福祉医療機構(WAM)の融資は
B型の開設に使えるか
補助金で埋まらない部分をどう借りるか
福祉医療機構(WAM)の福祉貸付は、補助金ではなく返済の要る融資です。2026年度のパンフレットでは、障害者福祉分野の融資対象に就労継続支援事業所が明記されています。障害福祉サービス事業の借入対象者は「法人」とだけ書かれ、法人格の限定はありません。融資限度額は2つの額のうち低いほうです。所要額から法的・制度的補助金を引いた額に融資率を掛けた額と、担保評価額の80%を比べます。障害福祉サービス事業の融資率は80%です。社会福祉施設等施設整備費補助金の交付が行われる整備事業は85%に上がります。この優遇の取扱期間は2027年3月31日までです。
利率は令和8年8月3日改定の主要貸付利率表によります。固定金利で償還期間10年以内の場合、参考の基準利率が3.100%、区分1「社会福祉事業施設」が2.600%です。ただし利率表に「障害福祉サービス事業」という区分名はありません。就労継続支援B型がどの区分に当たるかは、表の文言だけでは確定できません。手続の面では、貸付内定より前の契約と着工に注意が要ります。内定より前に工事請負契約を結んだり着工したりすると、原則として融資の対象外になります。相談と申込みは通年で受け付けられており、締切はありません。
- 制度の性格
- 補助金ではなく返済の要る融資。実施は独立行政法人福祉医療機構(WAM)の福祉貸付事業
- 借りられる人
- 事業を行う法人。障害福祉サービス事業(就労継続支援を含む)は法人格の限定なし。入所の障害者支援施設は社会福祉法人・日本赤十字社・一般社団法人に限定
- 融資率(2026年度)
- 障害福祉サービス事業は80%。社会福祉施設等施設整備費補助金の交付が行われる整備事業は85%(取扱期間は2027年3月31日まで)
- 融資限度額
- (所要額-法的・制度的補助金)×融資率と、担保評価額×80%の低いほう。貸付金額は10万円単位・最低200万円
- 利率(令和8年8月3日改定時点)
- 固定金利・償還期間10年以内で参考の基準利率3.100%、区分1「社会福祉事業施設」2.600%。保証人不要制度を使う場合は0.05%上乗せ
- 償還期間
- 貸付金額の区分と貸付金の種類に応じ、最短5年以内から最長20年以内。据置期間は最短6か月から3年以内
- 事前手続の禁止事項
- 貸付内定より前の工事請負契約・売買契約の締結や工事着工は原則として融資の対象外。設計監理の業務委託契約は除く
- 締切
- 公募回や締切はなく、融資相談・申込みは通年で受付(2026年度)
目次
WAMの福祉貸付は補助金ではない
福祉医療機構の福祉貸付は返済の要る融資で、採択を待って交付を受ける補助金とは仕組みが違います。
福祉医療機構は、独立行政法人福祉医療機構法に基づく独立行政法人です。設立は平成15年10月1日で、主管省庁は厚生労働省とこども家庭庁です。福祉貸付事業は、福祉の施設や事業を整備する法人に資金を貸す事業です。借りた額は利息を付けて返します。
それでも開設資金の相談先として名前が挙がるのは、条件が民間の借入と違うからです。参考の基準利率より低い区分が用意されています。相談と申込みに締切がなく、通年で受け付けられています。そして施設整備費補助金の自己負担分をこの融資で賄えることが、補助金側の資料にも書かれています。
貸付の形は2つあります。機構に直接申し込む直接貸付と、覚書を結んだ民間金融機関を窓口にする代理貸付です。代理貸付は、借入申込金額が3.5億円以下の場合に適用されます。
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか 使える補助金の全体像
対象になる事業と借りられる法人
就労継続支援事業所は融資対象の事業に明記されていて、借りられるのは事業を行う法人です。
2026年度のパンフレットには、障害者福祉分野の融資対象が一覧で載っています。居宅介護・生活介護・共同生活援助などと並んで、就労継続支援事業所が挙がっています。障害福祉サービス事業の「融資を受けられる方」の欄は「法人」とだけ書かれています。法人格の種類を限定する記載はありません。
一方、入所施設である障害者支援施設は違います。融資を受けられる方は社会福祉法人・日本赤十字社・一般社団法人と書かれています。医療法人・NPO法人・営利法人の記載はありません。通所と入所で対象の法人格が違います。
就労継続支援B型は、営利法人でも指定を受けて運営できる事業です。これと、借入対象者が単に「法人」とされていることを合わせると、株式会社立のB型も対象になり得ると読めます。ただし営利法人が実際に借り入れた事例を明記した公表資料は確認できていません。
借主はどの場合も法人です。個人が借りる制度ではないので、3つの立場はいずれも借主になりません。
| 立場 | 借主になれるか(2026年度) |
|---|---|
| B型の利用者 | なれない。融資は事業を行う法人に対するもの |
| A型の利用者 | なれない(雇用契約の有無にかかわらず同じ) |
| 事業所の職員 | なれない。職員個人が借入主体になる制度ではない |
この表は「融資を受けられる方=法人」という記載と、貸付が事業の整備資金であることを合わせた帰結です。利用者や職員を名指しで除外した記述があるわけではありません。
融資率と限度額
障害福祉サービス事業の融資率は80%で、施設整備費補助金の交付を受ける整備事業は85%に上がります。
融資限度額は、2つの額を計算して低いほうを採ります。
- (所要額 - 法的・制度的補助金)× 融資率
- 担保評価額 × 80%
所要額に入る費用は4つです。
- 建築資金(建築工事費・大型設備等工事費・特殊工事費・設計監理費)
- 設備備品整備資金(機械器具や備品の購入・取付工事等)
- 土地取得資金(施設用地の取得費用)
- 経営資金(施設又は事業の経営に必要な資金)
| 項目 | 2026年度の内容 |
|---|---|
| 融資率(障害福祉サービス事業) | 80% |
| 融資率(施設整備費補助金の交付が行われる整備事業) | 85%。取扱期間は2027年3月31日まで |
| 貸付金額 | 10万円単位。最低200万円 |
| 担保 | 原則として敷地に第一順位の抵当権。敷地上の建物・地上権の担保提供、損害保険の付保と質権設定も必要 |
85%は期限つきの優遇です。取扱期間は2027年3月31日までとされています。それ以降の扱いはパンフレットに書かれていません。延長されなければ、通常の80%に戻ります。開設の時期がこの期限をまたぐなら、率が変わる前提で資金計画を作ることになります。
融資対象面積が5,000㎡を超える借入申込は、原則として民間金融機関との協調融資が前提になります。覚書を結んだ金融機関は、令和8年度版パンフレットの時点で全国430機関です。
開設資金の組み立てシート(施設整備費補助金・WAM融資・自己資金)
融資率と限度額から借入可能額を出し、補助金と自己資金と合わせて開設資金を組み立てられるようにしています。
資料を見る →利率と償還期間
令和8年8月3日改定の利率表では、固定金利で償還期間10年以内の参考の基準利率が3.100%です。
| 区分(令和8年8月3日改定時点) | 固定金利・償還期間10年以内の利率 |
|---|---|
| (参考)基準利率 | 3.100% |
| 1 社会福祉事業施設 | 2.600%(基準利率▲0.5%) |
| 2 介護関連施設 | 2.700%(基準利率▲0.4%) |
この表に「障害福祉サービス事業」という区分名はありません。B型がどちらの区分かは断定できません。防災・減災や自家発電設備の優遇では、障害福祉分野にも基準利率▲0.5%が使われています。そこから区分1に整理されている可能性は読み取れますが、確認は取れていません。借入額の見込みを立てる前に、融資相談窓口で確かめる必要があります。
保証人不要制度を使う場合は、上の利率に0.05%が上乗せされます。使わない場合は、法人代表者等の個人連帯保証になります。
貸付利率は、金銭消費貸借契約を結んだ時点のものが適用されます。相談したときの利率ではありません。償還期間が10年を超える場合は、2つの制度から選びます。契約時の利率が償還期限まで変わらない完全固定金利制度と、10年経過ごとに見直す制度です。設置・整備資金で償還期間が10年以内の場合は、見直す制度を使えません。
償還期間は、貸付金額の区分と貸付金の種類の組み合わせで決まります。貸付金額は500万円以下から2,000万円以上までの区分があります。期間は最短5年以内から最長20年以内の幅です。広域型特別養護老人ホームなど一部の施設は39年以内という例外があります。据置期間は最短6か月で、償還期間の長さに応じて1年以内から3年以内です。
補助金との併用
社会福祉施設等施設整備費補助金は所要額から差し引かれ、残った額に融資率を掛けた額が限度になります。
パンフレットは、所要額から引く「法的・制度的補助金」の例として社会福祉施設等施設整備費補助金を挙げています。都道府県等の負担分も含めて引かれます。補助金で埋まる部分は借りられない、という意味です。裏を返せば、設置者の負担として残る部分が、この融資の出番になります。
厚生労働省の資料にも、設置者負担分については福祉医療機構から低利の融資を受けられると書かれています。国庫補助は整備費の全額を賄うものではなく、設置者の負担分が残るためです。
補助金を取ることは、融資の条件そのものも良くします。施設整備費の国庫補助金の交付が行われる整備事業は、融資率が80%から85%に上がるからです。ただし前章のとおり、この優遇の取扱期間は2027年3月31日までです。
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する 返済を織り込む前提になる収支の全体像
申請から実行までの流れ
貸付内定より前に工事請負契約や着工をすると、原則としてその整備は融資の対象外になります。
パンフレットは、貸付内定通知書が届くまで次のことをしないよう案内しています。
- 工事請負契約(請書)の締結
- 設備備品費に係る購入契約の締結
- 土地建物の売買契約の締結(締結前の着手金等の支払いを含む)
- 工事着工
設計・監理に係る業務委託契約の締結は、この限りではありません。支払いを含めて、内定前でも差し支えないとされています。工事請負業者等への支払いは振込で行います。現金による支払いは、原則として融資の対象外です。
時間の見込みも押さえておきます。借入申込書が機構に到着し、内容確認を終えてから審査を了するまで1か月程度です。貸付契約の締結や抵当権設定の手続きには3か月程度かかります。初めての申込みや法人新設の場合は、相談と審査にさらに時間がかかることがあるとされています。
借入申込書には、施設を管轄する都道府県市等からの意見書などの添付が必要です。融資相談の段階でも書類が要ります。決算書の直近2か年分、開設後の収支予想である収入支出償還計画表、計画敷地の公図・住宅地図・全部事項証明書、計画建物の配置図・平面図などです。
| 相談先 | 対象 | 電話 |
|---|---|---|
| 福祉医療貸付部 福祉審査課 融資相談係 | 施設の開設地が東日本 | 03-3438-9298 |
| 大阪支店 福祉審査課 融資相談係 | 施設の開設地が西日本 | 06-6252-0216 |
| NPOリソースセンター NPO支援課 | NPO法人 | 03-3438-4756 |
融資相談と申込みは通年で受け付けられています。公募回や締切はありません。
補助金の交付決定と融資の内定と、工事の契約の3つは、順番を先に決めておくことになります。
機構は、貸付内定より前の工事請負契約と着工を原則として融資の対象外にしています。一方、設計・監理の業務委託契約は内定前でも差し支えないとされています。設計を先に進めながら、契約と着工を内定の後ろに置く並べ方になります。
補助金の側も先に固めることになります。所要額から引く補助金の額が決まらないと、融資限度額の計算が動いてしまうためです。
支払いの方法も、工事に入る前に決めておく必要があります。業者への支払いは振込に統一することになります。現金による支払いが原則として融資の対象外だからです。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
確認できていないこと
就労継続支援B型が利率表のどの区分に当たるかは、公表資料の文言だけでは確定できません。
この記事で断定を避けた点を3つ挙げます。
- 利率の区分。「社会福祉事業施設」と「介護関連施設」のどちらに障害福祉サービス事業所が入るかは、利率表に明記がありません
- 営利法人の借入実績。株式会社立のB型が実際に借り入れた事例を明記した公表資料は確認できていません
- 償還期間と据置期間の具体的な年数。貸付金額と貸付金の種類の組み合わせで決まるため、幅までしか確認できていません
いずれも融資相談の窓口で直接確かめられます。自事業所の整備計画と貸付金額の見込みを持って相談すると、区分と期間の話まで進められます。
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援B型は儲かるのか 開設判断に関わる収支全体の考え方
よくある質問
自分の地域には、
どれくらい利用者候補がいる?
所在地をもとに、周辺人口・障害福祉事業所数・紹介元になる相談支援事業所の数などを簡易集計します。これから開設する方には出せる場所と参入余地を、すでに運営している方には商圏内の競合と紹介元の分布を、目的にあわせて整理します。
その場でダウンロードできる資料ではありません。いただいた内容をもとに1件ずつ作成し、2〜3営業日以内にメールでお送りします。
