人材開発支援助成金は
障害福祉の職員研修に使えるか
経費助成と賃金助成の組み立て
人材開発支援助成金の人材育成支援コースは、職員に10時間以上のOFF-JTを受けさせた事業主に、訓練経費と訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。令和8年度の経費助成率は、正規雇用労働者等で45%(中小企業以外は30%)、有期契約労働者等で70%です。賃金助成はこれとは別に、1人1時間あたり800円(中小企業以外は400円)が助成されます。賃金要件・資格等手当要件を満たすと、経費助成率は60%(同45%)に、賃金助成額は1人1時間あたり1,000円(同500円)に上がります。eラーニング・通信制による訓練は経費助成のみで、賃金助成は受けられません。
限度額は2種類あります。1労働者1訓練あたりの経費助成限度額は、実訓練時間数10時間以上100時間未満で中小企業15万円、100時間以上200時間未満で30万円、200時間以上で50万円です。これとは別に、1事業所・1年度あたりの支給限度額が1,000万円と定められています。対象労働者は雇用保険被保険者に限られるため、雇用契約を結ばない就労継続支援B型の利用者は対象になりません。対象になるのは管理者・サービス管理責任者・職業指導員・生活支援員といった職員です。計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前までに労働局へ提出する必要があり、1か月前を過ぎた提出は認められません。
目次
人材開発支援助成金のコース構成
人材開発支援助成金は複数コースの総称で、職員研修の中心になるのは人材育成支援コースです。
この助成金は、事業主が雇用する労働者に職務に関連した訓練を受けさせたときに使えます。計画に沿って実施すれば、訓練経費と訓練期間中の賃金の一部が助成されます。実施主体は厚生労働省と都道府県労働局です。
人材育成支援コースには4つの訓練メニューがあります。
- 人材育成訓練(10時間以上のOFF-JT)
- 認定実習併用職業訓練(新卒者等向けのOJTとOFF-JT。厚生労働大臣の認定が必要)
- 有期実習型訓練(有期契約労働者等の正社員転換を目的とするOJTとOFF-JT)
- 中高年齢者実習型訓練(中高年齢者向けのOJTとOFF-JT)
職員を外部研修に出す場面で使うのは、このうち人材育成訓練です。このほかに事業展開等リスキリング支援コースがあります。こちらは令和4年度から令和8年度末までの期間限定の助成金として設けられています。
対象労働者の要件は全コース共通で、雇用保険被保険者であることです。事業所の中で誰が対象になるかは、立場によって分かれます。
| 立場 | 助成の対象になるか(令和8年度) | 根拠の強さ |
|---|---|---|
| B型の利用者 | ならない | 被保険者要件と雇用契約がないことを合わせた帰結 |
| A型の利用者 | ならない | 厚生労働省のQ&A(令和6年11月版)Q29に明記 |
| 事業所の職員(管理者・サービス管理責任者・職業指導員・生活支援員) | 要件を満たせば対象になる | 同じQ29がA型の支援を行う者について明記 |
B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばず、工賃を受け取る利用契約です。この性質と被保険者要件を合わせると、B型の利用者は対象にならないという結論になります。厚生労働省がB型を名指しして対象外と書いた資料は、今回の確認では見つかっていません。
A型の利用者については、厚生労働省のQ&Aが直接答えています。Q&Aは、A型に雇用される労働者を利用者と支援を行う者の2種類に分けています。利用者は一般就労への移行に向けた訓練を受けることが前提とされるため対象外、としています。対象外の理由は雇用契約の有無ではありません。
支援を行う者、つまり管理者・サービス管理責任者・職業指導員・生活支援員は、支給要件を満たせば対象になるとされています。A型には運用上の注意も付いています。サービス提供時間内にOFF-JTを実施する場合は、訓練対象者を除く支援員が指定基準上の人員配置を満たしていることが条件です。
B型や生活介護の職員を名指しした記述は確認できていません。ただし職員は雇用契約に基づく労働者です。雇用保険の被保険者であれば対象労働者の要件を満たすため、同じように対象になりうるという整理になります。
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか 事業所が使える制度全体の地図
経費助成の率と賃金助成の額
経費助成は訓練経費に対する率、賃金助成は1人1時間あたりの定額で、性格が違います。
2つは別々に計算され、両方を受けられます。経費助成率は、対象労働者が正規雇用労働者等か有期契約労働者等かで起点が変わります。賃金要件・資格等手当要件を満たすと、率も額も上乗せされます。次は令和8年度の人材育成訓練の数値です。
| 助成の種類(令和8年度・人材育成訓練) | 中小企業 | 中小企業以外 |
|---|---|---|
| 経費助成率(正規雇用労働者等) | 45% | 30% |
| 同・賃金要件等を満たす場合 | 60% | 45% |
| 経費助成率(有期契約労働者等) | 70% | 原文に区分の表記なし |
| 同・賃金要件等を満たす場合 | 85% | 原文に区分の表記なし |
| 賃金助成額(1人1時間あたり) | 800円 | 400円 |
| 同・賃金要件等を満たす場合 | 1,000円 | 500円 |
限度額は2種類あり、こちらも性格が違います。1つは1労働者1訓練あたりの経費助成限度額です。もう1つは1事業所1年度あたりの支給限度額です。前者は研修1本ごとの天井、後者は年間の総枠にあたります。
| 限度額の種類(令和8年度・人材育成支援コース) | 単位 | 額 |
|---|---|---|
| 経費助成の限度額(実訓練時間数10時間以上100時間未満) | 1労働者1訓練あたり | 中小企業15万円/中小企業以外10万円 |
| 経費助成の限度額(実訓練時間数100時間以上200時間未満) | 1労働者1訓練あたり | 中小企業30万円/中小企業以外20万円 |
| 経費助成の限度額(実訓練時間数200時間以上) | 1労働者1訓練あたり | 中小企業50万円/中小企業以外30万円 |
| 賃金助成の対象時間数の上限 | 1労働者1訓練あたり | 1,200時間(専門実践教育訓練の指定講座は1,600時間) |
| 支給申請の回数 | 1労働者・1年度あたり | 3回まで |
| 支給限度額 | 1事業所・1事業主団体等の1年度あたり | 1,000万円 |
中小企業かどうかで額が変わるので、自法人の区分を先に確かめます。判定は主たる事業ごとに、資本金の額か常時雇用する労働者の数のどちらかで行います。資本金を持たない法人はここが単純です。社会福祉法人・医療法人・一般社団法人・学校法人などは、常時雇用する労働者の数だけで判定します。障害福祉サービス事業所は日本標準産業分類でサービス業に区分されます。この区分の基準は、資本金5,000万円以下または常時雇用する労働者100人以下です。
対象になる訓練とならない訓練
対象になるのは職務に直接関係する10時間以上のOFF-JTで、共通のマナー研修や趣味教養は対象外です。
支給要領は、対象とならない訓練等を表1で列挙しています。事業所が研修を選ぶときに関係しそうなものを挙げます。
- 職業・職務に間接的にしか必要でない知識技能(例:普通自動車運転免許の取得講習)
- 職業人として共通して必要となるもの(例:接遇・マナー講習)
- 趣味教養(例:語学の日常会話、話し方教室)
- 通常の事業活動として遂行されるもの(例:コンサルタントによる経営改善指導、社内制度の説明)
- 労働者の職業能力開発に直接関連しないもの(例:講演会・見学会・視察旅行)
- 職業・職務の知識技能の習得を目的としないもの(例:意識改革研修)
- 資格試験・適性検査そのもの
このほかに、法令で義務づけられた講習に関する除外もあります。こちらは次章で扱います。
分かれ目になるのは、職務に直接関係する訓練かどうかです。新人向けの接遇研修やビジネスマナー研修は、上の2番目に当たります。助成の対象になるのは、職務に関連した専門的な知識・技能を習得させるための訓練です。研修ごとに、支援業務で直接使う内容かどうかを見ることになります。
実訓練時間数の要件も忘れやすい部分です。人材育成訓練のOFF-JTは10時間以上が必要で、半日の単発研修は単独では届きません。
補助金・助成金 申請前チェックシート
計画届の事前提出や労働保険の加入など、申請前に済ませていないと対象外になる手続を順に確かめられるようにしています。
資料を見る →法定研修・資格取得のための研修の扱い
サービス管理責任者研修や強度行動障害支援者養成研修を名指しした公式の記述は見当たりません。
支給要領の表1には、法令で義務づけられた講習等に関する除外が置かれています。除外されるのは次の2つです。
- 当該業務を実施するにあたって、事業主に対して講習等の実施が義務づけられているもの(例:労働安全衛生法に基づく特別教育、道路交通法の法定講習)
- 訓練等を受けた労働者や資格を持った労働者の設置が事業主に義務づけられており、その労働者に訓練を実施しなければ当該業務を実施できない場合(例:労働安全衛生法の安全管理者選任時研修で、受講予定者以外に有資格者がいない場合)
ただし例外が置かれています。労働者にとって資格を取得するための法定講習等である場合は、この除外から外れます。支給要領は例として、介護福祉士試験の受験のための訓練を挙げています。
サビ管研修や強度行動障害支援者養成研修は、公式の記述は確認できない状態です。パンフレット・支給要領・Q&Aのいずれにも、名指しの記述は見つかりませんでした。そのため、上の除外規定に当てはめて考える形になります。以下は一次情報の一般的な文言からの整理で、断定できるものではありません。
| 事業所の状況 | 除外規定との関係(一般原則からの整理) |
|---|---|
| サービス管理責任者が1人もおらず、最初の1人を養成する | 受講予定者以外に有資格者がいない状態に近く、除外に当たる可能性がある |
| すでに配置基準を満たしていて、複数配置や欠員対策で追加育成する | その労働者に訓練しなければ業務を実施できない状態ではなく、対象になりうる余地がある |
どちらに当たるかは、労働局への個別の確認なしには決められません。計画届を出す前に、研修名と事業所の配置状況を示して相談する順番になります。
関連する記事を挙げます。
- サービス管理責任者研修 研修の区分と受講までの流れ
eラーニング・通信制の扱い
eラーニングと通信制による訓練等は経費助成だけが対象で、賃金助成の対象外です。
パンフレットは、eラーニング・通信制による訓練等について経費助成のみと注記しています。受講した時間分の賃金助成は付きません。時間数の数え方も集合研修とは違います。標準学習時間10時間以上、または標準学習期間1か月以上であることが必要です。
| 訓練の形態(令和8年度・人材育成訓練) | 経費助成 | 賃金助成 |
|---|---|---|
| 集合研修などのOFF-JT | 対象(実訓練時間数10時間以上) | 対象(1人1時間あたりの定額) |
| eラーニング・通信制 | 対象 | 対象外 |
職員を勤務時間中に外部研修へ出すと、経費助成と賃金助成の両方が視野に入ります。同じ内容をeラーニングに置き換えると、受けられるのは経費助成だけになります。移動と代替職員の手配が要らない代わりに、賃金助成の分だけ戻る額は小さくなります。
計画届の提出期限と手続の順番
計画届は、訓練開始日の6か月前から1か月前までに労働局へ提出する必要があります。
この期限は人材育成支援コースと事業展開等リスキリング支援コースに共通です。1か月前を過ぎると出せないため、研修を先に受けてから申請することはできません。公募回や締切日の設定はなく、受付は通年です。期限は事業所ごとに、訓練開始日から逆算して決まります。
| 順番 | やること | 期限(令和8年度) |
|---|---|---|
| 1 | 職業能力開発推進者の選任、事業内職業能力開発計画の策定と周知 | 計画届の提出までに(有期実習型訓練を除く) |
| 2 | 職業訓練実施計画届を労働局へ提出 | 訓練開始日の6か月前から1か月前まで |
| 3 | 訓練の実施 | 実訓練時間数10時間以上 |
| 4 | 支給申請書を労働局へ提出 | 訓練終了日の翌日から2か月以内(厳守) |
現行のパンフレットと支給要領は令和8年8月3日の改正版です。この内容は、同日以降に提出された職業訓練実施計画届に基づく訓練が対象になります。それより前に提出した計画には、旧版の要件や助成率が適用される場合があります。
年間の研修計画は、受けたい研修を先に並べるより、計画届の期限から逆算して組むことになります。
まず、翌年度に職員を出したい外部研修を書き出し、それぞれの開始日を確認します。開始日の1か月前が、計画届の提出の締切になります。
次に、職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画の策定を済ませます。これは計画届より前に必要な手続です。最初の研修の2か月前には終わらせておく順番になります。
そのうえで、勤務時間中に出す研修とeラーニングに振り分けます。賃金助成が付くのは前者だけです。代替職員を立てられる時期に、勤務時間中の研修を寄せる形になります。
支給申請は訓練終了日の翌日から2か月以内です。年度末に研修が集中すると、申請の締切も同じ時期に重なります。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
申請書の作成や提出代行、事務代理を報酬を得て業として行えるのは、社会保険労務士のみです(社会保険労務士法第2条第1項・第27条)。人材開発支援助成金が雇用保険二事業の助成金にあたるためです。事業所が自分で手続をするか、社会保険労務士に依頼するかの二択になります。
関連する記事を挙げます。
- B型事業所の職員の悩み 研修と定着をめぐる現場の課題
- 経費助成率(令和8年度・人材育成訓練)
- 正規雇用労働者等は45%(中小企業以外は30%)、賃金要件等を満たせば60%(同45%)。有期契約労働者等は70%、賃金要件等を満たせば85%
- 賃金助成額(令和8年度・人材育成訓練)
- 1人1時間あたり800円(中小企業以外は400円)。賃金要件等を満たせば1,000円(同500円)。eラーニング・通信制は賃金助成の対象外
- 経費助成の限度額
- 1労働者1訓練あたり。実訓練時間数10時間以上100時間未満で中小企業15万円、100時間以上200時間未満で30万円、200時間以上で50万円
- 1事業所あたりの上限
- 支給限度額は1事業所・1事業主団体等の1年度あたり1,000万円。支給申請は1労働者・1年度あたり3回まで
- 計画届の提出期限
- 訓練開始日の6か月前から1か月前まで。公募回の設定はなく通年。支給申請は訓練終了日の翌日から2か月以内
- 対象にならない人
- B型の利用者(被保険者要件と雇用契約がないことを合わせた帰結)とA型の利用者(厚生労働省のQ&AのQ29に明記)。事業所の職員は要件を満たせば対象
よくある質問
自分の地域には、
どれくらい利用者候補がいる?
所在地をもとに、周辺人口・障害福祉事業所数・紹介元になる相談支援事業所の数などを簡易集計します。これから開設する方には出せる場所と参入余地を、すでに運営している方には商圏内の競合と紹介元の分布を、目的にあわせて整理します。
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