現役の事業所運営者が書く、障害福祉の経営誌

障害者虐待防止の体制整備
委員会・研修・担当者の3点と
未実施なら基本報酬の1%減算

最終更新|制度基準日
執筆:福祉経営ナビ編集部
監修:徳永 崇志(現役の就労継続支援B型事業所運営者)
結論

2026年8月16日時点で、指定障害福祉サービス事業者に義務づけられている虐待防止の体制整備は3つです。虐待防止委員会を定期的に開催して結果を従業者に周知徹底すること、従業者に対して虐待の防止のための研修を定期的に実施すること、この2つを適切に実施するための担当者を置くこと。指定障害福祉サービス基準(平成18年厚生労働省令第171号)第40条の2が定めるのはこの3点だけで、指針の整備は条文に入っていません。委員会と研修の「定期的」は、解釈通知と留意事項通知でいずれも年1回以上と示されています。

3つのうちどれかを満たしていない事実が生じると、虐待防止措置未実施減算として所定単位数の100分の1が減算されます。減算率は全サービス共通の1%で、身体拘束廃止未実施減算と違って障害者支援施設でも10%にはなりません。減算されるのは事実が生じた月の翌月から改善が認められた月までで、その間は利用者全員について引かれます。

根拠:厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日障発第1031001号)第二の1
目次

省令が求めているのは3つの措置だけ

指定障害福祉サービス基準第40条の2は、虐待の発生またはその再発を防止するため、次の各号に掲げる措置を講じなければならない、として3つを並べています。虐待の防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催して結果を従業者に周知徹底すること、従業者に対し虐待の防止のための研修を定期的に実施すること、前二号の措置を適切に実施するための担当者を置くこと。条文はここで終わっていて、指針の整備は含まれていません。

現場では「虐待防止責任者」という呼び方をすることがありますが、省令の文言は「担当者を置くこと」です。解釈通知はこれを「専任の虐待防止担当者(必置)」と表現し、サービス提供責任者等を配置することとしています。呼称は事業所の判断で構いませんが、運営指導で示す実体は専任で置かれた担当者です。

この3つが義務になったのは令和4年(2022年)4月1日です。令和3年1月25日厚生労働省令第10号の附則により、令和3年4月1日から令和4年3月31日までは努力義務でしたが、その経過措置はすでに終わっています。

委員会と研修は年1回以上。まとめてよい部分がある

「定期的に」の中身は省令ではなく解釈通知と留意事項通知が具体化しています。小規模な事業所ほど気になるのは開催頻度と人数ですが、いずれもかなり緩く設計されています。

求められること具体的な水準まとめてよい範囲
虐待防止委員会少なくとも年1回以上開催し、結果を従業者に周知徹底する法人単位での設置・開催が可。身体拘束適正化検討委員会と一体的に設置・運営してよい
委員会の構成管理者と虐待防止担当者が参画していれば最低人数は問わない利用者・家族・専門的な知見のある外部の第三者も加えるよう努める
委員会の記録対応状況を適切に記録し5年間保存するー
従業者への研修年1回以上。加えて新規採用時には必ず実施する虐待防止の研修で身体拘束等の適正化を扱えば、身体拘束の研修も実施したものとみなされる
研修の実施方法実施内容を記録する事業所内の職員研修のほか、協議会や基幹相談支援センター等が実施する研修への参加でもよい
担当者専任の虐待防止担当者を置く(必置)担当者と管理者は都道府県が行う研修に参加することが望ましい

一体開催と一体研修が認められている意味は大きく、年1回の会議と年1回の研修を丁寧に設計すれば、虐待防止と身体拘束の適正化の両方の要件を同時に満たせます。ただし「みなす」ためには、その回で身体拘束等の適正化を検討・研修したことが議事録や研修記録から読み取れる必要があります。議題を一行足しておくかどうかで結論が変わる部分です。

解釈通知は委員会の役割を、虐待防止のための計画づくり、虐待が起こりやすい職場環境の確認などのチェックとモニタリング、虐待発生後の検証と再発防止策の検討、の3つに整理しています。年1回の会議で何を話すか迷ったときは、この3つをそのまま議題に据えるのが原典に沿った形です。

減算は1%。効いてくるのは率ではなく期間

虐待防止措置未実施減算は令和6年度報酬改定で新設され、令和6年4月1日から適用されています。対象は全サービス、減算率は所定単位数の100分の1です。

留意事項通知が減算の対象として挙げているのは3つで、省令の3つの措置とそのまま対応しています。虐待防止委員会を1年に1回以上開催していない場合、研修を1年に1回以上実施していない場合、そして虐待防止措置を適切に実施するための担当者を配置していない場合です。

金額に効いてくるのは率ではなく期間のほうです。減算は事実が生じた月の翌月から改善が認められた月まで続き、その間は利用者全員について引かれます。「事実が生じた」とは運営基準を満たしていない状況が確認されたことを指すので、前回の委員会から1年が過ぎた翌月から対象になる、という数え方になります。速やかに改善計画を都道府県知事等に提出し、事実が生じた月から3か月後に改善状況を報告する手続も定められています。

就労継続支援B型サービス費は1日につき算定されます。令和8年6月に基本報酬区分の基準額が見直されたあとの単位数で、利用定員20人以下・平均工賃月額3万3千円以上3万5千円未満の区分(758単位)を例にとると、延べ利用日数が月400人日の事業所なら基本報酬は303,200単位、その1%にあたるおよそ3,000単位が毎月引かれる計算になります。改善が認められるまで数か月続けば、委員会を1回開き忘れただけの結果としては小さくない額です。

なお、この1%は各種加算がなされる前の基本報酬に対する割合で、加算を含めた合計に対する1%ではありません。複数の減算事由に該当する場合は、他の減算をしたあとの単位数に対して1%を計算します。身体拘束廃止未実施減算のように施設・居住系だけ10%になる区分はなく、障害者支援施設基準第54条の2に適合していない場合も1%です。事実が継続する場合は改善指導が行われ、指導に従わない場合は特別な事情がある場合を除き指定の取消しを検討する、とも書かれています。

運営指導で出すのは3種類の書類

令和8年6月8日に整備された「確認項目及び確認文書」では、就労継続支援B型の「虐待の防止」について、確認文書が委員会議事録、研修を実施したことが分かる書類、担当者を配置していることが分かる書類の3つと明示されました。確認項目も省令の3つと同じです。求められる書類が事前に公開されている以上、運営指導での指摘を避ける準備はこの3点に絞れます。

もう一か所、運営規程にも「虐待の防止のための措置に関する事項」を定める必要があります。厚生労働省・こども家庭庁の手引き(令和6年7月)は、その中身として担当者の選定、成年後見制度の利用支援、苦情解決体制の整備、従業者への研修の実施、虐待防止委員会の設置等を挙げています。委員会と研修を回していても、運営規程が古いままだとそちらで指摘を受けます。

数字が示しているのは知識と組織風土の問題

令和6年度の全数調査では、障害者福祉施設従事者等による虐待の事実が認められたのは1,267件でした。市区町村等の職員が判断した発生要因は、教育・知識・介護技術等に関する問題が67.5%、倫理観や理念の欠如が60.2%、職員のストレスや感情コントロールの問題が58.7%と続きます。人員不足や人員配置の問題は29.8%で、上位3つとは差があります。

同じ調査で、虐待が認められた事業所において確認された取組の実施割合は、職員研修の実施が69.4%、虐待防止委員会の開催と検討結果の周知が59.7%、通報義務の履行が51.5%でした。裏を返せば、虐待が起きた事業所の4割は委員会を開いていません。委員会と研修は減算を避けるための形式ではなく、上位の発生要因である知識と倫理観に直接効く手段として設計されている、というのが数字の読み方です。

年1回の委員会、年1回の研修、新規採用時の研修、そして担当者1名。小規模事業所がまず組むべきなのは、この4つを年間予定表と採用手続きに書き込んでしまうことです。法人単位の設置と身体拘束との一体運営を使えば、実際に増える手間は年に会議1回と研修1回に収まります。

要点の整理
義務の根拠
指定障害福祉サービス基準第40条の2。令和4年(2022年)4月1日から義務(令和3年度は努力義務)
虐待防止委員会
少なくとも年1回以上開催し、結果を従業者に周知徹底する。法人単位での設置も可
従業者への研修
年1回以上。加えて新規採用時には必ず実施する
担当者
専任の虐待防止担当者を必ず置く。サービス提供責任者等を配置する
虐待防止のための指針
省令上の義務ではなく「作成することが望ましい」。義務なのは身体拘束等の適正化のための指針
虐待防止措置未実施減算
所定単位数の100分の1(1%)。全サービス共通で、障害者支援施設でも1%
減算される期間
事実が生じた月の翌月から、改善が認められた月まで。利用者全員について減算
記録の保存
虐待防止委員会における対応状況は適切に記録のうえ5年間保存する
制度基準日2024.04.01

よくある質問

Q. 虐待防止のための指針は必ず作らないといけませんか?
A. いいえ、省令上の義務ではありません。指定障害福祉サービス基準第40条の2が挙げているのは委員会・研修・担当者の3つだけで、指針は条文にありません。解釈通知が「虐待防止のための指針を作成することが望ましい」として基本的な考え方など7項目を示しているにとどまります。指針の整備が義務なのは身体拘束等の適正化のほうで、こちらは第35条の2第3項第2号に明記されています。混同して「虐待防止指針がないと減算」と考える必要はありません。
Q. 虐待防止委員会は年に何回開けばよいですか?
A. 少なくとも年1回以上です。解釈通知が「少なくとも1年に1回は開催することが必要」としており、留意事項通知も減算の対象を「1年に1回以上開催していない場合」と具体的に示しています。事業所単位ではなく法人単位で設置・開催することが認められており、身体拘束適正化検討委員会と一体的に設置・運営した場合(虐待防止委員会で身体拘束等の適正化を検討する場合を含む)は、当該委員会を開催しているものとみなして差し支えないとされています。
Q. 虐待防止措置未実施減算はいくら減りますか?
A. 所定単位数の100分の1(1%)です。全サービス共通の率で、身体拘束廃止未実施減算のように施設・居住系だけ10%になるという区分はなく、障害者支援施設基準第54条の2に適合していない場合も1%です。この所定単位数は各種加算がなされる前の基本報酬の単位数で、加算を含めた合計に対する1%ではありません。複数の減算事由に該当する場合は、他の減算をしたあとの単位数(減算後基本報酬所定単位数)に対して1%を計算します。
Q. 減算はいつからいつまで続きますか?
A. 事実が生じた月の翌月から、改善が認められた月までです。その間は利用者全員について所定単位数から減算されます。手続としては、速やかに改善計画を都道府県知事等に提出し、事実が生じた月から3か月後に改善計画に基づく改善状況を報告することとされています。「事実が生じた」とは運営基準を満たしていない状況が確認されたことを指します。事実が継続する場合は改善指導が行われ、指導に従わない場合は特別な事情がある場合を除き指定の取消しを検討するとされています。
Q. 新しく指定を受けた事業所は、いつまでに体制を整えればよいですか?
A. 担当者の配置は指定と同時に行う必要があり、委員会の開催と研修の実施は指定後速やかに実施することが求められます。令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1の問84が、新規に指定を受ける事業所についてこの取扱いを示しています。指定日に担当者が決まっていない状態は、その時点で減算事由に該当することになります。
Q. 虐待防止の研修と身体拘束の研修は別々にやる必要がありますか?
A. 一本にまとめられます。解釈通知は、虐待防止に関する研修において身体拘束等の適正化について取り扱う場合は、身体拘束等の適正化のための研修を実施しているものとみなして差し支えないとしています。ただし年1回以上という頻度と、新規採用時に必ず実施することは変わりません。研修の実施内容を記録することも求められているので、その回で身体拘束等の適正化を扱ったことが分かるように残しておく必要があります。
この記事の根拠資料
2.
厚生労働省
2026年08月16日確認。委員会は年1回以上・記録は5年保存・研修は年1回以上と新規採用時・指針は「望ましい」
3.
厚生労働省
2026年08月16日確認。虐待防止措置未実施減算の対象・単位数・適用期間。令和8年度改正の新旧対照表で改正前後の記載は同一
5.
厚生労働省
2026年08月16日確認。虐待防止措置未実施減算は令和6年度改定で新設・所定単位数の1%
6.
厚生労働省
2026年08月16日確認。就労継続支援B型の基本報酬区分の基準の見直し(令和8年6月施行)。虐待防止・身体拘束・業務継続計画の3減算に関する改定項目の記載はなし
7.
厚生労働省
2026年08月16日確認。新規指定事業所の担当者配置は指定と同時、委員会と研修は指定後速やかに
8.
厚生労働省
2026年08月16日確認。就労継続支援B型シートの「虐待の防止」確認文書は委員会議事録・研修実施が分かる書類・担当者配置が分かる書類
10.
厚生労働省・こども家庭庁
2026年08月16日確認。運営規程に定める「虐待の防止のための措置に関する事項」の中身
最終確認:2026.08.16

この記事の更新履歴

2026.08.16初回公開
執筆・監修
徳永 崇志

徳永 崇志

現役の就労継続支援B型事業所運営者

埼玉県志木市で実際にB型事業所を運営しています。

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