障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業
補助率3/4、都道府県で変わるのは
締切だけではない
障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業は、国の実施要綱にもとづいて都道府県・指定都市・中核市が実施する補助事業です。補助率は全区分共通で3/4、事業者の自己負担は原則1/4です(内訳は国1/2・都道府県1/4)。介護ロボット等の導入の基準額は、1施設・1事業所あたりで決まります。令和8年度は障害者支援施設210万円、共同生活援助事業所150万円、その他の事業所120万円です。就労継続支援B型・A型は「その他の事業所」に入ります。ICTの導入支援は1施設・1事業所あたり100万円、パッケージ型の導入支援は1施設・1事業所あたり1,000万円です。
機器1台あたりの上限は使う場面で分かれます。移乗介護と入浴支援に使う機器は1台100万円、移動支援・排泄支援・見守り・コミュニケーション・機能訓練支援・栄養管理支援に使う機器は1台30万円です。補助対象経費は購入が原則で、リース・レンタルは導入年度末までの料金が限度です。交付決定(内示)の前に購入した機器は対象になりません。募集と締切は都道府県等ごとに違い、令和8年度は愛知県が5月29日正午、広島県が5月20日17時15分でした。ここに挙げた基準額は愛知県と広島県の数値の一致から国の補助基準額として扱っているもので、全47都道府県で同額とは限りません(2026年8月23日時点)。
- 補助率(令和8年度)
- 全区分共通で3/4。事業者の自己負担は原則1/4(財源の内訳は国1/2・都道府県1/4)
- 1施設・1事業所あたりの基準額(介護ロボット等・令和8年度)
- 障害者支援施設210万円、共同生活援助事業所150万円、その他の事業所120万円。就労継続支援B型・A型は「その他の事業所」に入る
- 1施設・1事業所あたりの基準額(ICT・パッケージ型・令和8年度)
- ICTの導入支援は100万円、パッケージ型の導入支援は1,000万円
- 機器1台あたりの上限(令和8年度)
- 移乗介護・入浴支援に使う機器は1台100万円。移動支援・排泄支援・見守り・コミュニケーション・機能訓練支援・栄養管理支援に使う機器は1台30万円。パッケージ型ではこの1台あたりの上限は適用されない
- 対象経費の考え方
- 購入が原則。リース・レンタルは導入年度末までの料金が限度。交付決定(内示)前に購入した機器は対象外。対象経費の算定には2者以上の見積が必要
- 申請先
- 都道府県、指定都市及び中核市。国に直接申請する制度ではない
- 令和8年度の締切の例
- 愛知県は令和8年5月29日(金)正午、広島県は令和8年5月20日(水)17時15分。埼玉県は対象の全施設あてメールで募集を案内
目次
国の実施要綱と、実施するのは都道府県という構造
補助率と基準額は国の実施要綱で決まり、実際に募集して事業所に交付するのは都道府県等です。
事業の目的は、障害福祉現場の職員の介護業務の負担軽減と労働環境の改善です。実施要綱の1に、働きやすい職場環境の整備を推進するために介護ロボットやICTの導入経費を支援すると書かれています。実施要綱は令和7年12月16日から適用されています(障発0115第3号・令和8年1月15日付)。
実施主体は都道府県、指定都市及び中核市です。要綱ではこれを「都道府県等」と総称しています。資金の流れは国から都道府県等を経て事業者に届く形です。実施要綱の6は、事業に要する費用の一部を国が補助すると定めています。事業者が国に直接申請する制度ではありません。申請先は必ず都道府県等になります。
事業は3つの区分で構成されています。
- 介護ロボット等の導入支援事業
- ICTの導入支援事業(ICT機器等の導入支援と、AIカメラ等の導入支援)
- 介護テクノロジーのパッケージ型導入支援事業(複数機器の組み合わせと、見守り機器導入に伴う通信環境整備)
申請様式も区分ごとに分かれています。介護ロボット等が様式1、ICTが様式2、パッケージ型が様式3です。申請先と申請方法は都道府県ごとに個別に定められます。愛知県は様式の提出、広島県は電子申請システムのe-tumoを使う運用でした。
この事業は過去に「障害福祉分野のロボット等導入支援事業」「障害福祉分野のICT導入モデル事業」という名前で行われていました。令和7年度補正で現在の名称に整理・統合されています。県のページが古い名前のままになっていることもあります。
補助率と1事業所あたりの基準額
補助率は全区分共通の3/4で、基準額は1施設・1事業所あたりの上限として区分ごとに決まります。
交付額は、基準額と対象経費の実支出額を比べて少ない方に3/4を掛けて計算します。実支出額は寄付金等を控除した後の額です。1,000円未満は切り捨てになります。
補助率の内訳は国1/2・都道府県1/4・事業所1/4です。広島県の案内ページにこの内訳が明記されています。国と県の割合は財源の負担割合なので、申請の場面で見る数字は自己負担1/4のほうです。
基準額は1施設・1事業所あたりの上限で、事業所の種別によって額が変わります。
| 事業区分 | 対象となる施設・事業所 | 1施設・1事業所あたりの基準額(令和8年度) |
|---|---|---|
| 介護ロボット等の導入支援 | 障害者支援施設 | 210万円 |
| 介護ロボット等の導入支援 | 共同生活援助事業所(グループホーム) | 150万円 |
| 介護ロボット等の導入支援 | その他の事業所 | 120万円 |
| ICTの導入支援 | 施設・事業所 | 100万円 |
| パッケージ型の導入支援 | 施設・事業所 | 1,000万円 |
**就労継続支援B型・A型は「その他の事業所」**に入ります。生活介護や相談支援事業所も同じ区分です。この120万円は1事業所あたりの合計上限なので、複数台を導入しても合計でこの額を超えません。対象経費が120万円なら、交付額は90万円で自己負担は30万円になります。
ICTの導入支援は介護ロボット等とは別の区分です。基準額は1施設・1事業所あたり100万円です。
ここに挙げた基準額は、愛知県の交付要綱の数値と広島県の案内ページの数値が一致していることから、国の補助基準額として扱っているものです。全47都道府県で同額とは限りません。都道府県が独自に上乗せや減額をしているかどうかまでは確認できていません。申請の前に自分の県の交付要綱で額を確かめてください。
対象になる機器と1台あたりの上限
介護ロボット等の機器1台あたりの上限は、移乗介護と入浴支援が100万円、それ以外の場面は30万円です。
実施要綱は、介護ロボット等を使う場面を7つ挙げています。この場面によって、1台あたりの上限が2段階に分かれます。
| 機器を使う場面 | 機器1台あたりの上限(令和8年度) |
|---|---|
| 移乗介護/入浴支援 | 100万円 |
| 移動支援/排泄支援/見守り・コミュニケーション/機能訓練支援/栄養管理支援 | 30万円 |
1台の数え方も決まっています。分割できる部品からなる機器は、最低限の機能を持つひとまとまりを1台と数えます。機器のメンテナンス費と通信費は対象外です。
機器そのものの要件もあります。ロボット技術を使い、従来の機器にはない優位性を発揮することが求められます。販売価格が公表され、一般に購入できることも要件です。さらに、PSE認証やSマーク等の安全性認証を取得していること、メーカー等によるフォローアップ体制があること、サービス利用者への説明と同意を得て導入することの3つが導入の条件になります。
ICTの導入支援では、実施要綱が対象経費を例示しています。タブレット端末やスマートフォン等の情報端末、インカム、記録業務・情報共有業務・請求業務を一気通貫で行える業務支援ソフトウェアが入ります。勤怠管理やシフト表作成などバックオフィス業務のソフトウェア、Wi-Fiルーター等の通信環境機器、クラウドサービスや保守サポート費も対象です。
支払い方にも条件があります。補助対象経費は備品購入費・使用料及び賃借料・役務費(初期設定費用)で、購入が原則、リース料は年度末までが限度です。ソフトウェアの複数年ライセンスを購入しても、補助対象は当該年度分だけです。既存機器・システムの改修費と、事業所の自社開発費用は対象外になります。
パッケージ型を選ぶ場合は、機器1台あたりの上限が適用されません。介護ロボット等とICTを組み合わせ、単独導入より効果が見込まれる場合の区分です。基準額は1施設・1事業所あたり1,000万円です。
設備投資の補助金 比較表(障害福祉版)
介護テクノロジー導入支援事業を含む5つの設備投資の補助金について、上限額・補助率・法人格ごとの対象可否・締切を横並びにしています。
資料を見る →対象になる事業所
対象は指定を受けた障害福祉サービス事業所を運営する法人で、法人格による区別はありません。
愛知県の交付要綱の第2条は、交付の対象者を「事業所を運営する法人」と定めています。ただし国・地方公共団体等の運営は除外されます。社会福祉法人・NPO法人・株式会社・一般社団法人・医療法人の別は問われません。過去5年以内に勧告・命令・指定取消し等を受けていないことは要件になります。
就労継続支援は、障害者総合支援法第5条第1項が列挙する障害福祉サービスの一つです。この条文と、実施要綱が対象を障害福祉サービス事業者としていることを合わせると、B型・A型の指定を受けた事業者は事業所単位で対象になります。実施要綱と交付要綱に「B型」「A型」という語そのものは出てきません。A型とB型で対象の可否に差を設ける記述もありません。
利用者と職員の位置づけを立場ごとに分けると、次のようになります。
| 立場 | 補助の対象になるか | 根拠の性格 |
|---|---|---|
| B型の利用者(雇用契約を結ばず工賃を受け取る) | 個人は対象外。ただしB型事業所は事業所単位で対象 | 交付対象を法人とする規定と、法第5条第1項に就労継続支援が含まれることを合わせた帰結 |
| A型の利用者(雇用契約に基づく労働者) | B型と同じ。個人は対象外で、A型事業所は対象 | 同じ組み合わせによる帰結。A型・B型で差を設ける記述は要綱にない |
| 事業所の職員(支援員・サービス管理責任者・管理者等) | 職員個人への現金給付ではない。ただし制度の目的規定が職員の負担軽減を名指ししている | 実施要綱1の目的に「職員」の明記あり。対象機器の要件も職員の業務を前提にしている |
雇用関係の助成金では、B型の利用者が雇用契約を結ばないことが対象・対象外の分かれ目になります。この事業ではその線引きは働きません。対象になるかどうかは、その事業所が障害者総合支援法上のどの指定を受けているかだけで決まります。
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか 制度全体の位置づけと雇用関係助成金の線引き
都道府県で変わるのは締切だけではない
都道府県ごとに違うのは締切だけではなく、対象から外す事業所や機器の範囲も違います。
令和8年度の募集で確認できた4県の状況を並べます。
| 都道府県 | 令和8年度の締切 | 確認できた独自の扱い |
|---|---|---|
| 愛知県 | 令和8年5月29日(金)正午【厳守】 | 名古屋市など政令市・中核市の事業所は対象外。事前協議と申請の2段階方式 |
| 広島県 | 令和8年5月20日(水)17時15分 | 電子申請システムe-tumoで受付 |
| 大阪府 | 受付終了(ページに日付の記載なし) | AIカメラの導入で訪問系・就労定着支援・相談支援事業者を除外 |
| 埼玉県 | 公開ページに掲示なし | 対象の全施設あてメールで募集を案内 |
愛知県の除外は、実施主体の構造から来ています。実施主体には都道府県だけでなく指定都市と中核市も含まれるためです。政令市・中核市の事業所は市に申請する形になります。県のページを見て「対象外だった」と受け取ると、申請できる窓口を見落とします。
広島県では、障害児支援側の「地域障害児支援体制充実のためのICT化推進事業」が別建てで動いていました。こちらの締切は令和8年5月18日17時15分で、介護テクノロジー導入支援事業とは2日ずれています。同じ時期に並んで公募されるので、対象事業所の一覧で自分の事業所の種別を確かめる必要があります。
締切は令和8年度では4月から5月に集中していました。ただし大阪府のように受付期間が公開ページに載らない例もあります。年1回・短期間の募集が全国共通だと断定できるだけの材料までは確認できていません。
もう一つ気をつける点があります。同じ「介護テクノロジー導入支援事業」という名前で、介護保険(高齢者)分野向けの事業が別に動いています。こちらは介護保険法・老人福祉法の事業所が対象で、障害福祉サービス事業所は入りません。和歌山県と岡山県のページで確認しました。県のページ名だけで判断しないで、対象事業所の一覧まで見てください。
自分の県の公募を探す
探す場所は県の障害福祉主管課のページで、政令市・中核市の事業所は市のページを見ます。
確認する順番を挙げます。
- 事業所の所在地が政令指定都市・中核市かどうかを先に見る。申請先が県か市かが変わる
- 県または市の障害福祉主管課のページで、介護テクノロジー・ロボット・ICTを含む事業名を探す
- そのページの対象事業所の一覧に、自分の事業所のサービス種別が入っているかを確かめる
- 締切と、事前協議が要るかどうかを確かめる
要件のうち、実施要綱に載っていて全国に共通するものを挙げます。
- 交付決定の前に買った機器は対象外になる。Q&Aは内示後に購入したものが対象だとしている
- 対象経費の算定では2者以上から見積を取り、原則として最低価格を提示した業者を選ぶ
- 他の国庫補助事業で補助を受けている経費は、この事業の対象にならない
- 内示後に計画と違う機器へ変えるのは原則できない。販売中止等やむを得ない事情があり、目的・効果が同等と都道府県等が認めた場合に、同価格以下の機器へ変更できる
- ICT機器等の導入支援を受けるには、都道府県等が開催する研修会への参加が要件になる
- 事業完了年度の翌年度4月末日までに実績報告を行う。導入前後を客観的・定量的な指標で比較した効果も報告する
- 導入した製品の内容と導入効果を、ホームページ等で公表する義務がある
予算を超えたときの優先採択条件も置かれています。1つは、ICT等の導入で生じた金銭的な剰余を、障害福祉サービスの質の向上や職員の賃金改善に充てる旨を職員等に周知した場合です。もう1つは、交付申請の時点で福祉・介護職員等処遇改善加算を算定しているか、申請後おおむね3か月以内に取得する見込みだと都道府県等が認めた場合です。
新規開設予定の事業所は注意が必要です。この事業の目的は既存事業所の職場環境の整備なので、原則としては対象になりにくい位置づけです。導入効果を客観的・定量的に確認・分析できない場合も対象外になります。
公募が出てから締切までの期間は短く、令和8年度は5月中旬から下旬に締切が並んでいました。公募を見てから見積を集め始めると間に合わないので、準備を前倒しする順番になります。
最初に決めるのは、どの場面の負担を減らすかです。移乗介護と入浴支援なら1台100万円まで、それ以外の場面なら1台30万円までなので、場面が決まると狙える機器の価格帯も決まります。
次が見積です。2者以上から取ることが要件なので、候補の機種を2つ以上並べた状態で販売店に当たっておくことになります。
導入前の状態を数字で残しておく作業も、公募前にやっておくものです。実績報告では導入前後を客観的・定量的な指標で比較するよう求められます。記録にかかる時間や職員の移動の回数など、比較に使う指標を先に決めて測り始めておくことになります。
発注は内示を待ちます。交付決定の前に買った機器は対象外なので、公募前の準備は見積の取得までで止めておく形になります。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する 自己負担1/4を出せるかを判断する材料
よくある質問
自分の地域には、
どれくらい利用者候補がいる?
所在地をもとに、周辺人口・障害福祉事業所数・紹介元になる相談支援事業所の数などを簡易集計します。これから開設する方には出せる場所と参入余地を、すでに運営している方には商圏内の競合と紹介元の分布を、目的にあわせて整理します。
その場でダウンロードできる資料ではありません。いただいた内容をもとに1件ずつ作成し、2〜3営業日以内にメールでお送りします。
