キャリアアップ助成金
障害者正社員化コースの額と手順
A型の利用者は対象外
キャリアアップ助成金の障害者正社員化コースは、障害のある有期雇用労働者等を正規雇用等へ転換した事業主に支給されます。令和8年4月1日時点の中小企業の額は、重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者を有期雇用から正規雇用へ転換した場合で1人あたり120万円です。これは支給総額で、第1期の6か月分60万円と第2期の6か月分60万円に分けて支給されます。重度以外の身体障害者・重度以外の知的障害者・発達障害者・難病患者・高次脳機能障害者は90万円(45万円×2期)です。
対象労働者の要件には「就労継続支援A型事業における利用者でないこと」が明記されています。A型の利用者を正社員化しても、このコースは使えません。B型の利用者は事業所と労働契約を結ばないため、助成金が定義する有期雇用労働者等にそもそも当たりません。使えるのは、障害のある職員を有期雇用から正規雇用へ転換する場面です。キャリアアップ計画は、転換の実施日の前日までに管轄の労働局長へ提出しておく必要があります。
- 支給総額(中小企業・1人あたり)
- 重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者を有期雇用から正規雇用へ転換で120万円。重度以外の身体障害者・重度以外の知的障害者・発達障害者・難病患者・高次脳機能障害者で90万円(令和8年4月1日時点)
- 1期あたりの額
- 支給対象期間1年を第1期6か月・第2期6か月に分ける。120万円の場合は1期あたり60万円。第1期で不支給になると第2期は申請できない
- 転換パターン別(中小企業・支給総額)
- 有期雇用から無期雇用、無期雇用から正規雇用への転換は、重度身体障害者等で60万円(30万円×2期)、重度以外の身体障害者等で45万円(22.5万円×2期)
- 事前手続
- キャリアアップ計画をコース実施日の前日までに管轄労働局長へ提出。計画期間は3年以上5年以内
- 対象にならない人
- 就労継続支援A型事業の利用者(対象労働者の要件に明記)。B型の利用者は労働契約がなく、有期雇用労働者等の定義に当たらない
- 申請期限
- 転換後6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内。公募回・締切日はなく通年受付
目次
障害者正社員化コースの額と支給の回数
中小企業が障害のある職員を有期雇用から正規雇用へ転換した場合、支給総額は1人あたり120万円か90万円です。
額は、障害の区分と転換のパターンの組み合わせで6通りに分かれます。次の表は令和8年4月1日時点の中小企業の額です。支給総額と、1期あたりの額を分けて示します。
| 障害の区分(令和8年度・中小企業) | 転換のパターン | 支給総額(1人あたり) | 1期あたりの額 |
|---|---|---|---|
| 重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者 | 有期雇用→正規雇用 | 120万円 | 60万円×2期 |
| 同上 | 有期雇用→無期雇用 | 60万円 | 30万円×2期 |
| 同上 | 無期雇用→正規雇用 | 60万円 | 30万円×2期 |
| 重度以外の身体障害者・重度以外の知的障害者・発達障害者・難病患者・高次脳機能障害者 | 有期雇用→正規雇用 | 90万円 | 45万円×2期 |
| 同上 | 有期雇用→無期雇用 | 45万円 | 22.5万円×2期 |
| 同上 | 無期雇用→正規雇用 | 45万円 | 22.5万円×2期 |
大企業の額は別に定められています。重度身体障害者等を有期雇用から正規雇用へ転換した場合は90万円(45万円×2期)です。
支給対象期間は1年で、第1期の6か月と第2期の6か月に分かれます。それぞれの期が終わってから、個別に支給申請します。第1期が不支給なら第2期は申請できないため、最初の6か月の記録が総額を左右します。
支給額が各支給対象期の賃金総額を超える場合は、その賃金総額が上限になります。転換後も勤務時間が短いままだと、表の額がそのまま支給されるとは限りません。
名前の似た「正社員化コース」は、これとは別のコースです。障害の有無を問わない一般の転換に使います。中小企業の有期雇用から正規雇用への転換で80万円という額が知られています。ただしこの80万円は、重点支援対象者に該当する場合の額です。該当しない場合は40万円で、しかも第1期のみの1回で終わります。重点支援対象者は、次のいずれかに当たる人です。
- 雇入れから3年以上の有期雇用労働者
- 雇入れから3年未満で一定の要件を満たす者
- 派遣労働者、母子家庭の母等・父子家庭の父、人材開発支援助成金の特定訓練修了者
対象になる「障害者」の範囲と対象労働者の要件
対象になる障害は6種類で、対象労働者の要件には就労継続支援A型の利用者でないことが含まれます。
障害の区分は2つのグループに分かれます。1つは重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者です。もう1つは、重度以外の身体障害者・重度以外の知的障害者・発達障害者・難病患者・高次脳機能障害者です。前のグループのほうが支給額は高く設定されています。
対象労働者の要件のひとつに、就労継続支援A型事業における利用者でないことが置かれています。障害者正社員化コースのパンフレットに、対象労働者の要件②として書かれた文言です。この除外はこのコースだけの話ではありません。障害の有無を問わない正社員化コースの対象労働者要件にも、同じ趣旨の除外が置かれています。
申請様式(別添様式2-2)にも、対象労働者がA型事業の利用者に該当するかどうかを確認する欄があります。書類の上でも必ず問われる項目です。
転換の手順と時期
キャリアアップ計画を転換の実施日の前日までに提出し、転換後は6か月ごとに2回申請します。
手順を時系列で並べます。
- 事業所ごとにキャリアアップ管理者を配置する
- キャリアアップ計画を作成し、管轄の労働局長へ提出する(計画期間は3年以上5年以内)
- 就業規則または労働協約その他これに準ずるものに、転換制度を規定する
- 転換を実施する
- 転換後6か月分の賃金を支給する
- 第1期の支給申請(賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内)
- さらに6か月経過後に第2期の支給申請
間違えやすいのは計画の提出時期です。計画はコース実施日の前日までに提出します。前日が行政機関の休日にあたる場合は、翌開庁日が期限になります。厚生労働省のパンフレットは、1か月前など余裕を持った提出を勧めています。転換を済ませてから計画を出しても、その転換は要件を満たしません。
このコースに公募回や締切日はありません。受付は通年で、期限は上の個別の申請期限だけです。年度の途中でも動き出せますが、転換の実施は計画の提出を済ませてからになります。
雇用関係助成金 対象者早見表(B型利用者・A型利用者・職員)
キャリアアップ助成金を含む雇用関係助成金について、B型の利用者・A型の利用者・職員の対象可否を根拠つきで並べています。
資料を見る →支援員の有期雇用を正規雇用へ切り替えるなら、決める順番は賃金よりも計画と規程が先になります。
最初に置くのは転換の実施日です。キャリアアップ計画の提出期限がその前日に固定されるため、実施日が動くと全体の日程が動きます。
次に就業規則を見ることになります。転換制度の規定があるか、正規雇用労働者に適用される昇給と賞与または退職金の規定がそろっているかを確認します。改定が必要なら、実施日から逆算して届出の時間を見込んでおきます。
賃金の設計は最後です。このコースで求められるのは減額させないことですが、支給額は各支給対象期の賃金総額が上限になります。勤務時間を短いままにすると、表の額に届かない場合があります。
この順番で組めば、計画の提出が転換の実施日より後ろにずれることはありません。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
賃金の要件
障害者正社員化コースの賃金要件は、転換後6か月間の賃金を転換前6か月間より減額させていないことです。
このコースに3%以上の増額という要件はありません。数値の増額要件があるのは、別コースの正社員化コースのほうです。2つを混同すると、必要のない賃上げを前提にして計画を組むことになります。
| コース(令和8年度) | 賃金についての要件 |
|---|---|
| 障害者正社員化コース | 転換後6か月間の賃金を、転換前6か月間の賃金より減額させていないこと |
| 正社員化コース | 転換後6か月間の賃金を、転換前6か月間の賃金より3%以上増額させていること。第2期は第1期と比べて合理的な理由なく引き下げないこと |
転換先が「正規雇用労働者」に当たるかどうかも、賃金の設計に関わります。定義は、賞与または退職金の制度と昇給の制度が適用されていることです。原則不支給と定めた賞与規定や、支給の有無が不明瞭な規定では認められません。転換の受け皿となる正社員区分の規程を、転換の前に整えておく必要があります。
B型の利用者・A型の利用者・職員の別
A型の利用者は要件に明記された対象外、B型の利用者は定義上の対象外、職員は対象になりえます。
同じ「対象外」でも、根拠の性格が違います。
| 立場(令和8年度) | 障害者正社員化コースの対象 | 根拠の性格 |
|---|---|---|
| 就労継続支援B型の利用者 | 対象にならない | 定義の組み合わせによる帰結。名指しの除外規定ではない |
| 就労継続支援A型の利用者 | 対象にならない | 対象労働者の要件に「A型事業における利用者でないこと」と明記 |
| 事業所の職員(支援員・サービス管理責任者など) | 対象になりうる | 名指しの除外規定がなく、他の要件を満たせば対象 |
B型の利用者が対象外になる理由は、名指しの除外規定ではありません。パンフレットの用語集は、有期雇用労働者を「期間の定めのある労働契約を締結する労働者」と定義しています。一方、B型の利用者が事業所と結ぶのは利用契約であり、労働契約ではありません。この2つを合わせると、B型の利用者は有期雇用労働者等に当たらず、対象労働者になりえないという結論になります。
職員のほうは、名指しの除外がない代わりに一般の要件をすべて満たす必要があります。障害のある支援員を有期雇用から正規雇用へ転換する場面が、このコースの想定する使い方です。ただし障害福祉サービス事業所を主語にした事例や記述は、厚生労働省のパンフレットにもQ&Aにも見当たりません。一般の事業主向けの制度をそのまま使う位置づけになります。
法人格による対象可否の差はありません。社会福祉法人・NPO法人・医療法人も、この助成金の「事業主」に含まれます。中小企業の額が使えるかどうかは、資本金のない事業主なら常時雇用する労働者の数だけで判定されます。ただし障害福祉サービス事業がどの業種区分に当たるかは、パンフレットにも支給要領にも明記がありません。区分は事業所の実態に応じて、管轄の労働局に確認してください。
関連する記事を挙げます。
- B型事業所の職員採用 支援員を採用するときの実務
- A型とB型の違い 雇用契約の有無による制度の違い
不支給になる条件
労働関係法令の違反や労働保険料の滞納があると、転換の要件を満たしていても支給されません。
共通の不支給要件は次のとおりです。
- 支給申請日の前日から過去1年間に、労働関係法令の違反があった場合
- 性風俗関連営業等や暴力団関係に当たる場合
- 支給申請日または支給決定日の時点で倒産している場合
- 支給申請時に雇用保険の適用事業所でない場合
- 支給申請年度の前年度より前の保険年度に、労働保険料の滞納がある場合
- 不正受給から5年以内の申請、または不正受給者名の公表に同意しない場合
不正受給が発覚したときの負担は、返還だけでは終わりません。返還額に加えて、年3%の延滞金と返還額の20%の違約金が請求されます。代理人が不正受給に関与または黙認した場合は、代理人も連帯して債務を負う扱いです。
なお、この助成金の申請書の作成・提出代行・事務代理を報酬を得て業として行えるのは、社会保険労務士だけです。雇用保険法が社会保険労務士法の別表第一に掲げられているためで、根拠は同法第2条第1項と第27条です。
支給決定を受けたあとも、支給申請書と添付書類の写しは5年間保存します。会計検査の対象になりうるためです。
令和7年度以前に行った転換には、旧年度の要件が適用されます。年度をまたいで手続きが進む場合は、その年度のパンフレットで要件と額を確認してください。
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか B型が使える制度の全体像
よくある質問
自分の地域には、
どれくらい利用者候補がいる?
所在地をもとに、周辺人口・障害福祉事業所数・紹介元になる相談支援事業所の数などを簡易集計します。これから開設する方には出せる場所と参入余地を、すでに運営している方には商圏内の競合と紹介元の分布を、目的にあわせて整理します。
その場でダウンロードできる資料ではありません。いただいた内容をもとに1件ずつ作成し、2〜3営業日以内にメールでお送りします。
