就労選択支援はどこがやるのか
指定を受けられる事業者の要件と
参入を判断するための材料
就労選択支援の指定を受けられるのは、就労移行支援または就労継続支援に係る指定障害福祉サービス事業者のうち、過去3年以内に当該事業者の事業所の3人以上の利用者が新たに通常の事業所に雇用された実績を持つ事業者です(指定基準省令第173条の6)。障害者就業・生活支援センターの受託法人など、これと同等の就労支援の経験と実績があると都道府県知事等が認める事業者も実施主体になれます。2026年8月16日に確認した時点で、2025年10月1日施行のこの要件に変更はありません。
就労継続支援B型だけを運営している法人でも、実績要件を満たせば既存事業所への併設で指定を取れます。ただし就労選択支援は多機能型事業所の対象サービスに含まれておらず、定員規模別単価もありません。基本報酬は事業所の規模にかかわらず1日1,210単位の一本値です。
- 実施主体の要件
- 就労移行支援または就労継続支援の指定事業者で、過去3年以内に自らの事業所の利用者3人以上が新たに一般就労したこと
- 同一法人の他事業所の実績
- 流用も合算もできない(就労選択支援に関するQ&A VOL.1 問5)
- 多機能型事業所内の実績
- 一体的に行う複数事業の実績は合算してよい(同 問4)
- 人員
- 就労選択支援員を常勤換算で利用者数を15で除した数以上。サービス管理責任者の配置を求める規定はない
- 管理者
- 専従が原則。管理上支障がない場合は他の職務や他事業所の職務との兼務が可能
- 基本報酬
- 就労選択支援サービス費 1日につき1,210単位。定員規模別単価の対象外
- 情報公表未報告減算
- 報酬告示上は所定単位数の5%減算。ただし情報公表システムの報告・公表機能が整備されるまでの間は適用しない取扱い(Q&A VOL.1 問7)
- 支給決定期間と日数
- 原則1か月。1月の利用日数上限は各月の暦日数から8日を控除した日数
- 中立性の制約
- 就労移行支援や就労継続支援を利用中の人が更新や事業所変更を検討して使う場合、同一法人が運営する就労選択支援は利用できない
- 指定の有効期間
- 実施主体要件による指定は次期更新の際まで有効で、更新時の要件は別途定めるとされている
- 全国の事業所数
- 令和8年6月時点で965か所(都道府県532・指定都市213・中核市220)。厚生労働省が指定権者別の数と事業所一覧を公表している
目次
手を挙げられる事業者は最初から絞られている
就労選択支援は、指定基準省令のなかで実施主体そのものに条件が置かれている珍しいサービスです。第173条の6は、指定就労選択支援事業者を「就労移行支援又は就労継続支援に係る指定障害福祉サービス事業者であって、過去三年以内に当該事業者の事業所の三人以上の利用者が新たに通常の事業所に雇用されたもの」、またはこれと同等の就労支援の経験と実績があると都道府県知事等が認める事業者に限っています。就労系サービスを持たない法人が新規に参入する道は、基本的に用意されていません。
同等と認める例として、解釈通知は障害者就業・生活支援センター事業の受託法人、自治体設置の就労支援センター、障害者能力開発助成金による障害者能力開発訓練事業を行う機関を挙げています。いずれも過去3年以内に合計3人以上の一般就労実績があることが前提です。
実績が足りない事業者向けの緩和も二つ置かれています。同一市区町村内に就労選択支援事業所が存在しない場合は、指定申請前の過去10年間の連続する3年間で合計3人以上という数え方が認められます。事業運営が3年に満たない事業所でも、その利用を経て一般就労した人が合計3人以上いれば要件を満たします。
参入判断で見落としやすいのが、実績を誰の名義で数えるかです。就労選択支援に関するQ&A VOL.1は、多機能型事業所として複数の事業を一体的に行っている場合、就労移行支援から1人・B型から2人といった事業をまたいだ合算を認めています(問4)。一方で、同一法人が運営する別の事業所の実績を流用したり合算したりすることはできず、その場合は実施主体要件を満たさないとしています(問5)。指定を取ろうとしている事業所そのものに3人分の実績がなければならない、という整理です。
人員・設備・運営の要件
国が定めている要件を整理すると次のようになります。
| 区分 | 国の基準 | 根拠 |
|---|---|---|
| 実施主体 | 就労移行支援または就労継続支援の指定事業者で、過去3年以内に当該事業者の事業所の3人以上の利用者が新たに通常の事業所に雇用されたもの。同等の経験・実績があると都道府県知事等が認める事業者も可 | 省令第173条の6 |
| 就労選択支援員の員数 | 常勤換算方法で、利用者の数を15で除した数以上。利用者の数は前年度の平均値(新規指定は推定数)。1人未満の配置でも差し支えないとされている | 省令第173条の3、解釈通知第九の二の1(1) |
| 就労選択支援員の資格 | 就労選択支援員養成研修の修了。2028年3月31日までは基礎的研修またはこれと同等以上の研修の修了者をみなして配置できる | 令和7年厚生労働省告示第89号 |
| サービス管理責任者 | 配置を求める規定は置かれていない。個別支援計画の作成義務もない | 省令第173条の3、第173条の9 |
| 管理者 | 事業所ごとに専らその職務に従事する管理者を置く。管理上支障がない場合は他の職務や他の事業所の職務に従事させてよい | 省令第173条の4(第51条を準用) |
| 設備 | 訓練・作業室、相談室、洗面所、便所、多目的室その他運営に必要な設備。相談室と多目的室は兼用可。専用が原則だが、利用者の支援に支障がない場合はこの限りでない | 省令第173条の5(第81条を準用) |
| 訓練・作業室の面積 | 国は具体的な面積の基準を明示していない | Q&A VOL.1 問1 |
| 運営 | アセスメントは対面での実施が基本。本人と市町村、相談支援事業者、公共職業安定所等を招集した会議を開き、結果を本人と相談支援事業者に提供する | 省令第173条の7 |
サービス管理責任者が不要で個別支援計画も要らない点は、就労移行支援やB型と比べたときの人員コストの差になります。反面、アセスメントの会議開催と結果提供は省令上の義務で、未実施の事項があると当該利用者の基本報酬を算定できないと留意事項通知に明記されています。
多機能型には入らないが、併設と兼務は広く認められている
省令第215条が定める多機能型事業所の対象は、生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、児童発達支援、放課後等デイサービスで、就労選択支援は入っていません。定員規模別単価の対象サービスにも含まれていないため、既存事業所の定員に上乗せする形での設計はできません。
その代わり、併設と兼務は広く認められています。解釈通知は、一体的に運営する生活介護等の事業所に配置される常勤の職業指導員、生活支援員、就労移行支援員等の直接処遇職員が、サービス提供に支障がない場合に就労選択支援員に従事でき、その兼務時間を就労選択支援員の常勤換算に算入できるとしています。設備も同一敷地内の他事業所の備品を使え、賃借でも構いません。Q&Aの早見表では、常勤8時間の直接処遇職員が就労定着支援員と就労選択支援員を4時間ずつ兼務する形は可、両方を8時間ずつ並行して兼務する形は不可と示されています。
収支は1日1,210単位から逆算する
基本報酬は就労選択支援サービス費が1日につき1,210単位で、令和8年度報酬改定でも変更されていません。定員規模別単価がないので、小さく始めても単価は下がりません。ただし利用は積み上がりません。支給決定期間は原則1か月で、延長は例外事由に該当する場合に一度だけ、1月の利用日数上限は各月の暦日数から8日を控除した日数です。1人の利用者から得られる報酬は最大でもおおむね1か月分にとどまり、常に新しい利用者が入ってこないと稼働が止まります。
だからこそ、地域に何人分の需要があるかを先に見積もる必要があります。対象は2025年10月から新たにB型を利用する意向がある人が中心で、2027年4月以降はA型の新規利用と就労移行支援の標準利用期間超過にも広げる予定です。時期ごとの広がりは就労選択支援はいつからで整理しました。
情報公表未報告減算については、収支に見込む必要が今のところありません。報酬告示第11の2の1の注3は、情報公表対象サービス等情報の報告を行っていない場合に所定単位数の5%を減算すると定めていますが、就労選択支援に関するQ&A VOL.1(令和7年9月5日)の問7は、情報公表システムを改修中であることから令和7年10月1日時点でのシステムへの入力は不要としたうえで、「情報公表システムにおける報告及び公表の機能が整備されるまでの間は、情報公表未報告減算を適用しない取扱いとする」と示しています。いつまで適用しないのかという期日はQ&Aに書かれておらず、具体的な報告開始時期は追って事務連絡等で周知する予定とされています。2026年8月16日に確認した時点でその事務連絡は見当たりませんでした。機能が整備されれば適用が始まる減算なので、周知が出ていないかを定期的に確かめておいてください。
全国965か所という現在地
厚生労働省は指定権者別の事業所数と事業所一覧を公表しています。令和8年6月時点で全国965か所、内訳は都道府県分が532、指定都市分が213、中核市分が220です。施行から8か月あまりでこの水準ですから、就労移行支援やB型に比べれば供給はまだ薄い状態にあります。
ただし地域差が大きく、東京都45、愛知県35、大阪市34のように積み上がっている指定権者がある一方で、0の県や市も残っています。実施主体要件の緩和のうち過去10年間の連続する3年間で3人以上という数え方は、同一市区町村内に就労選択支援事業所が存在しない場合に使えるものです。事業所一覧はExcelで公開されているので、参入判断に入る前に自分の商圏の行を抜き出してください。
中立性は「自法人へ戻せない」という形で効く
報酬の留意事項通知は、就労継続支援や就労移行支援を利用中の人が受給者証の更新や事業所の変更を検討して就労選択支援を利用する場合、アセスメントや情報提供の客観性を担保するため、当該サービスを提供している事業所と同一の法人が運営する就労選択支援は利用できないと定めています。例外は近隣に別の法人が運営する就労選択支援事業所や就労移行支援事業所がない場合だけです。自事業所の利用者の受け皿として使う設計は成り立ちません。特定事業所集中減算も設けられ、紹介の対償として金品を授受する利益供与等の禁止も準用されます。
指定の入口でも中立性は問われます。実施について通知は、指定権者が確認することが望ましい観点として、事業の目的や理念、アセスメント環境と支援員の確保状況、協議会や近隣企業との連携体制、第三者からの評価、他の就労系サービスの支援状況と経営状況、情報公表の状況を挙げています。指定権者が必要と認める場合は、申請にあたって協議会等に運営方針を説明し、その評価内容を都道府県知事に提出することとされています。参入の難所は書類より地域からの評価のほうだと見ておいたほうが実態に近いはずです。課題の全体像は就労選択支援のデメリットにまとめています。
指定申請の前に指定権者へ確認しておく項目は、国の基準が幅を残している部分に集中します。第一に利用定員です。省令の第十章の二には利用定員の下限を定めた規定がありませんが、愛知県と栃木県はいずれも自県の案内で定員10人以上と示しています。運営規程には利用定員を記載する必要があるので(第173条の9で準用する第89条第4号)、自分の指定権者がどう扱っているかを先に聞いてください。
第二に訓練・作業室の面積です。Q&A VOL.1は国として具体的な面積の基準までは明示していないと明言していますが、愛知県は定員×2平方メートルの専用の訓練・作業室を求めています。図面相談の期限を別に設けている自治体もあるので、内装や賃貸借を決める前に確認してください。第三に協議会等の評価の要否、第四に実施主体要件の実績の数え方です。どの範囲の一般就労を3人に数えてよいかは、事前に突き合わせておくと安全です。
期限の管理もあわせて要ります。基礎的研修等の修了者を就労選択支援員とみなせる経過措置は2028年3月31日で終わります。研修の内容と受講の段取りは就労選択支援員養成研修にまとめています。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
事業所数も定員も、都道府県でかなり違います。全国の就労継続支援B型は20,783事業所で、前回の公表から+874事業所でした(WAM NET 2026年3月31日時点)。自分の県の事業所数・定員・平均工賃は都道府県別データで確認できます。
47都道府県のデータを見る →よくある質問
自分の地域には、
どれくらい利用者候補がいる?
所在地をもとに、周辺人口・障害福祉事業所数・紹介元になる相談支援事業所の数などを簡易集計します。これから開設する方には出せる場所と参入余地を、すでに運営している方には商圏内の競合と紹介元の分布を、目的にあわせて整理します。
その場でダウンロードできる資料ではありません。いただいた内容をもとに1件ずつ作成し、2〜3営業日以内にメールでお送りします。
