障害者を1人雇うと
助成金は月いくらか
特開金・トライアル・キャリアアップ
令和8年度の時点で、障害者を1人雇ったときの助成金は、月額で決まるものと総額で決まるものに分かれます。特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は総額で決まります。中小企業がフルタイムで重度障害者等を雇う場合、支給総額は1人あたり240万円です。助成対象期間の36か月で割ると、1か月あたり約66,667円になります。ただしこれは計算上の目安です。実際は6か月ごとの支給対象期に40万円ずつ、6回に分けて後払いされます。
障害者トライアル雇用助成金は、はじめから月額で決まっています。精神障害者なら最初の3か月が1人あたり月額最大8万円、その後の3か月が月額最大4万円です。キャリアアップ助成金の障害者正社員化コースは月額ではありません。有期から正規への転換1件あたりの額で、中小企業なら1人あたり120万円です(重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者の場合)。3制度とも後払いです。ただし最初の支給申請ができる時期は制度で分かれます。特開金とキャリアアップ助成金は、雇入れや転換から6か月が過ぎた後です。障害者トライアル雇用助成金は試行期間が原則3か月で、その終了日の翌日から申請できます。
- 特開金(中小企業・フルタイム・重度障害者等)
- 支給総額は1人あたり240万円。6か月ごとの支給対象期に40万円を6回。助成対象期間3年。36か月で割ると1か月あたり約66,667円(計算上の目安)
- 特開金(大企業・フルタイム・重度障害者等)
- 支給総額は1人あたり100万円。3回に分けて支給。助成対象期間1年6か月。18か月で割ると1か月あたり約55,556円(計算上の目安)
- 障害者トライアル雇用助成金
- 1人あたり月額最大4万円。精神障害者は最初の3か月が月額最大8万円、その後の3か月が月額最大4万円。試行期間は原則3か月、精神障害者は最長6か月
- キャリアアップ助成金 障害者正社員化コース
- 月額ではなく転換1件あたりの額。中小企業で有期から正規なら1人あたり120万円(重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者)。支給対象期間1年を2期に分けて支給
- 入金の時期
- 3制度とも後払い。最初の支給申請は、特開金とキャリアアップ助成金が雇入れや転換から6か月経過後、トライアル雇用助成金は原則3か月の試行期間の終了後。期限はいずれも末日等の翌日から2か月以内
- 対象にならない人
- B型の利用者は雇用契約を結ばないため3制度とも対象外。A型の利用者は制度ごとに扱いが分かれる
目次
月額に直すときの前提
3制度は額の決め方が違うので、月額に直す前に総額・支給期間・対象になる人を分けて確認します。
障害者を1人雇ったときに使える代表的な助成金は3つあります。金額の決まり方は制度ごとに違います。
| 制度(令和8年度) | 額の決まり方 | 月額に直せるか |
|---|---|---|
| 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) | 支給総額が決まっていて、6か月ごとの支給対象期に分けて支給 | 総額を助成対象期間の月数で割れば計算できる |
| 障害者トライアル雇用助成金 | はじめから1人あたりの月額 | 直す必要がない |
| キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース) | 転換1件あたりの額 | 月額の性質を持たない |
月額に直せるのは、支給総額と助成対象期間の両方が決まっている制度だけです。次に、雇う相手が対象になるかを確かめます。同じ1人を雇う場合でも、次の3者で判定が分かれます。
| 雇う相手 | 特開金 | トライアル雇用助成金 | キャリアアップ助成金(正社員化系2コース) |
|---|---|---|---|
| B型の利用者 | 対象外 | 対象外 | 対象外 |
| A型の利用者 | 条件つきで対象になりうる | A型利用者としての雇入れは対象外 | 対象外 |
| 事業所の職員(支援員・サビ管など) | 対象になりうる | 対象になりうる | 対象になりうる |
B型の利用者が対象外になるのは、名指しの規定があるからではありません。特開金は、雇用保険の一般被保険者等として雇い入れることを支給要件にしています。トライアル雇用助成金の「継続雇用する労働者」も、一般被保険者等となる者と定義されています。B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばず、雇用保険の被保険者になりません。この2つを合わせると、どちらの制度も入口の要件を満たせないという結論になります。
A型の利用者については、名指しの規定があります。トライアル雇用助成金は、A型事業所が対象者をA型利用者として雇い入れる場合を、対象事業主から除外しています。キャリアアップ助成金の正社員化コースと障害者正社員化コースも、対象労働者の要件でA型事業所の利用者を除いています。特開金だけは扱いが逆です。A型事業所が自らの利用者を雇い入れる場合も、対象になりえます。ただし離職割合の特則があります。過去にこのコースの対象になったA型利用者のうち、基準期間内に確認日が来る者が5人以上いて、離職割合が25%を超えていると不支給になります。
特定求職者雇用開発助成金の区分ごとの月額
中小企業がフルタイムで重度障害者等を雇うと、支給総額240万円を36か月で割って1か月あたり約66,667円です。
特開金の支給額は、対象者の区分と企業規模と労働時間の3つで決まります。令和8年度の障害者区分の額は次のとおりです。
| 対象者の区分(令和8年度) | 企業規模 | 1期あたり | 支給回数 | 支給総額(1人あたり) | 助成対象期間 | 総額÷月数(参考値) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 身体障害者・知的障害者(重度以外)/フルタイム | 中小企業 | 30万円 | 4回 | 120万円 | 2年間 | 1か月あたり50,000円 |
| 同上 | 大企業 | 25万円 | 2回 | 50万円 | 1年間 | 1か月あたり約41,667円 |
| 重度障害者等(精神障害者を含む)/フルタイム | 中小企業 | 40万円 | 6回 | 240万円 | 3年間 | 1か月あたり約66,667円 |
| 同上 | 大企業 | 33万円・33万円・34万円 | 3回 | 100万円 | 1年6か月間 | 1か月あたり約55,556円 |
| 身体障害者・知的障害者・精神障害者/短時間 | 中小企業 | 20万円 | 4回 | 80万円 | 2年間 | 1か月あたり約33,333円 |
| 同上 | 大企業 | 15万円 | 2回 | 30万円 | 1年間 | 1か月あたり25,000円 |
短時間労働者は、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の人を指します。重度障害者等の区分には、精神障害者が年齢を問わず全員含まれます。45歳以上という年齢区分が付くのは身体障害者と知的障害者で、精神障害者にこの区分はありません。
表の「総額÷月数」は、この記事で総額を単純に割った参考値です。毎月この額が入るわけではありません。支給は6か月ごとの「支給対象期」を単位に、まとめて行われます。支給対象期は、雇入れ日を起算日として6か月ごとに第1期・第2期と区切ります。賃金締切日がある場合は、直後の締切日の翌日が起算日になります。
雇用関係助成金 対象者早見表(B型利用者・A型利用者・職員)
月額に直す前の支給総額と支給期間、対象になる人の範囲を制度ごとに1枚にまとめています。
資料を見る →障害者トライアル雇用助成金はもともと月額で決まっている
トライアル雇用助成金は月額で決まっていて、精神障害者は最初の3か月が1人あたり月額最大8万円です。
この制度は、総額から月額を計算する必要がありません。支給額そのものが1人あたりの月額として決められています。
| コース(令和8年度) | 対象者 | 支給額(1人あたり・月額) | 試行期間 |
|---|---|---|---|
| 障害者トライアルコース | 精神障害者 | 最初の3か月間は最大8万円、その後の3か月間は最大4万円 | 原則3か月。精神障害者は最長6か月まで延長可 |
| 障害者トライアルコース | 精神障害者以外の障害者 | 最大4万円 | 原則3か月 |
| 障害者短時間トライアルコース | 精神障害者、または精神障害者を除く発達障害者 | 最大4万円 | 3か月以上12か月以内 |
短時間トライアルコースは、雇入れ時の週所定労働時間が10時間以上20時間未満で始めます。試行期間中に20時間以上を目指す制度です。特開金の「短時間労働者」とは時間の範囲が違うので、混同しないよう注意します。
表の額はいずれも「最大」であって、固定額ではありません。実就労日数を予定就労日数で割った割合に応じて、次のとおり減額されます。
- 割合が75%以上のとき、満額
- 75%未満50%以上のとき、満額の4分の3に相当する額
- 50%未満25%以上のとき、満額の2分の1に相当する額
- 25%未満0%超のとき、満額の4分の1に相当する額
- 0%のとき、不支給
キャリアアップ助成金は月額ではなく一時金
キャリアアップ助成金は転換1件あたりの額で決まり、月ごとに入る性質の助成金ではありません。
障害者正社員化コースは、障害のある有期雇用労働者等を正規雇用等に転換した事業主に支給されます。令和8年度の額は次のとおりです。
| 障害の区分(令和8年度) | 転換のパターン | 中小企業(1人あたり総額) | 大企業(1人あたり総額) |
|---|---|---|---|
| 重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者 | 有期から正規 | 120万円(60万円×2期) | 90万円(45万円×2期) |
| 同上 | 有期から無期 | 60万円(30万円×2期) | 45万円(22.5万円×2期) |
| 同上 | 無期から正規 | 60万円(30万円×2期) | 45万円(22.5万円×2期) |
| 重度以外の身体障害者・知的障害者、発達障害者、難病患者、高次脳機能障害者 | 有期から正規 | 90万円(45万円×2期) | 67.5万円(第1期33.5万円・第2期34万円) |
| 同上 | 有期から無期 | 45万円(22.5万円×2期) | 33万円(16.5万円×2期) |
| 同上 | 無期から正規 | 45万円(22.5万円×2期) | 33万円(16.5万円×2期) |
支給対象期間は1年で、第1期6か月と第2期6か月の2期に分けて支給されます。総額を12か月で割れば月額の形にはなりますが、支払いは2回で終わります。特開金のように何年も続く制度ではありません。支給額が各支給対象期の賃金総額を超える場合は、賃金総額が上限になります。
障害のない職員を正社員化する場合は、正社員化コースが別にあります。中小企業で有期から正規に転換する額は、重点支援対象者に該当すれば80万円です。該当しない場合は40万円で、こちらは第1期のみの支給になります。
支給申請から入金までの時期
3制度とも後払いで、最初の支給申請はトライアル雇用助成金が原則3か月後、特開金とキャリアアップ助成金は6か月後です。
| 制度 | 支給申請のタイミング | 申請の期限 |
|---|---|---|
| 特定求職者雇用開発助成金 | 6か月ごとの支給対象期が終わるたび | 支給対象期の末日の翌日から2か月以内 |
| 障害者トライアル雇用助成金 | トライアル雇用の終了後 | 終了日の翌日から2か月以内。精神障害者で6か月を超える場合は6か月経過日を起算日にできる |
| キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース) | 転換後6か月分の賃金を支払った後 | 賃金を支給した日の翌日から2か月以内。第2期はその6か月後 |
待ち時間が短いのはトライアル雇用助成金です。試行期間が原則3か月で終わるので、申請できる時期も他の2制度より早くなります。
申請してから支給決定と入金までにどれだけかかるかは、今回確認した一次情報に示されていません。入金の時期まで約束された制度ではない、という前提で見ておくことになります。
事前の手続にも制度差があります。特開金とトライアル雇用助成金は、ハローワーク等の紹介による雇入れが要件です。紹介より前に選考を始めていると対象外になります。キャリアアップ助成金は、転換を実施する日の前日までにキャリアアップ計画を提出しておく必要があります。
なお、3制度はいずれも雇用保険法に基づく雇用関係助成金です。申請書の作成や提出の代行を報酬を得て業として行えるのは、社会保険労務士に限られます。
月額に直した数字は、採用の可否を決める材料ではなく、採用後の見通しを立てる材料として置くことになります。
順番としては、まず求人の出し方を決めます。特開金とトライアル雇用助成金はハローワーク等の紹介が入口です。先に求人サイトで選考を始めてしまうと、金額の話に入る前に対象から外れます。
次に、入金の時期を資金繰り表に落とします。最初の申請ができるのは、トライアル雇用助成金なら原則3か月の試行期間が終わった後です。特開金とキャリアアップ助成金は6か月が過ぎた後になります。そこから支給決定を待つことになります。人件費のほうは雇入れの月から出ていきます。特開金を軸に組むなら、少なくとも半年分は助成金なしで回す前提になります。
月額に直した数字を人件費の値引きとして先に見込むと、この入金までのずれが表に乗りません。採用計画では、月額換算の数字と入金予定の数字を別の行に置くほうが安全です。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
減額・不支給になる条件
月額に直した額はあくまで上限で、勤務実績が基準を下回ると支給対象期ごとに減額されます。
| 制度 | 減額・不支給になる場面 |
|---|---|
| 特定求職者雇用開発助成金 | 支給対象期の実労働時間が基準を下回ると減額。フルタイムは週30時間の8割、短時間は週20時間の8割が基準 |
| 特定求職者雇用開発助成金 | 対象労働者が支給対象期の途中で離職すると、原則としてその期は不支給 |
| 障害者トライアル雇用助成金 | 実就労日数の割合が75%未満だと段階的に減額。0%なら不支給 |
| キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース) | 第1期の支給申請で不支給になると、第2期は申請できない |
A型事業所が自らの利用者を特開金で雇い入れる場合は、条件がもう一つ増えます。過去にこのコースの対象になったA型利用者のうち、基準期間内に確認日が来る者が5人以上いて、その離職割合が25%を超えていると不支給になります。
不正受給が分かったときの扱いも重く定められています。特開金は、支給決定の取消と既支給分の全額返還に加えて、取消日から5年間は各種助成金を受給できません。キャリアアップ助成金は、返還額に年3%の延滞金と、返還額の20%の違約金が請求されます。申請書類の写しは、どちらの制度も支給決定から5年間の保存が必要です。
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