現役の事業所運営者が書く、障害福祉の経営誌

障害福祉の「賃上げ補助金」は
処遇改善加算とどう違うか
時限の補助金と報酬の加算

最終更新制度基準日
執筆:福祉経営ナビ編集部
監修:徳永 崇志(現役の就労継続支援B型事業所運営者)
初回公開
結論

障害福祉の賃上げの原資は2つに分かれます。1つは障害福祉サービス等報酬に上乗せされる処遇改善加算で、要件を満たす間は続きます。もう1つは令和7年度補正予算による障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金で、都道府県に計画書を提出して交付を受けます。後者は令和7年12月から令和8年5月に相当する6か月分の時限措置です。補助額は基準月(原則令和7年12月)1か月分の障害福祉サービス等総報酬に、サービス区分ごとの交付率を掛けて算出します。就労継続支援B型・A型はいずれも11.4%で、職員1人あたりの定額ではありません。対象は事業所に勤務する障害福祉従事者で、利用者は受け手になりません。2026年8月23日時点で、愛知県のように受付を終えた都道府県があります。令和9年度以降の継続は一次情報に記載がありません。

補助額の決まり方
基準月(原則令和7年12月)1か月分の障害福祉サービス等総報酬にサービス区分ごとの交付率を掛けて算出。就労継続支援B型・A型はいずれも11.4%。職員1人あたりの定額ではない
対象になる期間
令和7年12月から令和8年5月に相当する6か月分。令和7年度補正予算による時限措置で、令和9年度以降の継続は一次情報に記載なし
申請先と手続
実施主体は都道府県。事業所は都道府県知事へ計画書を提出する。東京都は事前の交付申請・交付決定を省略する取扱い
対象になる人
事業所に勤務する障害福祉従事者(福祉・介護職員以外の事務職員を含む)。B型の利用者は対象者の定義に入らない。A型の利用者本人への賃上げの制度でもない
原則の要件
基準月に処遇改善加算を算定していること。未算定でも申請時に令和8年度中の算定を誓約すれば可。交付を受けた額は全額を賃金改善に充てる義務がある
受付の状況(2026年8月23日時点)
愛知県はAパターン(支払予定 令和8年4月下旬)・Bパターン(支払予定 令和8年6月下旬)とも受付終了
制度基準日2026.08.23
根拠:厚生労働省「障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業実施要綱」(障発1226第7号・令和7年12月26日付)
目次

2つの原資は性格が違う

障害福祉の賃上げには、報酬に上乗せされる加算と、予算で期間を区切る補助金の2つの原資があります。

処遇改善加算は、障害福祉サービス等報酬の一部です。事業所が区分の要件を満たして届け出れば、報酬に上乗せされます。採択を待つ性質のものではありません。

もう一方が、令和7年度補正予算で措置された補助金です。名称を障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金といいます。申請先は都道府県で、対象は令和7年12月からの6か月分に限られます。同じ賃上げの原資でも、続き方がまったく違います。

令和8年度の時点で2つを並べると、次のようになります。

見る点(令和8年度時点)処遇改善加算障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金
原資障害福祉サービス等報酬令和7年度補正予算
受け取り方加算区分を届け出て報酬に上乗せ都道府県知事に計画書を提出して交付を受ける
続く期間要件を満たす間は続く令和7年12月から6か月分で終わる
額の決まり方加算区分ごとの要件による基準月の総報酬にサービス区分ごとの交付率を掛ける

時限の補助金を継続的な原資として当て込むと、令和8年6月以降の人件費の見通しが狂います。この記事では加算の区分や計算には立ち入らず、補助金の側の仕組みだけを扱います。

関連する記事を挙げます。

障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業の仕組み

この補助金は、都道府県を実施主体として、事業所が計画書を提出して交付を受ける単年度の制度です。

根拠は、厚生労働省が令和7年12月26日付で発出した通知です。文書番号は障発1226第7号で、別紙として実施要綱が付いています。適用は令和7年12月16日からです。障害児相談支援等が対象になる場合については、こども家庭庁が同じ日付で同名の実施要綱を発出しています。

制度の背景にあるのは、令和7年11月21日の「強い経済」を実現する総合経済対策です。ここに、障害福祉分野についても経営状況等を踏まえた賃上げ措置等の支援を行うと書かれています。令和7年度補正予算案では、障害福祉分野の賃上げ支援として439億円が計上されました。障害児支援人材の賃上げ支援としては、こども家庭庁に183億円が計上されています。

手続の入り口は、都道府県知事への計画書の提出です。東京都のように、通常の補助金で行う事前の交付申請・交付決定を省略している例もあります。補助金の振込先は、原則として法人ごとに1つの口座です。国民健康保険団体連合会に介護給付費等の振込先として登録している口座が使われます。

交付率と対象になる期間

補助額は基準月1か月分の総報酬に交付率を掛けて算出し、就労継続支援B型の交付率は11.4%です。

算出の順序が決まっています。まず利用者ごとに、基準月の障害福祉サービス等総報酬にサービス区分ごとの交付率を掛けます。次にそれを事業所ごとに合計します。1円未満は切り捨てます。基準月の総報酬は、基準月の報酬総単位数に1単位単価を掛けた額です。報酬総単位数には、基本報酬と各種の加算・減算が含まれます。

つまり1人あたり月額いくらという形の制度ではありません。同じB型でも、基準月の報酬額が違えば交付額は変わります。予算の資料には「幅広く月額1万円相当の賃上げ」という政策目標が書かれていますが、事業所ごとの交付額はこの式で決まります。

交付率はサービス区分ごとに違います。実施要綱の別紙1に6か月分として定められた率のうち、主な区分を挙げます。

サービス区分交付率(令和7年度・6か月分)
就労継続支援B型11.4%
就労継続支援A型11.4%
就労移行支援・就労選択支援・就労定着支援・自立生活援助11.4%
生活介護11.1%
共同生活援助(3類型とも)14.1%
居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護20.3%
施設入所支援・短期入所・療養介護22.2%
自立訓練(機能訓練・生活訓練・宿泊型)23.0%
計画相談支援・地域相談支援47.0%

就労系のサービスは、B型もA型も同じ11.4%です。障害者支援施設が行う日中活動系サービスには、各サービスと同じ交付率を適用します。

対象になる期間も決まっています。基準月は原則として令和7年12月です。この1か月分の報酬額から、6か月分の補助額を算出します。対象は令和7年12月から令和8年5月に相当する6か月分です。過誤調整分は、令和8年3月末日までに生じ、令和8年4月10日までに審査支払機関が受理したものに限って反映できます。

補助の対象外になる事業所もあります。令和8年4月以降に新規開設された事業所等と、計画書の提出時点で廃止・休止が明らかな事業所等です。

支給の時期は、国の計画書様式で2つから選ぶ形になっています。令和8年3月末までの支給か、令和8年4月以降の支給かのどちらかです。愛知県では、支払予定が令和8年4月下旬のAパターンと、令和8年6月下旬のBパターンが用意されました。2026年8月23日の時点で、この2つはどちらも受付を終えています。

関連する実務資料
整理シート

賃上げ原資の整理シート(処遇改善加算・業務改善助成金・賃上げの補助金)

報酬の加算・労働局の助成金・都道府県の補助金という3つの原資を、性格と時期で並べて整理できるようにしています。

資料を見る →

対象になるのは職員

実施要綱が対象者としているのは、事業所に勤務する福祉・介護職員以外も含む障害福祉従事者です。

事務職員のように直接支援を行わない職員も、この定義に含まれます。職種による除外の規定は実施要綱にありません。一方で、事業所の利用者はこの定義に入りません。立場ごとに分けると次のようになります。

立場(令和8年度)補助の受け手になるか判定の根拠
就労継続支援B型の利用者ならない対象者の定義が「勤務する障害福祉従事者」であることと、B型の利用者が雇用契約を結ばないことを合わせた帰結
就労継続支援A型の利用者本人への賃上げの制度ではない雇用契約は結ぶが、生産活動の対価としての賃金を得る利用者の立場。要綱に可否を直接述べた記述はない
事業所の職員(支援員・サービス管理責任者・管理者・事務職員)なる(要件を満たす場合)「福祉・介護職員以外も含む障害福祉従事者」に当たると要綱に明記されている

ここは書き分けが要ります。実施要綱には、B型の利用者を名指しで除外した記述はありません。対象者の定義そのものが、勤務する職員だけを指す形になっているだけです。A型の利用者についても、要綱は可否を直接述べていません。職員向けの制度であって、A型の利用者本人への賃上げの制度ではない、というところまでが一次情報から言えることです。

法人格による区別は、実施要綱にも東京都の交付要綱にも書かれていません。社会福祉法人でも、NPO法人でも、株式会社立の事業所でも扱いは同じです。東京都は、暴力団関係者が代表者等にいる団体を交付対象外とする規定を別に置いています。

要件は加算の側にあり、返還の規定もある

この補助金を受ける原則の要件は、基準月において処遇改善加算を算定していることです。

基準月に算定していない事業所にも道があります。申請の時点で令和8年度中に算定すると誓約すれば、基準月から算定しているものとして扱われます。そのうえで、算定している加算の区分によって追加の要件が変わります。

算定している区分追加で満たす要件
処遇改善加算Ⅲ・Ⅳ職場環境等要件について、全体から8以上の取組を実施していること
処遇改善加算Ⅰ・Ⅱ経験・技能のある人材のうち1人以上が賃金改善後の年収見込額460万円以上であること、または職場環境等要件14以上の取組を実施していること(このいずれか)
処遇改善加算の対象外サービス加算Ⅳの算定に準ずる3つ(任用要件・賃金体系の整備/研修の実施/職場環境等要件)をすべて満たすこと

3行目の対象外サービスとは、計画相談支援・地域移行支援・地域定着支援です。東京都はこれに障害児相談支援を加えています。

使いみちは限定されています。交付を受けた額は全額を賃金改善に充てる義務があります。前年の同時期と比べて賃金水準を低下させてはならないとされています。交付決定より前に決まっていた賃金改善の原資に充てることは、趣旨に反するため認められません。一部の職員や一部の事業所に賃金改善を著しく偏らせる配分もできません。

この補助金による賃金改善分は、処遇改善加算による賃金改善額には含めません。加算の実績とは別に数える扱いです。

事業所側の義務も要綱に並んでいます。賃金改善の方法を職員に周知すること、職員からの照会に書面等で分かりやすく回答することが求められます。計画書の提出時には、就業規則と労働保険加入の確認書類を2年間保管し、求めに応じて提示する義務があります。経営悪化等でやむを得ず賃金水準を引き下げ、そのうえで賃金改善を行う場合は、特別事情届出書を都道府県知事に届け出ます。

返還の事由は3つです。要件を満たさない場合(誓約した内容が未達の場合を含む)、虚偽や不正の手段による受給、障害者総合支援法その他の関係法令への違反です。東京都は、返還命令に伴う違約加算金と延滞金を年10.95%と定めています。

実務ではこう組めます

この補助金は加算の算定を要件にしているので、年度の段取りは加算の側から決まります。

基準月に加算を算定していない事業所は、まず令和8年度中に算定する区分を決めることになります。誓約して申請したあと未達に終われば、返還の対象になるからです。

算定している区分がⅢかⅣなら、職場環境等要件の取組が8以上あるかを数えるところから始まります。ⅠかⅡなら、賃金改善後の年収見込額460万円以上の人材で満たすか、職場環境等要件14以上で満たすかを先に選ぶ順番になります。

そのうえで、都道府県の受付期間に合わせて計画書を出します。受付の時期は都道府県ごとに違うので、加算の区分の検討はそれより前に終えておくことになります。

※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。

令和8年6月の加算の拡充との関係

この補助金は、令和8年6月に適用される報酬改定を待たずに賃上げを先に行うための措置です。

実施要綱の目的には、令和8年度障害福祉サービス等報酬改定の時期を待たず、緊急的対応として賃上げの支援を行うと書かれています。令和8年度の報酬改定は令和8年6月1日に適用されます(一部は令和8年4月1日)。補助金の対象は令和7年12月から令和8年5月に相当する6か月分です。加算が上がるまでの期間を、補助金がそのまま埋める設計になっています。

時期の順で見ると次のようになります。

時期賃上げの原資
令和7年12月〜令和8年5月障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金(6か月分)
令和8年6月〜処遇改善加算(令和8年度報酬改定による)

この補助金が終わること自体は、原資が減ることを意味しません。原資が時限の補助金から報酬の加算に切り替わります。加算の区分ごとの加算率や要件、計算の方法は別の記事で扱っています。

関連する記事を挙げます。

令和9年度以降は決まっていない

令和9年度以降に同じ補助金が続くかどうかは、実施要綱にも予算の資料にも書かれていません。

実施要綱は、令和7年度補正予算に基づく6か月分の措置として作られています。同じ趣旨の措置を次年度も置くという予告は、この記事で確認した一次情報にはありません。継続を前提にした資金計画は立てられない、というのが2026年8月23日時点の状況です。

受付の状況も都道府県ごとに違います。愛知県では、2026年8月23日の時点でAパターン・Bパターンとも受付を終えています。交付を受けた事業所には、そのあとの事務が残ります。東京都の場合、実績報告書の提出期限は令和8年12月末日で、書類は2年間保存します。

令和8年6月以降も続く原資は、加算のほうです。人件費の計画は報酬の加算で組み立て直すことになります。自分の都道府県の受付期間や様式は、障害福祉の担当課の案内で確認してください。

よくある質問

Q. 賃上げの補助金と処遇改善加算は同じものですか?
A. いいえ、別の制度です。処遇改善加算は障害福祉サービス等報酬の一部で、区分を届け出れば要件を満たす間は報酬に上乗せされます。障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金は令和7年度補正予算による時限の措置で、令和7年12月から6か月分に限られます。申請先も都道府県で、加算とは別の手続です。
Q. 補助額は職員1人あたり月額いくらですか?
A. 1人あたりの定額で決まる制度ではありません。補助額は基準月(原則令和7年12月)1か月分の障害福祉サービス等総報酬に、サービス区分ごとの交付率を掛けて算出します。就労継続支援B型と就労継続支援A型はいずれも11.4%です。同じB型でも、基準月の報酬額が違えば交付額は変わります。
Q. 就労継続支援B型の利用者も対象になりますか?
A. いいえ、利用者は補助の受け手になりません。実施要綱の対象者は「事業所に勤務する福祉・介護職員以外も含む障害福祉従事者」です。B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばず工賃を受け取る立場なので、この定義に当たりません。A型の利用者については要綱が可否を直接述べておらず、職員向けの制度であって利用者本人への賃上げの制度ではない、というところまでが言えることです。
Q. 処遇改善加算を算定していなくても申請できますか?
A. 条件つきでできます。基準月に加算を算定していない場合でも、申請の時点で令和8年度中に算定すると誓約すれば、基準月から算定しているものとして扱われます。誓約した内容が未達に終わった場合は、返還の対象になります。
Q. 交付を受けた額は自由に使えますか?
A. いいえ、全額を賃金改善に充てる義務があります。前年の同時期と比べて賃金水準を低下させてはならないとされています。交付決定より前に決まっていた賃金改善の原資に充てることも、その代わりに本事業で賃金改善を行うことも認められません。一部の職員や一部の事業所に著しく偏らせる配分もできません。
Q. 令和9年度も同じ補助金がありますか?
A. 決まっていません。実施要綱は令和7年度補正予算に基づく6か月分の措置として作られており、令和9年度以降の同種の措置についての記載はありません。2026年8月23日時点では、愛知県のように令和8年度分の受付を終えた都道府県もあります。継続を前提にした資金計画は立てられません。
この記事の根拠資料
1.
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長
実施要綱1〜9および別紙1表1・表2の交付率を確認・2026年8月23日確認
2.
厚生労働省障害保健福祉部
p.1「主な施策」(1)障害福祉分野における賃上げに対する支援の予算額を確認・2026年8月23日確認
3.
東京都福祉局
第8条(要件)・第13条(実績報告)・第18条・別記(補助条件)を確認・2026年8月23日確認
4.
愛知県 障害福祉課
支給パターンごとの支払予定時期と受付終了の表示を確認・2026年8月23日確認
最終確認:2026.08.23

この記事の更新履歴

2026.08.23初回公開
執筆・監修
徳永 崇志

徳永 崇志

現役の就労継続支援B型事業所運営者

埼玉県志木市で実際にB型事業所を運営しています。

福祉経営ナビでは、厚生労働省・自治体・WAM NET等の一次情報を確認しながら、現場での経営判断に必要な情報を整理しています。

プロフィールを見る →

自分の地域には、
どれくらい利用者候補がいる?

障害福祉 商圏ミニレポート

所在地をもとに、周辺人口・障害福祉事業所数・紹介元になる相談支援事業所の数などを簡易集計します。これから開設する方には出せる場所と参入余地を、すでに運営している方には商圏内の競合と紹介元の分布を、目的にあわせて整理します。

その場でダウンロードできる資料ではありません。いただいた内容をもとに1件ずつ作成し、2〜3営業日以内にメールでお送りします。

知りたいこと必須複数選択できます

先に開業状況を選んでください。

送信いただいた内容は、レポートの作成とご連絡のためだけに使用します。送信によりプライバシーポリシーに同意したものとみなします。

送信後、2〜3営業日以内にメールでお送りします。