就労選択支援の
デメリットと課題を
事業所経営の視点で整理する
就労選択支援は2025年10月1日に施行され、新たに就労継続支援B型を利用する意向がある人は、原則として先に就労選択支援を利用することになりました。事業所側の負担は大きく3つに分かれます。B型の受け入れまでに支給決定と利用の期間が一段挟まること、実施する側では支給決定期間が原則1か月の日払い報酬であること、そして移行先が同一法人に偏ると減算がかかる形で中立性が求められることです(2026年8月16日時点)。
- 施行日
- 2025年10月1日(令和7年10月1日)
- 支給決定期間
- 原則1か月(例外事由に該当する場合のみ2か月または再度1か月)
- 基本報酬
- 就労選択支援サービス費 1,210単位/日
- 中立性の制約
- 特定事業所集中減算 200単位/日(同一法人への移行が80%超のとき)
- 実施事業所数
- 全国965か所(令和8年6月時点の指定状況)
目次
何のために作られた制度なのか
就労選択支援は、障害者総合支援法と児童福祉法の改正法(令和4年法律第104号)にもとづいて創設され、2025年10月1日から新たな障害福祉サービスとして始まりました。厚生労働省の説明では、本人が就労先や働き方をより良く選べるように、就労アセスメントの手法を使って希望や就労能力、適性に合った選択を支援するサービスと位置づけられています。
この趣旨そのものに反対する事業所は少ないと思います。困るのは、趣旨と、日々の運営で発生する手間や収支のあいだにあるずれのほうです。以下では確認できる範囲の制度の中身に絞って、事業所側で何が起きるかを整理します。
B型を運営する側から見た受け入れ導線の変化
2025年10月から、就労継続支援B型は「就労選択支援事業者によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者」が利用対象に加わりました。新たにB型を利用する意向がある場合は、あらかじめ就労選択支援を利用することになります。
一方で、50歳に達している人、障害基礎年金1級の受給者、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった人については、就労選択支援を経ずにB型を利用できます。見学の段階でどちらに当たるかを確認できるかどうかで、その後の段取りが変わります。
見落としやすいのは、就労選択支援の支給決定期間が原則1か月とされている点です。B型の支給決定は就労選択支援が終わったあとに改めて必要になるため、市区町村が短期間に複数回の支給決定を行うことになります。この点は通知にも明記されていて、認定調査の簡略化などの取扱いが示されています。制度上、受け入れまでの日数が従来より長くなる方向に働くため、見学から利用開始までの期間は余裕を持って伝えたほうが無難です。
新規の見学を受けた段階で、就労選択支援を経ずにB型を利用できる要件(50歳以上、障害基礎年金1級、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業への雇用が困難)に当たるかどうかを先に確認しておくと、その後の案内が変わります。
要件に当たらない場合は、相談支援事業所と近隣の就労選択支援事業所を早い段階でつなぎ、就労選択支援の支給決定に原則1か月かかることを前提にスケジュールを組んでおくと、見込みのずれが小さくなります。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
実施する側の負担と収支の読みにくさ
就労選択支援を自事業所で実施する場合、報酬は就労選択支援サービス費として1日あたり1,210単位が設定されています。ここで注意が必要なのは、算定できるのが利用者に直接支援を行った日に限られることです。利用者が同席する多機関連携会議や企業訪問は算定の対象になりますが、関係機関との連絡調整だけを行った日は対象になりません。
さらに、サービス提供記録には1日単位で支援内容を記録することとされ、事業内容のうち未実施の事項がある場合は「適切に提供していない」として全体が報酬算定の対象外になります。アセスメント、ケース会議、アセスメントシートの作成、事業者等との連絡調整という4つの工程を、記録として揃えられるかどうかが収入に直結します。
人員配置は、就労選択支援員を常勤換算で利用者数を15で除した数以上とされ、1人未満の配置でも差し支えないとされています。一体的に運営する就労移行支援事業所等の常勤の職業指導員などが兼務することも可能です。ただし兼務でまかなうということは、既存事業の人手を割くということでもあります。
中立性の確保が事業運営に課す制約
就労選択支援には「専門的・中立的な役割」が期待されており、アセスメントシートに想定される事業所名を書くことはあっても、それは支給決定に向けた参考情報にすぎず、利用サービスのあっせんを行うものではないと通知に書かれています。
これを担保する仕組みが特定事業所集中減算です。判定期間にアセスメントを終えた利用者の移行先を集計し、就労移行支援、A型、B型のいずれかで移行先として最も多い法人の割合が80%を超えると、1日あたり200単位が減算されます。判定は年2回で、書類の作成はすべての就労選択支援事業者に求められ、80%を超えた場合は指定権者への提出、超えなかった場合も5年間の保存が必要です。移行先が決まっていない利用者については、アセスメント終了から少なくとも1年間、定期的に移行先を把握し続けることとされています。
自法人のB型に引き継ぐこと自体が禁じられているわけではありませんが、割合を管理し記録に残す作業が恒常的に発生します。地域にそのサービスの事業所が5事業所未満である場合など、正当な理由として例示されているものもあるため、該当しそうなら根拠を残しておく価値があります。
実施事業所の数と地域差
厚生労働省が公表している指定状況では、就労選択支援事業所は全国で965か所です(令和8年6月時点、都道府県532、指定都市213、中核市220の合計)。都道府県が指定権者となる区域では、福島県と岡山県が0か所と記載されています。
制度側もこの点は織り込んでおり、最も近い就労選択支援事業所であっても通所が困難な場合や、利用できる事業所が少なく待機期間が生じる場合には、従来どおり就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経たB型の利用を認めるとされています。自分の商圏でこの扱いになるかどうかは市町村の判断になるため、あらかじめ確認しておくのが現実的です。
論点と打てる手
| 論点 | 事業所への影響 | 打てる手 |
|---|---|---|
| 利用開始までの段取りが増える | 新規B型利用者は就労選択支援の支給決定(原則1か月)と利用を挟むため、見学から利用開始までが長くなる | 見学時に除外要件の該当を確認し、該当しない場合は相談支援事業所と就労選択支援事業所へ早めにつなぐ |
| 近隣に実施事業所がない・待機が出る | 受け入れ時期が読めなくなる | 近隣にない場合や待機が生じる場合は従来の就労アセスメントを経たB型利用が認められているため、市町村に取扱いを確認しておく |
| 報酬が日ごとの出来高になる | 直接支援を行った日のみ算定。連絡調整だけの日は対象外。未実施の工程があると全体が算定対象外 | サービス提供記録を1日単位で残し、4工程の実施を記録で示せる形にする |
| 支給決定が原則1か月 | 1人あたりの利用が短く、新規の紹介が途切れると稼働が空く | 相談支援事業所、特別支援学校、行政など紹介経路を複数持つ |
| 中立性の確保が求められる | 移行先が同一法人に80%超集中すると200単位/日の減算。全事業者に年2回の書類作成と5年保存 | 判定期間ごとに移行先の内訳を集計し、正当な理由に当たる事情は根拠を残す |
| 就労選択支援員の確保 | 養成研修は東京・大阪の2会場、各10回、各回定員100人(予定) | 令和9年度末までの経過措置の期間内に受講計画を立てる |
現時点で見通せないこと
令和9年4月以降は、新たにA型を利用する場合や、標準利用期間を超えて就労移行支援を利用する場合も就労選択支援の対象とする予定とされています。ただし通知は「令和9年4月以降の取扱いについては改めてお示しします」と述べるにとどまり、2026年8月16日時点でその取扱いを示した通知は確認できませんでした。対象が広がる前提で準備を進めること自体は妥当ですが、確定した条件として計画に織り込むのは早いという段階です。
制度の全体像は就労選択支援とは、参入の可否はどこがやるのか、利用の段取りは利用の流れと期間で整理しています。
事業所数も定員も、都道府県でかなり違います。全国の就労継続支援B型は20,783事業所で、前回の公表から+874事業所でした(WAM NET 2026年3月31日時点)。自分の県の事業所数・定員・平均工賃は都道府県別データで確認できます。
47都道府県のデータを見る →よくある質問
自分の地域には、
どれくらい利用者候補がいる?
所在地をもとに、周辺人口・障害福祉事業所数・紹介元になる相談支援事業所の数などを簡易集計します。これから開設する方には出せる場所と参入余地を、すでに運営している方には商圏内の競合と紹介元の分布を、目的にあわせて整理します。
その場でダウンロードできる資料ではありません。いただいた内容をもとに1件ずつ作成し、2〜3営業日以内にメールでお送りします。
