身体拘束適正化検討委員会は
年1回以上。指針・研修・記録が
そろわないと減算になる
身体拘束等の適正化のための体制整備は、2026年8月16日時点で、身体拘束を行っているかどうかに関係なく指定基準上の義務です。指定基準(平成18年厚生労働省令第171号)第35条の2第3項は、次の3つを求めています。①身体拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を定期的に開催して結果を従業者に周知徹底すること。②身体拘束等の適正化のための指針を整備すること。③従業者に対し身体拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること。この規定は就労継続支援B型にも第202条により準用されており、通所系サービスだから不要ということはありません。
身体拘束廃止未実施減算が発動するのは、拘束を行ったこと自体ではなく、記録・委員会・指針・研修のいずれかが欠けた場合です。減算率は所定単位数の100分の10(施設・居住系)または100分の1(訪問・通所系)で、事実が生じた月の翌月から改善が認められた月までの間、利用者全員について適用されます。委員会と研修は「1年に1回以上」が具体的な基準として留意事項通知に明記されています。
目次
運営指導の準備で書類を並べていて、「身体拘束等に関する記録」「委員会議事録」という行で手が止まる。就労継続支援B型の経営者が最初に迷うのは、たぶんここです。拘束を1件も行っていない事業所に、なぜ委員会と指針と研修が要るのか。素朴な疑問です。
僕は埼玉県志木市で就労継続支援B型を運営しています。2026年5月に開所した、IT・パソコン作業が中心の事業所です。利用者は精神・発達障害のある方が中心です。この記事は、指定基準と厚生労働省の通知を読んで、経営者が押さえる順に並べ直したものです。
先に答えを書きます。委員会・指針・研修の3つは、拘束の有無に関係なく指定基準上の義務です。身体拘束廃止未実施減算が発動するのも、拘束したことではなく、記録・委員会・指針・研修のいずれかが欠けたときです。
拘束が1件もなくても、委員会と指針と研修は要るのか
要ります。指定基準第35条の2第3項が掲げる委員会・指針・研修の3つは、拘束の有無と切り離された義務だからです。
言葉の確認から入ります。検索では「身体拘束適正化委員会」と呼ばれることが多い言葉です。厚生労働省の解釈通知や留意事項通知が使う呼称は「身体拘束適正化検討委員会」です。
体制整備を定めているのは、指定基準(平成18年厚生労働省令第171号)第35条の2です。第1項が禁止、第2項がやむを得ず拘束する場合の記録義務、第3項が適正化措置です。第3項が掲げているのが、委員会・指針・研修の3つになります。
経営者が押さえるべきなのは、第3項が第1項・第2項と切り離された独立の義務だという点です。拘束を1件も行っていない事業所でも、第3項の3つは講じなければなりません。適正化措置が義務になったのは令和4年(2022年)4月1日です。令和4年3月31日までは努力義務でした。
委員会の作り方にも決まりがあります。専任の身体拘束等の適正化対応策を担当する者を決めておくことが必要とされています。第三者や専門家の活用に努めることともされていて、挙がっているのは医師(精神科専門医等)、看護職員等です。
負担を軽くする決まりも置かれています。事業所単位でなく法人単位での設置・開催が可能です。虐待防止委員会の中で身体拘束等の適正化を検討することをもって、委員会を開催しているとみなして差し支えないとされています。これは留意事項通知に明記されています。
うちはサービス管理責任者を管理者と兼務している常勤1名の体制です。小さい事業所で委員会を別立てにすると、それだけで回らなくなると思います。規模の小さい事業所からすると、法人単位と一体開催を認める扱いは実務に即した決まりだと思っています。
就労継続支援B型にも、この3つは準用されるのか
準用されます。指定基準第202条が「第三十五条の二から第四十一条まで」を就労継続支援B型の事業に準用しているためです。条文上まったく争いのない部分です。
書類の側からも確かめられます。令和8年(2026年)6月8日に「確認項目及び確認文書」が新設されました。その就労継続支援B型シートには、「身体拘束等の禁止(第202条)(第35条の2を準用)」として5つの確認項目が並んでいます。確認文書として挙がっているのは次のものです。
- 個別支援計画
- 身体拘束等に関する記録
- 委員会議事録
- 指針
- 研修を実施したことが分かる書類
解釈通知はさらに踏み込んでいます。委員会に報告された事例がない場合の扱いにも触れていて、未然防止の観点から利用者に対する支援の状況等を確認することが必要としています。報告がゼロの年でも支援状況の確認は必要だ、という書き方です。
拘束ゼロの事業所の委員会を「今年も0件でした」で終わらせない、という意味だと思います。支援の状況を点検する場として使うことが想定されている、というのが僕の読み方です。年1回しか開かないなら、その1回の中身はここで決まります。
数字も見ておきます。令和6年度の国の全数調査では、障害者福祉施設従事者等による虐待の事実が認められたのは1,267件でした。このうち就労継続支援B型が99件(7.8%)を占めています。身体的虐待654件のうち、身体拘束を含むものは104件ありました。通所のサービスだから縁遠い、とまでは言えない数字だと受け止めています。
減算はどんなときに発動して、いくら引かれるのか
身体拘束廃止未実施減算が発動するのは、記録・委員会・指針・研修のいずれかが欠けたときです。減算率は施設・居住系が所定単位数の100分の10、訪問・通所系が100分の1です。
留意事項通知は、身体拘束廃止未実施減算の発動事由を4つに整理しています。
- 求められる身体拘束等に係る記録が行われていない場合
- 身体拘束適正化検討委員会を1年に1回以上開催していない場合
- 身体拘束等の適正化のための指針を整備していない場合
- 身体拘束等の適正化のための研修を1年に1回以上実施していない場合
1つ目には、通知がわざわざ注意を書き添えています。「施設等において身体拘束等が行われていた場合ではなく、記録が行われていない場合である点」に留意すること、としています。1つ目の分かれ目は拘束の有無ではなく記録の有無だ、と読める書き方です。
率は2区分に分かれています。
| 区分 | 対象サービス | 減算率 |
|---|---|---|
| 施設・居住系 | 障害者支援施設(施設入所支援のほか障害者支援施設が行う各サービスを含む)、療養介護、障害児入所施設、共同生活援助、宿泊型自立訓練 | 所定単位数の100分の10 |
| 訪問・通所系 | 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、生活介護、短期入所、自立訓練(宿泊型を除く)、就労移行支援、就労継続支援A型・B型 ほか | 所定単位数の100分の1 |
同じ就労継続支援B型でも、障害者支援施設が行うものは100分の10です。それ以外は100分の1になります。令和8年度の報酬算定構造でも、就労継続支援B型サービス費の減算欄は2本立てです。「障害者支援施設が行う場合」が×90/100、「障害者支援施設以外が行う場合」が×99/100と載っています。
令和6年3月31日までは1日につき5単位の定額でした。古い解説を下敷きにした自己点検表は差し替えが必要です。
効き方も押さえておきます。4つのいずれかに該当する事実が生じた場合、速やかに改善計画を都道府県知事等に提出することとされています。そのうえで、事実が生じた月から3月後に改善状況を報告します。減算は、事実が生じた月の翌月から改善が認められた月までの間、利用者全員について所定単位数から行われます。
計算の順序にも決まりがあります。乗じる相手は、各種加算がなされる前の単位数です。複数の減算事由に該当する場合は、各種減算をした後の単位数に率を乗じます。さらに通知は、該当する事実が継続して改善の指導にも従わない場合に触れています。特別な事情がある場合を除き、指定の取消しを検討するものとしています。
100分の1なら小さい、という受け取り方は危ういと思っています。対象は利用者全員で、改善が認められる月まで続くからです。逆に言えば、発動事由は4つとも体制の側にあります。手を打てる範囲にある、というのが救いです。
やむを得ず拘束するとき、何を満たして何を記録するのか
やむを得ず身体拘束を行う場合は、切迫性・非代替性・一時性の3要件をすべて満たすこととされています。かつ、組織としてそれらの要件の確認等の手続きを行った旨を記録しなければならないとされています。
3要件の中身は、「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月)が説明しています。
- 切迫性 … 生命・身体・権利が危険にさらされる可能性が著しく高いこと
- 非代替性 … 拘束せずに支援する全ての方法を検討したうえで、他に代替手法がないことを複数職員で確認すること
- 一時性 … 本人の状態像に応じて必要とされる最も短い拘束時間を想定すること
手続きとして挙げられているのは次の4つです。
- 個別支援会議等で組織として検討・決定すること
- 個別支援計画に態様及び時間と緊急やむを得ない理由を記載すること
- 本人や家族に十分に説明して了解を得ること
- 市町村の障害者虐待防止センター等に相談・報告すること
並べて読むと、判断を職員個人に負わせない設計が求められていることが分かります。現場の職員が一人で決めて実行する形は、この手続きとかみ合いません。会議、計画、説明、相談と、確認する相手が要件の側から指定されているからです。
逆向きの注意もあります。手引きは、肢体不自由、特に体幹機能障害がある利用者の着座姿勢を保持するために、ベルト類を装着する行為について書いています。残存機能を活かせるよう安定した姿勢を保つ工夫として行う場合です。これは「やむを得ない身体拘束」ではなく、行わないことがかえって虐待に該当するとしています。何でも拘束扱いにして外すのが正解ではありません。
指針には何を書けばよいのか
指針に盛り込む項目は、解釈通知が7つ示しています。基本的な考え方から、利用者等に対する当該指針の閲覧に関する基本方針までの7つです。
- ①基本的な考え方
- ②身体拘束適正化検討委員会その他事業所内の組織に関する事項
- ③職員研修に関する基本方針
- ④事業所内で発生した身体拘束等の報告方法等の方策に関する基本方針
- ⑤身体拘束等発生時の対応に関する基本方針
- ⑥利用者等に対する当該指針の閲覧に関する基本方針
- ⑦その他必要な基本方針
僕が目を留めたのは⑥です。閲覧の基本方針が項目に入っているので、指針は引き出しにしまうものではないと分かります。利用者や家族が見られる状態にしておくもの、と読むのが素直です。
紛らわしい点を1つ補います。虐待防止のための指針は、解釈通知上「作成することが望ましい」とされているだけで、省令上の義務ではありません。省令上の義務があるのは、身体拘束等の適正化のための指針のほうです。この2つは名前が似ていますが、根拠の強さは同じではありません。
1年単位の段取りに落とすと、次の順序になります。
まず年度のはじめに、虐待防止委員会と身体拘束適正化検討委員会を一体で開く日を決めます。年1回以上、日付まで年間計画に書き込んでおくと、期末に慌てずに済みます。通知が一体開催を認めているので、別々に組む必要はありません。
次に、その委員会の議題を2つ固定しておくと確実です。今期の身体拘束等の報告件数と、報告がない場合の支援状況の確認です。報告ゼロでも支援状況の確認は必要だと解釈通知が明記しています。議事録に検討の跡が残る形にしておく必要があります。
研修は、虐待防止研修に身体拘束等の適正化を組み込んで年1回以上とします。新規採用時には必ず実施して、受講記録を残します。委員会の議事録は5年間保存です。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
結局、委員会・指針・研修・記録の4つを1年の型にしてしまうことが一番大事だと思っています。拘束の有無で要否が変わらない以上、思い出したときにやる運用では続きません。年度のはじめに日付を決めておき、虐待防止側と一体で開き、議事録を5年残します。ここまで型にすれば、運営指導で書類を求められても探す場所は決まっています。
あわせて読む
体制側の書類は、この記事だけでは揃いません。近いところから3本挙げます。
- 虐待防止の体制整備 … 委員会・研修・担当者の3点。身体拘束の委員会と一体で開くなら、先に読む相手はここです
- 障害福祉のBCP … 業務継続計画。計画・周知・訓練・見直しの記録が、同じ形で問われます
- 運営指導とは何か … これらの書類がまとめて確認される場面の全体像です
- 根拠条文
- 指定基準(平成18年厚生労働省令第171号)第35条の2。就労継続支援B型は第202条により準用
- 義務化の時期
- 適正化措置(委員会・指針・研修)は令和4年(2022年)4月1日から義務。令和4年3月31日までは努力義務
- 委員会
- 身体拘束適正化検討委員会。1年に1回以上開催。テレビ電話装置等の活用可。法人単位での設置・開催も可。虐待防止委員会と一体的に開催してもよい
- 研修
- 1年に1回以上。新規採用時には必ず実施。虐待防止研修で身体拘束等の適正化を扱えば実施したものとみなして差し支えない
- 記録
- やむを得ず拘束する場合は態様・時間・利用者の心身の状況・緊急やむを得ない理由その他必要な事項を記録。提供日から5年間保存
- 3要件
- 切迫性・非代替性・一時性の3つをすべて満たし、かつ組織として要件を確認した手続きを行った旨を記録すること
- 減算率
- 施設・居住系は所定単位数の100分の10、訪問・通所系は100分の1。令和6年3月31日までは1日につき5単位だった
- 減算期間
- 事実が生じた月の翌月から改善が認められた月まで、利用者全員について減算。改善計画を提出し、事実が生じた月から3月後に改善状況を報告する
よくある質問
自分の地域には、
どれくらい利用者候補がいる?
所在地をもとに、周辺人口・障害福祉事業所数・紹介元になる相談支援事業所の数などを簡易集計します。これから開設する方には出せる場所と参入余地を、すでに運営している方には商圏内の競合と紹介元の分布を、目的にあわせて整理します。
その場でダウンロードできる資料ではありません。いただいた内容をもとに1件ずつ作成し、2〜3営業日以内にメールでお送りします。
