障害福祉事業所のBCP。
義務化された内容と業務継続計画未策定減算、
小規模事業所での作り方
障害福祉サービス事業所の業務継続計画(BCP)は、指定基準の第33条の2として令和6年(2024年)4月1日から義務づけられています。令和3年4月1日から令和6年3月31日までは努力義務でしたが、3年間の経過措置が終わり、現在は策定していないこと自体が運営基準違反です。求められているのは、感染症と非常災害の発生時にサービス提供を継続し、非常時の体制で早期に業務を再開するための計画を作ること、計画に従って必要な措置を講じること、従業者へ周知して研修と訓練を定期的に行うこと、そして定期的に見直すことの4つです。
報酬面では業務継続計画未策定減算が置かれています。所定単位数の100分の3(療養介護、施設入所支援、共同生活援助、宿泊型自立訓練、障害児入所施設)または100分の1(生活介護、短期入所、就労移行支援、就労継続支援、居宅介護など)で、就労継続支援B型や生活介護のように1日につき算定するサービスでは、基本報酬の1日分ごとに1%が引かれます。ただし減算の算定要件は「計画を策定すること」と「計画に従い必要な措置を講ずること」の2つだけで、周知・研修・訓練・見直しの実施の有無は減算要件に含まれていません(2026年8月16日時点)。
目次
省令が求めているのは、策定と研修訓練と見直しの3層
第33条の2は3項に分かれていて、それぞれ違うことを求めています。第1項が計画の策定と計画に従った必要な措置、第2項が従業者への周知と定期的な研修および訓練の実施、第3項が定期的な見直しと必要に応じた変更です。義務化されたのは令和6年4月1日で、令和3年1月25日厚生労働省令第10号の附則第3条により、令和3年4月1日から令和6年3月31日までの3年間は努力義務でした。同じ日に感染症の予防およびまん延の防止のための措置も義務化されているので、両方をまとめて整備した事業所も多いはずです。
計画に何を書くかは省令には書かれておらず、解釈通知が項目を示しています。感染症と災害で構成が違う点が実務上の落とし穴です。
| 区分 | 記載する項目 |
|---|---|
| 感染症に係る業務継続計画 | 平時からの備え(体制構築・整備、感染症防止に向けた取組の実施、備蓄品の確保等)/初動対応/感染拡大防止体制の確立(保健所との連携、濃厚接触者への対応、関係者との情報共有等) |
| 災害に係る業務継続計画 | 平常時の対応(建物・設備の安全対策、電気・水道等のライフラインが停止した場合の対策、必要品の備蓄等)/緊急時の対応(業務継続計画発動基準、対応体制等)/他施設及び地域との連携 |
解釈通知は、この2つを一体的に策定することを妨げないと述べています。1冊にまとめてもかまいませんが、感染症編の「初動対応」と災害編の「発動基準」は別物なので、両方が抜けずに入っているかを目次で確認してください。想定される災害は地域によって異なるため、項目は実態に応じて設定することとされています。
研修と訓練は、解釈通知でいずれも年1回以上です。研修は新規採用時に別途実施することが望ましいとされ、実施内容の記録も求められます。訓練は机上か実地かを問われませんが、机上と実地を適切に組み合わせることが適切とされています。感染症のBCPに係る研修・訓練は、感染症の予防およびまん延の防止のための研修・訓練と一体的に実施して差し支えありません。さらに、BCPの策定も研修・訓練の実施も、他のサービス事業者との連携等により行って差し支えないと明記されています。
減算の要件は「策定したか」だけで、研修や訓練は入っていない
業務継続計画未策定減算は令和6年度報酬改定で新設されました。算定要件は、感染症や非常災害の発生時にサービス提供を継続的に実施するための計画を策定すること、および当該計画に従い必要な措置を講ずること、この2つだけです。令和6年度Q&A VOL.1の問14は、周知・研修・訓練・定期的な見直しの実施の有無は減算の算定要件ではないと明言しています。逆に、感染症と災害のどちらか一方の計画が欠けているだけでも減算の対象になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 100分の3 | 療養介護、施設入所支援(施設入所支援のほか障害者支援施設が行う各サービスを含む)、共同生活援助、宿泊型自立訓練、障害児入所施設 |
| 100分の1 | 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、短期入所、生活介護、自立生活援助、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、計画相談支援、地域移行支援、地域定着支援、障害児相談支援、児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援(障害者支援施設が行う各サービスを除く) |
| 適用開始(原則) | 令和7年(2025年)4月1日 |
| 令和6年4月から対象になる場合 | 生活介護、短期入所、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、共同生活援助、療養介護、施設入所支援、自立訓練などで、「感染症の予防及びまん延の防止のための指針の整備」と「非常災害に関する具体的計画」の策定のいずれも行っていない場合 |
| 適用しない場合 | 就労選択支援は令和9年3月31日までの間、適用しない |
率は所定単位数に対する割合です。就労継続支援B型サービス費や生活介護サービス費は1日につき算定されるため、減算も1日分の基本報酬ごとにかかります。計画相談支援のサービス利用支援費は1月につき算定されるので、こちらは1月あたりの減算になります。なお同じ就労継続支援B型でも、障害者支援施設が行う場合は指定障害者支援施設基準第42条の2第1項が根拠となり100分の3です。
見落としやすいのが遡及です。令和6年度Q&A VOL.1の問15は、行政機関が運営指導等で不適切な取扱いを発見した時点ではなく「基準を満たさない事実が生じた時点」まで遡って減算を適用するとしています。示された例では、令和7年4月から減算対象となるサービスの事業所で令和7年10月の運営指導によりBCP未策定が判明した場合、令和7年4月分の報酬から減算対象です。半年分の返還が一度に立つ計算になるので、運営指導の連絡が来てから慌てて作っても間に合いません。
なお、令和8年度障害福祉サービス等報酬改定の改定事項資料および同改定に伴う留意事項通知の一部改正、令和8年度のQ&A VOL.1・VOL.2には、この減算の率や要件を変更する記載は見当たりませんでした(2026年8月16日確認)。
運営指導では4点セットで見られる
減算の要件は策定の有無だけですが、運営指導で確認されるのはそれより広い範囲です。令和8年6月8日付けで新たに定められた「確認項目及び確認文書」の就労継続支援B型シートでは、業務継続計画の策定等(第202条において第33条の2を準用)について、次の3点が確認項目として並んでいます。感染症および非常災害に対応した業務継続計画を策定し計画に基づく必要な措置を講じているか、業務継続計画について従業者に周知するとともに研修および訓練を定期的に実施しているか、業務継続計画について定期的に見直しを行い必要に応じて変更しているか。
これに対応する確認文書は、業務継続計画、周知記録(配布記録、説明記録等)、研修・訓練記録、見直し記録等の4点です。生活介護や共同生活援助のシートも同じ構成でした。つまり計画そのものは減算に、周知記録から見直し記録までの3点は運営指導での指摘に効いてきます。集団指導・運営指導マニュアルも、非常災害対応マニュアルに基づく避難・救出訓練の定期実施に加えて、BCPが策定されているか、その内容や運用状況についても確認することが必要と書いています。
厚生労働省のガイドラインとひな形をそのまま使う
解釈通知は、記載内容について厚生労働省の2つの業務継続ガイドラインを参照するよう指示しています。つまり国が示した項目立てに沿って書けば、記載項目の要件は満たせる構造になっています。ひな形はいずれもWord形式で公開されているので、白紙から書き起こす必要はありません。
| 資料 | 公表 | 入手先 |
|---|---|---|
| 自然災害発生時の業務継続ガイドライン | 令和3年3月 | 厚生労働省PDF |
| 自然災害BCPひな形(Word) | 掲載ページに公表年月の記載なし | 厚生労働省Word |
| 新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン | 令和2年12月 | 厚生労働省PDF |
| 感染症BCPひな形(入所・入居系/通所系/訪問系)・様式ツール集 | 掲載ページに公表年月の記載なし | 厚生労働省の掲載ページ |
感染症側のひな形はサービス類型ごとに3種類あるので、自事業所の類型に合うものを選びます。自然災害ガイドラインの巻末には、感染症流行下で自然災害が発生した複合災害への留意事項も収められています。
小規模事業所で先に手を付けるなら、ひな形の全項目をいきなり埋めようとせず、埋まらない項目を洗い出すところから始めるのが早いです。備蓄品の数量、停電時に使う設備、緊急連絡網、参集基準といった項目は、事業所ごとの実情を書くしかない部分で、ここを決めるのに時間がかかります。逆に体制構築や保健所との連携の枠組みはひな形の記述をそのまま使える箇所が多く、埋める順番を分けるだけで初版の完成が早まります。
研修と訓練は、それぞれ別枠で年1回ずつ確保するより、既にある会議に載せるほうが続きます。感染症のBCPに係る研修・訓練は感染症の予防およびまん延の防止のための研修・訓練と一体的に実施してよいとされているので、感染症対策の年間計画にBCPの内容を組み込めば1回で両方の記録が残ります。訓練は机上で構わないため、計画の発動基準を読み合わせて役割分担を確認する形でも成立します。ただし机上と実地を組み合わせることが適切とされているので、避難訓練の際にBCPの緊急時対応を確認する回を1つ入れておくと形が整います。
記録の残し方は、計画本体・周知記録・研修訓練記録・見直し記録の4種類でフォルダを分け、実施した日付と参加者が分かる形で保存しておくと扱いやすくなります。国の確認文書がこの4区分なので、同じ区分で持っておけば運営指導の当日に探す時間がかかりません。見直しは年1回、職員体制や連絡先が変わったタイミングで更新日を入れて差し替えると、記録として説明しやすくなります。
※これは制度上の必須要件ではなく、一次情報から導ける運用例です。
何から着手するかの順番
減算の観点だけで言えば、感染症と災害の両方の計画が存在していることが最優先です。まだ1本もないなら、ひな形をダウンロードして事業所名と組織図と連絡先を埋めた初版を先に成立させ、備蓄品リストや複合災害の記述は次の見直しに回すという順番になります。策定の有無だけが減算要件である以上、完成度を上げる作業と減算を止める作業は分けて考えたほうが合理的です。
そのうえで、周知記録・研修訓練記録・見直し記録の3点を1年かけて積み上げます。運営指導の準備の段階でこの3点が空だと、計画があっても第2項・第3項の違反として指摘されます。就労継続支援A型・B型と共同生活援助は3年に1回以上の頻度で運営指導を実施することとされているため、3年分の記録が残る形で運用を回しておくのが現実的な備え方です。
- 義務化の時期
- 令和6年(2024年)4月1日。令和3年4月1日から令和6年3月31日までは努力義務
- 根拠
- 指定障害福祉サービス基準(平成18年厚生労働省令第171号)第33条の2
- 省令上の義務
- ①計画の策定と計画に従った必要な措置 ②従業者への周知と定期的な研修・訓練 ③定期的な見直しと必要に応じた変更
- 研修・訓練の頻度
- 解釈通知でいずれも年1回以上。訓練は机上と実地を適切に組み合わせる
- 業務継続計画未策定減算の率
- 所定単位数の100分の3(療養介護・施設入所支援・共同生活援助・宿泊型自立訓練・障害児入所施設)/100分の1(生活介護・短期入所・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援・居宅介護など)
- 減算の算定要件
- 「業務継続計画を策定すること」と「当該業務継続計画に従い必要な措置を講ずること」の2つのみ。感染症と災害のいずれか一方が未策定でも対象
- 減算の適用開始
- 原則として令和7年(2025年)4月1日から。感染症の予防及びまん延の防止のための指針と非常災害に関する具体的計画のいずれも策定していない生活介護・就労継続支援等は令和6年4月から。就労選択支援は令和9年3月31日まで適用しない
- 遡及
- 運営指導で発見された時点ではなく「基準を満たさない事実が生じた時点」まで遡って適用される
よくある質問
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所在地をもとに、周辺人口・障害福祉事業所数・紹介元になる相談支援事業所の数などを簡易集計します。これから開設する方には出せる場所と参入余地を、すでに運営している方には商圏内の競合と紹介元の分布を、目的にあわせて整理します。
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