業所の常用雇用労働者数にも雇用障害者数にも乗ります。B型の利用者は工賃を受け取る利用契約なので、どちらの人数にも入りません。
| 立場 | 雇用契約 | 常用雇用労働者数 | 雇用障害者数 |
|---|---|---|---|
| B型の利用者 | 結ばない(工賃を受け取る利用契約) | 入らない | 入らない |
| A型の利用者 | 結ぶ(雇用契約に基づく就労) | 入る | 障害者であれば入る |
| 事業所の職員(支援員・サービス管理責任者等) | 結ぶ(通常の雇用契約) | 入る | 障害のある職員は入る |
表の判定はいずれも制度の組み合わせによる帰結です。「B型の利用者は納付金制度の算定対象にならない」と名指しで書いた厚生労働省・JEEDの文書は、本記事の調査では確認できていません。A型の利用者を算入すると明記した文書も、同じく見つかっていません。
ここから、A型を運営する法人には当事者としての立場が生まれます。A型事業所の常用雇用労働者数が100人を超える場合、法定雇用率が未達成なら納付金の納付義務が生じます。達成していれば調整金の受給資格が生じます。これも組み合わせによる帰結で、「A型事業所は納付金制度の対象になる」と直接説明した公式資料は確認できていません。
A型を併設する法人が法定雇用率を数えるときは、確認の順番を先に決めておくことになります。
納付金制度は事業主に課される制度なので、最初に確定させるのは法人としての常用雇用労働者数です。事業所ごとの人数を足し上げる前に、どの範囲を1つの事業主として扱うかを決めることになります。
次に、その人数にA型の利用者を含めます。A型の利用者は雇用契約に基づく労働者なので、常用雇用労働者数にも、障害者である以上は雇用障害者数にも乗ります。雇用契約書と労働時間の記録は、利用者の分と職員の分を分けて保管しておく段取りになります。
B型の利用者はこの人数に入りません。A型とB型を同じ法人で運営しているなら、雇用契約のある人とない人で名簿を分けておくと、数え直しの手間が減ります。
ただしこの数え方は制度の組み合わせから導いたもので、A型事業所を名指しした公式の解説は確認できていません。判断が分かれる規模なら、JEEDの都道府県支部に確認する順番になります。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援A型とB型の違い 雇用契約の有無から生まれる制度上の差
在宅就業障害者特例調整金・特例報奨金
在宅で働く障害者に仕事を発注した企業に支給される制度で、支給先は発注した企業です。
算定は、支払総額を評価額で割った単位数に、1単位あたりの額を掛ける形です。
| 区分(令和8年度) | 1単位あたりの額 | 算定式 |
|---|---|---|
| 在宅就業障害者特例調整金 | 21,000円 | 21,000円 ×(当該年度の在宅就業障害者への支払総額 ÷ 評価額350,000円) |
| 在宅就業障害者特例報奨金 | 17,000円 | 17,000円 ×(支払総額 ÷ 評価額350,000円) |
B型事業所がこの制度に関わる形は、在宅就業支援団体として登録し、企業から仕事の発注を受ける形です。支給を受けるのは発注した企業であって、B型事業所ではありません。在宅就業支援団体の登録要件は本記事では確認していないため、扱いません。
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援B型の在宅利用の要件 在宅でサービスを提供するための条件
JEEDの助成金の一覧と、A型・B型が除外される助成金
JEEDの助成金は7種類あり、施設設置系はA型・B型の利用者を、職場適応援助者系はA型の利用者を除外しています。
まず額を並べます。
| 助成金(令和8年度) | 対象になる措置 | 額・上限 |
|---|---|---|
| 障害者作業施設設置等助成金(第1種) | 買取り等による作業施設・設備の設置整備 | 費用の3分の2。対象障害者1人あたり450万円(作業設備は1人あたり150万円)。同一事業所・同一年度で中高年齢等措置分と合わせて4,500万円まで |
| 障害者作業施設設置等助成金(第2種) | 賃借による作業施設の設置 | 費用の3分の2。対象障害者1人あたり月13万円(作業設備は1人あたり月5万円)。支給期間3年間 |
| 障害者福祉施設設置等助成金 | 保健室・洗面所・休憩室・食堂などの設置整備 | 費用の3分の1。対象障害者1人あたり225万円。同一事業所・同一年度で2,250万円まで |
| 障害者介助等助成金(職場介助者・手話通訳等担当者) | 職場介助者、手話通訳・要約筆記等担当者の配置・委嘱 | 費用の4分の3。配置は1人あたり月15万円、委嘱は1回1万円(1年あたり150万円まで)。最長10年間 |
| 障害者介助等助成金(職場支援員) | 精神障害者・発達障害者等の定着支援を行う職場支援員の配置・委嘱 | 配置は一般労働者で中小企業が月4万円、中小企業以外が月3万円。最大2年間(精神障害者は最大3年間) |
| 職場適応援助者助成金(訪問型) | 訪問型ジョブコーチによる支援活動 | 支援活動1回あたり9,000円または18,000円。1日あたり36,000円まで |
| 職場適応援助者助成金(企業在籍型) | 自社に配置するジョブコーチによる支援 | 月額の支給限度額は、精神障害者以外の一般労働者で中小企業8万円・中小企業以外6万円。最長6か月 |
| 障害者雇用相談援助助成金 | 認定を受けた事業者による雇用の相談援助 | 事業実施分は利用事業主1社あたり1回限りで80万円または60万円 |
| 重度障害者等通勤対策助成金/重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金/障害者能力開発助成金 | 通勤対策、多数雇用事業所の施設設置、能力開発 | 本記事では額を確認していません |
職場適応援助者助成金の訪問型は、支援時間4時間未満(精神障害者は3時間未満)が1回9,000円、それ以上が1回18,000円です。企業在籍型で精神障害者を支援する場合の限度額は、一般労働者で中小企業12万円・中小企業以外9万円に上がります。短時間労働者と特定短時間労働者には、これより低い限度額が別に置かれています。
施設設置系には共通の手続きがあります。支給対象費用が150万円以上1,000万円以下なら3者以上の相見積、1,000万円を超えるなら一般競争入札等が原則です。
A型・B型の事業所が除外される範囲
除外を受けるのは、障害者作業施設設置等助成金と障害者福祉施設設置等助成金です。就労継続支援(A型・B型)の事業を行う事業所からの申請では、その事業に本来必要な施設・設備の整備が支給対象外になります。あわせて、その事業の利用者を支給対象障害者として申請することもできないと定めています。
一方で例外も明記されています。利用者が使用する部分と明確に区別できる措置に限り、施設職員は対象になります。対象になるのは障害のある職員個人のための措置で、サービス提供に本来必要な設備そのものは対象外です。
B型を名指しで除外した一次情報として本記事で確認できたのは、この2つの助成金だけです。他の助成金でB型の利用者が対象外になる理由は、雇用契約がないという制度の性格からの帰結です。
A型の利用者については、複数の助成金に名指しの除外規定があります。
| 助成金 | A型の利用者の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 職場適応援助者助成金(訪問型・企業在籍型) | 支援対象障害者にできない | パンフレットに明記 |
| 障害者雇用相談援助助成金 | 対象障害者にならない | パンフレットに明記 |
| 障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金 | 支給対象障害者として申請できない | パンフレットに明記 |
B型事業所が支援する側に回る道もあります。訪問型職場適応援助者助成金の実施主体は「認定法人」で、社会福祉法人が代表例として挙げられています。ただし認定法人には就労支援の実績要件があり、B型の指定だけでは満たせません。求められるのは次のいずれかです。
- 障害者就業・生活支援センター・就労移行支援・就労定着支援のいずれかの指定を受けていること
- 過去1〜2年で就職者または職場実習の受入れが3件以上あること
同一法人でこれらを併設していれば、要件を満たす余地があります。
申請の時期にも決まりがあります。JEEDの助成金は通年受付で、公募回のような締切はありません。ただし認定申請は、措置の実施・配置・委嘱・工事の着手より前が原則です。職場支援員なら、配置や契約開始の予定日の1か月前の応当日までに認定申請を出します。事後に遡って申請することは原則できません。
不正受給には重い措置が置かれています。受給資格の不認定・取消しに加えて、返還額に年率3%の延滞金と2割相当の割増金が加わります。事業主名等の公表と、5年間の新規申請不可も定められています。
なお、これらの助成金の申請書の作成・提出を報酬を得て代行できるのは社会保険労務士だけです(社会保険労務士法第2条第1項・第27条)。
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか B型が使える補助金・助成金の全体像
- 障害者雇用納付金(令和8年度)
- 法定雇用率が未達成で常用労働者100人超の事業主から、不足1人あたり1か月あたり50,000円を徴収
- 障害者雇用調整金(令和8年度)
- 常時雇用労働者100人超の事業主に、超過1人あたり1か月あたり29,000円を支給。年間の支給対象人数が120人月を超えた分は1人あたり月額23,000円に減額
- 報奨金(令和8年度)
- 常時雇用労働者100人以下の事業主に、超過1人あたり1か月あたり21,000円を支給。年間420人月を超えた分は1人あたり月額16,000円に減額
- 法定雇用率(現行)
- 民間企業2.7%。令和8年(2026年)7月から適用。雇用義務の対象は常用雇用労働者37.5人以上の事業主
- A型・B型の利用者の扱い
- A型の利用者は雇用契約があるため雇用率の算定に算入。B型の利用者は雇用契約がないため算入されない(いずれも制度の組み合わせによる帰結)
- JEED助成金の除外
- 障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金は、A型・B型の事業に本来必要な施設・設備とその利用者を対象外と明記
よくある質問
自分の地域には、
どれくらい利用者候補がいる?
所在地をもとに、周辺人口・障害福祉事業所数・紹介元になる相談支援事業所の数などを簡易集計します。これから開設する方には出せる場所と参入余地を、すでに運営している方には商圏内の競合と紹介元の分布を、目的にあわせて整理します。
その場でダウンロードできる資料ではありません。いただいた内容をもとに1件ずつ作成し、2〜3営業日以内にメールでお送りします。
