工賃向上計画とは
何を書き、都道府県の計画と
どう報酬につながるか
工賃向上計画は、都道府県が作成する工賃向上計画に基づいて、就労継続支援B型事業所が自ら作成する計画です。作成が義務になるのは、就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)を算定する場合で、都道府県(指定都市又は中核市の場合は当該市)への提出が必要です。(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)のみを算定する事業所に、この作成義務はありません。
平均工賃月額は、前年度の工賃支払総額を、前年度における開所日1日当たりの平均利用者数(前年度の延べ利用者数÷前年度の年間開所日数)で割り、さらに12で割って算出します。令和6年度の全国平均工賃月額は、就労継続支援B型で24,141円でした(前年度比106.6%、18,245事業所)。
- 作成義務がある事業所
- 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)を算定する事業所。(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)のみを算定する場合は作成義務なし
- 提出先
- 都道府県(指定都市又は中核市の場合は当該市)
- 平均工賃月額の算定式
- 前年度の工賃支払総額÷前年度における開所日1日当たりの平均利用者数÷12
- 分母の定義
- 前年度の延べ利用者数÷前年度の年間開所日数(令和6年度改定で「工賃支払対象者数」から変更)
- 令和6年度全国平均工賃月額
- 24,141円(前年度比106.6%、就労継続支援B型18,245事業所)
- 区分届出の時期
- 原則毎年度4月(令和8年度は基準見直しに伴い、改めて6月に届出)
- 関わる加算
- 目標工賃達成指導員配置加算・目標工賃達成加算(いずれもサービス費(Ⅰ)及び(Ⅳ)を算定する事業所が対象)
目次
工賃向上計画とは何か。義務になるのは一部の区分だけ
工賃向上計画は、都道府県が作る計画に基づいて、就労継続支援B型事業所が自ら作成する計画です。
作成が義務になるのは、就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)を算定する場合です。(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)のみを算定する事業所に、この作成義務はありません。
基準省令の第201条は、すべての事業者に、年度ごとに工賃の目標水準を設定し、その目標水準と前年度に支払った工賃の平均額を利用者に通知するとともに、都道府県に報告することを義務付けています。「工賃向上計画」という書面の作成そのものを義務付けているのは、この一般的な義務とは別の、報酬上の算定要件のほうです。
工賃向上計画は、「「工賃向上計画」を推進するための基本的な指針」(平成24年4月11日付 障発0411第4号)に基づいています。留意事項通知はこの指針を引用する形で、工賃向上計画を作成している事業所であることを、サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)の算定要件としています。
計画に何を書くのか
事業所の工賃向上計画は、都道府県の計画に基づいて、工賃目標の達成に向けた具体的な取組みを定める計画です。
留意事項通知は、目標工賃達成指導員が取り組む例として、次を挙げています。
- 生産活動収入の向上を目指した、優先調達推進法に基づく物品や役務等の受注促進
- 地域と連携した農福連携等による新たな生産活動領域の開拓
- ICT機器等の導入による利用者の生産能力向上
制度創設時(平成24年)の資料では、都道府県の計画に官公需による発注促進を目標として掲げることが推奨されるとされています。事業所の工賃目標は、都道府県の生活水準や最低賃金、障害者の経済状況などを踏まえて設定するとされています。目標とする工賃は、月額または時間額のどちらで算出するかを事業所が選べるとも説明されています。
これらは制度創設時の資料にある内容です。現在も同じ運用かどうかは、一次資料の確認範囲では分かりません。
都道府県の計画との関係と、報告の流れ
工賃向上計画は、国の基本指針を起点として、都道府県が策定する計画に基づいて事業所が策定する、3段階の構造になっています。
就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)を算定する場合、事業所は工賃向上計画を都道府県(指定都市又は中核市の場合は当該市)に提出しなければなりません。サービス費の区分の届出は、原則として毎年度4月に行います。年度途中に新規に指定された事業所は、その年度に初めて基本報酬を算定する前までに届出を行います。なお、令和8年6月の基準見直しに伴い、令和8年度に限り、改めて6月に区分の届出を行うこととされています。
制度創設時(平成24年)の資料は、次の流れを示しています。
- 基本指針・実施要綱を、都道府県知事あてに通知する
- 都道府県が、工賃向上計画を策定する
- 事業所が、工賃向上計画の策定を開始する
- 事業所が、目標値等を都道府県に報告する
- 都道府県が、目標値等を国に報告する
- 国が、全国の目標値等を集計して公表する
このサイクルが、現在も同じ時期で回っているかどうかは、一次資料の確認範囲では分かりません。
工賃向上計画の届出とは別に、前年度の工賃実績そのものを報告する仕組みもあります。根拠は、この記事で扱う留意事項通知(障発第1031001号)とは別の通知です。
平均工賃月額はどう計算するか
平均工賃月額は、前年度の工賃支払総額を、開所日1日当たりの平均利用者数で割ります。その額をさらに12で割って、1人当たりの平均工賃月額を求めます。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ① | 前年度における工賃支払総額を算出する |
| ② | 前年度における開所日1日当たりの平均利用者数を算出する(前年度の延べ利用者数÷前年度の年間開所日数) |
| ③ | ①÷②÷12により、1人当たり平均工賃月額を算出する |
通常の事業所に雇用され、当該事業所での就労に必要な知識・能力向上のための支援を一時的に受けている利用者は、この計算から除きます。
算定式には、2つの特例があります。
- 重度者支援体制加算(Ⅰ)を算定している場合は、算出した額に2,000円を加えることができます
- 原材料費等の高騰で直接経費に著しい変動があった場合など、都道府県内の8割の事業所で工賃実績が低下し、都道府県がやむを得ないと認めた場合は、同一都道府県内すべての事業者について、前年度に代えて前々年度の平均工賃月額を、同じ算定方法で使うことになります
令和6年度の報酬改定で、分母の定義が変わりました。従来の「工賃支払対象者数」から、「開所日1日当たりの平均利用者数」に変わっています。この変更で、令和5年度の実績から、算定方式による工賃月額が上振れしています。
平均工賃月額 計算シート
前年度の実績から平均工賃月額を出し、就労継続支援B型サービス費のどの区分になるかを確かめる記入用シートです。
資料を見る →全国の平均工賃はいくらか。令和6年度は24,141円
令和6年度の全国平均工賃月額は、就労継続支援B型で24,141円でした。前年度比106.6%で、報告した事業所は18,245箇所です。
| 年度 | 全国平均工賃月額 | 対前年度比 | 施設数 |
|---|---|---|---|
| 令和6年度 | 24,141円 | 106.6% | 18,245箇所 |
| 令和5年度(令和8年3月修正後) | 22,649円 | ― | 16,499箇所 |
| 令和4年度(参考) | 17,031円 | ― | ― |
令和5年度は算定方式の変更があったため、対前年度比は公表されていません。
令和5年度の実績値は、令和8年3月に23,053円から22,649円へ修正されています。この記事では、修正後の数値を使っています。
参考までに、就労継続支援A型の全国平均賃金月額は、令和6年度91,451円でした(前年度比105.4%、4,220箇所)。
報酬と加算にどう効くか
工賃向上計画は、就労継続支援B型サービス費の区分と、2つの加算の両方に関わります。
| サービス費区分 | 工賃向上計画の作成 | 従業者数 |
|---|---|---|
| (Ⅰ) | 必要 | 利用者数÷6以上 |
| (Ⅱ) | 必要 | 利用者数÷7.5以上 |
| (Ⅲ) | 必要 | 利用者数÷10以上 |
| (Ⅳ) | 不要 | 利用者数÷6以上 |
| (Ⅴ) | 不要 | 利用者数÷7.5以上 |
| (Ⅵ) | 不要 | 利用者数÷10以上 |
工賃向上計画は、2つの加算にも関わります。目標工賃達成指導員配置加算と、目標工賃達成加算です。この2つの加算の対象は、サービス費(Ⅰ)及び(Ⅳ)を算定する事業所に限られます。
目標工賃達成加算(1日10単位)は、工賃向上計画の目標を達成し、都道府県知事に様式による届出を行った場合に算定できます。工賃目標の下限は、前年度の自事業所の平均工賃月額に、全国平均工賃月額の前々年度と前々々年度の差額を加えた額です(この額が前年度の自事業所実績を下回る場合は、前年度実績が下限です)。
| ケース(令和5年度実績13,000円、全国平均の差額524円の場合) | 工賃目標 | 実際の平均工賃月額 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 例1 | 15,000円 | 15,500円 | 加算対象 |
| 例2 | 13,100円 | 15,500円 | 対象外(目標が下限未満) |
| 例3 | 15,000円 | 14,000円 | 対象外(目標未達成) |
目標工賃達成指導員配置加算の単位数と5:1の配置要件は、別の記事で扱っています。
計画を回す最初の工程は、前年度の平均工賃月額を確定させることです。算定式は、工賃支払総額を開所日1日当たりの平均利用者数で割り、その額をさらに12で割るという手順です。ここで固まった数字が、当年度の工賃目標を組み立てる起点になります。
目標工賃達成加算の下限式を踏まえると、工賃目標は前年度の自事業所実績を下回らない水準で組むことになります。前年度実績に全国平均工賃の伸び分を加えた額が下限になるため、伸び分を把握してから目標を決める順番が合理的です。工賃目標と前年度の平均額は、利用者への通知と都道府県への報告までがひとつの工程です。
工賃目標を達成できなかった年でも、翌年度の目標を前年度実績より下げることはできません。目標工賃達成加算の下限式は、達成できなかった年の実績そのものを基準に据えているためです。翌年度の計画は、未達成だった年の実績に、その後の全国平均工賃の伸び分を加える形で組み直すことになります。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
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工賃は都道府県でかなり違います。全国の就労継続支援B型の平均工賃月額は24,141円ですが、いちばん高い徳島県は30,231円、いちばん低い山形県は19,621円です(厚生労働省 令和6年度工賃実績)。
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