人材確保等支援助成金は
障害福祉事業所で使えるか
雇用管理制度と離職率の目標
令和8年度に申請できるのは、人材確保等支援助成金のうち雇用管理制度・雇用環境整備助成コースです。助成の対象は、雇用管理制度5種類と業務負担軽減機器等の導入です。雇用管理制度は賃金規定制度・諸手当等制度・人事評価制度・職場活性化制度・健康づくり制度の5つです。額は導入した制度1つにつき20万円から80万円で、賃金要件を満たすと25万円から100万円になります。業務負担軽減機器等は対象経費の2分の1、上限150万円です。複数を組み合わせた場合の最大額は325万円で、最上位の賃金要件を満たしたときの値です。
支給は1回だけです。計画の認定を受けて制度を導入し、離職率の目標を達成していれば一括で支給されます。目標は事業所の雇用保険一般被保険者が9人以下なら現状維持、10人以上なら1ポイント低下です。計画届は計画開始日からさかのぼって6か月前の日から1か月前の日までに提出します。B型の利用者は雇用契約を結ばないため対象労働者に当たらず、離職率の計算にも入りません。介護福祉機器助成コースは令和6年3月31日で廃止され、令和8年度には申請できません。
目次
人材確保等支援助成金のコース構成
令和8年度に障害福祉事業所が使えるのは、雇用管理制度・雇用環境整備助成コースです。
人材確保等支援助成金は、コースが多く、廃止と統合を繰り返してきた助成金です。検索で見つかるコース名が、今は存在しないことがあります。まず令和8年度の状況を整理します。
| コース | 令和8年度の状況 |
|---|---|
| 雇用管理制度・雇用環境整備助成コース | 受付中。この記事で扱う |
| 人事評価改善等助成コース | 令和7年3月31日で廃止。令和7年4月1日に上のコースへ統合 |
| 介護福祉機器助成コース | 令和6年3月31日で廃止 |
| そのほかのコース | 中小企業団体助成コース、外国人労働者就労環境整備助成コース、テレワークコース、建設分野の各コースが存在する。この記事では扱わない |
雇用管理制度・雇用環境整備助成コースは、新しく雇用管理制度または業務負担軽減機器等を導入する事業主向けの制度です。導入したものを運用し、従業員の離職率が下がっていれば、取り組みに応じた額が支給されます。申請窓口は、本社所在地を管轄する都道府県労働局です。
介護向けの解説が多い助成金ですが、対象事業主は雇用保険の適用事業の事業主で、業種による限定はありません。障害福祉サービス事業所を除く記載も、対象として名指しする記載もパンフレットにはありません。
導入できる制度と助成額
導入できるのは雇用管理制度5種類と業務負担軽減機器等で、額は制度ごとに決まっています。
| 導入するもの(令和8年度) | 基本額 | 賃金要件を満たした場合 |
|---|---|---|
| 賃金規定制度(賃金規定・賃金表の整備) | 40万円 | 50万円 |
| 諸手当等制度(諸手当・退職金・賞与のいずれかの導入) | 40万円 | 50万円 |
| 人事評価制度(生産性向上に資する制度の導入) | 80万円 | 100万円 |
| 職場活性化制度(メンター制度・従業員調査・1on1のいずれか) | 20万円 | 25万円 |
| 健康づくり制度(人間ドックの導入) | 20万円 | 25万円 |
| 業務負担軽減機器等(雇用環境整備) | 対象経費の2分の1・上限150万円 | 上限187.5万円または225万円 |
表の額は、導入した制度1つにつきの額です。5種類を併用すれば、それぞれの額が加算されます。ただし1事業所あたりなのか1事業主あたりなのかは、パンフレットの記載からは読み取れませんでした。
組み合わせたときの最大額は、賃金要件の加算なしで230万円です。7%以上の賃上げという最上位の賃金要件を満たした場合は325万円になります。325万円は組み合わせたときの最大値で、単体メニューの上限ではありません。
賃金要件は、計画期間中に対象労働者の賃金を引き上げた場合の加算です。5%以上の増加で25%が加算されます。3%以上5%未満の増加でも、パンフレットが定める別の要件をあわせて満たせば25%が加算されます。業務負担軽減機器等を導入し、かつ7%以上引き上げた場合は50%の加算です。判定は、賃上げの前後3か月分の賃金合計額を比べて行います。
5種類の雇用管理制度のうち、中小企業事業主に限られるのは賃金規定制度だけです。残る4種類と業務負担軽減機器等には、企業規模や法人格による制限の記載がありません。中小企業事業主の範囲は、サービス業なら資本金5,000万円以下または常時雇用労働者100人以下です。その他の業種なら資本金3億円以下または常時雇用労働者300人以下です。障害福祉サービス事業がどちらの区分に当たるかは、一次資料で確認できませんでした。資本金の概念がない社会福祉法人・NPO法人の判定方法も、一次資料では確認できていません。賃金規定制度を狙うなら、労働局に区分を確かめてから計画を立てることになります。
業務負担軽減機器等は、対象労働者が直接行っていた作業の負担を軽くする機器・設備です。導入費用が1件10万円以上(消費税込)であることが必要です。対象外になるものが決まっています。
- パソコン・タブレット・スマートフォン等の汎用機器
- 通常の事業活動を維持するための汎用事務機器
- 空調・照明など快適化を目的とした設備
- テレワーク用の通信機器等
- 法令上当然に整備すべき設備
代表者・親族・関連会社など、事業主と密接な関係にある相手からの購入も対象外です。パンフレットの産業別の例示には「医療、福祉」の区分があります。そこには、車いす昇降リフトによる介助作業の負担軽減と、介護ソフトによる介護記録作業の負担軽減が挙げられています。これは例示であって、障害福祉サービス事業所を名指しした記載ではありません。個々の機器が要件を満たすかは、上の対象外の条件に照らした個別の判断になります。
離職率の目標と、その数え方
目標は雇用保険一般被保険者が9人以下なら現状維持、10人以上なら1ポイント低下です。
離職率は、事業所の雇用保険一般被保険者を数えて計算します。低下させる幅の目標は、事業所の被保険者の人数で変わります。
| 事業所の雇用保険一般被保険者数(令和8年度) | 離職率の低下目標 |
|---|---|
| 9人以下 | 現状維持 |
| 10人以上 | 1ポイント低下 |
これに加えて、評価時離職率が30%以下であることが支給の要件です。離職率は2回測ります。計画を提出する前の期間で計画時離職率を測り、計画期間の終了後12か月間で評価時離職率を測ります。この12か月間を評価時離職率算定期間と呼びます。
離職率の目標とは別に、離職者に関する要件もあります。数える期間は、計画期間の初日の前日から起算して6か月前の日から、支給申請書の提出日までです。この間に倒産・解雇等で離職した人を数えます。離職票の離職区分コード1Aまたは3Aに当たる人が対象です。その人数が計画提出日の被保険者数の6%を超えていると、助成金は支給されません。ただし、特定受給資格者となる離職理由の被保険者が3人以下の場合は除かれます。
離職率の目標は、自分で選ぶ数字ではありません。事業所の雇用保険一般被保険者の人数で決まります。順番としては、人数を数えるところから始めることになります。
被保険者が9人以下なら目標は現状維持です。10人以上になると1ポイントの低下が求められます。10人前後の事業所では、パート職員の加入状況で区分が動きます。
B型の事業所では、利用者はこの人数に入りません。数える相手は支援員・サービス管理責任者・管理者などの職員です。利用者の人数ではなく職員の人数で区分が決まる点を、先に押さえておくことになります。
もう1つ決めるのが、計画期間をいつに置くかです。評価時離職率を測るのは、計画期間が終わったあとの12か月間です。定年や産休・育休の予定が集中する時期がそこに重なると、見通しが立てにくくなります。計画開始日を決める前に、その1年間の在籍予定を並べておく順番になります。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
関連する記事を挙げます。
- サービス管理責任者の定着 離職率そのものを下げる取り組み
補助金・助成金 申請前チェックシート
計画届の事前提出や不支給要件など、申請前に済ませていないと対象外になる手続を順に確かめられるようにしています。
資料を見る →計画の認定から一括支給までの流れ
支給は1回だけで、計画の認定から離職率の判定までを終えたあとに一括で支払われます。
手続は5つの段階に分かれます。
- 雇用管理制度等整備計画を作成し、都道府県労働局へ提出する
- 認定を受け、計画期間内に制度または機器を導入する
- 導入したものを計画どおり実施・運用する
- 評価時離職率算定期間の終了後2か月以内に支給申請する
- 離職率の目標を達成していれば助成金が支給される
この助成金は2段階払いではありません。制度導入助成と目標達成助成に分けて支払われるのは、統合前の旧コースの仕組みです。現行のコースでは、離職率の判定が終わるまで入金はありません。
| 手続(パンフレットの設例) | 時期 |
|---|---|
| 計画時離職率算定期間 | 2025年6月1日〜2026年5月31日 |
| 認定申請 | 2026年6月10日 |
| 計画期間 | 2026年8月1日〜2027年7月31日 |
| 評価時離職率算定期間 | 2027年8月1日〜2028年7月31日 |
| 支給申請期間 | 2028年8月1日〜2028年9月30日 |
この設例では、認定申請から支給申請の受付開始まで2年以上あります。資金繰りの計画では、入金の時期をこの位置に置くことになります。
支給までの間に満たしておく主な要件を挙げます。
- 計画開始日までに対象事業所ごとに雇用管理責任者を選任し、労働者に周知すること
- 対象労働者の2分の1以上に、導入した制度・機器を実施または利用させること
- 雇用管理制度を労働協約または就業規則に明文化すること
- 導入した制度・機器を評価時離職率算定期間の末日まで運用・使用すること
- 計画開始日前6か月から計画期間の末日まで、被保険者を事業主都合で解雇等していないこと
常時10人未満の労働者を使用する事業主は、就業規則を従業員全員に書面で周知した日が導入日になります。常時10人以上を使用する事業主は、就業規則を労働基準監督署に届け出る必要があります。計画の提出前に費用の一部でも支払っていると、新たな導入とは認められません。過去に導入していた同様の制度・機器の再導入も、新たな導入には当たりません。
なお、助成金の申請書の作成、提出代行、事務代理を報酬を得て業として行えるのは社会保険労務士だけです。この助成金が雇用保険二事業の助成金にあたるためです。
B型の利用者は離職率の計算に入らない
就労継続支援B型の利用者は対象労働者に当たらず、離職率の分母にも分子にも入りません。
これは2つの事実を組み合わせた結論です。1つ目は、このコースの対象労働者の要件です。対象労働者は、次の3つをすべて満たす人です。
- 期間の定めなく雇用されている、または反復更新で事実上これと同等であること
- 事業主に直接雇用されていること
- 雇用保険の被保険者であること(短期雇用特例被保険者・日雇労働被保険者を除く)
2つ目は、B型が利用者と雇用契約を結ばないという制度上の性格です。B型の利用者は利用契約に基づいて通所し、工賃を受け取ります。この2つを合わせると、B型の利用者は2番目と3番目の要件を満たさないことになります。対象労働者に含まれないため、離職率の分母にも分子にも入りません。9人以下か10人以上かを分ける人数にも算入されません。
パンフレットに、B型の利用者を名指しして除外した記述はありません。要件の組み合わせから導かれる結論であって、一次情報に書かれた除外ではありません。
A型の利用者の扱いは違います。A型は雇用契約に基づく就労なので、直接雇用の要件を通常は満たします。週の所定労働時間が20時間以上で雇用保険の被保険者になっていれば、対象労働者に含まれます。20時間未満で被保険者になっていない場合は含まれません。これも雇用保険法の一般原則と合わせた帰結で、パンフレットにA型の利用者を名指しした記述はありません。
支援員・サービス管理責任者・管理者などの職員は、通常の雇用契約なので対象労働者に当たります。制度を導入する相手も、離職率を数える相手も、この職員です。
| 立場 | 対象労働者になるか(令和8年度) | 離職率の計算 | 根拠の強さ |
|---|---|---|---|
| B型の利用者 | ならない | 分母・分子とも入らない | 要件の組み合わせによる帰結 |
| A型の利用者 | 雇用保険の被保険者であればなる | 被保険者であれば入る | 要件の組み合わせによる帰結 |
| 事業所の職員 | 通常なる | 入る | パンフレットの対象労働者要件をそのまま当てはめた判定 |
関連する記事を挙げます。
- B型事業所の職員採用 支援員を採用するときの実務
介護福祉機器助成コースは廃止されている
介護福祉機器助成コースは令和6年3月31日で廃止され、令和8年度には存在しません。
厚生労働省の当該コースの案内ページは、廃止の告知に置き換わっています。掲載されているパンフレットも令和5年4月1日版のままです。令和8年度のパンフレットや支給要領はありません。
機器の導入に助成を受けたい場合、令和8年度の受け皿は雇用管理制度・雇用環境整備助成コースの業務負担軽減機器等です。対象になる機器の条件は、導入できる制度と助成額の章に書いたとおりです。
人事評価改善等助成コースも今はありません。令和7年3月31日で廃止され、令和7年4月1日に雇用管理制度・雇用環境整備助成コースへ統合されました。現行コースの5種類の中に、人事評価制度が含まれています。
廃止されたコースを過去に受給していると、現行コースの受給に影響します。重複受給の制限があり、最後の支給決定日の翌日から3年間が経過していることが必要です。制限の対象には、次の受給が含まれます。
- 雇用管理制度助成コース(目標達成助成)
- 人事評価改善等助成コース
- 雇用管理制度・雇用環境整備助成コース
- 人事評価改善等助成金
- 介護福祉機器助成コース
- 設備改善等助成コース
- 建設労働者確保育成助成金の雇用管理制度助成コース
3年間の経過が必要になるのは、同じ雇用管理制度等区分を含む場合に限られます。
手続の期限
計画届は、計画開始日からさかのぼって6か月前の日から1か月前の日までに提出します。
このコースは通年の随時受付で、公募回はありません。期限が効くのは公募の締切ではなく、計画開始日との関係です。計画開始日は、最初に雇用管理制度または業務負担軽減機器等を導入する月の初日です。導入してから計画を出すことはできません。
| 手続(令和8年度) | 期限 |
|---|---|
| 雇用管理制度等整備計画の提出 | 計画開始日からさかのぼって6か月前の日から1か月前の日まで |
| 計画期間 | 3か月以上1年以内 |
| 支給申請 | 評価時離職率算定期間の末日の翌日から2か月以内 |
計画期間の上限が1年3か月になる例外が1つあります。人事評価制度を導入し、賃金の支払日が導入日から1年を超える場合です。
計画は複数を同時に提出できません。提出している計画の支給または不支給が決まるまで、次の計画は出せません。導入したい制度が複数あるなら、1つの計画にまとめて組み込むかどうかを先に決めることになります。
令和8年度のパンフレットには、年度中の制度変更の予定や経過措置の記載はありません。ただし現行コース自体が、令和7年4月の統合でできたものです。雇用関係助成金は統廃合が続く可能性があるため、申請の前に最新版のパンフレットを確認します。
- 令和8年度に申請できるコース
- 雇用管理制度・雇用環境整備助成コース。窓口は本社所在地を管轄する都道府県労働局で、通年の随時受付(公募回はない)
- 助成額(導入した制度1つにつき・令和8年度)
- 賃金規定制度40万円・諸手当等制度40万円・人事評価制度80万円・職場活性化制度20万円・健康づくり制度20万円。賃金要件を満たすと順に50万円・50万円・100万円・25万円・25万円
- 業務負担軽減機器等の助成
- 対象経費の2分の1で上限150万円(賃金要件を満たすと上限187.5万円または225万円)。導入費用が1件10万円以上(消費税込)の機器が対象
- 組み合わせたときの最大額
- 賃金要件の加算なしで230万円、7%以上の賃上げで325万円。いずれも複数メニューを組み合わせた場合の最大値で、単体メニューの上限ではない
- 離職率の低下目標
- 事業所の雇用保険一般被保険者が9人以下は現状維持、10人以上は1ポイント低下。あわせて評価時離職率30%以下が必要
- 計画届の提出期限
- 計画開始日からさかのぼって6か月前の日から1か月前の日まで。支給申請は評価時離職率算定期間の末日の翌日から2か月以内
- B型・A型の利用者の扱い
- B型の利用者は対象労働者にならず離職率の分母・分子に入らない。A型の利用者は雇用保険の被保険者であれば入る
- 廃止済みのコース
- 介護福祉機器助成コースは令和6年3月31日廃止。人事評価改善等助成コースは令和7年3月31日廃止で、令和7年4月1日に現行コースへ統合
よくある質問
自分の地域には、
どれくらい利用者候補がいる?
所在地をもとに、周辺人口・障害福祉事業所数・紹介元になる相談支援事業所の数などを簡易集計します。これから開設する方には出せる場所と参入余地を、すでに運営している方には商圏内の競合と紹介元の分布を、目的にあわせて整理します。
その場でダウンロードできる資料ではありません。いただいた内容をもとに1件ずつ作成し、2〜3営業日以内にメールでお送りします。
