就労継続支援A型が
利用者の雇用で使える助成金
制度ごとに分かれる対象可否
就労継続支援A型の利用者は、障害者総合支援法施行規則第6条の10第1号で「雇用契約有」と区分される労働者です。雇用保険の被保険者になりうるので、雇用関係助成金の入口要件を満たせます。ただし対象になるかどうかは制度ごとに分かれます。
令和8年度の時点で、特定求職者雇用開発助成金はA型事業所が自らの利用者を雇い入れる場合も対象になりえます。ただし過去に同コースで雇い入れたA型利用者の離職割合が25%を超えていると不支給です。逆に、要領・パンフレット・Q&Aで名指しの除外を置いている制度もあります。トライアル雇用助成金と、キャリアアップ助成金の正社員化系2コースです。人材開発支援助成金の人材育成支援コース、JEEDの職場適応援助者助成金なども同じ扱いです。
- A型の利用者の位置づけ
- 障害者総合支援法施行規則第6条の10第1号で「雇用契約有」と区分される労働者。雇用保険の被保険者になりうる
- 特定求職者雇用開発助成金(令和8年度)
- A型事業所が自らの利用者として雇い入れる場合も対象になりうる。重度障害者等・フルタイム・中小企業なら1人あたり40万円を6か月ごとに6回で支給総額240万円(助成対象期間3年間)。過去の対象者の離職割合が25%超なら不支給
- 名指しで除外されている制度
- トライアル雇用助成金(障害者トライアル・障害者短時間トライアル)、キャリアアップ助成金の正社員化コースと障害者正社員化コース、人材開発支援助成金の人材育成支援コース、JEEDの職場適応援助者助成金・障害者雇用相談援助助成金・作業施設設置等助成金
- 断定できない制度
- キャリアアップ助成金の賃金規定等改定・賃金規定等共通化・賞与退職金制度導入の3コース。パンフレットにA型の利用者を除く文言は見当たらないが、支給要領本文は未確認
- 納付金制度への算入
- A型の利用者は雇用契約があるため、1事業所あたりの常用雇用労働者数と雇用障害者数の両方に算入される(要件の組み合わせによる帰結)。民間企業の法定雇用率は令和8年7月から2.7%
- 申請の代行
- 雇用保険二事業の助成金とJEEDの納付金制度に基づく助成金は、報酬を得て申請書の作成・提出代行を業として行えるのが社会保険労務士に限られる
目次
A型の利用者は労働者なので雇用関係助成金の土俵に乗る
A型の利用者は雇用契約に基づく労働者なので、雇用保険の被保険者になりえます。雇用関係助成金の入口要件は、ここで満たせます。
就労継続支援A型とB型は、雇用契約の有無で区分されています。A型は「雇用契約有」、B型は「雇用契約無」です(障害者総合支援法施行規則第6条の10第1号・第2号)。雇用保険の被保険者は、適用事業に雇用される労働者です(雇用保険法第4条第1項)。この2つを合わせると、A型の利用者は雇用保険の被保険者になりうる、という結論になります。B型の利用者は雇用契約を結ばないため、この入口で外れます。
ただし入口を通ることと、実際に対象になることは別です。雇用関係助成金の多くは、支給要領やパンフレットの中で「就労継続支援A型の事業所における利用者」を名指しし、対象から外しています。名指しの除外が見当たらない制度もありますが、それは対象になるという意味ではありません。
| 制度(令和8年度) | A型の利用者の扱い | 根拠の強さ |
|---|---|---|
| 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) | 条件つきで対象になりうる | 支給要領に特則あり |
| トライアル雇用助成金(障害者トライアル・障害者短時間トライアル) | 対象外 | 支給要領に明記 |
| キャリアアップ助成金 正社員化コース・障害者正社員化コース | 対象外 | 対象労働者の要件に明記 |
| キャリアアップ助成金 賃金規定等改定・共通化・賞与退職金制度導入 | 断定できない | パンフレットに除外の文言なし。支給要領本文は未確認 |
| 人材開発支援助成金 人材育成支援コース | 対象外 | 厚生労働省のQ&Aに明記 |
| 人材開発支援助成金 事業展開等リスキリング支援コース | 断定できない | コース固有の明記を確認できず |
| JEEDの職場適応援助者助成金・障害者雇用相談援助助成金・作業施設設置等助成金 | 対象外 | 各パンフレットに明記 |
特定求職者雇用開発助成金
A型事業所が自らの利用者を雇い入れる場合も対象になりえますが、離職率に関する特則が付きます。
この助成金は、ハローワーク等の紹介で就職困難者を雇い入れた事業主に支給されます。求人サイトからの直接応募は対象になりません。A型事業所が対象労働者を自らの利用者として雇い入れる場合について、支給要領は特則を置いています。過去に同コースの対象となったA型の利用者のうち、基準期間内に確認日が来る人が5人以上いる場合が前提です。その人たちの離職割合が25%を超えていると不支給になります。裏を返すと、離職割合が25%以下なら支給対象になる制度設計です。確認日は雇入れ日から1年後と、助成対象期間の終了後1年の2つが置かれています。
A型に固有の期間がもう1つあります。関係事業主が雇い入れる場合の除外期間は通常1年前までですが、A型の利用者として雇い入れる場合は3年前までさかのぼります。
| 対象労働者の区分(中小企業・令和8年度) | 1期あたりの額 | 支給回数 | 支給総額 | 助成対象期間 |
|---|---|---|---|---|
| 重度障害者等(重度または45歳以上の身体・知的障害者と、年齢を問わず精神障害者)・フルタイム | 40万円 | 6回 | 240万円 | 3年間 |
| 重度でも45歳以上でもない身体・知的障害者・フルタイム | 30万円 | 4回 | 120万円 | 2年間 |
| 身体・知的・精神障害者・短時間労働者 | 20万円 | 4回 | 80万円 | 2年間 |
額はいずれも1人あたりです。支給対象期は雇入れの起算日から6か月ごとに区切られ、その期ごとに申請します。短時間労働者は、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の人を指します。
A型で利用者を雇い入れながらこの助成金を使うなら、離職の記録を採用のときから残しておく順番になります。
離職割合の判定に入るのは、過去にこのコースの対象になったA型の利用者です。誰がいつ対象になり、確認日がいつ来るのかを名簿の形で持っておくことになります。
離職の理由も分けて記録しておきます。支給対象期の途中で対象労働者が離職すると、その期は原則として支給されません。ただし本人都合の退職や重責解雇などは除外して扱われます。
雇入れの入り口も先に決めます。ハローワーク等の紹介であることが要件なので、募集をハローワークに出すところから始めることになります。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
雇用関係助成金 対象者早見表(B型利用者・A型利用者・職員)
制度ごとに、A型の利用者が対象になるかどうかを、要領の明記か帰結かの別つきで1枚にまとめています。
資料を見る →トライアル雇用助成金
A型事業所が対象者を利用者として雇い入れる場合は、対象事業主そのものから除外されます。
除外は2か所に置かれています。1つは「継続雇用する労働者」の定義で、括弧書きで就労継続支援A型事業所の利用者を除いています。もう1つは対象事業主の要件です。A型での就労は一般雇用と区別して考えることとされているため、A型事業所は対象事業主にならないと書かれています。
ただし括弧書きで例外が示されています。対象者を当該事業所の職員等、利用者以外の者として雇い入れる場合は除外の対象外です。支援員として採用するなら、通常どおり対象になりえます。
| コース(令和8年度) | 対象者 | 支給額(1人あたり月額) | 試行期間 |
|---|---|---|---|
| 障害者トライアルコース | 精神障害者 | 最初の3か月は最大8万円、その後の3か月は最大4万円 | 原則3か月、精神障害者は最長6か月 |
| 障害者トライアルコース | 精神障害者以外 | 最大4万円 | 原則3か月 |
| 障害者短時間トライアルコース | 精神障害者・発達障害者 | 最大4万円 | 3か月以上12か月以内 |
支給額は実労働日数の割合で減額されます。予定就労日数に対する実就労日数の割合が75%以上なら満額で、それを下回ると段階的に下がります。短時間トライアルコースは、週の所定労働時間10時間以上20時間未満で始め、期間中に20時間以上を目指す制度です。
キャリアアップ助成金
正社員化コースと障害者正社員化コースは、対象労働者の要件でA型の利用者を除いています。
正社員化コースの対象労働者要件は「就労継続支援A型の事業所における利用者以外の者であること」です。障害者正社員化コースも「就労継続支援A型事業における利用者でないこと」と書いています。障害者正社員化コースの申請様式には、対象労働者がA型の利用者に該当するかどうかの確認欄まで置かれています。
残る3コースの扱いは断定できません。賃金規定等改定コース・賃金規定等共通化コース・賞与退職金制度導入コースは、パンフレットの対象労働者要件に同じ除外の文言が見当たりません。ただし確認できたのはパンフレットまでで、支給要領本文は確認していません。除外の文言が無いことは、対象になる証明ではありません。使うかどうかを決める前に、労働局に確認する順番になります。
職員を正社員化する場合は、障害者正社員化コースが使えます。重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者を有期雇用から正規雇用に転換した場合、中小企業で1人あたり支給総額120万円です。60万円を2期に分けて受け取ります。実施日の前日までにキャリアアップ計画を提出しておくことが共通の要件です。
人材開発支援助成金
人材育成支援コースは、A型の利用者を対象外とすることを厚生労働省のQ&Aで明記しています。
Q&AのQ29は、A型に雇用される者を2種類に分けています。1つは利用者で、就労の機会の提供を受け、一般就労のための知識・能力の向上のために支援を受ける障害者です。もう1つは支援を行う者で、管理者・サービス管理責任者・職業指導員・生活支援員が挙げられています。利用者が対象外になる理由は、雇用契約の有無ではありません。一般就労への移行に向けた訓練を受けることが前提とされているから、と書かれています。
支援を行う者は、支給要件を満たせば対象になります。A型には運用上の条件が1つ付きます。サービス提供時間内にOFF-JTを行う場合は、訓練対象者を除く支援員が指定基準上の人員配置を満たしていることが必要です。
事業展開等リスキリング支援コースについては、A型を名指しした記述を確認できていません。人材育成支援コースのQ29に相当するQ&Aが見当たらないため、このコースの扱いは断定できません。
JEEDの障害者雇用納付金制度に基づく助成金
JEEDの助成金は、複数のパンフレットでA型の利用者を支援対象障害者から外しています。
| 助成金(令和8年度) | A型の利用者に関する記述 |
|---|---|
| 職場適応援助者助成金(訪問型・企業在籍型) | 支援対象障害者とすることができない要件に、A型の事業を実施する事業所の利用者を明記 |
| 障害者雇用相談援助助成金 | 「対象障害者とならない方」に、A型事業所に雇用される対象障害者を明記 |
| 障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金 | A型・B型の事業に本来必要な施設・設備は対象外。当該事業の利用者は支給対象障害者として申請できないと明記 |
作業施設設置等助成金と福祉施設設置等助成金には、例外が1つ書かれています。利用者と明確に区別できる措置に限り、施設職員は対象になります。障害のある職員のために、利用者が使う部分と分けられる保健室や休憩室を整備する場合が当たります。
納付金制度への算入と、申請を誰がやるか
A型の利用者は、A型事業所の常用雇用労働者数と雇用障害者数の両方に算入されます。
これは要件の組み合わせによる帰結です。A型は施行規則で「雇用契約有」と区分されています。雇用契約に基づく労働者は、障害者雇用促進法の雇用率制度と納付金制度でいう労働者に当たります。この2つを合わせると、A型事業所は自らの利用者を雇用障害者として数えることになります。A型の利用者を算入から外す規定は、今回参照した一次情報には見当たりませんでした。
民間企業の法定雇用率は、令和8年7月から2.7%です。雇用率制度の対象になるのは、常用雇用労働者37.5人以上の事業主です。納付金・調整金・報奨金の額そのものは別の記事で扱います。
申請を誰がやるかも、先に決めておくことになります。雇用保険二事業の助成金とJEEDの納付金制度に基づく助成金は、報酬を得て申請書の作成・提出代行を業として行えるのが、社会保険労務士に限られています(社会保険労務士法第2条第1項・第27条)。事業所が自分で作成して申請すること自体は制限されていません。
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援A型とB型の違い 雇用契約の有無による制度の分かれ方
よくある質問
自分の地域には、
どれくらい利用者候補がいる?
所在地をもとに、周辺人口・障害福祉事業所数・紹介元になる相談支援事業所の数などを簡易集計します。これから開設する方には出せる場所と参入余地を、すでに運営している方には商圏内の競合と紹介元の分布を、目的にあわせて整理します。
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