障害福祉事業所の物価高騰支援金は
なぜ都道府県ごとに額も締切も違うのか
自分の自治体の公募を探す手順
障害福祉事業所向けの物価高騰支援金に、全国共通の額も締切もありません。財源は内閣府の「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」です。国が都道府県・市区町村に交付金を配分し、事業の中身は各自治体が設計します。そのため対象施設・単価・申請期間はすべて自治体ごとに違います。
単価の建て方も自治体で分かれます。大分県の令和8年度の補助金では、障害福祉施設の入所が定員1人あたり18,000円、通所が1施設あたり82,000円でした。通所は定員に関係のない施設単位の定額です。受付期間は短く、2026年8月23日時点では、確認した大分県・山口県・東京都のいずれも令和8年度分の受付を終えています。事業所側の作業は、公募が出てから探すのではなく、自分の自治体のお知らせを定期的に見に行くことになります。
- 財源と決定権
- 内閣府「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」。交付先は地方公共団体で、対象施設・単価・申請期間は都道府県または市区町村が設計する
- 単価の例(大分県・令和8年度)
- 障害福祉施設は入所=定員1人あたり18,000円、通所=1施設あたり82,000円、訪問等=1施設あたり25,000円。定員の基準日は令和8年3月1日
- 受付期間の例(令和8年度)
- 大分県は令和8年5月20日〜7月17日、山口県は令和8年4月8日〜6月30日必着、東京都は令和8年7月1日〜7月24日。いずれも2026年8月23日時点で受付終了
- 補助の単位
- 施設・事業所ごとの定額。職員個人や利用者個人への給付ではなく、賃金改善への充当義務も一次情報には置かれていない
- 申請の単位
- 同一法人が複数の施設を運営していても、施設・事業所ごとに申請が必要な例がある(大分県・令和8年度)
目次
国の交付金が自治体の事業になる構造
物価高騰支援金は国の交付金を財源にしていますが、事業を設計するのは都道府県や市区町村です。
財源の正式名称は「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」です。通称は重点支援地方交付金といいます。所管は内閣府地方創生推進事務局です。この交付金の交付対象は、事業所ではなく地方公共団体です。国が都道府県・市区町村に交付金を配分し、事業を設計するのは自治体という順番になっています。
そのため「障害福祉事業所の物価高騰支援金はいくらか」という問いに、全国共通の答えはありません。事業所が向き合う相手は国ではなく、自分の都道府県または市区町村です。
厚生労働省の令和7年度補正予算の資料も、この整理を裏づけています。障害福祉等分野の食材料費・光熱水費高騰への支援は、厚生労働省の独立した予算枠ではありません。重点支援地方交付金の内数として整理されています。同じ資料は就労系サービスについて別の記述も置いています。障害福祉施設向けの支援に加えて、中小企業向けのエネルギー価格高騰対策支援の活用も促進するとされています。
制度設計の粒度も自治体で違います。令和8年度の3例を並べます。
| 自治体 | 令和8年度の事業名 | 設計の粒度 |
|---|---|---|
| 東京都 | 障害者施設等物価高騰緊急対策事業 | 障害福祉分野だけで1つの事業 |
| 大分県 | 社会福祉施設等物価高騰対策緊急支援補助金 | 福祉・医療・私学等を横断して1つの補助金 |
| 山口県 | 障害者支援施設等食材料費高騰対策支援事業/光熱費高騰対策支援事業 | 食材料費と光熱費で別々の事業 |
事業名がそもそも揃っていません。「物価高騰支援金」という言葉で探しても、自分の自治体のページに行き着かないことがあります。
額の決まり方
額は定員1人あたりの定額と1施設あたりの定額の2通りがあり、どちらを使うかは自治体が決めます。
定員あたりか施設あたりかで、同じ制度でも受け取る額の性格が変わります。定員あたりなら、定員の大きい施設ほど額が増えます。施設あたりなら、定員に関係なく1施設に決まった額が出ます。
大分県の令和8年度の補助金は、この2つを施設の類型で使い分けています。入所系は定員あたり、通所系と訪問系は施設あたりです。就労継続支援B型のような通所のサービスが対象に入る場合、定員が20人でも10人でも同じ額になる建て方です。
かかった経費の何割という補助率の計算はしません。区分ごとの定額です。実際に電気代がいくら上がったかを積み上げて請求する制度ではありません。
定員を数える基準日も決まっています。大分県は令和8年3月1日を基準日として、その時点で指定等を受けている定員数で計算します。
実例で見る額
一次情報で単価まで確認できたのは大分県の令和8年度の補助金で、通所は1施設あたり82,000円です。
大分県の「社会福祉施設等物価高騰対策緊急支援補助金」は、令和8年度に申請を受け付けた事業です。対象は令和7年度の電気代・食材費等の高騰影響額です。障害福祉施設向けの単価は3区分に分かれています。
| 区分(大分県・令和8年度) | 単価 | 額の単位 |
|---|---|---|
| 入所 | 18,000円 | 定員1人あたり |
| 通所 | 82,000円 | 1施設あたり |
| 訪問(看護ステーションを含む)・その他 | 25,000円 | 1施設あたり |
同じ補助金の中でも、分野が変われば単位そのものが変わります。保育所等は定員1人あたり4,000円です。病院・診療所(4床以上)は許可病床1床あたり20,000円です。福祉・医療・私学を1本の補助金にまとめている自治体では、自分の施設がどの区分に入るかを先に確かめる必要があります。
大分県では、高齢者施設と障害福祉施設を一体で運営する共生型の施設に重複申請の制限があります。どちらか一方の施設からしか申請できません。
山口県と東京都の令和8年度の単価は、この記事では扱いません。県・都の公式ページに、金額そのものが掲載されていないためです。単価は外部に委託した事務局のサイトや、ページ内で動的に表示される表で案内されています。一次情報で確認できた額だけを載せる方針をとっています。
補助金・助成金 申請前チェックシート
受付期間の短い制度に備えて、申請前に済ませておく手続と期限を順に確かめられるようにしています。
資料を見る →受付期間が短く、申請制であること
受付期間は3週間から3か月弱で、2026年8月23日時点では確認した3都県とも令和8年度分が終わっています。
物価高騰支援金は、報酬のように毎月自動で入ってくるものではありません。自治体が公募を出し、事業所が期間内に申請する仕組みです。期間を過ぎれば、対象施設であっても受け取れません。
| 自治体 | 令和8年度の受付期間 | 補助の対象になる期間 |
|---|---|---|
| 山口県 | 令和8年4月8日〜令和8年6月30日(必着) | 公式ページに記載なし |
| 大分県 | 令和8年5月20日〜令和8年7月17日 | 令和7年度の高騰影響額 |
| 東京都 | 令和8年7月1日〜令和8年7月24日 | 令和8年1月1日〜令和8年6月30日 |
3つとも令和8年度の事業です。それでも受付の時期は揃っておらず、対象になる期間の切り方も違います。大分県は前年度分をあとから申請する設計です。東京都は当年度の上半期分を、その年の7月に申請する設計です。他県の時期を自分の県に当てはめる読み方は効きません。
2026年8月23日時点で、大分県のページは「受付終了」、東京都のページは「事前申請の受付は終了しました」と表示されています。山口県も令和8年6月30日必着で締め切られています。東京都の受付期間は3週間強しかありませんでした。
申請の手続も自治体ごとに違います。大分県は電子申請システムでの申請が基本です。同一法人が複数の施設を運営していても、施設・事業所ごとに申請します。受取口座が確認できる通帳等の写しの添付も求められます。東京都は電子申請フォームを使い、申請方法や交付要綱は別のページで案内されています。
自分の事業所が対象に入るかの確かめ方
この補助金は施設・事業所を単位とするため、利用者や職員が個人として受け取る制度ではありません。
雇用関係の助成金と違い、この制度は誰を雇っているかを見ません。見るのは、その施設が対象施設の一覧に載っているかどうかです。立場ごとに整理すると次のようになります。
| 立場 | 補助金の直接の受け手になるか |
|---|---|
| B型の利用者 | ならない。事業所への定額補助であり、利用者個人への給付ではない |
| A型の利用者 | ならない。雇用契約があっても、利用者個人への給付ではない |
| 事業所の職員 | ならない。賃金改善への充当義務がある賃上げの補助金とは性格が違う |
一次情報に、利用者や職員を名指しで除外した規定があるわけではありません。補助の単位が施設・事業所であることと、単価が定員数や施設数で決まることを合わせると、個人は直接の受け手にならないという結論になります。
職員の賃上げを目的とした制度は別にあります。障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業は令和7年度補正予算による時限の補助金で、交付された額を全額賃金改善に充てる義務があります。物価高騰支援金は電気代・食材費等の高騰分に充てるもので、目的が違います。
確かめるのは施設の側の条件です。大分県の令和8年度の例では、対象外になる施設が4つ挙げられています。
- 国・地方公共団体が実施主体となる施設
- 申請時に休止・廃止している施設
- 令和8年3月2日以降に新規開設した施設
- 利用者負担が生じる施設で、令和7年度中に電気・ガス・食材費の高騰を理由に利用者負担額を引き上げた施設
4つ目には例外が置かれています。引き上げ分を利用者に返金し、価格転嫁を解消した場合は補助対象として扱われます。
法人格による除外は、確認した範囲の一次情報にはありません。社会福祉法人でもNPO法人でも株式会社でも、施設種別の一覧に入っていれば対象になりえます。
就労継続支援B型が対象に入るかどうかは、自治体ごとに確かめる作業が残ります。大分県の対象施設は「障害福祉サービス施設・事業所等、地域生活支援事業所等」という包括的な書き方です。サービス種別を個別に列挙していません。B型を名指しで除外した記述も、名指しで含めた記述もない状態です。東京都は対象施設の一覧をページ内の表で案内しています。自分の自治体の一覧を開いて、サービス種別の欄を直接見るのが確実です。
自分の自治体の公募を探す
探す入口は都道府県の公式サイトで、「物価高騰」という語で担当課のページに当たりを付けます。
制度名で検索しても行き着きにくいのがこの制度です。東京都は「障害者施設等物価高騰緊急対策事業」、大分県は「社会福祉施設等物価高騰対策緊急支援補助金」です。山口県は「食材料費高騰対策支援事業」と「光熱費高騰対策支援事業」に分かれています。共通しているのは「高騰」という語だけです。
探す順番は次のようになります。
- 自分の都道府県の公式サイトで「物価高騰」「高騰対策」を検索する
- 障害福祉の担当課だけでなく、高齢者福祉や社会福祉の担当課のページも見る
- 市区町村が独自に事業を立てている場合があるため、市区町村の公式サイトでも同じ語で検索する
担当課が分野をまたぐのは、交付金の使い道を自治体が決めているからです。大分県の窓口は高齢者福祉課で、障害福祉施設もその補助金に含まれています。障害福祉のページだけを見ていると気づけません。
外部の事務局に委託されている場合もあります。山口県と大分県は、いずれも受付・審査を外部の事務局に委託しています。山口県では県のページに概要だけがあり、単価や申請の詳細は事務局のサイト側に置かれています。県のページで終わりにしないことです。
受付期間が短いので、公募が出てから探し始めると間に合いません。都道府県のお知らせを見る担当と頻度を、先に事業所の中で決めておくことになります。
頻度は受付期間の長さから逆算します。確認した3都県の令和8年度の受付期間は3週間から3か月弱でした。月1回の確認では、3週間で閉じる公募を取りこぼす可能性があります。
担当は、報酬請求や加算の届出で自治体のページを普段から開いている職員に寄せると重複が減ります。管理者かサービス管理責任者が見ているお知らせ一覧に、物価高騰の項目を足す形です。
見に行く先は3つになります。都道府県の障害福祉担当課、福祉全体の担当課、市区町村の福祉担当課です。委託の事務局サイトがある自治体では、そこを1つ加えます。
確認した日付だけでも残しておくと、翌年度に前回いつ公募が出たかをたどれます。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか B型が使える制度全体の位置づけ
年度で消える制度であること
この支援金は毎年度の予算措置に依存していて、次の年度も同じ形で続く保証はありません。
重点支援地方交付金は、補正予算や予備費で繰り返し積み増されてきました。措置の額は年度ごとに大きく違います。
| 措置 | 額 |
|---|---|
| 令和5年度補正予算 | 1兆5,592億円 |
| 予備費(令和5年12月) | 1兆1,311億円 |
| 令和6年度補正予算 | 1兆7,351億円 |
| 予備費(令和7年5月) | 1,000億円 |
| 令和7年度補正予算 | 2兆377億円 |
| 令和8年度補正予算 | 1,000億円 |
令和8年度補正予算の1,000億円は、令和7年度補正予算の2兆377億円と桁が違います。国の交付金の規模が変われば、自治体が組める事業の規模も変わります。前年度と同じ単価が出る前提は置けません。
令和8年度については、自治体向けの事務連絡が2本出ています。1本目は令和8年4月1日付「令和8年度における重点支援地方交付金の取扱い等について」です。2本目は令和8年6月5日付「令和8年度補正予算の成立を踏まえた『重点支援地方交付金』の取扱い等について」です。
令和9年度分の公募時期は、確認した各自治体の一次情報には書かれていません。大分県と山口県は令和8年度の受付を年度前半に置いていました。東京都は上半期分をその年の7月に置いていました。この並びを参考にする程度にとどまります。
年度で消える制度なので、収支計画の固定収入には数えられません。入ったら電気代の一部が戻る臨時収入として扱うのが実際に合います。
関連する記事を挙げます。
- 就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する 臨時収入を除いた本体の収支の見方
よくある質問
自分の地域には、
どれくらい利用者候補がいる?
所在地をもとに、周辺人口・障害福祉事業所数・紹介元になる相談支援事業所の数などを簡易集計します。これから開設する方には出せる場所と参入余地を、すでに運営している方には商圏内の競合と紹介元の分布を、目的にあわせて整理します。
その場でダウンロードできる資料ではありません。いただいた内容をもとに1件ずつ作成し、2〜3営業日以内にメールでお送りします。
