就労継続支援B型で仕事がないとき
制度上どうなるのかを
一次資料から整理する
仕事(受注)が少ないこと自体を直接禁止する条文はありません。就労継続支援B型の基本方針(第198条)は、就労の機会とともに生産活動その他の活動の機会を提供し、訓練等を行うことを求めています。工賃は、生産活動に係る事業の収入から必要経費を控除した額を支払う建て付けです(第201条第1項)。生産活動の収支を黒字にすべきという明文の義務(収支差額が賃金総額以上)は、B型の条文にはありません。この義務があるのはA型の第192条第2項だけです。
工賃が下がっても、その月の基本報酬が直接下がるわけではありません。就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)は前年度の平均工賃月額に応じて区分が決まるため、工賃総額の減少は翌年度の区分を通じて響く場合があります。(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)は平均工賃月額を使わないため、この経路自体がありません。作業が無い日を利用日として計上してよいかや、事業所が取るべき対応手順を定めた一次資料には、到達できていません。運営指導では生産活動の実態や収支を確認される見込みですが、根拠のガイドラインは令和7年10月20日に社会保障審議会へ示された案で、確認日(2026-08-19)時点でも正式発出されていません。
目次
仕事が無いこと自体を禁止する条文は無い
仕事(受注)が少ないこと自体を直接禁止する条文はありません。
就労継続支援B型の基本方針(第198条)は2つを求めています。利用者に就労の機会を提供すること、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて知識・能力向上のための訓練その他の便宜を行うことです。工賃は、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額を支払う建て付けです(第201条第1項)。利用者1人当たりの工賃の平均額は、1月当たり3千円を下回ってはならないとも定められています(同条第2項)。
仕事が減れば生産活動の収入も減り、経費を控除した後に残る工賃の原資が細ります。この関係は条文からたどれますが、「仕事が無いこと」自体を禁じたり、罰則付きで規制したりする条文ではありません。
B型に「黒字にせよ」という条文は無い
生産活動の収支を黒字にすることを明文の義務として定めた条文は、B型にはありません。
A型の第192条第2項は、生産活動に係る事業の収入から経費を控除した額が、利用者に支払う賃金の総額以上となるようにしなければならないと定めています。明文の義務です。B型の第201条には、これに対応する規定がありません。第201条第1項が定めているのは、収入から経費を控除した額を工賃として支払うという算定式だけです。
自立支援給付費を賃金・工賃の原資に、原則として充ててはならないという規定も、同じ構造です。A型の第192条第6項に明文がありますが、B型の第201条には対応する規定がありません。B型でこの考え方が示されているのは、運営指導のガイドライン(案)が挙げる着眼点としてです。「自立支援給付費を利用者の賃金・工賃に充てていないか」という確認事項にとどまり、条文上の義務ではありません。
| 項目 | A型(第192条) | B型(第201条) |
|---|---|---|
| 収支と支払額の大小関係 | 収入-経費が賃金総額以上となるようにしなければならない(第192条第2項、明文の義務) | 対応する規定なし。収入-経費を工賃として支払う算定式のみ(第201条第1項) |
| 自立支援給付費の充当 | 原則禁止の明文規定あり(第192条第6項) | 条文上の規定なし。運営指導の着眼点としてのみ言及 |
工賃の減少は、翌年度の基本報酬区分を通じて響く
工賃が下がっても、その月の基本報酬が直接下がるわけではありません。
就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)は、利用定員・人員配置に加えて、前年度の平均工賃月額に応じて区分が決まります。平均工賃月額の算定式は3段階です。前年度の工賃支払総額を、開所日1日当たりの平均利用者数(前年度の延べ利用者数÷前年度の年間開所日数)で割ります。その額をさらに12月で割って算出します。ただし、通常の事業所に雇用されている利用者で、一時的に支援を受ける人は算出から除きます。仕事が減って工賃支払総額が下がれば、翌年度の平均工賃月額が下がり、区分が下がる可能性があります。ただしこの経路は**(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)に限られます**。
| 区分 | 算定の基礎 | 在宅利用の可否(条文上の記載) |
|---|---|---|
| (Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ) | 利用定員・人員配置(工賃向上計画の作成が前提)・前年度の平均工賃月額 | 参照によって含む(「別の場所で行われる支援」に在宅利用の類型が含まれる。「在宅において」の直接の文言は無い) |
| (Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ) | 利用定員・人員配置のみ(平均工賃月額は使わない) | 明記あり(「在宅において」の文言を直接含む) |
(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)は利用定員と人員配置だけで区分が決まり、平均工賃月額を使いません。仕事の減少が翌年度の区分に響くという経路そのものが、この3区分には存在しません。
例外もあります。重度者支援体制加算(Ⅰ)を算定している場合は、算出した平均工賃月額に2,000円を加えた額を用いることができます。原材料費等の高騰などにより都道府県内の8割の事業所で工賃実績が低下し、都道府県がやむを得ないと認めた場合は、同一都道府県内の全事業者について、前年度に代えて前々年度の平均工賃月額を使えます。激甚災害の指定や災害救助法の適用地域に事業所が所在し、生産活動収入の減少が見込まれて工賃支払額が減少する場合は、同じ特例が使えます。また、災害による間接的な影響で工賃支払額が減少したことが明らかだと都道府県等が認めた場合も、同様です。自事業所だけの受注減を対象とする特例は、確認した範囲の一次資料には見当たりません。確認できた特例はいずれも都道府県単位・災害起因のものです。
平均工賃月額 計算シート
前年度の実績から平均工賃月額を出し、就労継続支援B型サービス費のどの区分になるかを確かめる記入用シートです。
資料を見る →作業が無い日を利用日にできるかは、直接定めた一次資料が無い
作業が無い日をそのまま利用日として計上してよいかを、直接定めた一次資料には到達できていません。
一次資料から分かっているのは、次の3点にとどまります。
- 日中活動サービスの提供時間に下限は無いものの、個別支援計画に沿ったサービス提供時間の確保が必要であること
- 運営指導のガイドライン(案)が、eスポーツ、植物の水やりを1日数回行うだけの活動など、所定の場所に居ればよいという活動を、公費による就労支援の生産活動として適さない可能性がある例に挙げていること
- 地域協働加算の文脈では、生産活動収入が発生しない地域活動、レクリエーションを目的とした活動、見学や体験のみを目的とした活動が、不適切な取組の例とされていること
いずれも「生産活動としての適切性」や「特定の加算の要件」についての記述です。サービス提供実績記録票上、その日を利用日として計上できるかという開所日数のルールそのものを定めた一次資料には、この確認の範囲では到達できていません。本記事でもこの一線を越えた断定はしません。
在宅利用への切り替えは、7つの要件をすべて満たす必要がある
在宅利用への切り替えは、仕事が無いときの簡単な逃げ道にはなりません。
在宅利用は、就労移行支援・就労継続支援(A型・B型)に共通する仕組みで、B型固有の規定ではありません。令和6年度改定を反映した要件(本記事の基準日時点で改正情報は確認できていません)は次のとおりです。対象は、在宅でのサービス利用を希望し、支援効果が認められると市町村が判断した利用者です。次のアからキまでの7要件をすべて満たす場合に限り算定できます。
- ア 通常の事業所に雇用されることが困難な障害者に、就労の機会と生産活動その他の活動の機会を提供し、知識・能力向上の訓練等を行うこと。在宅利用者が行う作業活動・訓練等のメニューを常に確保すること
- イ 1日2回は連絡・助言・進捗状況の確認等を行い、日報を作成すること。また、作業内容や本人の希望に応じ、1日2回を超えた対応も行うこと
- ウ 緊急時の対応ができること
- エ 在宅利用者から疑義照会があった際、随時、訪問や連絡で必要な支援を提供できる体制を確保すること
- オ 事業所職員による訪問、在宅利用者による通所、又は電話・パソコン等のICT機器の活用により、評価等を1週間につき1回は行うこと
- カ 原則として月の利用日数のうち1日は、事業所職員による訪問又は在宅利用者による通所により、居宅又は事業所内で訓練目標の達成度評価等を行うこと
- キ オが通所により行われ、あわせてカの評価等も行われた場合は、カの通所に置き換えて差し支えないこと
就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)の算定対象には、指定就労継続支援B型事業所とは別の場所で行われる支援が含まれ、この中に在宅において利用する場合の支援も含まれる建て付けです。「在宅において」という文言を直接使っているわけではありません。一方(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)は、利用者に在宅において就労継続支援B型を提供した場合を含むと直接明記されています。自事業所がどの区分かによって、在宅利用の位置づけをまず確認してください。
運営指導では生産活動の実態を確認される。根拠のガイドラインはまだ「案」
運営指導では、生産活動の実態と収支を確認される見込みです。ただし根拠のガイドラインは、まだ**「案」の段階**です。
令和7年10月20日の社会保障審議会障害者部会(第151回)に、ガイドライン(案)が参考資料として提出されました。正式名称は、指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドラインです。この確認の時点で、これは審議会に示された案であり、正式に発出されたガイドラインではありません。
案が挙げる確認の観点は、次のとおりです。
- 具体的な生産活動の場面があるか、一般就労に必要な能力向上が見込まれるか、安定した生産活動収入を得られるか、生産活動の収益が適当か
- 福祉事業会計と生産活動会計を区分しているか
- 自立支援給付費を賃金・工賃に充てていないか
- 生産活動収支が多額の赤字から黒字化した事業所は、どのように黒字化したかの経緯
- 運営指導は概ね3年に1回。新規指定からは概ね6月をめどに実施すること
募集方法についても言及があります。「1日来たら○○円」と謳い、生産活動収支上赤字であるにもかかわらず賃金・工賃を提供する募集は、不適切な例として挙げられています。
これらは運営指導・監査で確認される観点であり、罰則を伴う条文上の義務ではありません。ガイドラインが正式に発出された場合は、内容が変わる可能性があります。
受注が減った場面でまず整理しておきたいのは、生産活動の収入と必要経費の内訳です。第201条が定める工賃の算定式(収入から経費を控除した額が工賃)に沿って数字を並べると、工賃の原資がどこまで確保できているかが見えてきます。福祉事業会計と生産活動会計を分けて記録しておくと、この整理がしやすくなります。
次に点検したいのは、生産活動として適切といえる活動かどうかです。運営指導のガイドライン案は、所定の場所に居ればよいだけの活動やレクリエーション目的の活動を、適さない例として挙げています。受注減にあわせて作業内容を組み直すときは、この観点に照らして活動の中身を確認しておくと安心です。
工賃総額の減少は、就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)では、前年度の平均工賃月額を通じて翌年度の区分に響く経路があります。この経路を踏まえると、受注減が続く段階で早めに手を打つほうが、翌年度への影響を抑えやすくなります。運営指導に備えて、請求書や納品書など受発注の実態を示す書類、生産活動収支の記録、収支改善に向けた取り組みの記録を残しておくと説明しやすくなります。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
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- 黒字化の義務
- B型の第201条に、生産活動収支を黒字にすべきという明文の義務は無い。明文があるのはA型の第192条第2項のみ
- 自立支援給付費の充当
- B型の条文上は禁止する明文規定が無い。運営指導のガイドライン(案)が示す確認事項としてのみ言及されている
- 工賃の算定式
- 生産活動に係る事業の収入から必要経費を控除した額を工賃として支払う(第201条第1項)
- 平均工賃の下限
- 利用者1人当たりの工賃の平均額は、1月当たり3千円を下回ってはならない(第201条)
- 基本報酬への影響
- 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)は前年度の平均工賃月額に応じて区分が決まる。工賃総額が下がれば翌年度の区分が下がる可能性はあるが、直接ではない。(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)は平均工賃月額を使わない
- 作業が無い日の扱い
- サービス提供実績記録票上の利用日として計上してよいかを直接定めた一次資料には到達できていない
- 在宅利用の要件
- アからキまでの7要件のいずれにも該当する場合に限り算定できる。通所困難ではなく、利用希望と支援効果の有無を市町村が判断することが基準
- 運営指導の根拠
- 指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドラインは、社会保障審議会障害者部会(第151回、令和7年10月20日)に示された「案」の段階
事業所数も定員も、都道府県でかなり違います。全国の就労継続支援B型は20,783事業所で、前回の公表から+874事業所でした(WAM NET 2026年3月31日時点)。自分の県の事業所数・定員・平均工賃は都道府県別データで確認できます。
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