処遇改善加算の配分ルール。
誰にいくら配れるのか、
事業所の裁量と制約の線引き
福祉・介護職員等処遇改善加算は、加算を算定している事業所で働く全職種に配分できます。国の通知とQ&A(令和8年度分)は、施設長・管理者、サービス管理責任者、看護職員、相談支援専門員、管理栄養士・栄養士、調理員、事務員なども対象に含まれるとしており、事業所内での職種間の配分割合は事業者の判断で柔軟に決めてよいとされています。制約は3つで、一部の職員や法人内の一部事業所に集中させるような、職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分は行わないこと、加算Ⅳの加算額の2分の1以上を基本給または決まって毎月支払われる手当の改善に充てること、そして賃金改善額の合計が加算額以上になることです。令和7年度と比べて増えた加算額については、新規の賃金改善をベースアップで行うことが基本とされています(2026年8月16日時点、令和8年6月1日適用の取扱い)。
- 配分できる職員
- 加算を算定している事業所の全職種(施設長・管理者、サビ管、児発管、看護職員、PT・OT・ST、相談支援専門員、管理栄養士・栄養士、調理員、事務員等を含む)
- 配分できない職員
- 加算を算定していない事業所の職員、障害福祉サービス等以外の事業所の職員
- 条件つきで配分できる職員
- 法人本部の職員(加算の算定対象サービス事業所の業務を行っていると判断できる場合)/派遣労働者・在籍型出向者・業務委託職員(派遣の場合は派遣元と協議)
- 配分割合の決め方
- 事業所内での職種間配分は事業者の判断で柔軟に決めてよい。ただし著しく偏った配分は行わない
- 基本給に回す最低額
- 加算Ⅳの加算額の2分の1以上(加算Ⅳ以外を算定する場合は、仮に加算Ⅳを算定した場合に見込まれる加算額の2分の1以上)
- 令和8年度の増加分の扱い
- 過去の賃金改善の実績に関わらず新規に賃金改善を実施し、ベースアップで行うことが基本
- 全体で満たすべき水準
- 事業所(法人)全体での賃金改善に要する額が、加算による収入以上であること
目次
配分できるのは「加算を算定している事業所の職員」
配分を考えるとき、最初に確定させるのは金額ではなく人の範囲です。令和8年度分の通知は賃金改善の対象を「福祉・介護職員その他の職員」と書いており、職種で線を引いていません。国のQ&A問2-1-2はさらに踏み込んで、配分の対象には福祉・介護職員以外の全職種が含まれると明示しています。
範囲の外側にははっきりした線があります。加算を算定していない事業所の職員と、障害福祉サービス等以外の事業所の職員には配分できません。法人としてまとめて受け取ったお金であっても、加算を算定していない事業所や障害福祉サービス等以外の事業へ流すことはできない仕組みです。
| 職員の区分 | 配分の可否 | 根拠 |
|---|---|---|
| 施設長・管理者、サビ管・児発管、看護職員、PT・OT・ST、相談支援専門員、管理栄養士・栄養士、調理員、事務員等 | 配分できる | Q&A 問2-1-2 |
| 改善前の賃金が1人当たり年額460万円以上の職員 | 配分できる | Q&A 問2-2 |
| EPAによる介護福祉士候補者、介護職種の技能実習生、1号特定技能外国人 | 配分できる | Q&A 問2-3 |
| 派遣労働者、在籍型出向者、業務委託職員 | 配分できる(派遣は派遣元と協議) | Q&A 問2-4、問2-5 |
| 事業所の職員として実際に業務を行っている代表取締役等の役員 | 配分できる | Q&A 問2-9 |
| 法人本部の人事・事業部等の職員 | 加算の算定対象サービス事業所の業務を行っていると判断できる場合に限り配分できる | Q&A 問2-8 |
| 加算を算定していない事業所(加算の対象外サービスの事業所を含む)の職員 | 配分できない | Q&A 問2-8 |
| 障害福祉サービス等以外のサービスの事業所の職員 | 配分できない | Q&A 問2-8 |
障害福祉と介護保険の両方を運営していて職員が兼務している場合、賃金は原則として常勤換算方法で按分して計算します。計算が困難な場合は、実際にその職員が収入として得ている額で判断しても差し支えありません。
配分割合は事業者が決める。ただし偏りすぎは認められない
誰にいくら配るかという割合について、国は職種別の比率も1人当たりの上限額も定めていません。通知は、福祉・介護職員、特に経験・技能のある福祉・介護職員の処遇改善が重要であることに留意しつつ、事業者の判断により事業所内で柔軟な配分を認める、と書いています。
制約はひとつだけ置かれています。一部の職員に加算を原資とする賃金改善を集中させることや、同一法人内の一部の事業所だけに集中させることなど、職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分は行わない、というものです。何割までなら偏っていないという数字は通知にもQ&Aにも書かれていないため、判断に迷う配分は事前に指定権者へ確認しておくほうが安全です。
誰にいくらという配分に関して数字で示されている水準は、事業所(法人)全体での賃金改善に要する額が加算による収入以上になることだけです。この総額を満たしていれば、内訳の設計は事業者に委ねられていると読めます。
複数の事業所を持つ法人は、処遇改善計画書と実績報告書を法人単位で一括して作成して差し支えありません。ただし一括して作成できることと、事業所をまたいで自由に配分できることは別の話です。加算を算定していない事業所は対象外という制約も、一部の事業所に集中させないという制約も、法人単位で申請する場合にそのまま残ります。
基本給・手当・一時金の選び方には3つの制約がある
賃金改善は基本給・手当・賞与等のうち対象とする項目を特定したうえで行うこととされ、どれを使うかは事業者が選べます。ただし選び方には3つの制約がかかります。
1つ目は月額賃金改善要件です。加算Ⅳの加算額の2分の1以上を基本給等の改善に充てる必要があり、加算Ⅳ以外の区分を算定する場合は、仮に加算Ⅳを算定した場合に見込まれる加算額の2分の1以上が基準になります。ここでいう基本給等は、基本給または決まって毎月支払われる手当を指します。なお、加算を未算定の事業所が新規に算定し始める場合を除き、この要件を満たすために賃金総額を新たに増加させる必要はありません。手当や一時金による賃金改善の一部を減額して基本給等に付け替える形でも構わないとされています。
2つ目は令和8年度の増加分の扱いです。令和7年度と比べて増加した加算額については、過去の賃金改善の実績に関わらず新規に賃金改善を実施しなければならず、その新規分はベースアップで行うことが基本とされています。賃金体系を整備途上であるなど、ベースアップだけでは対応できない場合には、その他の手当や一時金を組み合わせて実施しても差し支えありません。
3つ目は賃金水準の維持です。特別事情届出書を提出する場合を除き、特定した項目を含めて賃金水準を低下させてはならないと定められています。
| 改善の方法 | 位置づけ | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 基本給の引上げ | 安定的な処遇改善の観点から望ましいとされる | 時給制の時給引上げ、日給制の日給引上げも基本給の引上げとして扱ってよい |
| 決まって毎月支払われる手当 | 基本給等に含まれ、月額賃金改善要件の2分の1に算入できる | 職能手当・資格手当・役職手当・地域手当等の名称でもよい。通勤手当・扶養手当は含まれない |
| 賞与・一時金 | 賃金改善としては認められる | 基本給等ではないため、月額賃金改善要件の2分の1には算入されない |
| 退職手当 | 対象外 | 通知が定義する「賃金」から除かれている |
金額の数え方にも決まりがあります。賃金改善額には、賃金改善分に応じて増加した法定福利費の事業主負担分と、法人事業税の外形標準課税の付加価値額増加分を含められます。一方、退職手当共済制度の掛金など任意加入の制度に係る増加分は含みません。キャリアパス要件や職場環境等要件を満たすために取り組む費用も、賃金改善額に含めてはならないとされています。
配分を設計するときは、金額を割り振る前に対象者の名簿を確定させると手戻りが減ります。派遣職員を含めるかどうか、法人本部の誰までを算定対象事業所の業務を行っている職員として扱うかは、処遇改善計画書と実績報告書の両方に影響します。
次に、仮に加算Ⅳを算定した場合の加算額を先に計算し、その2分の1以上を基本給等に割り付けてから、残りの配分を検討します。この順番にしておくと、月額賃金改善要件を満たしていないことが実績報告の段階で判明する事態を避けられます。
決めた配分方法は書面にまとめて職員に周知しておく必要があります。通知は、職員から賃金改善に関する照会があった場合に、その職員の賃金改善に係る内容を書面を用いるなど分かりやすく回答することを求めています。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
配分を決めたあとに残る手続き
支給の時期は算定対象月と同一でなくても差し支えありません。当月の労働時間に基づき当月中に見込額で支払う、当月の労働時間に基づき翌月中に支払う、国保連から報酬が振り込まれる月(サービス提供の翌々月)に支払うという3つのパターンから、事業者が任意に選択します。あわせて、配分のあり方について予め労使の合意を得るよう努めることとされています。
一部の職員の賃金水準を引き下げた場合でも、事業所の職員全体の賃金水準が低下していなければ特別事情届出書の提出は不要です。ただし一部の職員の賃金水準を引き下げることは不利益変更に当たると考えられるため、合理的な理由に基づいて適切に労使の合意を得る必要があります。基本給は改善したものの賞与を引き下げ、賃金全体として水準が下がった場合は、特別事情届出書を提出することになります。
実績報告の段階で賃金改善額が加算額を下回った場合は、算定要件を満たさないものとして返還の対象になります。不足する部分を賞与等の一時金として追加的に配分すれば返還を求めない取扱いとしても差し支えないとされていますが、年度の途中で配分の進捗を確認しておけば、この精算に頼らずに済みます。
加算区分ごとの要件については処遇改善加算の要件、加算額の計算方法については処遇改善加算の計算方法、基本給への反映については処遇改善加算と基本給で扱っています。
事業所数も定員も、都道府県でかなり違います。全国の就労継続支援B型は20,783事業所で、前回の公表から+874事業所でした(WAM NET 2026年3月31日時点)。自分の県の事業所数・定員・平均工賃は都道府県別データで確認できます。
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