就労移行支援体制加算は
前年度の就労定着者数で決まる
上限と3年間の重複算定禁止
就労移行支援体制加算は、生活介護・自立訓練(機能訓練・生活訓練)・就労継続支援A型・就労継続支援B型の4サービスに置かれた加算です。就労移行支援自体には設けられていません。就職後の定着率は、就労移行支援の基本報酬の区分にすでに反映されているためです。加算額は、前年度に一般就労へ移行し雇用継続期間が6月に達した利用者(就労定着者)の数を、所定単位数に乗じて算定します。就労継続支援B型では、基本報酬の型によって所定単位数の決まり方が変わります。B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)を算定する事業所は、利用定員と平均工賃月額の組み合わせです。(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)を算定する事業所は、利用定員だけで単位数が決まります。
就労定着者を数える起算点は、利用者ごとの就職日です。前年度内に雇用継続期間が6月に達したかどうかで判定します(例:令和5年10月1日就職の場合、令和6年3月31日に6月到達)。就労継続支援A型事業所への移行や、施設外支援の対象となるトライアル雇用は数えません。前年度の就労定着者数には上限があり、当該年度の前年度9月30日時点における事業所の利用定員数までです。同一利用者について過去3年間に本加算の算定実績があれば、原則として再度は算定できません。就労移行支援体制加算に関する届出は、原則として当該年度の4月中に行います。
目次
4月になると、前年度の名簿を開いて人数を数える作業が始まります。就労移行支援体制加算のことです。生活介護や就労継続支援B型を運営していると、ここで手が止まります。誰を数えていいのか。何人まで数えていいのか。去年も数えた人を、もう一度数えていいのか。しかも判定の起算点は、事業所の年度ではなく利用者ごとの就職日です。名簿を年度でまとめているほど、ずれます。
僕は埼玉県志木市で就労継続支援B型を運営していますが、開所は2026年5月です。前年度の実績を数える立場には、まだ来ていません。だからこの記事は、資料を読んで整理したものです。先に答えを書きます。加算額は「所定単位数×前年度の就労定着者数」で決まり、その人数には前年度9月30日時点の利用定員数という上限があります。同一の利用者は、過去3年間に算定実績があれば原則として二度は数えられません。
この加算は、何で金額が決まるのか
就労移行支援体制加算は、前年度の就労定着者数を所定単位数に乗じて算定する加算です。対象となるサービスは4つあります。
- 生活介護
- 自立訓練(機能訓練・生活訓練)
- 就労継続支援A型
- 就労継続支援B型
就労移行支援自体にはこの加算がありません。就労移行支援は、就職後の定着率に応じた基本報酬の区分に、実績をすでに反映させているためです。別立ての加算は置かれていません。
正直、名前だけを見たときは、就労移行支援の事業所が取る加算だと思いました。実際は逆で、就労移行支援ではないサービスが一般就労へ送り出した分を評価する加算です。名前から意味を取ろうとせず、報酬算定構造の表で対象サービスを確かめるほうが早いです。
就労継続支援B型では、基本報酬の型によって所定単位数の決まり方が分かれます。B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)を算定する事業所は、利用定員と平均工賃月額の組み合わせです。(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)を算定する事業所は、利用定員だけで単位数が決まります。
| B型の基本報酬の型 | 就労移行支援体制加算の型 | 所定単位数の決まり方 |
|---|---|---|
| (Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ) | (Ⅰ)(Ⅱ) | 利用定員×平均工賃月額 |
| (Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ) | (Ⅲ)(Ⅳ) | 利用定員のみ |
自事業所がどちらの型かで、就労定着者ひとりあたりの単位数がまったく違います。だから、人数を数え始める前に、自事業所がB型サービス費のどの区分かを確かめてください。順番を逆にすると、数えた人数に掛ける数字が決まらないまま名簿と向き合うことになります。
「6月に達した者」は、いつから数えるのか
起算点は事業所の年度ではなく利用者ごとの就職日で、前年度内に6月へ到達したかどうかで判定します。
留意事項通知は、前年度において企業等での雇用継続期間が6月に達した者を、就労定着者として扱うと定めています。判定するのは、6月への到達日が前年度の中に入っているかどうかです。例えば、令和5年10月1日に就職した者は、令和6年3月31日に6月に達した者となります。
就職日がいつであっても、6月の到達日が前年度に入っていれば、その年度の就労定着者数に数えます。到達日が翌年度にずれ込む場合は、数えるのは翌年度です。
ここが、この加算でいちばん間違えやすい場所だと思っています。数えるのは前年度に就職した人ではありません。6月の到達日が前年度に入っているかで決まります。年度の終わり近くに就職した人は、その年度ではなく翌年度の数に入ります。
うちは勤怠をDiscordのボットで記録していて、日報もクラウドに残しています。ただ、就職日とその6月後は、多くの場合うちの利用を終えたあとの日付です。支援の記録とは別に、就職した人の日付だけを並べた表が要ります。
起算点には、2つの救済的な扱いもあります。
1つ目は、労働時間の延長や休職からの復職で、当該事業所のB型を受けた場合です。この場合は、支援を受けた後から6月を数えます。例えば、令和5年10月1日に就職した後、令和5年12月31日まで支援を受けた場合は、令和6年6月30日に6月に達した者となります。
2つ目は、努力義務期間である就職から6月の間に、労働条件改善のための転職支援を行った場合です。離職後1月以内に再就職していれば、最初の就職から起算して6月に達した者を就労定着者として扱います。
転職した利用者を一律に対象外と判断しないでください。この2つの扱いに当たらないかを、まず確認する必要があります。
誰を就労定着者に数えられないのか
就労継続支援A型事業所の利用者としての移行と、施設外支援の対象となるトライアル雇用は、就労定着者に数えられません。除かれるのは、次の2種類です。
- 就労継続支援A型事業所の利用者としての移行
- 施設外支援の対象となるトライアル雇用
この2つは、加算の定義でいう**「企業等への就労」に当たらない**ためです。留意事項通知は、企業等との雇用契約に基づく就労を対象とし、労働時間等の条件は問わないとしたうえで、この2つを明示的に除いています。
生活介護でも考え方は同じです。生活介護を経て就労継続支援A型事業所に雇用された場合も、就労定着者からは除かれます。
労働時間等の条件は問わない、という部分が効いてきます。週の労働時間が短くても、企業等との雇用契約に基づく就労であれば対象です。一方でA型事業所に利用者として移る場合は、雇用契約を結んでいても対象から外れます。見ているのは働いた時間の長さではなく、雇う側がどこかだと思います。
経営から見れば、B型からA型へ移れたことも支援の成果です。それでもこの加算では数えられません。そこはこの加算で評価される話ではない、と割り切るしかないところです。
何人まで数えられるのか
前年度の就労定着者数に数えられるのは、当該年度の前年度9月30日時点における事業所の利用定員数までです。
令和8年6月以降、国保連システムは、就労定着者数が最低定員数(6人または10人)を上回る請求に警告を出します。市町村は、警告が出た事業所について前年度9月末時点の定員数を確認し、上限を超えていれば当月分の請求を修正させます。令和8年4月・5月分も確認し、過大請求であれば遡って返還させます。
読み違えやすいのは、警告のしきい値は最低定員数だという点です。自事業所の定員ではありません。定員が最低定員数より大きい事業所では、上限の内側でも警告が出ることがあります。警告そのものは誤りの通知ではなく、市町村に確認させるための印だと読みました。
もう一つ、上限を決める日付は固定です。数えるのは年度が明けてからですが、使うのは前年度9月30日時点の定員数です。定員を年度の途中で増やした場合でも、10月以降の変更は前年度実績の上限には乗らない、というのが僕の読み方です。
そして、修正は当月分だけでは終わりません。過大請求と分かれば、令和8年4月・5月分まで戻ることになります。数え方を決めきらないまま請求を出すのは、あとが重いです。
就労定着者 カウントシート
誰を前年度の就労定着者に数えられるか、就職日から6月到達日と除外条件をひとりずつ確認できる記入用シートです。
資料を見る →同じ人で、もう一度取れるのか
同一の利用者について、過去3年間に本加算の算定実績があれば、原則として再度は算定できません。
3年間の起算点は、体制届を受理した年度の前年度末日です。令和8年4月に体制届を受理した場合、確認する期間は令和5年度から令和7年度になります。
例外は1つです。やむを得ない事情による離職で、市町村長が適当と認めた者に限り、再び就労定着者として数えられます。ハラスメントなどが該当例として挙げられています。
見落としやすいのは、この3年間を自事業所の中だけでは確かめられない点です。同一事業所だけでなく、他の事業所での算定実績も含むとされています。自事業所の名簿を見ても、その人が前の事業所で数えられていたかは分かりません。
確認の主体も分かれています。体制届は指定権者(都道府県・指定都市・中核市)が確認し、給付の審査は支給決定権者(市町村)が行います。市町村は、必要に応じて指定権者に照会します。
ここは事業所が単独で確定できない要件だと思っています。だから、過去3年以内に一般就労の経験がある利用者については、数える前に市町村へ相談しておくほうが安全だと考えています。
令和8年度改定で何が変わり、届出はいつ出すのか
令和8年度改定で変わったのは年間の算定対象就職者数の上限で、前年度9月30日時点の事業所の定員数までと明確化されました。届出は原則として当該年度の4月中に行います。
令和6年度改定で入った重複算定の禁止とは、改定の年度が違います。区別して読んでください。
| 改定年度 | 変わった点 |
|---|---|
| 令和6年度改定 | 同一利用者について過去3年間に算定実績があれば、原則として再算定を不可とした(重複算定の禁止) |
| 令和8年度改定 | 年間の算定対象就職者数の上限を事業所の定員数までとした。前年度9月30日時点の定員数が上限であることも明確化した |
2つを同じ改定だと思って読むと、経過の説明がずれます。重複算定の禁止は令和6年度改定で、人数の上限は令和8年度改定です。
年間の算定対象就職者数の上限は、告示改正により令和8年4月に施行されました。同一の利用者についてA型事業所と一般企業の間で複数回の離転職を繰り返し、そのたびに加算を取得する事例が報道されたことへの対応です。
制度が動いた理由がはっきりしている改定です。人数で積み上がる設計だったので、同じ人を何度も数える余地が残っていました。令和6年度改定で同じ人の重複を止め、令和8年度改定で人数そのものに蓋をした、という順番だと読んでいます。
届出の時期も押さえておく必要があります。就労移行支援体制加算に関する届出書は、令和8年4月に提出します。前年度実績に基づく加算の届出は、原則として当該年度の4月中に行うのが基本です。
4月は新年度の体制届が集中する時期です。前年度の名簿の下ごしらえは、3月のうちに終えておきたいところです。数え方で迷う人がひとりでもいれば、指定権者に聞く時間も要ります。
開所したばかりの事業所はどうなるのか
前年度の就労定着者数が無ければ、所定単位数に乗じる数がゼロになるため、計算式の上では加算単位もゼロです。
加算額は「所定単位数×前年度の就労定着者数」という式で決まります。指定を受けて1年に満たない新規事業所は、通常この前年度実績を持てません。
この結論は、算定式の構造から導かれる帰結です。「新規事業所は算定できない」と明文で定めた条文は、確認できていません。判断に迷う場合は、指定権者に確認してください。
定員数の上限も、前年度の実績があってはじめて意味を持つ数字です。開設1年目の事業所には、この上限を当てはめる前年度実績自体がありません。
うちも前年度の実績を数える段階には来ていません。それでも、この加算を先に読んでおく意味はあると思っています。決まるのは前年度に何をしたかで、動かせるのは今年度だからです。
今年度に一般就労へ移った人がいれば、その人の6月到達日がどの年度に入るかで、数える年度が決まります。誰がいつ就職したかを、どこに記録しておくか。そこは今日から決められます。
結局、この加算で一番大事なのは、4月に数えることではなく、日付を先に記録しておくことだと思っています。要件はどれも過去の日付で決まります。就職日、6月の到達日、前年度9月30日時点の定員、過去3年間の算定実績。4月になってから集めようとすると、全部が探す作業に変わります。加算の金額そのものより、記録の置き方を先に決めておくほうが、あとで楽になります。
あわせて読む
この加算は、基本報酬と並べて見ないと金額の感覚がつかめません。次の3本が続きです。
- 就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する … 基本報酬と加算の全体像。この加算が収支のどこに乗るかが分かります
- 就労継続支援A型とB型は何が違うのか … A型への移行が就労定着者から除かれる理由と、加算の型が分かれる背景
- 令和8年度の処遇改善加算 … 同じ令和8年度改定で変わった別の加算。改定の読み方をそろえるのに使えます
- 対象サービス
- 生活介護・自立訓練(機能訓練・生活訓練)・就労継続支援A型・就労継続支援B型(就労移行支援自体には無い)
- 加算額の決まり方
- 所定単位数(利用定員・平均工賃月額等の区分による)×前年度の就労定着者数
- 就労定着者の定義
- 前年度において、企業等での雇用継続期間が6月に達した者
- 「6月」の起算点
- 利用者の就職日。前年度内に到達したかで判定(例:令和5年10月1日就職→令和6年3月31日に6月到達)
- 数えられない例
- 就労継続支援A型事業所への移行、施設外支援の対象となるトライアル雇用
- 人数の上限
- 当該年度の前年度9月30日時点における事業所の利用定員数まで
- 重複算定の禁止
- 過去3年間(体制届を受理した年度の前年度末日から起算)に算定実績がある者は原則不可
- 届出の時期
- 就労移行支援体制加算に関する届出は原則、当該年度4月中
事業所数も定員も、都道府県でかなり違います。全国の就労継続支援B型は20,783事業所で、前回の公表から+874事業所でした(WAM NET 2026年3月31日時点)。自分の県の事業所数・定員・平均工賃は都道府県別データで確認できます。
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自分の地域には、
どれくらい利用者候補がいる?
所在地をもとに、周辺人口・障害福祉事業所数・紹介元になる相談支援事業所の数などを簡易集計します。これから開設する方には出せる場所と参入余地を、すでに運営している方には商圏内の競合と紹介元の分布を、目的にあわせて整理します。
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