# 福祉経営ナビ 全文 > 障害福祉サービス事業所の経営者に向けて、報酬・加算・補助金・利用者獲得・人材を、厚生労働省や自治体の一次資料を確認しながら整理している経営情報誌です。就労継続支援B型事業所を実際に運営する立場から書いています。 運営: 株式会社イチドキリ(〒130-0014 東京都墨田区亀沢1-17-11 中村ビル201)/ 編集責任者: 徳永 崇志(現役の就労継続支援B型事業所運営者・埼玉県志木市/事業所番号 1112200454) 引用可。出典として「福祉経営ナビ」と該当ページURLを明記してください。 最終更新: 2026-09-30 --- ## 就労継続支援A型が 利用者の雇用で使える助成金 制度ごとに分かれる対象可否 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/a-gata-riyousha-koyou-joseikin/ カテゴリー: 補助金・助成金 公開: 2026-08-23 / 更新: 2026-09-12 制度基準日: 2026.08.23 ### 結論 就労継続支援A型の利用者は、障害者総合支援法施行規則第6条の10第1号で「雇用契約有」と区分される労働者です。雇用保険の被保険者になりうるので、雇用関係助成金の入口要件を満たせます。ただし対象になるかどうかは制度ごとに分かれます。 令和8年度の時点で、特定求職者雇用開発助成金はA型事業所が自らの利用者を雇い入れる場合も対象になりえます。ただし過去に同コースで雇い入れたA型利用者の離職割合が25%を超えていると不支給です。逆に、要領・パンフレット・Q&Aで名指しの除外を置いている制度もあります。トライアル雇用助成金と、キャリアアップ助成金の正社員化系2コースです。人材開発支援助成金の人材育成支援コース、JEEDの職場適応援助者助成金なども同じ扱いです。 - A型の利用者の位置づけ: 障害者総合支援法施行規則第6条の10第1号で「雇用契約有」と区分される労働者。雇用保険の被保険者になりうる - 特定求職者雇用開発助成金(令和8年度): A型事業所が自らの利用者として雇い入れる場合も対象になりうる。重度障害者等・フルタイム・中小企業なら1人あたり40万円を6か月ごとに6回で支給総額240万円(助成対象期間3年間)。過去の対象者の離職割合が25%超なら不支給 - 名指しで除外されている制度: トライアル雇用助成金(障害者トライアル・障害者短時間トライアル)、キャリアアップ助成金の正社員化コースと障害者正社員化コース、人材開発支援助成金の人材育成支援コース、JEEDの職場適応援助者助成金・障害者雇用相談援助助成金・作業施設設置等助成金 - 断定できない制度: キャリアアップ助成金の賃金規定等改定・賃金規定等共通化・賞与退職金制度導入の3コース。パンフレットにA型の利用者を除く文言は見当たらないが、支給要領本文は未確認 - 納付金制度への算入: A型の利用者は雇用契約があるため、1事業所あたりの常用雇用労働者数と雇用障害者数の両方に算入される(要件の組み合わせによる帰結)。民間企業の法定雇用率は令和8年7月から2.7% - 申請の代行: 雇用保険二事業の助成金とJEEDの納付金制度に基づく助成金は、報酬を得て申請書の作成・提出代行を業として行えるのが社会保険労務士に限られる 根拠: 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)支給要領(R8.4.1版)」ほか(各項の出典は本文を参照) ### 本文 就労継続支援A型で利用者を新しく雇い入れるとき、「この人の分で助成金は出るのか」という話が出るはずです。A型は雇用契約を結ぶ事業です。それなら雇用関係助成金も使えるはずだ、と考えるのは自然だと思います。ところが制度ごとに扱いが割れています。支給要領の中で、A型の利用者を名指しで外している制度があります。 僕は埼玉県志木市で就労継続支援B型を運営していて、A型ではありません。補助金の申請代行は経済産業省や自治体の制度でやっていますが、厚生労働省の雇用関係助成金は社会保険労務士の独占業務なので代行していません。この記事は代行の経験談ではなく、支給要領とパンフレットを読んで整理したものです。 先に答えを書きます。特定求職者雇用開発助成金は、離職率の条件つきでA型の利用者も対象になりえます。トライアル雇用助成金と、キャリアアップ助成金の正社員化系2コースは、要件の中でA型の利用者を名指しで外しています。 ## A型の利用者を雇うと、雇用関係助成金の土俵に乗るのか A型の利用者は雇用契約に基づく労働者なので、雇用保険の被保険者になりえます。雇用関係助成金の入口要件は、ここで満たせます。 就労継続支援A型とB型は、**雇用契約の有無で区分**されています。A型は「雇用契約有」、B型は「雇用契約無」です(障害者総合支援法施行規則第6条の10第1号・第2号)。雇用保険の被保険者は、適用事業に雇用される労働者です(雇用保険法第4条第1項)。この2つを合わせると、A型の利用者は雇用保険の被保険者になりうる、という結論になります。B型の利用者は雇用契約を結ばないため、この入口で外れます。 ここから先が本題です。入口を通ることと、実際に対象になることは別です。雇用関係助成金の多くは、支給要領やパンフレットの中で「就労継続支援A型の事業所における利用者」を名指しし、対象から外しています。正直、ここまで書き込まれているとは思っていませんでした。A型での就労は一般雇用と区別して考える、という前提が制度の側にあるのだと思います。 名指しの除外が見当たらない制度もあります。ただし、それは対象になるという意味ではありません。「書いていない」と「対象になる」は別だ、というのが僕の読み方です。制度ごとの分かれ方を先に並べます。 | 制度(令和8年度) | A型の利用者の扱い | 根拠の強さ | | --- | --- | --- | | 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) | 条件つきで対象になりうる | 支給要領に特則あり | | トライアル雇用助成金(障害者トライアル・障害者短時間トライアル) | 対象外 | 支給要領に明記 | | キャリアアップ助成金 正社員化コース・障害者正社員化コース | 対象外 | 対象労働者の要件に明記 | | キャリアアップ助成金 賃金規定等改定・共通化・賞与退職金制度導入 | 断定できない | パンフレットに除外の文言なし。支給要領本文は未確認 | | 人材開発支援助成金 人材育成支援コース | 対象外 | 厚生労働省のQ&Aに明記 | | 人材開発支援助成金 事業展開等リスキリング支援コース | 断定できない | コース固有の明記を確認できず | | JEEDの職場適応援助者助成金・障害者雇用相談援助助成金・作業施設設置等助成金 | 対象外 | 各パンフレットに明記 | ## 特定求職者雇用開発助成金は、自分の事業所の利用者にも使えるのか A型事業所が自らの利用者を雇い入れる場合も対象になりえますが、離職率に関する特則が付きます。 この助成金は、ハローワーク等の紹介で就職困難者を雇い入れた事業主に支給されます。求人サイトからの直接応募は対象になりません。A型事業所が対象労働者を自らの利用者として雇い入れる場合について、支給要領は特則を置いています。過去に同コースの対象となったA型の利用者のうち、基準期間内に確認日が来る人が5人以上いる場合が前提です。その人たちの**離職割合が25%を超えている**と不支給になります。裏を返すと、離職割合が25%以下なら支給対象になる制度設計です。確認日は雇入れ日から1年後と、助成対象期間の終了後1年の2つが置かれています。 この25%は、制度の側から見れば定着の門だと思います。A型は一般就労への移行を目指す場だ、という位置づけと揃っています。経営の側から読むと、一度25%を超えると、そのあとの雇入れ分は出なくなる条件だと読んでいます。だから僕は、この助成金は採用の話ではなく定着の話だと考えています。 A型に固有の期間がもう1つあります。関係事業主が雇い入れる場合の除外期間は通常1年前までですが、A型の利用者として雇い入れる場合は3年前までさかのぼります。 | 対象労働者の区分(中小企業・令和8年度) | 1期あたりの額 | 支給回数 | 支給総額 | 助成対象期間 | | --- | --- | --- | --- | --- | | 重度障害者等(重度または45歳以上の身体・知的障害者と、年齢を問わず精神障害者)・フルタイム | 40万円 | 6回 | 240万円 | 3年間 | | 重度でも45歳以上でもない身体・知的障害者・フルタイム | 30万円 | 4回 | 120万円 | 2年間 | | 身体・知的・精神障害者・短時間労働者 | 20万円 | 4回 | 80万円 | 2年間 | 額はいずれも1人あたりです。支給対象期は雇入れの起算日から6か月ごとに区切られ、その期ごとに申請します。短時間労働者は、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の人を指します。 A型で利用者として雇い入れてこの助成金を使うなら、離職の記録を採用のときから残す順番になると思っています。 離職割合の判定に入るのは、過去にこのコースの対象になったA型の利用者です。誰がいつ対象になり、確認日がいつ来るのかを名簿の形で持っておくことになります。 離職の理由も分けて記録しておきます。支給対象期の途中で対象労働者が離職すると、その期は原則として支給されません。ただし本人都合の退職や重責解雇などは除外して扱われます。 雇入れの入り口も先に決めます。ハローワーク等の紹介であることが要件なので、募集をハローワークに出すところから始めることになります。 ## トライアル雇用助成金は、A型の利用者に使えるのか A型事業所が対象者を利用者として雇い入れる場合は、対象事業主そのものから除外されます。 除外は2か所に置かれています。1つは「継続雇用する労働者」の定義で、括弧書きで就労継続支援A型事業所の利用者を除いています。もう1つは対象事業主の要件です。A型での就労は一般雇用と区別して考えることとされているため、A型事業所は対象事業主にならないと書かれています。 ただし括弧書きで例外が示されています。対象者を当該事業所の職員等、**利用者以外の者として雇い入れる場合**は除外の対象外です。支援員として採用するなら、通常どおり対象になりえます。ここは読み飛ばすと判断を誤る部分だと思います。同じ事業所の同じ人でも、利用者として雇うのか職員として雇うのかで結論が入れ替わります。 | コース(令和8年度) | 対象者 | 支給額(1人あたり月額) | 試行期間 | | --- | --- | --- | --- | | 障害者トライアルコース | 精神障害者 | 最初の3か月は最大8万円、その後の3か月は最大4万円 | 原則3か月、精神障害者は最長6か月 | | 障害者トライアルコース | 精神障害者以外 | 最大4万円 | 原則3か月 | | 障害者短時間トライアルコース | 精神障害者・発達障害者 | 最大4万円 | 3か月以上12か月以内 | 支給額は実労働日数の割合で減額されます。予定就労日数に対する実就労日数の割合が75%以上なら満額で、それを下回ると段階的に下がります。短時間トライアルコースは、週の所定労働時間10時間以上20時間未満で始め、期間中に20時間以上を目指す制度です。 ## キャリアアップ助成金は、A型の利用者に使えるのか 正社員化コースと障害者正社員化コースは、対象労働者の要件でA型の利用者を除いています。 正社員化コースの対象労働者要件は「就労継続支援A型の事業所における利用者以外の者であること」です。障害者正社員化コースも「就労継続支援A型事業における利用者でないこと」と書いています。障害者正社員化コースの申請様式には、対象労働者がA型の利用者に該当するかどうかの確認欄まで置かれています。 確認欄まで用意してあるということは、そこで止まる申請が実際にあるのだと思います。ここは迷う余地のない部分なので、計画を立てる前に外しておきたいところです。 残る3コースの扱いは断定できません。賃金規定等改定コース・賃金規定等共通化コース・賞与退職金制度導入コースは、パンフレットの対象労働者要件に同じ除外の文言が見当たりません。ただし確認できたのはパンフレットまでで、支給要領本文は確認していません。除外の文言が無いことは、**対象になる証明ではありません**。使うかどうかを決める前に、労働局に確認する順番になります。 分からないところは分からないまま書いておきます。曖昧にしたまま進めると、賃金規程を動かしたあとで対象外だと分かる、という順番になりかねません。電話で聞ける確認なので、先にやってしまうほうが早いと思っています。 職員を正社員化する場合は、障害者正社員化コースが使えます。重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者を有期雇用から正規雇用に転換した場合、中小企業で1人あたり支給総額120万円です。60万円を2期に分けて受け取ります。実施日の前日までにキャリアアップ計画を提出しておくことが共通の要件です。 ## 人材開発支援助成金は、利用者と職員でどう分かれるのか 人材育成支援コースは、A型の利用者を対象外とすることを厚生労働省のQ&Aで明記しています。 Q&AのQ29は、A型に雇用される者を2種類に分けています。1つは利用者で、就労の機会の提供を受け、一般就労のための知識・能力の向上のために支援を受ける障害者です。もう1つは支援を行う者で、管理者・サービス管理責任者・職業指導員・生活支援員が挙げられています。利用者が対象外になる理由は、雇用契約の有無ではありません。**一般就労への移行に向けた訓練**を受けることが前提とされているから、と書かれています。 この理由付けは、ほかの制度の除外を読むときにも効くと思っています。線を引いているのは雇用契約の有無ではなく、A型が訓練の場だという位置づけのほうだ、というのが僕の読み方です。そう読むと、制度ごとの分かれ方が暗記ではなく理屈で見えてきます。 支援を行う者は、支給要件を満たせば対象になります。A型には運用上の条件が1つ付きます。サービス提供時間内にOFF-JTを行う場合は、訓練対象者を除く支援員が指定基準上の人員配置を満たしていることが必要です。職員を研修に出すなら、その日の人員配置から先に組むことになります。 事業展開等リスキリング支援コースについては、A型を名指しした記述を確認できていません。人材育成支援コースのQ29に相当するQ&Aが見当たらないため、このコースの扱いは断定できません。 ## JEEDの助成金は、A型の利用者に使えるのか JEEDの助成金は、複数のパンフレットでA型の利用者を支援対象障害者から外しています。 | 助成金(令和8年度) | A型の利用者に関する記述 | | --- | --- | | 職場適応援助者助成金(訪問型・企業在籍型) | 支援対象障害者とすることができない要件に、A型の事業を実施する事業所の利用者を明記 | | 障害者雇用相談援助助成金 | 「対象障害者とならない方」に、A型事業所に雇用される対象障害者を明記 | | 障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金 | A型・B型の事業に本来必要な施設・設備は対象外。当該事業の利用者は支給対象障害者として申請できないと明記 | 作業施設設置等助成金と福祉施設設置等助成金には、例外が1つ書かれています。**利用者と明確に区別できる措置**に限り、施設職員は対象になります。障害のある職員のために、利用者が使う部分と分けられる保健室や休憩室を整備する場合が当たります。 この例外の立て方に、制度の考え方が出ていると思います。A型の事業に本来必要な設備は、福祉の側の財源で見るという線引きです。障害のある職員のための設備なら、雇用の側の制度で見ることになります。どちらの財布から出すのかで分けている、というのが僕の読み方です。 ## A型の利用者は、自社の雇用障害者として数えるのか A型の利用者は、A型事業所の常用雇用労働者数と雇用障害者数の両方に算入されます。 これは要件の組み合わせによる帰結です。A型は施行規則で「雇用契約有」と区分されています。雇用契約に基づく労働者は、障害者雇用促進法の雇用率制度と納付金制度でいう労働者に当たります。この2つを合わせると、A型事業所は自らの利用者を雇用障害者として数えることになります。A型の利用者を算入から外す規定は、今回参照した一次情報には見当たりませんでした。 民間企業の法定雇用率は、令和8年7月から2.7%です。雇用率制度の対象になるのは、常用雇用労働者37.5人以上の事業主です。納付金・調整金・報奨金の額そのものは別の記事で扱います。 ## 助成金の申請は、誰がやることになるのか 事業所が自分で作成して申請することはできますが、雇用保険二事業とJEEDの助成金は、報酬を得て業として代行できるのが社会保険労務士に限られます。 雇用保険二事業の助成金とJEEDの納付金制度に基づく助成金は、報酬を得て申請書の作成・提出代行を業として行えるのが、**社会保険労務士に限られています**(社会保険労務士法第2条第1項・第27条)。事業所が自分で作成して申請すること自体は制限されていません。 うちは就業規則と賃金規程の整備を社労士さんと進めています。労働条件を決める書類と、助成金の要件を満たす書類は、同じ紙の上でつながっています。だから助成金の相談を持ち込む相手は、日ごろ労務を見てもらっている社労士さんが一番早いと思っています。 最後に。ここに書いた制度は、覚えるものではなく引くものだと思っています。A型で利用者を雇うときに見る場所は、毎回同じです。支給要領かパンフレットの対象労働者・対象事業主の要件を開いて、「就労継続支援A型」の記述を探す。名指しが見当たらなければ、労働局やJEEDに電話して確かめる。結局、この2手を採用を決める前にやることが一番大事だと思っています。 ## あわせて読む A型とB型の分かれ目と、制度ごとの額を細かく見る記事を挙げます。 - [就労継続支援A型とB型の違い](/column/b-gata-a-gata-chigai/) … 雇用契約の有無による制度の分かれ方 - [障害者雇用の助成金一覧](/column/shogaisha-koyou-joseikin-ichiran/) … 職員として雇う場面と、利用者を送り出す場面の整理 - [キャリアアップ助成金 障害者正社員化コース](/column/career-up-shogaisha-seishainka/) … 額と手順、A型の利用者が対象外になる根拠 - [就労継続支援B型の「国からの補助金」](/column/b-gata-hojokin/) … B型の収入の仕組みと使える制度 ### よくある質問 Q. A型の利用者を雇うと助成金は出ますか? A. 制度によって分かれます。特定求職者雇用開発助成金は、A型事業所が自らの利用者として雇い入れる場合も対象になりえます。一方でトライアル雇用助成金は、A型の利用者として雇い入れる場合を対象事業主から外しています。名指しの除外があるかどうかを制度ごとに確認する必要があります。 Q. 特開金でA型の利用者を雇うといくらですか? A. 重度障害者等・フルタイム・中小企業で総額240万円です。これは1人あたり40万円を6か月ごとに6回受け取る額で、助成対象期間は3年間です。重度でも45歳以上でもない身体・知的障害者なら30万円を4回で総額120万円、期間は2年間です。精神障害者は年齢を問わず重度障害者等の区分に入ります。 Q. 離職率25%のルールとは何ですか? A. 特開金でA型利用者を雇う場合の不支給条件です。過去に同コースの対象になったA型の利用者のうち、基準期間内に確認日が来る人が5人以上いることが前提になります。その人たちの離職割合が25%を超えていると支給されません。根拠は支給要領0201のホとヘです。 Q. キャリアアップ助成金はA型の利用者に使えますか? A. 正社員化系の2コースは使えません。対象労働者の要件に「就労継続支援A型の事業所における利用者以外の者であること」と書かれています。賃金規定等改定など他の3コースは、パンフレットに同じ除外の文言が見当たりません。ただし支給要領本文までは確認できておらず、対象になると断定はできません。 Q. A型の職員の研修に人材開発支援助成金は使えますか? A. 要件を満たせば対象になりえます。厚生労働省のQ&AのQ29は、A型に雇用される者を利用者と支援を行う者の2種類に分けています。管理者・サービス管理責任者・職業指導員・生活支援員は対象になると答えています。サービス提供時間内にOFF-JTを行うなら、訓練対象者を除く支援員で人員配置を満たすことが条件です。 Q. 助成金の申請は事業所だけでできますか? A. 自分で作成して申請することはできます。ただし雇用保険二事業の助成金とJEEDの納付金制度に基づく助成金は、報酬を得て申請書の作成や提出代行を業として行うことが社会保険労務士の独占業務になっています。外部に頼むなら相手は社会保険労務士です。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)支給要領(R8.4.1版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001684391.pdf(0201ホ・ヘ(A型利用者としての雇入れと離職割合25%)・0204表-2・0301ロ表-3を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)のご案内(事業主向けパンフレット、R8.3.5版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001684468.pdf(1〜2ページでハローワーク等の紹介による雇入れが要件であることを確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース)支給要領(R8.4.8版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001082118.pdf(0201(継続雇用する労働者の定義)・0401イ(A型事業所の除外)・0402・0501(支給額)を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001687992.pdf(P.17の正社員化コース対象労働者要件⑨を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)のご案内(令和8年度版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001685042.pdf(P.9の支給額・P.10の対象労働者要件②・P.19の確認欄を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「人材開発支援助成金事業主様向けQ&A(人材育成支援コース)令和6年11月版」 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001330281.pdf(Q29・A29でA型の利用者と支援を行う者の扱いを確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用納付金関係助成金のごあんない(職場適応援助者助成金、令和8年4月版)」 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/q2k4vk000001wtq5-att/v1tt1c0000002zmx.pdf(p.2・p.27で支援対象障害者からA型事業所の利用者を除く規定を確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用相談援助助成金の手続きについて(令和8年度)」 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/q2k4vk000001wtq5-att/v1tt1c0000002zv5.pdf(p.2「対象障害者とならない方」を確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金のごあんない(その1、令和8年度)」 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/q2k4vk000001wtq5-att/v1tt1c0000002zg6.pdf(p.11・p.51〜52でA型・B型事業所からの申請の除外規定と施設職員の例外を確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用率制度(障害者雇用ハンドブック)」 https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/q2k4vk000003mbma.html(法定雇用率2.7%と対象事業主37.5人以上を確認・2026年8月23日確認) - e-Gov法令検索(デジタル庁)「社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)」(第2条第1項・第27条・別表第一を確認(法令ID 343AC1000000089)・2026年8月23日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.23 初回公開 --- ## B型事業所は 「助成金目当て」なのか 収入の正体と補助金の位置 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/b-gata-joseikin-meate/ カテゴリー: 補助金・助成金 公開: 2026-08-23 / 更新: 2026-09-12 制度基準日: 2026.08.23 ### 結論 就労継続支援B型の収入の中心は補助金ではありません。障害者総合支援法第6条と第28条第2項に基づく訓練等給付費という報酬で、利用実績に応じて市町村から事業所に支払われます。令和8年6月施行分の単位数は、定員20人以下・6:1配置の就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)で1日1人あたり590単位から837単位です。 補助金が使えるのは場面が限られます。開設・改修にあたる社会福祉施設等施設整備費補助金、設備投資に使う中小企業向けの制度、単年度の時限措置の3つが中心です。いずれも公募や協議を経る一過性のお金で、毎月の運営費として継続的に入るものではありません。2026年8月23日時点の制度で整理しています。 - 収入の中心: 障害者総合支援法第6条・第28条第2項に基づく訓練等給付費(報酬)。1日あたりの単位数×地域単価を利用実績で積み上げる - 代表的な単位数: 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)定員20人以下・6:1配置で1日1人あたり590〜837単位。工賃向上計画を作成しない(Ⅳ)は1日1人あたり584単位(令和8年6月施行分) - 開設・改修の補助金: 社会福祉施設等施設整備費補助金。原則として国1/2・都道府県等1/4・設置者1/4。窓口は都道府県(指定都市・中核市を含む)で予算の範囲内の採択。土地の買収・整地に要する費用は対象外 - 時限の補助金: 障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金は令和7年12月からの6か月分の措置。B型の交付率は基準月1か月分の総報酬に対して11.4%で、全額を職員の賃金改善に充てる義務がある - 工賃の位置: 利用者が受け取るのは雇用契約に基づく賃金ではなく工賃。前年度の平均工賃月額が基本報酬の区分を左右する 根拠: 厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定に係る報酬算定構造(令和8年6月施行分)」ほか(各項の出典は本文を参照) ### 本文 「B型って、結局は助成金目当てなんでしょう」と言われる場面は、どの事業所にもあると思います。利用者のご家族から聞かれることもあれば、求職者との面接で出てくることもあります。僕は埼玉県志木市で就労継続支援B型の事業所を運営していて、別の仕事として補助金の申請代行もしています。福祉業界にはよそ者として入ったので、この問いは自分にも向いていると思っています。 先に答えを書きます。B型の収入の柱は補助金ではなく、訓練等給付費という報酬です。補助金が使えるのは開設・改修、設備投資、単年度の時限措置が中心で、毎月の運営費としては入りません。 ## なぜ「助成金目当て」と言われるのか この見方は、事業所に入るお金の名前と流れが外から見えないところから生まれます。背景には2つの事情があります。1つは、B型の収入がどこから来るのかを、外に向けて説明する機会が少ないことです。もう1つは、事業所に関係するお金の名前が複数あって、外からは区別がつきにくいことです。 B型に関係するお金は、大きく3つに分かれます。 - サービス提供の対価として事業所に支払われる報酬(訓練等給付費) - 開設・改修や設備投資に使う補助金 - 利用者が受け取る工賃 正直、この3つを混ぜたまま答えると、話すほど疑われると思っています。受けた補助金があるのに「補助金はもらっていません」と言えば嘘になります。「補助金で運営しています」と言えば実態と違います。名前と出どころを分けて並べるところからしか始まらない、というのが僕の読み方です。 この記事では、3つを分けて、それぞれの重みを見ていきます。事業所を批判するためでも、擁護するためでもありません。**確認できる仕組みだけ**を並べます。 ## 収入はどこから入っているのか B型の収入の柱は、利用実績に応じて市町村から支払われる訓練等給付費という報酬です。 障害者総合支援法第6条は、自立支援給付の構成を定めています。介護給付費・特例介護給付費・訓練等給付費などの支給が、その中身です。同法第28条第2項は、就労継続支援を含む7つのサービスに訓練等給付費を支給すると定めています。条文が並べる給付の中に、**補助金という名前の給付**はありません。 支払われる額は、1日あたりの単位数に地域ごとの単価を掛けて決まります。令和8年6月施行分の単位数は次のとおりです。 | 区分(令和8年6月施行分) | 定員20人以下・6:1配置の単位数(1日1人あたり) | | --- | --- | | 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)最高区分(平均工賃月額4.5万円以上) | 837単位 | | 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)最低区分(平均工賃月額1万円未満) | 590単位 | | 就労継続支援B型サービス費(Ⅳ)(工賃向上計画を作成しない場合) | 584単位 | 1単位の価額は約10円です。ここに地域区分による0%から20%の割増が乗ります。この額が、利用者の通所した日ごとに積み上がっていきます。 経営する側の感覚で言うと、この設計は補助金よりも売上に近いです。利用者が通わなければ、基本報酬は入りません。**利用実績に応じて積み上がる**お金なので、関心は採択の可否ではなく通所の実態のほうに向きます。補助金を待つときの感覚とは、まったく別物です。 ## 報酬と補助金は、何がどう違うのか 訓練等給付費は提供したサービスの対価であり、申請して採択を待つ補助金とは仕組みが違います。 違いは3つあります。 | | 訓練等給付費(報酬) | 補助金 | | --- | --- | --- | | 受け取る条件 | 算定要件を満たしてサービスを提供すること | 募集された枠に申請し、採択されること | | 額の決まり方 | 単位数×地域単価×利用実績 | 対象経費×補助率(上限額の範囲内) | | 続き方 | サービスを提供している限り続く | 対象の事業が終われば終わり | 報酬は、要件を満たしてサービスを提供すれば、利用実績に応じて支払われます。補助金は、募集された枠に申請し、審査を経て**採択されなければ**受け取れません。社会福祉施設等施設整備費補助金は都道府県(指定都市・中核市を含む)が窓口です。予算の範囲内で自治体が整備計画を取りまとめるため、申請しても採択されないことがあります。 処遇改善についても、同じ整理になります。厚生労働省のページの見出しは「福祉・介護職員の処遇改善に係る加算の概要」です。掲載されている資料名も、一貫して「加算」という語を使っています。事業所が区分を届け出れば、サービスの対価である報酬に上乗せされます。別枠で交付される補助金ではありません。 言葉の細かい話に見えますが、経営の判断としては大きい違いです。うちは福祉・介護職員等処遇改善加算を算定していて、2026年度の配分は僕が自分で設計しました。原資は報酬に連動して入るので、利用実績が落ちれば配れる額も落ちます。補助金のつもりで全部を毎月の固定手当にすると、下げるときに苦労します。だから月々の手当と年2回の賞与に分けて、加算の実績を見ながら賞与のほうで精算する形にしました。 ## 補助金は、運営のどこに効くのか 補助金が使えるのは開設・改修や設備投資と時限の支援に限られ、毎月の運営費には入りません。 B型が実際に使える補助金は、大きく3つの場面に分かれます。 | 場面 | 代表的な制度 | 出方(2026年8月23日時点) | | --- | --- | --- | | 開設・改修 | 社会福祉施設等施設整備費補助金 | 原則として国1/2・都道府県等1/4・設置者1/4。窓口は都道府県(指定都市・中核市を含む)で、予算の範囲内の採択 | | 設備投資 | 業務改善助成金などの中小企業向け制度 | 障害福祉専用の制度ではない。申請の受付期間・締切は制度ごとに決まっている | | 時限の支援 | 障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金、都道府県の物価高騰支援金 | 単年度の措置。額と期間は制度・自治体ごとに違う | 僕は補助金の申請代行を仕事にしていて、デジタル化・AI導入、省力化投資、創意工夫チャレンジ、ものづくり、新事業進出で採択の実績があります。その経験から言うと、補助金は事業を1回前に進めるための資金です。場所を作る、設備を入れる、そこで終わります。なお、表に挙げた業務改善助成金のような厚生労働省の助成金は、社労士の独占業務なので僕は代行していません。 施設整備費補助金の対象は、創設・増築・改築・大規模修繕等の4区分です。建物や設備の整備にかかる補助であり、**土地の買収や整地に要する費用は対象外**です。厚生労働省は毎年度、都道府県・指定都市・中核市に配分額を内示します。令和8年度分の内示は令和8年7月2日に公表されました。個々の事業所が国に直接申請する制度ではありません。 規模の感覚も、公表資料から取れます。令和7年度の国土強靱化対策分の内示を見ます。就労継続支援B型として、宮城県に1件・55,824千円が計上されました。1件あたりでは大きな額です。ただし施設の整備に充てるお金で、設置者には1/4の自己負担が残ります。毎年の運営費として入ってくるものではありません。 時限の支援には、報酬との比率が分かるものがあります。令和7年度補正予算による障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金です。B型の交付率は11.4%です。基準月(原則令和7年12月)1か月分の総報酬にこの率を掛けて、6か月分の補助額を算出します。受け取った額は、**全額を職員の賃金改善に充てる義務**があります。令和7年12月から令和8年5月までの6か月分の措置で、令和9年度以降に同種の措置が続くかどうかは実施要綱に書かれていません。 続くと書かれていないお金を当てにして、基本給の水準を恒久的に上げるのは怖いです。単年度の措置は単年度で使い切る前提で見る、というのが僕の読み方です。 物価高騰の支援金は、都道府県ごとに設計が違います。大分県の令和8年度の補助金では、障害福祉の通所が1施設あたり82,000円の定額でした。申請期間は令和8年5月20日から7月17日までで、2026年8月23日時点では受付が終了しています。額も期間も自治体ごとに違うので、他県の数字をそのまま当てはめることはできません。 ## 工賃は誰のお金から出ているのか 工賃は利用者が受け取るお金で、事業所に入る訓練等給付費とは別の流れになります。 B型は、利用者と雇用契約を結ばない通所のサービスです。厚生労働省の資料は、B型のサービス内容を「通所により、就労や生産活動の機会を提供(雇用契約は結ばない)」と説明しています。雇用契約がないため、利用者が受け取るのは**賃金ではなく工賃**です。 工賃と報酬が無関係かというと、そうではありません。基本報酬の区分は、前年度の平均工賃月額によって変わります。定員20人以下・6:1配置の就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)で見ます。平均工賃月額4.5万円以上の区分が1日1人あたり837単位、1万円未満の区分が1日1人あたり590単位です。1人1日あたり247単位の差になります。工賃が下がれば区分が下がり、報酬も下がります。**平均工賃月額で区分が動く**設計が、報酬の側に組み込まれています。 この作りは、正直よくできていると思います。工賃を上げれば事業所の報酬も上がるので、事業所の利益と利用者の手取りが同じ方向を向きます。工賃を削って事業所が儲けるという絵は、少なくとも報酬の仕組みの上では成り立ちにくくなっています。 賃上げの補助金についても、対象は職員です。障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金の対象者は、実施要綱に定めがあります。「対象となる事業所に勤務する福祉・介護職員以外も含む障害福祉従事者」という書き方です。職員向けの制度であり、利用者本人への賃上げを行う制度ではありません。 利用者やご家族から「助成金目当てではないか」と聞かれたときは、お金を3つに分けて話す順番になると思っています。 最初に、事業所に入るお金です。訓練等給付費は通所の実績で積み上がるので、利用日数と単位数の関係から説明することになります。 次に、補助金です。直近で受けたものがあるなら、制度の名称と使途を答えられるようにしておきます。使途は制度の側で決まっていることが多いので、名称が分かれば説明は短く済みます。 最後に、工賃です。前年度の平均工賃月額が基本報酬の区分に効くことまで話すと、工賃と事業所の収入が同じ方向を向いていることが伝わります。 この順番を先に決めておくと、聞かれてから資料を探す場面が減ります。 ## 外から確かめるには、どの数字を見ればいいか 外から確かめられるのは、前年度の平均工賃月額と基本報酬の区分、受けている補助金の名称と使途です。 「助成金目当てかどうか」は、気持ちの問題として問われます。確かめられるのは、数字と制度名のほうです。次の3つを見ると、お金の流れは大まかにたどれます。 - 前年度の平均工賃月額。基本報酬の区分を左右する数字で、工賃向上計画を作成しているかどうかも区分に効く - 基本報酬の区分。定員20人以下・6:1配置なら、(Ⅰ)か(Ⅳ)かで1日1人あたり584単位から837単位まで動く - 受けている補助金の**名称と使途**。施設整備費補助金なら建物や設備、賃上げの緊急支援なら職員の賃金改善というように、使途が制度の側で決まっている ここまでに見た補助金は、名称が分かれば使途も分かります。使途が制度の側で決められているため、自由に使える資金として積み上がる性質のものではありません。一方、報酬は毎日の利用実績で積み上がります。事業所の収入は、通所の実態と工賃の実績に連動します。 だから僕は、これは経営者の姿勢の話でもあると思っています。自分の事業所の区分と平均工賃月額を即答できないまま「目当てではありません」と言っても、たぶん伝わりません。この2つを開いて見せるほうが、疑念には答えやすくなります。 最後にもう一つ。この問いに気持ちで答えると、水掛け論になります。答えになるのは、お金の名前と出どころを分けて、数字で見せることだけだと思います。報酬は通所の実績で積み上がり、補助金は使途の決まった一過性のお金で、工賃は報酬の区分に跳ね返ります。結局、この3つを混ぜずに説明できることが一番大事だと思っています。 ## あわせて読む 収入の全体像から確かめたい場合は、次の2本が入口です。 - [就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する](/column/b-gata-shushi-kouzou/) … 収入と費用の全体像 - [就労継続支援B型は儲かるのか](/column/b-gata-moukaru/) … 収支の実態から見た採算の考え方 報酬・補助金・工賃は、それぞれ別の記事にまとめています。 - [就労継続支援B型の報酬単価はどう決まるか](/column/b-gata-houshu-tanka/) … 全区分の単位数と地域区分ごとの単価 - [就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか](/column/b-gata-hojokin/) … 開設・設備投資・雇用で使える制度の一覧 - [工賃の決め方](/column/kouchin-kimekata/) … 平均工賃月額の出し方と工賃向上計画 ### よくある質問 Q. B型は助成金目当てで運営できますか? A. 助成金だけで運営を続けることはできません。収入の中心は、利用実績に応じて支払われる訓練等給付費という報酬です。補助金が使えるのは開設・改修や設備投資、単年度の時限措置など場面が限られます。いずれも公募や協議を経る一過性のお金で、毎月の運営費として入る仕組みではありません。 Q. B型に国からの補助金は入っていますか? A. 収入の柱は補助金ではなく訓練等給付費です。障害者総合支援法第6条は自立支援給付の構成を定め、第28条第2項は就労継続支援を含むサービスに訓練等給付費を支給すると定めています。補助金という名前の給付は、この条文が並べる給付の中にありません。 Q. 訓練等給付費と補助金は何が違いますか? A. 報酬は対価、補助金は予算の範囲内での採択です。訓練等給付費は、算定要件を満たしてサービスを提供すれば利用実績に応じて支払われます。社会福祉施設等施設整備費補助金は都道府県(指定都市・中核市を含む)が窓口で、予算の範囲内で整備計画が取りまとめられます。申請しても採択されないことがあります。 Q. 利用者が増えるほど補助金が増えるのですか? A. 増えるのは補助金ではなく報酬のほうです。訓練等給付費は1日あたりの単位数に地域単価を掛け、通所の実績で積み上がります。定員20人以下・6:1配置の就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)は1日1人あたり590単位から837単位で、前年度の平均工賃月額の区分によって変わります。 Q. 工賃は補助金から支払われているのですか? A. いいえ、工賃は補助金として交付されるお金ではありません。B型は利用者と雇用契約を結ばないため、支払われるのは賃金ではなく工賃です。前年度の平均工賃月額は基本報酬の区分を左右するので、工賃が下がると報酬の区分も下がることがあります。 Q. 賃上げの補助金は利用者にも回りますか? A. 令和7年度補正の賃上げ補助金は職員向けの制度です。障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金の対象者は、実施要綱で「対象となる事業所に勤務する福祉・介護職員以外も含む障害福祉従事者」とされています。利用者本人への賃上げを行う制度ではありません。 ### 根拠資料 - e-Gov法令検索(デジタル庁)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123(第6条(自立支援給付)・第28条第2項を確認・2026年8月20日確認) - 厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定に係る報酬算定構造(令和8年6月施行分)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001663319.pdf(p.26〜28 就労継続支援B型サービス費の単位数を確認・2026年8月20日確認) - 厚生労働省(社会・援護局障害保健福祉部)「就労継続支援A型、B型に係る報酬について≪論点等≫(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第9回 資料3)」 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000177374.pdf(p.21 B型のサービス内容(雇用契約は結ばない)を確認・2026年8月20日確認) - 厚生労働省(社会・援護局)「社会福祉施設の整備・運営(社会福祉施設整備補助金のページ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/shakai-fukushi-shisetsu1/index.html(対象施設と補助率(国1/2・都道府県等1/4・設置者1/4)を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部「障害保健福祉関係主管課長会議資料(令和7年3月)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001468383.pdf(56〜57ページ 整備区分・土地取得費の取扱い・国庫補助の手続きを確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「令和8年度社会福祉施設等施設整備費補助金の内示について(令和8年度当初予算等)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74201.html(内示の公表日(令和8年7月2日)を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「令和7年度社会福祉施設等施設整備費補助金の内示について(防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策分)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12203000/001511030.pdf(就労継続支援B型として宮城県1件・55,824千円の内示を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長「障発1226第7号(令和7年12月26日)別紙「障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業実施要綱」」 https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/jigyo/syogukaizen/3fukushi-sien.pdf(対象者定義・別紙1表1の交付率・賃金改善への充当義務を確認(介護労働安定センターのサイトに掲載されたPDF)・2026年8月23日確認) - 大分県 高齢者福祉課「《受付終了》物価高騰対策緊急支援(福祉・医療・私学等)」 https://www.pref.oita.jp/soshiki/12300/bukka-koto-r8.html(通所1施設あたり82,000円の単価と申請期間を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省(社会・援護局障害保健福祉部)「福祉・介護職員の処遇改善に係る加算の概要」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/minaoshi/index_00007.html(ページ見出し・掲載資料名が一貫して「加算」であることを確認・2026年8月20日確認) - 厚生労働省(都道府県労働局 雇用環境・均等部室)「業務改善助成金 令和8年度のご案内」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html(中小企業・小規模事業者向けの設備投資支援であることを確認・2026年8月17日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.23 初回公開 --- ## 障害福祉事業所の物価高騰支援金は なぜ都道府県ごとに額も締切も違うのか 自分の自治体の公募を探す手順 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/bukka-koutou-shienkin-shogai-fukushi/ カテゴリー: 補助金・助成金 公開: 2026-08-23 / 更新: 2026-09-12 制度基準日: 2026.08.23 ### 結論 障害福祉事業所向けの物価高騰支援金に、全国共通の額も締切もありません。財源は内閣府の「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」です。国が都道府県・市区町村に交付金を配分し、事業の中身は各自治体が設計します。そのため対象施設・単価・申請期間はすべて自治体ごとに違います。 単価の建て方も自治体で分かれます。大分県の令和8年度の補助金では、障害福祉施設の入所が定員1人あたり18,000円、通所が1施設あたり82,000円でした。通所は定員に関係のない施設単位の定額です。受付期間は短く、2026年8月23日時点では、確認した大分県・山口県・東京都のいずれも令和8年度分の受付を終えています。事業所側の作業は、公募が出てから探すのではなく、自分の自治体のお知らせを定期的に見に行くことになります。 - 財源と決定権: 内閣府「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」。交付先は地方公共団体で、対象施設・単価・申請期間は都道府県または市区町村が設計する - 単価の例(大分県・令和8年度): 障害福祉施設は入所=定員1人あたり18,000円、通所=1施設あたり82,000円、訪問等=1施設あたり25,000円。定員の基準日は令和8年3月1日 - 受付期間の例(令和8年度): 大分県は令和8年5月20日〜7月17日、山口県は令和8年4月8日〜6月30日必着、東京都は令和8年7月1日〜7月24日。いずれも2026年8月23日時点で受付終了 - 補助の単位: 施設・事業所ごとの定額。職員個人や利用者個人への給付ではなく、賃金改善への充当義務も一次情報には置かれていない - 申請の単位: 同一法人が複数の施設を運営していても、施設・事業所ごとに申請が必要な例がある(大分県・令和8年度) 根拠: 内閣府地方創生推進事務局「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」・大分県「社会福祉施設等物価高騰対策緊急支援補助金」 ### 本文 電気代の請求書を見て、去年との差に驚いた経営者は多いと思います。国の交付金を財源にした物価高騰支援金がある、という話をどこかで聞く。それで調べ始めるのですが、いくら出るのかがどうしても分かりません。制度名も自治体ごとにばらばらです。ここで手が止まります。 僕は埼玉県志木市で就労継続支援B型を運営しています。会社のほうでは補助金の申請代行もしているので、公募の出方は普段から追いかけています。先に答えを書きます。額も締切も、全国共通のものはありません。決めているのは自分の都道府県か市区町村なので、事業所側の作業は「待つ」ではなく「見に行く」になります。 ## なぜ全国共通の額が無いのか 物価高騰支援金は国の交付金を財源にしていますが、事業を設計するのは都道府県や市区町村です。 財源の正式名称は「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」です。通称は重点支援地方交付金といいます。所管は内閣府地方創生推進事務局です。この交付金の交付対象は、事業所ではなく地方公共団体です。国が都道府県・市区町村に交付金を配分し、**事業を設計するのは自治体**という順番になっています。 ここが分かると、探し方が変わります。「障害福祉事業所の物価高騰支援金はいくらか」という問いに、全国共通の答えはありません。事業所が向き合う相手は国ではなく、自分の都道府県または市区町村です。他県の記事で見た額を自分の県に当てはめる読み方は、危ないと思っています。 厚生労働省の令和7年度補正予算の資料も、この整理を裏づけています。障害福祉等分野の食材料費・光熱水費高騰への支援は、厚生労働省の独立した予算枠ではありません。重点支援地方交付金の内数として整理されています。同じ資料は就労系サービスについて別の記述も置いています。障害福祉施設向けの支援に加えて、中小企業向けのエネルギー価格高騰対策支援の活用も促進するとされています。 就労系は福祉の窓口と産業の窓口の両方を見ることになる、というのが僕の読み方です。障害福祉のページだけを見て終わりにすると、片方を取りこぼします。 制度設計の粒度も自治体で違います。令和8年度の3例を並べます。 | 自治体 | 令和8年度の事業名 | 設計の粒度 | | --- | --- | --- | | 東京都 | 障害者施設等物価高騰緊急対策事業 | 障害福祉分野だけで1つの事業 | | 大分県 | 社会福祉施設等物価高騰対策緊急支援補助金 | 福祉・医療・私学等を横断して1つの補助金 | | 山口県 | 障害者支援施設等食材料費高騰対策支援事業/光熱費高騰対策支援事業 | 食材料費と光熱費で別々の事業 | 事業名がそもそも揃っていません。「物価高騰支援金」という言葉で探しても、自分の自治体のページに行き着かないことがあります。制度名で探すのをあきらめるところから始めたほうが早い、というのが僕の読み方です。 ## 額はどう決まるのか 額は定員1人あたりの定額と1施設あたりの定額の2通りがあり、どちらを使うかは自治体が決めます。 **定員あたりか施設あたりか**で、同じ制度でも受け取る額の性格が変わります。定員あたりなら、定員の大きい施設ほど額が増えます。施設あたりなら、定員に関係なく1施設に決まった額が出ます。 大分県の令和8年度の補助金は、この2つを施設の類型で使い分けています。入所系は定員あたり、通所系と訪問系は施設あたりです。就労継続支援B型のような通所のサービスが対象に入る場合、定員が20人でも10人でも同じ額になる建て方です。 通所が施設あたりの定額なのは、小規模な事業所には効く設計だと思います。1人あたりで割り戻せば、定員の小さい事業所ほど厚くなるからです。ただ、光熱費は利用者の数でも動きます。定員の大きい事業所から見れば、物足りない建て方に映るはずです。 かかった経費の何割という補助率の計算はしません。**区分ごとの定額**です。実際に電気代がいくら上がったかを積み上げて請求する制度ではありません。高騰分を積算して請求する作業が要らないぶん、申請の手間は軽いほうだと思っています。 定員を数える基準日も決まっています。大分県は令和8年3月1日を基準日として、その時点で指定等を受けている定員数で計算します。 ## 実際にいくら出るのか 一次情報で単価まで確認できたのは大分県の令和8年度の補助金で、通所は1施設あたり82,000円です。 大分県の「社会福祉施設等物価高騰対策緊急支援補助金」は、令和8年度に申請を受け付けた事業です。対象は令和7年度の電気代・食材費等の高騰影響額です。障害福祉施設向けの単価は3区分に分かれています。 | 区分(大分県・令和8年度) | 単価 | 額の単位 | | --- | --- | --- | | 入所 | 18,000円 | 定員1人あたり | | 通所 | 82,000円 | 1施設あたり | | 訪問(看護ステーションを含む)・その他 | 25,000円 | 1施設あたり | 正直、通所の82,000円で電気代の高騰分がまかなえるとは思いません。それでも、申請しない理由にはならないと考えています。定額なので、額の大小で作業量が変わらないからです。 同じ補助金の中でも、分野が変われば単位そのものが変わります。保育所等は定員1人あたり4,000円です。病院・診療所(4床以上)は許可病床1床あたり20,000円です。福祉・医療・私学を1本の補助金にまとめている自治体では、自分の施設がどの区分に入るかを先に確かめる必要があります。 大分県では、高齢者施設と障害福祉施設を一体で運営する共生型の施設に重複申請の制限があります。どちらか一方の施設からしか申請できません。 山口県と東京都の令和8年度の単価は、この記事では扱いません。県・都の公式ページに、金額そのものが掲載されていないためです。単価は外部に委託した事務局のサイトや、ページ内で動的に表示される表で案内されています。一次情報で確認できた額だけを載せる方針をとっています。ここは確認していない、と書いておくほうが誠実だと思っています。 ## いつなら申請できるのか 受付期間は3週間から3か月弱で、2026年8月23日時点では確認した3都県とも令和8年度分が終わっています。 物価高騰支援金は、報酬のように毎月自動で入ってくるものではありません。自治体が公募を出し、事業所が期間内に申請する仕組みです。期間を過ぎれば、対象施設であっても受け取れません。 | 自治体 | 令和8年度の受付期間 | 補助の対象になる期間 | | --- | --- | --- | | 山口県 | 令和8年4月8日〜令和8年6月30日(必着) | 公式ページに記載なし | | 大分県 | 令和8年5月20日〜令和8年7月17日 | 令和7年度の高騰影響額 | | 東京都 | 令和8年7月1日〜令和8年7月24日 | 令和8年1月1日〜令和8年6月30日 | 3つとも令和8年度の事業です。それでも受付の時期は揃っておらず、**対象になる期間の切り方**も違います。大分県は前年度分をあとから申請する設計です。東京都は当年度の上半期分を、その年の7月に申請する設計です。他県の時期を自分の県に当てはめる読み方は効きません。 2026年8月23日時点で、大分県のページは「受付終了」、東京都のページは「事前申請の受付は終了しました」と表示されています。山口県も令和8年6月30日必着で締め切られています。東京都の受付期間は3週間強しかありませんでした。 この3週間強という幅が、僕はこの制度の一番やっかいなところだと思っています。月に1回ページを見る運用では、開いてから閉じるまでを丸ごと見落とすことがあります。締切の短い制度ほど、気づいた時点で打てる手が減ります。 申請の手続も自治体ごとに違います。大分県は電子申請システムでの申請が基本です。大分県では同一法人が複数の施設を運営していても、**施設・事業所ごとに申請**します。受取口座が確認できる通帳等の写しの添付も求められます。東京都は電子申請フォームを使い、申請方法や交付要綱は別のページで案内されています。 大分県のように法人単位でまとめて出せない設計だと、事業所を複数持つ法人には重い話です。短い受付期間に、施設の数だけ同じ作業が乗ることになります。 ## 自分の事業所は対象に入るのか この補助金は施設・事業所を単位とするため、利用者や職員が個人として受け取る制度ではありません。 雇用関係の助成金と違い、この制度は誰を雇っているかを見ません。見るのは、その施設が**対象施設の一覧に載っているか**です。立場ごとに整理すると次のようになります。 | 立場 | 補助金の直接の受け手になるか | | --- | --- | | B型の利用者 | ならない。事業所への定額補助であり、利用者個人への給付ではない | | A型の利用者 | ならない。雇用契約があっても、利用者個人への給付ではない | | 事業所の職員 | ならない。賃金改善への充当義務がある賃上げの補助金とは性格が違う | 一次情報に、利用者や職員を名指しで除外した規定があるわけではありません。補助の単位が施設・事業所であることと、単価が定員数や施設数で決まることを合わせると、個人は直接の受け手にならないという結論になります。 職員の賃上げを目的とした制度は別にあります。障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業は令和7年度補正予算による時限の補助金で、交付された額を全額賃金改善に充てる義務があります。物価高騰支援金は電気代・食材費等の高騰分に充てるもので、目的が違います。この2つを混ぜると、使い道の説明で困ることになると思います。 確かめるのは施設の側の条件です。大分県の令和8年度の例では、対象外になる施設が4つ挙げられています。 - 国・地方公共団体が実施主体となる施設 - 申請時に休止・廃止している施設 - 令和8年3月2日以降に新規開設した施設 - 利用者負担が生じる施設で、令和7年度中に電気・ガス・食材費の高騰を理由に利用者負担額を引き上げた施設 4つ目には例外が置かれています。引き上げ分を利用者に返金し、価格転嫁を解消した場合は補助対象として扱われます。 うちは2026年5月に開所した事業所です。大分県の例に当てはめれば、3つ目の「令和8年3月2日以降に新規開設した施設」に当たります。開所の時期が数か月ずれるだけでその年度の対象から外れる、という設計はありうるわけです。新設の事業所ほど、対象外の条件を先に読んでおいたほうがいいと思っています。 法人格による除外は、確認した範囲の一次情報にはありません。社会福祉法人でもNPO法人でも株式会社でも、施設種別の一覧に入っていれば対象になりえます。 就労継続支援B型が対象に入るかどうかは、自治体ごとに確かめる作業が残ります。大分県の対象施設は「障害福祉サービス施設・事業所等、地域生活支援事業所等」という包括的な書き方です。サービス種別を個別に列挙していません。B型を名指しで除外した記述も、名指しで含めた記述もない状態です。東京都は対象施設の一覧をページ内の表で案内しています。自分の自治体の一覧を開いて、サービス種別の欄を直接見るのが確実です。 ## 自分の自治体の公募はどう探すか 探す入口は都道府県の公式サイトで、「物価高騰」という語で担当課のページに当たりを付けます。 制度名で検索しても行き着きにくいのがこの制度です。東京都は「障害者施設等物価高騰緊急対策事業」、大分県は「社会福祉施設等物価高騰対策緊急支援補助金」です。山口県は「食材料費高騰対策支援事業」と「光熱費高騰対策支援事業」に分かれています。共通しているのは「高騰」という語だけです。 探す順番は次のようになります。 - 自分の都道府県の公式サイトで「物価高騰」「高騰対策」を検索する - 障害福祉の担当課だけでなく、高齢者福祉や社会福祉の担当課のページも見る - 市区町村が独自に事業を立てている場合があるため、市区町村の公式サイトでも同じ語で検索する 担当課が分野をまたぐのは、交付金の使い道を自治体が決めているからです。大分県の窓口は高齢者福祉課で、障害福祉施設もその補助金に含まれています。障害福祉のページだけを見ていると気づけません。 外部の事務局に委託されている場合もあります。山口県と大分県は、いずれも受付・審査を外部の事務局に委託しています。山口県では県のページに概要だけがあり、単価や申請の詳細は事務局のサイト側に置かれています。**県のページで終わりにしない**ことです。 泥臭い探し方だとは思います。ただ、制度名が揃っていない以上、これより速い近道を僕は知りません。分からなければ担当課に電話で聞くのが早いです。 受付期間が短いので、公募が出てから探し始めると間に合いません。都道府県のお知らせを見る担当と頻度を、先に事業所の中で決めておくことになります。 頻度は受付期間の長さから逆算します。確認した3都県の令和8年度の受付期間は3週間から3か月弱でした。月1回の確認では、3週間で閉じる公募を取りこぼす可能性があります。 担当は、報酬請求や加算の届出で自治体のページを普段から開いている職員に寄せると重複が減ります。管理者かサービス管理責任者が見ているお知らせ一覧に、物価高騰の項目を足す形です。 見に行く先は3つになります。都道府県の障害福祉担当課、福祉全体の担当課、市区町村の福祉担当課です。委託の事務局サイトがある自治体では、そこを1つ加えます。 確認した日付だけでも残しておくと、翌年度に前回いつ公募が出たかをたどれます。 ## 来年度も同じ額が出るのか この支援金は毎年度の予算措置に依存していて、次の年度も同じ形で続く保証はありません。 重点支援地方交付金は、補正予算や予備費で繰り返し積み増されてきました。措置の額は年度ごとに大きく違います。 | 措置 | 額 | | --- | --- | | 令和5年度補正予算 | 1兆5,592億円 | | 予備費(令和5年12月) | 1兆1,311億円 | | 令和6年度補正予算 | 1兆7,351億円 | | 予備費(令和7年5月) | 1,000億円 | | 令和7年度補正予算 | 2兆377億円 | | 令和8年度補正予算 | 1,000億円 | 令和8年度補正予算の1,000億円は、令和7年度補正予算の2兆377億円と桁が違います。国の交付金の規模が変われば、自治体が組める事業の規模も変わります。**前年度と同じ単価が出る前提**は置けません。 令和8年度については、自治体向けの事務連絡が2本出ています。1本目は令和8年4月1日付「令和8年度における重点支援地方交付金の取扱い等について」です。2本目は令和8年6月5日付「令和8年度補正予算の成立を踏まえた『重点支援地方交付金』の取扱い等について」です。 令和9年度分の公募時期は、確認した各自治体の一次情報には書かれていません。大分県と山口県は令和8年度の受付を年度前半に置いていました。東京都は上半期分をその年の7月に置いていました。この並びを参考にする程度にとどまります。 年度で消える制度なので、収支計画の固定収入には数えられません。入ったら電気代の一部が戻る臨時収入として扱うのが実際に合います。当てにして支出を先に決めるのは、経営判断としては危ないと思っています。 最後にひとつ。この支援金は、気づいた事業所だけが受け取れる補助金です。額の大小より、公募に気づけるかどうかで結果が決まります。順番は3つです。まず自分の県と市区町村の担当課のページを開く。次に誰がどの頻度で見るかを決める。それから当年度の一覧で自分の施設種別を確かめる。結局、この順番が一番大事だと思っています。 ## あわせて読む 制度全体の中でこの支援金がどこに位置するかは、別の記事にまとめています。 - [就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか](/column/b-gata-hojokin/) … B型が使える制度全体の位置づけ - [障害福祉の「賃上げ補助金」は処遇改善加算とどう違うか](/column/chinage-hojokin-shogu-kaizen-chigai/) … 時限の補助金と報酬の加算の違い - [障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業](/column/kaigo-technology-dounyu-shien-shogai/) … 都道府県で変わるのが締切だけではない例 臨時収入をどう扱うかは、収支の記事のほうが詳しいです。 - [就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する](/column/b-gata-shushi-kouzou/) … 臨時収入を除いた本体の収支の見方 ### よくある質問 Q. 物価高騰支援金は全国どこでも同じ額ですか? A. いいえ、額は都道府県・市区町村ごとに違います。財源は国の交付金ですが、対象施設・単価・申請期間は各自治体が設計する仕組みです。大分県の令和8年度の例では、障害福祉施設の通所は1施設あたり82,000円でした。他の自治体で同じ額になる保証はありません。 Q. 定員が多いほど額は増えますか? A. 入所系は増えますが、通所系は増えない例があります。大分県の令和8年度の例では、入所は定員1人あたり18,000円で定員に比例します。一方の通所は1施設あたり82,000円の定額で、定員は額に影響しません。定員あたりか施設あたりかは自治体の設計次第です。 Q. 就労継続支援B型も対象になりますか? A. 自治体ごとに確かめる必要があります。大分県の令和8年度の対象施設は「障害福祉サービス施設・事業所等」という包括的な書き方で、サービス種別を個別に列挙していません。就労継続支援B型を名指しで除外した記述も、名指しで含めた記述もありません。申請前に自分の自治体の対象施設一覧を直接見てください。 Q. 令和8年度分はまだ申請できますか? A. 2026年8月23日時点で、確認した3都県はすべて終了しています。大分県は令和8年7月17日、山口県は令和8年6月30日必着、東京都は令和8年7月24日で締め切られました。受付期間は3週間から3か月弱で、気づいたときには終わっている幅です。 Q. 職員の賃上げに使う補助金ですか? A. いいえ、電気代や食材費などの高騰分に充てる補助金です。職員の賃上げを目的とした障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業は別の制度で、そちらは交付額を全額賃金改善に充てる義務があります。物価高騰支援金は施設・事業所ごとの定額補助で、目的が違います。 Q. 申請に社会保険労務士の資格は要りますか? A. いいえ、資格による代行の制限はありません。都道府県の要綱に基づく補助金なので、雇用保険二事業の助成金のような士業の独占がありません。ただし様式や添付書類は自治体ごとに違うため、必ず申請先の自治体の様式を使います。 ### 根拠資料 - 内閣府地方創生推進事務局「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」 https://www.chisou.go.jp/tiiki/rinjikoufukin/juutenshien.html(正式名称・交付対象・予算規模の内訳を確認・2026年8月23日確認) - 内閣府地方創生推進事務局「地方公共団体向け文書及び資料(物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金関連)」 https://www.chisou.go.jp/tiiki/rinjikoufukin/juutenshien/jimurenraku.html(令和8年4月1日付・令和8年6月5日付の事務連絡のタイトルを確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省障害保健福祉部「障害保健福祉に関する令和7年度補正予算案の概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001604241.pdf(p.1(3)「障害福祉等分野における食材料費・光熱水費高騰等への支援」が重点支援地方交付金の内数であることを確認・2026年8月23日確認) - 大分県 高齢者福祉課「《受付終了》物価高騰対策緊急支援(福祉・医療・私学等)(社会福祉施設等物価高騰対策緊急支援補助金)」 https://www.pref.oita.jp/soshiki/12300/bukka-koto-r8.html(「2.対象施設・対象地域」「3.補助額」「4.申請」で単価・対象外施設・申請期間を確認・2026年8月23日確認) - 山口県 障害者支援課「令和8年度山口県障害者支援施設等食材料費高騰対策支援事業及び光熱費高騰対策支援事業について」 https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/soshiki/50/182117.html(申請受付期間と財源(重点支援地方交付金の活用)を確認・2026年8月23日確認) - 東京都福祉局「令和8年度障害者施設等物価高騰緊急対策事業」 https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/shougai/jigyo/r8bukkakoto1(補助対象期間と申請受付期間を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長「障発1226第7号「障害福祉分野の職員の賃上げ支援事業の実施について」別紙「障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業実施要綱」」 https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/jigyo/syogukaizen/3fukushi-sien.pdf(賃金改善への全額充当義務(7(1))を確認・2026年8月23日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.23 初回公開 --- ## キャリアアップ助成金 障害者正社員化コースの額と手順 A型の利用者は対象外 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/career-up-shogaisha-seishainka/ カテゴリー: 補助金・助成金 公開: 2026-08-23 / 更新: 2026-09-12 制度基準日: 2026.08.23 ### 結論 キャリアアップ助成金の障害者正社員化コースは、障害のある有期雇用労働者等を正規雇用等へ転換した事業主に支給されます。令和8年4月1日時点の中小企業の額は、重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者を有期雇用から正規雇用へ転換した場合で1人あたり120万円です。これは支給総額で、第1期の6か月分60万円と第2期の6か月分60万円に分けて支給されます。重度以外の身体障害者・重度以外の知的障害者・発達障害者・難病患者・高次脳機能障害者は90万円(45万円×2期)です。 対象労働者の要件には「就労継続支援A型事業における利用者でないこと」が明記されています。A型の利用者を正社員化しても、このコースは使えません。B型の利用者は事業所と労働契約を結ばないため、助成金が定義する有期雇用労働者等にそもそも当たりません。使えるのは、障害のある職員を有期雇用から正規雇用へ転換する場面です。キャリアアップ計画は、転換の実施日の前日までに管轄の労働局長へ提出しておく必要があります。 - 支給総額(中小企業・1人あたり): 重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者を有期雇用から正規雇用へ転換で120万円。重度以外の身体障害者・重度以外の知的障害者・発達障害者・難病患者・高次脳機能障害者で90万円(令和8年4月1日時点) - 1期あたりの額: 支給対象期間1年を第1期6か月・第2期6か月に分ける。120万円の場合は1期あたり60万円。第1期で不支給になると第2期は申請できない - 転換パターン別(中小企業・支給総額): 有期雇用から無期雇用、無期雇用から正規雇用への転換は、重度身体障害者等で60万円(30万円×2期)、重度以外の身体障害者等で45万円(22.5万円×2期) - 事前手続: キャリアアップ計画をコース実施日の前日までに管轄労働局長へ提出。計画期間は3年以上5年以内 - 対象にならない人: 就労継続支援A型事業の利用者(対象労働者の要件に明記)。B型の利用者は労働契約がなく、有期雇用労働者等の定義に当たらない - 申請期限: 転換後6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内。公募回・締切日はなく通年受付 根拠: 厚生労働省「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)のご案内(令和8年度版)」 ### 本文 障害のある職員を有期雇用で採用して、半年か1年が過ぎた。仕事も回っていて、本人も続けたいと言っている。そろそろ正社員にしようか、と考えた場面がこの助成金の入口だと思います。有期契約の更新時期が近づいて、ひとまず調べ始めた人も多いはずです。 僕は埼玉県志木市で就労継続支援B型を運営していて、職業指導員のハローワーク求人は自分で出しています。ただし、この助成金の申請代行はしていません。雇用保険法に基づく申請の代行は社会保険労務士の独占業務だからです。ここに書くのは代行者の解説ではなく、パンフレットを読んだ経営者としての読み方です。 先に答えを2行で言います。中小企業なら1人あたり最大120万円ですが、一度には入らず6か月ずつ2回に分かれます。そして就労継続支援A型の利用者は要件で明確に外れていて、B型の利用者は定義上そもそも当たりません。 ## いくら入るのか。中小企業なら1人あたり120万円か90万円 中小企業が障害のある職員を有期雇用から正規雇用へ転換した場合、支給総額は1人あたり120万円か90万円です。 額は、障害の区分と転換のパターンの組み合わせで6通りに分かれます。次の表は令和8年4月1日時点の中小企業の額です。支給総額と、1期あたりの額を分けて示します。 | 障害の区分(令和8年度・中小企業) | 転換のパターン | 支給総額(1人あたり) | 1期あたりの額 | | --- | --- | --- | --- | | 重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者 | 有期雇用→正規雇用 | 120万円 | 60万円×2期 | | 同上 | 有期雇用→無期雇用 | 60万円 | 30万円×2期 | | 同上 | 無期雇用→正規雇用 | 60万円 | 30万円×2期 | | 重度以外の身体障害者・重度以外の知的障害者・発達障害者・難病患者・高次脳機能障害者 | 有期雇用→正規雇用 | 90万円 | 45万円×2期 | | 同上 | 有期雇用→無期雇用 | 45万円 | 22.5万円×2期 | | 同上 | 無期雇用→正規雇用 | 45万円 | 22.5万円×2期 | 大企業の額は別に定められています。重度身体障害者等を有期雇用から正規雇用へ転換した場合は90万円(45万円×2期)です。 支給対象期間は1年で、第1期の6か月と第2期の6か月に分かれます。それぞれの期が終わってから、個別に支給申請します。**第1期が不支給なら第2期は申請できない**ため、最初の6か月の記録が総額を左右します。 僕がこの仕組みで一番こわいと思うのは、この分割です。表の額を見ると、120万円が一度に入るように読めます。実際は、転換から半年分の賃金を払い終えてから申請し、審査を経て60万円です。2回目はさらに半年分を払ってからの申請になります。最初の6か月の勤怠と賃金台帳が崩れると、残りの60万円も一緒に消えます。資金繰りに入れるなら、2回目の入金は1年以上先だと見ておくのが安全だと思っています。 支給額が各支給対象期の賃金総額を超える場合は、その賃金総額が上限になります。転換後も勤務時間が短いままだと、表の額がそのまま支給されるとは限りません。ここは見落としやすいところです。正社員という名前だけを変えて勤務時間を増やさない設計にすると、額が表より小さくなることがあります。 名前の似た「正社員化コース」は、これとは別のコースです。障害の有無を問わない一般の転換に使います。中小企業の有期雇用から正規雇用への転換で80万円という額が知られています。ただしこの80万円は、**重点支援対象者に該当する場合の額**です。該当しない場合は40万円で、しかも第1期のみの1回で終わります。重点支援対象者は、次のいずれかに当たる人です。 - 雇入れから3年以上の有期雇用労働者 - 雇入れから3年未満で一定の要件を満たす者 - 派遣労働者、母子家庭の母等・父子家庭の父、人材開発支援助成金の特定訓練修了者 正直、この2つのコースは名前も額も近いので混ざりやすいと思います。検索で見かける「80万円」の記事を自社の話だと思い込むと、前提から違う計算になります。障害のある職員の転換で見るのは、障害者正社員化コースのほうです。 ## 誰が対象になるのか。A型の利用者は要件で外れている 対象になる障害は6種類で、対象労働者の要件には就労継続支援A型の利用者でないことが含まれます。 障害の区分は2つのグループに分かれます。1つは重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者です。もう1つは、重度以外の身体障害者・重度以外の知的障害者・発達障害者・難病患者・高次脳機能障害者です。前のグループのほうが支給額は高く設定されています。 対象労働者の要件のひとつに、就労継続支援**A型事業における利用者でないこと**が置かれています。障害者正社員化コースのパンフレットに、対象労働者の要件②として書かれた文言です。この除外はこのコースだけの話ではありません。障害の有無を問わない正社員化コースの対象労働者要件にも、同じ趣旨の除外が置かれています。 同じ趣旨の除外が2つのコースに置かれているのは、偶然ではないと思います。A型の利用者の雇用には訓練等給付費が出ているので、同じ雇用に二重で出さない整理なのだろう、というのが僕の読み方です。ここはパンフレットに理由が書かれているわけではないので、推測として読んでください。 申請様式(別添様式2-2)にも、対象労働者がA型事業の利用者に該当するかどうかを確認する欄があります。書類の上でも必ず問われる項目です。気づかないまま申請が進む余地は、書類の側でも狭めてあります。 ## 何を、いつまでに出すのか。計画は転換の前日まで キャリアアップ計画を転換の実施日の前日までに提出し、転換後は6か月ごとに2回申請します。 手順を時系列で並べます。 - 事業所ごとにキャリアアップ管理者を配置する - キャリアアップ計画を作成し、管轄の労働局長へ提出する(計画期間は3年以上5年以内) - 就業規則または労働協約その他これに準ずるものに、転換制度を規定する - 転換を実施する - 転換後6か月分の賃金を支給する - 第1期の支給申請(賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内) - さらに6か月経過後に第2期の支給申請 間違えやすいのは計画の提出時期です。**計画はコース実施日の前日までに提出**します。前日が行政機関の休日にあたる場合は、翌開庁日が期限になります。厚生労働省のパンフレットは、1か月前など余裕を持った提出を勧めています。転換を済ませてから計画を出しても、その転換は要件を満たしません。 この順番が、この助成金でいちばん気をつけたいところです。転換の話は、本人との面談で先に決まってしまうことが多いと思います。現場としては自然な流れですが、転換を実施した時点で助成金のほうは終わります。あとから計画を出しても遡れません。転換の話が出た日に、まず計画と就業規則の状態を確かめる。その順番にしておけば、取りこぼしは起きにくいと思っています。 このコースに公募回や締切日はありません。受付は通年で、期限は上の個別の申請期限だけです。年度の途中でも動き出せますが、転換の実施は計画の提出を済ませてからになります。補助金のように締切に追われない代わりに、日程は自社で決めることになります。 支援員の有期雇用を正規雇用へ切り替えるなら、決める順番は賃金よりも計画と規程が先になります。 最初に置くのは転換の実施日です。キャリアアップ計画の提出期限がその前日に固定されるため、実施日が動くと全体の日程が動きます。 次に就業規則を見ることになります。転換制度の規定があるか、正規雇用労働者に適用される昇給と賞与または退職金の規定がそろっているかを確認します。改定が必要なら、実施日から逆算して届出の時間を見込んでおきます。 賃金の設計は最後です。このコースで求められるのは減額させないことですが、支給額は各支給対象期の賃金総額が上限になります。勤務時間を短いままにすると、表の額に届かない場合があります。 この順番で組めば、計画の提出が転換の実施日より後ろにずれることはありません。 ## 賃金は上げないといけないのか。3%の要件はない 障害者正社員化コースの賃金要件は、転換後6か月間の賃金を転換前6か月間より減額させていないことです。 このコースに**3%以上の増額という要件はありません**。数値の増額要件があるのは、別コースの正社員化コースのほうです。2つを混同すると、必要のない賃上げを前提にして計画を組むことになります。 | コース(令和8年度) | 賃金についての要件 | | --- | --- | | 障害者正社員化コース | 転換後6か月間の賃金を、転換前6か月間の賃金より減額させていないこと | | 正社員化コース | 転換後6か月間の賃金を、転換前6か月間の賃金より3%以上増額させていること。第2期は第1期と比べて合理的な理由なく引き下げないこと | 転換先が「正規雇用労働者」に当たるかどうかも、賃金の設計に関わります。定義は、賞与または退職金の制度と昇給の制度が適用されていることです。原則不支給と定めた賞与規定や、支給の有無が不明瞭な規定では認められません。転換の受け皿となる正社員区分の規程を、転換の前に整えておく必要があります。 ここが、小さい事業所ほど詰まる場所だと思います。うちも就業規則と賃金規程は社労士と一緒に整備しました。正社員の昇給や賞与をどう書くかは、実際に悩みやすいところです。決めきらずに「別に定める」で逃げた規定があると、助成金の場面ではそこを突かれます。規程の整備は助成金のためだけの作業ではないので、転換の予定がなくても先に手を付ける価値があると思っています。 ## B型の利用者・A型の利用者・職員で何が変わるのか A型の利用者は要件に明記された対象外、B型の利用者は定義上の対象外、職員は対象になりえます。 同じ「対象外」でも、根拠の性格が違います。 | 立場(令和8年度) | 障害者正社員化コースの対象 | 根拠の性格 | | --- | --- | --- | | 就労継続支援B型の利用者 | 対象にならない | 定義の組み合わせによる帰結。名指しの除外規定ではない | | 就労継続支援A型の利用者 | 対象にならない | 対象労働者の要件に「A型事業における利用者でないこと」と明記 | | 事業所の職員(支援員・サービス管理責任者など) | 対象になりうる | 名指しの除外規定がなく、他の要件を満たせば対象 | B型の利用者が対象外になる理由は、名指しの除外規定ではありません。パンフレットの用語集は、有期雇用労働者を「期間の定めのある労働契約を締結する労働者」と定義しています。一方、B型の利用者が事業所と結ぶのは利用契約であり、労働契約ではありません。この2つを合わせると、B型の利用者は有期雇用労働者等に当たらず、対象労働者になりえないという結論になります。 この違いは、問い合わせるときに効いてきます。A型は要件に書いてあるので話が早いです。B型は名指しの規定がないため、労働契約がないという一点を説明することになります。根拠の性格を分けて理解しておくと、労働局とのやりとりが短くなると思っています。 職員のほうは、名指しの除外がない代わりに一般の要件をすべて満たす必要があります。障害のある支援員を有期雇用から正規雇用へ転換する場面が、このコースの想定する使い方です。ただし障害福祉サービス事業所を主語にした事例や記述は、厚生労働省のパンフレットにもQ&Aにも見当たりません。**一般の事業主向けの制度をそのまま使う**位置づけになります。 法人格による対象可否の差はありません。社会福祉法人・NPO法人・医療法人も、この助成金の「事業主」に含まれます。中小企業の額が使えるかどうかは、資本金のない事業主なら常時雇用する労働者の数だけで判定されます。ただし障害福祉サービス事業がどの業種区分に当たるかは、パンフレットにも支給要領にも明記がありません。区分は事業所の実態に応じて、管轄の労働局に確認してください。僕もここは確認していません。額そのものが変わる部分なので、電話で先に潰しておくほうが早いと思います。 ## どんなときに不支給になるのか 労働関係法令の違反や労働保険料の滞納があると、転換の要件を満たしていても支給されません。 共通の不支給要件は次のとおりです。 - 支給申請日の前日から過去1年間に、労働関係法令の違反があった場合 - 性風俗関連営業等や暴力団関係に当たる場合 - 支給申請日または支給決定日の時点で倒産している場合 - 支給申請時に雇用保険の適用事業所でない場合 - 支給申請年度の前年度より前の保険年度に、労働保険料の滞納がある場合 - 不正受給から5年以内の申請、または不正受給者名の公表に同意しない場合 この一覧で僕が目を留めるのは、労働保険料の滞納です。転換の要件をどれだけ丁寧に整えても、事務のほうが止まっていれば全部が無駄になります。申請の前に労働保険の状態を見ておく。地味な確認ですが、先に潰しておく価値があると思っています。 不正受給が発覚したときの負担は、返還だけでは終わりません。返還額に加えて、年3%の延滞金と返還額の20%の違約金が請求されます。代理人が不正受給に関与または黙認した場合は、**代理人も連帯して債務を負う**扱いです。 なお、この助成金の申請書の作成・提出代行・事務代理を報酬を得て業として行えるのは、社会保険労務士だけです。雇用保険法が社会保険労務士法の別表第一に掲げられているためで、根拠は同法第2条第1項と第27条です。 この線引きは、相談先を選ぶときにも効いてきます。助成金の申請の代行を持ちかけてくる相手が社会保険労務士かどうかを、先に確かめておくという話です。資格の線がはっきり引かれている領域なので、登録の有無を聞いても失礼には当たらないと思います。 支給決定を受けたあとも、支給申請書と添付書類の写しは5年間保存します。会計検査の対象になりうるためです。 令和7年度以前に行った転換には、旧年度の要件が適用されます。年度をまたいで手続きが進む場合は、その年度のパンフレットで要件と額を確認してください。 結局、この助成金で一番大事なのは額ではなく順番だと思っています。先に決めるのは転換の実施日で、その前日までに計画を出し、規程を整えてから賃金を設計する。この順番を守っていれば、あとは要件を確かめながら6か月ごとに2回申請するだけです。逆に順番を間違えると、正社員化そのものは成功しているのに助成金だけが消えます。もったいない消え方なので、転換の話が出た日に社労士へ相談するところから始めるのがいいと思います。 ## あわせて読む 職員の採用と、A型・B型の制度上の違いは別の記事にまとめています。 - [B型事業所の職員採用](/column/b-gata-shienin-saiyou/) … 支援員を採用するときの実務 - [A型とB型の違い](/column/b-gata-a-gata-chigai/) … 雇用契約の有無による制度の違い 事業所が使える制度の全体像は、次の記事が入口です。 - [就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか](/column/b-gata-hojokin/) … B型が使える制度の全体像 ### よくある質問 Q. A型の利用者を正社員にしたら使えますか? A. いいえ、使えません。対象労働者の要件に「就労継続支援A型事業における利用者でないこと」と明記されています。申請様式にも、対象労働者がA型事業の利用者に該当するかどうかを確認する欄が置かれています。使えるのは、障害のある職員を転換する場合です。 Q. B型の利用者は対象になりますか? A. いいえ、対象になりません。この助成金は有期雇用労働者を「期間の定めのある労働契約を締結する労働者」と定義しています。B型の利用者が事業所と結ぶのは利用契約で、労働契約ではありません。この2つを合わせると、B型の利用者は対象労働者に当たらないという結論になります。 Q. 120万円は一度に振り込まれますか? A. いいえ、2回に分けて支給されます。支給対象期間の1年を第1期6か月と第2期6か月に分け、それぞれの期が終わってから個別に申請します。中小企業で重度身体障害者等を有期雇用から正規雇用へ転換した場合、1期あたり60万円です。第1期で不支給になると、第2期は申請できません。 Q. 転換したあとにキャリアアップ計画を出しても間に合いますか? A. いいえ、間に合いません。キャリアアップ計画は、コース実施日の前日までに管轄の労働局長へ提出している必要があります。前日が行政機関の休日にあたる場合は翌開庁日が期限です。厚生労働省のパンフレットは、1か月前など余裕を持った提出を勧めています。 Q. 転換のときに賃金を3%上げる必要はありますか? A. 障害者正社員化コースに3%増額の要件はありません。求められるのは、転換後6か月間の賃金を転換前6か月間の賃金より減額させていないことです。3%以上の増額が要件になるのは、別のコースである正社員化コースのほうです。 Q. 社会福祉法人でも中小企業の額が使えますか? A. 資本金のない事業主は労働者数だけで判定されます。パンフレットに「資本金などのない事業主は、常時雇用する労働者の数で判定します」と明記されています。ただし障害福祉サービス事業がどの業種区分に当たるかは明記がないため、管轄の労働局に確認してください。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)のご案内(令和8年度版・PL080401障01)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001685042.pdf(P.2 中小企業事業主の範囲、P.3 支給対象事業主とキャリアアップ計画、P.9 支給額、P.10 対象となる労働者、P.13 賃金要件、P.14-15 支給申請を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版・PL080408 No.16)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001687992.pdf(P.14 正社員化コースの支給額と重点支援対象者、P.17 対象労働者要件、P.19 賃金3%増額要件、P.22 支給申請と旧要件の適用を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「キャリアアップ助成金(トップページ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html(コース一覧とパンフレット・支給要領・Q&Aの更新日(令和8年4月8日付)を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「障害者正社員化コース(キャリアアップ助成金)案内ページ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/index_00004.html(パンフレット・支給要領・申請様式の掲載を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省(社会・援護局障害保健福祉部)「就労継続支援A型、B型に係る報酬について≪論点等≫(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第9回 資料3)」 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000177374.pdf(p.3・p.21でA型は雇用契約に基づく就労、B型は雇用契約を結ばない支援であることを確認・2026年8月23日確認) - e-Gov法令検索(デジタル庁)「社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)」(第2条第1項・第27条・別表第一で、雇用保険法に基づく申請書の作成・提出代行・事務代理が社会保険労務士の業務であることを確認・2026年8月23日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.23 初回公開 --- ## 障害福祉の「賃上げ補助金」は 処遇改善加算とどう違うか 時限の補助金と報酬の加算 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/chinage-hojokin-shogu-kaizen-chigai/ カテゴリー: 補助金・助成金 公開: 2026-08-23 / 更新: 2026-08-23 制度基準日: 2026.08.23 ### 結論 障害福祉の賃上げの原資は2つに分かれます。1つは障害福祉サービス等報酬に上乗せされる処遇改善加算で、要件を満たす間は続きます。もう1つは令和7年度補正予算による障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金で、都道府県に計画書を提出して交付を受けます。後者は令和7年12月から令和8年5月に相当する6か月分の時限措置です。補助額は基準月(原則令和7年12月)1か月分の障害福祉サービス等総報酬に、サービス区分ごとの交付率を掛けて算出します。就労継続支援B型・A型はいずれも11.4%で、職員1人あたりの定額ではありません。対象は事業所に勤務する障害福祉従事者で、利用者は受け手になりません。2026年8月23日時点で、愛知県のように受付を終えた都道府県があります。令和9年度以降の継続は一次情報に記載がありません。 - 補助額の決まり方: 基準月(原則令和7年12月)1か月分の障害福祉サービス等総報酬にサービス区分ごとの交付率を掛けて算出。就労継続支援B型・A型はいずれも11.4%。職員1人あたりの定額ではない - 対象になる期間: 令和7年12月から令和8年5月に相当する6か月分。令和7年度補正予算による時限措置で、令和9年度以降の継続は一次情報に記載なし - 申請先と手続: 実施主体は都道府県。事業所は都道府県知事へ計画書を提出する。東京都は事前の交付申請・交付決定を省略する取扱い - 対象になる人: 事業所に勤務する障害福祉従事者(福祉・介護職員以外の事務職員を含む)。B型の利用者は対象者の定義に入らない。A型の利用者本人への賃上げの制度でもない - 原則の要件: 基準月に処遇改善加算を算定していること。未算定でも申請時に令和8年度中の算定を誓約すれば可。交付を受けた額は全額を賃金改善に充てる義務がある - 受付の状況(2026年8月23日時点): 愛知県はAパターン(支払予定 令和8年4月下旬)・Bパターン(支払予定 令和8年6月下旬)とも受付終了 根拠: 厚生労働省「障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業実施要綱」(障発1226第7号・令和7年12月26日付) ### 本文 ## 2つの原資は性格が違う 障害福祉の賃上げには、報酬に上乗せされる加算と、予算で期間を区切る補助金の2つの原資があります。 処遇改善加算は、障害福祉サービス等報酬の一部です。事業所が区分の要件を満たして届け出れば、報酬に上乗せされます。採択を待つ性質のものではありません。 もう一方が、令和7年度補正予算で措置された補助金です。名称を障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金といいます。申請先は都道府県で、対象は令和7年12月からの6か月分に限られます。同じ賃上げの原資でも、続き方がまったく違います。 令和8年度の時点で2つを並べると、次のようになります。 | 見る点(令和8年度時点) | 処遇改善加算 | 障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金 | | --- | --- | --- | | 原資 | 障害福祉サービス等報酬 | 令和7年度補正予算 | | 受け取り方 | 加算区分を届け出て報酬に上乗せ | 都道府県知事に計画書を提出して交付を受ける | | 続く期間 | 要件を満たす間は続く | 令和7年12月から6か月分で終わる | | 額の決まり方 | 加算区分ごとの要件による | 基準月の総報酬にサービス区分ごとの交付率を掛ける | **時限の補助金**を継続的な原資として当て込むと、令和8年6月以降の人件費の見通しが狂います。この記事では加算の区分や計算には立ち入らず、補助金の側の仕組みだけを扱います。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか](/column/b-gata-hojokin/) 収入の仕組みと使える制度の全体像 ## 障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業の仕組み この補助金は、都道府県を実施主体として、事業所が計画書を提出して交付を受ける単年度の制度です。 根拠は、厚生労働省が令和7年12月26日付で発出した通知です。文書番号は障発1226第7号で、別紙として実施要綱が付いています。適用は令和7年12月16日からです。障害児相談支援等が対象になる場合については、こども家庭庁が同じ日付で同名の実施要綱を発出しています。 制度の背景にあるのは、令和7年11月21日の「強い経済」を実現する総合経済対策です。ここに、障害福祉分野についても経営状況等を踏まえた賃上げ措置等の支援を行うと書かれています。令和7年度補正予算案では、障害福祉分野の賃上げ支援として439億円が計上されました。障害児支援人材の賃上げ支援としては、こども家庭庁に183億円が計上されています。 手続の入り口は、都道府県知事への計画書の提出です。東京都のように、通常の補助金で行う事前の交付申請・交付決定を省略している例もあります。補助金の振込先は、原則として法人ごとに1つの口座です。国民健康保険団体連合会に介護給付費等の振込先として登録している口座が使われます。 ## 交付率と対象になる期間 補助額は基準月1か月分の総報酬に交付率を掛けて算出し、就労継続支援B型の交付率は11.4%です。 算出の順序が決まっています。まず利用者ごとに、基準月の障害福祉サービス等総報酬にサービス区分ごとの交付率を掛けます。次にそれを事業所ごとに合計します。1円未満は切り捨てます。基準月の総報酬は、基準月の報酬総単位数に1単位単価を掛けた額です。報酬総単位数には、基本報酬と各種の加算・減算が含まれます。 つまり**1人あたり月額いくら**という形の制度ではありません。同じB型でも、基準月の報酬額が違えば交付額は変わります。予算の資料には「幅広く月額1万円相当の賃上げ」という政策目標が書かれていますが、事業所ごとの交付額はこの式で決まります。 交付率はサービス区分ごとに違います。実施要綱の別紙1に6か月分として定められた率のうち、主な区分を挙げます。 | サービス区分 | 交付率(令和7年度・6か月分) | | --- | --- | | 就労継続支援B型 | 11.4% | | 就労継続支援A型 | 11.4% | | 就労移行支援・就労選択支援・就労定着支援・自立生活援助 | 11.4% | | 生活介護 | 11.1% | | 共同生活援助(3類型とも) | 14.1% | | 居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護 | 20.3% | | 施設入所支援・短期入所・療養介護 | 22.2% | | 自立訓練(機能訓練・生活訓練・宿泊型) | 23.0% | | 計画相談支援・地域相談支援 | 47.0% | 就労系のサービスは、B型もA型も同じ11.4%です。障害者支援施設が行う日中活動系サービスには、各サービスと同じ交付率を適用します。 対象になる期間も決まっています。基準月は原則として令和7年12月です。この1か月分の報酬額から、6か月分の補助額を算出します。対象は令和7年12月から令和8年5月に相当する6か月分です。過誤調整分は、令和8年3月末日までに生じ、令和8年4月10日までに審査支払機関が受理したものに限って反映できます。 補助の対象外になる事業所もあります。令和8年4月以降に新規開設された事業所等と、計画書の提出時点で廃止・休止が明らかな事業所等です。 支給の時期は、国の計画書様式で2つから選ぶ形になっています。令和8年3月末までの支給か、令和8年4月以降の支給かのどちらかです。愛知県では、支払予定が令和8年4月下旬のAパターンと、令和8年6月下旬のBパターンが用意されました。2026年8月23日の時点で、この2つはどちらも受付を終えています。 ## 対象になるのは職員 実施要綱が対象者としているのは、事業所に勤務する福祉・介護職員以外も含む障害福祉従事者です。 事務職員のように直接支援を行わない職員も、この定義に含まれます。職種による除外の規定は実施要綱にありません。一方で、事業所の利用者はこの定義に入りません。立場ごとに分けると次のようになります。 | 立場(令和8年度) | 補助の受け手になるか | 判定の根拠 | | --- | --- | --- | | 就労継続支援B型の利用者 | ならない | 対象者の定義が「勤務する障害福祉従事者」であることと、B型の利用者が雇用契約を結ばないことを合わせた帰結 | | 就労継続支援A型の利用者 | 本人への賃上げの制度ではない | 雇用契約は結ぶが、生産活動の対価としての賃金を得る利用者の立場。要綱に可否を直接述べた記述はない | | 事業所の職員(支援員・サービス管理責任者・管理者・事務職員) | なる(要件を満たす場合) | 「福祉・介護職員以外も含む障害福祉従事者」に当たると要綱に明記されている | ここは書き分けが要ります。実施要綱には、B型の利用者を名指しで除外した記述はありません。対象者の定義そのものが、**勤務する職員**だけを指す形になっているだけです。A型の利用者についても、要綱は可否を直接述べていません。職員向けの制度であって、A型の利用者本人への賃上げの制度ではない、というところまでが一次情報から言えることです。 法人格による区別は、実施要綱にも東京都の交付要綱にも書かれていません。社会福祉法人でも、NPO法人でも、株式会社立の事業所でも扱いは同じです。東京都は、暴力団関係者が代表者等にいる団体を交付対象外とする規定を別に置いています。 ## 要件は加算の側にあり、返還の規定もある この補助金を受ける原則の要件は、基準月において処遇改善加算を算定していることです。 基準月に算定していない事業所にも道があります。申請の時点で令和8年度中に算定すると誓約すれば、基準月から算定しているものとして扱われます。そのうえで、算定している加算の区分によって追加の要件が変わります。 | 算定している区分 | 追加で満たす要件 | | --- | --- | | 処遇改善加算Ⅲ・Ⅳ | 職場環境等要件について、全体から8以上の取組を実施していること | | 処遇改善加算Ⅰ・Ⅱ | 経験・技能のある人材のうち1人以上が賃金改善後の年収見込額460万円以上であること、または職場環境等要件14以上の取組を実施していること(このいずれか) | | 処遇改善加算の対象外サービス | 加算Ⅳの算定に準ずる3つ(任用要件・賃金体系の整備/研修の実施/職場環境等要件)をすべて満たすこと | 3行目の対象外サービスとは、計画相談支援・地域移行支援・地域定着支援です。東京都はこれに障害児相談支援を加えています。 使いみちは限定されています。交付を受けた額は**全額を賃金改善**に充てる義務があります。前年の同時期と比べて賃金水準を低下させてはならないとされています。交付決定より前に決まっていた賃金改善の原資に充てることは、趣旨に反するため認められません。一部の職員や一部の事業所に賃金改善を著しく偏らせる配分もできません。 この補助金による賃金改善分は、処遇改善加算による賃金改善額には含めません。加算の実績とは別に数える扱いです。 事業所側の義務も要綱に並んでいます。賃金改善の方法を職員に周知すること、職員からの照会に書面等で分かりやすく回答することが求められます。計画書の提出時には、就業規則と労働保険加入の確認書類を2年間保管し、求めに応じて提示する義務があります。経営悪化等でやむを得ず賃金水準を引き下げ、そのうえで賃金改善を行う場合は、特別事情届出書を都道府県知事に届け出ます。 返還の事由は3つです。要件を満たさない場合(誓約した内容が未達の場合を含む)、虚偽や不正の手段による受給、障害者総合支援法その他の関係法令への違反です。東京都は、返還命令に伴う違約加算金と延滞金を年10.95%と定めています。 この補助金は加算の算定を要件にしているので、年度の段取りは加算の側から決まります。 基準月に加算を算定していない事業所は、まず令和8年度中に算定する区分を決めることになります。誓約して申請したあと未達に終われば、返還の対象になるからです。 算定している区分がⅢかⅣなら、職場環境等要件の取組が8以上あるかを数えるところから始まります。ⅠかⅡなら、賃金改善後の年収見込額460万円以上の人材で満たすか、職場環境等要件14以上で満たすかを先に選ぶ順番になります。 そのうえで、都道府県の受付期間に合わせて計画書を出します。受付の時期は都道府県ごとに違うので、加算の区分の検討はそれより前に終えておくことになります。 ## 令和8年6月の加算の拡充との関係 この補助金は、令和8年6月に適用される報酬改定を待たずに賃上げを先に行うための措置です。 実施要綱の目的には、令和8年度障害福祉サービス等報酬改定の時期を待たず、緊急的対応として賃上げの支援を行うと書かれています。令和8年度の報酬改定は令和8年6月1日に適用されます(一部は令和8年4月1日)。補助金の対象は令和7年12月から令和8年5月に相当する6か月分です。加算が上がるまでの期間を、補助金がそのまま埋める設計になっています。 時期の順で見ると次のようになります。 | 時期 | 賃上げの原資 | | --- | --- | | 令和7年12月〜令和8年5月 | 障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金(6か月分) | | 令和8年6月〜 | 処遇改善加算(令和8年度報酬改定による) | この補助金が終わること自体は、原資が減ることを意味しません。原資が時限の補助金から報酬の加算に切り替わります。加算の区分ごとの加算率や要件、計算の方法は別の記事で扱っています。 関連する記事を挙げます。 - [処遇改善加算の令和8年度改定](/column/shogu-kaizen-kasan-r8/) 令和8年6月適用分の内容 - [処遇改善加算の要件と区分](/column/shogu-kaizen-kasan-setsumei/) 区分ごとの要件と計算方法 ## 令和9年度以降は決まっていない 令和9年度以降に同じ補助金が続くかどうかは、実施要綱にも予算の資料にも書かれていません。 実施要綱は、令和7年度補正予算に基づく6か月分の措置として作られています。同じ趣旨の措置を次年度も置くという予告は、この記事で確認した一次情報にはありません。**継続を前提にした資金計画**は立てられない、というのが2026年8月23日時点の状況です。 受付の状況も都道府県ごとに違います。愛知県では、2026年8月23日の時点でAパターン・Bパターンとも受付を終えています。交付を受けた事業所には、そのあとの事務が残ります。東京都の場合、実績報告書の提出期限は令和8年12月末日で、書類は2年間保存します。 令和8年6月以降も続く原資は、加算のほうです。人件費の計画は報酬の加算で組み立て直すことになります。自分の都道府県の受付期間や様式は、障害福祉の担当課の案内で確認してください。 ### よくある質問 Q. 賃上げの補助金と処遇改善加算は同じものですか? A. いいえ、別の制度です。処遇改善加算は障害福祉サービス等報酬の一部で、区分を届け出れば要件を満たす間は報酬に上乗せされます。障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金は令和7年度補正予算による時限の措置で、令和7年12月から6か月分に限られます。申請先も都道府県で、加算とは別の手続です。 Q. 補助額は職員1人あたり月額いくらですか? A. 1人あたりの定額で決まる制度ではありません。補助額は基準月(原則令和7年12月)1か月分の障害福祉サービス等総報酬に、サービス区分ごとの交付率を掛けて算出します。就労継続支援B型と就労継続支援A型はいずれも11.4%です。同じB型でも、基準月の報酬額が違えば交付額は変わります。 Q. 就労継続支援B型の利用者も対象になりますか? A. いいえ、利用者は補助の受け手になりません。実施要綱の対象者は「事業所に勤務する福祉・介護職員以外も含む障害福祉従事者」です。B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばず工賃を受け取る立場なので、この定義に当たりません。A型の利用者については要綱が可否を直接述べておらず、職員向けの制度であって利用者本人への賃上げの制度ではない、というところまでが言えることです。 Q. 処遇改善加算を算定していなくても申請できますか? A. 条件つきでできます。基準月に加算を算定していない場合でも、申請の時点で令和8年度中に算定すると誓約すれば、基準月から算定しているものとして扱われます。誓約した内容が未達に終わった場合は、返還の対象になります。 Q. 交付を受けた額は自由に使えますか? A. いいえ、全額を賃金改善に充てる義務があります。前年の同時期と比べて賃金水準を低下させてはならないとされています。交付決定より前に決まっていた賃金改善の原資に充てることも、その代わりに本事業で賃金改善を行うことも認められません。一部の職員や一部の事業所に著しく偏らせる配分もできません。 Q. 令和9年度も同じ補助金がありますか? A. 決まっていません。実施要綱は令和7年度補正予算に基づく6か月分の措置として作られており、令和9年度以降の同種の措置についての記載はありません。2026年8月23日時点では、愛知県のように令和8年度分の受付を終えた都道府県もあります。継続を前提にした資金計画は立てられません。 ### 根拠資料 - 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長「障発1226第7号「障害福祉分野の職員の賃上げ支援事業の実施について」別紙「障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業実施要綱」」 https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/jigyo/syogukaizen/3fukushi-sien.pdf(実施要綱1〜9および別紙1表1・表2の交付率を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省障害保健福祉部「障害保健福祉に関する令和7年度補正予算案の概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001604241.pdf(p.1「主な施策」(1)障害福祉分野における賃上げに対する支援の予算額を確認・2026年8月23日確認) - 東京都福祉局「障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金交付要綱(7福祉障地第1160号・令和8年3月4日)」 https://www.shougaifukushi.metro.tokyo.lg.jp/Lib/Download.php?sqid=6509(第8条(要件)・第13条(実績報告)・第18条・別記(補助条件)を確認・2026年8月23日確認) - 愛知県 障害福祉課「障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業について」 https://www.pref.aichi.jp/soshiki/shogai/shogukaizenkinkyushien.html(支給パターンごとの支払予定時期と受付終了の表示を確認・2026年8月23日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.23 初回公開 --- ## デジタル化・AI導入補助金2026で 障害福祉の記録・請求ソフトは 入れられるか URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/digital-ai-dounyu-hojokin-fukushi/ カテゴリー: 補助金・助成金 公開: 2026-08-23 / 更新: 2026-08-23 制度基準日: 2026.08.23 ### 結論 2026年8月23日時点で「IT導入補助金2026」という名称の制度はありません。正式名称は中小企業デジタル化・AI導入支援事業で、通称はデジタル化・AI導入補助金2026です。障害福祉の記録・請求ソフトは、通常枠の対象経費の枠組みに合致し得ます。通常枠の対象経費はソフトウェア購入費・クラウド利用費・導入関連費で、クラウド利用料は最大2年分です。ただし補助対象になるのは事務局に登録済みのITツールだけで、IT導入支援事業者との共同申請になります。 通常枠の補助額は申請1件あたり5万円〜450万円以下で、補助率は1/2以内です。プロセス数により5万円〜150万円未満(1プロセス以上)と150万円〜450万円以下(4プロセス以上)に分かれます。社会福祉法人・NPO法人・医療法人は中小企業等の定義に含まれるので申請できます。ただし小規模事業者の優遇補助率は使えません。就労継続支援は社会福祉法第2条第3項第4号の2の第二種社会福祉事業なので、賃上げ要件は適用除外です。事業場内最低賃金が地域別最低賃金以上であるという基本要件は免除されません。1次締切分の交付申請締切は2026年8月25日(火)17:00で、2次以降の日程は2026年8月23日時点で公表されていません。 - 現行の名称(2026年度): 正式名称は「中小企業デジタル化・AI導入支援事業」。通称はデジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)。申請枠は5つ - 通常枠の補助額と補助率: 申請1件あたり5万円〜150万円未満(1プロセス以上)または150万円〜450万円以下(4プロセス以上)。補助率1/2以内、条件を満たす場合2/3以内 - 通常枠の対象経費: ソフトウェア購入費・クラウド利用費(クラウド利用料は最大2年分)・導入関連費。事務局に登録済みのITツールに限る - 法人格の扱い: 医療法人・社会福祉法人は常時使用する従業員300人以下で対象。NPO法人は主たる業種の従業員規模以下で対象。いずれも小規模事業者の優遇補助率は使えない - 賃上げ要件: 第一種・第二種社会福祉事業を行う事業者は適用除外。ただし事業場内最低賃金が地域別最低賃金以上という基本要件は全事業者に適用 - 1次締切分の日程(2026年度): 交付申請締切2026年8月25日(火)17:00、交付決定予定日2026年10月7日(水)、事業実施期間と実績報告期限2027年3月31日(水)17:00。2次以降は2026年8月23日時点で未公表 - 申請前に必要な手続: GビズIDプライムの取得と、IPA「SECURITY ACTION」の★一つ星または★★二つ星の宣言 根拠: 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)」 ### 本文 ## IT導入補助金は2026年に名称が変わった 2026年度の正式名称は中小企業デジタル化・AI導入支援事業で、通称はデジタル化・AI導入補助金2026です。 「IT導入補助金2026」という名称の制度は、2026年8月23日時点では存在しません。事務局サイトの表記は「デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)」です。制度そのものが無くなったわけではなく、**名前が変わって続いています**。 実施体制も変わっています。独立行政法人中小企業基盤整備機構が採択し、同機構と中小企業庁の監督のもとでTOPPAN株式会社が事務局業務を運営しています。 2026年度の申請枠は5つあります。 - 通常枠 - インボイス枠(インボイス対応類型) - インボイス枠(電子取引類型) - セキュリティ対策推進枠 - 複数者連携デジタル化・AI導入枠 会計・受発注・決済の機能を持たない記録・請求ソフトを単体で入れる場合、検討の中心は通常枠になります。理由は次章以降の補助率と対象経費で説明します。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか](/column/b-gata-hojokin/) 開設・設備投資・雇用の制度全体の位置づけ ## 枠ごとの上限額と補助率 通常枠は補助額5万円〜450万円以下・補助率1/2以内で、枠によって上限額も補助率も変わります。 次の表の額は申請1件あたりの補助額です(複数者連携枠のみグループ構成員1者あたり)。 | 申請枠(2026年度) | 補助額 | 補助率 | | --- | --- | --- | | 通常枠 | 5万円〜150万円未満(1プロセス以上)/150万円〜450万円以下(4プロセス以上) | 1/2以内(条件により2/3以内) | | インボイス枠(インボイス対応類型) | ITツール分は下限なし〜350万円 | 50万円以下の部分3/4以内(小規模事業者4/5以内)、50万円超〜350万円の部分2/3以内 | | インボイス枠(電子取引類型) | 下限なし〜350万円 | 2/3以内 | | セキュリティ対策推進枠 | 5万円〜150万円 | 中小企業1/2以内、小規模事業者2/3以内 | | 複数者連携デジタル化・AI導入枠(基盤導入経費) | グループ構成員1者あたり上限50万円(1機能のみ)/上限350万円(2機能以上) | 3/4以内(小規模事業者4/5以内)、50万円超の部分は2/3以内 | 通常枠の補助率が2/3以内になるのは、**小規模事業者だからではありません**。まったく別の条件が置かれています。令和6年10月から令和7年9月までの間の賃金水準を見る条件です。地域別最低賃金以上、かつ令和7年度改定の地域別最低賃金未満で雇用している従業員を数えます。この従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上あることが条件です。 セキュリティ対策推進枠の対象は、IPAが公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されたサービスです。対象経費はサービス利用料で、最大2年分までです。 大分類Ⅲ「役務」に当たる経費もあります。次の3つです。 - 導入コンサルティング - 導入設定・マニュアル作成・導入研修 - 保守サポート 通常枠では、この役務の補助対象経費が合計200万円までです。保守サポートは1回の交付申請につき1つだけです。期間はソフトウェアの利用範囲内で最大2年分です。 ## ITツール登録制と対象になる経費 補助対象になるのは、IT導入支援事業者があらかじめ事務局に登録したITツールだけです。 自社で選んだ記録・請求ソフトをそのまま契約しても、対象にはなりません。**登録済みのITツールに限る**という制限が、この補助金の入り口を決めています。登録済みのITツールとIT導入支援事業者は、事務局のITツール検索ページで確認できます。 申請の形も一般的な補助金とは違います。事業者とIT導入支援事業者が共同事業体となり、事務局に各種申請を行う仕組みです。ITツールの選定・商談・見積依頼は、事業者からIT導入支援事業者へ行います。交付申請は双方が入力したうえで、事業者が最終提出します。 通常枠の対象経費は3つです。 - ソフトウェア購入費 - クラウド利用費(クラウド利用料は最大2年分) - 導入関連費 記録・請求ソフトのクラウド利用料は、この枠組みには合致し得ます。ただし合致し得るのは経費の種類の話です。個別の製品が実際にITツールとして登録されているかどうかは、製品ごとに検索して確かめる必要があります。 パソコンやタブレットは事情が違います。**通常枠ではハードは対象外**です。ハードウェア関連費を対象にできるのは2つの枠だけです。インボイス枠(インボイス対応類型)と、複数者連携デジタル化・AI導入枠の基盤導入経費です。どちらも会計・受発注・決済の機能を持つソフトウェアとセットで導入することが条件です。PC・タブレット等は補助率1/2以内・上限10万円、レジ・券売機等は補助率1/2以内・上限20万円です。 もうひとつ確認しておくことがあります。5つの枠の公募要領本文に、「障害」という文字は一度も出てきません。業種・プロセス一覧(別紙2)に「介護業」の区分はありますが、これは介護保険法上の介護事業を指す区分です。障害福祉サービス業という専用の区分は置かれていません。どのプロセス区分で申請するかは、IT導入支援事業者と事務局への個別確認が必要になります。 製品を先に決めてから補助金を探す順番にはなりません。事務局のITツール検索で、登録されている製品とIT導入支援事業者を先に見ることになります。 すでに使いたいソフトが決まっている場合は、そのベンダーがIT導入支援事業者として登録しているかを確かめるところから始まります。登録が無ければ、その製品はこの補助金では入れられません。 クラウド利用料の補助は最大2年分です(ソフトウェアの形態によっては最大1年分)。補助が切れたあとの月額は自己負担に戻るので、その後の負担額まで見込んだうえで導入の可否を決めることになります。 交付決定より前に契約・発注・納品・支払いを行うと補助金を受けられません。ベンダーとの契約日を交付決定日より後ろに置く段取りを、見積の段階で決めておくことになります。 ## 社会福祉法人・NPO法人の扱いと賃上げ要件 社会福祉法人・NPO法人は申請できますが、**小規模事業者の優遇は使えません**。 公募要領の「中小企業等の定義」には、医療法人と社会福祉法人が挙げられています。条件は常時使用する従業員の数が300人以下であることです。特定非営利活動法人は、主たる業種に記載された従業員規模以下の者として挙げられています。一方で「小規模事業者の定義」では、これらの組織形態は小規模事業者に該当しないものとすると明記されています。 社会福祉法人立・NPO法人立の事業所は、中小企業者の区分の補助率までしか使えないことになります。株式会社立・合同会社立の事業所はこの除外の対象ではなく、公募要領の定義に沿って小規模事業者に当たるかを判定します。なお対象外の事業者として、宗教法人と法人格のない任意団体が明記されています。 賃上げ要件の扱いは、障害福祉の事業所にとって有利に働きます。**賃上げ要件は適用除外です**。公募要領は、第一種社会福祉事業・第二種社会福祉事業(更生保護事業を含む)を行う事業者を適用除外としています。就労継続支援などの通所の障害福祉サービス事業は、社会福祉法第2条第3項第4号の2の第二種社会福祉事業です。障害者支援施設(入所)は同条第2項第4号の第一種社会福祉事業です。 ただし免除されない要件があります。交付申請の直近月において、事業場内の最低賃金が法令上の地域別最低賃金以上であることです。これは申請要件として全事業者に適用され、適用除外の対象になりません。 事業所の中の誰がこの補助金に関わるのかも整理しておきます。公募要領の「従業員」は、給与所得として課税される給料・賃金・賞与・各種手当を受け取る人を指し、パートを含みます。この定義と、B型の利用者が事業所と雇用契約を結ばず工賃を受け取ることを合わせると、B型の利用者は従業員に入らないという帰結になります。公募要領がB型の利用者を名指しして除外しているわけではありません。 | 立場 | この補助金での位置づけ | 根拠の強さ | | --- | --- | --- | | B型の利用者 | 補助金の直接の対象にはならない。法人が導入したソフトを事業所の業務で使うことはできる | 要件の組み合わせによる帰結(従業員の定義と雇用契約がないこと) | | A型の利用者 | 雇用契約があるため「従業員」に算入され得る。ただし賃上げ要件自体が適用除外なので、賃金が判定に使われる場面は通常想定されない | 要件の組み合わせによる帰結 | | 事業所の職員 | 「従業員」に当たる。給与支給総額・事業場内最低賃金の算定対象 | 公募要領の従業員の定義に明記 | 補助金の交付先は法人であり、利用者個人への給付ではありません。B型の利用者を対象に含めるかどうかという論点自体、公募要領には登場しません。 ## 締切回と申請の流れ 1次締切分の交付申請締切は2026年8月25日(火)17:00で、2次以降の日程は公表されていません。 事務局サイトは確定分のみを公表する運用です。2026年8月23日時点で具体的な日付が出ているのは1次締切分だけで、2次から6次までの締切日は確認できません。 | 1次締切分の日程(2026年度) | 期日 | | --- | --- | | 交付申請の締切 | 2026年8月25日(火)17:00 | | 交付決定の予定日 | 2026年10月7日(水) | | 事業実施期間 | 交付決定日〜2027年3月31日(水)17:00 | | 実績報告の期限 | 2027年3月31日(水)17:00 | 締切当日の17:00をもって、申請マイページとIT事業者ポータルからの申請・提出が一切できなくなります。IT導入支援事業者の登録申請とITツール登録申請は、2026年3月30日(月)10:00から始まっています。 申請の前に済ませておく手続が2つあります。 - GビズIDプライムを取得すること(申請要件(ウ)) - IPAの「SECURITY ACTION」で★一つ星または★★二つ星のいずれかを宣言すること(申請要件(エ)) GビズIDプライムの取得は、補助事業の流れの最初のステップに位置づけられています。SECURITY ACTIONは、宣言内容の確認のため事務局がIPAと交付申請情報の一部を共有することに同意する必要があります。2026年4月から運用が始まったSECURITY ACTION管理システムでは、第2回公募以降は宣言済みであれば申請できます。 順番の間違いは取り返しがつきません。**交付決定より前の契約は対象外**になります。交付決定前に契約・発注・納品・支払い等を行った場合は補助金を受けられず、交付決定前に購入したITツールは補助対象外経費として明記されています。 法人を複数持っている場合の制限もあります。親会社が議決権の50%超を持つ子会社、同一の個人が議決権の50%超を持つ複数の法人、代表者・住所・実質的支配者が同じ法人などは「みなし同一法人」として扱われ、1社のみ申請できます。IT導入支援事業者として登録している事業者は、同じ年度の補助事業者と重複できません。 ## 交付を受けたあとの効果報告 賃上げ目標が必須になる申請では事業計画期間3年分の効果報告が義務づけられ、**未達なら返還を求められます**。 報告の期間は、1次締切分の交付決定を前提に次のように示されています。 | 効果報告の対象(1次締切分) | 報告期間 | | --- | --- | | 事業計画期間前 | ITツール導入後〜2027年3月(受付時期は順次公表) | | 1年度目(交付申請時点の翌事業年度) | 2028年4月〜2029年1月 | | 2年度目 | 2029年4月〜2030年1月 | | 3年度目 | 2030年4月〜2031年1月 | 期間内に効果報告が提出されない場合、補助金の全部または一部の返還を求められます。事業場内最低賃金の増加目標が未達の場合は、未達となった年度に応じて按分して返還します。1年度目の未達は全額、2年度目の未達は返還率2/3、3年度目の未達は返還率1/3です。 賃上げ要件が適用除外になる事業者について、この返還規定がどこまで及ぶかは公募要領に明記がありません。断定せずに、IT導入支援事業者と事務局に確認することになります。 返還が生じるのは未達の場合だけではありません。効果報告が完了する前に、導入したITツールを解約または利用停止した場合も対象です。廃業・倒産・事業廃止・事業譲渡・吸収合併等で補助事業を取りやめる場合は、辞退の手続が必要です。この場合も交付済み補助金の全部または一部の返還が必要になり得ます。加算金・延滞金を伴う場合もあります。 加点を受けて採択された場合の措置も置かれています。申請した加点要件を達成できなかった場合、効果報告で未達が報告されてから18か月間、中小企業庁が所管する他の補助金の申請で大幅に減点されます。正当な理由がある場合を除きます。対象として、次の補助金等が挙げられています(令和8年1月時点)。 - ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 - 小規模事業者持続化補助金 - 事業承継・M&A補助金 - Go-Tech事業 - 事業再構築補助金 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する](/column/b-gata-shushi-kouzou/) 導入費用を判断する土台になる収支の全体像 ### よくある質問 Q. IT導入補助金2026はもう無いのですか? A. 名称が変わっただけで制度は続いています。2026年度の通称はデジタル化・AI導入補助金2026です。正式名称は中小企業デジタル化・AI導入支援事業で、事務局サイトの表記も「旧:IT導入補助金」と併記されています。 Q. 障害福祉の記録・請求ソフトは対象になりますか? A. 事務局に登録済みのITツールなら対象になり得ます。通常枠の対象経費はソフトウェア購入費・クラウド利用費・導入関連費で、記録・請求ソフトのクラウド利用料もこの枠組みには合致し得ます。個別の製品が登録されているかどうかは、事務局のITツール検索で製品ごとに確認します。 Q. 社会福祉法人でも申請できますか? A. 中小企業等の定義に含まれるので申請できます。公募要領は社会福祉法人・医療法人について常時使用する従業員300人以下という条件を置いています。ただし小規模事業者の定義からこれらの組織形態は除かれているため、小規模事業者向けの上乗せ補助率は使えません。 Q. 賃上げ要件は満たさなくてよいのですか? A. 就労継続支援は第二種社会福祉事業なので適用除外です。公募要領は第一種・第二種社会福祉事業を行う事業者を賃上げ要件の適用除外としています。ただし事業場内最低賃金が地域別最低賃金以上であることという申請要件は、全事業者に適用され免除されません。 Q. パソコンやタブレットも買えますか? A. 通常枠では対象外です。ハードウェア関連費を対象にできるのは、インボイス枠(インボイス対応類型)と複数者連携デジタル化・AI導入枠の基盤導入経費だけです。どちらも会計・受発注・決済の機能を持つソフトウェアとセットで導入することが条件で、PC・タブレット等は補助率1/2以内・上限10万円です。 Q. 次の締切はいつですか? A. 2026年8月23日時点では1次締切分しか公表されていません。1次締切分の交付申請締切は2026年8月25日(火)17:00です。2次から6次までの締切日は事務局サイトで確定分のみ公表とされており、確認した時点では具体的な日付が出ていません。 ### 根拠資料 - 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(中小企業基盤整備機構より採択・TOPPAN株式会社)「デジタル化・AI導入補助金2026 トップページ」 https://it-shien.smrj.go.jp/(正式名称・実施体制・5つの申請枠の構成を確認・2026年8月23日確認) - 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 スケジュール」 https://it-shien.smrj.go.jp/schedule/(1次締切分の交付申請締切・交付決定予定日・事業実施期間、2次以降が未公表であることを確認・2026年8月23日確認) - 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)」 https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_koubo_tsujyo.pdf(4ページ全枠比較表、7〜10ページ中小企業等の定義と申請要件、11ページ賃上げ要件の適用除外、16〜19ページ対象経費、31〜33ページ効果報告と返還を確認・2026年8月23日確認) - 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(インボイス枠:インボイス対応類型)」 https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_koubo_invoice.pdf(ハードウェア関連費の対象範囲と補助率・上限を確認・2026年8月23日確認) - 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(複数者連携デジタル化・AI導入枠)」 https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_koubo_fukusu.pdf(基盤導入経費の上限額・補助率、ハードウェア経費を確認・2026年8月23日確認) - 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「ITツール・IT導入支援事業者検索(コンソーシアム含む)」 https://it-shien.smrj.go.jp/search/(登録済みITツールとIT導入支援事業者を確認できる検索ページの存在を確認・2026年8月23日確認) - e-Gov法令検索(デジタル庁)「社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000045(第2条第2項第4号(障害者支援施設)・第2条第3項第4号の2(障害福祉サービス事業)を確認・2026年8月23日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.23 初回公開 --- ## 福祉医療機構(WAM)の融資は B型の開設に使えるか 補助金で埋まらない部分をどう借りるか URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/fukushi-iryo-kiko-yushi-b-gata/ カテゴリー: 補助金・助成金 公開: 2026-08-23 / 更新: 2026-08-23 制度基準日: 2026.08.23 ### 結論 福祉医療機構(WAM)の福祉貸付は、補助金ではなく返済の要る融資です。2026年度のパンフレットでは、障害者福祉分野の融資対象に就労継続支援事業所が明記されています。障害福祉サービス事業の借入対象者は「法人」とだけ書かれ、法人格の限定はありません。融資限度額は2つの額のうち低いほうです。所要額から法的・制度的補助金を引いた額に融資率を掛けた額と、担保評価額の80%を比べます。障害福祉サービス事業の融資率は80%です。社会福祉施設等施設整備費補助金の交付が行われる整備事業は85%に上がります。この優遇の取扱期間は2027年3月31日までです。 利率は令和8年8月3日改定の主要貸付利率表によります。固定金利で償還期間10年以内の場合、参考の基準利率が3.100%、区分1「社会福祉事業施設」が2.600%です。ただし利率表に「障害福祉サービス事業」という区分名はありません。就労継続支援B型がどの区分に当たるかは、表の文言だけでは確定できません。手続の面では、貸付内定より前の契約と着工に注意が要ります。内定より前に工事請負契約を結んだり着工したりすると、原則として融資の対象外になります。相談と申込みは通年で受け付けられており、締切はありません。 - 制度の性格: 補助金ではなく返済の要る融資。実施は独立行政法人福祉医療機構(WAM)の福祉貸付事業 - 借りられる人: 事業を行う法人。障害福祉サービス事業(就労継続支援を含む)は法人格の限定なし。入所の障害者支援施設は社会福祉法人・日本赤十字社・一般社団法人に限定 - 融資率(2026年度): 障害福祉サービス事業は80%。社会福祉施設等施設整備費補助金の交付が行われる整備事業は85%(取扱期間は2027年3月31日まで) - 融資限度額: (所要額-法的・制度的補助金)×融資率と、担保評価額×80%の低いほう。貸付金額は10万円単位・最低200万円 - 利率(令和8年8月3日改定時点): 固定金利・償還期間10年以内で参考の基準利率3.100%、区分1「社会福祉事業施設」2.600%。保証人不要制度を使う場合は0.05%上乗せ - 償還期間: 貸付金額の区分と貸付金の種類に応じ、最短5年以内から最長20年以内。据置期間は最短6か月から3年以内 - 事前手続の禁止事項: 貸付内定より前の工事請負契約・売買契約の締結や工事着工は原則として融資の対象外。設計監理の業務委託契約は除く - 締切: 公募回や締切はなく、融資相談・申込みは通年で受付(2026年度) 根拠: 独立行政法人福祉医療機構「2026年度 福祉貸付事業 融資のごあんない」・同「主要貸付利率表(令和8年8月3日改定)」 ### 本文 ## WAMの福祉貸付は補助金ではない 福祉医療機構の福祉貸付は返済の要る融資で、採択を待って交付を受ける補助金とは仕組みが違います。 福祉医療機構は、独立行政法人福祉医療機構法に基づく独立行政法人です。設立は平成15年10月1日で、主管省庁は厚生労働省とこども家庭庁です。福祉貸付事業は、福祉の施設や事業を整備する法人に資金を貸す事業です。借りた額は利息を付けて返します。 それでも開設資金の相談先として名前が挙がるのは、条件が民間の借入と違うからです。参考の基準利率より低い区分が用意されています。相談と申込みに締切がなく、通年で受け付けられています。そして施設整備費補助金の自己負担分をこの融資で賄えることが、補助金側の資料にも書かれています。 貸付の形は2つあります。機構に直接申し込む直接貸付と、覚書を結んだ民間金融機関を窓口にする代理貸付です。代理貸付は、借入申込金額が3.5億円以下の場合に適用されます。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか](/column/b-gata-hojokin/) 使える補助金の全体像 ## 対象になる事業と借りられる法人 就労継続支援事業所は融資対象の事業に明記されていて、借りられるのは事業を行う法人です。 2026年度のパンフレットには、障害者福祉分野の融資対象が一覧で載っています。居宅介護・生活介護・共同生活援助などと並んで、就労継続支援事業所が挙がっています。障害福祉サービス事業の「融資を受けられる方」の欄は「法人」とだけ書かれています。法人格の種類を限定する記載はありません。 一方、入所施設である障害者支援施設は違います。融資を受けられる方は社会福祉法人・日本赤十字社・一般社団法人と書かれています。医療法人・NPO法人・営利法人の記載はありません。通所と入所で**対象の法人格が違います**。 就労継続支援B型は、営利法人でも指定を受けて運営できる事業です。これと、借入対象者が単に「法人」とされていることを合わせると、株式会社立のB型も対象になり得ると読めます。ただし営利法人が実際に借り入れた事例を明記した公表資料は確認できていません。 借主はどの場合も法人です。個人が借りる制度ではないので、3つの立場はいずれも借主になりません。 | 立場 | 借主になれるか(2026年度) | | --- | --- | | B型の利用者 | なれない。融資は事業を行う法人に対するもの | | A型の利用者 | なれない(雇用契約の有無にかかわらず同じ) | | 事業所の職員 | なれない。職員個人が借入主体になる制度ではない | この表は「融資を受けられる方=法人」という記載と、貸付が事業の整備資金であることを合わせた帰結です。利用者や職員を名指しで除外した記述があるわけではありません。 ## 融資率と限度額 障害福祉サービス事業の融資率は80%で、施設整備費補助金の交付を受ける整備事業は85%に上がります。 融資限度額は、2つの額を計算して低いほうを採ります。 - (所要額 - 法的・制度的補助金)× 融資率 - 担保評価額 × 80% 所要額に入る費用は4つです。 - 建築資金(建築工事費・大型設備等工事費・特殊工事費・設計監理費) - 設備備品整備資金(機械器具や備品の購入・取付工事等) - 土地取得資金(施設用地の取得費用) - 経営資金(施設又は事業の経営に必要な資金) | 項目 | 2026年度の内容 | | --- | --- | | 融資率(障害福祉サービス事業) | 80% | | 融資率(施設整備費補助金の交付が行われる整備事業) | 85%。取扱期間は2027年3月31日まで | | 貸付金額 | 10万円単位。最低200万円 | | 担保 | 原則として敷地に第一順位の抵当権。敷地上の建物・地上権の担保提供、損害保険の付保と質権設定も必要 | 85%は**期限つきの優遇**です。取扱期間は2027年3月31日までとされています。それ以降の扱いはパンフレットに書かれていません。延長されなければ、通常の80%に戻ります。開設の時期がこの期限をまたぐなら、率が変わる前提で資金計画を作ることになります。 融資対象面積が5,000㎡を超える借入申込は、原則として民間金融機関との協調融資が前提になります。覚書を結んだ金融機関は、令和8年度版パンフレットの時点で全国430機関です。 ## 利率と償還期間 令和8年8月3日改定の利率表では、固定金利で償還期間10年以内の参考の基準利率が3.100%です。 | 区分(令和8年8月3日改定時点) | 固定金利・償還期間10年以内の利率 | | --- | --- | | (参考)基準利率 | 3.100% | | 1 社会福祉事業施設 | 2.600%(基準利率▲0.5%) | | 2 介護関連施設 | 2.700%(基準利率▲0.4%) | この表に「障害福祉サービス事業」という区分名はありません。B型がどちらの区分かは**断定できません**。防災・減災や自家発電設備の優遇では、障害福祉分野にも基準利率▲0.5%が使われています。そこから区分1に整理されている可能性は読み取れますが、確認は取れていません。借入額の見込みを立てる前に、融資相談窓口で確かめる必要があります。 保証人不要制度を使う場合は、上の利率に0.05%が上乗せされます。使わない場合は、法人代表者等の個人連帯保証になります。 貸付利率は、金銭消費貸借契約を結んだ時点のものが適用されます。相談したときの利率ではありません。償還期間が10年を超える場合は、2つの制度から選びます。契約時の利率が償還期限まで変わらない完全固定金利制度と、10年経過ごとに見直す制度です。設置・整備資金で償還期間が10年以内の場合は、見直す制度を使えません。 償還期間は、貸付金額の区分と貸付金の種類の組み合わせで決まります。貸付金額は500万円以下から2,000万円以上までの区分があります。期間は最短5年以内から最長20年以内の幅です。広域型特別養護老人ホームなど一部の施設は39年以内という例外があります。据置期間は最短6か月で、償還期間の長さに応じて1年以内から3年以内です。 ## 補助金との併用 社会福祉施設等施設整備費補助金は所要額から差し引かれ、残った額に融資率を掛けた額が限度になります。 パンフレットは、所要額から引く「法的・制度的補助金」の例として社会福祉施設等施設整備費補助金を挙げています。都道府県等の負担分も含めて引かれます。補助金で埋まる部分は借りられない、という意味です。裏を返せば、設置者の負担として残る部分が、この融資の出番になります。 厚生労働省の資料にも、設置者負担分については福祉医療機構から低利の融資を受けられると書かれています。国庫補助は整備費の全額を賄うものではなく、設置者の負担分が残るためです。 補助金を取ることは、融資の条件そのものも良くします。施設整備費の国庫補助金の交付が行われる整備事業は、融資率が80%から85%に上がるからです。ただし前章のとおり、この優遇の取扱期間は2027年3月31日までです。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する](/column/b-gata-shushi-kouzou/) 返済を織り込む前提になる収支の全体像 ## 申請から実行までの流れ 貸付内定より前に工事請負契約や着工をすると、原則としてその整備は融資の対象外になります。 パンフレットは、貸付内定通知書が届くまで次のことをしないよう案内しています。 - 工事請負契約(請書)の締結 - 設備備品費に係る購入契約の締結 - 土地建物の売買契約の締結(締結前の着手金等の支払いを含む) - 工事着工 設計・監理に係る業務委託契約の締結は、この限りではありません。支払いを含めて、内定前でも差し支えないとされています。工事請負業者等への支払いは振込で行います。現金による支払いは、原則として融資の対象外です。 時間の見込みも押さえておきます。借入申込書が機構に到着し、内容確認を終えてから審査を了するまで1か月程度です。貸付契約の締結や抵当権設定の手続きには3か月程度かかります。初めての申込みや法人新設の場合は、相談と審査にさらに時間がかかることがあるとされています。 借入申込書には、施設を管轄する都道府県市等からの意見書などの添付が必要です。融資相談の段階でも書類が要ります。決算書の直近2か年分、開設後の収支予想である収入支出償還計画表、計画敷地の公図・住宅地図・全部事項証明書、計画建物の配置図・平面図などです。 | 相談先 | 対象 | 電話 | | --- | --- | --- | | 福祉医療貸付部 福祉審査課 融資相談係 | 施設の開設地が東日本 | 03-3438-9298 | | 大阪支店 福祉審査課 融資相談係 | 施設の開設地が西日本 | 06-6252-0216 | | NPOリソースセンター NPO支援課 | NPO法人 | 03-3438-4756 | 融資相談と申込みは通年で受け付けられています。公募回や締切はありません。 補助金の交付決定と融資の内定と、工事の契約の3つは、順番を先に決めておくことになります。 機構は、貸付内定より前の工事請負契約と着工を原則として融資の対象外にしています。一方、設計・監理の業務委託契約は内定前でも差し支えないとされています。設計を先に進めながら、契約と着工を内定の後ろに置く並べ方になります。 補助金の側も先に固めることになります。所要額から引く補助金の額が決まらないと、融資限度額の計算が動いてしまうためです。 支払いの方法も、工事に入る前に決めておく必要があります。業者への支払いは振込に統一することになります。現金による支払いが原則として融資の対象外だからです。 ## 確認できていないこと 就労継続支援B型が利率表のどの区分に当たるかは、公表資料の文言だけでは確定できません。 この記事で断定を避けた点を3つ挙げます。 - 利率の区分。「社会福祉事業施設」と「介護関連施設」のどちらに障害福祉サービス事業所が入るかは、利率表に明記がありません - 営利法人の借入実績。株式会社立のB型が実際に借り入れた事例を明記した公表資料は確認できていません - 償還期間と据置期間の具体的な年数。貸付金額と貸付金の種類の組み合わせで決まるため、幅までしか確認できていません いずれも融資相談の窓口で直接確かめられます。自事業所の整備計画と貸付金額の見込みを持って相談すると、区分と期間の話まで進められます。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型は儲かるのか](/column/b-gata-moukaru/) 開設判断に関わる収支全体の考え方 ### よくある質問 Q. WAMの融資は補助金と何が違いますか? A. 返済が必要な点が違います。補助金は交付されれば返しませんが、福祉貸付は利息を付けて返します。障害福祉サービス事業の融資率は80%なので、所要額の全額を借りられるわけでもありません。相談と申込みに締切がなく通年で受け付けられている点も、公募回のある補助金と違います。 Q. 株式会社が運営するB型でも借りられますか? A. 対象になり得ると読めます。2026年度のパンフレットは、障害福祉サービス事業の融資を受けられる方を「法人」とだけ書いており、法人格を限定していません。就労継続支援B型は営利法人でも指定を受けて運営できる事業です。この2つを合わせると、株式会社立のB型も対象になり得ます。ただし営利法人の借入実績を明記した公表資料は確認できていません。 Q. いくらまで借りられますか? A. 所要額から補助金を引いた額の80%が上限の目安です。担保評価額の80%のほうが低ければ、そちらが限度になります。社会福祉施設等施設整備費補助金の交付が行われる整備事業なら、融資率は85%に上がります。この優遇の取扱期間は2027年3月31日までです。貸付金額は10万円単位で、最低額は200万円です。 Q. 利率は何%ですか? A. 令和8年8月3日改定時点の基準利率は3.100%です。固定金利で償還期間10年以内の場合の数字です。区分1「社会福祉事業施設」は2.600%ですが、利率表に「障害福祉サービス事業」という区分名はありません。B型がどちらの区分かは表の文言だけでは確定できないため、融資相談で確かめてください。 Q. 貸付内定の前に工事を始めても大丈夫ですか? A. いいえ、原則として融資の対象外になります。貸付内定通知書が届くまでは、工事請負契約や土地建物の売買契約の締結、工事着工をしないよう案内されています。締結前の着手金等の支払いも含みます。設計・監理に係る業務委託契約はこの限りではありません。 Q. 申込みに締切はありますか? A. ありません。融資相談と申込みは通年で受け付けられています。公募回のある補助金と違い、パンフレットに締切日の記載はありません。ただし審査に1か月程度、貸付契約の締結や抵当権設定の手続きに3か月程度かかります。着工の時期から逆算して相談する必要があります。 ### 根拠資料 - 独立行政法人福祉医療機構(WAM)「2026年度 福祉貸付事業 融資のごあんない」 https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/2026fukushiyushinogoannai.pdf(2〜17ページで融資の対象・融資限度額の計算方法・融資条件・優遇措置・協調融資制度を確認・2026年08月23日確認) - 独立行政法人福祉医療機構(WAM)「主要貸付利率表(令和8年8月3日改定)」 https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/20260803fukushi.pdf(1〜2ページで設置・整備資金の利率(基準利率3.100%・区分1社会福祉事業施設2.600%)を確認・2026年08月23日確認) - 厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部「障害保健福祉関係主管課長会議資料(令和7年3月)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001468383.pdf(57ページ※2で設置者負担分に対する福祉医療機構の低利融資を確認・2026年08月23日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.23 初回公開 --- ## 業務改善助成金はB型事業所で使えるか 職員の最低賃金引き上げと 設備投資をセットにする制度 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/gyomu-kaizen-joseikin-b-gata/ カテゴリー: 補助金・助成金 公開: 2026-08-23 / 更新: 2026-08-23 制度基準日: 2026.08.23 ### 結論 業務改善助成金は、事業場内で最も低い賃金を50円以上引き上げ、あわせて生産性向上に資する設備投資等を行った中小企業事業者に、その費用の一部を助成する制度です。令和8年度は50円・70円・90円の3コースに再編されました。上限額は1事業場あたり30万円から600万円で、申請するコースと引き上げる労働者数と事業場の規模で決まります。助成率は、事業場内最低賃金が1,050円未満の事業場で4/5、1,050円以上の事業場で3/4です。交付申請の受付開始は令和8年9月1日、申請期限は事業所に適用される地域別最低賃金の発効日の前日か2026年11月30日のいずれか早い日です。 引き上げの対象になるのは、雇入れ後6か月を経過した雇用保険被保険者です。就労継続支援B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばないため、この要件を満たしません。利用者の工賃を引き上げる用途では使えず、対象になるのは事業場内最低賃金にあたる職員の賃金です。厚生労働省の令和8年度の資料に就労継続支援を名指しした記載はなく、これは要件を組み合わせた判断です。交付決定より前に発注・導入した設備は対象外になります。 - 令和8年度のコース: 事業場内最低賃金の引上げ額が50円・70円・90円の3コース。令和7年度までの30円・45円・60円・90円の4コースから再編された - 助成上限額: 1事業場あたり30万円〜600万円。コース・引き上げる労働者数・事業場規模(30人未満かどうか)で決まる。同一事業所の申請は1年度あたり1回まで - 助成率: 事業場内最低賃金が1,050円未満の事業場は4/5、1,050円以上は3/4。設備投資等の費用×助成率と上限額のいずれか低い方が支給される(1,000円未満は切り捨て) - 引き上げの対象になる人: 雇入れ後6か月を経過した雇用保険被保険者(週所定労働時間20時間以上)。雇用契約のないB型の利用者は入らない - 令和8年度の受付期間: 交付申請の受付開始は令和8年9月1日。申請期限は適用される地域別最低賃金の発効日の前日か2026年11月30日のいずれか早い日 - 車両の扱い: リフト付きなど8ナンバーの特種用途自動車に限り機械装置等購入費の対象。普通乗用車・一般的な送迎バンは令和8年度から対象外 - 経費の下限と順番: 助成対象経費は10万円以上。交付決定より前に発注・導入したものは対象外。事業完了期限は交付決定の属する年度の1月31日 根拠: 厚生労働省「令和8年度業務改善助成金のご案内」 ### 本文 ## 制度の骨格 事業場内で最も低い賃金を50円以上引き上げ、設備投資等を行った中小企業に費用の一部を助成する制度です。 正式名称は中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金です。実施主体は厚生労働省になります。申請の窓口は、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。紙の申請のほか、Jグランツによる電子申請も使えます。電子申請にはGビズIDプライムのアカウントが必要です。 **申請は事業場ごと**に行います。複数の事業所を持つ法人は、事業場ごとに別々に申請することになります。同一事業所の申請は1年度あたり1回までです。助成対象経費の下限は10万円です。 対象になる事業者の基本要件は3つあります。 - 中小企業・小規模事業者であること(大企業と密接な関係を有するみなし大企業でないこと) - 事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金未満であること - 解雇や賃金の引き下げなどの不交付事由がないこと 社会福祉法人やNPO法人が運営するB型事業所も対象になりえます。Q&Aの問1は、資本金の額や出資の総額がない法人の扱いを示しています。医療法人・社会福祉法人・NPO法人等は、常時使用する労働者数で中小企業事業者かどうかを判断するとしています。中小企業事業者の基準は、資本金3億円以下または常時使用労働者300人以下です。業種によって基準は分かれ、サービス業は資本金5千万円以下または従業員100人以下となっています。 ## 令和8年度の3コースと上限額 令和8年度は50円・70円・90円の3コースで、上限額は1事業場あたり30万円から600万円です。 令和7年度までは30円・45円・60円・90円の4コースでした。令和8年度はこれが3コースに再編されています。**令和7年度の4コースの額は使えません**。古い解説記事の表を当てはめると、申請できないコースで計画を立てることになります。 上限額は3つの要素で決まります。申請するコース、引き上げる労働者数、そして事業場の規模です。事業場の規模は30人未満かどうかで分かれます。差が出るのは引き上げる労働者数が1人と2〜3人の区分だけで、4人以上はどちらの規模でも同額です。下の表の額は、いずれも1事業場あたりの上限になります。 | コース区分(令和8年度) | 引き上げる労働者数 | 30人未満の事業者 | 右記以外の事業者 | | --- | --- | --- | --- | | 50円コース | 1人 | 40万円 | 30万円 | | 50円コース | 2〜3人 | 70万円 | 40万円 | | 50円コース | 4〜5人 | 70万円 | 70万円 | | 50円コース | 6〜7人 | 90万円 | 90万円 | | 50円コース | 8人以上 | 110万円 | 110万円 | | 50円コース | 10人以上※ | 130万円 | 130万円 | | 70円コース | 1人 | 50万円 | 40万円 | | 70円コース | 2〜3人 | 100万円 | 50万円 | | 70円コース | 4〜5人 | 130万円 | 130万円 | | 70円コース | 6〜7人 | 180万円 | 180万円 | | 70円コース | 8人以上 | 230万円 | 230万円 | | 70円コース | 10人以上※ | 300万円 | 300万円 | | 90円コース | 1人 | 100万円 | 90万円 | | 90円コース | 2〜3人 | 240万円 | 150万円 | | 90円コース | 4〜5人 | 270万円 | 270万円 | | 90円コース | 6〜7人 | 360万円 | 360万円 | | 90円コース | 8人以上 | 450万円 | 450万円 | | 90円コース | 10人以上※ | 600万円 | 600万円 | 各コースの名称は、事業場内最低賃金の引上げ額を表しています。90円コースなら、引上げ額が90円以上であることが要件です。※の10人以上の区分は、特例事業者が10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合にだけ使えます。 引き上げる労働者数の数え方には決まりがあります。事業場内最低賃金である労働者本人のほか、その引き上げによって賃金額を追い抜かれる労働者も算入できます。ただし追い抜かれる労働者も、申請コースと同額以上の引き上げを行っていることが条件です。引上げ額が申請コース未満の労働者は算入できません。引き上げ後の事業場内最低賃金以上の賃金をすでに受け取っている労働者も、算入の対象外です。 ## 助成率 助成率は、事業場内最低賃金が1,050円未満の事業場で4/5、1,050円以上の事業場で3/4です。 分岐点となる金額は**令和8年度に1,050円へ変更**されました。令和7年度の分岐点は1,000円でした。令和7年度の解説をもとに計算すると、助成率を取り違える場合があります。 | 申請事業場の事業場内最低賃金(令和8年度) | 助成率 | | --- | --- | | 1,050円未満 | 4/5 | | 1,050円以上 | 3/4 | 支給額は2つの金額を比べて決まります。1つは設備投資等にかかった費用に助成率を掛けた額です。もう1つはコースと人数区分による上限額です。このうち低いほうの額が支給されます。1,000円未満の端数は切り捨てになります。 ## 対象になる経費 機械装置等購入費や経営コンサルティング経費などが対象で、助成対象経費の下限は10万円です。 交付要綱の別表第3は、助成対象経費を9つの区分に分けています。 - 謝金 - 旅費 - 借損料 - 印刷製本費 - 原材料費 - 機械装置等購入費 - 造作費 - 経営コンサルティング経費 - 委託費 ご案内が挙げる機器・設備の例は2つです。1つはPOSレジシステムの導入による在庫管理の短縮です。もう1つはリフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮です。経営コンサルティングの例としては、国家資格者による顧客回転率の向上を目的とした業務フローの見直しが挙がっています。顧客管理情報のシステム化も例に入っています。 車両の扱いは令和8年度に変わりました。機械装置等購入費の対象から、特種用途自動車以外の自動車が外れています。特種用途自動車とは、ナンバープレートの車種を表す数字が8で始まる車両およびこれに準ずると考えられるもの(福祉車両等)を指します。送迎に使う車両の導入は、**8ナンバーの福祉車両に限る**ことになります。**普通乗用車は対象外**で、一般的な送迎バンも同じ扱いです。 | 車両の種類 | 令和8年度の扱い | | --- | --- | | リフト付きなどの特種用途自動車(8ナンバーの福祉車両等) | 機械装置等購入費として対象になりうる | | 普通乗用車・一般的な送迎バン(8ナンバー以外) | 対象外 | パソコン・タブレット・スマートフォン等も原則として対象外です。例外があり、特例事業者のうち物価高騰等要件に該当する場合は、新規に導入する端末と周辺機器が助成対象となる場合があります。 ## B型の利用者は引き上げの対象に入らない 引き上げの対象は雇用保険被保険者に限られ、雇用契約のないB型の利用者は入りません。 先に資料の状況を書きます。令和8年度のご案内・交付要綱・交付要領・Q&Aを通しても、就労継続支援・A型・B型・工賃・障害という語は出てきません。厚生労働省がB型の利用者を対象外とした**名指しの記載はありません**。ここから先は、2つの要件を組み合わせた判断になります。 1つ目は助成金の側の要件です。引き上げの対象になるのは、事業場における雇入れ後6か月を経過した労働者です。令和8年度からは、対象労働者が**雇用保険被保険者であること**が明記されました。週所定労働時間が20時間以上の雇用保険加入者が対象です。 2つ目はB型の側の性格です。就労継続支援B型は、雇用契約を結ばない通所の就労・生産活動支援とされています。A型は雇用契約に基づく就労として区分されています。 この2つを合わせると、B型の利用者は雇用保険の被保険者になれず、引き上げの対象に入らないことになります。利用者の工賃を引き上げるためにこの助成金を使うことはできません。対象になるのは、事業場内最低賃金にあたる職員の賃金です。 | 対象 | 令和8年度の扱い | 判断の根拠 | | --- | --- | --- | | B型の利用者(雇用契約なし・工賃) | 引き上げの対象に入らない | 要件の組み合わせによる帰結。名指しの記載はない | | A型の利用者(雇用契約あり) | 雇入れ後6か月経過・雇用保険被保険者なら対象になりうる | 同じく帰結。減額特例を受けている場合は記載がない | | 事業所の職員(支援員・サービス管理責任者・管理者等) | 事業場内最低賃金にあたる職員を50円以上引き上げれば対象になりうる | 一般の労働者と同じ扱い | A型の利用者は雇用契約に基づく労働者で、最低賃金法の適用を受けます。週所定労働時間20時間以上で雇用保険に加入していれば、対象労働者の要件を満たしえます。ただし最低賃金の減額特例(最低賃金法第7条)の許可を受けている利用者の扱いは、公式のQ&Aにも交付要綱にも記載がありません。該当する利用者がいる事業所は、労働局に個別に確認することになります。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか](/column/b-gata-hojokin/) B型が使える制度の全体像 - [工賃の決め方](/column/kouchin-kimekata/) 工賃と賃金の性格の違い ## 令和8年度の受付期間と締切 交付申請の受付開始は令和8年9月1日で、締切は地域別最低賃金の発効日の前日か11月30日の早い日です。 **締切は固定の1日ではありません**。地域別最低賃金の発効日は都道府県ごとに違います。締切もそれに合わせて都道府県ごとに変わります。2026年11月30日より前に発効日が来る都道府県では、その前日が締切になります。 | 項目 | 令和8年度の内容 | | --- | --- | | 交付申請の受付開始 | 令和8年9月1日 | | 申請期限 | 適用される地域別最低賃金の発効日の前日か、2026年11月30日のいずれか早い日 | | 賃金引上げ期間 | 令和8年9月1日から、適用される地域別最低賃金の発効日の前日まで | | 事業完了期限 | 交付決定の属する年度の1月31日 | | 申請できる回数 | 同一事業所につき1年度あたり1回 | 予算の範囲内で交付するため、申請期間内であっても募集を終了する場合があるとご案内に書かれています。本記事の制度基準日は受付開始の前です。申請の前に、労働局で最新の受付状況を確認することになります。 ## 手続の順番 交付申請、交付決定、事業の実施、実績報告、交付額の確定の順に進み、決定前の発注は対象外です。 ご案内は助成金支給の流れを5段階で示しています。 - 交付申請(交付申請書・事業実施計画書等を労働局に提出) - 交付決定(審査のうえ通知) - 事業の実施(賃金の引き上げ・設備の導入・代金の支払) - 事業実績報告(実績報告書と支給申請書を提出) - 交付額の確定と助成金の支払 順番の縛りが2つあります。1つは設備です。**交付決定より前の発注は対象外**になります。購入も代金の支払も、交付決定の後に行います。もう1つは賃金です。賃金の引き上げは申請より後に行います。令和8年度は**賃金引上げ後の申請はできません**。令和7年9月5日以降は、発効日前に引き上げていれば賃金引上げ計画の提出が不要という扱いがありました。令和8年度はこの扱いがなくなり、順序が固定されています。 賃金の引き上げには条件が3つ付きます。引き上げ後の事業場内最低賃金と同額を、就業規則等に定める必要があります。複数回に分けての引き上げは認められません。労働保険に未加入の場合や労働保険料を滞納している場合も、助成の対象になりません。 不交付事由も順番に関わります。申請前6か月からの期間内に労働者を解雇していると、交付の対象外になります。期間の終わりは、実績報告手続きの前日か、賃金の引き上げから6か月を経過した日のいずれか遅い日です。時間給の引き下げや、所定労働時間の短縮による賃金の引き下げも同じ扱いです。同じ経費について国や地方公共団体の他の補助金を受けている場合も交付されません。 事業場内最低賃金の引き上げと設備の導入は、どちらも交付決定の後に置くことになります。順番を先に紙に書き出しておくと、手戻りが起きにくくなります。 最初に決めるのは、引き上げの対象になる職員が誰かです。時給が最も低い職員を洗い出し、50円・70円・90円のどこまで引き上げるかを決めます。この段階でコースが決まり、上限額も決まります。 次に、その上限額に収まる設備を選びます。発注・購入・代金の支払は、いずれも交付決定の後に置きます。 交付決定の通知が届いてから、賃金の引き上げと設備の発注に進む順番になります。就業規則等の改定は、引き上げ後の事業場内最低賃金と同額をそのまま書き込む形で用意しておくことになります。 外部に任せられる範囲にも線があります。雇用保険法や障害者雇用促進法に基づく助成金は、申請書の作成・提出代行・事務代理を報酬を得て業として行えるのが社会保険労務士だけと定められています。根拠は社会保険労務士法第2条第1項・第27条と別表第一です。業務改善助成金は厚生労働省の予算事業で、この別表に載る法律に基づく助成金とは位置づけが異なります。ただし労働局に出す書類で、最低賃金法と切り離せない内容です。外部に代行を頼む前提で組み立てる制度ではありません。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する](/column/b-gata-shushi-kouzou/) 人件費が収支に占める位置 ### よくある質問 Q. 業務改善助成金はB型事業所でも使えますか? A. 使えます。ただし対象は職員の賃金です。事業場内最低賃金にあたる職員の賃金を50円以上引き上げ、あわせて生産性向上に資する設備投資等を行うことが要件です。法人格の制限はなく、社会福祉法人・NPO法人・医療法人等で資本金の額や出資の総額がない場合は、常時使用する労働者数で中小企業事業者かどうかを判断します。 Q. B型の利用者の工賃を上げるために使えますか? A. 使えません。引き上げの対象は雇用保険被保険者です。令和8年度から、引き上げる対象労働者が雇用保険被保険者であることが明記されました。B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばないため、雇用保険の被保険者になれません。この2つを合わせると、利用者の工賃引き上げは対象にならないことになります。厚生労働省が就労継続支援を名指しして対象外と書いた資料はありません。 Q. 送迎車の購入に使えますか? A. リフト付きなどの福祉車両に限り対象になりえます。令和8年度から、機械装置等購入費の対象から特種用途自動車以外の自動車が外れました。特種用途自動車は、ナンバープレートの車種を表す数字が8で始まる車両などを指します。普通乗用車や一般的な送迎バンの購入は対象外です。 Q. 締切はいつですか? A. 地域別最低賃金の発効日の前日か11月30日の早い日です。発効日は都道府県ごとに違うため、締切も都道府県によって変わります。令和8年度の交付申請の受付開始は令和8年9月1日です。予算の範囲内で交付するため、申請期間内であっても募集を終了する場合があるとご案内に書かれています。 Q. 設備を先に買ってから申請できますか? A. できません。交付決定より前の導入は対象外です。発注も購入も代金の支払も、交付決定の後に行う必要があります。賃金の引き上げも申請より後です。令和8年度は賃金引上げ後の申請ができません。事業完了期限は交付決定の属する年度の1月31日です。 Q. 何回でも申請できますか? A. いいえ、同一事業所につき1年度あたり1回までです。複数の事業所を持つ法人は、事業場ごとに別々に申請します。上限額もそれぞれ1事業場あたりの額になります。事業場内最低賃金の引き上げを複数回に分けることも認められません。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「業務改善助成金(案内ページ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html(令和8年9月1日の受付開始日とJグランツ電子申請の記載を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「令和8年度業務改善助成金のご案内」 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001693416.pdf(p.1〜4 コース・上限額・助成率・締切・支給の流れを確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「令和8年度業務改善助成金の一部変更のお知らせ」 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001693417.pdf(p.1〜3 3コースへの再編・助成率の分岐点・雇用保険被保険者要件・賃金引上げの順序を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)交付要綱」 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001693388.pdf(第1条〜第4条・別表第2・別表第3・附則を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)交付要領」 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001693391.pdf(別紙3(経費区分)p.14 注3の特種用途自動車の定義を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「業務改善助成金Q&A(令和8年7月7日更新)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001719418.pdf(問1(資本金のない法人の中小企業判定)・問4・問5をp.5〜6で確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省(社会・援護局障害保健福祉部)「就労継続支援A型、B型に係る報酬について≪論点等≫(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第9回 資料3)」 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000177374.pdf(p.3・p.21でA型・B型の雇用契約の有無を確認・2026年8月23日確認) - e-Gov法令検索(デジタル庁)「社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)」(第2条第1項・第27条・別表第一を確認・2026年8月23日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.23 初回公開 --- ## 法人格で変わるB型の補助金 社会福祉法人・NPO法人・株式会社で 使える制度と使えない制度 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/houjinkaku-betsu-hojokin-b-gata/ カテゴリー: 補助金・助成金 公開: 2026-08-23 / 更新: 2026-08-23 制度基準日: 2026.08.23 ### 結論 令和8年度時点で、B型が使える補助金の可否は法人格によって割れます。小規模事業者持続化補助金の第20回公募要領は、社会福祉法人・医療法人・一般社団法人・一般財団法人などを「補助対象にならない者」として名指しで挙げています。中小企業省力化投資補助金の一般型も、一般社団法人・一般財団法人を明記して除外しています。一方で社会福祉施設等施設整備費補助金は、国庫補助の対象になる設置者に営利法人やNPO法人も含めています。株式会社立のB型事業所も設置者になりえます。 キャリアアップ助成金や業務改善助成金など、主な雇用関係の助成金は法人格による対象外の定めを置いていません。区切っているのは企業規模と、誰を雇っているかです。資本金の無い社会福祉法人・NPO法人などは、常時使用する労働者数だけで中小企業かどうかを判定します。 - 社会福祉法人: 小規模事業者持続化補助金(第20回)は「補助対象にならない者」に明記して対象外。省力化投資補助金の一般型とデジタル化・AI導入補助金2026は、従業員300人以下などの条件つきで対象 - NPO法人: 設備投資系の3制度とも条件つきで対象。持続化は法人税法上の収益事業を行い認定NPO法人でないこと、省力化の一般型は経営力向上計画の認定などが要件 - 株式会社・合同会社: 中小企業者の要件を満たせば設備投資系の3制度の対象。社会福祉施設等施設整備費補助金でも「営利法人等」として設置者に含まれる - 一般社団法人・一般財団法人: 持続化補助金と省力化投資補助金の一般型はいずれも明記して対象外。施設整備費補助金の設置者には含まれる - 雇用関係の助成金: キャリアアップ・業務改善など主な制度に法人格による対象外の定めなし。資本金の無い法人の中小企業判定は常時使用する労働者数で行う(業務改善助成金Q&A 問1) - 従業員数の数え方: 「常時使用する従業員」は労働基準法第20条の解雇予告の対象者。B型の利用者は雇用契約がないため含まれないと解される(名指しの一次情報は未確認) 根拠: 中小企業庁・厚生労働省ほか(各制度の公募要領・会議資料。個別の出典は本文を参照) ### 本文 ## 法人格で何が変わるか 変わるのは制度ごとの補助対象者の範囲で、同じB型でも法人格によって申請できる制度が違います。 B型事業所は、社会福祉法人だけが運営しているわけではありません。NPO法人・株式会社・合同会社・一般社団法人が運営する事業所もあります。障害福祉サービスの指定を受けるだけなら、法人格による差はありません。ところが補助金の側は、対象者を法人格で細かく区切っています。 区切り方には型があります。 - 経済産業省系の補助金は、公募要領の「補助対象者」で対象になる法人格を列挙する - 厚生労働省系の雇用関係の助成金は、法人格による対象外の定めを置かない - 施設整備費補助金は、設置者として認める法人格を脚注で広く列挙する つまり**制度ごとに扱いがばらばら**です。制度の側から調べると全体像がつかめないので、この記事では法人格の側から並べます。数値はいずれも令和8年度時点のものです。 ## 社会福祉法人の場合 社会福祉法人がB型で使う制度のうち、法人格の時点で対象外になるのは小規模事業者持続化補助金です。 第20回公募要領は「補助対象にならない者」を列挙しており、その欄に社会福祉法人が入っています。医療法人・一般社団法人・公益社団法人・一般財団法人・公益財団法人も同じ欄に並んでいます。NPO法人のように条件を満たせば対象になる扱いではなく、一律の除外です。 中小企業省力化投資補助金の一般型は、逆に社会福祉法人を条件つきで対象にしています。要件は3つです。 - 社会福祉法第32条の所轄庁の認可を受けて設立されていること - 従業員数が300人以下であること - 収益事業の範囲内で補助事業を行うこと 3つ目の条件は見落としやすい点です。公募要領が求めているのは、収益事業の範囲内で補助事業を行うことです。自法人のどの事業が収益事業に当たるかは、公募要領に書かれていません。所轄庁や税理士に確認する事項になります。なお同じ一般型で、医療法人は歯科医業を営む法人だけが対象です。 デジタル化・AI導入補助金2026は、常時使用する従業員が300人以下の社会福祉法人を中小企業等の定義に含めています。ただし小規模事業者の優遇補助率は使えません。公募要領は、社会福祉法人を含む区分について「小規模事業者に該当しないものとする」と定めています(8ページ)。 ## NPO法人の場合 NPO法人は設備投資系の3つの補助金すべてで対象になりえますが、いずれも条件つきです。 持続化補助金は条件を2つ置いています。法人税法上の収益事業を行い、確定申告書を提出できること。認定特定非営利活動法人でないことです。両方を満たす場合に限り対象になります。従業員数の区分は「その他(製造業その他、20人以下)」を使います。 省力化投資補助金の一般型は、要件が5つあります。 - 広く中小企業一般の振興・発展に直結し得る活動を行うこと - 従業員数が300人以下であること - 法人税法上の収益事業を行うこと - 認定特定非営利活動法人でないこと - 交付申請時までに経営力向上計画の認定を受けていること このうち1つ目は、判断の基準が公募要領に書かれていません。**障害福祉が主目的のNPO法人**が満たすかどうかは、一次情報からは判断できません。申請の前に事務局へ確認する項目になります。 デジタル化・AI導入補助金2026は、主たる業種の従業員規模以下であればNPO法人も対象です。こちらも社会福祉法人と同じで、小規模事業者の優遇補助率は使えません。 ## 株式会社・合同会社の場合 株式会社・合同会社は設備投資系の制度で制約が最も少なく、施設整備費補助金の設置者にも含まれます。 持続化補助金は「会社および会社に準ずる営利法人」を補助対象となりうる者に挙げており、株式会社・合同会社はここに入ります。省力化投資補助金の一般型とデジタル化・AI導入補助金2026も、中小企業者の要件を満たせば対象です。法人格そのものを理由に落ちる場面はありません。 施設整備費補助金も株式会社を排除していません。厚生労働省の会議資料は、国庫補助の対象になる設置者の脚注に「営利法人等」を挙げています。同じ脚注には社会福祉法人・医療法人・日本赤十字社・NPO法人・一般社団法人・一般財団法人なども並んでいます。「社会福祉法人しか使えない補助金」ではありません。 福祉医療機構(WAM)の福祉貸付も似た形です。就労継続支援を含む障害福祉サービス事業では、融資を受けられる方の欄が「法人」とだけ書かれており、法人格を限定する記載がありません。ただし入所施設である障害者支援施設は、社会福祉法人・日本赤十字社・一般社団法人に限られています。**通所と入所で対象が違う**点に注意が必要です。 法人格をクリアしても、持続化補助金には別の壁が残ります。補助対象外となる経費の欄に「就労継続支援A型事業所・B型事業所など障害福祉サービス事業と重複する経費」が名指しで挙げられているためです。どこまでが重複に当たるのかを説明した記述は、公募要領にも参考資料にも見当たりません。株式会社立であっても、経費の内容によっては対象外になりえます。 ## 雇用関係の助成金は法人格を問わない 主な雇用関係の助成金は法人格による対象外の定めを置かず、どの法人格でも同じ要件で申請します。 主な制度は、補助対象者を法人格で切っていません。キャリアアップ助成金・特定求職者雇用開発助成金・人材開発支援助成金・業務改善助成金がこれに当たります。区切っているのは企業規模と、誰を雇っているかです。株式会社でも社会福祉法人でもNPO法人でも、判定の仕方は変わりません。 対象になるかどうかは、雇用契約の有無で決まります。3者に分けると次のようになります。 | 対象 | 雇用関係の助成金の扱い | | --- | --- | | B型の利用者 | 対象にならない | | A型の利用者 | 制度によって分かれる | | 事業所の職員 | 対象になりうる | B型の利用者が対象にならないのは、要件の組み合わせによる帰結です。多くの助成金は、雇用保険の被保険者として雇い入れることを支給要件にしています。この要件と、B型の利用者が事業所と雇用契約を結ばないことを合わせると、要件を満たせないという結論になります。厚生労働省がB型を名指しして対象外と書いているわけではありません。 A型の利用者は制度によって正反対になります。キャリアアップ助成金の正社員化コースは「就労継続支援A型の事業所における利用者以外の者であること」を対象労働者の要件に置いています。一方で特定求職者雇用開発助成金は、A型事業所が自法人の利用者をハローワークの紹介で雇い入れる場合も対象になりえます。ただし過去の対象者の離職率が25%を超えると支給されません。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか](/column/b-gata-hojokin/) 収入の仕組みと制度全体の位置づけ ## 中小企業者の数え方 社会福祉法人のように資本金の無い法人は、常時使用する労働者数だけで中小企業かどうかを判定します。 中小企業の判定は、資本金または従業員数で行います。社会福祉法人・NPO法人・一般社団法人・医療法人には資本金がないため、資本金の側の基準が使えません。厚生労働省の業務改善助成金のQ&Aは、この点を問1で示しています。資本金が無い場合は常時使用する労働者数で判断する、という扱いです。 では誰を数えるのか。経済産業省系の補助金がいう「常時使用する従業員」は、中小企業基本法の定義に沿ったものです。労働基準法第20条の、あらかじめ解雇の予告を必要とする者を指します。次の人は含まれません。 - 役員 - 同居の親族従業員 - 日雇労働者 - 2か月以内の期間を定めて使用される者 - 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者 - 試用期間中の者 B型の利用者は、この定義に当たらないと考えられます。利用者は事業所と雇用契約を結ばず、工賃を受け取る利用契約の関係にあります。解雇の予告の対象になる労働契約がありません。ただし公募要領にB型・A型という語自体は登場しません。**定義との組み合わせによる帰結**であり、名指しの一次情報は確認できていません。 A型の利用者は逆に、算定に含まれうる立場です。雇用契約を結び最低賃金法の適用を受けるため、常勤であれば従業員数に入りえます。ただし契約期間や勤務日数によって判断は変わり、一律には断定できません。 株式会社が運営するB型で設備投資の補助金を申請するなら、従業員数を確定させるところから始めることになります。この数で補助上限も補助率の区分も変わるからです。 まず名簿を人ごとに分け、雇用契約の有無で線を引きます。利用者は工賃を受け取る利用契約なので、この線の外側に置くことになります。 残った職員から、役員と同居の親族を外します。試用期間中の人と、2か月以内の期間を定めて雇っている人も外します。 ここまで数えて常時使用する従業員が5人以下なら、サービス業の小規模事業者の区分に当たる可能性が出てきます。区分が変われば補助率も変わるので、事業計画を書き始める前に確定させておく順番になります。 ## 法人格別の一覧表 法人格の時点で対象外になる組み合わせがあるのは、持続化補助金と省力化投資補助金の一般型です。 | 制度(令和8年度時点) | 社会福祉法人 | NPO法人 | 株式会社・合同会社 | 一般社団・一般財団法人 | | --- | --- | --- | --- | --- | | 小規模事業者持続化補助金(第20回) | 対象外(明記) | 条件つきで対象 | 対象になりうる | 対象外(明記) | | 中小企業省力化投資補助金(一般型) | 条件つきで対象 | 条件つきで対象 | 対象になりうる | 対象外(明記) | | デジタル化・AI導入補助金2026 | 対象(小規模の優遇なし) | 対象(小規模の優遇なし) | 対象になりうる | 中小企業等の定義に区分あり | | 社会福祉施設等施設整備費補助金 | 設置者に含む | 設置者に含む | 設置者に含む(営利法人等) | 設置者に含む | | 福祉医療機構の福祉貸付(障害福祉サービス事業) | 法人であれば対象 | 法人であれば対象 | 法人であれば対象 | 法人であれば対象 | | 雇用関係の助成金(主な制度) | 法人格の定めなし | 法人格の定めなし | 法人格の定めなし | 法人格の定めなし | 表の可否は法人格だけを見たものです。実際にはこのほかに、従業員数・収益事業の範囲・経費の内容といった条件がかかります。とくに持続化補助金は、法人格をクリアしても障害福祉サービス事業と重複する経費が対象外になりえます。 開設の場面で法人格を選ぶなら、補助金の可否だけで決める話にはなりません。それでも、設備投資に補助金を使う計画があるかどうかで、選択の重みは変わります。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型は儲かるのか](/column/b-gata-moukaru/) 開設の判断に関わる収支全体の考え方 ### よくある質問 Q. 社会福祉法人は持続化補助金を使えますか? A. 使えません。第20回公募要領の「補助対象にならない者」の欄に、社会福祉法人が名指しで挙げられています。NPO法人のように条件を満たせば対象になる扱いではなく、一律の除外です。 Q. 株式会社が運営するB型でも施設整備費補助金は使えますか? A. 設置者には含まれています。厚生労働省の令和7年3月の会議資料は、国庫補助の対象になる設置者の脚注に「営利法人等」を挙げています。ただし窓口は都道府県・指定都市・中核市で、予算の範囲内での採択です。 Q. 一般社団法人でB型を運営していますが設備投資の補助金は使えますか? A. 持続化補助金と省力化投資補助金は対象外です。どちらも公募要領で一般社団法人を明記して除外しています。デジタル化・AI導入補助金2026は、中小企業等の定義に「財団・社団法人」の区分が置かれています。 Q. 従業員数に利用者は含めますか? A. B型の利用者は含まれないと考えられます。公募要領の「常時使用する従業員」は労働基準法第20条の解雇予告の対象者を指します。B型の利用者は雇用契約を結ばないため、この定義に当たりません。ただし公募要領にB型を名指しした記述はなく、定義との組み合わせによる帰結です。 Q. 雇用関係の助成金は法人格で変わりますか? A. 主な制度に法人格による対象外の定めはありません。キャリアアップ助成金や業務改善助成金は、株式会社でも社会福祉法人でも同じ要件で申請します。資本金の無い法人は、常時使用する労働者数で中小企業かどうかを判定します。 Q. 開設する法人格はどれを選べば補助金に有利ですか? A. 一つに絞れる正解はありません。施設整備費補助金は社会福祉法人・NPO法人・株式会社のいずれも設置者になりえます。設備投資系の制度では株式会社・合同会社が最も制約が少なく、社会福祉法人は持続化補助金だけが法人格の時点で対象外になります。 ### 根拠資料 - 小規模事業者持続化補助金事務局「小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領(第8版)」 https://r6.jizokukahojokin.info/doc/r6_koubover8_ip20.pdf(P.4〜5「補助対象者の範囲」、P.18〜19「補助対象外となる経費」・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募)」 https://shoryokuka.smrj.go.jp/assets/pdf/application_guidelines_ippan_08.pdf(2-1 補助対象者(法人格ごとの要件)・2026年8月23日確認) - 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)」 https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_koubo_tsujyo.pdf(7〜8ページ「中小企業等の定義」「小規模事業者の定義」・2026年8月23日確認) - 厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部「障害保健福祉関係主管課長会議資料(令和7年3月)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001468383.pdf(57ページ 国庫補助の対象となる設置者の脚注・2026年8月23日確認) - 独立行政法人福祉医療機構(WAM)「2026年度 福祉貸付事業 融資のごあんない」 https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/2026fukushiyushinogoannai.pdf(3ページ 融資を受けられる方の欄・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「業務改善助成金Q&A」(問1(資本金の無い法人は常時使用する労働者数で中小企業を判定)・2026年8月23日確認) - 厚生労働省(社会・援護局障害保健福祉部)「就労継続支援A型、B型に係る報酬について≪論点等≫(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第9回 資料3)」 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000177374.pdf(p.21 B型が雇用契約を結ばないサービスであることを確認・2026年8月23日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.23 初回公開 --- ## 人材開発支援助成金は 障害福祉の職員研修に使えるか 経費助成と賃金助成の組み立て URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/jinzai-kaihatsu-shien-joseikin-fukushi/ カテゴリー: 補助金・助成金 公開: 2026-08-23 / 更新: 2026-08-23 制度基準日: 2026.08.23 ### 結論 人材開発支援助成金の人材育成支援コースは、職員に10時間以上のOFF-JTを受けさせた事業主に、訓練経費と訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。令和8年度の経費助成率は、正規雇用労働者等で45%(中小企業以外は30%)、有期契約労働者等で70%です。賃金助成はこれとは別に、1人1時間あたり800円(中小企業以外は400円)が助成されます。賃金要件・資格等手当要件を満たすと、経費助成率は60%(同45%)に、賃金助成額は1人1時間あたり1,000円(同500円)に上がります。eラーニング・通信制による訓練は経費助成のみで、賃金助成は受けられません。 限度額は2種類あります。1労働者1訓練あたりの経費助成限度額は、実訓練時間数10時間以上100時間未満で中小企業15万円、100時間以上200時間未満で30万円、200時間以上で50万円です。これとは別に、1事業所・1年度あたりの支給限度額が1,000万円と定められています。対象労働者は雇用保険被保険者に限られるため、雇用契約を結ばない就労継続支援B型の利用者は対象になりません。対象になるのは管理者・サービス管理責任者・職業指導員・生活支援員といった職員です。計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前までに労働局へ提出する必要があり、1か月前を過ぎた提出は認められません。 - 経費助成率(令和8年度・人材育成訓練): 正規雇用労働者等は45%(中小企業以外は30%)、賃金要件等を満たせば60%(同45%)。有期契約労働者等は70%、賃金要件等を満たせば85% - 賃金助成額(令和8年度・人材育成訓練): 1人1時間あたり800円(中小企業以外は400円)。賃金要件等を満たせば1,000円(同500円)。eラーニング・通信制は賃金助成の対象外 - 経費助成の限度額: 1労働者1訓練あたり。実訓練時間数10時間以上100時間未満で中小企業15万円、100時間以上200時間未満で30万円、200時間以上で50万円 - 1事業所あたりの上限: 支給限度額は1事業所・1事業主団体等の1年度あたり1,000万円。支給申請は1労働者・1年度あたり3回まで - 計画届の提出期限: 訓練開始日の6か月前から1か月前まで。公募回の設定はなく通年。支給申請は訓練終了日の翌日から2か月以内 - 対象にならない人: B型の利用者(被保険者要件と雇用契約がないことを合わせた帰結)とA型の利用者(厚生労働省のQ&AのQ29に明記)。事業所の職員は要件を満たせば対象 根拠: 厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内(詳細版)令和8年度版」 ### 本文 ## 人材開発支援助成金のコース構成 人材開発支援助成金は複数コースの総称で、職員研修の中心になるのは人材育成支援コースです。 この助成金は、事業主が雇用する労働者に職務に関連した訓練を受けさせたときに使えます。計画に沿って実施すれば、訓練経費と訓練期間中の賃金の一部が助成されます。実施主体は厚生労働省と都道府県労働局です。 人材育成支援コースには4つの訓練メニューがあります。 - 人材育成訓練(10時間以上のOFF-JT) - 認定実習併用職業訓練(新卒者等向けのOJTとOFF-JT。厚生労働大臣の認定が必要) - 有期実習型訓練(有期契約労働者等の正社員転換を目的とするOJTとOFF-JT) - 中高年齢者実習型訓練(中高年齢者向けのOJTとOFF-JT) 職員を外部研修に出す場面で使うのは、このうち人材育成訓練です。このほかに事業展開等リスキリング支援コースがあります。こちらは令和4年度から令和8年度末までの期間限定の助成金として設けられています。 対象労働者の要件は全コース共通で、**雇用保険被保険者であること**です。事業所の中で誰が対象になるかは、立場によって分かれます。 | 立場 | 助成の対象になるか(令和8年度) | 根拠の強さ | | --- | --- | --- | | B型の利用者 | ならない | 被保険者要件と雇用契約がないことを合わせた帰結 | | A型の利用者 | ならない | 厚生労働省のQ&A(令和6年11月版)Q29に明記 | | 事業所の職員(管理者・サービス管理責任者・職業指導員・生活支援員) | 要件を満たせば対象になる | 同じQ29がA型の支援を行う者について明記 | B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばず、工賃を受け取る利用契約です。この性質と被保険者要件を合わせると、B型の利用者は対象にならないという結論になります。厚生労働省がB型を名指しして対象外と書いた資料は、今回の確認では見つかっていません。 A型の利用者については、厚生労働省のQ&Aが直接答えています。Q&Aは、A型に雇用される労働者を利用者と支援を行う者の2種類に分けています。利用者は一般就労への移行に向けた訓練を受けることが前提とされるため対象外、としています。対象外の理由は雇用契約の有無ではありません。 支援を行う者、つまり管理者・サービス管理責任者・職業指導員・生活支援員は、支給要件を満たせば対象になるとされています。A型には運用上の注意も付いています。サービス提供時間内にOFF-JTを実施する場合は、訓練対象者を除く支援員が指定基準上の人員配置を満たしていることが条件です。 B型や生活介護の職員を名指しした記述は確認できていません。ただし職員は雇用契約に基づく労働者です。雇用保険の被保険者であれば対象労働者の要件を満たすため、同じように対象になりうるという整理になります。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか](/column/b-gata-hojokin/) 事業所が使える制度全体の地図 ## 経費助成の率と賃金助成の額 経費助成は訓練経費に対する率、賃金助成は**1人1時間あたりの定額**で、性格が違います。 2つは別々に計算され、両方を受けられます。経費助成率は、対象労働者が正規雇用労働者等か有期契約労働者等かで起点が変わります。賃金要件・資格等手当要件を満たすと、率も額も上乗せされます。次は令和8年度の人材育成訓練の数値です。 | 助成の種類(令和8年度・人材育成訓練) | 中小企業 | 中小企業以外 | | --- | --- | --- | | 経費助成率(正規雇用労働者等) | 45% | 30% | | 同・賃金要件等を満たす場合 | 60% | 45% | | 経費助成率(有期契約労働者等) | 70% | 原文に区分の表記なし | | 同・賃金要件等を満たす場合 | 85% | 原文に区分の表記なし | | 賃金助成額(1人1時間あたり) | 800円 | 400円 | | 同・賃金要件等を満たす場合 | 1,000円 | 500円 | 限度額は2種類あり、こちらも性格が違います。1つは1労働者1訓練あたりの経費助成限度額です。もう1つは**1事業所1年度あたり**の支給限度額です。前者は研修1本ごとの天井、後者は年間の総枠にあたります。 | 限度額の種類(令和8年度・人材育成支援コース) | 単位 | 額 | | --- | --- | --- | | 経費助成の限度額(実訓練時間数10時間以上100時間未満) | 1労働者1訓練あたり | 中小企業15万円/中小企業以外10万円 | | 経費助成の限度額(実訓練時間数100時間以上200時間未満) | 1労働者1訓練あたり | 中小企業30万円/中小企業以外20万円 | | 経費助成の限度額(実訓練時間数200時間以上) | 1労働者1訓練あたり | 中小企業50万円/中小企業以外30万円 | | 賃金助成の対象時間数の上限 | 1労働者1訓練あたり | 1,200時間(専門実践教育訓練の指定講座は1,600時間) | | 支給申請の回数 | 1労働者・1年度あたり | 3回まで | | 支給限度額 | 1事業所・1事業主団体等の1年度あたり | 1,000万円 | 中小企業かどうかで額が変わるので、自法人の区分を先に確かめます。判定は主たる事業ごとに、資本金の額か常時雇用する労働者の数のどちらかで行います。資本金を持たない法人はここが単純です。社会福祉法人・医療法人・一般社団法人・学校法人などは、常時雇用する労働者の数だけで判定します。障害福祉サービス事業所は日本標準産業分類でサービス業に区分されます。この区分の基準は、資本金5,000万円以下または常時雇用する労働者100人以下です。 ## 対象になる訓練とならない訓練 対象になるのは職務に直接関係する10時間以上のOFF-JTで、共通のマナー研修や趣味教養は対象外です。 支給要領は、対象とならない訓練等を表1で列挙しています。事業所が研修を選ぶときに関係しそうなものを挙げます。 - 職業・職務に間接的にしか必要でない知識技能(例:普通自動車運転免許の取得講習) - 職業人として共通して必要となるもの(例:接遇・マナー講習) - 趣味教養(例:語学の日常会話、話し方教室) - 通常の事業活動として遂行されるもの(例:コンサルタントによる経営改善指導、社内制度の説明) - 労働者の職業能力開発に直接関連しないもの(例:講演会・見学会・視察旅行) - 職業・職務の知識技能の習得を目的としないもの(例:意識改革研修) - 資格試験・適性検査そのもの このほかに、法令で義務づけられた講習に関する除外もあります。こちらは次章で扱います。 分かれ目になるのは、**職務に直接関係する訓練**かどうかです。新人向けの接遇研修やビジネスマナー研修は、上の2番目に当たります。助成の対象になるのは、職務に関連した専門的な知識・技能を習得させるための訓練です。研修ごとに、支援業務で直接使う内容かどうかを見ることになります。 実訓練時間数の要件も忘れやすい部分です。人材育成訓練のOFF-JTは10時間以上が必要で、半日の単発研修は単独では届きません。 ## 法定研修・資格取得のための研修の扱い サービス管理責任者研修や強度行動障害支援者養成研修を名指しした公式の記述は見当たりません。 支給要領の表1には、法令で義務づけられた講習等に関する除外が置かれています。除外されるのは次の2つです。 - 当該業務を実施するにあたって、事業主に対して講習等の実施が義務づけられているもの(例:労働安全衛生法に基づく特別教育、道路交通法の法定講習) - 訓練等を受けた労働者や資格を持った労働者の設置が事業主に義務づけられており、その労働者に訓練を実施しなければ当該業務を実施できない場合(例:労働安全衛生法の安全管理者選任時研修で、受講予定者以外に有資格者がいない場合) ただし例外が置かれています。労働者にとって資格を取得するための法定講習等である場合は、この除外から外れます。支給要領は例として、介護福祉士試験の受験のための訓練を挙げています。 サビ管研修や強度行動障害支援者養成研修は、**公式の記述は確認できない**状態です。パンフレット・支給要領・Q&Aのいずれにも、名指しの記述は見つかりませんでした。そのため、上の除外規定に当てはめて考える形になります。以下は一次情報の一般的な文言からの整理で、断定できるものではありません。 | 事業所の状況 | 除外規定との関係(一般原則からの整理) | | --- | --- | | サービス管理責任者が1人もおらず、最初の1人を養成する | 受講予定者以外に有資格者がいない状態に近く、除外に当たる可能性がある | | すでに配置基準を満たしていて、複数配置や欠員対策で追加育成する | その労働者に訓練しなければ業務を実施できない状態ではなく、対象になりうる余地がある | どちらに当たるかは、労働局への個別の確認なしには決められません。計画届を出す前に、研修名と事業所の配置状況を示して相談する順番になります。 関連する記事を挙げます。 - [サービス管理責任者研修](/column/sabikan-kenshu/) 研修の区分と受講までの流れ ## eラーニング・通信制の扱い eラーニングと通信制による訓練等は経費助成だけが対象で、**賃金助成の対象外**です。 パンフレットは、eラーニング・通信制による訓練等について経費助成のみと注記しています。受講した時間分の賃金助成は付きません。時間数の数え方も集合研修とは違います。標準学習時間10時間以上、または標準学習期間1か月以上であることが必要です。 | 訓練の形態(令和8年度・人材育成訓練) | 経費助成 | 賃金助成 | | --- | --- | --- | | 集合研修などのOFF-JT | 対象(実訓練時間数10時間以上) | 対象(1人1時間あたりの定額) | | eラーニング・通信制 | 対象 | 対象外 | 職員を勤務時間中に外部研修へ出すと、経費助成と賃金助成の両方が視野に入ります。同じ内容をeラーニングに置き換えると、受けられるのは経費助成だけになります。移動と代替職員の手配が要らない代わりに、賃金助成の分だけ戻る額は小さくなります。 ## 計画届の提出期限と手続の順番 計画届は、訓練開始日の6か月前から1か月前までに労働局へ提出する必要があります。 この期限は人材育成支援コースと事業展開等リスキリング支援コースに共通です。**1か月前を過ぎると出せない**ため、研修を先に受けてから申請することはできません。公募回や締切日の設定はなく、受付は通年です。期限は事業所ごとに、訓練開始日から逆算して決まります。 | 順番 | やること | 期限(令和8年度) | | --- | --- | --- | | 1 | 職業能力開発推進者の選任、事業内職業能力開発計画の策定と周知 | 計画届の提出までに(有期実習型訓練を除く) | | 2 | 職業訓練実施計画届を労働局へ提出 | 訓練開始日の6か月前から1か月前まで | | 3 | 訓練の実施 | 実訓練時間数10時間以上 | | 4 | 支給申請書を労働局へ提出 | 訓練終了日の翌日から2か月以内(厳守) | 現行のパンフレットと支給要領は令和8年8月3日の改正版です。この内容は、同日以降に提出された職業訓練実施計画届に基づく訓練が対象になります。それより前に提出した計画には、旧版の要件や助成率が適用される場合があります。 年間の研修計画は、受けたい研修を先に並べるより、計画届の期限から逆算して組むことになります。 まず、翌年度に職員を出したい外部研修を書き出し、それぞれの開始日を確認します。開始日の1か月前が、計画届の提出の締切になります。 次に、職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画の策定を済ませます。これは計画届より前に必要な手続です。最初の研修の2か月前には終わらせておく順番になります。 そのうえで、勤務時間中に出す研修とeラーニングに振り分けます。賃金助成が付くのは前者だけです。代替職員を立てられる時期に、勤務時間中の研修を寄せる形になります。 支給申請は訓練終了日の翌日から2か月以内です。年度末に研修が集中すると、申請の締切も同じ時期に重なります。 申請書の作成や提出代行、事務代理を報酬を得て業として行えるのは、**社会保険労務士のみ**です(社会保険労務士法第2条第1項・第27条)。人材開発支援助成金が雇用保険二事業の助成金にあたるためです。事業所が自分で手続をするか、社会保険労務士に依頼するかの二択になります。 関連する記事を挙げます。 - [B型事業所の職員の悩み](/column/b-gata-shokuin-nayami/) 研修と定着をめぐる現場の課題 ### よくある質問 Q. サービス管理責任者研修に人材開発支援助成金は使えますか? A. 公式の記述がなく、事業所の配置状況で分かれます。支給要領は、資格を持つ労働者の設置が義務づけられていて、その労働者に訓練しなければ業務を実施できない場合を対象外としています。サービス管理責任者が1人もいない事業所が最初の1人を養成する場合は、これに当たる可能性があります。すでに配置基準を満たしていて追加で育成する場合は、対象になりうる余地があります。いずれも一般原則からの整理なので、労働局への個別確認が必要です。 Q. B型の利用者の訓練にも使えますか? A. いいえ、B型の利用者は対象になりません。対象労働者は雇用保険被保険者であることが要件です。B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばず、工賃を受け取る利用契約です。この2つを合わせると要件を満たせないことになります。厚生労働省がB型を名指しして対象外と書いた資料は、今回の確認では見つかっていません。 Q. A型の利用者は対象になりますか? A. いいえ、厚生労働省のQ&Aに対象外と明記されています。令和6年11月版のQ29は、A型に雇用される労働者を利用者と支援を行う者の2種類に分けています。利用者は一般就労への移行に向けた訓練を受けることが前提とされるため対象外、としています。対象外の理由は雇用契約の有無ではありません。 Q. eラーニングの研修でも助成されますか? A. 経費助成だけ受けられ、賃金助成は付きません。eラーニング・通信制による訓練等は経費助成のみが対象です。時間の要件も集合研修とは異なり、標準学習時間10時間以上、または標準学習期間1か月以上が必要です。 Q. 計画届を出し忘れた研修を後から申請できますか? A. いいえ、訓練開始日の1か月前を過ぎると出せません。計画届の提出期間は訓練開始日の6か月前から1か月前までです。この期間を過ぎた提出は認められないため、研修を先に実施してから助成を申請することはできません。年間の研修計画を立てる段階で、提出時期まで決めておく必要があります。 Q. 1年度にいくらまで受けられますか? A. 1事業所・1年度あたり1,000万円が上限です。人材育成支援コースの助成額を合計した限度額です。これとは別に、1労働者1訓練あたりの経費助成限度額が、実訓練時間数に応じて中小企業で15万円から50万円と定められています。支給申請の回数は1労働者・1年度あたり3回までです。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内(詳細版)令和8年度版」 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731967.pdf(p.2〜5の手続と対象、p.14の中小企業判定、p.15〜16の助成率・助成額と限度額を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)支給要領」 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731969.pdf(06015の表1(対象とならない訓練等)を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「人材開発支援助成金事業主様向けQ&A(人材育成支援コース)令和6年11月版」 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001330281.pdf(Q29・A29(就労継続支援A型事業所の利用者と支援を行う者の扱い)を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)令和8年度版」 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731978.pdf(p.1で令和4年度から令和8年度末までの期間限定であることを確認・2026年8月23日確認) - e-Gov法令検索(デジタル庁)「社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)」(第2条第1項・第27条・別表第一を確認(法令ID 343AC1000000089)・2026年8月23日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.23 初回公開 --- ## 人材確保等支援助成金は 障害福祉事業所で使えるか 雇用管理制度と離職率の目標 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/jinzai-kakuho-shien-joseikin-fukushi/ カテゴリー: 補助金・助成金 公開: 2026-08-23 / 更新: 2026-08-23 制度基準日: 2026.08.23 ### 結論 令和8年度に申請できるのは、人材確保等支援助成金のうち雇用管理制度・雇用環境整備助成コースです。助成の対象は、雇用管理制度5種類と業務負担軽減機器等の導入です。雇用管理制度は賃金規定制度・諸手当等制度・人事評価制度・職場活性化制度・健康づくり制度の5つです。額は導入した制度1つにつき20万円から80万円で、賃金要件を満たすと25万円から100万円になります。業務負担軽減機器等は対象経費の2分の1、上限150万円です。複数を組み合わせた場合の最大額は325万円で、最上位の賃金要件を満たしたときの値です。 支給は1回だけです。計画の認定を受けて制度を導入し、離職率の目標を達成していれば一括で支給されます。目標は事業所の雇用保険一般被保険者が9人以下なら現状維持、10人以上なら1ポイント低下です。計画届は計画開始日からさかのぼって6か月前の日から1か月前の日までに提出します。B型の利用者は雇用契約を結ばないため対象労働者に当たらず、離職率の計算にも入りません。介護福祉機器助成コースは令和6年3月31日で廃止され、令和8年度には申請できません。 - 令和8年度に申請できるコース: 雇用管理制度・雇用環境整備助成コース。窓口は本社所在地を管轄する都道府県労働局で、通年の随時受付(公募回はない) - 助成額(導入した制度1つにつき・令和8年度): 賃金規定制度40万円・諸手当等制度40万円・人事評価制度80万円・職場活性化制度20万円・健康づくり制度20万円。賃金要件を満たすと順に50万円・50万円・100万円・25万円・25万円 - 業務負担軽減機器等の助成: 対象経費の2分の1で上限150万円(賃金要件を満たすと上限187.5万円または225万円)。導入費用が1件10万円以上(消費税込)の機器が対象 - 組み合わせたときの最大額: 賃金要件の加算なしで230万円、7%以上の賃上げで325万円。いずれも複数メニューを組み合わせた場合の最大値で、単体メニューの上限ではない - 離職率の低下目標: 事業所の雇用保険一般被保険者が9人以下は現状維持、10人以上は1ポイント低下。あわせて評価時離職率30%以下が必要 - 計画届の提出期限: 計画開始日からさかのぼって6か月前の日から1か月前の日まで。支給申請は評価時離職率算定期間の末日の翌日から2か月以内 - B型・A型の利用者の扱い: B型の利用者は対象労働者にならず離職率の分母・分子に入らない。A型の利用者は雇用保険の被保険者であれば入る - 廃止済みのコース: 介護福祉機器助成コースは令和6年3月31日廃止。人事評価改善等助成コースは令和7年3月31日廃止で、令和7年4月1日に現行コースへ統合 根拠: 厚生労働省「人材確保等支援助成金のご案内 雇用管理制度・雇用環境整備助成コース(令和8年4月8日時点版)」 ### 本文 ## 人材確保等支援助成金のコース構成 令和8年度に障害福祉事業所が使えるのは、雇用管理制度・雇用環境整備助成コースです。 人材確保等支援助成金は、コースが多く、廃止と統合を繰り返してきた助成金です。検索で見つかるコース名が、**今は存在しないことがあります**。まず令和8年度の状況を整理します。 | コース | 令和8年度の状況 | | --- | --- | | 雇用管理制度・雇用環境整備助成コース | 受付中。この記事で扱う | | 人事評価改善等助成コース | 令和7年3月31日で廃止。令和7年4月1日に上のコースへ統合 | | 介護福祉機器助成コース | 令和6年3月31日で廃止 | | そのほかのコース | 中小企業団体助成コース、外国人労働者就労環境整備助成コース、テレワークコース、建設分野の各コースが存在する。この記事では扱わない | 雇用管理制度・雇用環境整備助成コースは、新しく雇用管理制度または業務負担軽減機器等を導入する事業主向けの制度です。導入したものを運用し、従業員の離職率が下がっていれば、取り組みに応じた額が支給されます。申請窓口は、本社所在地を管轄する都道府県労働局です。 介護向けの解説が多い助成金ですが、対象事業主は雇用保険の適用事業の事業主で、業種による限定はありません。障害福祉サービス事業所を除く記載も、対象として名指しする記載もパンフレットにはありません。 ## 導入できる制度と助成額 導入できるのは雇用管理制度5種類と業務負担軽減機器等で、額は制度ごとに決まっています。 | 導入するもの(令和8年度) | 基本額 | 賃金要件を満たした場合 | | --- | --- | --- | | 賃金規定制度(賃金規定・賃金表の整備) | 40万円 | 50万円 | | 諸手当等制度(諸手当・退職金・賞与のいずれかの導入) | 40万円 | 50万円 | | 人事評価制度(生産性向上に資する制度の導入) | 80万円 | 100万円 | | 職場活性化制度(メンター制度・従業員調査・1on1のいずれか) | 20万円 | 25万円 | | 健康づくり制度(人間ドックの導入) | 20万円 | 25万円 | | 業務負担軽減機器等(雇用環境整備) | 対象経費の2分の1・上限150万円 | 上限187.5万円または225万円 | 表の額は、導入した制度1つにつきの額です。5種類を併用すれば、それぞれの額が加算されます。ただし1事業所あたりなのか1事業主あたりなのかは、パンフレットの記載からは読み取れませんでした。 組み合わせたときの最大額は、賃金要件の加算なしで230万円です。7%以上の賃上げという最上位の賃金要件を満たした場合は325万円になります。325万円は組み合わせたときの最大値で、**単体メニューの上限ではありません**。 賃金要件は、計画期間中に対象労働者の賃金を引き上げた場合の加算です。5%以上の増加で25%が加算されます。3%以上5%未満の増加でも、パンフレットが定める別の要件をあわせて満たせば25%が加算されます。業務負担軽減機器等を導入し、かつ7%以上引き上げた場合は50%の加算です。判定は、賃上げの前後3か月分の賃金合計額を比べて行います。 5種類の雇用管理制度のうち、**中小企業事業主に限られるのは賃金規定制度**だけです。残る4種類と業務負担軽減機器等には、企業規模や法人格による制限の記載がありません。中小企業事業主の範囲は、サービス業なら資本金5,000万円以下または常時雇用労働者100人以下です。その他の業種なら資本金3億円以下または常時雇用労働者300人以下です。障害福祉サービス事業がどちらの区分に当たるかは、一次資料で確認できませんでした。資本金の概念がない社会福祉法人・NPO法人の判定方法も、一次資料では確認できていません。賃金規定制度を狙うなら、労働局に区分を確かめてから計画を立てることになります。 業務負担軽減機器等は、対象労働者が直接行っていた作業の負担を軽くする機器・設備です。導入費用が1件10万円以上(消費税込)であることが必要です。対象外になるものが決まっています。 - パソコン・タブレット・スマートフォン等の汎用機器 - 通常の事業活動を維持するための汎用事務機器 - 空調・照明など快適化を目的とした設備 - テレワーク用の通信機器等 - 法令上当然に整備すべき設備 代表者・親族・関連会社など、事業主と密接な関係にある相手からの購入も対象外です。パンフレットの産業別の例示には「医療、福祉」の区分があります。そこには、車いす昇降リフトによる介助作業の負担軽減と、介護ソフトによる介護記録作業の負担軽減が挙げられています。これは例示であって、障害福祉サービス事業所を名指しした記載ではありません。個々の機器が要件を満たすかは、上の対象外の条件に照らした個別の判断になります。 ## 離職率の目標と、その数え方 目標は雇用保険一般被保険者が9人以下なら現状維持、10人以上なら1ポイント低下です。 離職率は、事業所の雇用保険一般被保険者を数えて計算します。低下させる幅の目標は、**事業所の被保険者の人数で変わります**。 | 事業所の雇用保険一般被保険者数(令和8年度) | 離職率の低下目標 | | --- | --- | | 9人以下 | 現状維持 | | 10人以上 | 1ポイント低下 | これに加えて、評価時離職率が30%以下であることが支給の要件です。離職率は2回測ります。計画を提出する前の期間で計画時離職率を測り、計画期間の終了後12か月間で評価時離職率を測ります。この12か月間を評価時離職率算定期間と呼びます。 離職率の目標とは別に、離職者に関する要件もあります。数える期間は、計画期間の初日の前日から起算して6か月前の日から、支給申請書の提出日までです。この間に倒産・解雇等で離職した人を数えます。離職票の離職区分コード1Aまたは3Aに当たる人が対象です。その人数が計画提出日の被保険者数の6%を超えていると、助成金は支給されません。ただし、特定受給資格者となる離職理由の被保険者が3人以下の場合は除かれます。 離職率の目標は、自分で選ぶ数字ではありません。事業所の雇用保険一般被保険者の人数で決まります。順番としては、人数を数えるところから始めることになります。 被保険者が9人以下なら目標は現状維持です。10人以上になると1ポイントの低下が求められます。10人前後の事業所では、パート職員の加入状況で区分が動きます。 B型の事業所では、利用者はこの人数に入りません。数える相手は支援員・サービス管理責任者・管理者などの職員です。利用者の人数ではなく職員の人数で区分が決まる点を、先に押さえておくことになります。 もう1つ決めるのが、計画期間をいつに置くかです。評価時離職率を測るのは、計画期間が終わったあとの12か月間です。定年や産休・育休の予定が集中する時期がそこに重なると、見通しが立てにくくなります。計画開始日を決める前に、その1年間の在籍予定を並べておく順番になります。 関連する記事を挙げます。 - [サービス管理責任者の定着](/column/sabikan-teichaku/) 離職率そのものを下げる取り組み ## 計画の認定から一括支給までの流れ 支給は1回だけで、計画の認定から離職率の判定までを終えたあとに一括で支払われます。 手続は5つの段階に分かれます。 - 雇用管理制度等整備計画を作成し、都道府県労働局へ提出する - 認定を受け、計画期間内に制度または機器を導入する - 導入したものを計画どおり実施・運用する - 評価時離職率算定期間の終了後2か月以内に支給申請する - 離職率の目標を達成していれば助成金が支給される この助成金は**2段階払いではありません**。制度導入助成と目標達成助成に分けて支払われるのは、統合前の旧コースの仕組みです。現行のコースでは、離職率の判定が終わるまで入金はありません。 | 手続(パンフレットの設例) | 時期 | | --- | --- | | 計画時離職率算定期間 | 2025年6月1日〜2026年5月31日 | | 認定申請 | 2026年6月10日 | | 計画期間 | 2026年8月1日〜2027年7月31日 | | 評価時離職率算定期間 | 2027年8月1日〜2028年7月31日 | | 支給申請期間 | 2028年8月1日〜2028年9月30日 | この設例では、認定申請から支給申請の受付開始まで2年以上あります。資金繰りの計画では、入金の時期をこの位置に置くことになります。 支給までの間に満たしておく主な要件を挙げます。 - 計画開始日までに対象事業所ごとに雇用管理責任者を選任し、労働者に周知すること - 対象労働者の2分の1以上に、導入した制度・機器を実施または利用させること - 雇用管理制度を労働協約または就業規則に明文化すること - 導入した制度・機器を評価時離職率算定期間の末日まで運用・使用すること - 計画開始日前6か月から計画期間の末日まで、被保険者を事業主都合で解雇等していないこと 常時10人未満の労働者を使用する事業主は、就業規則を従業員全員に書面で周知した日が導入日になります。常時10人以上を使用する事業主は、就業規則を労働基準監督署に届け出る必要があります。計画の提出前に費用の一部でも支払っていると、**新たな導入とは認められません**。過去に導入していた同様の制度・機器の再導入も、新たな導入には当たりません。 なお、助成金の申請書の作成、提出代行、事務代理を報酬を得て業として行えるのは社会保険労務士だけです。この助成金が雇用保険二事業の助成金にあたるためです。 ## B型の利用者は離職率の計算に入らない 就労継続支援B型の利用者は対象労働者に当たらず、離職率の分母にも分子にも入りません。 これは2つの事実を組み合わせた結論です。1つ目は、このコースの対象労働者の要件です。対象労働者は、次の3つをすべて満たす人です。 - 期間の定めなく雇用されている、または反復更新で事実上これと同等であること - 事業主に直接雇用されていること - 雇用保険の被保険者であること(短期雇用特例被保険者・日雇労働被保険者を除く) 2つ目は、B型が利用者と雇用契約を結ばないという制度上の性格です。B型の利用者は利用契約に基づいて通所し、工賃を受け取ります。この2つを合わせると、B型の利用者は2番目と3番目の要件を満たさないことになります。対象労働者に含まれないため、離職率の分母にも分子にも入りません。9人以下か10人以上かを分ける人数にも算入されません。 パンフレットに、B型の利用者を名指しして除外した記述はありません。**要件の組み合わせから導かれる結論**であって、一次情報に書かれた除外ではありません。 A型の利用者の扱いは違います。A型は雇用契約に基づく就労なので、直接雇用の要件を通常は満たします。週の所定労働時間が20時間以上で雇用保険の被保険者になっていれば、対象労働者に含まれます。20時間未満で被保険者になっていない場合は含まれません。これも雇用保険法の一般原則と合わせた帰結で、パンフレットにA型の利用者を名指しした記述はありません。 支援員・サービス管理責任者・管理者などの職員は、通常の雇用契約なので対象労働者に当たります。制度を導入する相手も、離職率を数える相手も、この職員です。 | 立場 | 対象労働者になるか(令和8年度) | 離職率の計算 | 根拠の強さ | | --- | --- | --- | --- | | B型の利用者 | ならない | 分母・分子とも入らない | 要件の組み合わせによる帰結 | | A型の利用者 | 雇用保険の被保険者であればなる | 被保険者であれば入る | 要件の組み合わせによる帰結 | | 事業所の職員 | 通常なる | 入る | パンフレットの対象労働者要件をそのまま当てはめた判定 | 関連する記事を挙げます。 - [B型事業所の職員採用](/column/b-gata-shienin-saiyou/) 支援員を採用するときの実務 ## 介護福祉機器助成コースは廃止されている 介護福祉機器助成コースは令和6年3月31日で廃止され、**令和8年度には存在しません**。 厚生労働省の当該コースの案内ページは、廃止の告知に置き換わっています。掲載されているパンフレットも令和5年4月1日版のままです。令和8年度のパンフレットや支給要領はありません。 機器の導入に助成を受けたい場合、令和8年度の受け皿は雇用管理制度・雇用環境整備助成コースの業務負担軽減機器等です。対象になる機器の条件は、導入できる制度と助成額の章に書いたとおりです。 人事評価改善等助成コースも今はありません。令和7年3月31日で廃止され、令和7年4月1日に雇用管理制度・雇用環境整備助成コースへ統合されました。現行コースの5種類の中に、人事評価制度が含まれています。 廃止されたコースを過去に受給していると、現行コースの受給に影響します。重複受給の制限があり、最後の支給決定日の翌日から3年間が経過していることが必要です。制限の対象には、次の受給が含まれます。 - 雇用管理制度助成コース(目標達成助成) - 人事評価改善等助成コース - 雇用管理制度・雇用環境整備助成コース - 人事評価改善等助成金 - 介護福祉機器助成コース - 設備改善等助成コース - 建設労働者確保育成助成金の雇用管理制度助成コース 3年間の経過が必要になるのは、同じ雇用管理制度等区分を含む場合に限られます。 ## 手続の期限 計画届は、計画開始日からさかのぼって6か月前の日から1か月前の日までに提出します。 このコースは通年の随時受付で、公募回はありません。期限が効くのは公募の締切ではなく、計画開始日との関係です。計画開始日は、最初に雇用管理制度または業務負担軽減機器等を導入する月の初日です。**導入してから計画を出すことはできません**。 | 手続(令和8年度) | 期限 | | --- | --- | | 雇用管理制度等整備計画の提出 | 計画開始日からさかのぼって6か月前の日から1か月前の日まで | | 計画期間 | 3か月以上1年以内 | | 支給申請 | 評価時離職率算定期間の末日の翌日から2か月以内 | 計画期間の上限が1年3か月になる例外が1つあります。人事評価制度を導入し、賃金の支払日が導入日から1年を超える場合です。 計画は複数を同時に提出できません。提出している計画の支給または不支給が決まるまで、次の計画は出せません。導入したい制度が複数あるなら、1つの計画にまとめて組み込むかどうかを先に決めることになります。 令和8年度のパンフレットには、年度中の制度変更の予定や経過措置の記載はありません。ただし現行コース自体が、令和7年4月の統合でできたものです。雇用関係助成金は統廃合が続く可能性があるため、申請の前に最新版のパンフレットを確認します。 ### よくある質問 Q. 人材確保等支援助成金は障害福祉事業所でも使えますか? A. 使えます。雇用管理制度・雇用環境整備助成コースの対象事業主は雇用保険の適用事業の事業主で、業種による限定はありません。介護向けの解説が多い助成金ですが、障害福祉サービス事業所を除く記載はパンフレットにありません。ただし5種類の雇用管理制度のうち賃金規定制度だけは、中小企業事業主であることが要件です。 Q. 介護福祉機器助成コースは今も申請できますか? A. いいえ、令和6年3月31日で廃止されています。厚生労働省の案内ページも廃止の告知に置き換わっており、令和8年度のパンフレットや支給要領はありません。機器の導入に助成を受けたい場合は、雇用管理制度・雇用環境整備助成コースの業務負担軽減機器等が令和8年度の受け皿です。 Q. 就労継続支援B型の利用者は離職率の計算に入りますか? A. 入りません。対象労働者が雇用保険の被保険者に限られるためです。B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばず工賃を受け取る立場なので、直接雇用と被保険者の要件を満たしません。離職率の分母にも分子にも入らず、9人以下か10人以上かを分ける人数にも算入されません。 Q. 助成額はいくらですか? A. 導入した制度1つにつき20万円から80万円です。賃金要件を満たすと25万円から100万円になります。業務負担軽減機器等は対象経費の2分の1で上限150万円、賃金要件を満たすと上限187.5万円または225万円です。組み合わせたときの最大額は325万円で、これは最上位の賃金要件を満たした場合の値です。 Q. 計画届はいつまでに出しますか? A. 計画開始日の1か月前の日までです。さかのぼれるのは6か月前の日までで、提出できる期間はこの間に限られます。計画開始日は、最初に雇用管理制度または業務負担軽減機器等を導入する月の初日です。制度を導入してから計画を出すことはできません。 Q. 制度を導入した時点で助成金は受け取れますか? A. いいえ、支給は離職率の判定が終わったあとの1回だけです。計画期間の終了後に12か月の評価時離職率算定期間があり、その末日の翌日から2か月以内に支給申請します。制度導入時と目標達成時に分けて支払われるのは、統合前の旧コースの仕組みです。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「人材確保等支援助成金のご案内 雇用管理制度・雇用環境整備助成コース(令和8年4月8日時点版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001688568.pdf(p.1〜3(制度概要と助成額)・p.6〜9(対象事業主と対象労働者)・p.12(中小企業事業主要件と新たな導入)・p.17〜22(業務負担軽減機器等と賃金要件、計画の提出期限)を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)案内ページ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000199292_00006.html(冒頭の「令和6年3月31日で廃止しました」の告知文を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省 埼玉労働局「人材確保等支援助成金 案内ページ」 https://jsite.mhlw.go.jp/saitama-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/kakushu_joseikin/jinzai-kakuho.html(介護福祉機器助成コースの廃止(令和6年3月31日)と人事評価改善等助成コースの廃止・統合(令和7年3月31日/4月1日)を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)案内ページ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000199292_00005.html(「過去の重要なお知らせ」欄に令和8年度中の制度変更予定・経過措置の記載がないことを確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版・令和8年4月8日時点版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000758206.pdf(p.2「中小企業事業主等の範囲」の表を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「事業主の方のための雇用関係助成金(各コースの案内ページ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index.html(人材確保等支援助成金の各コース名の存在を確認(名称一覧のみ)・2026年8月23日確認) - e-Gov法令検索(デジタル庁)「社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)」(第2条第1項・第27条・別表第一を確認(法令ID 343AC1000000089)・2026年8月23日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.23 初回公開 --- ## 小規模事業者持続化補助金は B型で使えるか 法人格の壁と経費の壁が二重にある URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/jizokuka-hojokin-b-gata/ カテゴリー: 補助金・助成金 公開: 2026-08-23 / 更新: 2026-08-23 制度基準日: 2026.08.23 ### 結論 小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>の第20回公募要領(第8版)には、「補助対象にならない者」の一覧があります。社会福祉法人・医療法人・一般社団法人・一般財団法人はここに挙がっています。社会福祉法人立のB型事業所は、この時点で対象外です。株式会社・合同会社立であれば、法人格の要件はクリアできます。NPO法人は、法人税法上の収益事業を行い確定申告書を提出できること、認定NPO法人でないことの両方を満たす場合に限り対象になります。 法人格の要件をクリアしても、もう一段の壁があります。公募要領は補助対象外経費の例として、「就労継続支援A型事業所・B型事業所など障害福祉サービス事業と重複する経費」を名指ししています。利用者募集の広報費がこれに当たるかどうかは、公募要領にも参考資料にも例示がありません。第20回の申請受付締切は2026年12月15日17時です。事業支援計画書(様式4)の発行受付締切は2026年12月4日で、申請受付締切より前に来ます。 - 第一の壁(法人格): 社会福祉法人・医療法人・一般社団法人・一般財団法人・公益社団法人・公益財団法人は「補助対象にならない者」に明記。株式会社・合同会社等の営利法人は対象になりうる(第20回公募要領) - 第二の壁(経費): 「就労継続支援A型事業所・B型事業所など障害福祉サービス事業と重複する経費」が補助対象外経費として名指し。法人格の可否とは別に適用される - 補助上限額(第20回): 1事業者あたり50万円。インボイス特例で+50万円、賃金引上げ特例で+150万円、両方を満たすと+200万円で最大250万円 - 補助率(第20回): 2/3。賃金引上げ特例のうち直近1期または直近1年間の課税所得が0以下の事業者は3/4 - 広報費・ウェブサイト関連費の上限: それぞれ補助金交付申請額の上限30万円(税込)。どちらもその区分だけでの申請はできない - 第20回の締切: 申請受付締切は2026年12月15日17時。事業支援計画書(様式4)の発行受付締切は2026年12月4日で、締切後の発行依頼は不可 根拠: 小規模事業者持続化補助金事務局「小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領(第8版)」 ### 本文 ## 壁は二段階ある B型で持続化補助金を検討するときは、法人格の壁と経費の壁を別々に越える必要があります。 制度の正式名称は小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>です。実施主体は中小企業庁です。同じ持続化補助金の中に<創業型>や<共同・協業型>なども並んでいますが、この記事は<一般型 通常枠>だけを扱います。 壁は公募要領の別々の章に立っています。1つ目は補助対象者の章で、法人格によって申請そのものができない事業者が決まります。2つ目は補助対象外経費の章で、障害福祉サービス事業と重複する経費が名指しされています。 | 壁 | 第20回公募要領の該当箇所 | 何が決まるか | | --- | --- | --- | | 第一の壁:法人格 | 2.補助対象者の範囲(P.4〜5) | 申請できる法人格かどうか | | 第二の壁:経費 | 7.(4)補助対象外となる経費(P.18〜19) | 計上できる経費かどうか | 順番が大事です。法人格の壁で止まれば、経費の議論に進む必要はありません。 ## 第一の壁は法人格 社会福祉法人・医療法人・一般社団法人は、公募要領の「補助対象にならない者」に名指しされています。 補助対象者の範囲には、対象になりうる者と対象にならない者が並べて書かれています。社会福祉法人は後者にあります。条件を満たせば対象になるという扱いではなく、**一律の除外**です。 | 法人格 | 第20回公募要領での扱い | | --- | --- | | 株式会社・合同会社等の営利法人 | 補助対象となりうる者に明記 | | 特定非営利活動法人(NPO法人) | 2つの条件を両方満たす場合に限り対象 | | 社会福祉法人 | 補助対象にならない者に明記 | | 医療法人 | 補助対象にならない者に明記(医師個人は対象になりうる) | | 一般社団法人・公益社団法人 | 補助対象にならない者に明記 | | 一般財団法人・公益財団法人 | 補助対象にならない者に明記 | | 協同組合等の組合 | 補助対象にならない者に明記(企業組合・協業組合を除く) | NPO法人の2つの条件は次のとおりです。法人税法上の収益事業を行い、確定申告書を提出できること。認定特定非営利活動法人でないこと。この場合の従業員数の区分は「その他(製造業その他、20人以下)」を使います。 法人格の要件を満たしたら、次は小規模事業者かどうかを見ます。判定は常時使用する従業員の数で行い、区分は業種で分かれます。サービス業は常時使用する従業員5人以下です。この「常時使用する従業員」は、解雇の予告が必要な労働者を基準にした定義です(労働基準法第20条)。役員・同居の親族従業員・日雇労働者・試用期間中の者などは含まれません。 この定義を、B型の利用者・A型の利用者・職員の3者に当てはめると次のようになります。公募要領はA型・B型の利用者を**名指ししていません**。表の判定は、定義と雇用契約の有無を組み合わせた帰結です。 | 立場(2026年・第20回) | 雇用契約 | 「常時使用する従業員」に入るか | | --- | --- | --- | | B型の利用者 | 結ばない(工賃を受け取る利用契約) | 入らないと考えられる(帰結) | | A型の利用者 | 結ぶ(雇用契約に基づく労働者) | 常勤であれば入りうる(帰結) | | 事業所の職員(支援員・サビ管等) | 結ぶ(通常の雇用契約) | 入る。役員・同居の親族従業員は除く | B型の利用者が20人いても、職員の数だけで小規模事業者に当たる場合があります。ただし判定の材料は職員の雇用形態なので、契約期間や労働時間によって結論は変わります。 ## 第二の壁は経費 公募要領は、就労継続支援A型事業所・B型事業所など障害福祉サービス事業と重複する経費を対象外に挙げています。 この一文は補助対象外となる経費の章にあります。位置づけは「国が助成する他の制度を利用している事業と重複する経費」の具体例です。同じ欄には、デイサービス・介護タクシーなど介護報酬が適用されるサービスが並びます。薬局・整骨院など保険適用診療にかかる経費も並んでいます。国の給付で賄われている部分に補助金を重ねない、という考え方です。 この壁は**法人格と無関係に立ちます**。株式会社立のB型が補助対象者の要件をすべて満たしても、経費のこの除外は別に適用されます。 ただし線引きは**公表されていません**。公募要領44ページのうち、就労継続支援という語が出てくるのはこの1か所だけです。訓練等給付費で賄われる範囲だけを指すのか、利用者募集の広報のような周辺の経費まで含むのかを説明した記述はありません。第20回の参考資料とよくあるご質問は、2026年8月23日時点で事務局サイト上「準備中」と表示されています。 したがって、利用者募集の広報費が使えるとも使えないとも断定できません。この記事でも断定しません。 ## 上限額と補助率 補助上限は1事業者あたり50万円で、2つの特例を両方満たすと最大250万円になります。 | 区分(令和8年度・第20回) | 補助上限額(1事業者あたり) | 補助率 | | --- | --- | --- | | 基本 | 50万円 | 2/3 | | インボイス特例を満たす | 100万円(50万円+50万円) | 2/3 | | 賃金引上げ特例を満たす | 200万円(50万円+150万円) | 2/3。課税所得が0以下なら3/4 | | 両方を満たす | 250万円(50万円+200万円) | 2/3。課税所得が0以下なら3/4 | 補助率が3/4になるのは、賃金引上げ特例のうち業績が赤字の事業者です。赤字の判定は、直近1期または直近1年間の課税所得金額が0以下かどうかで行います。 特例には強い条件が付いています。補助事業終了時点で要件を満たさない場合、上乗せ分だけでなく**補助金全体が交付されません**。上限を上げる目的だけで特例に手を出す形は取れません。 賃金引上げ特例の要件は、従業員1人あたりの給与支給総額を年平均3.0%以上増やすことです。比較するのは、連続する12か月と前年同月の12か月です。期間は2027年4月1日から補助事業実施期限日(2028年3月31日)までの中に置きます。給与支給総額には給料・賃金・残業代・賞与が入ります。福利厚生費・法定福利費・退職金は入りません。代表者・役員・専従者は数に入れず、パートタイム従業員は正社員の就業時間に換算します。 インボイス特例は、補助事業終了時点で適格請求書発行事業者の登録を受けていることが前提です。そのうえで、次のどちらかに当たる必要があります。 - 2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間に、一度でも免税事業者だったこと - 2023年10月1日以降に創業した事業者であること ## 対象になる経費とならない経費 補助対象経費は8区分に限られ、広報費とウェブサイト関連費にはそれぞれ30万円の上限があります。 8区分は次のとおりです。これ以外の経費は対象になりません。 - 機械装置等費 - 広報費 - ウェブサイト関連費 - 展示会等出展費(オンライン含む) - 旅費 - 新商品開発費 - 借料 - 委託・外注費 B型の販路開拓で使いやすい区分には、それぞれ条件が付いています。 | 経費区分 | 第20回公募要領で置かれている条件 | | --- | --- | | 広報費 | 補助金交付申請額の上限は30万円(税込)。この区分だけでの申請はできない | | ウェブサイト関連費 | 補助金交付申請額の上限は30万円(税込)。この区分だけでの申請はできない。50万円(税抜)以上で作成・更新する場合は原則5年間の処分制限 | | 機械装置等費 | 単価50万円(税抜)以上は処分制限財産。発注総額が1件あたり50万円(税込)超なら2者以上の見積が必要 | | 委託・外注費 | 50万円(税抜)以上の外注工事等は処分制限財産 | 対象外になる経費は3つの型で整理されています。 - 国が助成する他の制度を利用している事業と重複する経費(障害福祉サービス事業と重複する経費はここに入る) - 通常の事業活動に係る経費(仕入、老朽化した既存機械の取替え等) - 販売や有償レンタルを目的とした製品・商品等の生産・調達に係る経費 加えて、交付決定より前の発注・契約・購入・支払いは、いかなる理由があっても補助対象外です。前払いも含みます。例外は展示会等出展の申込みだけで、申込みは交付決定前でも認められます。 広報費では求人広告も対象外に挙がっています。単なる会社のPRや営業活動に活用される広報費という扱いで、宣伝文句のない会社案内パンフレットも同じ欄にあります。ここでいう求人広告は、職員の採用広告を指す規定です。利用者募集はサービス利用契約の勧誘なので、性質が異なります。ただし利用者募集が前章の重複除外に当たるかどうかを、この規定から判断することはできません。 ## 第20回の日程と事業支援計画書 第20回の申請受付締切は2026年12月15日17時で、事業支援計画書の発行受付締切はその11日前です。 | 手続き(令和8年度・第20回) | 期日 | | --- | --- | | 公募要領(第8版)の公開 | 2026年7月21日 | | 申請受付開始 | 2026年11月5日 | | 事業支援計画書(様式4)発行の受付締切 | 2026年12月4日 | | 申請受付締切 | 2026年12月15日17時 | | 採択発表予定 | 2027年3月頃 | | 見積書等の提出期限 | 2028年2月29日 | | 補助事業実施期限日 | 2028年3月31日 | 表の期日にはいずれも、予定は変更する場合があるとの注記が付いています。 事業支援計画書は商工会・商工会議所が発行します。**発行締切が申請締切より前**に来ます。締切後の発行依頼は、いかなる理由でもできません。補助対象者の要件を満たしていないと判断される場合も発行されません。法人格の壁に当たる法人は、この段階で止まることになります。 申請は電子申請システムでのみ受け付けます。郵送は一切できません。GビズIDプライムのアカウントが必須で、未取得なら事前登録から始めることになります。支援を頼む相手にIDとパスワードを渡す行為は、利用規約違反として禁止されています。 採択された後にも期限があります。見積書等を2028年2月29日までに提出しないと、採択が取り消されます。補助事業の終了後には、事業効果および賃金引上げ等状況報告書の提出義務もあります。なお第21回の日程は、2026年8月23日時点で公表されていません。 ## それでも残る使いどころ 法人格が営利法人で、補助事業を生産活動の販路開拓に絞るなら、検討する余地は残ります。 この補助金の目的は、小規模事業者が取り組む販路開拓等の経費を補助することです。B型の中核業務は訓練等給付費で運営されています。そこから離れた生産活動側の販路開拓であれば、目的とかみ合う余地があります。 一方で、公募要領には障害福祉サービス事業所を対象とした活用事例も、想定業種としての明記もありません。**公式の例示がないまま**判断する場面が残ります。線引きの読めない経費を計画の中心に置く形は避けることになります。 申請書の作成を外部に頼む場合の扱いも先に確認しておくことになります。持続化補助金は中小企業庁の予算事業で、申請書の作成・提出を代行できる者に資格の制限はありません。ただし事業計画の検討で第三者の支援を受けた場合、相手方と支援金額を様式2に記載する義務があります。着手金・成功報酬も記載の対象で、記載しなければ虚偽報告として不採択・交付決定取消の対象になります。 生産活動の販路開拓で申請するなら、事業計画に書く対象を先に切り分けることになります。 まず、訓練等給付費で賄っている支援そのものと、生産活動で作る製品や受注する仕事を、収支の上で分けて把握します。この補助金の目的は販路開拓なので、計画に書くのは後者の売り先を増やす取組になります。 次に、その取組で買うものを経費区分に当てはめます。製品を作る機械なら機械装置等費、受注先に見せるカタログやサイトなら広報費・ウェブサイト関連費という並びです。ここで利用者を集めるための広報を混ぜると、判断が難しくなります。障害福祉サービス事業と重複する経費に当たるかどうかを、公式の例示がないまま自分で決めることになります。 そのうえで、商工会・商工会議所に事業支援計画書の発行を依頼する順番になります。窓口は補助対象者の要件も見るので、法人格と経費の切り分けを説明できる状態にしてから持ち込むことになります。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか](/column/b-gata-hojokin/) 制度全体の位置づけと収入の仕組み - [B型事業所の仕事の取り方](/column/b-gata-shigoto-no-torikata/) 生産活動の受注先を増やす方法 ### よくある質問 Q. 社会福祉法人立のB型でも申請できますか? A. いいえ、社会福祉法人は対象外です。第20回公募要領の「補助対象にならない者」に社会福祉法人が名指しで挙げられています。医療法人、一般社団法人・一般財団法人、公益社団法人・公益財団法人も同じ欄に並んでいます。条件を満たせば対象になるという扱いではなく、一律の除外です。 Q. 株式会社立のB型なら使えますか? A. 法人格の要件はクリアできますが、経費の壁が残ります。会社および会社に準ずる営利法人は「補助対象となりうる者」に挙げられています。ただし公募要領は、就労継続支援A型事業所・B型事業所など障害福祉サービス事業と重複する経費を補助対象外の例として名指ししています。小規模事業者としての従業員数の要件も別に満たす必要があります。 Q. 利用者募集のチラシは補助対象になりますか? A. 公式の例示がなく、可否を判断できません。公募要領には広報費という区分があり、パンフレットやチラシの作成費が挙げられています。一方で障害福祉サービス事業と重複する経費は対象外です。利用者募集がどちらに当たるかを示す記述は、公募要領にも参考資料にも見当たりません。第20回の参考資料とよくあるご質問は、2026年8月23日時点で事務局サイト上「準備中」と表示されています。 Q. B型の利用者は従業員数に入りますか? A. 入らないと考えられますが、明記はありません。公募要領の「常時使用する従業員」は、解雇の予告が必要な労働者を基準にした定義です。B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばないため、この定義に当たりません。A型の利用者は雇用契約を結ぶので、常勤であれば入りうると考えられます。いずれも公募要領に利用者への言及はなく、定義と雇用契約の有無を組み合わせた帰結です。 Q. 補助上限はいくらですか? A. 1事業者あたり50万円が基本です。インボイス特例で+50万円、賃金引上げ特例で+150万円、両方を満たすと+200万円が上乗せされ、最大250万円になります。補助率は2/3です。ただし補助事業終了時点で特例の要件を満たさない場合、上乗せ分だけでなく補助金全体が交付されません。 Q. 申請前にやっておくことは何ですか? A. GビズIDプライムの取得と、事業支援計画書の発行依頼です。事業支援計画書(様式4)は商工会・商工会議所が発行します。第20回の発行受付締切は2026年12月4日で、申請受付締切の2026年12月15日より前です。締切後の発行依頼はいかなる理由でもできません。交付決定前の発注・契約・購入・支払いも補助対象外です。 ### 根拠資料 - 小規模事業者持続化補助金事務局(商工会地区:株式会社ニューズベース/商工会議所地区:株式会社日本経営データ・センター)「小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領(第8版)」 https://r6.jizokukahojokin.info/doc/r6_koubover8_ip20.pdf(2.補助対象者の範囲(P.4〜5)・6.補助率、補助上限額等(P.7〜11)・7.補助対象経費(P.11〜19)・事業概要(P.3〜4)を確認・2026年8月23日確認) - 小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>事務局(商工会議所地区)「小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>事務局サイト」 https://r6.jizokukahojokin.info/(第20回のスケジュール表示、参考資料・よくあるご質問が「準備中」であることを確認・2026年8月23日確認) - 中小企業庁「小規模事業者持続化補助金について」 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/shokibo/jizoku/(実施主体と各枠の構成を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省(社会・援護局障害保健福祉部)「就労継続支援A型、B型に係る報酬について≪論点等≫(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第9回 資料3)」 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000177374.pdf(p.3・p.21でA型は雇用契約に基づく就労、B型は雇用契約を結ばない就労であることを確認・2026年8月23日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.23 初回公開 --- ## 障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業 補助率3/4、都道府県で変わるのは 締切だけではない URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/kaigo-technology-dounyu-shien-shogai/ カテゴリー: 補助金・助成金 公開: 2026-08-23 / 更新: 2026-08-23 制度基準日: 2026.08.23 ### 結論 障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業は、国の実施要綱にもとづいて都道府県・指定都市・中核市が実施する補助事業です。補助率は全区分共通で3/4、事業者の自己負担は原則1/4です(内訳は国1/2・都道府県1/4)。介護ロボット等の導入の基準額は、1施設・1事業所あたりで決まります。令和8年度は障害者支援施設210万円、共同生活援助事業所150万円、その他の事業所120万円です。就労継続支援B型・A型は「その他の事業所」に入ります。ICTの導入支援は1施設・1事業所あたり100万円、パッケージ型の導入支援は1施設・1事業所あたり1,000万円です。 機器1台あたりの上限は使う場面で分かれます。移乗介護と入浴支援に使う機器は1台100万円、移動支援・排泄支援・見守り・コミュニケーション・機能訓練支援・栄養管理支援に使う機器は1台30万円です。補助対象経費は購入が原則で、リース・レンタルは導入年度末までの料金が限度です。交付決定(内示)の前に購入した機器は対象になりません。募集と締切は都道府県等ごとに違い、令和8年度は愛知県が5月29日正午、広島県が5月20日17時15分でした。ここに挙げた基準額は愛知県と広島県の数値の一致から国の補助基準額として扱っているもので、全47都道府県で同額とは限りません(2026年8月23日時点)。 - 補助率(令和8年度): 全区分共通で3/4。事業者の自己負担は原則1/4(財源の内訳は国1/2・都道府県1/4) - 1施設・1事業所あたりの基準額(介護ロボット等・令和8年度): 障害者支援施設210万円、共同生活援助事業所150万円、その他の事業所120万円。就労継続支援B型・A型は「その他の事業所」に入る - 1施設・1事業所あたりの基準額(ICT・パッケージ型・令和8年度): ICTの導入支援は100万円、パッケージ型の導入支援は1,000万円 - 機器1台あたりの上限(令和8年度): 移乗介護・入浴支援に使う機器は1台100万円。移動支援・排泄支援・見守り・コミュニケーション・機能訓練支援・栄養管理支援に使う機器は1台30万円。パッケージ型ではこの1台あたりの上限は適用されない - 対象経費の考え方: 購入が原則。リース・レンタルは導入年度末までの料金が限度。交付決定(内示)前に購入した機器は対象外。対象経費の算定には2者以上の見積が必要 - 申請先: 都道府県、指定都市及び中核市。国に直接申請する制度ではない - 令和8年度の締切の例: 愛知県は令和8年5月29日(金)正午、広島県は令和8年5月20日(水)17時15分。埼玉県は対象の全施設あてメールで募集を案内 根拠: 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長「障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業 実施要綱」(障発0115第3号)・愛知県「障害者施設介護テクノロジー導入支援事業費補助金交付要綱」 ### 本文 ## 国の実施要綱と、実施するのは都道府県という構造 補助率と基準額は国の実施要綱で決まり、実際に募集して事業所に交付するのは都道府県等です。 事業の目的は、障害福祉現場の職員の介護業務の負担軽減と労働環境の改善です。実施要綱の1に、働きやすい職場環境の整備を推進するために介護ロボットやICTの導入経費を支援すると書かれています。実施要綱は令和7年12月16日から適用されています(障発0115第3号・令和8年1月15日付)。 実施主体は都道府県、指定都市及び中核市です。要綱ではこれを「都道府県等」と総称しています。資金の流れは国から都道府県等を経て事業者に届く形です。実施要綱の6は、事業に要する費用の一部を国が補助すると定めています。事業者が国に直接申請する制度ではありません。**申請先は必ず都道府県等**になります。 事業は3つの区分で構成されています。 - 介護ロボット等の導入支援事業 - ICTの導入支援事業(ICT機器等の導入支援と、AIカメラ等の導入支援) - 介護テクノロジーのパッケージ型導入支援事業(複数機器の組み合わせと、見守り機器導入に伴う通信環境整備) 申請様式も区分ごとに分かれています。介護ロボット等が様式1、ICTが様式2、パッケージ型が様式3です。申請先と申請方法は都道府県ごとに個別に定められます。愛知県は様式の提出、広島県は電子申請システムのe-tumoを使う運用でした。 この事業は過去に「障害福祉分野のロボット等導入支援事業」「障害福祉分野のICT導入モデル事業」という名前で行われていました。令和7年度補正で現在の名称に整理・統合されています。県のページが古い名前のままになっていることもあります。 ## 補助率と1事業所あたりの基準額 補助率は全区分共通の3/4で、基準額は1施設・1事業所あたりの上限として区分ごとに決まります。 交付額は、基準額と対象経費の実支出額を比べて少ない方に3/4を掛けて計算します。実支出額は寄付金等を控除した後の額です。1,000円未満は切り捨てになります。 補助率の内訳は国1/2・都道府県1/4・事業所1/4です。広島県の案内ページにこの内訳が明記されています。国と県の割合は財源の負担割合なので、申請の場面で見る数字は自己負担1/4のほうです。 基準額は1施設・1事業所あたりの上限で、事業所の種別によって額が変わります。 | 事業区分 | 対象となる施設・事業所 | 1施設・1事業所あたりの基準額(令和8年度) | | --- | --- | --- | | 介護ロボット等の導入支援 | 障害者支援施設 | 210万円 | | 介護ロボット等の導入支援 | 共同生活援助事業所(グループホーム) | 150万円 | | 介護ロボット等の導入支援 | その他の事業所 | 120万円 | | ICTの導入支援 | 施設・事業所 | 100万円 | | パッケージ型の導入支援 | 施設・事業所 | 1,000万円 | **就労継続支援B型・A型は「その他の事業所」**に入ります。生活介護や相談支援事業所も同じ区分です。この120万円は1事業所あたりの合計上限なので、複数台を導入しても合計でこの額を超えません。対象経費が120万円なら、交付額は90万円で自己負担は30万円になります。 ICTの導入支援は介護ロボット等とは別の区分です。基準額は1施設・1事業所あたり100万円です。 ここに挙げた基準額は、愛知県の交付要綱の数値と広島県の案内ページの数値が一致していることから、国の補助基準額として扱っているものです。**全47都道府県で同額とは限りません**。都道府県が独自に上乗せや減額をしているかどうかまでは確認できていません。申請の前に自分の県の交付要綱で額を確かめてください。 ## 対象になる機器と1台あたりの上限 介護ロボット等の機器1台あたりの上限は、移乗介護と入浴支援が100万円、それ以外の場面は30万円です。 実施要綱は、介護ロボット等を使う場面を7つ挙げています。この場面によって、1台あたりの上限が2段階に分かれます。 | 機器を使う場面 | 機器1台あたりの上限(令和8年度) | | --- | --- | | 移乗介護/入浴支援 | 100万円 | | 移動支援/排泄支援/見守り・コミュニケーション/機能訓練支援/栄養管理支援 | 30万円 | 1台の数え方も決まっています。分割できる部品からなる機器は、最低限の機能を持つひとまとまりを1台と数えます。機器のメンテナンス費と通信費は対象外です。 機器そのものの要件もあります。ロボット技術を使い、従来の機器にはない優位性を発揮することが求められます。販売価格が公表され、一般に購入できることも要件です。さらに、PSE認証やSマーク等の安全性認証を取得していること、メーカー等によるフォローアップ体制があること、サービス利用者への説明と同意を得て導入することの3つが導入の条件になります。 ICTの導入支援では、実施要綱が対象経費を例示しています。タブレット端末やスマートフォン等の情報端末、インカム、記録業務・情報共有業務・請求業務を一気通貫で行える業務支援ソフトウェアが入ります。勤怠管理やシフト表作成などバックオフィス業務のソフトウェア、Wi-Fiルーター等の通信環境機器、クラウドサービスや保守サポート費も対象です。 支払い方にも条件があります。補助対象経費は備品購入費・使用料及び賃借料・役務費(初期設定費用)で、**購入が原則、リース料は年度末まで**が限度です。ソフトウェアの複数年ライセンスを購入しても、補助対象は当該年度分だけです。既存機器・システムの改修費と、事業所の自社開発費用は対象外になります。 パッケージ型を選ぶ場合は、機器1台あたりの上限が適用されません。介護ロボット等とICTを組み合わせ、単独導入より効果が見込まれる場合の区分です。基準額は1施設・1事業所あたり1,000万円です。 ## 対象になる事業所 対象は指定を受けた障害福祉サービス事業所を運営する法人で、法人格による区別はありません。 愛知県の交付要綱の第2条は、交付の対象者を「事業所を運営する法人」と定めています。ただし**国・地方公共団体等の運営は除外**されます。社会福祉法人・NPO法人・株式会社・一般社団法人・医療法人の別は問われません。過去5年以内に勧告・命令・指定取消し等を受けていないことは要件になります。 就労継続支援は、障害者総合支援法第5条第1項が列挙する障害福祉サービスの一つです。この条文と、実施要綱が対象を障害福祉サービス事業者としていることを合わせると、B型・A型の指定を受けた事業者は事業所単位で対象になります。実施要綱と交付要綱に「B型」「A型」という語そのものは出てきません。A型とB型で対象の可否に差を設ける記述もありません。 利用者と職員の位置づけを立場ごとに分けると、次のようになります。 | 立場 | 補助の対象になるか | 根拠の性格 | | --- | --- | --- | | B型の利用者(雇用契約を結ばず工賃を受け取る) | 個人は対象外。ただしB型事業所は事業所単位で対象 | 交付対象を法人とする規定と、法第5条第1項に就労継続支援が含まれることを合わせた帰結 | | A型の利用者(雇用契約に基づく労働者) | B型と同じ。個人は対象外で、A型事業所は対象 | 同じ組み合わせによる帰結。A型・B型で差を設ける記述は要綱にない | | 事業所の職員(支援員・サービス管理責任者・管理者等) | 職員個人への現金給付ではない。ただし制度の目的規定が職員の負担軽減を名指ししている | 実施要綱1の目的に「職員」の明記あり。対象機器の要件も職員の業務を前提にしている | 雇用関係の助成金では、B型の利用者が雇用契約を結ばないことが対象・対象外の分かれ目になります。この事業ではその線引きは働きません。対象になるかどうかは、その事業所が障害者総合支援法上のどの指定を受けているかだけで決まります。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか](/column/b-gata-hojokin/) 制度全体の位置づけと雇用関係助成金の線引き ## 都道府県で変わるのは締切だけではない 都道府県ごとに違うのは締切だけではなく、対象から外す事業所や機器の範囲も違います。 令和8年度の募集で確認できた4県の状況を並べます。 | 都道府県 | 令和8年度の締切 | 確認できた独自の扱い | | --- | --- | --- | | 愛知県 | 令和8年5月29日(金)正午【厳守】 | 名古屋市など政令市・中核市の事業所は対象外。事前協議と申請の2段階方式 | | 広島県 | 令和8年5月20日(水)17時15分 | 電子申請システムe-tumoで受付 | | 大阪府 | 受付終了(ページに日付の記載なし) | AIカメラの導入で訪問系・就労定着支援・相談支援事業者を除外 | | 埼玉県 | 公開ページに掲示なし | 対象の全施設あてメールで募集を案内 | 愛知県の除外は、実施主体の構造から来ています。実施主体には都道府県だけでなく指定都市と中核市も含まれるためです。**政令市・中核市の事業所は市に申請**する形になります。県のページを見て「対象外だった」と受け取ると、申請できる窓口を見落とします。 広島県では、障害児支援側の「地域障害児支援体制充実のためのICT化推進事業」が別建てで動いていました。こちらの締切は令和8年5月18日17時15分で、介護テクノロジー導入支援事業とは2日ずれています。同じ時期に並んで公募されるので、対象事業所の一覧で自分の事業所の種別を確かめる必要があります。 締切は令和8年度では4月から5月に集中していました。ただし大阪府のように受付期間が公開ページに載らない例もあります。年1回・短期間の募集が全国共通だと断定できるだけの材料までは確認できていません。 もう一つ気をつける点があります。同じ「介護テクノロジー導入支援事業」という名前で、介護保険(高齢者)分野向けの事業が別に動いています。こちらは介護保険法・老人福祉法の事業所が対象で、障害福祉サービス事業所は入りません。和歌山県と岡山県のページで確認しました。**県のページ名だけで判断しない**で、対象事業所の一覧まで見てください。 ## 自分の県の公募を探す 探す場所は県の障害福祉主管課のページで、政令市・中核市の事業所は市のページを見ます。 確認する順番を挙げます。 - 事業所の所在地が政令指定都市・中核市かどうかを先に見る。申請先が県か市かが変わる - 県または市の障害福祉主管課のページで、介護テクノロジー・ロボット・ICTを含む事業名を探す - そのページの対象事業所の一覧に、自分の事業所のサービス種別が入っているかを確かめる - 締切と、事前協議が要るかどうかを確かめる 要件のうち、実施要綱に載っていて全国に共通するものを挙げます。 - **交付決定の前に買った機器は対象外**になる。Q&Aは内示後に購入したものが対象だとしている - 対象経費の算定では2者以上から見積を取り、原則として最低価格を提示した業者を選ぶ - 他の国庫補助事業で補助を受けている経費は、この事業の対象にならない - 内示後に計画と違う機器へ変えるのは原則できない。販売中止等やむを得ない事情があり、目的・効果が同等と都道府県等が認めた場合に、同価格以下の機器へ変更できる - ICT機器等の導入支援を受けるには、都道府県等が開催する研修会への参加が要件になる - 事業完了年度の翌年度4月末日までに実績報告を行う。導入前後を客観的・定量的な指標で比較した効果も報告する - 導入した製品の内容と導入効果を、ホームページ等で公表する義務がある 予算を超えたときの優先採択条件も置かれています。1つは、ICT等の導入で生じた金銭的な剰余を、障害福祉サービスの質の向上や職員の賃金改善に充てる旨を職員等に周知した場合です。もう1つは、交付申請の時点で福祉・介護職員等処遇改善加算を算定しているか、申請後おおむね3か月以内に取得する見込みだと都道府県等が認めた場合です。 新規開設予定の事業所は注意が必要です。この事業の目的は既存事業所の職場環境の整備なので、原則としては対象になりにくい位置づけです。導入効果を客観的・定量的に確認・分析できない場合も対象外になります。 公募が出てから締切までの期間は短く、令和8年度は5月中旬から下旬に締切が並んでいました。公募を見てから見積を集め始めると間に合わないので、準備を前倒しする順番になります。 最初に決めるのは、どの場面の負担を減らすかです。移乗介護と入浴支援なら1台100万円まで、それ以外の場面なら1台30万円までなので、場面が決まると狙える機器の価格帯も決まります。 次が見積です。2者以上から取ることが要件なので、候補の機種を2つ以上並べた状態で販売店に当たっておくことになります。 導入前の状態を数字で残しておく作業も、公募前にやっておくものです。実績報告では導入前後を客観的・定量的な指標で比較するよう求められます。記録にかかる時間や職員の移動の回数など、比較に使う指標を先に決めて測り始めておくことになります。 発注は内示を待ちます。交付決定の前に買った機器は対象外なので、公募前の準備は見積の取得までで止めておく形になります。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する](/column/b-gata-shushi-kouzou/) 自己負担1/4を出せるかを判断する材料 ### よくある質問 Q. 就労継続支援B型でも使えますか? A. 使えます。B型は基準額表の「その他の事業所」に入り、介護ロボット等の基準額は1事業所あたり120万円です。補助率は3/4なので、対象経費が120万円なら交付額は90万円、自己負担は30万円になります。ICTの導入支援は別区分で、1事業所あたり100万円が基準額です。 Q. 補助率は都道府県で違いますか? A. いいえ、補助率3/4は全区分に共通する国の基準です。事業者の自己負担は原則1/4で、財源の内訳が国1/2・都道府県1/4という構造です。ただし基準額まで全47都道府県で同額かどうかは確認できていません。申請の前に、自分の県の交付要綱で額を確かめてください。 Q. 先に機器を買っておいてもいいですか? A. いいえ、交付決定(内示)の前に買った機器は対象外です。厚生労働省のQ&Aは、内示後に購入した介護ロボット・ICT機器等が対象だと答えています。対象経費の算定には2者以上から見積を取り、原則として最低価格の業者を選ぶことも求められます。 Q. リース契約の機器も対象になりますか? A. 対象になりますが、導入年度末までの料金が限度です。補助対象経費は備品購入費が原則で、使用料・賃借料はその年度分だけが対象になります。ソフトウェアの複数年ライセンスを購入した場合も、補助対象は当該年度分に限られます。 Q. 締切はいつですか? A. 都道府県等ごとに違います。令和8年度は愛知県が5月29日(金)正午、広島県が5月20日(水)17時15分でした。大阪府は公開ページに日付の記載がないまま受付終了と表示されています。埼玉県は対象の全施設あてメールで募集を案内する運用です。 Q. 株式会社が運営するB型でも申請できますか? A. 申請できます。法人格による対象の区別は要綱にありません。社会福祉法人・NPO法人・株式会社などの別を問わず、指定を受けた事業所を運営する法人が対象です。ただし国または地方公共団体等が運営する事業所は除かれます。 ### 根拠資料 - 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長(障発0115第3号)「障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業 実施要綱(別紙)」 https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/616449.pdf(1.目的・2.実施主体・5.事業内容等・6.経費の補助・7.留意事項を確認(愛知県サイトが公開するPDF)・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「令和7年度補正分 障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業についてのQ&A(令和8年1月20日時点)」 https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/616450.pdf(問1(内示後の購入が対象)・問3(機器変更)・問4(過去の事業名)・問10〜12(対象経費)を確認・2026年8月23日確認) - 愛知県「障害者施設介護テクノロジー導入支援事業費補助金交付要綱」 https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/616446.pdf(第2条(交付の対象者)・第4条(対象経費)・第5条(基準額と補助率)を確認・2026年8月23日確認) - 愛知県(障害福祉課)「愛知県障害者施設介護テクノロジー導入支援事業費補助金について」 https://www.pref.aichi.jp/soshiki/shogai/technology.html(令和8年度の受付締切と2段階方式を確認・2026年8月23日確認) - 広島県「障害福祉サービス事業所等デジタル技術導入支援事業について」 https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/shidoukensa/robotict.html(補助率3/4の内訳・基準額・令和8年度の締切・電子申請を確認・2026年8月23日確認) - 大阪府「大阪府障がい福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業について」 https://www.pref.osaka.lg.jp/o090080/kaigotechnology.html(令和8年度の受付終了表示とAIカメラ導入で除外されるサービス種別を確認・2026年8月23日確認) - 埼玉県「障害福祉分野のロボットICT事業」 https://www.pref.saitama.lg.jp/a0605/jyoseijigyou/robot.html(募集を対象全施設あてメールで案内する運用を確認・2026年8月23日確認) - 和歌山県「「介護テクノロジー定着支援事業補助金」の募集について」 https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/040300/d00201773.html(介護保険分野の同名事業で対象事業者が異なることを確認・2026年8月23日確認) - 岡山県「令和7年度「岡山県介護テクノロジー定着支援事業」について」 https://www.pref.okayama.jp/page/934466.html(介護保険分野の同名事業で対象事業者が異なることを確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa7574&dataType=0&pageNo=1(第5条第1項の障害福祉サービスの列挙に就労継続支援が含まれることを確認・2026年8月23日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.23 初回公開 --- ## 社会福祉施設等施設整備費補助金 B型の開設・改修で使える 国と都道府県の負担と協議の流れ URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shakai-fukushi-shisetsu-seibi-hojokin/ カテゴリー: 補助金・助成金 公開: 2026-08-23 / 更新: 2026-09-12 制度基準日: 2026.08.23 ### 結論 社会福祉施設等施設整備費補助金は、障害福祉サービス事業所の建物の整備費を国と自治体が分担する制度です。負担割合は国1/2、都道府県・指定都市・中核市1/4、設置者1/4です(厚生労働省の令和7年3月の障害保健福祉関係主管課長会議資料。令和7年度予算案時点の記載)。設置者には社会福祉法人だけでなくNPO法人や営利法人も含まれるため、株式会社立の就労継続支援B型事業所も対象になり得ます。土地の買収と整地に要する費用は補助対象外です。 事業者が国に直接申請する制度ではありません。設置者が都道府県等に事業計画書を提出し、都道府県等が国に国庫補助協議を行う2段階の構造です。事業計画書の提出時期は「建設予定年度の前年度の早い時期」とされ、原文に月の指定はありません。都道府県等から国への協議書提出は3月中、地方厚生(支)局のヒアリングは4月中です。内示の公表は令和7年度が令和7年6月30日、令和8年度が令和8年7月2日でした。協議額が予算額を超えた場合は、自治体が申請時に付した優先順位を踏まえて予算の範囲内で採択されます。 - 負担割合(令和7年度予算案時点): 国1/2・都道府県/指定都市/中核市1/4・設置者1/4。土地の買収と整地に要する費用は補助対象外 - 設置者になれる法人: 社会福祉法人・医療法人・日本赤十字社・公益社団法人・公益財団法人・一般社団法人・一般財団法人・特例民法法人・NPO法人・営利法人等 - 窓口: 都道府県・指定都市・中核市。事業者が国に直接申請する制度ではない - 事業計画書の提出時期: 建設予定年度の前年度の早い時期(原文に月の指定なし。締切は自治体ごと) - 内示の公表日: 令和7年度は令和7年6月30日、令和8年度は令和8年7月2日。いずれも一般整備分と国土強靱化対策分の2本立て - 整備の区分: 創設・増築・改築・大規模修繕等の4区分(令和7年度予算案時点) 根拠: 厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部「障害保健福祉関係主管課長会議資料(令和7年3月)」 ### 本文 B型の事業所を新しく建てたい。あるいは今の建物を改修したい。そう考えて補助金を探すと、この制度の名前に行き当たります。ところが、国の側に公募要領や申請ページは見当たりません。それもそのはずで、これは事業者が国に直接申請する制度ではないからです。しかも動き出すのは、建物を建てる年度ではなく前の年度です。気づいた時点で1年ずれている、ということが起こり得ます。 僕は埼玉県志木市で就労継続支援B型「ぽちぽちの道」を運営しています。会社(イチドキリ)では補助金の申請代行もしていますが、扱っているのはデジタル化・AI導入や省力化投資、ものづくりといった経済産業省・中小企業庁系の制度です。この施設整備費補助金を自分で申請した経験はありません。だからこの記事は、厚生労働省の資料を読んで整理したものとして読んでください。 先に答えを2行で言います。負担割合は国1/2・都道府県等1/4・設置者1/4で、株式会社立のB型も設置者になり得ます。窓口は都道府県・指定都市・中核市で、動き出すのは建設予定年度の前年度の早い時期です。 ## この補助金は、誰にどう申請するのか 事業者が国に直接申請する制度ではなく、設置者が都道府県等に事業計画書を出し、都道府県等が国に協議します。 この補助金は、障害福祉サービス事業所の建物の整備費を国と自治体が分担する制度です。実施しているのは厚生労働省(社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課)です。対象施設には、障害者総合支援法第5条に基づく障害福祉サービス事業所等が含まれます。就労継続支援B型の事業所も、この「社会福祉施設等」の中に入ります。窓口は**都道府県・指定都市・中核市**です。設置者が都道府県等に事業計画書を出し、都道府県等が審査します。そのうえで都道府県等が厚生労働省(地方厚生(支)局)に国庫補助協議を行います。 この2段階の構造が、公募に直接応募する補助金といちばん違うところです。公募型なら、締切も様式も国の側にあります。この制度は締切も一次審査も自治体の側にあるので、同じ感覚で探すと入口を見失います。相手はまず自治体だと頭を切り替えるのが、いちばん早いと思っています。 国庫補助を受けるには、各都道府県・指定都市・中核市・市町村の障害福祉計画に合致することが条件です。障害福祉関係の施設整備費については、令和5年度行政事業レビューの指摘を踏まえた運用が入りました。都道府県等が設置する外部有識者等を含む**審査会等の合議制の審査**を経て、国庫補助協議の対象施設を選定することとされています。優先順位の指標等の決定プロセスが確認できる書類の提出も必要です。 ここは読み飛ばさないほうがいいと思っています。審査会を経るということは、会議の開催時期が日程を決めるということです。締切は書類の締切だけで決まりません。 ## 株式会社が運営するB型でも対象になるのか 設置者には社会福祉法人だけでなくNPO法人や営利法人も含まれるので、株式会社立のB型も対象になり得ます。 厚生労働省の令和7年3月の会議資料は、57ページの脚注で対象となる設置者を列挙しています。挙がっているのは次の法人です。 - 社会福祉法人、医療法人、日本赤十字社 - 公益社団法人、公益財団法人、一般社団法人、一般財団法人、特例民法法人 - NPO法人、**営利法人等** 株式会社を排除する記載はありません。株式会社立のB型事業所も、この補助金の設置者になり得ます。なお社会福祉法人を新たに設立して施設経営を始める場合は、所轄庁である都道府県・指定都市・中核市から設立認可を受けることが必要です。 正直、ここは意外に思われる部分だと思います。施設整備の補助金は社会福祉法人のもの、という印象が強いからです。ただ、脚注に営利法人等と書いてある以上、法人格だけで門前払いになるわけではない、というのが僕の読み方です。もっとも、対象になり得ることと選ばれることは別です。都道府県等の審査を通って国庫補助協議に乗るところまでが、実際のハードルだと思っています。 一方で、この補助金は利用者や職員の個人に届く制度ではありません。補助を受けるのは施設を整備する法人です。立場ごとに整理すると次のようになります。 | 立場 | この補助金の対象になるか | 理由 | | --- | --- | --- | | B型の利用者 | ならない | 補助の相手は設置者である法人。利用者個人への給付ではない | | A型の利用者 | ならない | 同じ理由。雇用契約の有無は補助のスキームに関係しない | | 事業所の職員 | ならない | 補助対象は建築資金・設備整備費等であり、人件費への補助ではない | この3行は、制度の一次情報が利用者や職員を名指しで除外しているという意味ではありません。補助の相手が施設の設置者であることと、補助対象経費が施設整備費であることを合わせると、こうなります。 ## いくら出て、何が対象外なのか 負担割合は国1/2、都道府県・指定都市・中核市1/4、設置者1/4で、土地の買収と整地の費用は対象外です。 | 負担者 | 割合 | 時点 | | --- | --- | --- | | 国 | 1/2 | 令和6年度予算・令和7年度予算案 | | 都道府県・指定都市・中核市 | 1/4 | 令和6年度予算・令和7年度予算案 | | 設置者(法人) | 1/4 | 令和6年度予算・令和7年度予算案 | 補助対象経費には除外があります。**土地の買収と整地の費用は対象外**と明記されています。アスベストの除去等に要する費用は補助対象です。 整備の区分は4つに分かれます。 | 区分 | 内容(令和7年度予算案時点) | | --- | --- | | 創設 | 新たに施設を整備する | | 増築 | 既存施設の定員増員のために整備する | | 改築 | 一部改築・耐震化等整備を含む | | 大規模修繕等 | 老朽化した施設の改修や利用者ニーズに合わせた改修等 | 大規模修繕等の対象事業には例示があります。施設の一部改修、附帯設備の改造、冷暖房設備の設置等、施設の模様替、介護用リフト等特殊附帯工事などです。消防法や建築基準法等の関係法令の改正により、新たに規定に適合させるために必要となった改修も挙がっています。「生産設備近代化整備等」という項目もあり、生産活動用の設備更新にも読める文言です。ただし公式資料に、B型の生産設備という直接の事例明記はありません。 この「生産設備近代化整備等」は、僕がいちばん気になった項目です。B型の生産活動の設備は、事業所の収入に直結するからです。ただ、読めることと通ることは別だと思っています。事例が公式に出ていない以上、自分の計画が入るかどうかは自治体に当てて確かめるしかありません。 1施設あたりの補助額は補助基準単価で決まります。令和7年度の補助基準単価は、資材費・労務費の動向等を踏まえて前年度比4.7%増の改定が予定されていました。単価表の絶対額は一次情報で確認できていないため、本記事では金額を示しません。 1年度あたりの予算規模も資料に出ています。令和6年度予算額が45億円、令和7年度予算案が50.4億円です。令和7年度は令和6年度補正予算額102億円と一体で編成され、国土強靱化分等を含め108.0億円として一体的に執行することとされています。総額が決まっている以上、出せば通る性質の制度ではありません。 ## いつ動き出せばよいのか 事業計画書の提出は建設予定年度の前年度の早い時期で、内示の公表は年度が明けた6月末から7月初めでした。 | 工程 | 動く主体 | 時期 | | --- | --- | --- | | 事業計画書の提出・審査 | 設置者 → 都道府県等 | 建設予定年度の前年度の早い時期 | | 事前の協議額調査 | 厚生労働本省 → 地方自治体 | 3月上旬 | | 国庫補助協議書の提出 | 地方自治体 → 地方厚生(支)局 | 3月中 | | 都道府県・市ヒアリング | 地方厚生(支)局 | 4月中 | | 内示の公表 | 厚生労働省 | 令和7年度は令和7年6月30日、令和8年度は令和8年7月2日 | 3月上旬から4月中までの日程は、令和7年度予算案に係る国庫補助協議のスケジュールとして示されたものです。 事業計画書には、建設計画・資金計画・土地の確保の状況等を明らかにすることが求められます。時期は「**建設予定年度の前年度の早い時期**」とだけ書かれています。何月という指定は原文になく、締切は都道府県等ごとに置かれます。 この一行が、この制度でいちばん怖いところだと思っています。月が書いていないので、逆算の起点が自分では決められません。しかも書類の締切は自治体が置きます。だから制度を調べるより先に、都道府県の障害福祉担当課に締切を聞くほうが速いと思っています。 協議額が予算額を超えた場合の扱いも決まっています。協議額が予算額を大幅に上回ることは例年見込まれており、超えた場合は各自治体が申請時に付した優先順位を踏まえて、**予算の範囲内で採択**されます。都道府県等の審査を通ることと、国の内示を受けることは別だと考えておく必要があります。 交付決定後の辞退も課題になっています。挙げられている理由は、法人負担分の資金確保が困難になった、用地の取得が困難になった、入札不調で工期が遅延した、といったものです。このため都道府県市は、協議対象施設を選ぶ段階で資金計画・工期等を厳格に審査し、交付決定後も進捗を確認することとされています。 補助金の申請代行をしていて共通して効くと感じるのは、資金計画の具体性です。制度が違っても、審査する側が見たいのは本当に完成するのかという一点だと思います。辞退の理由に資金確保と用地の取得が並んでいるのは、その裏返しに読めます。書類の文章を厚くするより、自己資金と融資の当てを先に作るほうが効くと思います。 前年度の協議に間に合わせるには、都道府県との詰めを逆算して組むことになります。 都道府県等が国に協議書を出すのが3月中です。事業計画書の審査はそれより前に終わっている必要があります。まず都道府県の障害福祉担当課に、事業計画書の締切と審査会の開催時期を確認するところから始めることになります。 次に固めるのが、土地の確保の状況と資金計画です。設置者負担の1/4をどこから出すかは、融資の相談状況まで含めて先に決めておくことになります。交付決定後の辞退理由として資金確保と用地取得が挙がっているため、審査でもここが見られます。 もう一つ確認しておくのが、自治体の障害福祉計画との整合です。国庫補助の条件が計画への合致なので、計画の中に整備の枠が残っているかどうかで、協議の土俵に乗れるかが変わります。 ## B型が実際に内示を受けた例はあるのか 就労継続支援B型は施設種別として単独で内示を受けた実績があり、令和7年度の国土強靱化5か年加速化対策分では宮城県で1か所が内示されています。 令和7年度の内示は2本立てで公表されました。うち防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策分(令和7年6月30日付)を見ます。施設種別ごとの表に「就労継続支援B型」が単独のカテゴリとして立っています。同じ表には生活介護・自立訓練・多機能型・共同生活援助・障害者支援施設も並んでいます。 | 項目 | 内容 | | --- | --- | | 年度・区分 | 令和7年度 国土強靱化5か年加速化対策分(令和7年6月30日付) | | 施設種別 | 就労継続支援B型 | | 内示 | 宮城県に1か所・55,824千円(約5,582万円。1か所あたりの内示額) | 令和8年度分の内示は、一般整備分と国土強靱化対策分が令和8年7月2日に公表されました。障害福祉分野の内示総額と件数は、公表PDFの本文まで読み込めていないため本記事では示しません。 公式資料に「B型の開設費がいくらだった」という金額付きの事例は載っていません。上の1か所は、B型が現に内示の対象になっているという事実を示すものです。 正直、国土強靱化対策分の1か所という数字は少ないと感じました。ただ、種別の表にB型の名前が立っていること自体が、対象外ではないという証拠です。金額の相場を知りたい気持ちは分かりますが、公式に事例が出ていない以上、当たりを付ける相手は自治体になると思っています。 ## 設置者負担の1/4は、どこから用意するのか 設置者負担の1/4は、自己資金のほかに独立行政法人福祉医療機構(WAM)の福祉貸付で調達できます。 補助金側の資料にも、設置者負担分について福祉医療機構から低利の融資を受けることができると書かれています。WAM側の資料にも対応する記載があります。融資限度額を計算するときは「法的・制度的補助金」を所要額から差し引きます。その例として、社会福祉施設等施設整備費補助金(都道府県等の負担分を含む)が挙がっています。補助で埋まらない部分を融資で見るという組み合わせが、両方の資料で想定されています。 融資率の優遇も用意されています。対象は、この国庫補助金の交付が行われる障害福祉サービス事業所・障害者支援施設の整備事業です。融資率が通常の80%から85%に引き上げられます。取扱期間は2027年3月31日までです。 順番としては、協議に出す前に融資の相談を始めるほうがいいと思っています。事業計画書に資金計画を書く時点で、自己負担分の当てが要るからです。**資金計画と土地の確保**は、審査でも辞退の理由でも同じ顔ぶれで出てきます。ここが埋まっていない事業計画書は、優先順位を付ける側から見て弱いと思います。 ## この記事で確認できていないことは何か 補助基準単価の絶対額、交付決定の時期、交付決定前の着工の可否、提出月の4点は確認できていません。 いずれも自治体や国に直接確認する必要がある部分です。 - 補助基準単価の絶対額。1施設あたり・1定員あたりの円建ての単価表には到達できていません - 交付決定の時期。内示の公表日は確認できましたが、交付決定がいつ出るかは確認できていません - 交付決定前の着工の可否。自治体の紹介ページには内示前の着手は補助対象外という説明が見られます。交付要綱の条文そのものは確認できていません - 事業計画書提出の具体的な月。「前年度の早い時期」より細かい記載は原文にありません 窓口はいずれも都道府県・指定都市・中核市の障害福祉担当課です。実際の日程と金額は、整備を予定する年度ごとに自治体へ確認してください。 分からないことを空欄のまま並べるのは、記事としては格好がつきません。ただ、単価を推測で書いて資金計画が狂うほうがよほど困ると思っています。 最後にもう一つ。この補助金は、金額の大きさより日程のほうが効いてくる制度だと思っています。負担割合も設置者の範囲も、資料を読めば分かります。けれども前年度の協議に乗り遅れたら、その年度は原則として動けない、というのが僕の読み方です。だから最初にやることは、事業計画書の締切と審査会の時期を自治体に聞くことです。次が土地と資金計画、単価や金額の話はそのあとです。結局、この順番が一番大事だと思っています。 ## あわせて読む 制度の全体像と、開設後のお金の見取り図は別の記事にまとめています。 - [就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか](/column/b-gata-hojokin/) … 開設・設備投資・雇用で使える制度の全体像 - [就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する](/column/b-gata-shushi-kouzou/) … 開設後の収入と費用の見取り図 自己負担分の資金と、法人格ごとの違いは次の2本です。 - [福祉医療機構(WAM)の融資はB型の開設に使えるか](/column/fukushi-iryo-kiko-yushi-b-gata/) … 補助金で埋まらない部分をどう借りるか - [法人格で変わるB型の補助金](/column/houjinkaku-betsu-hojokin-b-gata/) … 株式会社・NPO法人・社会福祉法人で割れる可否 ### よくある質問 Q. 株式会社が運営するB型でも使えますか? A. 設置者に営利法人も含まれるので対象になり得ます。根拠は厚生労働省の令和7年3月の会議資料57ページの脚注です。国庫補助の対象となる設置者として、社会福祉法人・医療法人・NPO法人などと並べて「営利法人等」が挙がっています。株式会社を排除する記載はありません。ただし都道府県等の審査を経て国庫補助協議の対象に選ばれることが前提です。 Q. いくら補助されますか? A. 補助率は国1/2・都道府県等1/4です。残る1/4が設置者の負担になります。令和7年度予算案時点の負担割合です。1施設あたりの補助額は補助基準単価で決まります。単価表の絶対額は一次情報で確認できていないため、本記事では金額を示しません。令和7年度は前年度比4.7%増の改定が予定されていました。 Q. いつ動き出せばよいですか? A. 建設予定年度の前年度の早い時期です。設置者が建設計画・資金計画・土地の確保の状況等を明らかにした事業計画書を、その時期に都道府県等へ提出すると厚生労働省の資料に書かれています。具体的な月の指定は原文にありません。締切は都道府県等ごとに確認する必要があります。 Q. 改修や修繕だけでも対象になりますか? A. 大規模修繕等という区分があり、改修も対象です。老朽化した施設の改修や利用者ニーズに合わせた改修等が対象事業として例示されています。施設の一部改修、冷暖房設備の設置等、介護用リフト等特殊附帯工事などが挙がっています。アスベストの除去等に要する費用も補助対象です。 Q. 土地の購入費も補助されますか? A. いいえ、土地の買収と整地の費用は対象外です。厚生労働省の資料に明記されています。土地の取得費用は福祉医療機構の福祉貸付では所要額に含まれるので、資金の出どころを分けて考えることになります。 Q. 都道府県に出せば必ず内示が出ますか? A. いいえ、予算の範囲内での採択です。協議額が予算額を大幅に上回ることが例年見込まれています。超えた場合は、各自治体が申請時に付した優先順位を踏まえて採択されると厚生労働省の資料に書かれています。 ### 根拠資料 - 厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部「障害保健福祉関係主管課長会議資料(令和7年3月)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001468383.pdf(49〜57ページ「4 障害福祉関係施設等の整備について」で負担割合・設置者の範囲・協議スケジュール・対象事業を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「社会福祉施設の整備・運営(社会福祉施設等の整備について)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/shakai-fukushi-shisetsu1/index.html(対象施設と補助率を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「令和7年度社会福祉施設等施設整備費補助金の内示について(令和7年度当初予算等)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59174.html(内示の公表日(令和7年6月30日)とPDFの構成を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「令和7年度社会福祉施設等施設整備費補助金の内示について(防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策分)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12203000/001511030.pdf(1ページ目の施設種別ごとの内示表で「就労継続支援B型」宮城県1件55,824千円を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「令和8年度社会福祉施設等施設整備費補助金の内示について(令和8年度当初予算等)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74201.html(内示の公表日(令和8年7月2日)を確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人福祉医療機構(WAM)「2026年度 福祉貸付事業 融資のごあんない」 https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/2026fukushiyushinogoannai.pdf(7ページの控除対象補助金と14ページの融資率優遇(80%→85%・取扱期間2027年3月31日まで)を確認・2026年8月23日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.23 初回公開 --- ## 障害者雇用の助成金一覧 「職員として雇う」「利用者を送り出す」 2つの場面で整理する URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shogaisha-koyou-joseikin-ichiran/ カテゴリー: 補助金・助成金 公開: 2026-08-23 / 更新: 2026-09-12 制度基準日: 2026.08.23 ### 結論 障害者雇用の助成金は、雇う側の事業主が申請する制度です。令和8年度に使える主なものは、雇い入れの場面で使う3つ(特定求職者雇用開発助成金・トライアル雇用助成金・キャリアアップ助成金)と、雇ったあとの環境整備で使うJEEDの助成金に分かれます。B型事業所の立場では、自法人で障害のある職員を雇う場面と、利用者の就職先の企業が使う場面の2つがあります。いずれも公募回や締切のある補助金ではなく通年受付で、雇い入れや転換のたびに個別の申請期限が発生します。 B型の利用者は事業所と雇用契約を結びません。雇用保険の被保険者として雇い入れることを求める要件と合わせると、雇い入れの3制度はいずれも対象になりません。A型の利用者は雇用契約に基づく労働者ですが、トライアル雇用助成金とキャリアアップ助成金の正社員化系2コースは要領・パンフレットで明示的に除外されています。事業所の職員として雇う場合は、除外規定がなく一般の要件で判断されます。 - 場面の分け方: 申請するのは雇用契約を結ぶ側の事業主。自法人で職員として雇う場面と、利用者の就職先の企業が使う場面の2つに分かれる - 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース): 令和8年度・中小企業で、重度障害者等をフルタイムで雇う場合は1人あたりの支給総額240万円(40万円×6期・起算日から3年間) - トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース): 令和8年度・1人あたり月額最大4万円。精神障害者は最初の3か月が月額最大8万円、その後3か月が月額最大4万円で最長6か月 - キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース): 令和8年度・中小企業で、重度身体・重度知的・精神障害者を有期から正規に転換した場合は1人あたりの支給総額120万円(60万円×2期) - B型の利用者の扱い: 雇用契約を結ばないため、雇い入れの3制度もJEEDの助成金も対象にならない。名指しの除外はJEEDの作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金だけで、他は要件との組み合わせによる帰結 - 申請の代行: 申請書の作成・提出代行・事務代理を報酬を得て業として行えるのは社会保険労務士のみ 根拠: 厚生労働省・独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(各項の出典は本文と根拠資料を参照) ### 本文 「うちで雇ったら、助成金は出ますか」。利用者の就職先になる企業から、こう聞かれる場面があります。もう1つ、自法人で障害のある職員を雇うときにも、同じ言葉で調べることになります。困るのは、検索で出てくる一覧がどちらの場面の話なのか書いていないことです。額の表だけ眺めても、自分が申請できるのかが読み取れません。 僕は埼玉県志木市で就労継続支援B型を運営しています。職業指導員のハローワーク求人は、自分で作っています。ハローワークの紹介という要件がどこで効いてくるのかは、求人を出す側としても気になる部分です。この記事は、令和8年度の一次情報を場面ごとに並べ直したものです。 先に答えを書きます。助成金を受け取るのは、雇用契約を結ぶ側の事業主です。B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばないので、雇い入れの3制度もJEEDの助成金も対象になりません。 ## この助成金は、だれが申請するのか 障害者雇用の助成金は、自法人が事業主として申請するものと、利用者の就職先の企業が申請するものに分かれます。 B型事業所の経営者がこの言葉で調べるとき、動機はたいてい2つに分かれます。1つは、障害のある人を自法人の職員として雇う場面です。もう1つは、利用者の一般就労を進めるなかで、受け入れ先の企業に説明する場面です。制度そのものは、どちらの場面でも同じものを使います。違うのは申請する主体で、**助成金を受け取るのは雇用契約を結ぶ側**の事業主です。 | 場面 | 申請するのは | 使う制度の中心 | | --- | --- | --- | | 自法人で職員として雇う | B型事業所を運営する法人 | 雇い入れの3制度・JEEDの助成金 | | 利用者が一般企業に就職する | 就職先の企業 | 雇い入れの3制度 | | 利用者としてB型に受け入れる | なし | 該当する雇用関係助成金はない | 3つ目の場面には、使える雇用関係の助成金がありません。B型の利用者とは雇用契約を結ばないからです。この線引きは要領の書き方によって強さが違うので、後の章で分けて説明します。 制度の一覧を見るときに、この2つの場面は混ざりやすいと思っています。混ざったまま調べると、企業から聞かれたときの答えを間違えやすいと思います。事業所は申請の当事者ではなく、説明する側だからです。経営者が最初に決めるのは額ではなく、いまどちらの場面の話をしているかだと考えています。 ## 人を雇うとき、使えるのはどれか 雇い入れの場面で使うのは、特定求職者雇用開発助成金・トライアル雇用助成金・キャリアアップ助成金の3つです。 いずれも厚生労働省の制度で、窓口は都道府県労働局とハローワークです。公募回や締切のある補助金ではなく、通年で受け付けています。そのかわり、雇い入れや転換のたびに個別の申請期限が発生します。 | 制度(令和8年度) | 対象になる雇い入れ | 事前に必要なこと | | --- | --- | --- | | 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) | ハローワーク等の紹介で、雇用保険の一般被保険者等として継続雇用する雇い入れ | 紹介より前に選考を開始していないこと | | トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース) | ハローワーク等の紹介による原則3か月の試行雇用 | ハローワーク等への計画書の提出 | | トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース) | 週の所定労働時間10時間以上20時間未満で始め、期間中に20時間以上を目指す試行雇用 | 同上。対象は精神障害者と発達障害者に限られる | | キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース) | 障害のある有期雇用労働者等の正規雇用等への転換 | 実施日の前日までのキャリアアップ計画の提出 | 特定求職者雇用開発助成金は、略して特開金と呼ばれます。対象になるのは、ハローワーク等の紹介による雇い入れだけです。**特開金は求人サイトの直接応募が対象外**になります。事業主が雇い入れの時点で対象労働者だと知らなかった場合も、助成の対象になりません。 トライアル雇用助成金は、試行雇用のあとに継続雇用へ移行することを前提にした制度です。A型事業所が対象者をA型の利用者として雇い入れる場合は、対象事業主から除外されると支給要領に明記されています。同じA型事業所でも、支援員などの職員として雇う場合は除外の対象外です。 キャリアアップ助成金は転換の助成なので、雇い入れそのものではありません。有期雇用で採用した障害のある職員を、あとから正規雇用に転換する場面で使います。**キャリアアップ計画は転換の実施日の前日**までに提出します。転換したあとに出しても間に合いません。 3つのうち先に効いてくるのは、ハローワークとの関係のほうだと思っています。特開金もトライアル雇用助成金も、入口が紹介かどうかで結果が決まるからです。採用の話が進んでから制度を探しても、入口の条件は後から作り直せません。求人票を出す段階で3つのどれを狙うかを決めておくのが早い、というのが僕の読み方です。 ## 雇ったあとの環境整備にも助成金はあるのか 雇ったあとの環境整備に使うのは、障害者雇用納付金を財源とするJEEDの助成金です。 JEEDは独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の略称です。財源は、法定雇用率を達成していない常用労働者100人超の企業から集める障害者雇用納付金です。民間企業の法定雇用率は令和8年7月から2.7%になりました。納付金の額は、不足1人あたり月額5万円です。 | 助成金(令和8年度・中小企業) | 助成の対象 | 額 | | --- | --- | --- | | 職場適応援助者助成金(企業在籍型) | 社内のジョブコーチによる支援 | 精神障害者・一般労働者で月額支給限度額12万円。支給期間は最長6か月 | | 職場支援員助成金(配置) | 精神障害者・発達障害者等の職場定着支援を行う職場支援員の配置 | 一般労働者で月額4万円。最大2年間(精神障害者は最大3年間) | | 職場介助者助成金(配置) | 重度身体障害者等の介助を担当する職場介助者の配置 | 費用の4分の3。配置1人あたり月15万円まで、最長10年間 | | 第1種作業施設設置等助成金 | 買取り等による作業施設・設備の設置整備 | 費用の3分の2。支給対象障害者1人につき450万円まで(作業設備は1人につき150万円まで) | | 障害者福祉施設設置等助成金 | 保健室・休憩室・食堂などの整備 | 費用の3分の1。支給対象障害者1人につき225万円まで | 額はいずれも中小企業の場合です。資本金のない社会福祉法人やNPO法人は、常時雇用する労働者数だけで中小企業かどうかを判定します。 JEEDの助成金はどれも通年受付です。ただし**JEEDの認定申請は実施・着手より前**が原則です。措置の実施や工事の着手より後からの遡及は、原則できません。 就労継続支援を行う事業所からの申請には、名指しの制限があります。作業施設設置等助成金と障害者福祉施設設置等助成金のパンフレットが、この点を明記しています。この2つでは、A型・B型の事業に本来必要な施設・設備は対象外です。利用者を支給対象障害者として申請することもできません。一方で、利用者が使う部分と明確に区別できる措置に限り、施設職員は対象になると同じパンフレットに書かれています。 除外の理由は「福祉の事業所だから」ではない、と僕は読んでいます。パンフレットが外しているのは、A型・B型の事業に本来必要な施設・設備と、利用者を支給対象障害者とする申請です。職員のための措置は、利用者が使う部分と明確に区別できる措置に限って残る、というのがパンフレットの書き方です。全部だめだと読んで検討をやめてしまうのは、もったいないと思います。 設備の導入で使えた制度が、すでに終わっている場合もあります。人材確保等支援助成金の介護福祉機器助成コースは、令和6年3月31日で廃止されました。同じ助成金の雇用管理制度・雇用環境整備助成コースは続いています。 ## 1人あたり、結局いくら入るのか 額を比べるときは、1人あたりの支給総額か、1期あたりの額か、月額かを取り違えないことが要点です。 制度によって金額の数え方が違います。特開金は6か月ごとの支給対象期に分けて支払われます。次の表の240万円は、40万円を6回受け取った合計です。一度に240万円が入るわけではありません。 | 制度・区分(令和8年度・中小企業) | 額 | 額の単位 | 支給期間 | | --- | --- | --- | --- | | 特開金 重度障害者等(重度身体・重度知的・45歳以上の身体・知的・精神)・フルタイム | 240万円 | 1人あたりの支給総額(40万円×6期) | 起算日から3年間 | | 特開金 身体・知的障害者(重度でも45歳以上でもない)・フルタイム | 120万円 | 1人あたりの支給総額(30万円×4期) | 起算日から2年間 | | 特開金 身体・知的・精神障害者・短時間 | 80万円 | 1人あたりの支給総額(20万円×4期) | 起算日から2年間 | | 障害者トライアルコース 精神障害者 | 最初の3か月は月額最大8万円、その後3か月は月額最大4万円 | 1人あたりの月額 | 最長6か月 | | 障害者トライアルコース 精神障害者以外 | 月額最大4万円 | 1人あたりの月額 | 原則3か月 | | 障害者短時間トライアルコース | 月額最大4万円 | 1人あたりの月額 | 3か月以上12か月以内 | | 障害者正社員化コース 重度身体・重度知的・精神障害者(有期→正規) | 120万円 | 1人あたりの支給総額(60万円×2期) | 支給対象期間1年 | | 障害者正社員化コース 重度以外の身体・知的障害者、発達障害者、難病患者、高次脳機能障害者(有期→正規) | 90万円 | 1人あたりの支給総額(45万円×2期) | 支給対象期間1年 | | JEED 職場支援員助成金(配置・一般労働者) | 月額4万円 | 1人あたりの月額 | 最大2年間(精神障害者は最大3年間) | | JEED 企業在籍型職場適応援助者助成金(精神障害者・一般労働者) | 月額12万円 | 月額支給限度額 | 最長6か月 | **特開金の重度障害者等に精神障害者**が、年齢を問わず全員含まれます。重度の身体障害者・知的障害者や、45歳以上の身体障害者・知的障害者と同じ最高額の区分です。 トライアル雇用助成金の月額は上限額です。実就労日数の割合が75%未満になると、段階的に減額されます。 障害者正社員化コースは、第1期と第2期に分けて申請します。第1期で不支給になると、第2期は申請できません。 表の額はすべて中小企業のものです。特開金・障害者正社員化コース・表に挙げたJEEDの2つの助成金は、大企業だとこれより低い額になります。たとえば特開金の重度障害者等・フルタイムは、大企業だと支給総額100万円です。 経営の話として見ると、額の大きさより入金の時期のほうが効きます。特開金の240万円は40万円ずつの6回で、起算日から3年間かけて入る形です。人件費は毎月出ていくので、資金繰りの表に総額をそのまま足すと合いません。助成金は採用を決める理由ではなく、決めたあとに回収する原資だと考えています。 ## B型の利用者を雇うと、助成金は出ないのか B型の利用者が対象にならないのは、事業所と雇用契約を結ばず、雇用保険の被保険者にならないからです。 この結論は、1つの条文から出てくるものではありません。性質の違う2つの一次情報を組み合わせた帰結です。1つ目は、B型が雇用契約を結ばない通所の就労・生産活動支援だという制度の性格です。 2つ目は、助成金が求める入口の要件です。特開金は、雇用保険の一般被保険者等としての雇い入れを求めています。トライアル雇用助成金も、「継続雇用する労働者」を一般被保険者等となる者と定義しています。キャリアアップ助成金の「有期雇用労働者等」は、労働契約を締結する労働者を指します。この2つを合わせると、B型の利用者はどの制度の入口にも立てない、という結論になります。 厚生労働省がB型の利用者を名指しして対象外と書いているわけではありません。名指しの除外が確認できたのは、JEEDの作業施設設置等助成金と障害者福祉施設設置等助成金です。A型の利用者については、名指しの除外がいくつもあります。 | 対象 | 事業所との契約 | 雇い入れの3制度 | JEEDの助成金 | 判定の強さ | | --- | --- | --- | --- | --- | | B型の利用者 | 利用契約(工賃を受け取る) | 対象にならない | 対象にならない | 要件との組み合わせによる帰結。JEEDの2つの設置等助成金だけ名指しの除外がある | | A型の利用者 | 雇用契約 | 制度によって分かれる | 対象にならないものが多い | 支給要領・パンフレットに明記されている | | 事業所の職員(支援員・サビ管・管理者等) | 雇用契約 | 対象になりうる | 対象になりうる | 除外規定がなく、一般の要件で判断される | A型の利用者の扱いは、制度ごとに正反対になります。トライアル雇用助成金は、A型の利用者としての雇い入れを対象事業主から除外しています。一方の特開金は、離職率などの条件つきで対象になりうる形をとっています。キャリアアップ助成金は、正社員化コースと障害者正社員化コースの対象労働者要件でA型の利用者を除いています。賃金規定等改定コースなど処遇改善系の3コースには、パンフレット上、同じ除外の文言が見当たりません。 職員として雇う場合は、障害福祉サービス事業所であることを理由に除外する規定が見当たりません。一般の要件だけで判断されます。 ここは、書かれていないことの扱いが難しい部分です。B型の利用者は名指しの除外が少ないので、書いていないなら使えるのではないか、と読む余地が残ります。ただ、入口の要件が雇用保険の被保険者であることを求めている以上、B型の利用者では入口に立てません。**名指しの無さは使える根拠にならない**、と思っています。判断に迷う組み合わせは、労働局かハローワークに聞くのが早いです。 ## 申請は誰がやるのか。代行は頼めるのか 申請するのは雇う側の事業主で、報酬を得て代行できるのは社会保険労務士だけです。 雇用保険二事業の助成金と、障害者雇用納付金制度に基づくJEEDの助成金が該当します。申請書の作成・提出代行・事務代理は、社会保険労務士法が定める独占業務です。無資格のコンサルタントが報酬を得て代行することはできません。事業所が自分で申請するか、社会保険労務士に依頼するかの二択になります。 僕はイチドキリという会社で、補助金の申請代行もしています。デジタル化・AI導入、省力化投資、創意工夫チャレンジ、ものづくり、新事業進出で採択を取ってきました。**厚労省の雇用関係助成金は代行していません**。社会保険労務士の独占業務だからです。ここは資格で線が引かれているので、誰に頼むかで迷う場面ではないと思っています。 そのうえで、申請で共通して効くことが1つあります。申請の前に置かれた手続きを落とさないことです。特開金ならハローワークへの求人と紹介、キャリアアップ助成金なら計画の提出が先にあります。この順番を外すと、あとから書類をいくら整えても戻せません。受け取れる事業者とそうでない事業者の差は、中身より段取りで付くというのが僕の見方です。 もう1つ、期限の管理が事業主の仕事として残ります。 | 制度 | 事前の手続 | 支給申請の期限 | | --- | --- | --- | | 特定求職者雇用開発助成金 | ハローワーク等への求人と紹介 | 支給対象期の末日の翌日から2か月以内 | | トライアル雇用助成金 | ハローワーク等への計画書の提出 | トライアル雇用終了日の翌日から2か月以内 | | キャリアアップ助成金 | 実施日の前日までのキャリアアップ計画の提出 | 6か月分の賃金を支給した日の翌日から2か月以内 | | JEEDの各助成金 | 措置の実施・工事の着手前の認定申請 | 助成金ごとに定められた期間 | 不正受給の扱いは重く設定されています。返還額に加えて、年3%の延滞金と返還額の20%の違約金が請求されます。取消しから5年間は各種の助成金を受けられません。支給申請書と添付書類の写しは、支給決定から5年間の保存が必要です。 利用者の就職先の企業から助成金の有無を聞かれたときは、答える前に確認する順番を決めておくことになります。 最初に確認するのは、就職の入り口がハローワーク等の紹介かどうかです。特開金もトライアル雇用助成金も、紹介より前に選考が始まっていると対象外になります。求人サイトからの直接応募で決まった就職には使えません。 次に、雇い入れの形を確認します。試行雇用から始めるならトライアル雇用助成金、最初から継続雇用に進むなら特開金という分かれ方になります。 週の所定労働時間も、先に聞いておく順番になります。特開金は20時間以上30時間未満が短時間労働者の区分で、額の段が変わるためです。 伝える相手は企業の事業主です。事業所は申請の当事者ではないので、額を断定せずに、労働局とハローワークに確認してもらう形が無難です。 最初に決めるのは制度の名前ではなく、場面のほうだと思っています。自法人で職員を雇うのか、利用者の就職先に説明するのか。場面が決まれば申請する主体が決まり、主体が決まれば入口の要件が決まります。額を調べるのは、そのあとで間に合います。結局、この順番が一番大事だと思っています。 ## あわせて読む 助成金の前に収入の仕組みを押さえておくと、場面の切り分けが速くなります。 - [就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか](/column/b-gata-hojokin/) … 収入の仕組みと、開設・設備投資・雇用で使える制度の全体像 - [就労継続支援A型とB型は何が違うのか](/column/b-gata-a-gata-chigai/) … 雇用契約の有無で制度がどう分かれるか 個別の制度をもう一段深く見るときは、次の2本です。 - [特定求職者雇用開発助成金はB型で使えるか](/column/tokutei-kyushokusha-koyou-kaihatsu-b-gata/) … 特開金の要件を、利用者・A型・職員の別に分けて読む - [障害者を1人雇うと助成金は月いくらか](/column/shogaisha-koyou-joseikin-tsuki-ikura/) … 総額・1期あたり・月額換算の違いと、後払いになる時期 自法人で職員を雇う場面に進むなら、採用の実務はこちらにまとめています。 - [就労継続支援B型の支援員採用](/column/b-gata-shienin-saiyou/) … 資格要件より先に決まる人数と、常勤の置き方 ### よくある質問 Q. B型の利用者を雇うと助成金は出ますか? A. 出ません。B型の利用者とは雇用契約を結ばないため、雇用保険の被保険者としての雇い入れを求める要件を満たせません。これはB型の制度上の性格と各助成金の要件を組み合わせた帰結です。B型の利用者を名指しで除外している一次情報は、JEEDの作業施設設置等助成金と障害者福祉施設設置等助成金のパンフレットに限られます。 Q. 自法人の職員として障害のある人を雇う場合は使えますか? A. 要件を満たせば対象になりえます。職員は通常の雇用契約に基づく労働者なので、利用者のような除外規定は置かれていません。ハローワーク等の紹介で雇い入れれば特定求職者雇用開発助成金、有期雇用から正規雇用に転換すればキャリアアップ助成金の対象になりえます。 Q. 助成金は1人あたりいくらもらえますか? A. 制度と障害区分と企業規模で変わります。令和8年度の中小企業なら、特定求職者雇用開発助成金は重度障害者等のフルタイム雇用で1人あたりの支給総額240万円です。ただし6か月ごとの支給対象期に40万円ずつ分けて支給されます。一度に240万円が入る仕組みではありません。 Q. 利用者の就職先の企業に助成金は出ますか? A. 企業側が要件を満たせば対象になりえます。特定求職者雇用開発助成金もトライアル雇用助成金も、ハローワーク等の紹介による雇い入れが要件です。紹介より前に選考が始まっていると対象外になるため、就職活動の入り口がどこだったかの確認が要ります。 Q. 申請の代行を依頼できますか? A. 社会保険労務士に依頼できます。雇用保険二事業の助成金と障害者雇用納付金制度に基づく助成金は、申請書の作成・提出代行・事務代理が社会保険労務士の独占業務です。無資格のコンサルタントが報酬を得て代行することはできません。 Q. 介護福祉機器の導入に使える助成金はありますか? A. 介護福祉機器助成コースは廃止されています。人材確保等支援助成金のこのコースは、令和6年3月31日で終了しました。同じ助成金の雇用管理制度・雇用環境整備助成コースは続いており、賃金規定制度のメニューを除いて法人格や規模の制限は置かれていません。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_konnan.html(支給要件(雇用保険の一般被保険者等としての雇い入れ)を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)支給要領(R8.4.1版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001684391.pdf(0204(表-2 助成対象期間)・0301ロ(表-3 支給額)・0205(対象外となる雇入れ)を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)のご案内(事業主向けパンフレット、R8.3.5版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001684468.pdf(p.2(ハローワーク等の紹介要件)・p.4(Q&A 事業主の把握不足)を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース)支給要領(R8.4.8版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001082118.pdf(0201(継続雇用する労働者の定義)・0203・0401イ(A型事業所の除外)・0501(支給額)を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/shougai_trial.html(支給額・対象者・試行期間を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)のご案内(令和8年度版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001685042.pdf(P.2(中小企業事業主の範囲)・P.9(支給額)・P.10(対象労働者要件)・P.14-15(申請期限)を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001687992.pdf(P.17(正社員化コースの対象労働者要件)・P.22(申請期限)を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「キャリアアップ助成金 トップページ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html(コース構成と令和8年4月8日付の更新日表示を確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用納付金制度の概要(令和8年度版)」 https://www.jeed.go.jp/disability/about_levy_grant_system.html(納付金・調整金・報奨金の額を確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「7(1)障害者雇用率制度(障害者雇用ハンドブック)」 https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/q2k4vk000003mbma.html(法定雇用率2.7%(令和8年7月〜)と対象事業主規模を確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用納付金関係助成金のごあんない(職場適応援助者、令和8年4月版)」 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/q2k4vk000001wtq5-att/v1tt1c0000002zmx.pdf(p.2(支援対象障害者の除外規定)・p.31-32(企業在籍型の月額支給限度額)を確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者介助等助成金のごあんない(Vol.1/2 その1、令和8年度)」 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/q2k4vk000001wtq5-att/v1tt1c0000002zig.pdf(p.18-19(職場介助者助成金)・p.54-56(職場支援員助成金)・p.65(認定申請の時期)を確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金のごあんない(その1、令和8年度)」 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/q2k4vk000001wtq5-att/v1tt1c0000002zg6.pdf(p.11(第1種の助成率・限度額とA型/B型の除外規定)・p.51-52(福祉施設設置等助成金の除外規定と職員の例外)・p.56(助成率・限度額)を確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用相談援助助成金の手続きについて(令和8年度)」 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/q2k4vk000001wtq5-att/v1tt1c0000002zv5.pdf(p.2-3(対象障害者とならない方)・p.5-6(支給額)を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省(社会・援護局障害保健福祉部)「就労継続支援A型、B型に係る報酬について≪論点等≫(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第9回 資料3)」 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000177374.pdf(p.3・p.21でA型・B型の対象者と雇用契約の有無を確認・2026年8月23日確認) - e-Gov法令検索(デジタル庁)「社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)」(第2条第1項第1号〜第2号・第27条・別表第一を確認・2026年8月23日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.23 初回公開 --- ## 障害者を1人雇うと 助成金は月いくらか 特開金・トライアル・キャリアアップ URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shogaisha-koyou-joseikin-tsuki-ikura/ カテゴリー: 補助金・助成金 公開: 2026-08-23 / 更新: 2026-08-23 制度基準日: 2026.08.23 ### 結論 令和8年度の時点で、障害者を1人雇ったときの助成金は、月額で決まるものと総額で決まるものに分かれます。特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は総額で決まります。中小企業がフルタイムで重度障害者等を雇う場合、支給総額は1人あたり240万円です。助成対象期間の36か月で割ると、1か月あたり約66,667円になります。ただしこれは計算上の目安です。実際は6か月ごとの支給対象期に40万円ずつ、6回に分けて後払いされます。 障害者トライアル雇用助成金は、はじめから月額で決まっています。精神障害者なら最初の3か月が1人あたり月額最大8万円、その後の3か月が月額最大4万円です。キャリアアップ助成金の障害者正社員化コースは月額ではありません。有期から正規への転換1件あたりの額で、中小企業なら1人あたり120万円です(重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者の場合)。3制度とも後払いです。ただし最初の支給申請ができる時期は制度で分かれます。特開金とキャリアアップ助成金は、雇入れや転換から6か月が過ぎた後です。障害者トライアル雇用助成金は試行期間が原則3か月で、その終了日の翌日から申請できます。 - 特開金(中小企業・フルタイム・重度障害者等): 支給総額は1人あたり240万円。6か月ごとの支給対象期に40万円を6回。助成対象期間3年。36か月で割ると1か月あたり約66,667円(計算上の目安) - 特開金(大企業・フルタイム・重度障害者等): 支給総額は1人あたり100万円。3回に分けて支給。助成対象期間1年6か月。18か月で割ると1か月あたり約55,556円(計算上の目安) - 障害者トライアル雇用助成金: 1人あたり月額最大4万円。精神障害者は最初の3か月が月額最大8万円、その後の3か月が月額最大4万円。試行期間は原則3か月、精神障害者は最長6か月 - キャリアアップ助成金 障害者正社員化コース: 月額ではなく転換1件あたりの額。中小企業で有期から正規なら1人あたり120万円(重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者)。支給対象期間1年を2期に分けて支給 - 入金の時期: 3制度とも後払い。最初の支給申請は、特開金とキャリアアップ助成金が雇入れや転換から6か月経過後、トライアル雇用助成金は原則3か月の試行期間の終了後。期限はいずれも末日等の翌日から2か月以内 - 対象にならない人: B型の利用者は雇用契約を結ばないため3制度とも対象外。A型の利用者は制度ごとに扱いが分かれる 根拠: 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)支給要領(R8.4.1版)」 ### 本文 ## 月額に直すときの前提 3制度は額の決め方が違うので、月額に直す前に総額・支給期間・対象になる人を分けて確認します。 障害者を1人雇ったときに使える代表的な助成金は3つあります。金額の決まり方は制度ごとに違います。 | 制度(令和8年度) | 額の決まり方 | 月額に直せるか | | --- | --- | --- | | 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) | 支給総額が決まっていて、6か月ごとの支給対象期に分けて支給 | 総額を助成対象期間の月数で割れば計算できる | | 障害者トライアル雇用助成金 | はじめから1人あたりの月額 | 直す必要がない | | キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース) | 転換1件あたりの額 | 月額の性質を持たない | 月額に直せるのは、支給総額と助成対象期間の両方が決まっている制度だけです。次に、雇う相手が対象になるかを確かめます。同じ1人を雇う場合でも、次の3者で判定が分かれます。 | 雇う相手 | 特開金 | トライアル雇用助成金 | キャリアアップ助成金(正社員化系2コース) | | --- | --- | --- | --- | | B型の利用者 | 対象外 | 対象外 | 対象外 | | A型の利用者 | 条件つきで対象になりうる | A型利用者としての雇入れは対象外 | 対象外 | | 事業所の職員(支援員・サビ管など) | 対象になりうる | 対象になりうる | 対象になりうる | B型の利用者が対象外になるのは、名指しの規定があるからではありません。特開金は、雇用保険の一般被保険者等として雇い入れることを支給要件にしています。トライアル雇用助成金の「継続雇用する労働者」も、一般被保険者等となる者と定義されています。B型の利用者は事業所と**雇用契約を結ばず**、雇用保険の被保険者になりません。この2つを合わせると、どちらの制度も入口の要件を満たせないという結論になります。 A型の利用者については、名指しの規定があります。トライアル雇用助成金は、A型事業所が対象者をA型利用者として雇い入れる場合を、対象事業主から除外しています。キャリアアップ助成金の正社員化コースと障害者正社員化コースも、対象労働者の要件でA型事業所の利用者を除いています。**特開金だけは扱いが逆**です。A型事業所が自らの利用者を雇い入れる場合も、対象になりえます。ただし離職割合の特則があります。過去にこのコースの対象になったA型利用者のうち、基準期間内に確認日が来る者が5人以上いて、離職割合が25%を超えていると不支給になります。 ## 特定求職者雇用開発助成金の区分ごとの月額 中小企業がフルタイムで重度障害者等を雇うと、支給総額240万円を36か月で割って1か月あたり約66,667円です。 特開金の支給額は、対象者の区分と企業規模と労働時間の3つで決まります。令和8年度の障害者区分の額は次のとおりです。 | 対象者の区分(令和8年度) | 企業規模 | 1期あたり | 支給回数 | 支給総額(1人あたり) | 助成対象期間 | 総額÷月数(参考値) | | --- | --- | --- | --- | --- | --- | --- | | 身体障害者・知的障害者(重度以外)/フルタイム | 中小企業 | 30万円 | 4回 | 120万円 | 2年間 | 1か月あたり50,000円 | | 同上 | 大企業 | 25万円 | 2回 | 50万円 | 1年間 | 1か月あたり約41,667円 | | 重度障害者等(精神障害者を含む)/フルタイム | 中小企業 | 40万円 | 6回 | 240万円 | 3年間 | 1か月あたり約66,667円 | | 同上 | 大企業 | 33万円・33万円・34万円 | 3回 | 100万円 | 1年6か月間 | 1か月あたり約55,556円 | | 身体障害者・知的障害者・精神障害者/短時間 | 中小企業 | 20万円 | 4回 | 80万円 | 2年間 | 1か月あたり約33,333円 | | 同上 | 大企業 | 15万円 | 2回 | 30万円 | 1年間 | 1か月あたり25,000円 | 短時間労働者は、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の人を指します。重度障害者等の区分には、精神障害者が**年齢を問わず全員**含まれます。45歳以上という年齢区分が付くのは身体障害者と知的障害者で、精神障害者にこの区分はありません。 表の「総額÷月数」は、この記事で**総額を単純に割った参考値**です。毎月この額が入るわけではありません。支給は6か月ごとの「支給対象期」を単位に、まとめて行われます。支給対象期は、雇入れ日を起算日として6か月ごとに第1期・第2期と区切ります。賃金締切日がある場合は、直後の締切日の翌日が起算日になります。 ## 障害者トライアル雇用助成金はもともと月額で決まっている トライアル雇用助成金は月額で決まっていて、精神障害者は最初の3か月が1人あたり月額最大8万円です。 この制度は、総額から月額を計算する必要がありません。支給額そのものが1人あたりの月額として決められています。 | コース(令和8年度) | 対象者 | 支給額(1人あたり・月額) | 試行期間 | | --- | --- | --- | --- | | 障害者トライアルコース | 精神障害者 | 最初の3か月間は最大8万円、その後の3か月間は最大4万円 | 原則3か月。精神障害者は最長6か月まで延長可 | | 障害者トライアルコース | 精神障害者以外の障害者 | 最大4万円 | 原則3か月 | | 障害者短時間トライアルコース | 精神障害者、または精神障害者を除く発達障害者 | 最大4万円 | 3か月以上12か月以内 | 短時間トライアルコースは、雇入れ時の週所定労働時間が10時間以上20時間未満で始めます。試行期間中に20時間以上を目指す制度です。特開金の「短時間労働者」とは**時間の範囲が違う**ので、混同しないよう注意します。 表の額はいずれも「最大」であって、固定額ではありません。実就労日数を予定就労日数で割った割合に応じて、次のとおり減額されます。 - 割合が75%以上のとき、満額 - 75%未満50%以上のとき、満額の4分の3に相当する額 - 50%未満25%以上のとき、満額の2分の1に相当する額 - 25%未満0%超のとき、満額の4分の1に相当する額 - 0%のとき、不支給 ## キャリアアップ助成金は月額ではなく一時金 キャリアアップ助成金は転換1件あたりの額で決まり、月ごとに入る性質の助成金ではありません。 障害者正社員化コースは、障害のある有期雇用労働者等を正規雇用等に転換した事業主に支給されます。令和8年度の額は次のとおりです。 | 障害の区分(令和8年度) | 転換のパターン | 中小企業(1人あたり総額) | 大企業(1人あたり総額) | | --- | --- | --- | --- | | 重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者 | 有期から正規 | 120万円(60万円×2期) | 90万円(45万円×2期) | | 同上 | 有期から無期 | 60万円(30万円×2期) | 45万円(22.5万円×2期) | | 同上 | 無期から正規 | 60万円(30万円×2期) | 45万円(22.5万円×2期) | | 重度以外の身体障害者・知的障害者、発達障害者、難病患者、高次脳機能障害者 | 有期から正規 | 90万円(45万円×2期) | 67.5万円(第1期33.5万円・第2期34万円) | | 同上 | 有期から無期 | 45万円(22.5万円×2期) | 33万円(16.5万円×2期) | | 同上 | 無期から正規 | 45万円(22.5万円×2期) | 33万円(16.5万円×2期) | 支給対象期間は1年で、第1期6か月と第2期6か月の2期に分けて支給されます。総額を12か月で割れば月額の形にはなりますが、支払いは2回で終わります。特開金のように何年も続く制度ではありません。支給額が各支給対象期の賃金総額を超える場合は、賃金総額が上限になります。 障害のない職員を正社員化する場合は、正社員化コースが別にあります。中小企業で有期から正規に転換する額は、**重点支援対象者に該当すれば**80万円です。該当しない場合は40万円で、こちらは第1期のみの支給になります。 ## 支給申請から入金までの時期 3制度とも後払いで、最初の支給申請はトライアル雇用助成金が原則3か月後、特開金とキャリアアップ助成金は6か月後です。 | 制度 | 支給申請のタイミング | 申請の期限 | | --- | --- | --- | | 特定求職者雇用開発助成金 | 6か月ごとの支給対象期が終わるたび | 支給対象期の末日の翌日から2か月以内 | | 障害者トライアル雇用助成金 | トライアル雇用の終了後 | 終了日の翌日から2か月以内。精神障害者で6か月を超える場合は6か月経過日を起算日にできる | | キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース) | 転換後6か月分の賃金を支払った後 | 賃金を支給した日の翌日から2か月以内。第2期はその6か月後 | 待ち時間が短いのはトライアル雇用助成金です。試行期間が原則3か月で終わるので、申請できる時期も他の2制度より早くなります。 申請してから支給決定と入金までにどれだけかかるかは、今回確認した一次情報に示されていません。入金の時期まで約束された制度ではない、という前提で見ておくことになります。 事前の手続にも制度差があります。特開金とトライアル雇用助成金は、ハローワーク等の紹介による雇入れが要件です。**紹介より前に選考を始めていると対象外**になります。キャリアアップ助成金は、転換を実施する日の前日までにキャリアアップ計画を提出しておく必要があります。 なお、3制度はいずれも雇用保険法に基づく雇用関係助成金です。申請書の作成や提出の代行を報酬を得て業として行えるのは、社会保険労務士に限られます。 月額に直した数字は、採用の可否を決める材料ではなく、採用後の見通しを立てる材料として置くことになります。 順番としては、まず求人の出し方を決めます。特開金とトライアル雇用助成金はハローワーク等の紹介が入口です。先に求人サイトで選考を始めてしまうと、金額の話に入る前に対象から外れます。 次に、入金の時期を資金繰り表に落とします。最初の申請ができるのは、トライアル雇用助成金なら原則3か月の試行期間が終わった後です。特開金とキャリアアップ助成金は6か月が過ぎた後になります。そこから支給決定を待つことになります。人件費のほうは雇入れの月から出ていきます。特開金を軸に組むなら、少なくとも半年分は助成金なしで回す前提になります。 月額に直した数字を人件費の値引きとして先に見込むと、この入金までのずれが表に乗りません。採用計画では、月額換算の数字と入金予定の数字を別の行に置くほうが安全です。 ## 減額・不支給になる条件 月額に直した額はあくまで上限で、勤務実績が基準を下回ると支給対象期ごとに減額されます。 | 制度 | 減額・不支給になる場面 | | --- | --- | | 特定求職者雇用開発助成金 | 支給対象期の実労働時間が基準を下回ると減額。フルタイムは週30時間の8割、短時間は週20時間の8割が基準 | | 特定求職者雇用開発助成金 | 対象労働者が支給対象期の途中で離職すると、原則としてその期は不支給 | | 障害者トライアル雇用助成金 | 実就労日数の割合が75%未満だと段階的に減額。0%なら不支給 | | キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース) | 第1期の支給申請で不支給になると、第2期は申請できない | A型事業所が自らの利用者を特開金で雇い入れる場合は、条件がもう一つ増えます。過去にこのコースの対象になったA型利用者のうち、基準期間内に確認日が来る者が5人以上いて、その離職割合が25%を超えていると不支給になります。 不正受給が分かったときの扱いも重く定められています。特開金は、支給決定の取消と既支給分の全額返還に加えて、取消日から5年間は各種助成金を受給できません。キャリアアップ助成金は、返還額に年3%の延滞金と、返還額の20%の違約金が請求されます。申請書類の写しは、どちらの制度も支給決定から5年間の保存が必要です。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか](/column/b-gata-hojokin/) 使える制度の全体像 - [B型事業所の職員採用](/column/b-gata-shienin-saiyou/) 支援員を採用するときの実務 ### よくある質問 Q. 障害者を1人雇うと助成金は月いくらですか? A. 区分によりますが、月5万円前後が一つの目安です。中小企業がフルタイムで重度以外の身体障害者・知的障害者を雇う場合、支給総額120万円を助成対象期間24か月で割ると1か月あたり50,000円です。重度障害者等なら240万円を36か月で割って約66,667円になります。どちらも総額を月数で割った計算上の目安で、実際は6か月ごとにまとめて支払われます。 Q. 助成金は毎月振り込まれますか? A. いいえ、毎月は振り込まれません。特定求職者雇用開発助成金は6か月ごとの支給対象期が単位で、期が終わるたびに申請して支払われます。障害者トライアル雇用助成金は月額で決まっていますが、支払いはトライアル雇用の終了後にまとめて行われます。 Q. 最初の入金はいつになりますか? A. 制度で分かれます。特定求職者雇用開発助成金とキャリアアップ助成金は、早くても雇入れや転換から6か月以上先になります。障害者トライアル雇用助成金は試行期間が原則3か月で、その終了日の翌日から申請できます。特開金は、第1期の6か月が終わった翌日から2か月以内に申請します。申請してから支給決定までにかかる期間は、今回確認した一次情報には示されていません。人件費は雇入れの月から出ていきます。トライアル雇用助成金なら3か月分、他の2制度なら半年分は、助成金なしで回す前提で見ておくことになります。 Q. 中小企業と大企業で額は違いますか? A. はい、同じ区分でも額が変わります。フルタイムで重度障害者等を雇う場合、支給総額は中小企業240万円、大企業100万円です。助成対象期間も中小企業3年、大企業1年6か月と差があります。キャリアアップ助成金は、資本金などのない事業主は常時雇用する労働者の数で中小企業かどうかを判定すると案内しています。 Q. B型の利用者を雇うと助成金は出ますか? A. いいえ、B型の利用者は3制度とも対象外です。特定求職者雇用開発助成金は、雇用保険の一般被保険者等としての雇い入れを支給要件にしています。B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばないため、この要件を満たせません。要件とB型の性格を合わせると対象外という結論になります。名指しで除外した規定があるわけではありません。 Q. 精神障害者は月8万円もらえますか? A. 障害者トライアル雇用助成金の最初の3か月に限った額です。4か月目からは月額最大4万円になり、支給は最長6か月までです。さらに実就労日数の割合が予定の75%未満だと段階的に減額されます。無条件で月8万円が出る制度ではありません。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)支給要領(R8.4.1版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001684391.pdf(0203・0204(表-2)・0301ロ(表-3)で支給対象期・助成対象期間・支給額を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_konnan.html(支給要件(雇用保険一般被保険者等としての雇い入れ)を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)のご案内(事業主向けパンフレット、R8.3.5版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001684468.pdf(p.2で支給申請の時期と提出先、p.3で不正受給時の取扱いを確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース)支給要領(R8.4.8版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001082118.pdf(0201(継続雇用する労働者の定義)・0401イ(A型事業所の除外)・0501(支給額と減額)を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/shougai_trial.html(支給額・対象者・試行期間を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001687992.pdf(P.14で正社員化コースの支給額と重点支援対象者の区分、P.17で対象労働者要件を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)のご案内(令和8年度版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001685042.pdf(P.2で中小企業事業主の範囲、P.9で支給額と2期制、P.10で対象労働者要件を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省(社会・援護局障害保健福祉部)「就労継続支援A型、B型に係る報酬について≪論点等≫(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第9回 資料3)」 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000177374.pdf(p.3・p.21でA型・B型の雇用契約の有無を確認・2026年8月23日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.23 初回公開 --- ## 障害者雇用納付金制度と JEEDの助成金|A型は雇用率に算入、 B型は算入されない URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shogaisha-koyou-noufukin-jeed/ カテゴリー: 補助金・助成金 公開: 2026-08-23 / 更新: 2026-08-23 制度基準日: 2026.08.23 ### 結論 障害者雇用納付金制度は、法定雇用率が未達成の事業主から納付金を集め、達成した事業主に調整金・報奨金を支給する制度です。令和8年度の額は、納付金が不足1人あたり月額50,000円、調整金が超過1人あたり月額29,000円、報奨金が超過1人あたり月額21,000円です。民間企業の法定雇用率は令和8年(2026年)7月から2.7%になり、雇用義務の対象は常用雇用労働者37.5人以上の事業主です。納付金の徴収と調整金の支給は常用労働者100人超、報奨金は100人以下の事業主が対象になります。 A型の利用者は事業所と雇用契約を結びます。納付金制度が対象にするのは雇用契約に基づく労働者です。この2つを合わせると、A型の利用者はA型事業所の常用雇用労働者数にも雇用障害者数にも算入され、雇用契約を結ばないB型の利用者はどちらにも算入されないことになります。一方でJEEDの助成金は扱いが違います。障害者作業施設設置等助成金と障害者福祉施設設置等助成金は、就労継続支援(A型・B型)の事業に本来必要な施設・設備を対象外とし、その利用者を支給対象障害者にできないと明記しています。利用者が使用する部分と明確に区別できる措置に限り、施設職員は対象になります。 - 障害者雇用納付金(令和8年度): 法定雇用率が未達成で常用労働者100人超の事業主から、不足1人あたり1か月あたり50,000円を徴収 - 障害者雇用調整金(令和8年度): 常時雇用労働者100人超の事業主に、超過1人あたり1か月あたり29,000円を支給。年間の支給対象人数が120人月を超えた分は1人あたり月額23,000円に減額 - 報奨金(令和8年度): 常時雇用労働者100人以下の事業主に、超過1人あたり1か月あたり21,000円を支給。年間420人月を超えた分は1人あたり月額16,000円に減額 - 法定雇用率(現行): 民間企業2.7%。令和8年(2026年)7月から適用。雇用義務の対象は常用雇用労働者37.5人以上の事業主 - A型・B型の利用者の扱い: A型の利用者は雇用契約があるため雇用率の算定に算入。B型の利用者は雇用契約がないため算入されない(いずれも制度の組み合わせによる帰結) - JEED助成金の除外: 障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金は、A型・B型の事業に本来必要な施設・設備とその利用者を対象外と明記 根拠: 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用納付金制度の概要(令和8年度版)」ほか(各項の出典は本文を参照) ### 本文 ## 障害者雇用納付金制度の骨格 障害者雇用納付金制度は、法定雇用率が未達成の企業から納付金を徴収し、達成した企業に調整金・報奨金を支給する制度です。 柱は3つあります。 - 法定雇用率が未達成の企業(常用労働者100人超)から障害者雇用納付金を徴収する - その原資で、法定雇用率を達成した企業に障害者雇用調整金を支給する - 報奨金を支給するほか、作業施設・設備の整備等に一時に多額の費用がかかる事業主に助成金を支給する 根拠法は障害者の雇用の促進等に関する法律と、同法の施行規則です。制度を運営するのは独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)です。申請窓口はJEEDの都道府県支部の高齢・障害者業務課で、東京と大阪は高齢・障害者窓口サービス課が担当します。提出方法は書面の持参・郵送か、e-Gov電子申請サービスのどちらかです。 対象になる「事業主」は、常用雇用労働者を雇用する事業主です。**国・地方公共団体と特殊法人等**は、この助成金の対象事業主に含まれません。 ## 法定雇用率と対象になる事業主の規模 民間企業の法定雇用率は令和8年7月から2.7%で、雇用義務の対象は常用雇用労働者37.5人以上の事業主です。 引き上げは2段階で行われました。 | 適用時期 | 民間企業の法定雇用率 | 雇用義務の対象になる常用雇用労働者数 | | --- | --- | --- | | 令和6年4月から | 2.5% | 40.0人以上 | | 令和8年7月から(現行) | 2.7% | 37.5人以上 | 2026年8月時点の現行値は2.7%です。すでに引き上げは済んでおり、これから上がる数値ではありません。次回以降の引き上げ予定は、本記事で確認した一次情報には書かれていません。 「37.5人」は端数を含む算定基準の人数です。自社が対象かどうかの判定は、所定の雇用義務数の算出式によります。数えるのは常用「労働者」数ではなく、**常用雇用労働者数**という規則上の人数です。 納付金と調整金には、これとは別の規模の線が引かれています。納付金の徴収対象は常用労働者100人超、調整金の支給対象は常時雇用労働者100人超の事業主です。報奨金は常時雇用労働者100人以下の事業主が対象です。 ## 納付金・調整金・報奨金の額 令和8年度は、納付金が不足1人あたり月額50,000円、調整金が超過1人あたり月額29,000円です。 額はいずれも1人あたり1か月あたりで定められています。 | 区分(令和8年度) | 対象になる事業主 | 額(1人あたり1か月あたり) | | --- | --- | --- | | 障害者雇用納付金 | 法定雇用率が未達成・常用労働者100人超 | 不足1人につき50,000円を徴収 | | 障害者雇用調整金 | 法定雇用率を超えて雇用・常時雇用労働者100人超 | 超過1人につき29,000円を支給 | | 報奨金 | 一定数を超えて雇用・常時雇用労働者100人以下 | 超過1人につき21,000円を支給 | 調整金と報奨金には、年間の支給対象人数による減額があります。調整金は**年間の支給対象人数が120人月超**になると、その超過分が1人あたり月額23,000円に下がります。報奨金は年間の支給対象人数が420人月を超えると、その超過分が1人あたり月額16,000円に下がります。 納付金の申告と、調整金・報奨金の申請は年1回です。前年度分をまとめて申告・申請する年度単位の手続きで、公募回のような締切はありません。具体的な受付期間は本記事では確認していないため、JEEDが公開する令和8年度の申告申請書記入説明書で確認してください。 ## A型の利用者は雇用率に算入され、B型の利用者は算入されない 雇用率の算定に入るかどうかは**雇用契約の有無**で分かれ、A型の利用者は入り、B型の利用者は入りません。 この線引きは、2つの事実を組み合わせた結論です。 1つ目は、A型とB型の制度上の違いです。A型は「雇用契約有」、B型は「雇用契約無」として区分されています(障害者総合支援法施行規則第6条の10第1号・第2号。JEEDの各パンフレットが引用)。 2つ目は、納付金制度が対象にする人の範囲です。障害者雇用促進法の雇用義務と納付金制度は、雇用契約に基づいて雇われる労働者を対象にしています。 この2つを合わせると、次のようになります。A型の利用者は事業所と雇用契約を結ぶので、A型事業所の常用雇用労働者数にも雇用障害者数にも乗ります。B型の利用者は工賃を受け取る利用契約なので、どちらの人数にも入りません。 | 立場 | 雇用契約 | 常用雇用労働者数 | 雇用障害者数 | | --- | --- | --- | --- | | B型の利用者 | 結ばない(工賃を受け取る利用契約) | 入らない | 入らない | | A型の利用者 | 結ぶ(雇用契約に基づく就労) | 入る | 障害者であれば入る | | 事業所の職員(支援員・サービス管理責任者等) | 結ぶ(通常の雇用契約) | 入る | 障害のある職員は入る | 表の判定はいずれも**制度の組み合わせによる帰結**です。「B型の利用者は納付金制度の算定対象にならない」と名指しで書いた厚生労働省・JEEDの文書は、本記事の調査では確認できていません。A型の利用者を算入すると明記した文書も、同じく見つかっていません。 ここから、A型を運営する法人には当事者としての立場が生まれます。A型事業所の常用雇用労働者数が100人を超える場合、法定雇用率が未達成なら納付金の納付義務が生じます。達成していれば調整金の受給資格が生じます。これも組み合わせによる帰結で、「A型事業所は納付金制度の対象になる」と直接説明した公式資料は確認できていません。 A型を併設する法人が法定雇用率を数えるときは、確認の順番を先に決めておくことになります。 納付金制度は事業主に課される制度なので、最初に確定させるのは法人としての常用雇用労働者数です。事業所ごとの人数を足し上げる前に、どの範囲を1つの事業主として扱うかを決めることになります。 次に、その人数にA型の利用者を含めます。A型の利用者は雇用契約に基づく労働者なので、常用雇用労働者数にも、障害者である以上は雇用障害者数にも乗ります。雇用契約書と労働時間の記録は、利用者の分と職員の分を分けて保管しておく段取りになります。 B型の利用者はこの人数に入りません。A型とB型を同じ法人で運営しているなら、雇用契約のある人とない人で名簿を分けておくと、数え直しの手間が減ります。 ただしこの数え方は制度の組み合わせから導いたもので、A型事業所を名指しした公式の解説は確認できていません。判断が分かれる規模なら、JEEDの都道府県支部に確認する順番になります。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援A型とB型の違い](/column/b-gata-a-gata-chigai/) 雇用契約の有無から生まれる制度上の差 ## 在宅就業障害者特例調整金・特例報奨金 在宅で働く障害者に仕事を発注した企業に支給される制度で、**支給先は発注した企業**です。 算定は、支払総額を評価額で割った単位数に、1単位あたりの額を掛ける形です。 | 区分(令和8年度) | 1単位あたりの額 | 算定式 | | --- | --- | --- | | 在宅就業障害者特例調整金 | 21,000円 | 21,000円 ×(当該年度の在宅就業障害者への支払総額 ÷ 評価額350,000円) | | 在宅就業障害者特例報奨金 | 17,000円 | 17,000円 ×(支払総額 ÷ 評価額350,000円) | B型事業所がこの制度に関わる形は、在宅就業支援団体として登録し、企業から仕事の発注を受ける形です。支給を受けるのは発注した企業であって、B型事業所ではありません。在宅就業支援団体の登録要件は本記事では確認していないため、扱いません。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型の在宅利用の要件](/column/b-gata-zaitaku-youken/) 在宅でサービスを提供するための条件 ## JEEDの助成金の一覧と、A型・B型が除外される助成金 JEEDの助成金は7種類あり、施設設置系はA型・B型の利用者を、職場適応援助者系はA型の利用者を除外しています。 まず額を並べます。 | 助成金(令和8年度) | 対象になる措置 | 額・上限 | | --- | --- | --- | | 障害者作業施設設置等助成金(第1種) | 買取り等による作業施設・設備の設置整備 | 費用の3分の2。対象障害者1人あたり450万円(作業設備は1人あたり150万円)。同一事業所・同一年度で中高年齢等措置分と合わせて4,500万円まで | | 障害者作業施設設置等助成金(第2種) | 賃借による作業施設の設置 | 費用の3分の2。対象障害者1人あたり月13万円(作業設備は1人あたり月5万円)。支給期間3年間 | | 障害者福祉施設設置等助成金 | 保健室・洗面所・休憩室・食堂などの設置整備 | 費用の3分の1。対象障害者1人あたり225万円。同一事業所・同一年度で2,250万円まで | | 障害者介助等助成金(職場介助者・手話通訳等担当者) | 職場介助者、手話通訳・要約筆記等担当者の配置・委嘱 | 費用の4分の3。配置は1人あたり月15万円、委嘱は1回1万円(1年あたり150万円まで)。最長10年間 | | 障害者介助等助成金(職場支援員) | 精神障害者・発達障害者等の定着支援を行う職場支援員の配置・委嘱 | 配置は一般労働者で中小企業が月4万円、中小企業以外が月3万円。最大2年間(精神障害者は最大3年間) | | 職場適応援助者助成金(訪問型) | 訪問型ジョブコーチによる支援活動 | 支援活動1回あたり9,000円または18,000円。1日あたり36,000円まで | | 職場適応援助者助成金(企業在籍型) | 自社に配置するジョブコーチによる支援 | 月額の支給限度額は、精神障害者以外の一般労働者で中小企業8万円・中小企業以外6万円。最長6か月 | | 障害者雇用相談援助助成金 | 認定を受けた事業者による雇用の相談援助 | 事業実施分は利用事業主1社あたり1回限りで80万円または60万円 | | 重度障害者等通勤対策助成金/重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金/障害者能力開発助成金 | 通勤対策、多数雇用事業所の施設設置、能力開発 | 本記事では額を確認していません | 職場適応援助者助成金の訪問型は、支援時間4時間未満(精神障害者は3時間未満)が1回9,000円、それ以上が1回18,000円です。企業在籍型で精神障害者を支援する場合の限度額は、一般労働者で中小企業12万円・中小企業以外9万円に上がります。短時間労働者と特定短時間労働者には、これより低い限度額が別に置かれています。 施設設置系には共通の手続きがあります。支給対象費用が150万円以上1,000万円以下なら3者以上の相見積、1,000万円を超えるなら一般競争入札等が原則です。 ### A型・B型の事業所が除外される範囲 除外を受けるのは、障害者作業施設設置等助成金と障害者福祉施設設置等助成金です。就労継続支援(A型・B型)の事業を行う事業所からの申請では、**その事業に本来必要な施設・設備**の整備が支給対象外になります。あわせて、その事業の利用者を支給対象障害者として申請することもできないと定めています。 一方で例外も明記されています。**利用者が使用する部分と明確に区別**できる措置に限り、施設職員は対象になります。対象になるのは障害のある職員個人のための措置で、サービス提供に本来必要な設備そのものは対象外です。 B型を名指しで除外した一次情報として本記事で確認できたのは、この2つの助成金だけです。他の助成金でB型の利用者が対象外になる理由は、雇用契約がないという制度の性格からの帰結です。 A型の利用者については、複数の助成金に名指しの除外規定があります。 | 助成金 | A型の利用者の扱い | 根拠 | | --- | --- | --- | | 職場適応援助者助成金(訪問型・企業在籍型) | 支援対象障害者にできない | パンフレットに明記 | | 障害者雇用相談援助助成金 | 対象障害者にならない | パンフレットに明記 | | 障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金 | 支給対象障害者として申請できない | パンフレットに明記 | B型事業所が支援する側に回る道もあります。訪問型職場適応援助者助成金の実施主体は「認定法人」で、社会福祉法人が代表例として挙げられています。ただし認定法人には就労支援の実績要件があり、B型の指定だけでは満たせません。求められるのは次のいずれかです。 - 障害者就業・生活支援センター・就労移行支援・就労定着支援のいずれかの指定を受けていること - 過去1〜2年で就職者または職場実習の受入れが3件以上あること 同一法人でこれらを併設していれば、要件を満たす余地があります。 申請の時期にも決まりがあります。JEEDの助成金は通年受付で、公募回のような締切はありません。ただし認定申請は、措置の実施・配置・委嘱・工事の着手より前が原則です。職場支援員なら、配置や契約開始の予定日の1か月前の応当日までに認定申請を出します。事後に遡って申請することは原則できません。 不正受給には重い措置が置かれています。受給資格の不認定・取消しに加えて、返還額に年率3%の延滞金と2割相当の割増金が加わります。事業主名等の公表と、5年間の新規申請不可も定められています。 なお、これらの助成金の申請書の作成・提出を報酬を得て代行できるのは社会保険労務士だけです(社会保険労務士法第2条第1項・第27条)。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか](/column/b-gata-hojokin/) B型が使える補助金・助成金の全体像 ### よくある質問 Q. 障害者雇用納付金はいくらですか? A. 不足1人あたり1か月あたり50,000円です。法定雇用率が未達成で、常用労働者100人超の事業主から徴収されます。令和8年度の額です。 Q. B型の利用者は法定雇用率に算入されますか? A. いいえ、算入されません。B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばず、工賃を受け取る利用契約だからです。納付金制度が対象とする労働者に当たらないという組み合わせによる帰結で、名指しで対象外と書いた厚生労働省・JEEDの文書は確認できていません。 Q. A型の利用者は法定雇用率に算入されますか? A. はい、算入されることになります。A型は雇用契約に基づく就労なので、A型事業所の常用雇用労働者数にも雇用障害者数にも乗ります。これも制度の組み合わせによる帰結で、A型を名指しした公式の解説は確認できていません。 Q. B型事業所はJEEDの助成金を使えますか? A. 障害のある職員向けなら使える余地があります。障害者福祉施設設置等助成金は、A型・B型の事業に本来必要な施設・設備と、その事業の利用者を対象外としています。ただし利用者が使用する部分と明確に区別できる措置に限り、施設職員は対象になると明記されています。 Q. 障害者雇用調整金と報奨金は何が違いますか? A. 対象になる事業主の規模が違います。調整金は常時雇用労働者100人超の事業主に超過1人あたり月額29,000円、報奨金は100人以下の事業主に超過1人あたり月額21,000円が支給されます。 Q. JEEDの助成金に締切はありますか? A. 通年受付で、公募回のような締切はありません。ただし認定申請は措置の実施や工事の着手より前が原則です。職場支援員の配置なら、配置や契約開始の予定日の1か月前の応当日までに認定申請を出します。 ### 根拠資料 - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用納付金制度の概要(令和8年度版)」 https://www.jeed.go.jp/disability/about_levy_grant_system.html(納付金・調整金・報奨金・在宅就業障害者特例調整金/特例報奨金の額と算定式を確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「7(1)障害者雇用率制度(障害者雇用ハンドブック)」 https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/q2k4vk000003mbma.html(法定雇用率2.5%→2.7%、対象事業主40.0人→37.5人を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「障害者の法定雇用率制度トップページ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/index.html(現行の法定雇用率2.7%の記載を確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用納付金関係助成金のごあんない(職場適応援助者、令和8年4月版)」 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/q2k4vk000001wtq5-att/v1tt1c0000002zmx.pdf(p.1(制度の骨格・事業主の定義)、p.2・p.27(A型利用者の除外規定)、p.4-5(認定法人の要件)、p.15(訪問型の支給額)、p.31-32(企業在籍型の支給限度額)、p.5-6(不正受給の措置)を確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者介助等助成金のごあんない(Vol.1/2 その1、令和8年度)」 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/q2k4vk000001wtq5-att/v1tt1c0000002zig.pdf(p.18-19・p.24(職場介助者助成金と継続措置)、p.34-35(手話通訳・要約筆記等担当者助成金)、p.54-56(職場支援員助成金)、p.65(認定申請の時期)を確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金のごあんない(その1、令和8年度)」 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/q2k4vk000001wtq5-att/v1tt1c0000002zg6.pdf(p.11-12(第1種の額と就労継続支援A型・B型の除外規定・相見積)、p.37(第2種)、p.51-52(対象事業主と職員の例外)、p.56(障害者福祉施設設置等助成金の助成率・限度額)を確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用相談援助助成金の手続きについて(令和8年度)」 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/q2k4vk000001wtq5-att/v1tt1c0000002zv5.pdf(p.2-3(対象事業者・対象障害者・A型利用者の除外)、p.5-6(支給額)を確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「助成金(納付金制度に基づく助成金の一覧)」 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/index.html(助成金7種類の構成を確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「令和8年度障害者雇用納付金制度申告申請書記入説明書」 https://www.jeed.go.jp/disability/koyounoufu/nofukin_manual/pageindices/index11.html(年度単位の申告・申請手続きであることを確認(受付期間の具体的な日付は未確認)・2026年8月23日確認) - e-Gov法令検索(デジタル庁)「社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)」(第2条第1項・第27条・別表第一で申請代行の業務独占を確認(法令ID 343AC1000000089)・2026年8月23日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.23 初回公開 --- ## 障害者トライアル雇用助成金の 期間と月額 短時間コースの使いどころ URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shogaisha-trial-koyou-joseikin/ カテゴリー: 補助金・助成金 公開: 2026-08-23 / 更新: 2026-08-23 制度基準日: 2026.08.23 ### 結論 障害者トライアル雇用助成金は、ハローワーク等の紹介を受けた障害者を試しに雇う事業主に支給されます。正式には、トライアル雇用助成金の障害者トライアルコースと障害者短時間トライアルコースです。障害者トライアルコースの支給額は1か月あたり最大4万円で、期間は原則3か月です。精神障害者を雇い入れる場合は、最初の3か月が1か月あたり最大8万円、続く3か月が最大4万円になり、通算で最長6か月です。額はいずれも1か月あたりの上限で、期間全体の総額ではありません。令和8年4月8日版の支給要領で確認した内容です。 就労継続支援B型の利用者は、この助成金の対象労働者になりません。対象を「一般被保険者等となる者」とする定義と、B型の利用者が雇用契約を結ばないことを合わせると、そうなります。支給要領がB型を名指しして除外しているわけではありません。A型については、A型の事業を行う事業所は対象事業主とならないと支給要領が明記しています。利用者ではなく職員として雇い入れる場合は、この除外に当たりません。B型の事業所にとっての使いどころは、一般就労へ移る利用者の受け入れ先企業に説明する場面です。なお申請書の作成・提出代行や事務代理を報酬を得て業として行えるのは、社会保険労務士だけです。 - 障害者トライアルコースの額: 1か月あたり最大4万円。精神障害者は最初の3か月が1か月あたり最大8万円、続く3か月が最大4万円(令和8年度) - 支給期間の上限: 障害者トライアルコースは原則3か月。精神障害者を雇い入れる場合とテレワーク勤務の場合は最長6か月。障害者短時間トライアルコースは3か月以上12か月以内 - 障害者短時間トライアルコース: 1人につき1か月あたり最大4万円。週の所定労働時間10時間以上20時間未満で始め、期間中に20時間以上を目指す。対象は精神障害者と発達障害者に限られる - 入口の要件: ハローワーク等への求職申込と、そこからの職業紹介が必須。事業主が紹介より前に選考を開始していないこと - B型・A型・職員の別: B型の利用者は対象外(要件の組み合わせによる帰結)。A型の利用者としての雇入れは支給要領が明記して除外。利用者ではなく職員としての採用は対象になりうる - 申請の期限: 原則としてトライアル雇用終了日の翌日から2か月以内。試行期間が6か月を超える場合は6か月経過日も起算日にできる 根拠: 厚生労働省「トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース)支給要領(R8.4.8版)」 ### 本文 ## 障害者トライアル雇用助成金の骨格 ハローワーク等の紹介を受けた障害者を、一定期間試しに雇って適性を見極めるための助成金です。 正式な名称は、トライアル雇用助成金の障害者トライアルコースと障害者短時間トライアルコースです。根拠は雇用保険法第62条第1項第6号と、雇用保険法施行規則第110条の3第3項です。支給要領は目的を、障害者を一定期間雇用して適性や業務遂行可能性を見極めることと定めています。求職者と求人者の相互理解を促し、早期就職の実現と雇用機会の創出を図る仕組みです。 入口の要件は3つです。 - ハローワーク・地方運輸局・同意職業紹介事業者等へ求職の申込みがあること - そこからの職業紹介を経て雇い入れること - 事業主が紹介より前に選考を開始していないこと **紹介より前に選考を開始していない**ことは、事業主側の要件です。先に採用の選考を進めてから求人を出す形では、この要件を満たしません。 「継続雇用する労働者」の定義も押さえておきます。支給要領は、一般被保険者等となる者で、一年を超える期間の雇用が見込まれる者と定めています。この定義には、就労継続支援A型事業所の利用者を除くという括弧書きが付いています。 事業主側には、過去の実績を見る不支給要件もあります。過去3年間にその事業所で開始したトライアル雇用等について、継続雇用への移行の実績を見る仕組みです。移行しなかった者と未報告の者の合計が3人を超え、かつ移行した者の数を上回る場合は対象外になります。懲戒解雇に相当する場合や本人都合の退職など、一定の例外は除かれます。 この助成金に公募回や締切はありません。対象者を雇い入れるたびに随時申請します。支給申請は原則として、トライアル雇用終了日の翌日から2か月以内です。 なお助成金の申請書の作成や提出代行、事務代理を報酬を得て業として行えるのは、社会保険労務士だけです。雇用保険二事業の助成金は、社会保険労務士法別表第一に掲げる法令に基づく手続にあたるためです。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか](/column/b-gata-hojokin/) 補助金・助成金の全体像 ## 額と支給期間 支給額は1か月あたり最大4万円で、期間の上限はコースと障害の種別によって3か月から12か月まで分かれます。額は**いずれも1か月あたりの上限**です。期間全体の総額ではありません。 | コースと対象者 | 1か月あたりの支給額 | 支給期間の上限(令和8年度) | | --- | --- | --- | | 障害者トライアルコース/精神障害者以外 | 最大4万円 | 原則3か月 | | 障害者トライアルコース/精神障害者 | 最初の3か月は最大8万円、続く3か月は最大4万円 | 最長6か月 | | 障害者トライアルコース/テレワーク勤務を行う場合 | 上の区分と同額 | 最長6か月 | | 障害者短時間トライアルコース | 1人につき最大4万円 | 3か月以上12か月以内 | 精神障害者以外の区分には、重度身体障害者・重度知的障害者と、そのほかの障害のある人が入ります。テレワーク勤務による延長は、令和3年4月1日以降に実施する場合に使えます。 障害者トライアルコースの対象者の要件も見ておきます。重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者のいずれかに当たる人は、そのまま対象になります。これに当たらない障害者は、次の3つのいずれかを満たす必要があります。 - 紹介日において、就労経験のない職業への就職を希望していること - 紹介日前2年以内に、離職と転職を2回以上繰り返していること - 紹介日前の離職期間が6か月を超えていること このほかに、短時間コースも含む両コースに共通して、紹介日の時点で満たすべき要件が4つあります。 - 継続して雇用されている者でないこと - 週30時間以上の自営業を営む者や役員でないこと - 学校に在学中でないこと(卒業年度の1月1日を過ぎて内定のない者を除く) - 他のトライアル雇用の期間中でないこと ## 精神障害者を雇い入れる場合の月額と減額の条件 最初の3か月は1か月あたり最大8万円ですが、実際に働いた日数の割合が75%を下回ると減額されます。 試行期間を最長6か月まで延長できるのは、精神障害者を雇い入れる場合とテレワーク勤務を行う場合です。精神障害者の支給額は、最初の3か月が1か月あたり最大8万円で、続く3か月が1か月あたり最大4万円になります。 「最大」と付いているのは、**実労働日数の割合で減額される**ためです。割合は、実際に就労した日数を予定就労日数で割って求めます。支給要領の表1・表2が、この割合に応じた支給額を定めています。 | 実労働日数の割合(実就労日数÷予定就労日数) | 1か月あたりの支給額(令和8年度) | | --- | --- | | 75%以上 | 満額 | | 50%以上75%未満 | 満額の4分の3に相当する額 | | 25%以上50%未満 | 満額の2分の1に相当する額 | | 0%超25%未満 | 満額の4分の1に相当する額 | | 0% | 支給されない | 体調の波で欠勤が続くと、8万円の枠がそのまま入るとは限りません。受け入れ先の企業に説明するときは、この減額の仕組みまで伝えておくと誤解が起きにくくなります。 ## 障害者短時間トライアルコース 週20時間未満から始めて、期間中に20時間以上へ引き上げることを目指すコースです。 雇入れ時の週の所定労働時間は、10時間以上20時間未満で設定します。試行期間は3か月以上12か月以内で、支給額は1人につき1か月あたり最大4万円です。**対象は精神障害者と発達障害者**に限られます。ここでいう発達障害者は、発達障害者支援法第2条に規定する発達障害者(精神障害者を除く)を指します。ほかの障害種別はこのコースの対象になりません。 名前が似ている制度と混同しやすい点が1つあります。特定求職者雇用開発助成金でいう「短時間労働者」は、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の人です。短時間トライアルコースの10時間以上20時間未満とは、時間の範囲が逆になります。 申請の期限は試行期間の長さで変わります。6か月以下で終わるなら、終了日の翌日から2か月以内に申請します。6か月を超える場合は、6か月経過日と終了日の翌日の両方を起算日にできます。 ## B型の利用者・A型の利用者の扱い B型の利用者は要件の組み合わせから対象外になり、A型の利用者は支給要領が名指しで除外しています。 まずB型の利用者です。支給要領は「継続雇用する労働者」を、一般被保険者等となる者と定めています。B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばず、工賃を受け取る利用契約です。この2つを合わせると、B型の利用者はこの助成金の対象労働者にならない、という結論になります。支給要領に**B型を名指しした除外**の記述はありません。 次にA型の利用者です。こちらは支給要領に、A型の事業を行う事業所は対象事業主とならないと明記されています。括弧書きで、対象者を当該事業所の職員等の利用者以外の者として雇い入れる場合は除く、とされています。「継続雇用する労働者」の定義自体にも、A型事業所の利用者を除くという括弧書きがあります。 | 立場 | 雇用契約 | 対象になりうるか | 判断のもと | | --- | --- | --- | --- | | B型の利用者 | 結ばない(工賃を受け取る利用契約) | ならない | 要件の組み合わせによる帰結 | | A型の利用者としての雇入れ | 結ぶ | ならない | 支給要領の明記 | | 事業所の職員(支援員・サービス管理責任者など) | 結ぶ(通常の雇用契約) | なりうる | 除外の規定が見当たらないことによる | 職員として雇う場合はどうなるか。支給要領の除外は、対象者をA型の利用者として雇い入れる場合の話です。B型でもA型でも、**利用者ではなく職員として採用する**なら、この除外には当たりません。ただし障害福祉サービス事業所の職員採用を除外しない、と明記した条文までは確認できていません。除外の規定が見当たらないことから、通常の要件だけで判断されると読める、という位置づけです。 一般就労へ移る利用者の受け入れ先企業に説明するなら、伝える順番を決めておくと通じやすくなります。 最初に伝えるのは、本採用の前に置く試行期間だという位置づけです。原則3か月で、その間は事業主に1か月あたり最大4万円が支給されます。 次に期間の幅を伝えます。精神障害のある人なら最長6か月まで取れます。週20時間未満から始める短時間コースは最長12か月ですが、対象は精神障害か発達障害のある人に限られます。 最後が手順です。求人をハローワークに出し、紹介を受けてから雇い入れる順番になります。先に本人と話を進めて選考を始めてしまうと、要件を満たさなくなります。 送り出す側としては、実習先の企業がハローワークに求人を出しているかを先に確認しておくことになります。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援A型とB型の違い](/column/b-gata-a-gata-chigai/) 雇用契約の有無による制度の分かれ方 ## 常用雇用へ移ったあとの特開金との関係 トライアル雇用の終了後も継続して雇用する場合、特定求職者雇用開発助成金の一部を受給できる場合があります。 厚生労働省のパンフレットに、その旨の記載があります。挙げられているのは、母子家庭の母等・父子家庭の父・中国残留邦人等永住帰国者、そして障害者です。これらの人をトライアル雇用助成金で雇い入れ、終了後も引き続き継続して雇用する場合の話です。 条件が1つあります。トライアル雇用の時点で**継続雇用が確実とみなされた場合**、特開金の第1期は支給されません。試行のための制度なので、最初から本採用が決まっている形は別扱いになります。 本採用に至った実績は、次の申請にも関わります。過去3年間の移行実績が悪いと、事業主自身がトライアル雇用助成金の対象から外れるためです。試して合わなければ終わりにできる制度ですが、移行しない前提で繰り返し使う設計にはなっていません。 特開金の額は、障害の種別・企業規模・週の所定労働時間の組み合わせで分かれます。トライアル雇用と続けて使うことを考えるなら、雇い入れる時点でどちらの区分に当たるかを確かめておくことになります。 関連する記事を挙げます。 - [就労選択支援とは何か](/column/shurou-sentaku-shien/) 一般就労へ移る前の支援の仕組み ### よくある質問 Q. 障害者トライアル雇用の助成金は月いくらですか? A. 1か月あたり最大4万円です。精神障害者を雇い入れる場合は、最初の3か月が1か月あたり最大8万円で、続く3か月が最大4万円です。実際の支給額は、実労働日数の割合に応じて減額されることがあります。 Q. 試行雇用の期間は何か月までですか? A. 障害者トライアルコースは原則3か月です。精神障害者を雇い入れる場合と、テレワーク勤務を行う場合は最長6か月まで延長できます。障害者短時間トライアルコースは3か月以上12か月以内です。 Q. B型の利用者にトライアル雇用助成金は使えますか? A. いいえ、B型の利用者は対象になりません。助成金の対象は、雇用保険の一般被保険者等となる労働者です。B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばないため、この要件を満たしません。支給要領がB型を名指しして除外しているわけではありません。 Q. A型事業所が利用者を雇い入れるときに使えますか? A. いいえ、A型の利用者としての雇入れは対象外です。支給要領が、A型の事業を行う事業所は対象事業主とならないと明記しています。ただし利用者ではなく職員として雇い入れる場合は、この除外に当たりません。 Q. ハローワークを通さずに採用しても使えますか? A. いいえ、ハローワーク等の紹介が必要です。求職の申込みと職業紹介を経ていることが対象者の要件です。事業主の側も、紹介より前に選考を開始していないことが要件になります。 Q. トライアル雇用のあと常用雇用にすると別の助成金は出ますか? A. 特定求職者雇用開発助成金の一部を受給できる場合があります。厚生労働省のパンフレットにその旨の記載があります。ただしトライアル雇用の時点で継続雇用が確実とみなされた場合、第1期は支給されません。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース)支給要領(R8.4.8版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001082118.pdf(0101(目的)・0201(継続雇用する労働者の定義)・0203・0301(対象者)・0401(対象事業主)・0402・0501(支給額)・0601(申請期限)を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/shougai_trial.html(支給額・対象者・試行期間の要旨を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)のご案内(事業主向けパンフレット、R8.3.5版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001684468.pdf(p.1 トライアル雇用終了後の継続雇用に関する記載を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省(社会・援護局障害保健福祉部)「就労継続支援A型、B型に係る報酬について≪論点等≫(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第9回 資料3)」 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000177374.pdf(p.3・p.21でA型・B型の雇用契約の有無を確認・2026年8月23日確認) - e-Gov法令検索(デジタル庁)「社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)」(第2条第1項・第27条・別表第一を確認・2026年8月23日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.23 初回公開 --- ## 中小企業省力化投資補助金は 障害福祉事業所で使えるか 一般型とカタログ注文型の違い URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shoryokuka-hojokin-fukushi/ カテゴリー: 補助金・助成金 公開: 2026-08-23 / 更新: 2026-08-23 制度基準日: 2026.08.23 ### 結論 中小企業省力化投資補助金には一般型とカタログ注文型があり、上限額も補助率も別に定められています。2026年8月23日時点で、一般型の第8回は公募開始が2026年8月18日、申請受付開始が2026年9月中旬の予定、締切が2026年10月中旬の予定です。カタログ注文型は公募回を設けず随時受付です。障害福祉の事業所が使えるかどうかは、業種ではなく法人格で決まります。株式会社は中小企業者の規模要件を満たせば対象、社会福祉法人は所轄庁の認可・従業員300人以下・収益事業の範囲内という3要件を満たせば対象です。一般社団法人と財団法人は公募要領に名指しで対象外と書かれています。 補助率と上限額は従業員数で変わります。一般型の補助率は中小企業が1/2、小規模企業者・小規模事業者が2/3です。社会福祉法人とNPO法人は、従業員20人以下の場合に限り2/3が適用されます。一般型の補助上限額は1事業者あたり従業員5人以下で750万円、6〜20人で1,500万円です。B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばないため、従業員数や事業場内最低賃金といった賃上げ要件の計算には入らないと解されます。ただし公募要領に就労継続支援A型・B型という語は一度も出てこないため、これは組み合わせから導いた結論です。 - 一般型の補助上限額(令和8年度・第8回): 1事業者あたり従業員5人以下750万円/6〜20人1,500万円/21〜50人3,000万円/51〜100人5,000万円/101人以上8,000万円。大幅賃上げ特例の適用時はそれぞれ1,000万円・2,000万円・4,000万円・6,500万円・1億円 - 一般型の補助率: 中小企業は1/2、小規模企業者・小規模事業者と再生事業者は2/3。社会福祉法人・NPO法人・歯科医業を営む医療法人は従業員20人以下の場合に限り2/3 - カタログ注文型の補助上限額(令和8年度): 1事業者あたり従業員5人以下500万円/6〜20人以下750万円/21人以上1,000万円。補助率は1/2以下で、補助額が25万円未満になる申請はできない(借用の場合を除く) - 第8回のスケジュール(2026年8月23日時点): 公募開始日2026年8月18日/申請受付開始日2026年9月中旬(予定)/公募締切日2026年10月中旬(予定)/採択発表日2027年2月上旬(予定) - 対象外になる法人格: 公益・一般を問わず社団法人・財団法人と法人格のない任意団体は補助対象外。医療法人は一般型では歯科医業を営む法人だけが対象 - 事前着手の禁止: 交付決定前に発生した経費・契約はいかなる理由でも補助対象外(一般型・カタログ注文型とも共通) 根拠: 独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募)」 ### 本文 ## 一般型とカタログ注文型は別の制度 省力化投資補助金には一般型とカタログ注文型の2種類があり、上限額も補助率も別に定められています。 正式な事業名は「中小企業省力化投資補助事業」です。実施主体は独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)です。名前が同じなので1つの制度に見えますが、**一般型とカタログ注文型は別制度**として動いています。公募要領も別々に出ています。 目的は共通しています。人手不足に悩む中小企業等が、IoT・ロボット等のデジタル技術を活用した専用設備を導入する費用を補助する制度です。省力化投資を促し、付加価値額や生産性の向上、賃上げにつなげることが目的とされています。 違いは次のとおりです。 | 項目(令和8年度) | 一般型 | カタログ注文型 | | --- | --- | --- | | 受付の方式 | 公募回制。第8回の締切は2026年10月中旬(予定) | 随時受付。公募回・締切日の設定なし | | 補助上限額(従業員5人以下) | 1事業者あたり750万円 | 1事業者あたり500万円 | | 補助率 | 1/2または2/3(規模による) | 1/2以下 | | 対象経費 | 機械装置・システム構築費が必須。運搬費・外注費なども対象 | カタログ登録済みの省力化製品1つと、その導入費 | | 事業の実施期間 | 交付決定日から17か月以内 | 交付決定日から原則12か月以内 | 申請はどちらも電子申請システム(jGrants)だけで受け付けます。紙の申請はできません。GビズIDプライムアカウントの取得が前提になります。申請者本人が入力することも必須で、代理入力が発覚すると不採択や取消の対象になります。 もう1つの共通点は事前着手の禁止です。**交付決定前の発注は対象外**になります。一般型の公募要領は「いかなる理由であっても事前着手は認められません」と書いています。 ## 一般型の上限額と補助率 一般型の補助上限額は、1事業者あたり従業員5人以下で750万円、101人以上で8,000万円です。 上限額は従業員数の区分で5段階に分かれます。いずれも**1事業者あたりの上限額**で、設備1台ごとの上限ではありません。 | 従業員数(令和8年度・第8回) | 補助上限額(1事業者あたり) | 大幅賃上げ特例の適用時 | | --- | --- | --- | | 5人以下 | 750万円 | 1,000万円 | | 6〜20人 | 1,500万円 | 2,000万円 | | 21〜50人 | 3,000万円 | 4,000万円 | | 51〜100人 | 5,000万円 | 6,500万円 | | 101人以上 | 8,000万円 | 1億円 | 右の列は、大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例を使ったときの額です。この特例は、1人当たり給与支給総額を年平均成長率3.5%以上に加えてさらに増やし、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上の水準にすることが条件です。未達の場合は、引き上げ分の返還を求められます。最低賃金引き上げ特例と併用したときの上限額は、公募要領からは読み取れません。 補助率は法人の規模で変わります。中小企業は1/2です。小規模企業者・小規模事業者と再生事業者は2/3です。社会福祉法人・NPO法人・歯科医業を営む医療法人は、**従業員20人以下なら2/3**が適用されます。交付決定後に20人を超えた場合は、2/3から1/2への計画変更になります。 最低賃金引き上げに係る補助率引き上げの特例を使うと、中小企業の補助率も2/3になります。ただし小規模企業者・小規模事業者と再生事業者、常勤従業員がいない場合は適用できません。 対象経費は7種類です。中心になるのは機械装置・システム構築費で、この経費の計上は必須です。単価50万円(税抜)以上という条件も付きます。 - 機械装置・システム構築費(必須。単価50万円税抜以上) - 運搬費 - 技術導入費 - 知的財産権等関連経費 - 外注費 - 専門家経費(1日あたり5万円が上限) - クラウドサービス利用費 機械装置・システム構築費以外の経費は、合計500万円(税抜)が補助の上限です。事業の実施期間は交付決定日から17か月以内で、採択発表日からは19か月以内になります。事業計画の期間は、補助事業が完了した年度の翌年度を1年目として3〜5年です。 ## カタログ注文型の対象と上限額 カタログ注文型は登録済みの省力化製品を1つ選ぶ形式で、上限額は1事業者あたり500万円から1,000万円です。 | 従業員数(令和8年度) | 補助上限額(1事業者あたり) | 大幅な賃上げの達成時 | | --- | --- | --- | | 5人以下 | 500万円 | 750万円 | | 6〜20人以下 | 750万円 | 1,000万円 | | 21人以上 | 1,000万円 | 1,500万円 | 補助率は1/2以下です。製品ごとに補助上限額が決められていて、購入価格がその2倍を上回ると補助率は1/2より下がります。補助額が25万円未満になる申請はできません(借用の場合を除く)。 対象になる経費は2つだけです。1つは製品本体の価格で、単価50万円(税抜)以上、事前に登録された補助上限額までが対象です。もう1つは導入に要する費用で、設置作業・運搬費・動作確認・マスタ設定などが入ります。こちらは製品本体価格の2割が上限です。導入費だけの申請はできません。複数の製品を同時に申請することもできません。 補助の対象になるのは**カタログに登録された製品だけ**です。製品カテゴリ一覧(令和8年8月6日時点版)で「対象業種」の欄に介護業と書かれているのは、次の4カテゴリです。 - 清掃ロボット - 配膳ロボット - 飲料ディスペンサー、とろみ調整・給茶機 - 再加熱キャビネット、カート ここは読み方に注意が要ります。この「介護業」が介護保険法に基づく事業者を指すのか、障害福祉サービス業まで含む広い意味なのかは、製品カテゴリ一覧にも公募要領にも定義が書かれていません。障害福祉の事業所が当然に含まれるとは読めないため、導入を検討するなら中小機構への個別確認が先になります。 受付は随時です。公募回も締切日もなく、2024年6月25日から随時受付が続いています。採択・交付決定までは申請からおおむね1〜2か月です。補助事業の実施期間は交付決定日から原則12か月以内になります。 ## 社会福祉法人・NPO法人・株式会社で変わる対象可否 省力化投資補助金の対象は業種ではなく法人格で決まり、社団法人と財団法人は名指しで除かれています。 | 法人格 | 一般型・カタログ注文型の対象可否(令和8年度) | | --- | --- | | 株式会社・合同会社 | 中小企業者の規模要件を満たせば対象 | | 社会福祉法人 | 3つの要件をすべて満たせば対象 | | NPO法人 | 5つの要件をすべて満たせば対象 | | 一般社団・公益社団・一般財団・公益財団 | 対象外(公募要領に明記) | | 医療法人 | 一般型は歯科医業を営む法人のみ対象 | | 法人格のない任意団体 | 対象外(公募要領に明記) | 株式会社・合同会社は、中小企業等経営強化法第2条第1項の資本金または常勤従業員数の基準を満たせば対象です。サービス業なら、資本金5,000万円以下または常勤従業員100人以下が基準になります。 社会福祉法人が満たすべき3つの要件は次のとおりです。 - 社会福祉法第32条の所轄庁の認可を受けて設立されていること - 従業員数が300人以下であること - 収益事業の範囲内で補助事業を行うこと NPO法人は条件が5つに増えます。 - 広く中小企業一般の振興・発展に直結し得る活動を行う法人であること - 従業員数が300人以下であること - 法人税法上の収益事業を行っていること - 認定特定非営利活動法人でないこと - 交付申請時までに経営力向上計画の認定を受けていること 障害福祉サービスの提供を主な目的とするNPO法人が、1つ目の要件を満たすかどうかは公募要領に判断基準がありません。個別に確認することになります。 **一般社団法人と財団法人は対象外**です。公益・一般を問わず、社団法人・財団法人・法人格のない任意団体は補助対象にならないと公募要領に明記されています。障害福祉サービスを一般社団法人で運営している場合、一般型もカタログ注文型も使えません。 医療法人は一般型では歯科医業を営む法人だけが対象です。診療所を併設して生活介護などを運営する医療法人は、一般型の補助対象者のどれにも当たりません。カタログ注文型には「介護事業を営む法人」という別の区分があります。ただしこの区分は、介護保険法に基づくサービスの範囲内で補助事業を行うことが条件です。障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスがこの区分に含まれるかどうかは、公募要領に書かれていません。 ## 賃上げ要件とB型の利用者の扱い 一般型は労働生産性と給与の伸びを3〜5年の計画で約束する制度で、B型の利用者はその計算に入らないと解されます。 一般型の基本要件は4つで、すべてを満たす事業計画が必要です。 - 労働生産性の年平均成長率を4.0%以上増加させること - 1人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加させること - 事業場内最低賃金を、事業を実施する都道府県の地域別最低賃金+30円以上の水準に維持すること - 従業員数21人以上の場合は、一般事業主行動計画を「両立支援のひろば」に公表すること 最低賃金引き上げ特例を使う事業者は、このうち1つ目・2つ目・4つ目の3つになります。 カタログ注文型の基本要件は1つです。補助事業の終了後3年間、毎年、申請時と比べて労働生産性を年平均成長率3.0%以上向上させる計画を作ることです。上限額の引き上げを希望する場合は要件が増えます。事業場内最低賃金を3.0%以上、給与支給総額を6%以上引き上げる計画にします。どちらも補助事業実施期間の終了時点で達成する見込みであることが必要です。申請時に従業員へ賃上げ計画を表明することも求められます。 問題は、この「従業員」と「事業場内最低賃金」にB型の利用者が入るかどうかです。公募要領には、就労継続支援A型・B型という語が一度も出てきません。判定は2つの事実を組み合わせることになります。 1つ目は、補助対象者の判定で使う「常時使用する従業員」の意味です。これは中小企業基本法の定義にならい、あらかじめ解雇の予告を必要とする者を指します。2つ目は、B型の利用者が事業所と雇用契約を結ばないことです。B型は雇用契約を結ばない通所の就労・生産活動支援で、利用者は工賃を受け取ります。 この2つを合わせると、**利用者は従業員数に入らない**という結論になります。事業場内最低賃金や給与支給総額の計算にも入らないことになります。ただしこれは組み合わせから導いた結論で、公募要領が明記しているわけではありません。 A型の利用者は判断が逆になります。雇用契約を結ぶ労働者なので、常勤で相応の雇用形態であれば従業員に含まれ得ます。有期雇用の期間や勤務日数によって変わるため、断定はできません。 | 対象 | 従業員数・賃上げ要件の計算 | 判断の根拠 | | --- | --- | --- | | B型の利用者 | 入らないと解される | 公募要領に明記なし。「常時使用する従業員」の定義と、雇用契約を結ばない利用契約であることを合わせた帰結 | | A型の利用者 | 入りうる | 雇用契約を結ぶ労働者。ただし雇用形態によって変わり、公募要領にA型の明記もない | | 事業所の職員 | 入る | 通常の雇用契約。日雇い、2か月以内の有期、季節的な4か月以内の有期、試用期間中の者は除かれる | 応募の時点で従業員が0名の場合、または対象となる給与の支給を受ける従業員が0名の場合は応募できません。カタログ注文型でも、2回目以降の交付申請で常勤従業員がいないと、最低賃金の賃上げ要件を満たせないため申請できません。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する](/column/b-gata-shushi-kouzou/) 生産活動収入と職員人件費の位置づけ ## 第8回のスケジュールと申請の準備 第8回は2026年8月18日に公募が始まり、申請受付の開始は9月中旬、締切は10月中旬の予定です。 | 第8回の日程(2026年8月23日時点) | 日付 | | --- | --- | | 公募開始日 | 2026年8月18日 | | 申請受付開始日 | 2026年9月中旬(予定) | | 公募締切日 | 2026年10月中旬(予定) | | 採択発表日 | 2027年2月上旬(予定) | 取り違えやすいのは最初の2行です。**公募開始日は申請できる日ではない**という点に注意が要ります。第8回の公募要領はすでに公表されていて、発行表記は2026年8月です。電子申請を出せるようになるのは2026年9月中旬の予定で、そこから締切までは1か月ほどしかありません。事業計画は公募開始から締切までの期間で作ることになります。 準備で先に済ませるのはGビズIDプライムアカウントの取得です。アカウントがないと電子申請そのものができません。認定経営革新等支援機関の利用は必須ではなく、事業計画の策定に専門的な支援が必要なときの相談先として案内されているだけです。利用した場合は、支援者名と報酬額を申請時に記載します。なお、省力化投資補助金の申請支援には資格の制限がありません。社会保険労務士にしか代行できない雇用関係の助成金とは、ここが違います。 システムメンテナンスの予定も公表されています。2026年9月17日の10時から18時頃まで、申請マイページが対象です。 他の国の補助金と補助対象経費が重複する事業は対象外です。複数の類似補助金で交付決定を重ねて受けたことが分かった場合、交付決定日が遅いほうが取り消されます。生産活動の設備で候補に挙がるものづくり補助金は、23次締切(2026年5月8日)が最新の掲載回で、24次の日程は公表されていません。 厨房設備や加工機、梱包機を一般型で申請するなら、機械の話より先に、いまの作業を時間で書き出す順番になります。 一般型が求めているのは、労働生産性を年平均4.0%以上伸ばす3〜5年の計画です。設備そのものではなく、設備を入れた後に人の時間がどう動くかを説明することになります。 B型の場合、その説明の主語は職員になります。利用者は従業員数に入らないと解されるためです。下ごしらえや梱包の準備に職員の何時間が取られているかを工程ごとに測り、機械に置き換わる時間を出します。 そのうえで、空いた時間の行き先を書きます。受注の拡大に回すのか、支援の時間に戻すのかで、計画に載せる数字が変わります。 設備の見積もりを取るのは、この順番の最後です。交付決定より前の発注は理由を問わず対象外なので、見積もりの段階で止めておくことになります。 関連する記事を挙げます。 - [B型事業所の作業種目](/column/b-gata-sagyou-shumoku/) 生産活動の中身と必要な設備の関係 ### よくある質問 Q. 就労継続支援B型でも省力化投資補助金は使えますか? A. 法人格の要件を満たせば申請できます。一般型は業種を問わず、生産・業務プロセスやサービス提供方法の省力化を行う事業者を対象にしています。業種による除外は補助対象者の法人格の部分にしかありません。ただし公募要領にも公式サイトにも障害福祉サービス事業所を対象とした例示はなく、労働生産性と賃上げの目標は一般の中小企業と同じ基準で求められます。 Q. 一般型とカタログ注文型はどちらを選ぶべきですか? A. 金額なら一般型、手続きの軽さならカタログ注文型です。一般型の補助上限額は1事業者あたり従業員5人以下で750万円、カタログ注文型は同じ区分で500万円です。カタログ注文型は登録済みの省力化製品を1つ選ぶ形式で、複数製品の同時申請はできません。一般型は3〜5年の事業計画を作って申請します。 Q. 社会福祉法人でも申請できますか? A. 3つの要件を満たせば対象になります。社会福祉法第32条の所轄庁の認可を受けて設立されていること、従業員数が300人以下であること、収益事業の範囲内で補助事業を行うことの3つです。従業員20人以下であれば、一般型の補助率は2/3になります。 Q. B型の利用者は従業員数に入りますか? A. 入らないと解されますが、公募要領に明記はありません。補助対象者の判定で使う「常時使用する従業員」は、あらかじめ解雇の予告を必要とする者を指します。B型の利用者は雇用契約ではなく利用契約で通所し、工賃を受け取ります。この2つを合わせると、従業員には当たらないという結論になります。 Q. 第8回はいつから申請できますか? A. 申請受付の開始は2026年9月中旬の予定です。2026年8月18日は公募開始日であって、申請受付開始日ではありません。公募締切は2026年10月中旬、採択発表は2027年2月上旬が、いずれも予定として示されています。2026年8月23日時点の公表内容です。 Q. カタログ注文型の「介護事業を営む法人」の区分は障害福祉でも使えますか? A. 使えるかどうかは公表資料から確認できません。この区分は介護保険法に基づくサービスの範囲内で補助事業を行うことを条件にしています。障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスが含まれるかどうかは、公募要領にも製品カテゴリ一覧にも書かれていません。導入を検討するなら中小機構への個別確認が要ります。 ### 根拠資料 - 独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募)」 https://shoryokuka.smrj.go.jp/assets/pdf/application_guidelines_ippan_08.pdf(補助上限額・補助率・補助対象者・基本要件・事前着手の禁止を確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業(カタログ注文型)公募要領」 https://shoryokuka.smrj.go.jp/assets/pdf/application_guidelines_catalog.pdf(令和8年3月19日改訂の第11版。補助上限額・対象経費・補助対象者・賃上げ要件を確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助金(一般型)スケジュール」 https://shoryokuka.smrj.go.jp/ippan/schedule/(第8回の公募開始日・申請受付開始日・公募締切日・採択発表日とシステムメンテナンス予定を確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)スケジュール」 https://shoryokuka.smrj.go.jp/catalog/schedule/(随時受付であること、交付決定までの目安期間を確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業 製品カテゴリ一覧」 https://shoryokuka.smrj.go.jp/assets/pdf/product_catalog.pdf(令和8年8月6日時点版。対象業種欄に「介護業」の記載がある4カテゴリを確認・2026年8月23日確認) - 独立行政法人中小企業基盤整備機構(もの補助金事務局)「ものづくり補助金 スケジュールページ」 https://portal.monodukuri-hojo.jp/schedule.html(23次締切(2026年5月8日)が最新の掲載回で、24次の日程の記載がないことを確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省(社会・援護局障害保健福祉部)「就労継続支援A型、B型に係る報酬について≪論点等≫(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第9回 資料3)」 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000177374.pdf(p.21でB型が雇用契約を結ばない支援であることを確認・2026年8月23日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.23 初回公開 --- ## 特定求職者雇用開発助成金は B型で使えるか 利用者は対象外・職員とA型は対象になりうる URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/tokutei-kyushokusha-koyou-kaihatsu-b-gata/ カテゴリー: 補助金・助成金 公開: 2026-08-23 / 更新: 2026-08-23 制度基準日: 2026.08.23 ### 結論 令和8年度の特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、就労継続支援B型の利用者を対象にできません。この助成金は、ハローワーク等の紹介で就職困難者を雇用保険の一般被保険者として雇い入れた事業主に支給されます。B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばないため、雇用保険の被保険者になりません。この2つを合わせると、対象労働者の入口要件を満たせないという結論になります。B型を名指しして除外した条文があるわけではありません。 対象になりうる場面は2つあります。1つはA型事業所が対象労働者を自らのサービス利用者として雇い入れる場合です。過去にこのコースの対象となったA型利用者のうち、基準期間内に確認日を迎える人が5人以上いて、離職割合が25%を超えていると不支給になります。もう1つは、事業所が障害のある人を利用者としてではなく職員として採用する場合です。額は障害の区分と労働時間で分かれます。重度障害者等をフルタイムで雇い入れた中小企業なら、6か月ごとに40万円ずつ6回、1人あたりの支給総額は240万円です。 - 制度の骨格: ハローワーク等の紹介で就職困難者を雇用保険の一般被保険者等として雇い入れた事業主に支給。紹介より前に選考を開始していた場合は対象外(令和8年度) - B型の利用者: 対象外。雇用契約を結ばず雇用保険の被保険者にならないため、対象労働者の要件を満たさない。B型を名指しした除外規定はなく、要件の組み合わせによる帰結 - 支給総額(中小企業・フルタイム・1人あたり): 重度障害者等は支給総額240万円(1期40万円×6回)。重度以外の身体障害者・知的障害者は支給総額120万円(1期30万円×4回)。1期は6か月(令和8年度) - A型の特則: A型事業所が対象労働者を自らの利用者として雇い入れる場合も対象になりうる。ただし過去にこのコースの対象となったA型利用者のうち、確認日を迎える人が5人以上いて離職割合が25%を超えると不支給 - 申請の単位: 6か月ごとの支給対象期ごとに申請。各期の末日の翌日から2か月以内に、事業所を管轄する労働局またはハローワークへ提出 根拠: 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)支給要領(令和8年4月1日版)」 ### 本文 ## 特定求職者雇用開発助成金の骨格 特開金は、ハローワーク等の紹介で就職困難者を雇用保険の一般被保険者として雇い入れた事業主に支給される制度です。 正式には特定求職者雇用開発助成金の特定就職困難者コースといいます。実施主体は厚生労働省で、窓口は都道府県労働局とハローワークです。障害のある人のほか、高年齢者や母子家庭の母なども対象労働者に含まれます。 入口で外れやすいのが紹介の経路です。対象になるのは、次の機関の紹介で雇い入れた場合に限られます。 - ハローワーク、地方運輸局 - 適正な運用を期することのできる特定地方公共団体 - 有料・無料の職業紹介事業者、無料船員職業紹介事業者 求人サイト経由の直接応募やオンラインでの自主応募は対象外だと、事業主向けQ&Aに示されています。**紹介より前に選考を始めていた**場合も対象になりません。先に採用を内定してから紹介を受ける形にすると、要件から外れます。 事業主が対象労働者だと知らずに雇い入れ、あとで分かった場合も助成の対象外です。就職困難者の雇用を後押しするための制度なので、紹介の時点で事業主が承知していることが前提になります。 事業主側にも要件があります。主なものを挙げます。 - 雇用保険の適用事業主であること - 労働保険料を滞納していないこと - 採用日の前後6か月間に事業主都合の解雇をしていないこと 3つ目の解雇には、退職の勧奨も含まれます。 有期雇用で雇い入れる場合は、対象労働者が望む限り更新できる契約だけが対象です。勤務成績で更新の可否を判断する契約は対象になりません。 ## 対象区分ごとの額と支給期間 額は障害の区分と労働時間で分かれ、中小企業のフルタイムなら1人あたりの支給総額は120万円か240万円です。 支給は6か月ごとの「支給対象期」に分けて行われます。起算日は雇入れ日で、賃金締切日があるときは直後の締切日の翌日です。表の支給総額は、この分割払いを合計した額にあたります。 | 対象労働者の区分(令和8年度) | 1期あたりの額 | 支給回数 | 助成対象期間 | 支給総額(1人あたり) | 中小企業以外の支給総額 | | --- | --- | --- | --- | --- | --- | | 重度障害者等・フルタイム | 40万円 | 6回 | 3年間 | 240万円 | 100万円 | | 重度以外の身体障害者・知的障害者・フルタイム | 30万円 | 4回 | 2年間 | 120万円 | 50万円 | | 身体・知的・精神障害者・短時間 | 20万円 | 4回 | 2年間 | 80万円 | 30万円 | 1期あたりの額・支給回数・助成対象期間・支給総額の列は、中小企業事業主の場合の値です。支給要領が分けているのは、中小企業事業主かそれ以外の事業主かという企業規模の区分だけです。 重度障害者等に入るのは、次の人です。 - 重度身体障害者、45歳以上の身体障害者 - 重度知的障害者、45歳以上の知的障害者 - 精神障害者 **精神障害者は年齢を問わず**この区分に含まれます。45歳以上でなければ高い区分にならない、という理解は誤りです。 短時間労働者とは、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の人を指します。30時間以上ならフルタイムの区分で計算します。 満額が出ないこともあります。支給対象期の実労働時間が基準を下回ると、その期の額は減額されます。基準はフルタイムで週30時間の8割、短時間で週20時間の8割です。対象労働者が支給対象期の途中で離職した場合、原則としてその期の助成金は支給されません。 ## B型の利用者が対象にならない理由 B型の利用者は対象になりません。雇用契約がなく、雇用保険の被保険者として雇い入れるという要件を満たせないからです。 この結論は、性質の違う2つの一次情報を組み合わせたものです。特開金の一次情報に、B型を名指しした除外規定はありません。 1つ目は特開金の支給要件です。厚生労働省の公式ページは、支給の要件を「雇用保険一般被保険者又は高年齢被保険者として雇い入れ、継続して雇用することが確実であると認められること」としています。雇用保険の被保険者になるには、労働者として雇用契約を結んでいる必要があります。 2つ目はB型の制度上の性格です。B型は雇用契約を結ばない通所の就労・生産活動支援で、利用者は工賃を受け取ります。A型は雇用契約に基づく就労として区分されています。 この2つを合わせると、B型の利用者は雇用保険の被保険者にならず、対象労働者の要件を満たせないことになります。**要件の組み合わせによる帰結**であって、厚生労働省がB型を名指しで除外したわけではありません。断り方の説明を求められたときは、この順番で伝えると誤解が残りません。 | 立場(令和8年度) | 雇用契約 | 特開金の対象になりうるか | 判定の性質 | | --- | --- | --- | --- | | B型の利用者 | 結ばない(工賃を受け取る利用契約) | ならない | 要件の組み合わせによる帰結 | | A型の利用者 | 結ぶ(雇用契約に基づく労働者) | なりうる | 自らの利用者として雇う場合の特則が支給要領にある | | 事業所の職員 | 結ぶ(通常の雇用契約) | なりうる | 通常の対象事業主・対象労働者の要件で判断 | 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援A型とB型の違い](/column/b-gata-a-gata-chigai/) 雇用契約の有無による制度の分かれ方 ## A型が自らの利用者を雇い入れる場合の特則 A型事業所が対象労働者を自らの利用者として雇い入れる場合も対象になりえますが、離職率の条件が付きます。 前提として、一般企業がA型の利用者をハローワークの紹介で雇い入れる場合は、通常どおり対象になります。A型の利用者は雇用契約に基づく労働者だからです。 これとは別に、A型事業所が自らのサービス利用者として対象労働者を雇い入れる場合の特則が置かれています(支給要領0201ホ・ヘ)。次の2つの両方に当たると不支給になります。 - 過去にこのコースの対象となったA型利用者のうち、基準期間内に確認日を迎える人が5人以上いること - その人たちの離職割合が25%を超えていること 確認日は2つあります。雇入れ日から1年後(確認日A)と、助成対象期間の終了から1年後(確認日B)です。裏返すと、**離職割合が25%以下**であれば支給の対象になります。定着の実績が支給の条件に組み込まれている形です。 過去の雇用関係を見る期間も変わります。通常は、雇入れ日の前日から1年前までの間に関係事業主が雇い入れていた人が対象外になります。A型の利用者として雇い入れる場合、この期間は3年前までさかのぼります。関係事業主には、密接な資本関係にある事業主が含まれます。 なお、トライアル雇用助成金では扱いが逆になります。額と要件はトライアル雇用助成金の記事で扱います。 ## 職員として障害のある人を採用する場合の使い方 事業所が障害のある人を職員として採用する場合は、通常の要件だけで判断され、対象になりえます。 B型でもA型でも、**利用者としてではなく従業員として**雇う場合は、一般の事業主と同じ扱いになります。障害福祉サービス事業所であること自体を理由に職員の採用を除外する規定は、支給要領にもパンフレットにも見当たりません。 ただし「除外しない」と書いた条文が見つかったわけでもありません。除外規定が置かれていないことから、通常の要件だけで判断されると読める、という位置づけです。 満たす必要があるのは次の点です。 - ハローワーク等の紹介で採用すること - 雇用保険の一般被保険者等として雇い入れ、継続して雇用することが確実であること - 雇入れ日の前日から3年前までの間に、その事業所と雇用・請負・委任の関係がなかったこと - その事業所で通算3か月を超える訓練・実習等を受けていないこと - 事業主や取締役の3親等以内の親族でないこと 3年前の要件と実習の要件は、福祉の現場では実際に効いてきます。実習で来ていた人をそのまま支援員として採用する流れは、期間によっては対象から外れます。 法人格による差は確認できませんでした。社会福祉法人・NPO法人・株式会社などの別で対象可否が変わるという記載は、支給要領にもパンフレットにもありません。ただし国・地方公共団体・行政執行法人等は対象外になる場合があります。 特開金を使うつもりなら、募集をハローワークに出すところから採用活動を組み立てることになります。 紹介より前に選考を始めていた人は対象外になるため、順番を入れ替えられません。実習に来ていた人や知り合いに先に内定を伝えると、その時点で要件から外れます。 気になる人がいる場合も、内定を出す前に事業所が同じ職種の求人をハローワークに出し、紹介を受けてから選考に入る順番になります。 求人票を出す段階で、週の所定労働時間を決めておくことになります。20時間以上30時間未満なら短時間労働者の区分、30時間以上ならフルタイムの区分で額が変わるためです。 雇用保険の資格取得手続も採用時に必要になります。被保険者としての雇い入れが要件そのものだからです。 関連する記事を挙げます。 - [B型事業所の職員採用](/column/b-gata-shienin-saiyou/) 支援員を採用するときの実務 ## 申請の流れ 申請は6か月ごとの支給対象期ごとに行い、各期の末日の翌日から2か月以内に労働局またはハローワークへ提出します。 支給申請書は、紹介の実績に基づいて管轄の労働局から事業主に送られてきます。電子申請にも対応しています。 | 段階 | やること | 時期 | | --- | --- | --- | | 1 | ハローワーク等に求人を出す | 選考を始める前 | | 2 | 紹介を受けて選考し、雇い入れる | 紹介の後 | | 3 | 第1期の支給申請 | 起算日から6か月経過した日の翌日から2か月以内 | | 4 | 第2期以降の支給申請 | 各支給対象期の末日の翌日から2か月以内 | 添付する書類は、支給申請書と、雇用の実態を示す資料です。主なものを挙げます。 - 支給申請書(様式第3号)と支給要件確認申立書 - 賃金台帳、出勤簿 - 対象労働者であることの証明書類 - 雇用契約書等と、対象労働者雇用状況等申立書(様式第5号) 関係書類は支給決定から5年間の保存義務があります。不正受給があった場合は、支給決定が取り消され、既に受け取った額の全額を返還することになります。取消しの日から5年間は各種の助成金を受けられません。 事務を外に頼むときは、頼める相手が法令で決まっている点に注意してください。申請書の作成・提出代行・事務代理を、報酬を得て業として行えるのは**社会保険労務士だけ**です。特開金は雇用保険二事業の助成金で、雇用保険法が社会保険労務士法の別表第一に掲げられているためです。事業主が自分で作成して提出することは、もちろんできます。 この助成金は公募回や締切のある補助金ではありません。対象労働者を雇い入れた都度、支給対象期ごとに申請する形です。ただし要件は見直されます。高年齢者の対象要件は年度の途中で変更され、ハローワーク等での個別支援を受けていることが加わりました(令和8年5月1日から)。障害者の区分の要件と金額に変更はありません。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型に「国からの補助金」はあるのか](/column/b-gata-hojokin/) 使える制度の全体像 ### よくある質問 Q. B型の利用者を雇うと特定求職者雇用開発助成金は出ますか? A. いいえ、B型の利用者は対象になりません。この助成金は、雇用保険の一般被保険者等として雇い入れることを要件にしています。B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばないため、雇用保険の被保険者になりません。要件とB型の制度上の性格を合わせると、対象労働者の入口要件を満たせないことになります。B型を名指しして除外した条文があるわけではありません。 Q. A型なら自分の事業所の利用者に使えますか? A. 条件つきで対象になりえます。A型事業所が対象労働者を自らのサービス利用者として雇い入れる場合の特則が、支給要領に置かれています。過去にこのコースの対象となったA型利用者のうち、基準期間内に確認日を迎える人が5人以上いて、その離職割合が25%を超えていると不支給になります。 Q. 障害のある職員を採用すると額はいくらですか? A. 中小企業でフルタイムなら支給総額120万円か240万円です。重度以外の身体障害者・知的障害者は、6か月ごとに30万円ずつ4回で、1人あたりの支給総額が120万円です。重度障害者等は6か月ごとに40万円ずつ6回で、1人あたりの支給総額が240万円になります。 Q. 精神障害者は45歳以上でないと高い区分になりませんか? A. いいえ、精神障害者は年齢を問わず最高額の区分です。支給要領は、重度身体障害者・45歳以上の身体障害者・重度知的障害者・45歳以上の知的障害者と並べて、精神障害者を年齢の条件なしで同じ区分に挙げています。中小企業でフルタイムなら、1人あたりの支給総額は240万円です。 Q. 求人サイトで採用した人でも対象になりますか? A. いいえ、紹介を経ていない採用は対象外です。対象になるのは、ハローワーク・地方運輸局・特定地方公共団体・有料無料の職業紹介事業者などの紹介で雇い入れた場合だけです。求人サイト経由の直接応募やオンラインでの自主応募は対象外だと、事業主向けQ&Aに示されています。紹介より前に選考を始めていた場合も対象になりません。 Q. 申請は社労士に頼まないといけませんか? A. 報酬を得て代行できるのは社会保険労務士だけです。特定求職者雇用開発助成金は雇用保険二事業の助成金で、雇用保険法は社会保険労務士法の別表第一に掲げられています。申請書の作成・提出代行・事務代理を、報酬を得て業として行えるのは社会保険労務士に限られます。事業主が自分で作成して提出することはできます。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)支給要領(令和8年4月1日版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001684391.pdf(支給対象事業主の要件・対象労働者の区分・支給額の表・支給申請の期限を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_konnan.html(支給要件(雇用保険一般被保険者又は高年齢被保険者としての雇い入れ)を確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)のご案内(事業主向けパンフレット)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001684468.pdf(紹介経路の限定・有期雇用の扱い・支給申請の手続・不正受給の取扱いを確認・2026年8月23日確認) - 厚生労働省(社会・援護局障害保健福祉部)「就労継続支援A型、B型に係る報酬について≪論点等≫(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第9回 資料3)」 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000177374.pdf(p.3・p.21でA型が雇用契約に基づく就労、B型が雇用契約を結ばない就労であることを確認・2026年8月23日確認) - e-Gov法令検索(デジタル庁)「社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)」(第2条第1項・第27条・別表第一を確認・2026年8月23日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.23 初回公開 --- ## 就労継続支援B型の 補助金・助成金一覧 |開設・設備投資・雇用・賃上げ URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/b-gata-hojokin/ カテゴリー: 補助金・助成金 公開: 2026-08-20 / 更新: 2026-09-27 制度基準日: 2026.08.23 ### 結論 就労継続支援B型が使える補助金・助成金は、開設・改修、設備投資・運営、職員の雇用、賃上げ・処遇改善の4つの場面に分かれます。「国からの補助金」という単独の制度はなく、多くは中小企業向け・雇用関係の制度をB型事業所が要件を満たして使う形です。B型の収入の柱は訓練等給付費という報酬であり、補助金・助成金が関わるのは、開設・設備投資・職員の雇用・賃上げの4つの場面に限られます。 職員の雇用で使える助成金の多くで、B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばないことを理由に対象外になります。名指しで除外しているのはJEEDの一部助成金だけで、他は要件を組み合わせた帰結です。設備投資の補助金では、法人格そのものが対象外になる制度もあります。 - 開設・改修: 社会福祉施設等施設整備費補助金(原則国1/2・都道府県等1/4・設置者1/4)と福祉医療機構の融資。窓口は都道府県等で採択制 - 設備投資・運営: 中小企業省力化投資補助金・デジタル化AI導入補助金2026・小規模事業者持続化補助金・介護テクノロジー導入支援事業・業務改善助成金。法人格で対象が割れる - 職員の雇用: 特定求職者雇用開発助成金・トライアル雇用助成金・キャリアアップ助成金など。B型利用者は対象外、事業所の職員と一部のA型利用者は対象になりうる - 賃上げ・処遇改善: 処遇改善加算(報酬の加算)、時限の障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金、自治体独自の物価高騰支援金 - B型利用者の扱い: 雇用契約を結ばないため雇用関係の助成金は対象外。名指しの除外はJEEDの一部助成金のみで、他は要件を組み合わせた帰結 - 収入の正体: 補助金ではなく障害者総合支援法上の訓練等給付費(報酬)。詳しくは「B型は助成金目当てなのか」の記事を参照 根拠: 障害者総合支援法(e-Gov法令検索)・厚生労働省資料、各制度の公募要領・実施要綱(各項の出典は本文と子記事を参照) ### 本文 ## 就労継続支援B型で使える補助金・助成金一覧 就労継続支援B型が使える補助金・助成金は、開設、設備投資、雇用、賃上げの4つの場面に分かれます。 「就労継続支援b型 国からの補助金」と検索する人は多いですが、法律上この名称の給付はありません。この記事は、事業所の経営者が場面ごとに使える制度を確認するための一覧です。制度ごとに詳しい記事を用意しており、下の一覧表からたどれます。 なお、B型の収入の柱はここに挙げる補助金・助成金ではありません。障害者総合支援法第6条は自立支援給付を介護給付費・訓練等給付費などで構成すると定め、同法第28条第2項は就労継続支援を含むサービスに訓練等給付費を支給すると定めています。B型の収入は、利用実績に応じて市町村から支払われるこの訓練等給付費(報酬)です。ここで一覧にするのは、その報酬とは別に事業所が使える補助金・助成金です。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する](/column/b-gata-shushi-kouzou/) 訓練等給付費と生産活動収入の全体像 - [B型事業所は「助成金目当て」なのか](/column/b-gata-joseikin-meate/) 収入の正体と補助金の位置 - [就労継続支援B型の報酬単価はどう決まるか](/column/b-gata-houshu-tanka/) 全区分の単位数表と地域区分ごとの単価 次の19本の記事を、使う場面・窓口・B型利用者(雇用契約なし)が対象になるかで一覧にしました(制度の記事14本・融資1本・横断の整理記事4本)。制度名のリンク先に、区分ごとの額や手続きの詳しい記事があります。 | 制度名 | 使う場面 | 窓口 | B型利用者(雇用契約なし) | | --- | --- | --- | --- | | [社会福祉施設等施設整備費補助金](/column/shakai-fukushi-shisetsu-seibi-hojokin/) | 開設・改修 | 都道府県・指定都市・中核市 | ―(設置者への補助で利用者は関係しない) | | [福祉医療機構(WAM)の融資](/column/fukushi-iryo-kiko-yushi-b-gata/) | 開設(融資・補助金ではない) | 福祉医療機構(WAM) | ―(法人への融資で利用者は関係しない) | | [中小企業省力化投資補助金](/column/shoryokuka-hojokin-fukushi/) | 設備投資 | 中小企業基盤整備機構 | ×【帰結】従業員数に入らない | | [デジタル化・AI導入補助金2026](/column/digital-ai-dounyu-hojokin-fukushi/) | 設備投資(ソフト・クラウド) | 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局 | ×【帰結】従業員数に入らない | | [小規模事業者持続化補助金](/column/jizokuka-hojokin-b-gata/) | 設備投資・広報 | 商工会議所・商工会 | ×【帰結】従業員数に入らない(社会福祉法人は法人格で別に対象外) | | [障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業](/column/kaigo-technology-dounyu-shien-shogai/) | 設備投資(ICT・介護ロボット) | 都道府県・指定都市・中核市 | ―(事業所単位の補助) | | [業務改善助成金](/column/gyomu-kaizen-joseikin-b-gata/) | 設備投資+職員の賃上げ | 都道府県労働局 | ×【帰結】雇用保険被保険者が前提 | | [法人格で変わるB型の補助金](/column/houjinkaku-betsu-hojokin-b-gata/) | 法人格ごとの可否の比較(開設・設備投資を横断) | 制度により異なる | 記事で確認(制度により異なる) | | [障害者雇用の助成金一覧](/column/shogaisha-koyou-joseikin-ichiran/) | 職員の雇用(一覧) | ハローワーク・労働局等 | ×【帰結】名指し除外はJEEDの一部助成金のみ | | [障害者雇用の助成金は月いくらか](/column/shogaisha-koyou-joseikin-tsuki-ikura/) | 職員の雇用(額の換算) | 制度による | ×【帰結】 | | [特定求職者雇用開発助成金](/column/tokutei-kyushokusha-koyou-kaihatsu-b-gata/) | 職員の雇用 | 労働局・ハローワーク | ×【帰結】 | | [キャリアアップ助成金 障害者正社員化コース](/column/career-up-shogaisha-seishainka/) | 職員の雇用 | 労働局・ハローワーク | ×【帰結】 | | [A型が利用者の雇用で使える助成金](/column/a-gata-riyousha-koyou-joseikin/) | 利用者の雇用(A型のみ) | 制度による | ―(この記事はA型利用者の整理が主題) | | [障害者トライアル雇用助成金](/column/shogaisha-trial-koyou-joseikin/) | 職員の雇用 | ハローワーク | ×【帰結】 | | [人材開発支援助成金](/column/jinzai-kaihatsu-shien-joseikin-fukushi/) | 職員の雇用(研修) | 労働局 | ×【帰結】 | | [人材確保等支援助成金](/column/jinzai-kakuho-shien-joseikin-fukushi/) | 職員の雇用(雇用管理制度) | 労働局 | ×【帰結】離職率の算定にも入らない | | [障害者雇用納付金制度とJEEDの助成金](/column/shogaisha-koyou-noufukin-jeed/) | 職員の雇用(納付金・調整金) | JEED(都道府県支部) | ×【帰結】雇用率にも算入されない(JEEDの一部助成金は【明記】で除外) | | [賃上げ補助金と処遇改善加算はどう違うか](/column/chinage-hojokin-shogu-kaizen-chigai/) | 賃上げ・処遇改善 | 都道府県 | ×【帰結】対象者は事業所に勤務する従事者(職員向けの制度) | | [障害福祉事業所の物価高騰支援金](/column/bukka-koutou-shienkin-shogai-fukushi/) | 賃上げ・運営費(自治体独自) | 都道府県・市区町村 | ―(施設・事業所単位の定額) | 表の「B型利用者」欄は、一次情報が名指ししている場合を【明記】、要件を組み合わせた結論を【帰結】として区別しています。【帰結】は制度の一次情報がB型を直接除外しているわけではない、という意味です。 都道府県・市区町村独自の補助金は毎日更新されるため、最新の一覧は[補助金・助成金を探すページ](/hojokin/)で確認できます。 ## 開設時に使える補助金 開設そのもの(建物の整備)に使える国の補助金は、社会福祉施設等施設整備費補助金がほぼ唯一で、採択は保証されません。 B型事業所は障害者総合支援法第5条に基づく「障害福祉サービス事業所等」にあたり、この補助金の対象施設に含まれます。費用負担は、原則として国が整備費の1/2、都道府県(指定都市・中核市を含む)が1/4を補助し、残る1/4が設置者の自己負担です。 | 負担者 | 割合 | | --- | --- | | 国 | 1/2 | | 都道府県・指定都市・中核市 | 1/4 | | 設置者の自己負担 | 1/4 | ここでいう設置者は社会福祉法人だけではありません。厚生労働省の会議資料は、国庫補助の対象となる設置者を脚注で列挙しています。 - 社会福祉法人・医療法人・日本赤十字社 - 公益社団法人・公益財団法人・一般社団法人・一般財団法人・特例民法法人 - NPO法人・**営利法人等** 株式会社立のB型事業所も、この列挙に含まれる設置者になりえます。 自己負担分の資金調達には、独立行政法人福祉医療機構の融資制度を使えます。就労継続支援事業は同機構の融資対象に明記されており、借入の対象者は「法人」とされていて法人格の限定がありません。この補助金の交付を受ける整備事業は、融資率が通常の80%から85%に引き上げられます(2027年3月31日までの取扱)。 厚生労働省はこの補助金を「内示」という形で、毎年度、都道府県・指定都市・中核市に予算配分額を示す運用をしています。個々の事業者が国に直接申請する制度ではなく、都道府県(指定都市・中核市を含む)が窓口です。予算の範囲内で自治体が事業者の整備計画を取りまとめる仕組みのため、申請すれば必ず採択されるものではありません。 動き出す時期は開設の直前ではありません。厚生労働省の会議資料は、設置者が**建設予定年度の前年度の早い時期**に事業計画書を都道府県等に提出するとしています。都道府県から国への国庫補助協議は年度替わりの前後に行われ、内示が公表されたのは令和7年度が6月30日、令和8年度が7月2日でした。建物を建てる年度の1年以上前から自治体との相談が始まる、という時間の流れになります。 都道府県・市区町村が単独で行う開設補助は自治体ごとに制度が異なり、内容も日々更新されます。本記事では固有の制度名・金額は示さず、最新の一覧は補助金・助成金を探すページ(/hojokin/)で確認する形にとどめます。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型は儲かるのか](/column/b-gata-moukaru/) 開設判断に関わる収支全体の考え方 - [社会福祉施設等施設整備費補助金](/column/shakai-fukushi-shisetsu-seibi-hojokin/) 協議の流れと対象になる整備区分 - [福祉医療機構の融資はB型開設に使えるか](/column/fukushi-iryo-kiko-yushi-b-gata/) 融資率・利率・担保の条件 - [法人格で変わるB型の補助金](/column/houjinkaku-betsu-hojokin-b-gata/) 株式会社立・NPO法人立で使える制度の違い ## 設備投資・運営で使える中小企業向け補助金 B型が使える設備投資の補助金は中小企業向け制度の枠組みで、法人格の時点で対象から外れるものもあります。 社会福祉法人だけでなく、NPO法人・株式会社立のB型事業所もあります。次の制度は、要件を満たした中小企業・小規模事業者としてB型事業所が申請する位置づけで、障害福祉のための専用制度ではありません。同じ「中小企業向け」でも、どの法人格を対象にするかは制度ごとに違います。 | 制度 | 実施主体 | 使える場面 | 締切の目安 | | --- | --- | --- | --- | | 業務改善助成金 | 厚生労働省(都道府県労働局) | 最低賃金引き上げとあわせた設備投資。車両はリフト付きなど8ナンバーの福祉車両に限る | 令和8年9月1日から交付申請受付開始。期限は地域別最低賃金の発効日の前日か11月30日の早い日 | | 障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業 | 都道府県・指定都市・中核市 | 記録・請求システムや見守り機器の導入。補助率3/4 | 都道府県ごとに異なる | | デジタル化・AI導入補助金2026 | 中小企業基盤整備機構 | 記録・請求システムやクラウド利用料の導入 | 1次締切 2026年8月25日 | | 中小企業省力化投資補助金(一般型) | 中小企業基盤整備機構 | 人手不足に対応する設備投資 | 第8回は2026年9月中旬に申請受付開始・2026年10月中旬締切(いずれも予定) | | ものづくり補助金 | 全国中小企業団体中央会 | 加工機・厨房設備など生産活動設備の導入 | 23次締切(2026年5月8日)で終了。次回未定 | | 小規模事業者持続化補助金 | 商工会議所・商工会 | 販路開拓の広報・ウェブサイト。社会福祉法人・医療法人・一般社団法人等は対象外 | 第20回は2026年11月5日受付開始・12月15日17時締切 | 業務改善助成金は、事業場内最低賃金を50円以上引き上げることが要件です。令和8年度は50円・70円・90円の3コースに再編されました。額は30万円から600万円で、コースと引き上げる労働者数によって上限が変わります。補助率は、事業場内最低賃金が1,050円未満の事業所で4/5、1,050円以上の事業所で3/4です。交付決定より前に導入した設備は対象外です。 車両を入れるときは範囲に注意が要ります。機械装置等購入費の対象から、令和8年度に**特種用途自動車を除く自動車**が外れました。特種用途自動車とはナンバープレートの車種を表す数字が8で始まる車両等を指し、リフト付き車両などの福祉車両が当たります。普通乗用車や一般的な送迎バンの購入は対象外です。締切も固定の1日ではありません。申請事業所の都道府県に適用される地域別最低賃金の発効日の前日か、同年11月30日のいずれか早い日が期限になります。 障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業は、この表のなかで唯一の障害福祉向けの制度です。補助率は3/4で、事業者の自己負担は原則1/4になります。基準額は事業所の種別と経費の区分で決まります。就労継続支援B型は「その他の事業所」の区分に当たります。介護ロボット等の導入は1事業所あたり120万円、ICTの導入支援は1事業所あたり100万円が上限です。両者を組み合わせるパッケージ型は1事業所あたり1,000万円になります。内示より前に購入した機器は対象になりません。 デジタル化・AI導入補助金は社会福祉法人・NPO法人も対象になりますが、注意が2つあります。1つは補助率の区分です。公募要領は、この2つの法人格を含む組織形態を「小規模事業者に該当しないものとする」と定めています。小規模事業者向けの上乗せは使えず、中小企業者の区分で申請することになります。もう1つは賃上げ要件です。社会福祉法に基づく社会福祉事業を行う事業者は適用除外で、就労継続支援B型はこの第二種社会福祉事業に当たります。ただし事業場内最低賃金が地域別最低賃金以上であることは、全事業者に共通する基本要件として残ります。 小規模事業者持続化補助金には壁が2つあります。1つは法人格です。公募要領は「補助対象にならない者」に社会福祉法人・医療法人・一般社団法人・一般財団法人などを名指ししています。NPO法人のような条件つきの適格ではなく、一律の除外です。もう1つは経費です。同じ公募要領は、補助対象外となる経費を例示しています。そこに「就労継続支援A型事業所・B型事業所など障害福祉サービス事業と重複する経費」が挙がっています。株式会社立で法人格の要件を満たしても、この重複にあたる経費は**対象外になりえます**。どの経費が重複に当たるかを示す例示は、公募要領・参考資料には見当たりません。 表の締切は本記事の制度基準日時点のものです。締切は制度ごとに変わり、公募が終了している時期もあります。 関連する記事を挙げます。 - [省力化投資補助金は障害福祉事業所で使えるか](/column/shoryokuka-hojokin-fukushi/) 対象になる法人格と省力化の考え方 - [デジタル化・AI導入補助金で記録・請求ソフトは入れられるか](/column/digital-ai-dounyu-hojokin-fukushi/) 枠ごとの対象経費とハードウェアの扱い - [小規模事業者持続化補助金はB型で使えるか](/column/jizokuka-hojokin-b-gata/) 法人格の壁と対象外経費の線引き - [障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業](/column/kaigo-technology-dounyu-shien-shogai/) 都道府県ごとの補助率・上限・締切の見方 - [業務改善助成金はB型事業所で使えるか](/column/gyomu-kaizen-joseikin-b-gata/) コース区分と引き上げ対象労働者の範囲 ## 職員の雇用で使える助成金 B型の利用者を雇っても助成金は出ず、対象になるのは自法人の職員と、制度によってはA型の利用者です。 この線引きは、性質の異なる2つの一次情報を組み合わせた結論です。1つ目はB型の制度上の対象者です。B型の対象者は、次のいずれかに当たる人です。 - 企業等やA型での就労経験があり、年齢・体力面で雇用が困難になった者 - 50歳以上、または障害基礎年金1級受給者 - アセスメントで課題等の把握が行われている者 サービス内容は、雇用契約を結ばない通所の就労・生産活動支援です。 2つ目は雇用関係の助成金の要件です。特定求職者雇用開発助成金は「雇用保険一般被保険者又は高年齢被保険者として雇い入れ、継続して雇用すること」が支給要件です。雇用保険の被保険者になるには、労働基準法上の労働者として雇用契約を結んでいる必要があります。B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばないため、この要件を満たせません。 A型の利用者の扱いは、制度ごとに分かれます。A型の利用者は雇用契約に基づく労働者なので、雇用保険に加入していれば要件の入口は通ります。それでも支給要領やパンフレットなどの公式文書がA型の利用者を名指しで除外している制度があり、そこでは対象になりません。公式文書の明記による除外と、要件を満たせない結果としての対象外は、**根拠の強さが違います**。 特定求職者雇用開発助成金は、A型事業所が対象者を自らの利用者として雇い入れる場合も対象になりえます。ただし特則が置かれています。過去にこのコースの対象になったA型の利用者について、離職の状況を見る仕組みです。確認日を迎えた者が5人以上いて、その離職割合が25%を超えていると支給されません(支給要領0201ホ・ヘ)。 一方、次の助成金はA型の利用者を明示的に除外しています。 - トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース)… A型事業所が対象者をA型の利用者として雇い入れる場合は対象事業主にならない - キャリアアップ助成金の正社員化コース・障害者正社員化コース… 対象労働者の要件が「就労継続支援A型事業における利用者でないこと」 - 人材開発支援助成金(人材育成支援コース)… A型の利用者は一般就労への移行に向けた訓練を受ける前提の者として対象外 - JEEDの職場適応援助者助成金・障害者雇用相談援助助成金… 支援対象障害者からA型の利用者を除外 いずれの制度でも、A型事業所が対象者を利用者としてではなく職員として雇う場合は、この除外に当たりません。B型事業所が自法人の職員をハローワーク経由で採用する場合も、通常どおり対象になりえます。ここでいう職員は、支援員やサービス管理責任者など、利用者ではない従業員のことです。キャリアアップ助成金の障害者正社員化コースの額は、障害の区分で分かれます。重度身体障害・重度知的障害・精神障害者を有期雇用から正規雇用に転換した場合は1人あたり120万円です。それ以外の障害者は90万円になります(いずれも中小企業の場合)。いずれも実施日前日までのキャリアアップ計画の提出が共通要件です。 | | 雇用契約 | 雇用関係助成金の対象になりうるか | | --- | --- | --- | | B型の利用者 | 結ばない(工賃を受け取る利用契約) | ならない(雇用契約がなく、雇用を前提とする要件を満たせない) | | A型の利用者 | 結ぶ(雇用契約に基づく労働者) | 制度による(特開金は離職率の特則つきで対象。トライアル雇用・キャリアアップの正社員化系・人材開発支援・JEEDは公式文書で名指しの除外) | | B型事業所の職員(支援員等) | 結ぶ(通常の雇用契約) | なりうる(利用者ではなく従業員としての採用) | このほか、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の助成金も別枠であります。障害者雇用納付金制度に基づく助成金で、対象は施設整備や介助等の措置だけではありません。職場適応援助者(ジョブコーチ)助成金と、外部の専門家による雇用管理支援を助成する障害者雇用相談援助助成金も同じ枠にあります。窓口はJEEDの都道府県支部で、工事や措置に着手する前の申請が原則です。 このうち作業施設設置等助成金と障害者福祉施設設置等助成金には、就労継続支援を名指しした除外があります。A型・B型の事業を行うために本来必要な施設・設備の整備は、支給の対象になりません。その事業の利用者を支給対象障害者として申請することもできません。利用者が使う部分と明確に区別できる措置に限り、障害のある職員は対象になりえます。 職員の採用に助成金を絡めるなら、採用の形を先に決めてから動き出すと整理しやすくなります。 正社員化を見込むならキャリアアップ助成金の対象になるため、転換を実施するより前に、キャリアアップ計画を提出しておく必要があります。 ハローワーク経由の採用を考えるなら、特定求職者雇用開発助成金の対象になりうるため、募集をハローワークに出すところから始めます。 どちらの助成金を狙うかで、採用活動の入り口そのものが変わります。 雇用関係の助成金は、申請書の作成・提出代行や事務代理を報酬を得て業として行えるのが社会保険労務士に限られる業務です。 関連する記事を挙げます。 - [B型事業所の職員採用](/column/b-gata-shienin-saiyou/) 支援員の採用実務 - [障害者雇用の助成金一覧](/column/shogaisha-koyou-joseikin-ichiran/) 制度ごとの対象者と金額の一覧 - [特定求職者雇用開発助成金はB型で使えるか](/column/tokutei-kyushokusha-koyou-kaihatsu-b-gata/) 支給要件と離職率の特則 - [キャリアアップ助成金 障害者正社員化コース](/column/career-up-shogaisha-seishainka/) 転換パターンごとの金額と事前手続 - [A型が利用者の雇用で使える助成金](/column/a-gata-riyousha-koyou-joseikin/) 制度別に分かれるA型利用者の扱い ## 賃上げ・処遇改善で使える制度 処遇改善は補助金ではなく報酬の加算で、賃上げの時限補助金や物価高騰支援金は別の制度です。 厚生労働省のページの見出しは「福祉・介護職員の処遇改善に係る加算の概要」です。掲載されている資料名も、処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算の概要など、一貫して「加算」という語を使っています。計画届・実績報告様式も別紙様式2〜5として、加算の様式に位置づけられています。 事業所が加算区分の要件を満たして届け出れば、サービス提供の対価である報酬に自動的に上乗せされます。申請して採択を待つ補助金とは違い、要件を満たしている限り毎回の報酬に含まれる仕組みです。区分ごとの要件や単位数の計算は、処遇改善加算の記事で詳しく扱っています。 ただし、賃上げの名が付く補助金がまったく無かったわけではありません。令和7年度補正予算で、障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金という時限の制度が置かれました。対象は令和7年12月から令和8年5月までの6か月分です。令和8年6月からの処遇改善加算の引き上げを待たずに賃上げを支援する、**つなぎの緊急的対応**として設計されました。実施主体は都道府県で、補助額は基準月の障害福祉サービス等総報酬にサービス区分ごとの交付率を掛けて算出します。就労継続支援B型の交付率は11.4%です。単年度の措置なので、継続を前提にできる制度ではありません。 これとは別に、都道府県・市区町村が独自に設計する物価高騰支援金もあります。財源は国の交付金ですが、対象施設や単価、申請期間は自治体ごとに違います。職員の賃上げに使える原資という意味では処遇改善加算と重なりますが、こちらは施設・事業所単位の定額で、単年度の公募です。 関連する記事を挙げます。 - [令和8年度の処遇改善加算](/column/shogu-kaizen-kasan-setsumei/) 加算区分の要件と計算方法 - [賃上げ補助金と処遇改善加算はどう違うか](/column/chinage-hojokin-shogu-kaizen-chigai/) 時限の補助金と報酬の加算の関係 - [障害福祉事業所の物価高騰支援金](/column/bukka-koutou-shienkin-shogai-fukushi/) 都道府県ごとに違う額と締切の探し方 ### よくある質問 Q. 開設に使える補助金はありますか? A. あります。ただし確実ではありません。社会福祉施設等施設整備費補助金は、国1/2・都道府県等1/4を補助する国の制度で、窓口は都道府県等、予算の範囲内での採択です。自己負担分は福祉医療機構の福祉貸付で借りられます。詳しい協議の流れと日程は開設時の補助金の記事にまとめています。 Q. B型の利用者を雇うと助成金は出ますか? A. いいえ、出ません。B型の利用者は事業所と雇用契約を結ばないため、雇用保険の被保険者としての雇入れを前提とする助成金の対象になりません。対象になるのは自法人の職員と、制度によってはA型の利用者です。名指しで除外しているのはJEEDの一部助成金だけで、他は要件を組み合わせた帰結です。 Q. 設備投資に使える補助金はありますか? A. あります。ただし法人格で使える制度が変わります。中小企業省力化投資補助金やデジタル化・AI導入補助金2026は社会福祉法人・NPO法人も条件つきで対象ですが、小規模事業者持続化補助金は社会福祉法人を名指しで対象外にしています。障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業は法人格を問わず対象です。 Q. 処遇改善加算は補助金ですか? A. いいえ、処遇改善加算は補助金ではなく報酬の加算です。厚生労働省のページでも一貫して「加算」という名称が使われています。これとは別に、令和7年度補正予算で6か月分の時限の緊急支援事業補助金が置かれ、都道府県・市区町村独自の物価高騰支援金もあります。 Q. 中小企業向けの補助金はB型でも使えますか? A. 制度によって違い、法人格の時点で対象外になるものもあります。小規模事業者持続化補助金は社会福祉法人・医療法人・一般社団法人などを名指しで対象外にしています。業務改善助成金やデジタル化・AI導入補助金は社会福祉法人・NPO法人も対象です。 Q. B型の収入は補助金でまかなわれていますか? A. いいえ、収入の柱は補助金ではなく訓練等給付費という報酬です。補助金・助成金が関わるのは開設・設備投資・職員の雇用・賃上げの4つの場面に限られます。収入の仕組みそのものは、B型は「助成金目当て」なのか、の記事で詳しく扱っています。 ### 根拠資料 - e-Gov法令検索(デジタル庁)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123(第6条(自立支援給付)・第28条第1項・第2項を確認・2026年08月20日確認) - 厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定に係る報酬算定構造(令和8年6月施行分)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001663319.pdf(p.26〜28 就労継続支援B型サービス費の単位数を確認・2026年08月20日確認) - 厚生労働省(社会・援護局)「社会福祉施設の整備・運営(社会福祉施設整備補助金のページ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/shakai-fukushi-shisetsu1/index.html(対象施設と補助率(国1/2・都道府県等1/4・設置者1/4)を確認・2026年08月20日確認) - 厚生労働省(社会・援護局障害保健福祉部)「障害保健福祉関係主管課長会議資料(令和7年3月)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001468383.pdf(p.57の脚注で設置者に営利法人等・NPO法人が含まれること、p.57アで事業計画書の提出時期、p.51で国庫補助協議のスケジュールを確認・2026年08月23日確認) - 厚生労働省「令和7年度社会福祉施設等施設整備費補助金の内示について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59174.html(都道府県への内示という運用と令和7年6月30日の公表を確認・2026年08月20日確認) - 厚生労働省「令和8年度社会福祉施設等施設整備費補助金の内示について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74201.html(令和8年度の内示が令和8年7月2日に公表されたことを確認・2026年08月23日確認) - 独立行政法人 福祉医療機構(WAM)「2026年度 福祉貸付事業 融資のごあんない」 https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/2026fukushiyushinogoannai.pdf(就労継続支援事業が融資対象であること、控除される法的・制度的補助金に施設整備費補助金が含まれることを確認・2026年08月23日確認) - 厚生労働省(都道府県労働局 雇用環境・均等部室)「業務改善助成金 令和8年度のご案内」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html(額・補助率・対象・受付開始日と申請期限を確認・2026年08月17日確認(2026年08月23日に令和8年度版で再確認)) - 厚生労働省「令和8年度業務改善助成金の一部変更のお知らせ」 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001693417.pdf(50円・70円・90円の3コースへの再編と、特種用途自動車を除く自動車が助成対象外になったことを確認・2026年08月23日確認) - 厚生労働省「中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)交付要領」 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001693391.pdf(別紙3注3で「特種用途自動車」=ナンバープレートの数字が8で始まる車両等であることを確認・2026年08月23日確認) - 厚生労働省(社会・援護局障害保健福祉部)「障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業 実施要綱(障発0115第3号 別紙/愛知県サイト掲載分)」 https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/616449.pdf(目的・実施主体(都道府県、指定都市及び中核市)・事業区分を確認・2026年08月23日確認) - 愛知県「障害者施設介護テクノロジー導入支援事業費補助金交付要綱」 https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/616446.pdf(第5条で補助率3/4と基準額(その他の事業所120万円・ICT100万円・パッケージ型1,000万円)を確認・2026年08月23日確認) - 独立行政法人 中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 スケジュール」 https://it-shien.smrj.go.jp/schedule/(1次締切を確認・2026年08月17日確認(2026年08月23日に再確認)) - 独立行政法人 中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)」 https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_koubo_tsujyo.pdf(p.8で社会福祉法人・NPO法人が小規模事業者に該当しないこと、p.11で社会福祉事業を行う事業者が賃上げ要件の適用除外になることを確認・2026年08月23日確認) - 独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助金(一般型)公募スケジュール」 https://shoryokuka.smrj.go.jp/ippan/schedule/(第8回の公募開始日・申請受付開始日・公募締切日を確認・2026年08月17日確認(2026年08月23日に再確認)) - 全国中小企業団体中央会「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(総合サイト)」 https://portal.monodukuri-hojo.jp/(直近締切の状況を確認・2026年08月17日確認(2026年08月23日に24次公募の掲載がないことを再確認)) - 中小企業庁「小規模事業者持続化補助金」 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/shokibo/jizoku/(制度の概要と事務局サイトの所在を確認・2026年08月17日確認) - 小規模事業者持続化補助金事務局(商工会議所地区)「小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領(第8版)」 https://r6.jizokukahojokin.info/doc/r6_koubover8_ip20.pdf(P.4〜5で社会福祉法人・医療法人・一般社団法人等が「補助対象にならない者」であること、P.18〜19で障害福祉サービス事業と重複する経費が対象外であること、P.3で第20回の日程を確認・2026年08月23日確認) - 厚生労働省(社会・援護局障害保健福祉部)「就労継続支援A型、B型に係る報酬について≪論点等≫(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第9回 資料3)」 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000177374.pdf(p.3・p.21でA型・B型の対象者と雇用契約の有無を確認・2026年08月20日確認) - 厚生労働省(都道府県労働局・ハローワーク)「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_konnan.html(支給要件(雇用保険被保険者としての雇い入れ)を確認・2026年08月20日確認) - 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)支給要領(令和8年4月1日版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001684391.pdf(0201ホ・ヘでA型事業所が自らの利用者を雇い入れる場合の離職率25%の特則を確認・2026年08月23日確認) - 厚生労働省「トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース)支給要領(令和8年4月8日版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001082118.pdf(0201・0401イで就労継続支援A型事業所の利用者が除外されることを確認・2026年08月23日確認) - 厚生労働省(都道府県労働局・ハローワーク)「キャリアアップ助成金(正社員化コース/障害者正社員化コース/賃金規定等改定コース/賞与・退職金制度導入コース)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html(各コースの金額と共通要件を確認・2026年08月17日確認(2026年08月23日に令和8年4月8日版のままであることを確認)) - 厚生労働省「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)のご案内(令和8年度版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001685042.pdf(P.10の対象労働者要件「就労継続支援A型事業における利用者でないこと」を確認・2026年08月23日確認) - 厚生労働省「人材開発支援助成金 事業主様向けQ&A(人材育成支援コース)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001330281.pdf(Q29でA型の利用者が対象外、支援を行う職員は要件を満たせば対象と示されていることを確認・2026年08月23日確認) - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用納付金制度に基づく助成金」 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/(助成金の種類(職場適応援助者助成金・障害者雇用相談援助助成金を含む)を確認・2026年08月23日確認) - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金のごあんない(令和8年度)」 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/q2k4vk000001wtq5-att/v1tt1c0000002zg6.pdf(p.11・p.51〜52で就労継続支援A型・B型の事業に本来必要な施設設備と当該事業の利用者が除外されること、職員の例外を確認・2026年08月23日確認) - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「職場適応援助者助成金のごあんない(令和8年4月版)」 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/q2k4vk000001wtq5-att/v1tt1c0000002zmx.pdf(p.2・p.27で支援対象障害者から就労継続支援A型の利用者が除外されることを確認・2026年08月23日確認) - 厚生労働省(社会・援護局障害保健福祉部)「福祉・介護職員の処遇改善に係る加算の概要」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/minaoshi/index_00007.html(ページ見出し・掲載資料名が一貫して「加算」であることを確認・2026年08月20日確認) - 厚生労働省(社会・援護局障害保健福祉部)「障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業実施要綱(障発1226第7号 別紙)」 https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/jigyo/syogukaizen/3fukushi-sien.pdf(令和7年12月16日から適用の時限措置であること、基準月・6か月分・別紙1表1の交付率(就労継続支援B型11.4%)を確認・2026年08月23日確認) ### 更新履歴 - 2026.09.27 使える制度の一覧表を冒頭に置き、記事の組み立てを一覧中心に改めた - 2026.08.20 初回公開 - 2026.08.23 持続化補助金の対象者・対象外経費、業務改善助成金の車両限定と申請期限、施設整備費補助金の設置者の範囲と協議・内示の時期、A型利用者の制度別の扱い、JEED助成金の範囲を訂正。介護テクノロジー導入支援事業の出典を実施要綱に差し替え、処遇改善の時限補助金を追記し、クラスタ記事への内部リンクを追加 --- ## 就労継続支援B型の 報酬単価はどう決まるか 基本報酬の区分と単位数 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/b-gata-houshu-tanka/ カテゴリー: 経営・収支 公開: 2026-08-19 / 更新: 2026-08-19 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 就労継続支援B型の基本報酬は、サービス費の種類・定員規模・前年度の平均工賃月額の3つの掛け合わせで決まります。サービス費は工賃向上計画を作成している事業所向けの(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)、作成していない事業所向けの(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)、基準該当の(ト)に分かれます。定員規模は20人以下から81人以上までの5区分です。 令和8年6月からは、平均工賃月額の区分に従前からの「対象外」と、見直し後の「対象」の2系統が併存しています。どちらが適用されるかは事業所の指定時期や過去の区分の推移で決まり、既存事業所の多くは対象外の従前区分が続きます。平均工賃月額は前年度の工賃支払総額・延べ利用者数・年間開所日数の実績で算出し、当年度の実績は使いません。 - 基本報酬を決める3要素: サービス費の種類((Ⅰ)〜(Ⅵ)・(ト))×定員規模(5区分)×前年度の平均工賃月額 - 定員規模の区分: 20人以下/21〜40人/41〜60人/61〜80人/81人以上の5段階 - 令和8年6月からの区分の系統: 対象外(従前の6段階、境界値4万5千円〜1万5千円)と対象(見直し後の12段階、境界値4万8千円〜1万5千円)が併存。適用はどちらか一方 - 平均工賃月額の算定期間: 前年度の工賃支払総額・延べ利用者数・年間開所日数の実績(当年度の実績は不使用) - サービス費(Ⅰ)・定員20人以下・対象外の単位数レンジ: 837単位(一・4万5千円以上)〜590単位(八・1万円未満) - サービス費(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)の決まり方: 平均工賃月額の区分を使わず、人員配置(6:1/7.5:1/10:1)と定員規模だけで決まる 根拠: 厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定に係る報酬算定構造(令和8年6月施行分)」ほか ### 本文 ## 基本報酬は「サービス費の種類×定員規模×平均工賃月額」で決まる 就労継続支援B型の基本報酬は、サービス費の種類・定員規模・平均工賃月額の3つの掛け合わせで、1日あたりの単位数が決まります。 3つの軸はそれぞれ次のとおりです。 - サービス費の種類:工賃向上計画を作成している事業所向けの(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)、作成していない事業所向けの(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)、基準該当の(ト) - 定員規模:20人以下/21〜40人/41〜60人/61〜80人/81人以上の5区分 - 平均工賃月額:(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)だけに設けられた区分。(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)には無い サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)は、人員配置がそれぞれ6:1、7.5:1、10:1です。工賃向上計画を作成している事業所が対象で、平均工賃月額の区分に応じて単位数が変わります。サービス費(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)は工賃向上計画を作成しない事業所向けで、平均工賃月額の区分を使いません。人員配置と定員規模だけで単位数が決まります。基準該当就労継続支援B型サービス費(ト)は、社会福祉法・生活保護法上の授産施設利用者に提供した場合の区分です。対象は当該施設の事務費対象外の障害者です。 収入全体の構造は[B型の収支構造](/column/b-gata-shushi-kouzou/)で扱っています。 ## まず自分の事業所がどのサービス費に当たるかを確かめる どのサービス費に当たるかは、工賃向上計画の作成の有無と人員配置の実態で決まり、平均工賃月額の高さでは決まりません。 サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)の要件は、人員配置の比率で分かれます。 - (Ⅰ):従業者数が利用者数÷6以上 - (Ⅱ):従業者数が利用者数÷7.5以上((Ⅰ)算定の場合を除く) - (Ⅲ):従業者数が利用者数÷10以上((Ⅰ)(Ⅱ)算定の場合を除く) いずれも**工賃向上計画を作成している**事業所が対象です。 サービス費(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)は工賃向上計画を作成しない事業所向けで、平均工賃月額の区分がありません。利用定員と人員配置で単位数が決まります。(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)を算定している場合は算定できません。定員20人以下の単位数は次のとおりです。 | サービス費 | 人員配置 | 単位数/日(定員20人以下) | | --- | --- | --- | | (Ⅳ) | 6:1 | 584 | | (Ⅴ) | 7.5:1 | 530 | | (Ⅵ) | 10:1 | 484 | 平均工賃月額の区分が無いため、工賃の実績にかかわらずこの単位数になります。 ## 令和8年6月の新区分は、すべての事業所が移るわけではない 令和8年6月からは、平均工賃月額の区分に従前からの「対象外」と見直し後の「対象」が併存し、**どちらが適用されるか**は事業所ごとに決まります。 対象になるかどうかは、指定を受けた時期と、令和6年度改定の前後で区分がどう動いたかで判定します。令和5年4月以前に指定を受けた事業所は、令和6年3月の区分から令和6年4月の区分が変わらない、または下がっている場合、見直しの対象外になります。令和5年5月から令和6年3月に指定を受けた事業所は、指定時期に応じた経過措置期間が終わったあとの区分同士を比較して判定します。既存事業所の多くはこの対象外に当たり、従前の区分がそのまま続きます。 定員20人以下・サービス費(Ⅰ)の単位数を、対象外と対象で並べます。 対象外(従前区分)です。 | 区分 | 平均工賃月額 | 単位数/日 | | --- | --- | --- | | 一 | 4万5千円以上 | 837 | | 二 | 3万5千円以上4万5千円未満 | 805 | | 三 | 3万円以上3万5千円未満 | 758 | | 四 | 2万5千円以上3万円未満 | 738 | | 五 | 2万円以上2万5千円未満 | 726 | | 六 | 1万5千円以上2万円未満 | 703 | | 七 | 1万円以上1万5千円未満 | 673 | | 八 | 1万円未満 | 590 | 対象(見直し後の新区分)です。七・八は対象外と共通のため省略します。 | 区分 | 平均工賃月額 | 単位数/日 | | --- | --- | --- | | 一 | 4万8千円以上 | 837 | | A | 4万5千円以上4万8千円未満 | 812 | | 二 | 3万8千円以上4万5千円未満 | 805 | | B | 3万5千円以上3万8千円未満 | 781 | | 三 | 3万3千円以上3万5千円未満 | 758 | | C | 3万円以上3万3千円未満 | 738 | | 四 | 2万8千円以上3万円未満 | 738 | | D | 2万5千円以上2万8千円未満 | 726 | | 五 | 2万3千円以上2万5千円未満 | 726 | | E | 2万円以上2万3千円未満 | 705 | | 六 | 1万8千円以上2万円未満 | 703 | | F | 1万5千円以上1万8千円未満 | 682 | 境界値は上位側で引き上げられています。例えば最上位の境界は、対象外の4万5千円から対象では4万8千円になりました。中間の区分も細かく分かれ、(A)から(F)までの区分が新設されています。 サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)の事業所は、令和8年4月15日までに現行区分の届出書と見直し後区分の届出書の両方を提出するのが原則です。ただし、次のいずれかに当たる事業所は、見直し後区分の届出書が不要です。根拠書類の提出で足ります。 - 令和7年度の平均工賃月額が1万5千円未満の事業所 - 令和6年度改定の前後で区分が変わらない、または下がった事業所 サービス費(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)には平均工賃月額の区分自体が無いため、この対象外・対象の区別はありません。 ## 平均工賃月額は前年度の実績で決まる 平均工賃月額は、前年度の工賃支払総額と延べ利用者数、年間開所日数の実績から算出し、当年度の実績は使いません。 > 1人当たり平均工賃月額 = 前年度の工賃支払総額 ÷(前年度の延べ利用者数 ÷ 前年度の年間開所日数)÷ 12ヶ月 算出は3段階です。 - 前年度における工賃支払総額を算出する - 前年度における開所日1日当たりの平均利用者数を算出する(前年度の延べ利用者数÷前年度の年間開所日数) - 工賃支払総額を平均利用者数で割り、さらに12ヶ月で割る 重度者支援体制加算(Ⅰ)を算定している場合は、算出した額に2,000円を加えた額を平均工賃月額とすることができます。次のような場合は、前年度に代えて前々年度の平均工賃月額を用いることができます。 - 原材料費等の高騰で同一都道府県内8割のB型事業所の工賃実績が低下し、都道府県がやむを得ないと認めた場合 - 激甚災害・災害救助法適用地域で工賃支払額が減少する場合など 新規指定の事業所は前年度の実績がまだありません。そのため(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)を算定する場合、指定初年度の1年間は平均工賃月額を1万円未満の区分八と**みなして算定**します。年度途中の指定であれば、初年度と2年度目の両方を区分八とみなします。支援提供の開始から6ヶ月が経過したあとは、開始からの任意の6ヶ月間の実績に応じて算定できます。 ## 定員が大きいほど利用者1人あたりの単価は下がる 同じサービス費・同じ平均工賃月額区分でも、定員規模が大きくなるほど1日あたりの単位数は下がります。 サービス費(Ⅰ)・対象外・一(4万5千円以上)の定員20人以下は837単位でした。定員が21〜40人、41〜60人、61〜80人、81人以上と大きくなるにつれて、同じ区分のまま単位数は下がっていきます。この構造は対象外・対象のどちらの系統でも、(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)のどのサービス費でも共通です。(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)も同じ形で、定員規模が大きくなるほど単位数は下がります。 定員を増やして利用者数を確保しても、利用者1人あたりの単価は下がる方向に働きます。定員規模の見直しは、収容できる人数の増加と単価の低下を、両方織り込んで判断する必要があります。収支への影響は[B型は儲かるのか](/column/b-gata-moukaru/)で扱っています。 ## 単位数を金額にするときに要るもの 単位数を金額に換算するには地域区分の割増率が要りますが、人件費割合まで反映した円単価の一覧には一次情報が届いていません。 地域区分は事業所の所在地に応じて8区分に分かれ、単位数に割増率を掛けて金額を出します。令和6〜8年度に適用される障害者サービスの地域区分は次のとおりです。 | 地域区分 | 割増率 | 代表地域 | | --- | --- | --- | | 1級地 | 20% | 東京都特別区 | | 2級地 | 16% | 横浜市・川崎市・大阪市 等 | | 3級地 | 15% | さいたま市・千葉市・名古屋市 等 | | 4級地 | 12% | 志木市・船橋市・神戸市 等 | | 5級地 | 10% | 京都市・堺市・福岡市 等 | | 6級地 | 6% | 仙台市・宇都宮市・岡崎市 等 | | 7級地 | 3% | 札幌市・岡山市・長崎市 等 | | その他 | 0% | 上記以外の地域 | 地域区分の割増率は単位数に掛ける倍率までで、人件費割合を反映した「1単位=何円」という円単価の一覧には、この記事の時点で一次情報が届いていません。 ### よくある質問 Q. 就労継続支援B型の基本報酬は何で決まりますか? A. サービス費の種類・定員規模・前年度の平均工賃月額の3つで決まります。サービス費は工賃向上計画を作成する事業所向けの(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)と、作成しない事業所向けの(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)、基準該当の(ト)に分かれます。定員規模は20人以下から81人以上までの5区分です。 Q. 令和8年6月からすべての事業所が新しい区分に変わりますか? A. いいえ、変わりません。従前の区分(対象外)と見直し後の区分(対象)が併存し、どちらが適用されるかは事業所の指定時期や過去の区分の推移で決まります。既存事業所の多くは対象外の従前区分が続きます。 Q. 平均工賃月額はいつの実績で計算しますか? A. 前年度の実績で計算します。工賃支払総額を、開所日1日当たりの平均利用者数で割り、さらに12ヶ月で割って求めます。当年度の実績は使いません。 Q. サービス費(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)は平均工賃月額が高いほど単価が上がりますか? A. いいえ、平均工賃月額の区分はありません。(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)は工賃向上計画を作成しない事業所向けで、定員規模と人員配置(6:1/7.5:1/10:1)だけで単位数が決まります。 Q. 定員規模が大きいほど利用者1人あたりの単価はどうなりますか? A. 下がります。同じサービス費・同じ平均工賃月額区分でも、定員が21〜40人、41〜60人と大きくなるにつれて、単位数は同じ構造のまま下がっていきます。 Q. 単位数を円に換算するにはどうすればいいですか? A. 地域区分の割増率が必要です。1級地20%からその他0%まで8区分あり、地域ごとに割り増して単位を円に換算します。ただし人件費割合まで反映した円単価表の一次情報は、この記事の時点で確認できていません。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定に係る報酬算定構造(令和8年6月施行分)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001663319.pdf(p.26〜28「就労継続支援B型サービス費」の単位数表を確認・2026年8月19日確認) - 厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定に伴う留意事項について(最終改正 令和8年5月28日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(p.286〜295「⑸ 就労継続支援B型サービス費」の項で要件・平均工賃月額の算定方法・新規指定事業所の特例を確認・2026年8月19日確認) - 厚生労働省「就労継続支援B型の基本報酬区分の基準の見直しについて(令和8年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1 別添資料)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001683311.pdf(全7頁。区分見直しの対象・対象外の判定ロジックと届出フローを確認・2026年8月19日確認) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について(資料一覧ページ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202214_00013.html(Q&A VOL.1本体および別添資料の掲載を確認・2026年8月19日確認) - 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001205322.pdf(p.188 別紙3「令和6〜8年度における地域区分の適用地域(障害者サービス)」を確認・2026年8月19日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.19 初回公開 --- ## 就労継続支援B型で仕事がないとき 制度上どうなるのかを 一次資料から整理する URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/b-gata-shigoto-ga-nai/ カテゴリー: 経営・収支 公開: 2026-08-19 / 更新: 2026-08-19 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 仕事(受注)が少ないこと自体を直接禁止する条文はありません。就労継続支援B型の基本方針(第198条)は、就労の機会とともに生産活動その他の活動の機会を提供し、訓練等を行うことを求めています。工賃は、生産活動に係る事業の収入から必要経費を控除した額を支払う建て付けです(第201条第1項)。生産活動の収支を黒字にすべきという明文の義務(収支差額が賃金総額以上)は、B型の条文にはありません。この義務があるのはA型の第192条第2項だけです。 工賃が下がっても、その月の基本報酬が直接下がるわけではありません。就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)は前年度の平均工賃月額に応じて区分が決まるため、工賃総額の減少は翌年度の区分を通じて響く場合があります。(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)は平均工賃月額を使わないため、この経路自体がありません。作業が無い日を利用日として計上してよいかや、事業所が取るべき対応手順を定めた一次資料には、到達できていません。運営指導では生産活動の実態や収支を確認される見込みですが、根拠のガイドラインは令和7年10月20日に社会保障審議会へ示された案で、確認日(2026-08-19)時点でも正式発出されていません。 - 黒字化の義務: B型の第201条に、生産活動収支を黒字にすべきという明文の義務は無い。明文があるのはA型の第192条第2項のみ - 自立支援給付費の充当: B型の条文上は禁止する明文規定が無い。運営指導のガイドライン(案)が示す確認事項としてのみ言及されている - 工賃の算定式: 生産活動に係る事業の収入から必要経費を控除した額を工賃として支払う(第201条第1項) - 平均工賃の下限: 利用者1人当たりの工賃の平均額は、1月当たり3千円を下回ってはならない(第201条) - 基本報酬への影響: 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)は前年度の平均工賃月額に応じて区分が決まる。工賃総額が下がれば翌年度の区分が下がる可能性はあるが、直接ではない。(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)は平均工賃月額を使わない - 作業が無い日の扱い: サービス提供実績記録票上の利用日として計上してよいかを直接定めた一次資料には到達できていない - 在宅利用の要件: アからキまでの7要件のいずれにも該当する場合に限り算定できる。通所困難ではなく、利用希望と支援効果の有無を市町村が判断することが基準 - 運営指導の根拠: 指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドラインは、社会保障審議会障害者部会(第151回、令和7年10月20日)に示された「案」の段階 根拠: 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成十八年厚生労働省令第百七十一号) ### 本文 ## 仕事が無いこと自体を禁止する条文は無い 仕事(受注)が少ないこと自体を直接禁止する条文はありません。 就労継続支援B型の基本方針(第198条)は2つを求めています。利用者に就労の機会を提供すること、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて知識・能力向上のための訓練その他の便宜を行うことです。工賃は、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額を支払う建て付けです(第201条第1項)。利用者1人当たりの工賃の平均額は、1月当たり3千円を下回ってはならないとも定められています(同条第2項)。 仕事が減れば生産活動の収入も減り、経費を控除した後に残る工賃の原資が細ります。この関係は条文からたどれますが、「仕事が無いこと」自体を禁じたり、罰則付きで規制したりする条文ではありません。 ## B型に「黒字にせよ」という条文は無い 生産活動の収支を黒字にすることを**明文の義務**として定めた条文は、B型にはありません。 A型の第192条第2項は、生産活動に係る事業の収入から経費を控除した額が、利用者に支払う賃金の総額以上となるようにしなければならないと定めています。明文の義務です。B型の第201条には、これに対応する規定がありません。第201条第1項が定めているのは、収入から経費を控除した額を工賃として支払うという算定式だけです。 自立支援給付費を賃金・工賃の原資に、原則として充ててはならないという規定も、同じ構造です。A型の第192条第6項に明文がありますが、B型の第201条には対応する規定が**ありません**。B型でこの考え方が示されているのは、運営指導のガイドライン(案)が挙げる着眼点としてです。「自立支援給付費を利用者の賃金・工賃に充てていないか」という確認事項にとどまり、条文上の義務ではありません。 | 項目 | A型(第192条) | B型(第201条) | | --- | --- | --- | | 収支と支払額の大小関係 | 収入-経費が賃金総額以上となるようにしなければならない(第192条第2項、明文の義務) | 対応する規定なし。収入-経費を工賃として支払う算定式のみ(第201条第1項) | | 自立支援給付費の充当 | 原則禁止の明文規定あり(第192条第6項) | 条文上の規定なし。運営指導の着眼点としてのみ言及 | ## 工賃の減少は、翌年度の基本報酬区分を通じて響く 工賃が下がっても、その月の基本報酬が直接下がるわけではありません。 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)は、利用定員・人員配置に加えて、前年度の平均工賃月額に応じて区分が決まります。平均工賃月額の算定式は3段階です。前年度の工賃支払総額を、開所日1日当たりの平均利用者数(前年度の延べ利用者数÷前年度の年間開所日数)で割ります。その額をさらに12月で割って算出します。ただし、通常の事業所に雇用されている利用者で、一時的に支援を受ける人は算出から除きます。仕事が減って工賃支払総額が下がれば、翌年度の平均工賃月額が下がり、区分が下がる可能性があります。ただしこの経路は**(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)に限られます**。 | 区分 | 算定の基礎 | 在宅利用の可否(条文上の記載) | | --- | --- | --- | | (Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ) | 利用定員・人員配置(工賃向上計画の作成が前提)・前年度の平均工賃月額 | 参照によって含む(「別の場所で行われる支援」に在宅利用の類型が含まれる。「在宅において」の直接の文言は無い) | | (Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ) | 利用定員・人員配置のみ(平均工賃月額は使わない) | 明記あり(「在宅において」の文言を直接含む) | (Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)は利用定員と人員配置だけで区分が決まり、平均工賃月額を使いません。仕事の減少が翌年度の区分に響くという経路そのものが、この3区分には存在しません。 例外もあります。重度者支援体制加算(Ⅰ)を算定している場合は、算出した平均工賃月額に2,000円を加えた額を用いることができます。原材料費等の高騰などにより都道府県内の8割の事業所で工賃実績が低下し、都道府県がやむを得ないと認めた場合は、同一都道府県内の全事業者について、前年度に代えて前々年度の平均工賃月額を使えます。激甚災害の指定や災害救助法の適用地域に事業所が所在し、生産活動収入の減少が見込まれて工賃支払額が減少する場合は、同じ特例が使えます。また、災害による間接的な影響で工賃支払額が減少したことが明らかだと都道府県等が認めた場合も、同様です。自事業所だけの受注減を対象とする特例は、確認した範囲の一次資料には見当たりません。確認できた特例はいずれも都道府県単位・災害起因のものです。 ## 作業が無い日を利用日にできるかは、直接定めた一次資料が無い 作業が無い日をそのまま利用日として計上してよいかを、直接定めた一次資料には到達できていません。 一次資料から分かっているのは、次の3点にとどまります。 - 日中活動サービスの提供時間に下限は無いものの、個別支援計画に沿ったサービス提供時間の確保が必要であること - 運営指導のガイドライン(案)が、eスポーツ、植物の水やりを1日数回行うだけの活動など、所定の場所に居ればよいという活動を、公費による就労支援の生産活動として適さない可能性がある例に挙げていること - 地域協働加算の文脈では、生産活動収入が発生しない地域活動、レクリエーションを目的とした活動、見学や体験のみを目的とした活動が、不適切な取組の例とされていること いずれも「生産活動としての適切性」や「特定の加算の要件」についての記述です。サービス提供実績記録票上、その日を利用日として計上できるかという開所日数のルールそのものを定めた一次資料には、この確認の範囲では**到達できていません**。本記事でもこの一線を越えた断定はしません。 ## 在宅利用への切り替えは、7つの要件をすべて満たす必要がある 在宅利用への切り替えは、仕事が無いときの簡単な逃げ道にはなりません。 在宅利用は、就労移行支援・就労継続支援(A型・B型)に共通する仕組みで、B型固有の規定ではありません。令和6年度改定を反映した要件(本記事の基準日時点で改正情報は確認できていません)は次のとおりです。対象は、在宅でのサービス利用を希望し、支援効果が認められると市町村が判断した利用者です。次のアからキまでの**7要件をすべて満たす**場合に限り算定できます。 - ア 通常の事業所に雇用されることが困難な障害者に、就労の機会と生産活動その他の活動の機会を提供し、知識・能力向上の訓練等を行うこと。在宅利用者が行う作業活動・訓練等のメニューを常に確保すること - イ 1日2回は連絡・助言・進捗状況の確認等を行い、日報を作成すること。また、作業内容や本人の希望に応じ、1日2回を超えた対応も行うこと - ウ 緊急時の対応ができること - エ 在宅利用者から疑義照会があった際、随時、訪問や連絡で必要な支援を提供できる体制を確保すること - オ 事業所職員による訪問、在宅利用者による通所、又は電話・パソコン等のICT機器の活用により、評価等を1週間につき1回は行うこと - カ 原則として月の利用日数のうち1日は、事業所職員による訪問又は在宅利用者による通所により、居宅又は事業所内で訓練目標の達成度評価等を行うこと - キ オが通所により行われ、あわせてカの評価等も行われた場合は、カの通所に置き換えて差し支えないこと 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)の算定対象には、指定就労継続支援B型事業所とは別の場所で行われる支援が含まれ、この中に在宅において利用する場合の支援も含まれる建て付けです。「在宅において」という文言を直接使っているわけではありません。一方(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)は、利用者に在宅において就労継続支援B型を提供した場合を含むと直接明記されています。自事業所がどの区分かによって、在宅利用の位置づけをまず確認してください。 ## 運営指導では生産活動の実態を確認される。根拠のガイドラインはまだ「案」 運営指導では、生産活動の実態と収支を確認される見込みです。ただし根拠のガイドラインは、まだ**「案」の段階**です。 令和7年10月20日の社会保障審議会障害者部会(第151回)に、ガイドライン(案)が参考資料として提出されました。正式名称は、指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドラインです。この確認の時点で、これは審議会に示された案であり、正式に発出されたガイドラインではありません。 案が挙げる確認の観点は、次のとおりです。 - 具体的な生産活動の場面があるか、一般就労に必要な能力向上が見込まれるか、安定した生産活動収入を得られるか、生産活動の収益が適当か - 福祉事業会計と生産活動会計を区分しているか - 自立支援給付費を賃金・工賃に充てていないか - 生産活動収支が多額の赤字から黒字化した事業所は、どのように黒字化したかの経緯 - 運営指導は概ね3年に1回。新規指定からは概ね6月をめどに実施すること 募集方法についても言及があります。「1日来たら○○円」と謳い、生産活動収支上赤字であるにもかかわらず賃金・工賃を提供する募集は、不適切な例として挙げられています。 これらは運営指導・監査で確認される観点であり、罰則を伴う条文上の**義務ではありません**。ガイドラインが正式に発出された場合は、内容が変わる可能性があります。 受注が減った場面でまず整理しておきたいのは、生産活動の収入と必要経費の内訳です。第201条が定める工賃の算定式(収入から経費を控除した額が工賃)に沿って数字を並べると、工賃の原資がどこまで確保できているかが見えてきます。福祉事業会計と生産活動会計を分けて記録しておくと、この整理がしやすくなります。 次に点検したいのは、生産活動として適切といえる活動かどうかです。運営指導のガイドライン案は、所定の場所に居ればよいだけの活動やレクリエーション目的の活動を、適さない例として挙げています。受注減にあわせて作業内容を組み直すときは、この観点に照らして活動の中身を確認しておくと安心です。 工賃総額の減少は、就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)では、前年度の平均工賃月額を通じて翌年度の区分に響く経路があります。この経路を踏まえると、受注減が続く段階で早めに手を打つほうが、翌年度への影響を抑えやすくなります。運営指導に備えて、請求書や納品書など受発注の実態を示す書類、生産活動収支の記録、収支改善に向けた取り組みの記録を残しておくと説明しやすくなります。 ## 関連する記事 - 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A. いいえ、黒字を義務付けた条文はB型にはありません。明文の義務(収支差額が賃金総額以上)があるのはA型の第192条第2項だけです。B型の第201条は、収入から経費を控除した額を工賃として支払う算定式を定めているにすぎません。 Q. 自立支援給付費を工賃に充ててはならないという決まりはB型にもありますか? A. 条文上の明文規定はB型にはありません。明文があるのはA型の第192条第6項だけです。B型では、自立支援給付費を賃金・工賃に充てていないかが、運営指導のガイドライン(案)が示す確認事項として挙げられています。 Q. 工賃が下がると基本報酬はすぐに下がりますか? A. いいえ、その月の報酬が直接下がるわけではありません。就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)は前年度の平均工賃月額に応じて区分が決まるため、翌年度の区分を通じて響く場合があります。(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)は平均工賃月額を使わないため、この経路自体がありません。 Q. 作業が無い日をそのまま利用日として報酬算定してよいですか? A. 断定できる一次資料が見当たりません。個別支援計画に沿った時間の確保は必要ですが(出典は留意事項通知)、開所日数そのものを定めた規定ではありません。運営指導のガイドライン(案)は、生産活動として不適切な活動の例を挙げるにとどまります。 Q. 在宅利用に切り替えれば、仕事が無い問題を解決できますか? A. いいえ、7要件をすべて満たす必要があります。通所が困難だからではなく、在宅でのサービス利用を希望し支援効果が認められると市町村が判断することが前提です。就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)も、在宅利用は参照条文によって含まれる建て付けです。「在宅において」の文言を直接使うのは(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)です。 Q. 運営指導では生産活動の状況を必ず確認されますか? A. 概ね3年に1回の運営指導で確認される見込みです。ただし根拠のガイドラインは、令和7年10月20日に社会保障審議会へ示された案のままで、確認日(2026-08-19)時点でも正式発出されていません。 ### 根拠資料 - 厚生労働省(e-Gov法令検索)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成十八年厚生労働省令第百七十一号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(第198条(基本方針)・第201条(工賃の支払等)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省・社会保障審議会障害者部会「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン(案)(第151回社会保障審議会障害者部会(令和7年10月20日)参考資料2)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001581251.pdf(新規指定審査・運営指導における生産活動・収支の確認事項を確認。審議会提出の「案」の段階であることを確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日 障発第1031001号、新旧対照表)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(就労継続支援B型サービス費の区分と平均工賃月額の算定方法を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について(平成19年4月2日 障障発第0402001号)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb4775&dataType=1&pageNo=1(在宅利用の要件(旧版)を確認。現行版との食い違いがあるため本文では出典5を採用・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.8(令和7年3月31日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001471548.pdf(在宅利用の要件(令和6年度改定を反映した現行の文言、ア〜キ)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省(e-Gov法令検索)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成十八年厚生労働省令第百七十一号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(第192条(賃金及び工賃、就労継続支援A型)を確認。B型第201条との対比のために確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1(令和6年3月29日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001260473.pdf(A型のスコア表(生産活動の評価)に関するQ&Aを確認。B型の平均工賃月額連動区分とは別の仕組みであることを確認・2026年08月19日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.19 初回公開 --- ## 就労継続支援B型の仕事の取り方を 障害者優先調達推進法と 国の調達実績から整理する URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/b-gata-shigoto-no-torikata/ カテゴリー: 経営・収支 公開: 2026-08-19 / 更新: 2026-08-19 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 就労継続支援B型は、障害者優先調達推進法(平成24年法律第50号、平成25年4月1日施行)の対象です。この法律は、国・独立行政法人等に優先的な調達の努力義務を、地方公共団体に受注機会を増やす措置の努力義務を課しています。各省庁等は毎年度調達方針を作成し、年度終了後に実績を公表します。 共同受注窓口は、複数の事業所への発注をあっせん・仲介する窓口です。法律の条文には登場せず、位置づけを定めているのは閣議決定の基本方針です。窓口を通した調達も、結果的に事業所が供給する物品・役務の調達になっていれば、直接調達に準じて実績に数えられます。窓口を活用した支援は、都道府県が実施主体の工賃向上計画支援事業のメニューとして用意されています。 - 法律名: 国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律(平成24年法律第50号) - 施行日: 平成25年4月1日 - 対象: 障害者就労施設等(就労継続支援を行う施設等を含む。条文上A型・B型の区別なし) - 国の調達実績(令和6年度): 6,763件・1,496,515千円 - 都道府県の調達実績(令和6年度): 28,612件・3,140,158千円 - 共同受注窓口の位置づけ: 法律の条文には無い。閣議決定の基本方針が、発注のあっせん・仲介を行う窓口として説明している - 窓口経由の調達の扱い: 基本方針上、結果的に事業所が供給する物品・役務の調達になっていれば、直接調達に準じて実績に算入される - 都道府県の支援事業: 工賃向上計画支援事業(実施主体は都道府県。費用は都道府県が支弁し、国が補助する) 根拠: 厚生労働省「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律」及び「障害者就労施設等からの物品等の調達の推進に関する基本方針」(平成25年4月23日閣議決定) ### 本文 ## 障害者優先調達推進法とは 障害者優先調達推進法は、国・独立行政法人等に優先的な調達の努力義務を、地方公共団体に受注機会を増やす措置の努力義務を課す法律です。 正式名称は「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律」(平成24年法律第50号)です。平成25年4月1日に施行されました。 法律が対象とする「障害者就労施設等」には、就労継続支援を行う事業所が含まれます。条文はA型とB型を区別せず、「就労継続支援を行う事業」とだけ規定しています。就労継続支援B型も、この法律の対象です。 国及び独立行政法人等には、優先的な調達に努める責務があります(第3条)。地方公共団体にも、その区域の就労・就業の実態に応じて、受注機会を増やす措置を講じる努力義務があります(第4条)。 ## 国等の調達方針と、調達の実績 各省庁等は毎年度、この法律の基本方針に沿って調達方針を作成し、年度終了後に実績を公表します。 法律は、各省各庁の長及び独立行政法人等の長に、毎年度の調達方針の作成(第6条)と、年度終了後の実績の公表・厚生労働大臣への通知(第7条)を求めています。都道府県・市町村・地方独立行政法人にも、調達方針の作成と実績公表の義務があります(第9条)。 令和6年度の調達実績は、区分ごとに次の通りです。 | 区分 | 件数 | 調達額 | | --- | ---: | ---: | | 国(各省庁合計) | 6,763件 | 1,496,515千円 | | 独立行政法人等 | 8,472件 | 1,984,685,583円 | | 都道府県 | 28,612件 | 3,140,158千円 | | 市町村 | 107,014件 | 17,608,887,545円 | | 地方独立行政法人 | 2,323件 | 407,710,420円 | 厚生労働省がこの5区分をまとめた「全国計」として公表した数値は確認できませんでした。5区分の令和6年度実績を単純に合算すると、153,184件・24,637,956,548円(約246億3,796万円)になります。編集部が5つの資料を足し合わせた参考値です。 調達額は、区分によって傾向が異なります。都道府県分は、令和5年度の28,691件・3,629,027千円から、令和6年度の28,612件・3,140,158千円へと、件数・金額とも減少しています。増加基調が確認できるのは、国の区分だけです。国の実績は、平成25年度の5,875件・850,575千円から、令和6年度の6,763件・1,496,515千円まで、概ね増加基調で推移しています。 ## 共同受注窓口の位置づけ 共同受注窓口は、受注内容に対応できる複数の事業所への発注をあっせん・仲介する窓口です。ただし、この機能を定めているのは法律の条文ではありません。 障害者優先調達推進法の第1条から第11条、附則までを確認しても、「共同受注窓口」という語は登場しません。共同受注窓口の位置づけを定めているのは、法律第5条に基づいて閣議決定された基本方針です。 基本方針は、共同受注窓口を「物品等の調達を障害者就労施設等にあっせんし又は国等と障害者就労施設等との間の物品等の調達を仲介する等の業務を行う」窓口と説明しています。**位置づけを定めるのは法律ではなく基本方針**という点が、この仕組みを理解する起点です。 ## 窓口を通した調達も実績に数えられる 基本方針は、共同受注窓口を通した調達も、事業所からの直接調達に準じて扱うと定めています。 契約上の相手が共同受注窓口であっても、結果的に障害者就労施設等が供給する物品・役務の調達になっている場合は、直接の調達に準じた扱いです。厚生労働大臣は、各省各庁の長及び独立行政法人等の長から通知された実績を取りまとめて公表しますが、この実績には共同受注窓口との契約による調達も含まれます。 窓口を経由した受注は、事業所単独での直接受注が難しい場合の選択肢になります。国の調達実績にも算入される点は、発注側・受注側の双方にとって、窓口を使う理由になります。 ## 都道府県の工賃向上計画支援事業という後ろ盾 共同受注窓口を活用した支援は、都道府県が実施主体となる「工賃向上計画支援事業」のメニューの1つです。 この事業の実施主体は都道府県です。費用は都道府県が支弁し、国が補助します。事業には基本事業と特別事業があります。このうち共同受注窓口に関わるメニューは次の通りです。 | 区分 | 事業名 | 内容 | | --- | --- | --- | | 基本事業 | 共同受注窓口を活用した品質向上支援事業 | 専門家の派遣等による技術指導、利用者の作業効率向上支援等 | | 特別事業 | 共同受注窓口による情報提供体制構築等事業 | 自治体・事業所・民間企業等が参画する協議会の設置、発注拡大の連絡調整等 | 対象事業所には、就労継続支援B型事業所が含まれます。A型事業所・生活介護事業所(生産活動を行っている場合)・地域活動支援センターは、工賃向上計画を作成し、積極的な取組を行っており、工賃の向上に意欲的に取り組むと都道府県が認めた場合に対象となります。 ## 自分の事業所が最初にやること(国の資料で裏が取れる範囲だけ) 最初にやることは、自事業所が法律上の対象か確認し、都道府県の案内と支援事業の有無を確かめることです。 - 自事業所が「障害者就労施設等」に該当するか確認する。就労継続支援B型は、A型と区別なく対象に含まれます - 厚生労働省の都道府県別ページから、自都道府県の案内・受注支援ページを確認する - 都道府県の担当課に、工賃向上計画支援事業(共同受注窓口の活用支援・情報提供体制構築)を実施しているか確認する - 官公庁・独立行政法人等のホームページで、一般競争契約の情報や調達計画が公表されていないか確認する 公的機関からの受注をめざすなら、まず自事業所が供給できる物品・役務を棚卸ししておくと動きやすくなります。国等は毎年度、調達方針を作成し、年度終了後に実績を公表する仕組みになっています。何を、どれだけ、いつまでに供給できるかを先に整理しておくと、後段の窓口への相談がしやすくなります。 次に、都道府県が実施する工賃向上計画支援事業の枠組みを使って、共同受注窓口との接点をつくります。この事業は都道府県が実施主体で、共同受注窓口を活用した品質向上支援や情報提供体制の構築がメニューに含まれています。窓口を通した調達も、直接受注に準じて実績に数えられる仕組みなので、単独受注が難しい段階でも選択肢になります。 受注が決まったら、その記録を工賃向上計画と結び付けて残しておきます。何をいつ、どの窓口経由で受注したかを積み重ねておくと、翌年度以降の計画づくりや都道府県への相談の材料になります。 ## 関連する記事 - [就労継続支援B型の仕事内容の選び方](/column/b-gata-sagyou-shumoku/) 工賃・利用者の集まりにつながる作業種目の選び方 - [就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する](/column/b-gata-shushi-kouzou/) 基本報酬と加算の全体像 - [就労継続支援B型は儲かるのか](/column/b-gata-moukaru/) 収入の上限を決める要素と黒字化の条件 ### よくある質問 Q. 就労継続支援B型は障害者優先調達推進法の対象ですか? A. はい、対象です。法律第2条2項一号は、障害者総合支援法第5条第15項に規定する就労継続支援を行う事業を「障害者就労施設」に含めており、条文上A型・B型を区別していません。 Q. 共同受注窓口は法律に定められた仕組みですか? A. いいえ、法律の条文には共同受注窓口という語がありません。共同受注窓口の機能は、法律に基づく閣議決定「障害者就労施設等からの物品等の調達の推進に関する基本方針」で説明されています。 Q. 共同受注窓口を通した調達も、国の調達実績に数えられますか? A. はい、数えられます。基本方針は、共同受注窓口との契約による調達も、障害者就労施設等からの物品等の調達に準じて取り扱うと定めています。 Q. 令和6年度の国の調達実績はどれくらいですか? A. 6,763件、1,496,515千円です。独立行政法人等・都道府県・市町村・地方独立行政法人を含めた5区分の実績は、それぞれ別の資料で公表されています。 Q. 工賃向上計画支援事業は、B型事業所が直接申請する制度ですか? A. いいえ。実施主体は都道府県で、事業所が国に直接申請する形の事業ではありません。事業所は、都道府県が実施する共同受注窓口の活用支援や情報提供体制構築の対象として関わります。 Q. 障害者就労施設等からの調達額は全国的に増え続けていますか? A. いいえ、区分によって異なります。都道府県分は令和5年度から令和6年度にかけて件数・金額とも減少しており、国分は平成25年度から令和6年度にかけて増加基調です。 ### 根拠資料 - e-Gov法令検索(総務省行政管理局)「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律(平成二十四年法律第五十号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/424AC1000000050(第1条・第2条・第3条〜第10条・附則第1条を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害者就労施設等からの物品等の調達の推進に関する基本方針(平成25年4月23日閣議決定)」 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/yuusenchoutatsu/dl/kihon_kokuji.pdf(「2(3)その他」「4(3)②厚生労働省における対応」等を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害者就労施設等からの物品等の調達実績(国、令和6年度)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001619277.pdf(表末尾「合計」行(令和6年度6,763件・1,496,515千円)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「令和6年度 独立行政法人等による障害者就労施設等からの物品等の調達実績」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001619281.pdf(表末尾「合計」行(8,472件・1,984,685,583円)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害者就労施設等からの物品等の調達実績(都道府県、令和5・6年度)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001619285.pdf(表末尾「合計」行(令和6年度28,612件・3,140,158千円、令和5年度28,691件・3,629,027千円)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「令和6年度 市町村における障害者就労施設等からの物品等の調達実績」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001721229.pdf(表末尾「合計」行(107,014件・17,608,887,545円)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「令和6年度 地方独立行政法人における障害者就労施設等からの物品等の調達実績」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001619289.pdf(表末尾「合計」行(2,323件・407,710,420円)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省(社会・援護局障害保健福祉部長通知)「工賃向上計画支援事業の実施について(平成24年4月11日 障発0411第5号)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc1860&dataType=1&pageNo=1(別紙「工賃向上計画支援事業実施要綱」1事業の目的・2実施主体・3事業の内容・4留意事項を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害者優先調達推進法がスタートします。平成25年4月から その仕事、障害者就労施設に発注できませんか?(パンフレット)」 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/yuusenchoutatsu/dl/pamphlet.pdf(PDF6頁「行政関係者の方へ」の共同受注窓口の定義を確認。掲載一覧は平成24年11月28日現在で現況の一次資料ではない・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害者優先調達推進法が施行されました|厚生労働省(都道府県別障害者施設一覧ページ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/yuusenchoutatsu/sisetu.html(47都道府県すべてへのリンクが揃っていることを確認・2026年08月19日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.19 初回公開 --- ## 就労継続支援B型の 在宅利用は何を満たせば 報酬算定できるのか URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/b-gata-zaitaku-youken/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-19 / 更新: 2026-08-19 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 就労継続支援B型で在宅利用を認めるかどうかは、事業所が単独で決められません。本人が在宅でのサービス利用を希望していることに加え、在宅利用による支援効果が認められると市町村が判断した場合に限られます。この判断基準は令和7年3月31日改正版の要件文言で、平成19年当初の「通所利用が困難で、在宅による支援がやむを得ないと市町村が判断した利用者」という文言とは異なります。厚生労働省の法令等データベースは今も平成19年の原文を表示しているため、検索で古い文言を目にすることがあります。 報酬を算定するには、ア〜キの7要件すべてに該当する必要があります。中心は支援の頻度と記録です。1日2回以上の連絡・助言・進捗状況の確認と日報の作成、週1回の評価等、原則として月1回は事業所職員の訪問または利用者の通所による評価が求められます。支援は原則として対面で行い、オンライン等ICTの活用は要件をすべて満たした場合の例外にとどまります。在宅利用の日の基本報酬は就労継続支援B型サービス費(Ⅳ)〜(Ⅵ)の区分で算定し、送迎加算など通所を前提とする加算が算定できるかどうかは、一次情報でまだ確認できていません。 - 対象者の判断基準(現行): 在宅でのサービス利用を希望する者であって、在宅でのサービス利用による支援効果が認められると市町村が判断した利用者(令和7年3月31日改正版) - 判断権者: 市町村(本人の同意・アセスメントに加え、支援効果が認められるかの判断が必要) - 支援の頻度(要件イ): 1日2回以上の連絡・助言・進捗状況の確認等と日報の作成 - 評価の頻度(要件オ・カ): 週1回は訪問・通所・ICT機器の活用のいずれかで評価等。原則月1回は事業所職員の訪問または利用者の通所による評価 - 在宅利用日の基本報酬: 就労継続支援B型サービス費(Ⅳ)〜(Ⅵ)の区分(利用定員と人員配置6:1・7.5:1・10:1に応じた単価。平均工賃月額とは連動しない) - オンライン支援の扱い: 原則は対面。オンラインは事業所の届出と指定権者の個別審査を経て、要件をすべて満たした場合のみの例外 根拠: 厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」(最終改正 令和7年3月31日)ほか ### 本文 ## 在宅利用を認めるかどうかを決めるのは市町村 在宅利用を認めるかどうかは、市町村が支援効果を認めるかどうかで決まります。事業所だけでは決められません。 留意事項通知は、報酬算定の対象者を「在宅でのサービス利用を希望する者であって、在宅でのサービス利用による支援効果が認められると市町村が判断した利用者」と定めています。本人が希望していることに加え、支援効果が認められるという市町村の判断が要件です。次のア〜キの要件のいずれにも該当する場合に限り、報酬を算定できます。 令和8年4月13日の事務連絡は、この点をあらためて強調しました。希望があれば在宅利用を認めてよいわけではありません。事前の本人の同意とアセスメントを徹底することが必要だと示しています。 ## 検索で出てくる古い要件文言に注意する 検索で最初に出てくる要件文言は、平成19年当初の古い版であることがあります。現行の判断基準とは異なります。 厚生労働省の法令等データベースは、平成19年に発出された当初の原文をそのまま表示しています。この通知は以後何度も改正されていますが、データベース上の表示は改正が反映されていません。検索結果の上位に出やすいため、他の解説記事がこの古い文言のまま書いている可能性があります。 | 版 | 対象者の定義 | | --- | --- | | 平成19年当初(法令等データベースに表示されているもの) | 通所利用が困難で、在宅による支援がやむを得ないと市町村が判断した利用者 | | 現行(令和7年3月31日改正版) | 在宅でのサービス利用を希望する者であって、在宅でのサービス利用による支援効果が認められると市町村が判断した利用者 | 判断の基準そのものが変わっています。古い文言は「通所が困難で、やむを得ないか」を見ます。現行の文言は「支援効果が認められるか」を見ます。二次情報を確認するときは、どちらの文言を前提にしているかをまず確かめてください。 ## 在宅利用で求められる支援の頻度と記録 在宅利用の報酬算定には、ア〜キの7要件すべてを満たす必要があります。中心になるのは支援の頻度と記録です。 まず、頻度以外に満たす要件が3つあります。 - 通常の事業所に雇用されることが困難な障害者に、就労の機会と生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の支援を行う。作業活動・訓練等のメニューを常に確保する(要件ア) - 緊急時の対応ができる体制を整える(要件ウ) - 作業活動・訓練等を行ううえで疑義が生じた際の照会等に、随時、訪問や連絡で応じられる体制を確保する(要件エ) そのうえで、頻度に関する要件は次のとおりです。 | 頻度 | 内容 | 要件 | | --- | --- | --- | | 1日2回以上 | 連絡、助言又は進捗状況の確認等の支援を行い、日報を作成する。内容や本人の希望に応じ、2回を超える対応も行う | イ | | 週1回 | 事業所職員による訪問、利用者による通所、電話・パソコン等のICT機器の活用のいずれかで評価等を行う | オ | | 月1回(原則) | 利用日数のうち1日は、事業所職員の訪問または利用者の通所により、居宅または事業所内で訓練目標の達成度評価等を行う | カ | 週1回の評価を通所で行い、あわせて月1回の評価も満たした場合は、その通所を月1回の評価に置き換えてかまいません(要件キ)。運営規程には在宅で実施する訓練内容・支援内容を明記し、訓練状況・支援状況を指定権者から求められたら提出できるようにしておく必要があります。 ## オンライン・ICTでの支援は原則ではなく例外 支援は原則として対面で行います。オンライン等ICTの活用は、要件をすべて満たした場合の例外です。 厚生労働省のQ&Aは、直接処遇職員が利用者の状態や訓練の進捗状況を直接確認しながら随時対応する必要があるとして、原則対面での支援を求めています。オンラインが認められるのは、たとえば重度障害者で通所が困難な場合などに限られます。オンラインでの在宅就労を希望し、その支援効果が認められると市町村が判断し、留意事項通知の要件すべてに該当する場合だけです。 週1回の評価については、電話・パソコン等のICT機器の活用も要件として明記されています。ただしこれは評価の方法についての定めで、日々の支援そのものが原則対面であることとは別の話です。 事業所からオンラインによる支援を行う旨の届出があった場合、指定権者が要件を満たしているかを個別に確認し、適切な支援が可能かを判断します。緊急時には事業所の職員が速やかに利用者のもとへ駆けつけられる体制が前提です。緊急時対応が担保できない地域へのオンライン支援は、原則として認められません。 ## 在宅利用の日に算定できるもの・確認できていないもの 在宅利用の日の基本報酬は、就労継続支援B型サービス費(Ⅳ)〜(Ⅵ)の区分で算定します。送迎加算など通所を前提とする加算が算定できるかどうかは、確認できていません。 実施上の留意事項によれば、(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)は、利用者を通所させて提供した場合のほか、在宅で提供した場合、施設入所支援を併せて利用する者に提供した場合に、定員と人員配置に応じて算定します。(Ⅰ)〜(Ⅲ)を算定している場合は除かれます。この区分は利用定員と人員配置で単価が決まり、平均工賃月額とは連動しません。 | 区分 | 従業者の配置 | 20人以下 | 21〜40人 | 41〜60人 | 61〜80人 | 81人以上 | | --- | --- | --- | --- | --- | --- | --- | | (Ⅳ) | 利用者数÷6以上 | 584単位 | 519単位 | 488単位 | 479単位 | 462単位 | | (Ⅴ) | 利用者数÷7.5以上 | 530単位 | 471単位 | 443単位 | 434単位 | 419単位 | | (Ⅵ) | 利用者数÷10以上 | 484単位 | 430単位 | 398単位 | 390単位 | 376単位 | (Ⅰ)〜(Ⅲ)の区分を届け出ている事業所は、在宅利用の日についても(Ⅳ)〜(Ⅵ)を算定できません。在宅利用を行う事業所は、(Ⅳ)〜(Ⅵ)の区分での届出が前提になります。 送迎加算や食事提供体制加算など、通所を前提とする加算が在宅利用日に算定できるかどうかを明記した条文は、一次情報の中でまだ確認できていません。 なお、名称が似た「在宅時生活支援サービス加算」(300単位)は、就労選択支援・就労移行支援において居宅介護等の派遣費用を事業所が負担した場合の加算です。B型の在宅利用そのものへの加算ではなく、B型条項での記載は確認できていません。混同しないよう注意してください。 ## 自治体によって運用が分かれるところ オンライン支援の実施可否や運用の細部は、指定権者である都道府県・指定都市・中核市の個別審査によって変わります。 事業所からオンラインによる支援を実施する旨の届出があると、指定権者が要件を満たしているかを個別に確認します。支給決定を行う自治体も、支援を提供する事業所の情報を指定権者に照会するなど、自治体間で連携するとされています。判断の実務は、この指定権者と支給決定自治体のやり取りの中で決まっていきます。 令和8年4月13日の事務連絡は、在宅支援と称して就労支援の実態が認められない不適切な事業運営が一部で見られると指摘しました。生産活動の内容や緊急時対応の具体的な方法が、留意事項通知やQ&Aに照らして適切かを確認するよう求めています。 同じ事務連絡は、令和9年度障害福祉サービス等報酬改定において在宅支援の見直しを検討していることにも触れています。ただし、現時点で確認できるのは見直しを検討しているという事実だけです。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型の収支構造と基本報酬の決まり方](/column/b-gata-shushi-kouzou/) … 基本報酬の区分全体の位置づけ - [運営指導とは何か](/column/unei-shido/) … 記録の整備が問われる場面 ### よくある質問 Q. 利用者が希望すれば在宅利用を認められますか? A. いいえ、市町村が支援効果を認めることも必要です。留意事項通知は対象者を「在宅でのサービス利用を希望する者であって、在宅でのサービス利用による支援効果が認められると市町村が判断した利用者」と定めています。希望があれば認めてよいわけではなく、事前の同意とアセスメントの徹底が求められると、令和8年4月13日の事務連絡が示しています。 Q. 在宅利用は事業所の判断だけで始められますか? A. いいえ、事業所だけで開始を決めることはできません。運営規程に在宅で実施する訓練内容・支援内容を明記し、市町村が支援効果を認めた利用者に対してのみ、ア〜キの要件すべてに該当する場合に限り報酬を算定できます。判断権者は市町村で、実務では指定権者とも連携します。 Q. 在宅利用でも毎日連絡すれば要件を満たしますか? A. いいえ、連絡以外の要件も同時に満たす必要があります。1日2回以上の連絡・助言・進捗確認と日報の作成に加え、週1回の評価等、原則月1回は事業所職員の訪問または利用者の通所による評価が求められます。いずれか1つを満たすだけでは足りません。 Q. オンラインだけで在宅利用の支援をしてよいですか? A. いいえ、原則は対面で、オンラインは例外的な扱いです。直接処遇職員は利用者の状態や進捗を直接確認しながら随時対応することが原則求められ、オンラインが認められるのは、支援効果を市町村が認め、届出を受けた指定権者が要件の充足を確認した場合に限られます。 Q. 在宅利用の日も基本報酬を算定できますか? A. はい、就労継続支援B型サービス費(Ⅳ)〜(Ⅵ)の区分で算定します。利用定員と人員配置6:1・7.5:1・10:1に応じて単価が決まり、平均工賃月額とは連動しません。(Ⅰ)〜(Ⅲ)の区分を届け出ている事業所は、在宅利用の日についてもこの区分は算定できません。 Q. 在宅利用の日に送迎加算は算定できますか? A. 確認できていません。送迎加算など通所を前提とする加算が在宅利用日に算定できるかを明記した条文を、一次情報の中でまだ確認できていないためです。指定権者への個別確認をおすすめします。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について(障障発第0402001号、最終改正 令和7年3月31日 障障発0331第2号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001473458.pdf(記2(3)「在宅において利用する場合の支援について」(PDF1頁〜)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における在宅支援の要件遵守の徹底について(事務連絡、令和8年4月13日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001694974.pdf(PDF1〜2頁の在宅支援の要件遵守に関する記述を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.8(令和7年3月31日)問2」 https://www.mhlw.go.jp/content/001471548.pdf(PDF4〜5頁の問2「オンラインによる支援について」を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「実施上の留意事項について(平成18年10月31日 障発第1031001号、最終改正 令和8年5月28日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(11頁「指定障害福祉サービス事業所等とは別の場所で行われる支援」、288頁の就労継続支援B型サービス費の区分を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年9月29日厚生労働省告示第523号)第14 就労継続支援B型」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=6(就労継続支援B型サービス費(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)の単位数表・送迎加算の単位数を確認・2026年08月19日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.19 初回公開(ドラフト) --- ## 欠席時対応加算は 1回94単位・月4回まで 連絡は前々日からでよい URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/kesseki-ji-taiou-kasan/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-19 / 更新: 2026-08-19 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 欠席時対応加算は、あらかじめ利用を予定していた日に急病等で利用を中止した利用者に対して、1回につき94単位を算定できる加算です。1月につき4回が上限です。従業者が利用者又はその家族等との連絡調整その他の相談援助を行い、利用者の状況・相談援助の内容等を記録した場合に算定できます。当該指定障害者支援施設等に入所している利用者は対象から除かれます。 利用中止の連絡は、中止した日の前々日・前日・当日のいずれかにあれば算定の対象になります。相談援助は電話等で利用者の状況を確認すれば足り、自宅への訪問や直接の面会は必要ありません。この期限と相談援助の中身を定めているのは告示本体ではなく留意事項通知です。就労継続支援B型・就労継続支援A型・就労移行支援は、生活介護の項の同じ規定を準用する形で適用されます。 - 単位数: 1回につき94単位(令和8年6月1日時点) - 月の上限: 1月につき4回を限度 - 対象者: あらかじめ利用を予定していた日に、急病等によりその利用を中止した利用者(当該指定障害者支援施設等に入所する者を除く) - 算定要件: 従業者のいずれかの職種の者が利用者又はその家族等との連絡調整その他の相談援助を行い、利用者の状況・相談援助の内容等を記録すること - 連絡期限: 利用を中止した日の前々日・前日・当日のいずれか(留意事項通知) - 相談援助の方法: 電話等により利用者の状況を確認する。直接の面会や自宅への訪問等は不要(留意事項通知) - 対象サービス: 生活介護・就労移行支援・就労継続支援A型・就労継続支援B型。単位数・月の上限は共通 根拠: 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(令和8年6月1日適用版)ほか ### 本文 ## 欠席時対応加算は1回94単位、1月4回が上限 欠席時対応加算は、1回につき94単位を1月4回まで算定できる加算です。 対象になるサービスは4つあります。 - 生活介護 - 就労移行支援 - 就労継続支援A型 - 就労継続支援B型 いずれも告示条文の構造は同じで、単位数と月の上限も共通です。異なるのは対応する従業者の呼称だけで、B型では「就労継続支援B型従業者」と定められています。 ## 算定できる欠席は、急病等による利用中止に限られる 加算の対象は、あらかじめ利用を予定していた日に、急病等で利用を中止した利用者に限られます。 条文が定める対象者は「あらかじめ当該指定就労継続支援B型等の利用を予定していた日に、急病等によりその利用を中止した場合」の利用者です。当該指定障害者支援施設等に**入所している利用者は対象から除かれます**。 ## 連絡は前々日・前日・当日のいずれかにあればよい 利用中止の連絡は、中止した日の前々日・前日・当日のいずれかにあれば算定できます。 この期限を定めているのは告示本体ではなく、留意事項通知の生活介護の項です。就労継続支援B型・就労継続支援A型・就労移行支援は、それぞれの項でこの生活介護の規定を準用しています。「前日までに連絡があること」という説明は、前々日と当日の分を落としています。 ## 相談援助は電話等でよく、訪問は不要 相談援助は電話等で利用者の状況を確認すれば足り、自宅への訪問や面会は必要ありません。 算定に必要な要件は2つです。1つは、従業者のいずれかの職種の者が利用者又はその家族等との連絡調整その他の相談援助を行うこと。もう1つは、利用者の状況・相談援助の内容等を記録することです。 留意事項通知は、相談援助の中身を「電話等により当該利用者の状況を確認し、引き続き当該指定生活介護等の利用を促すなどの相談援助を行う」ことと定めています。就労継続支援B型は、この生活介護の規定を準用します。**直接の面会や自宅への訪問等は不要です**。記録が伴わなければ算定できないため、連絡だけで記録を残さない運用は要件を満たしません。 ## 月4回をどう数えるかは、告示に内訳の定めがない 告示が定めているのは「1月につき4回を限度」という上限だけです。暦月での数え方や、複数サービスを併用する利用者の扱いといった内訳の規定は、一次情報からは確認できませんでした。 告示が定めているのは「1月につき4回を限度」という上限だけです。暦月ごとに利用者ごとの算定回数を一覧にしておくと、数え違いを防ぎやすくなります。連絡を受けた時点で当月の算定回数を確認する運用にしておけば、上限を超えて記録を作る事態を避けられます。 連絡を受けた時点でまず確認するのは、急病等による利用中止かどうかです。次に、中止した日からみて前々日・前日・当日のいずれかの連絡かどうかを確認します。この2点を満たしていなければ、算定要件を満たさないため加算の対象になりません。 相談援助の記録は、電話等で確認した利用者の状況と、伝えた内容の両方を書き残すと根拠になります。「連絡済み」とだけ書くのではなく、いつ・誰が確認し、何を伝えたかまで書き分けておきます。連絡調整と相談援助は、記録が伴ってはじめて算定要件を満たします。 ## 他のサービスと比較すると、単位数・上限は同じ 生活介護・就労移行支援・就労継続支援A型・就労継続支援B型は、単位数と月の上限が共通です。 | サービス | 単位数 | 月の上限 | 告示上の項目 | | --- | ---: | --- | --- | | 生活介護 | 94単位 | 4回 | 第6の7 | | 就労移行支援 | 94単位 | 4回 | 資料により番号表記が異なるため省略 | | 就労継続支援A型 | 94単位 | 4回 | 第13の9 | | 就労継続支援B型 | 94単位 | 4回 | 第14の9 | 就労移行支援も同じ単位数・上限で算定できますが、留意事項通知に記載された項目番号が現行の告示条文の番号と一致していません。このため本記事では就労移行支援の号数を示していません。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型事業所の収支構造](/column/b-gata-shushi-kouzou/) … 基本報酬と加算の位置づけ - [就労継続支援B型とA型の違い](/column/b-gata-a-gata-chigai/) … 同じ加算が使えるサービスの比較 - [医療連携体制加算の区分と単位数](/column/iryo-renkei-taisei-kasan/) … 欠席時対応加算以外の加算の例 ### よくある質問 Q. 欠席時対応加算はいくら算定できますか? A. 1回につき94単位、1月4回が上限です。あらかじめ利用を予定していた日に、急病等で利用を中止した利用者が対象です。当該指定障害者支援施設等に入所している人は除かれます。 Q. 欠席の連絡は前日までにする必要がありますか? A. いいえ、前々日・前日・当日のいずれでも算定できます。急病等による利用中止の連絡が、利用予定日の前々日・前日・当日のいずれかにあれば対象です。この期限は留意事項通知に定められています。 Q. 相談援助は利用者の自宅を訪問して行う必要がありますか? A. いいえ、電話等で状況を確認すれば足ります。留意事項通知は、電話等により利用者の状況を確認し、相談援助を行うことと定めています。自宅への訪問や直接の面会は必要ありません。 Q. すべての利用者が欠席時対応加算の対象になりますか? A. いいえ、当該指定障害者支援施設等に入所している利用者は対象外です。対象はあらかじめ利用を予定していた日に、急病等で利用を中止した利用者です。 Q. 就労継続支援B型以外のサービスでも算定できますか? A. はい、生活介護など4つのサービスで算定できます。生活介護・就労移行支援・就労継続支援A型・就労継続支援B型のいずれも、単位数94単位・月4回の上限が共通です。従業者の呼称のみサービスごとに異なります。 Q. 1月4回の上限を超えて欠席しても加算を算定できますか? A. いいえ、1月につき4回が上限で、超えた分は算定できません。告示は「1月につき4回を限度として」と定めるのみで、暦月の数え方など内訳の規定は一次情報からは確認できていません。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号、令和8年6月1日適用版)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=6(第14 就労継続支援B型 9 欠席時対応加算及びその注を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号、令和8年6月1日適用版)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=2(第6 生活介護 7 欠席時対応加算(B型と同一構造の条文)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号、令和8年6月1日適用版)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=5(第12 就労移行支援 9 欠席時対応加算を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号、令和8年6月1日適用版)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=5(第13 就労継続支援A型 9 欠席時対応加算を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(平成18年10月31日 障発第1031001号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知、法令等データベース掲載版)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb4773&dataType=1&pageNo=2(「生活介護」の項「欠席時対応加算の取扱い」(前々日・前日・当日と相談援助の方法)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」新旧対照表(平成18年10月31日 障発第1031001号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(PDF300頁 就労継続支援B型の項「⑬欠席時対応加算の取扱いについて」(生活介護の規定を準用)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」新旧対照表(平成18年10月31日 障発第1031001号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(PDF283頁 就労継続支援A型の項「⑪欠席時対応加算の取扱いについて」(生活介護の規定を準用)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」新旧対照表(平成18年10月31日 障発第1031001号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(PDF269頁 就労移行支援の項「⑩欠席時対応加算の取扱いについて」(項目番号が現行告示と食い違うため号数は本文に記載せず)を確認・2026年08月19日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.19 初回公開 --- ## 就労継続支援B型の 工賃の決め方を 一次資料から確かめる URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/kouchin-kimekata/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-19 / 更新: 2026-08-19 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 就労継続支援B型の工賃は、生産活動に係る事業の収入から必要経費を控除した額を利用者に支払う仕組みです。原則として自立支援給付を工賃の支払いに充ててはなりません。利用者それぞれの一月当たり工賃の平均額は、3,000円を下回ってはなりません。これは事業所全体の平均額の下限であり、個々の利用者ごとの工賃額の下限ではありません。 利用者ごとの工賃をどう配分するか、時給制・出来高制・一律支給のどれにするかを指定する規定は、本記事で確認した省令・通知の範囲には見当たりません。ただし禁止は2つあります。技能に応じた工賃の差別を設けないこと、作業量が未達成であることを理由に工賃の減額等の制裁を課さないことです。平均工賃月額は、基本報酬(就労継続支援B型サービス費)の区分にも連動します。 - 工賃の原資: 生産活動に係る事業の収入から、生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額 - 工賃の下限: 利用者それぞれに支払われる一月当たりの工賃の平均額が3,000円を下回ってはならない(個々の利用者の下限ではない) - 公費の充当: 原則として自立支援給付を工賃の支払いに充ててはならない。災害その他やむを得ない理由がある場合は例外 - 平均工賃月額の算定式: 前年度の工賃支払総額を、前年度の開所日1日当たり平均利用者数で割り、さらに12月で割って算出。通常の事業所に雇用され一時的に支援を受ける利用者は除く - 配分方法についての規律: 時給制・出来高制・一律支給等の方式そのものを指定する規定は、本記事で確認した範囲には無いが、技能に応じた工賃差別の禁止と作業量未達成を理由にした制裁の禁止がある - 基本報酬との連動: 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)〜(Ⅲ)は平均工賃月額に応じて14段階に区分。(Ⅳ)〜(Ⅵ)は工賃月額による区分が無い 根拠: 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号)ほか ### 本文 ## 工賃の原資は生産活動収入。公費を充てることは原則できない 就労継続支援B型の工賃は、生産活動に係る事業の収入から必要経費を控除した額を、利用者に支払う仕組みです。 運営基準の省令は、工賃の算定方法そのものをこう定めています。生産活動に係る事業の収入から、生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を、工賃として支払わなければなりません。原資は生産活動による収入に限られます。 **原則として、自立支援給付を充ててはなりません**。災害その他やむを得ない理由がある場合は、例外として認められます。この規定はA型の条文が、B型に読み替えて準用される形で置かれています。条文が使う語は自立支援給付です。訓練等給付費という語そのものは、条文には出てきません。 ## 一月当たりの工賃の平均額は3,000円を下回ってはならない 省令は、利用者それぞれに支払う一月当たり工賃の平均額が、3,000円を下回ってはならないと定めています。 この下限は、事業所全体の平均額に対するものです。**個々の利用者ごとの下限ではありません**。1人の利用者の工賃が3,000円を下回っていても、全利用者の平均額が3,000円以上であれば、この規定に反しません。 省令は、工賃の水準を高めるよう努める義務も置いています(努力義務)。年度ごとに工賃の目標水準を設定することも求めています。目標水準と前年度の工賃の平均額を、利用者に通知するとともに、都道府県にも報告しなければなりません。 ## 平均工賃月額の算定式と3つの特例 平均工賃月額は、前年度の工賃支払総額を、平均利用者数と12月で割って算出します。 算定は2段階です。まず、前年度の延べ利用者数を年間開所日数で割り、開所日1日当たりの平均利用者数を求めます。次に、前年度の工賃支払総額をこの平均利用者数で割ります。それをさらに12月で割ると、1人当たりの平均工賃月額になります。 ただし、通常の事業所に雇用されている利用者で、就労に必要な知識・能力の向上のための支援を一時的に受ける人は、算定から除きます。 この算定式には、特例が3つあります。 - 重度者支援体制加算(Ⅰ)を算定している場合、算出した額に2,000円を加えた額を平均工賃月額にできる - 同一都道府県内の8割の事業所で工賃実績が低下し、都道府県がやむを得ないと認めた場合は、前年度に代えて前々年度の額を使える - 激甚災害の指定地域や災害救助法の適用地域に事業所が所在し、生産活動収入の減少が見込まれ、工賃支払額が減少する場合も、前々年度の額を使える 前々年度の額を使う特例は、事業所が自由に選べるものではありません。工賃実績の低下による特例は、都道府県がやむを得ないと認めることが必要です。災害による特例は、指定地域への所在と収入減少などの要件を満たす場合に限られます。 新規指定の事業所には、別の扱いがあります。(Ⅰ)〜(Ⅲ)の算定に当たり、初年度は平均工賃月額が1万円未満とみなされます。年度途中に指定された場合は、初年度と2年度目がみなし期間です。 ## (Ⅰ)〜(Ⅲ)の単位数は平均工賃月額で変わる 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)〜(Ⅲ)は、平均工賃月額に応じて14段階に単位数が変わります。 平均工賃月額が高いほど、基本報酬の単位数も高くなります。次の表は、**利用定員20人以下の列だけです**。21人以上の単位数は、この記事の確認範囲に含まれていません。 | 平均工賃月額 | (Ⅰ) | (Ⅱ) | (Ⅲ) | | --- | ---: | ---: | ---: | | 4万8千円以上 | 837単位 | 748単位 | 682単位 | | 4万5千円以上4万8千円未満 | 812単位 | 726単位 | 662単位 | | 3万8千円以上4万5千円未満 | 805単位 | 716単位 | 653単位 | | 3万5千円以上3万8千円未満 | 781単位 | 695単位 | 634単位 | | 3万3千円以上3万5千円未満 | 758単位 | 669単位 | 611単位 | | 3万円以上3万3千円未満 | 738単位 | 649単位 | 594単位 | | 2万8千円以上3万円未満 | 738単位 | 649単位 | 594単位 | | 2万5千円以上2万8千円未満 | 726単位 | 637単位 | 577単位 | | 2万3千円以上2万5千円未満 | 726単位 | 637単位 | 572単位 | | 2万円以上2万3千円未満 | 705単位 | 618単位 | 557単位 | | 1万8千円以上2万円未満 | 703単位 | 614単位 | 557単位 | | 1万5千円以上1万8千円未満 | 682単位 | 596単位 | 541単位 | | 1万円以上1万5千円未満 | 673単位 | 584単位 | 532単位 | | 1万円未満 | 590単位 | 537単位 | 490単位 | (単位数はいずれも1日につき、利用定員20人以下の場合) (Ⅳ)〜(Ⅵ)には、平均工賃月額による区分がありません。単位数は利用定員のみで決まります。利用定員20人以下の場合、(Ⅳ)584単位、(Ⅴ)530単位、(Ⅵ)484単位です(いずれも1日につき)。 ## (Ⅰ)〜(Ⅲ)と(Ⅳ)〜(Ⅵ)は工賃向上計画の有無で分かれる (Ⅰ)〜(Ⅲ)を算定するには、**工賃向上計画の作成が要件です**。(Ⅳ)〜(Ⅵ)にはこの要件がありません。 | 区分 | 要件 | | --- | --- | | (Ⅰ) | 工賃向上計画を作成し、従業者の員数が利用者数を6で除した数以上 | | (Ⅱ) | 工賃向上計画を作成し、従業者の員数が利用者数を7.5で除した数以上((Ⅰ)を算定している場合を除く) | | (Ⅲ) | 工賃向上計画を作成し、従業者の員数が利用者数を10で除した数以上((Ⅰ)(Ⅱ)を算定している場合を除く) | | (Ⅳ) | 従業者の員数が利用者数を6で除した数以上(工賃向上計画の作成は要件でない) | | (Ⅴ) | 従業者の員数が利用者数を7.5で除した数以上((Ⅳ)を算定している場合を除く) | | (Ⅵ) | 従業者の員数が利用者数を10で除した数以上((Ⅳ)(Ⅴ)を算定している場合を除く) | 人員配置基準の分母(6・7.5・10)自体は、(Ⅰ)と(Ⅳ)、(Ⅱ)と(Ⅴ)、(Ⅲ)と(Ⅵ)でそれぞれ共通です。工賃向上計画の作成があるかどうかが違います。 区分の届出は、原則として毎年度4月に行います。年度途中に新規指定された事業所は、指定を受けた年度内で、初めて基本報酬を算定する前までに届け出ます。 いったん届け出ると、**(Ⅰ)〜(Ⅲ)のグループと(Ⅳ)〜(Ⅵ)のグループの間での区分変更は、年度の途中では原則想定されていません**。人員配置の変更にともなう区分変更、例えば(Ⅰ)から(Ⅱ)への変更などは、この制限の対象外です。 ## 利用者ごとの配分は事業所の裁量。ただし禁止は2つある 利用者ごとの工賃をどう配分するか、時給制・出来高制・一律支給のどれにするかを指定する規定は、本記事で確認した省令・通知の範囲には見当たりません。 配分方式そのものを指定する規定が、本記事で確認した範囲に見当たらないことは、決まりが何も無いことを意味しません。禁止事項が2つ置かれています。 - **技能に応じた工賃の差別は禁止されています** - **作業量の未達成を理由にした制裁も禁止です**。工賃の減額、作業員の割当の停止、資格剥奪などが対象です この2つは、就労継続支援事業利用者の労働者性に関する留意事項についてという通知が示しています。同じ通知は、出欠・作業時間・作業量が利用者の自由であることも挙げています。生産活動における支援は、技術的指導に限られます。指揮監督に関するものは行わないこととされています。 生産活動の機会を提供する際には、別の配慮義務もあります。作業時間や作業量が、利用者にとって過重な負担にならないよう配慮しなければなりません。 配分方式を決める前に、まず禁止事項の2つを確認しておくと設計の軸がぶれません。技能に応じた工賃の差別を設けないことと、作業量が少なかった利用者に制裁として工賃を減らさないことです。この2つの枠のなかであれば、時給制、出来高制、一律支給のどれを選ぶかは事業所の裁量に委ねられています。 方式を決めたら、なぜ選んだかを書面に残すと、技能差か作業量差かを後から説明できます。出来高制や時給制であれば、工賃の差は作業量や作業時間の差として説明でき、技能そのものへの差別とは区別しやすくなります。一律支給を選ぶ場合は、技能差を反映させない理由を書面に残しておくと、差別ではないことを示しやすくなります。 作業量が少ない利用者についても、量が予定に届かないことを理由にした工賃の減額は制裁に当たるため避けます。出来高制のもとで作業量に応じて工賃が低くなること自体は、制裁とは区別されます。ただし工賃の平均額は、個々の利用者ではなく事業所全体で3,000円を下回らないか確認しておく設計が必要です。 ## 関連する記事 - [就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する](/column/b-gata-shushi-kouzou/) 基本報酬と加算の全体像 - [目標工賃達成指導員配置加算とは](/column/mokuhyou-kouchin-tassei-shidouin-kasan/) 工賃向上に関わる加算の整理 - [工賃向上計画とは](/column/kouchin-koujou-keikaku/) 平均工賃月額の計算と都道府県への報告 ### よくある質問 Q. 就労継続支援B型の工賃はいくら以上支払う必要がありますか? A. 利用者それぞれの一月当たり工賃の平均額が、3,000円を下回ってはなりません。個々の利用者ごとの工賃額の下限ではありません。根拠は運営基準省令第201条第2項です。 Q. 工賃の配分方法は時給制・出来高制のどちらにすべきですか? A. 配分方式を指定する規定は、確認した範囲には見当たりません。ただし禁止は2つあります。技能に応じた工賃の差別と、作業量未達成を理由にした制裁です。 Q. 事業所は工賃の支払いに訓練等給付費を充ててもよいですか? A. 原則として充ててはなりません。災害その他やむを得ない理由がある場合は例外です。条文が使う語は自立支援給付で、訓練等給付費という語そのものは条文にありません。 Q. 平均工賃月額はどのように計算しますか? A. 前年度の工賃支払総額を、平均利用者数と12月で割って算出します。平均利用者数は、前年度の延べ利用者数を年間開所日数で割って求めます。重度者支援体制加算(Ⅰ)を算定している場合は2,000円を加算できます。通常の事業所に雇用され、支援を一時的に受ける利用者は算定から除きます。 Q. 平均工賃月額が下がると基本報酬はどうなりますか? A. 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)〜(Ⅲ)の単位数が下がります。(Ⅰ)〜(Ⅲ)は平均工賃月額に応じて14段階に区分され、月額が低いほど単位数も低くなります。(Ⅳ)〜(Ⅵ)には工賃月額による区分はありません。 Q. 新規指定の事業所も高い工賃区分で基本報酬を算定できますか? A. できません。初年度は平均工賃月額が1万円未満とみなされます。年度途中に指定された場合は、初年度と2年度目がみなし期間です。対象は(Ⅰ)〜(Ⅲ)を算定する事業所です。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号、令和6年内閣府・厚生労働省令第3号による最終改正まで反映)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8467&dataType=0&pageNo=3(第201条「工賃の支払等」を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8467&dataType=0&pageNo=3(第192条第6項(第202条により読み替え準用)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8467&dataType=0&pageNo=3(第84条「生産活動」(第202条によりB型に準用)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「就労継続支援事業利用者の労働者性に関する留意事項について(平成18年10月2日 障障発第1002003号)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb4762&dataType=1&pageNo=1(「1(2) A型利用者(雇用無)及びB型利用者」を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号、令和8年6月1日適用版)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=5(「第14 就労継続支援B型」の単位数表(利用定員20人以下の列)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(平成18年10月31日 障発第1031001号、最終改正 令和8年5月28日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(PDF287〜292頁「就労継続支援B型サービス費の区分について」を確認・2026年08月19日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.19 初回公開 --- ## 工賃向上計画とは 何を書き、都道府県の計画と どう報酬につながるか URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/kouchin-koujou-keikaku/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-19 / 更新: 2026-08-19 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 工賃向上計画は、都道府県が作成する工賃向上計画に基づいて、就労継続支援B型事業所が自ら作成する計画です。作成が義務になるのは、就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)を算定する場合で、都道府県(指定都市又は中核市の場合は当該市)への提出が必要です。(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)のみを算定する事業所に、この作成義務はありません。 平均工賃月額は、前年度の工賃支払総額を、前年度における開所日1日当たりの平均利用者数(前年度の延べ利用者数÷前年度の年間開所日数)で割り、さらに12で割って算出します。令和6年度の全国平均工賃月額は、就労継続支援B型で24,141円でした(前年度比106.6%、18,245事業所)。 - 作成義務がある事業所: 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)を算定する事業所。(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)のみを算定する場合は作成義務なし - 提出先: 都道府県(指定都市又は中核市の場合は当該市) - 平均工賃月額の算定式: 前年度の工賃支払総額÷前年度における開所日1日当たりの平均利用者数÷12 - 分母の定義: 前年度の延べ利用者数÷前年度の年間開所日数(令和6年度改定で「工賃支払対象者数」から変更) - 令和6年度全国平均工賃月額: 24,141円(前年度比106.6%、就労継続支援B型18,245事業所) - 区分届出の時期: 原則毎年度4月(令和8年度は基準見直しに伴い、改めて6月に届出) - 関わる加算: 目標工賃達成指導員配置加算・目標工賃達成加算(いずれもサービス費(Ⅰ)及び(Ⅳ)を算定する事業所が対象) 根拠: 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日 障発第1031001号、最終改正 令和8年5月28日) ### 本文 ## 工賃向上計画とは何か。義務になるのは一部の区分だけ 工賃向上計画は、都道府県が作る計画に基づいて、就労継続支援B型事業所が自ら作成する計画です。 作成が義務になるのは、就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)を算定する場合です。(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)のみを算定する事業所に、この作成義務はありません。 基準省令の第201条は、すべての事業者に、年度ごとに工賃の目標水準を設定し、その目標水準と前年度に支払った工賃の平均額を利用者に通知するとともに、都道府県に報告することを義務付けています。「工賃向上計画」という書面の作成そのものを義務付けているのは、この一般的な義務とは別の、報酬上の算定要件のほうです。 工賃向上計画は、「「工賃向上計画」を推進するための基本的な指針」(平成24年4月11日付 障発0411第4号)に基づいています。留意事項通知はこの指針を引用する形で、工賃向上計画を作成している事業所であることを、サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)の算定要件としています。 ## 計画に何を書くのか 事業所の工賃向上計画は、都道府県の計画に基づいて、工賃目標の達成に向けた具体的な取組みを定める計画です。 留意事項通知は、目標工賃達成指導員が取り組む例として、次を挙げています。 - 生産活動収入の向上を目指した、優先調達推進法に基づく物品や役務等の受注促進 - 地域と連携した農福連携等による新たな生産活動領域の開拓 - ICT機器等の導入による利用者の生産能力向上 制度創設時(平成24年)の資料では、都道府県の計画に官公需による発注促進を目標として掲げることが推奨されるとされています。事業所の工賃目標は、都道府県の生活水準や最低賃金、障害者の経済状況などを踏まえて設定するとされています。目標とする工賃は、月額または時間額のどちらで算出するかを事業所が選べるとも説明されています。 これらは制度創設時の資料にある内容です。現在も同じ運用かどうかは、一次資料の確認範囲では分かりません。 ## 都道府県の計画との関係と、報告の流れ 工賃向上計画は、国の基本指針を起点として、都道府県が策定する計画に基づいて事業所が策定する、3段階の構造になっています。 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)を算定する場合、事業所は工賃向上計画を都道府県(指定都市又は中核市の場合は当該市)に提出しなければなりません。サービス費の区分の届出は、原則として毎年度4月に行います。年度途中に新規に指定された事業所は、その年度に初めて基本報酬を算定する前までに届出を行います。なお、令和8年6月の基準見直しに伴い、令和8年度に限り、改めて6月に区分の届出を行うこととされています。 制度創設時(平成24年)の資料は、次の流れを示しています。 - 基本指針・実施要綱を、都道府県知事あてに通知する - 都道府県が、工賃向上計画を策定する - 事業所が、工賃向上計画の策定を開始する - 事業所が、目標値等を都道府県に報告する - 都道府県が、目標値等を国に報告する - 国が、全国の目標値等を集計して公表する このサイクルが、現在も同じ時期で回っているかどうかは、一次資料の確認範囲では分かりません。 工賃向上計画の届出とは別に、前年度の工賃実績そのものを報告する仕組みもあります。根拠は、この記事で扱う留意事項通知(障発第1031001号)とは別の通知です。 ## 平均工賃月額はどう計算するか 平均工賃月額は、前年度の工賃支払総額を、開所日1日当たりの平均利用者数で割ります。その額をさらに12で割って、1人当たりの平均工賃月額を求めます。 | 手順 | 内容 | | --- | --- | | ① | 前年度における工賃支払総額を算出する | | ② | 前年度における開所日1日当たりの平均利用者数を算出する(前年度の延べ利用者数÷前年度の年間開所日数) | | ③ | ①÷②÷12により、1人当たり平均工賃月額を算出する | 通常の事業所に雇用され、当該事業所での就労に必要な知識・能力向上のための支援を一時的に受けている利用者は、この計算から除きます。 算定式には、2つの特例があります。 - 重度者支援体制加算(Ⅰ)を算定している場合は、算出した額に2,000円を加えることができます - 原材料費等の高騰で直接経費に著しい変動があった場合など、都道府県内の8割の事業所で工賃実績が低下し、都道府県がやむを得ないと認めた場合は、同一都道府県内すべての事業者について、前年度に代えて前々年度の平均工賃月額を、同じ算定方法で使うことになります 令和6年度の報酬改定で、分母の定義が変わりました。従来の「工賃支払対象者数」から、「開所日1日当たりの平均利用者数」に変わっています。この変更で、令和5年度の実績から、算定方式による工賃月額が上振れしています。 ## 全国の平均工賃はいくらか。令和6年度は24,141円 令和6年度の全国平均工賃月額は、就労継続支援B型で24,141円でした。前年度比106.6%で、報告した事業所は18,245箇所です。 | 年度 | 全国平均工賃月額 | 対前年度比 | 施設数 | | --- | ---: | ---: | ---: | | 令和6年度 | 24,141円 | 106.6% | 18,245箇所 | | 令和5年度(令和8年3月修正後) | 22,649円 | ― | 16,499箇所 | | 令和4年度(参考) | 17,031円 | ― | ― | 令和5年度は算定方式の変更があったため、対前年度比は公表されていません。 令和5年度の実績値は、令和8年3月に23,053円から22,649円へ修正されています。この記事では、修正後の数値を使っています。 参考までに、就労継続支援A型の全国平均賃金月額は、令和6年度91,451円でした(前年度比105.4%、4,220箇所)。 ## 報酬と加算にどう効くか 工賃向上計画は、就労継続支援B型サービス費の区分と、2つの加算の両方に関わります。 | サービス費区分 | 工賃向上計画の作成 | 従業者数 | | --- | --- | --- | | (Ⅰ) | 必要 | 利用者数÷6以上 | | (Ⅱ) | 必要 | 利用者数÷7.5以上 | | (Ⅲ) | 必要 | 利用者数÷10以上 | | (Ⅳ) | 不要 | 利用者数÷6以上 | | (Ⅴ) | 不要 | 利用者数÷7.5以上 | | (Ⅵ) | 不要 | 利用者数÷10以上 | 工賃向上計画は、2つの加算にも関わります。目標工賃達成指導員配置加算と、目標工賃達成加算です。この2つの加算の対象は、サービス費(Ⅰ)及び(Ⅳ)を算定する事業所に限られます。 目標工賃達成加算(1日10単位)は、工賃向上計画の目標を達成し、都道府県知事に様式による届出を行った場合に算定できます。工賃目標の下限は、前年度の自事業所の平均工賃月額に、全国平均工賃月額の前々年度と前々々年度の差額を加えた額です(この額が前年度の自事業所実績を下回る場合は、前年度実績が下限です)。 | ケース(令和5年度実績13,000円、全国平均の差額524円の場合) | 工賃目標 | 実際の平均工賃月額 | 結果 | | --- | ---: | ---: | --- | | 例1 | 15,000円 | 15,500円 | 加算対象 | | 例2 | 13,100円 | 15,500円 | 対象外(目標が下限未満) | | 例3 | 15,000円 | 14,000円 | 対象外(目標未達成) | 目標工賃達成指導員配置加算の単位数と5:1の配置要件は、別の記事で扱っています。 計画を回す最初の工程は、前年度の平均工賃月額を確定させることです。算定式は、工賃支払総額を開所日1日当たりの平均利用者数で割り、その額をさらに12で割るという手順です。ここで固まった数字が、当年度の工賃目標を組み立てる起点になります。 目標工賃達成加算の下限式を踏まえると、工賃目標は前年度の自事業所実績を下回らない水準で組むことになります。前年度実績に全国平均工賃の伸び分を加えた額が下限になるため、伸び分を把握してから目標を決める順番が合理的です。工賃目標と前年度の平均額は、利用者への通知と都道府県への報告までがひとつの工程です。 工賃目標を達成できなかった年でも、翌年度の目標を前年度実績より下げることはできません。目標工賃達成加算の下限式は、達成できなかった年の実績そのものを基準に据えているためです。翌年度の計画は、未達成だった年の実績に、その後の全国平均工賃の伸び分を加える形で組み直すことになります。 ## 関連する記事 - [目標工賃達成指導員配置加算とは](/column/mokuhyou-kouchin-tassei-shidouin-kasan/) 単位数と5:1の配置要件を一次資料から整理 - [就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する](/column/b-gata-shushi-kouzou/) 基本報酬と加算の全体像 - [就労継続支援B型 仕事の取り方](/column/b-gata-shigoto-no-torikata/) 障害者優先調達推進法と共同受注窓口の位置づけ ### よくある質問 Q. 工賃向上計画は、すべての就労継続支援B型事業所に作成義務がありますか? A. いいえ、義務があるのは一定の区分を算定する事業所だけです。就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)を算定するための算定要件として、都道府県への提出が求められます。(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)のみを算定する事業所には、この作成義務はありません。 Q. 事業所は工賃向上計画を単独で作成できますか? A. いいえ、都道府県の工賃向上計画に基づいて作成します。留意事項通知と報酬告示は、いずれも「各都道府県において作成される工賃向上計画に基づき、自らも工賃向上計画を作成する」という関係で説明しています。 Q. 平均工賃月額はどうやって計算しますか? A. 前年度の工賃支払総額を、開所日1日当たりの平均利用者数で割ります。さらにその額を12で割って、1人当たりの平均工賃月額を求めます。分母は前年度の延べ利用者数を前年度の年間開所日数で割った、開所日1日当たりの平均利用者数です。 Q. 令和6年度の全国平均工賃はいくらでしたか? A. 就労継続支援B型で、月額24,141円でした。前年度比106.6%で、報告した事業所は18,245箇所です。 Q. 工賃向上計画を作成しないと、どうなりますか? A. 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)は算定できません。(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)のみを算定する場合は、そもそも作成が要件になっていないため、この限りではありません。 Q. 目標工賃達成加算の工賃目標は、どう決まりますか? A. 前年度の自事業所の平均工賃月額に、全国平均工賃の伸び分を加えた額が下限です。この額を下回る工賃目標は、達成しても加算の対象になりません。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日 障発第1031001号、最終改正 令和8年5月28日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(PDF287〜292頁「就労継続支援B型サービス費について」、PDF303〜305頁「⑰目標工賃達成指導員配置加算」「⑱目標工賃達成加算」を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001637154.pdf(PDF1頁「1.概要」「2.結果」を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「平均工賃(賃金)月額の実績について(各年度一覧ページ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41739.html(令和6年度分(令和8年3月修正)を最新として掲載していることを確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年9月29日厚生労働省令第171号)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8467&dataType=0&pageNo=3(第201条(工賃の支払等)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「全国厚生労働関係部局長会議資料(平成24年1月)「10 「工賃向上計画」の実施について」」 https://www.mhlw.go.jp/topics/2012/01/dl/tp0118-1-37.pdf(PDF1〜5頁で制度創設時の計画期間・策定プロセスを確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省・こども家庭庁「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号、令和8年6月1日適用版)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=6(「第14 就労継続支援B型」中「13 目標工賃達成指導員配置加算」「13の2 目標工賃達成加算」を確認・2026年08月19日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.19 初回公開 --- ## 目標工賃達成指導員配置加算とは 単位数と5:1の配置要件を 一次資料から整理する URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/mokuhyou-kouchin-tassei-shidouin-kasan/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-19 / 更新: 2026-08-19 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 目標工賃達成指導員配置加算は、就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)又は(Ⅳ)を算定する事業所で算定できます。単位数は利用定員の規模別に、1日45単位から36単位まで5段階です。目標工賃達成指導員を常勤換算方法で1人以上配置し、この指導員と職業指導員・生活支援員を合わせた総数が、常勤換算方法で利用者数の5分の1以上であることが要件です。 就労継続支援B型の基礎の人員基準は常勤換算10:1です。これを満たすだけでは、この加算の5:1要件には届きません。目標工賃達成指導員になるための資格要件は、確認した告示・通知には見当たりません。この加算とは別に、工賃向上計画の目標を達成した場合に算定できる目標工賃達成加算(10単位)があります。 - 単位数: 定員20人以下45単位/21人以上40人以下40単位/41人以上60人以下38単位/61人以上80人以下37単位/81人以上36単位(いずれも1日につき) - 配置要件: 目標工賃達成指導員を常勤換算方法で1人以上配置し、職業指導員等(職業指導員及び生活支援員)と合わせた総数が常勤換算方法で利用者数の5分の1以上 - 算定できる事業所: 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)又は(Ⅳ)を算定している指定就労継続支援B型事業所等に限る - 基礎の人員基準との違い: B型の人員基準は常勤換算10:1(職業指導員及び生活支援員の総数)。この加算はさらに厳しい5:1を、目標工賃達成指導員を含めた総数で求める - 資格要件: 確認した告示・通知には、目標工賃達成指導員の資格要件を定めた記載は見当たらない - 工賃向上計画: 目標工賃達成指導員は、都道府県の工賃向上計画に基づき自らも工賃向上計画を作成する指導員と定義されている - 別の加算との関係: 目標工賃達成加算(1日10単位)は、この加算を算定している事業所が工賃向上計画の目標を達成した場合に算定できる別の加算 根拠: 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第523号、令和8年6月1日適用版) ### 本文 ## 単位数は定員規模で5段階に分かれる 目標工賃達成指導員配置加算は、利用定員の規模に応じて1日45単位から36単位までの5段階に分かれます。 | 区分 | 利用定員 | 単位数(1日につき) | | --- | --- | ---: | | イ | 20人以下 | 45単位 | | ロ | 21人以上40人以下 | 40単位 | | ハ | 41人以上60人以下 | 38単位 | | ニ | 61人以上80人以下 | 37単位 | | ホ | 81人以上 | 36単位 | 定員が大きくなるほど単位数は下がります。確認できた範囲では、令和8年度改定でこの単位数に変更は見当たりません。 ## 配置要件は総数5:1。基礎の人員基準10:1を満たすだけでは届かない 配置要件は、目標工賃達成指導員を含めた総数が常勤換算方法で5:1以上であることです。基礎の人員基準である10:1を満たすだけでは、この加算の要件には届きません。 | 基準の名称 | 配置の比率 | 何の総数を求めるか | | --- | --- | --- | | B型の人員基準(基礎) | 10:1 | 職業指導員及び生活支援員 | | B型サービス費(Ⅰ)の施設基準 | 6:1 | 職業指導員等(職業指導員及び生活支援員) | | 目標工賃達成指導員配置加算の施設基準 | 5:1 | 職業指導員等+目標工賃達成指導員 | 基礎の人員基準は、職業指導員及び生活支援員の総数を常勤換算方法で10:1以上と定めています。就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)を算定するための施設基準は、これより厳しい6:1で、この6:1の分母は前年度の利用者の数の平均値です。目標工賃達成指導員配置加算の施設基準は、さらに目標工賃達成指導員を加えた総数で5:1を求めますが、こちらの分母は利用者の数であり、6:1とは分母の取り方が異なります。 目標工賃達成指導員は、この総数の要件とは別に、常勤換算方法で1人以上の配置も必要です。総数だけ満たしても、1人以上を目標工賃達成指導員として位置づけていなければ、要件を満たしません。 ## 目標工賃達成指導員に資格要件の定めは見当たらない 目標工賃達成指導員になるための資格要件は、確認した告示・通知には見当たりません。 目標工賃達成指導員は、都道府県の工賃向上計画に基づいて自らも工賃向上計画を作成し、工賃目標の達成に積極的に取り組むための指導員と定義されています。具体的な取組例として、通知は生産活動収入の向上を目指し、国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律に基づく積極的な物品や役務等の受注促進を挙げています。また、地域と連携した農福連携等の取組を通じた新たな生産活動領域の開拓、ICT機器等の導入による利用者の生産能力向上なども挙げています。 定義は役割と職務内容によるもので、社会福祉士等の資格や実務経験年数を求める記載は確認できていません。「記載が見当たらない」という記録であり、「資格要件が存在しない」と確定したものではありません。 目標工賃達成指導員が他の職務と兼務できるかどうかについても、確認した告示・通知に定めは見当たりません。配置を検討する際は、確認できていない点として扱ってください。 ## 工賃向上計画の作成が算定要件に組み込まれている 目標工賃達成指導員配置加算は、事業所自身の工賃向上計画の作成が、指導員の定義そのものに組み込まれています。 この加算とは別に、工賃向上計画の目標を達成した場合に算定できる目標工賃達成加算があります。目標工賃達成加算は1日10単位で、目標工賃達成指導員配置加算を算定している事業所が対象です。工賃向上計画に掲げた工賃目標を実際に達成した場合に算定できます。 | 加算名 | 単位数 | 関係 | | --- | ---: | --- | | 目標工賃達成指導員配置加算 | 45〜36単位(定員規模別) | 本記事のテーマ | | 目標工賃達成加算 | 10単位 | 目標工賃達成指導員配置加算を算定している事業所が対象の、別の加算 | 目標工賃達成加算の工賃目標は、目標年度の前年度における当該事業所の平均工賃月額に、全国平均工賃月額の前々年度と前々々年度の差額を加えた額以上と定められています。この額が前年度の当該事業所の平均工賃月額を下回る場合は、前年度の実績額が目標の下限になります。 ## 算定できるのはB型サービス費(Ⅰ)又は(Ⅳ)の事業所に限られる この加算を算定できるのは、就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)又は(Ⅳ)を算定している事業所に限られます。 施設基準は、対象を「就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)又は就労継続支援B型サービス費(Ⅳ)を算定する指定就労継続支援B型事業所等」と定めています。(Ⅱ)(Ⅲ)(Ⅴ)(Ⅵ)を算定している事業所は、この条文上、対象に含まれていません。 留意事項通知とQ&Aは、対象を「(Ⅰ)及び(Ⅳ)」と表記しています。ただし告示本文は「(Ⅰ)又は(Ⅳ)」です。1つの事業所が同じ日に(Ⅰ)と(Ⅳ)を同時に算定することはできないため、通知の「及び」は「(Ⅰ)の事業所と(Ⅳ)の事業所のいずれも対象」という趣旨と読めます。条文としては告示の「又は」を採用してください。 ## 届出が必要。配置を増やす前に確かめること この加算は自動的に算定されず、都道府県知事又は市町村長への届出が必要です。 告示は、目標工賃達成指導員・職業指導員及び生活支援員の総数が施設基準に適合しているものとして、障害保健福祉部長が定める様式による届出を行った事業所において算定できると定めています。具体的な届出様式や提出時期は、一次資料の確認範囲では特定できていません。 配置を増やす前に、次を確かめてください。 - 自事業所が就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)又は(Ⅳ)を算定しているか - 現在の職業指導員等の総数が、常勤換算方法で、前年度の利用者数の平均値に対して6:1(サービス費(Ⅰ)の施設基準)を満たしているか - 目標工賃達成指導員を常勤換算方法で1人以上、新たに確保できるか - 職業指導員等と目標工賃達成指導員を合わせた総数が、常勤換算方法で5:1になるか - 都道府県の工賃向上計画に基づいた事業所独自の工賃向上計画を作成できるか 検討の起点は、現在の職業指導員及び生活支援員の常勤換算数を出すことです。基礎の人員基準である10分の1以上を満たしていても、この加算が求める5分の1以上には届かないことがあります。まず現在の総数を出し、目標との差を数字で確認します。差が出た時点で、その不足分を新規採用で埋めるか、既存職員の役割変更で埋めるかを検討する段取りになります。 目標工賃達成指導員は常勤換算で1人以上を別枠で確保したうえで、その人数を含めた総数を5分の1以上に整える必要があります。新規採用で不足を埋める場合は、増員分がそのまま総数に上乗せされます。既存職員の役割変更で埋める場合は、総数自体は増えない点に注意が必要です。どちらの方法を選ぶかは、現在の職員体制と採用の見込みを踏まえて判断することになります。 目標工賃達成指導員の定義には、都道府県の工賃向上計画に基づいて自らも工賃向上計画を作成することが含まれています。そのため人の確保だけを先に済ませ、計画の作成を後回しにする組み立ては難しく、担当者を決める段階から計画作りも並行して進める必要があります。総数の要件と計画の作成は、どちらも欠かせない前提として同時に進めることになります。 ## 関連する記事 - [就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する](/column/b-gata-shushi-kouzou/) 基本報酬と加算の全体像 - [福祉専門職員配置等加算とは](/column/fukushi-senmon-shokuin-kasan/) 人員配置に関わる別の加算の整理 - [B型の職員配置と人手の問題](/column/b-gata-shokuin-nayami/) 配置を増やすときの実務上の課題 ### よくある質問 Q. 目標工賃達成指導員配置加算はどんな加算ですか? A. 利用定員の規模別に1日45単位から36単位を加算する制度です。目標工賃達成指導員を常勤換算方法で1人以上配置し、職業指導員等と合わせた総数が常勤換算方法で利用者数の5分の1以上であることが要件です。就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)又は(Ⅳ)を算定している事業所に限られます。 Q. 常勤換算10:1の人員基準を満たしていれば算定できますか? A. いいえ、それだけでは算定できません。目標工賃達成指導員配置加算の施設基準は、目標工賃達成指導員を含めた総数で常勤換算5:1以上を求めています。基礎の人員基準である10:1より厳しい配置です。 Q. 目標工賃達成指導員に資格は必要ですか? A. 確認した告示・通知には、資格要件を定めた記載は見当たりません。役割は工賃向上計画の作成と工賃目標達成への取組と定義されています。記載が無いことは、資格要件が存在しないと確定したことを意味しません。 Q. 就労継続支援B型のどの区分の事業所が算定できますか? A. 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)又は(Ⅳ)を算定している事業所に限られます。(Ⅱ)(Ⅲ)(Ⅴ)(Ⅵ)を算定している事業所は対象外です。 Q. 目標工賃達成加算と目標工賃達成指導員配置加算は同じ加算ですか? A. いいえ、別の加算です。目標工賃達成加算(1日10単位)は、目標工賃達成指導員配置加算を算定している事業所が、工賃向上計画の工賃目標を達成した場合に算定できます。 Q. 目標工賃達成指導員は他の職務と兼務できますか? A. 確認した告示・通知には、兼務の可否を定めた記載は見当たりません。配置を検討する際は、確認できていない点として扱ってください。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号、令和8年6月1日適用版)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=6(「第14 就労継続支援B型」中「13 目標工賃達成指導員配置加算」及び「13の2 目標工賃達成加算」を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「厚生労働大臣が定める施設基準並びにこども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定める施設基準(平成18年厚生労働省告示第551号、令和8年6月1日時点)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8504&dataType=0&pageNo=1(「十四 指定就労継続支援B型等の施設基準」中「イ」「ト」で配置要件の総数(6:1・5:1)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日 障発第1031001号、最終改正 令和8年5月28日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(PDF303〜304頁「⑰目標工賃達成指導員配置加算の取扱いについて」「⑱目標工賃達成加算の取扱いについて」を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.3(令和6年5月10日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001253308.pdf(PDF7頁「(1)就労継続支援B型(目標工賃達成加算の取扱いについて)問13」を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号、令和8年6月1日時点)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8467&dataType=0&pageNo=3(第199条・第186条で基礎の人員基準(10:1)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年6月施行分)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001663319.pdf(PDF29頁の単位数一覧表で45/40/38/37/36単位・10単位を確認・2026年08月19日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.19 初回公開 --- ## 日中サービス支援型とは 人員基準と報酬を 基本型と比較して整理する URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/nicchu-service-shienkata/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-19 / 更新: 2026-08-19 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 日中サービス支援型指定共同生活援助は、常時介護を要する利用者に対する類型です。日中も共同生活住居で、常時の支援体制を確保しながら支援を行います(運営基準第213条の2)。基本型(通称・介護サービス包括型)との違いは3点です。世話人の配置基準は、利用者数を5で除した数以上です。共同生活住居ごとに夜間支援従事者を1人以上置くことが人員基準そのものです。指定短期入所(併設事業所または単独型事業所に限る)の同時実施が、実施主体の要件になっています。 基本報酬にも差があります。日中サービス支援型共同生活援助サービス費(Ⅰ)は、区分3の524単位から区分6の997単位までの4区分のみです。区分1・区分2の設定はありません。基本型のサービス費(Ⅰ)は、区分3の297単位から区分6の600単位までで、区分1以下・区分2もあります。日中サービス支援型はこれと比べて、およそ1.7倍から2倍の水準です(令和8年6月施行分)。共同生活住居の入居定員が21人以上になると、所定単位数は100分の93に下がります。 - 世話人の配置基準: 利用者数を5で除した数以上(常勤換算)。基本型は利用者数を6で除した数以上 - 夜間支援従事者: 共同生活住居ごとに夜間・深夜を通じて1人以上を必置(人員基準そのもの)。基本型に必置規定はない - 実施主体の要件: 指定短期入所(併設事業所または単独型事業所に限る)の同時実施が必須 - 基本報酬(サービス費(Ⅰ)、令和8年6月施行分): 区分3の524単位から区分6の997単位までの4区分のみ。基本型は区分3の297単位から区分6の600単位まで(区分1以下・区分2あり) - 入居定員の上限: 共同生活住居は原則2人以上10人以下。入居定員が21人以上になると所定単位数は100分の93 根拠: 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」・厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造」(令和8年6月施行分) ### 本文 ## 日中サービス支援型は、日中も共同生活住居で支援する類型 日中サービス支援型指定共同生活援助は、常時介護を要する利用者に対する類型です。日中も共同生活住居で、常時の支援体制を確保しながら支援を行います。 運営基準第213条の2は、この類型を指定共同生活援助の一種と定義しています。要件は「常時の支援体制を確保した上で行われる相談、入浴、排せつ若しくは食事の介護その他の日常生活上の援助」を行うことです。共同生活援助の一般規定(第207条)には「常時介護を要する者」「常時の支援体制」という文言がありません。この2つの語が、日中サービス支援型を定義づける核になっています。 比較の相手になる類型は、現場で「介護サービス包括型」と呼ばれています。ただし、これは行政・実務上の通称です。運営基準の条文上は、単に「指定共同生活援助」と定められているだけです。「介護サービス包括型」という語は、**条文には出てきません**。この記事でも「基本型」と表記します。 ## 夜間支援従事者を毎晩1人以上置くことが人員基準になっている 日中サービス支援型は、共同生活住居ごとに夜間・深夜を通じて夜間支援従事者を1人以上置くことが、**人員基準そのもの**として定められています。 夜間支援従事者とは、夜間・深夜の時間帯に勤務する世話人または生活支援員のことです。宿直勤務はここに含まれません。基本型の条文(第208条)には、この必置規定がありません。基本型で夜間の体制を評価する仕組みは、任意の加算での対応です。必置の人員基準と任意の加算は性質が違うので、混同すると求人票の職種設計を誤ります。 | 項目 | 日中サービス支援型 | 基本型 | | --- | --- | --- | | 夜間支援従事者の必置 | あり(共同生活住居ごとに1人以上) | なし | | 位置づけ | 人員基準そのもの | 任意の加算で対応 | | 宿直勤務の扱い | 夜間支援従事者には含まれない | ― | ## 世話人は5対1。基本型の6対1より手厚い 世話人の配置基準は、日中サービス支援型が利用者数を5で除した数以上、基本型が6で除した数以上です。常勤換算方法で数える点はどちらも同じです。 生活支援員とサービス管理責任者の算定式は、日中サービス支援型と基本型で共通です。生活支援員は、障害支援区分3・4・5・6に該当する利用者の数を、それぞれ9・6・4・2.5で除した数の合計以上を配置します。サービス管理責任者は、利用者30人以下で1人以上です。31人以上は、30人を超えて30人または端数を増すごとに1人を加えます。 | 職種 | 日中サービス支援型 | 基本型 | | --- | --- | --- | | 世話人 | 利用者数÷5以上 | 利用者数÷6以上 | | 生活支援員 | 区分3〜6の利用者数を9・6・4・2.5で除した合計以上 | 同じ算定式 | | サービス管理責任者 | 30人以下1人以上、31人以上は+30人ごとに1人 | 同じ算定式 | サービス管理責任者の配置数は、共同生活援助を含む複数のサービス種別で共通の考え方が使われています。区分ごとの配置式と欠如減算を一覧にした早見表を用意しました。 ## 指定短期入所の同時実施が必須 日中サービス支援型を行う事業者は、同時に指定短期入所を実施することが実施主体の要件です。運営基準第213条の7が定めています。 対象になるのは、指定短期入所のうち併設事業所として行うものか、単独型事業所として行うものに限られます。この同時実施義務は日中サービス支援型に固有の要件です。基本型にはこの義務がありません。開設を検討する場合は、グループホーム側の人員・設備だけでなく、短期入所側の人員・設備もあわせて確保できるかを先に確認する必要があります。 なお、地域連携推進会議の開催と外部評価の受け入れも日中サービス支援型の運営基準に定められています。ただし、この規定は基本型(第210条の7)にも同一の内容があります。日中サービス支援型だけの義務ではなく、共同生活援助の全類型に共通する義務です。 ## 基本報酬は区分3から区分6の4区分。基本型のおよそ1.7倍から2倍 日中サービス支援型共同生活援助サービス費(Ⅰ)は、区分3から区分6までの4区分だけです。区分1・区分2の設定はありません。 令和8年6月施行分の単位数は次のとおりです。1日につきの単位数で、世話人配置5対1の場合にあたります。 | サービス費 | 区分3 | 区分4 | 区分5 | 区分6 | | --- | --- | --- | --- | --- | | (Ⅰ)通常 | 524単位 | 771単位 | 860単位 | 997単位 | | (Ⅱ)体験利用 | 672単位 | 938単位 | 1,028単位 | 1,168単位 | 区分1以下・区分2が出てくるのは、利用者が日中を共同生活住居以外の場所で過ごす場合です。この場合は所定単位数に代えて、次の単位数を算定します。 | 場合 | 区分1以下 | 区分2 | 区分3 | 区分4 | 区分5 | 区分6 | | --- | --- | --- | --- | --- | --- | --- | | 日中を住居以外で過ごす場合 | 253単位 | 270単位 | 407単位 | 539単位 | 627単位 | 765単位 | 基本型のサービス費(Ⅰ)(世話人配置6対1)は、区分1以下171単位から区分6の600単位まで、区分1以下・区分2を含む6区分です。日中サービス支援型の通常のサービス費(Ⅰ)と並べると、次のとおり基本型のおよそ1.7倍から2倍の水準になります。 | 比較項目 | 日中サービス支援型 | 基本型 | | --- | --- | --- | | 世話人配置 | 5対1 | 6対1 | | 夜間支援従事者 | 必置 | 必置規定なし | | サービス費(Ⅰ)区分6 | 997単位 | 600単位 | | サービス費(Ⅰ)区分3 | 524単位 | 297単位 | | 区分1以下・区分2 | 通常のサービス費(Ⅰ)には無い | 171単位・188単位 | 福祉・介護職員等処遇改善加算の加算率は、日中サービス支援型と基本型で同じ率が適用されます。外部サービス利用型だけがより高い率です。処遇改善加算の区分や年間の手続きは[令和8年度の処遇改善加算](/column/shogu-kaizen-kasan-r8/)にまとめています。 ## 定員と設備の上限。入居定員21人以上は単位数が下がる 共同生活住居は原則2人以上10人以下です。住居ごとの独立性が確保され、利用者の支援に支障がない場合に限り、1つの建物に複数の共同生活住居を置けます。この場合、建物全体の入居定員は20人以下です。入居定員が21人以上になると、所定単位数は100分の93に下がります。 設備基準の骨格は日中サービス支援型と基本型でほぼ同じです。立地は住宅地または住宅地と同程度に交流の機会がある地域で、入所施設や病院の敷地外に置きます。既存の建物を使う場合は入居定員を20人まで広げられる特例があり、都道府県知事が特に必要と認めたときに限り30人まで認められます。改築の特例でも上限は30人です。ユニットの入居定員は2人以上10人以下、居室は原則1人で7.43平方メートル以上です。 | 区分 | 入居定員 | | --- | --- | | 共同生活住居1つ | 2人以上10人以下 | | 複数住居を置く建物全体 | 20人以下 | | 既存建物の特例 | 20人以下(知事特認で30人以下) | | 改築の特例 | 30人以下 | 減算の対象になる入居定員の水準を一覧にします。 | 場合 | 所定単位数に乗じる割合 | | --- | --- | | 共同生活住居の入居定員が21人以上 | 100分の93 | | 一体的に運営されている複数住居の入居定員合計が21人以上(上記に該当するものを除く) | 100分の95 | なお、基本型の運営基準には本体住居とは別の場所で運営する「サテライト型住居」の規定が置かれています。日中サービス支援型の設備基準(第213条の6)には、この規定がありません。 ### よくある質問 Q. 日中サービス支援型と基本型(介護サービス包括型)の違いは何ですか? A. 世話人の配置、夜間支援従事者の必置、指定短期入所の同時実施義務の3点が違います。世話人は日中サービス支援型が利用者数÷5以上、基本型が利用者数÷6以上です。夜間支援従事者は、共同生活住居ごとに1人以上を置くことが日中サービス支援型の人員基準そのものです。基本型にはこの必置規定がありません。日中サービス支援型は、指定短期入所を併設事業所または単独型事業所として同時実施することも実施主体の要件です。 Q. 夜間支援従事者は加算ですか? A. いいえ、加算ではなく人員基準そのものです。日中サービス支援型では、共同生活住居ごとに夜間・深夜を通じて1人以上の夜間支援従事者を置きます。これは運営基準第213条の4第2項が定める人員基準です。宿直勤務は含まれません。基本型にはこの必置規定がなく、夜間の体制は任意の加算で評価する仕組みになっています。両者は性質が異なります。 Q. 世話人の配置基準は何対何ですか? A. 日中サービス支援型は利用者数を5で除した数以上、基本型は6で除した数以上です。常勤換算方法による基準で、いずれも生活支援員・サービス管理責任者は別の算定式で配置します。生活支援員は、障害支援区分3〜6の利用者数を区分ごとの除数で割った合計です。サービス管理責任者は、利用者30人以下で1人以上、31人以上は端数を増すごとに1人を加えます。この2職種の算定式は日中サービス支援型と基本型で同じです。 Q. 日中サービス支援型は短期入所を必ず併設しなければなりませんか? A. はい、指定短期入所の同時実施が実施主体の要件です。対象になるのは、指定短期入所のうち併設事業所として行うものか、単独型事業所として行うものに限られます。この同時実施義務は日中サービス支援型に固有の要件で、基本型・外部サービス利用型にはありません。開設を検討する際は、短期入所側の人員・設備をあわせて確保できるかを先に確認する必要があります。 Q. 基本報酬に区分1・区分2はありますか? A. 通常のサービス費(Ⅰ)にはありません。区分3から区分6までの4区分だけです。区分1以下・区分2が出てくるのは、利用者が日中を共同生活住居以外の場所で過ごす場合で、所定単位数に代えて別の単位数を算定します。この場合は区分1以下253単位から区分6の765単位までの6区分になり、通常のサービス費(Ⅰ)より低い水準です。 Q. 入居定員が多いと基本報酬は下がりますか? A. はい、入居定員21人以上で所定単位数は100分の93に下がります。単独の共同生活住居ですでにこの93%の対象になっている場合を除き、一体的に運営されている複数住居の入居定員合計が21人以上になるときは100分の95が適用されます。共同生活住居1つの定員は原則2人以上10人以下です。既存の建物を使う特例でも、都道府県知事が特に認めたときに限り30人までです。 ### 根拠資料 - 厚生労働省(e-Gov法令検索)「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成十八年厚生労働省令第百七十一号)第二百十三条の二・第二百十三条の三(この節の趣旨・基本方針)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(第九章第五節。e-Gov法令API(現行:令和7年10月1日施行版)で条文を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省(e-Gov法令検索)「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準 第二百十三条の四(日中サービス支援型・従業者の員数)/対比:第二百八条(基本型・従業者の員数)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(世話人・生活支援員・サービス管理責任者・夜間支援従事者の配置基準を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省(e-Gov法令検索)「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準 第二百十三条の六(日中サービス支援型・設備)/対比:第二百十条(基本型・設備)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(共同生活住居・ユニット・居室の定員と面積を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省(e-Gov法令検索)「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準 第二百十三条の七(実施主体)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(指定短期入所の同時実施義務を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省(e-Gov法令検索)「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準 第二百十三条の十(地域との連携等)/対比:第二百十条の七(基本型・地域との連携等)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(地域連携推進会議・外部評価が共同生活援助の全類型共通の規定であることを確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部/こども家庭庁支援局障害児支援課「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年6月施行分)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001663319.pdf(PDF14ページ「共同生活援助サービス費」で日中サービス支援型・基本型の単位数を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省 法令等データベースサービス「障害福祉サービス費等の報酬告示 第523号(日中サービス支援型共同生活援助サービス費)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=6(区分1以下〜区分6の細分区分(住居以外で過ごす場合)と入居定員21人以上の減算割合を告示原文で確認・2026年08月19日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.19 初回公開 --- ## サービス管理責任者の 配置基準を数え方から確認する URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/sabikan-haichi-kijun/ カテゴリー: 現場・人材 公開: 2026-08-19 / 更新: 2026-08-19 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 就労継続支援B型のサービス管理責任者は、利用者60人以下の事業所で1人以上です。61人からは、60人を超えて40人または端数を増すごとに1人を加えます。61〜100人で2人、101〜140人で3人です。常勤換算方法の基準ではなく、置くべき人数(員数)そのものの基準で、そのうち1人以上は常勤でなければなりません。常勤換算10:1で算定するのは職業指導員と生活支援員です。 人数の分母は前年度の利用者延べ数を開所日数で割った平均値で、利用定員でも当日の在籍人数でもありません。サービス管理責任者が欠けた場合、減算は原則として発生月の翌々月から始まり、翌月末までに基準を満たせば始まりません。減算適用月から5月未満は所定単位数の70%、5月以上連続すると50%に下がります。令和8年に新設された人員欠如の年1回・翌々月までの猶予は、生活支援員や職業指導員などが対象で、サービス管理責任者には使えません。 - 配置数の基本形: 利用者60人以下は1人以上(省令第186条1項2号イ、第199条でB型に準用) - 61人以上の増員式: 1人に、60人を超えて40人または端数を増すごとに1人を加える(同号ロ) - 61〜140人の目安: 61〜100人は2人、101〜140人は3人(条文式からの展開) - 常勤の要件: 配置するサービス管理責任者のうち1人以上は常勤(同条5項) - 人数の分母: 前年度の利用者延べ数÷開所日数(前年度平均値、解釈通知) - 欠如減算: 適用月から5月未満は所定単位数の70%、5月以上連続で50%(実施留意事項) 根拠: 厚生労働省・こども家庭庁「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年6月施行分)」ほか(一次情報パック sabikan-haichi-kijun 参照) ### 本文 ## B型のサービス管理責任者は60人以下で1人、61人から40人ごとに増える 就労継続支援B型のサービス管理責任者は、利用者60人以下の事業所で1人以上です。61人からは、60人を超えて40人または端数を増すごとに1人を加えます。 この基準は指定基準省令第186条1項2号が定め、第199条によってB型にも準用されています。条文は、利用者60人以下なら1人以上、61人以上なら1人に60人を超えて40人またはその端数を増すごとに1人を加えた数以上、という2段構えで書かれています。この式をそのまま展開すると、61〜100人は2人、101〜140人は3人になります。条文が直接この区切りを書いているのではなく、**式を展開した結果**です。この点は表にして確認します。 | 利用者数 | 必要人数 | | --- | --- | | 1〜60人 | 1人以上 | | 61〜100人 | 2人以上 | | 101〜140人 | 3人以上 | | 141〜180人 | 4人以上 | 配置するサービス管理責任者のうち、1人以上は常勤でなければなりません(同条5項)。この常勤要件は人数が増えても変わらず、複数配置になった場合も「うち1人以上」です。 ## 分母は前年度の平均利用者数。定員でも当日の人数でもない 必要人数を判断する利用者数は、前年度の利用者延べ数を開所日数で割った平均値です。当日の在籍人数でも、指定を受けた利用定員でもありません。 省令第186条2項は「前項の利用者の数は、前年度の平均値とする」とだけ定め、算定の中身は解釈通知が補っています。前年度は4月1日から翌年3月31日で、延べ数を開所日数で割り、小数点第2位以下を切り上げます。新規に指定を受ける事業所は推定数によります。 新設・再開・増床から間もない事業所には、実績が積み上がるまでの段階的な扱いがあります。 - 新設・再開・増床から6月未満: 利用定員の90%を利用者の数とする - 6月以上1年未満: 直近6月の利用者延べ数を、その6月の開所日数で割る - 1年以上経過: 直近1年の利用者延べ数を、その1年の開所日数で割る - 減床・定員減少: 減少後の実績が3月以上あれば、その3月の延べ数を開所日数で割る 年度の途中で利用者が増えても、その年度のサービス管理責任者の必要数はすぐには変わりません。前年度の実績が確定してから翌年度の必要数が決まるという時間差を、採用計画に織り込む必要があります。 ## 「常勤」「常勤換算」「専従」は別のもの 常勤は勤務時間の長さの要件、常勤換算は複数人の勤務時間を1人分に置き換える計算方法、専従はサービス提供時間帯に他の職務へ従事しないという要件です。3つは解釈通知がそれぞれ別に定義しています。 常勤は、事業所が定める常勤者の勤務すべき時間数に達していることをいいます。週の勤務すべき時間数が32時間を下回る事業所は、32時間を基本として扱います。常勤換算方法は、従業者の勤務延べ時間数を、この常勤者が勤務すべき時間数で割って人数に置き換える計算です。サービス管理責任者の必要数は**常勤換算ではなく員数**の基準です。常勤換算方法を使うのは職業指導員と生活支援員の合計です。 専従は、原則としてサービス提供時間帯を通じて指定障害福祉サービス以外の職務に従事しないことをいい、常勤か非常勤かは問いません。常勤の職員であっても、勤務時間の一部を他の職務に充てていれば、その時間帯は専従とは言えません。逆に非常勤であっても、勤務している時間帯を通じて他の職務に従事していなければ専従の要件は満たせます。 | 用語 | 何を測る要件か | | --- | --- | | 常勤 | 事業所が定める常勤者の勤務すべき時間数に達していること(その時間数が32時間を下回る場合は32時間を基本とする) | | 常勤換算 | 複数人の勤務時間を1人分に置き換える計算方法 | | 専従 | サービス提供時間帯に他の職務へ従事しないこと | ## 管理者や他職種との兼務はどこまで認められるか 管理者との兼務、直接支援を行う職員との兼務は、それぞれ別の条件のもとで認められています。無条件に可能でも、無条件に不可能でもありません。 管理者は「指定基準省令第51条」(第199条でB型に準用)により、原則として専らその職務に従事する者を置くことになっています。ただし、事業所の管理上支障がない場合は、他の職務や他の事業所の職務に従事させることができます。サービス管理責任者を含む従業者側にも例外があり、省令第186条3項は「利用者の支援に支障がない場合はこの限りでない」としています。双方とも**支障がない場合**という条件付きです。どちらか一方の条件だけでは足りません。 サービス管理責任者が指定基準省令上の他の職務を兼ねる場合、その兼務の常勤換算計算には注意が必要です。解釈通知は、兼務を行う他の職務に係る常勤換算上、そのサービス管理責任者の当該他の職務に係る勤務時間を算入することはできないとしています。サービス管理責任者が生活支援員を兼ねて働いた時間を、10対1の計算に足すことはできません。 ## 欠如したときの減算は、いつから何%か サービス管理責任者が欠けると、原則として発生月の翌々月から利用者全員分の減算が始まります。減算が適用される月から5月未満は所定単位数の70%、5月以上連続すると50%です。 実施留意事項は、員数以外の要件(常勤や専従など)を満たしていない場合も同じ扱いとし、発生月の翌々月から解消月まで全利用者分を減算するとしています。ただし、翌月の末日までに基準を満たすに至った場合は、この減算の対象から除かれます。減算の対象になる所定単位数は、各種加算がなされる前の単位数で、加算を含めた合計額に率を掛けるものではありません。 | 欠如の状態 | 減算率 | | --- | --- | | 減算適用月から5月未満 | 所定単位数の70% | | 減算適用月から連続5月以上 | 所定単位数の50% | 令和8年に新設された人員欠如の猶予制度にも触れておきます。突発的で想定困難な事象により、人員基準上必要な員数の1割の範囲内で欠如が生じた場合、一定の要件のもとで1年に1回、発生月の翌々月までの間、減算の適用を猶予できる規定が置かれました。この猶予は「㈠の規定にかかわらず」とされ、対象は生活支援員や職業指導員などです。**サービス管理責任者は対象外**で、欠如は別項の扱いのままです。 ## 資格を満たす人がいないときのみなし配置 やむを得ない事由でサービス管理責任者が欠けた場合、実務経験者をみなしサービス管理責任者として配置できる制度があります。原則の期間は、事由が発生した日から1年間です。 告示第544号は、やむを得ない事由による欠如の場合、事由発生日から1年間、実務経験者であるみなしサービス管理責任者について、研修に関する要件を満たしているものとみなすと定めています。実務経験は、みなしの対象ではなく前提です。厚生労働省の資料は「やむを得ない事由」を、退職や病休など事業者の責に帰さない事由による欠如であって、直ちに配置することが困難な場合と説明しています。**理由を問わない猶予ではありません**。事業者側に責任がない欠如であることが条件です。 みなし配置の期間には例外があります。次の**両方**に当たる基礎研修修了者は、実践研修修了者となるまで、最長で事由発生日から2年間、みなしの扱いが続きます。片方だけでは足りません。 - 事由が発生した日以前から引き続きその事業所に配置されている - 事由が発生した日より後に基礎研修修了者となった者ではない 基礎研修修了者を必要数へ算入できる場面についても、条件があります。資格を満たすサービス管理責任者(常勤が必要なサービスでは常勤の者)がすでに配置されていて、その者に加えて基礎研修修了者を置くことで、必要数を満たしているとみなす仕組みです。基礎研修修了者だけでは、**単独では配置できません**。資格を満たす者に加えて置く場合に限られます。 関連する記事を挙げます。 - [サービス管理責任者と管理者の違い](/column/sabikan-kanrisha-chigai/) - [サービス管理責任者の資格要件](/column/sabikan-shikaku-youken/) - [サービス管理責任者の採用](/column/sabikan-saiyou/) ### よくある質問 Q. B型のサービス管理責任者は何人必要ですか? A. 利用者60人以下なら1人以上です。61人からは、60人を超えて40人または端数を増すごとに1人を加えます。61〜100人は2人、101〜140人は3人です。これは省令第186条1項2号の式をそのまま展開した数字で、条文が61〜100人という区切りを直接書いているわけではありません。分母は前年度の利用者延べ数の平均で、定員でも当日の人数でもありません。 Q. サービス管理責任者も常勤換算10対1ですか? A. いいえ、サービス管理責任者は常勤換算の基準ではなく員数の基準です。常勤換算方法で利用者数を10で除した数以上とされているのは、職業指導員と生活支援員の合計です。サービス管理責任者は「60人以下1人以上」という置くべき人数そのものの基準で、そのうち1人以上が常勤であることが別項で定められています。 Q. 常勤と専従はどう違いますか? A. 常勤は勤務時間の長さの要件です。専従はサービス提供時間帯に他の職務へ従事しないという要件で、解釈通知が別々に定義しています。常勤の従業者でも、他の職務を兼ねていれば専従とは言えない場面があります。常勤換算方法の除数になる時間数は、事業所が定める常勤者の勤務すべき時間数で、週32時間未満の事業所は32時間を基本とします。 Q. サービス管理責任者は管理者と兼務できますか? A. 条件付きで認められます。管理者側は「管理上支障がない場合」、サービス管理責任者を含む従業者側は「利用者の支援に支障がない場合」という条件がそれぞれ置かれています。どちらも無条件の可否ではありません。兼務を行う他の職務の常勤換算に、そのサービス管理責任者の当該他の職務に係る勤務時間を算入できない点にも注意が必要です。 Q. サービス管理責任者が欠けたら減算はいつから何%ですか? A. 原則として発生月の翌々月から、解消するまで全利用者分が減算されます。減算が適用される月からは5月未満で所定単位数の70%、5月以上連続すると50%です。翌月末までに基準を満たせば減算は始まりません。令和8年に新設された年1回・翌々月までの猶予は生活支援員などが対象で、サービス管理責任者には適用されません。 Q. 資格を満たす人がいないときはどうしますか? A. やむを得ない事由による欠如であれば配置が認められます。実務経験者を、みなしサービス管理責任者として配置できる制度です。事由が発生した日から原則1年間、一定の条件を満たす基礎研修修了者はさらに長い期間が認められます。ここでいう「やむを得ない事由」は、退職や病休など事業者の責に帰さない欠如で、直ちに配置することが困難な場合を指します。理由を問わず使えるわけではありません。 ### 根拠資料 - e-Gov法令検索(デジタル庁)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(第51条・第79条・第186条・第199条・第206条の3・第206条の14・第208条・第213条の4・第213条の14・第215条を確認・2026年08月18日確認) - 厚生労働省「「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(平成18年12月6日 障発第1206001号、新旧対照表)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001494357.pdf(常勤換算・常勤・専従の定義、前年度平均値、兼務の取扱いを確認・2026年08月18日確認) - 厚生労働省・こども家庭庁「指定障害福祉サービスの提供に係るサービス管理を行う者として厚生労働大臣が定めるもの等(平成18年厚生労働省告示第544号)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8498&dataType=0&pageNo=1(第一号イ・ホ・ヘ(令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第6号まで反映)で資格要件・基礎研修修了者の算入・みなし配置を確認・2026年08月18日確認) - 厚生労働省(社会保障審議会障害者部会)「サービス管理責任者等研修制度について(第135回社会保障審議会障害者部会 資料5)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001226975.pdf(PDF3頁でやむを得ない事由の定義を確認・2026年08月18日確認) - 厚生労働省「「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日 障発第1031001号、最終改正 令和8年5月28日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(第二の1(8)で人員欠如の減算率・開始時期・令和8年猶予の対象を確認・2026年08月18日確認) - 厚生労働省・こども家庭庁「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年6月施行分)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001663319.pdf(PDF26頁の就労継続支援B型サービス費の注を確認・2026年08月18日確認) - 厚生労働省「報酬算定構造・サービスコード表等」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000174644_00022.html(令和8年6月施行分の掲載を確認・2026年08月18日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.19 初回公開 --- ## 食事提供体制加算とは 1日30単位・低所得者等が対象 経過措置は令和9年3月末まで URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shokuji-teikyou-taisei-kasan/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-19 / 更新: 2026-08-19 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 食事提供体制加算は、低所得者等に食事提供の体制を整えた事業所が、1日につき30単位を算定できる加算です。対象は、低所得者等であって就労継続支援B型計画等により食事の提供を行うこととなっている利用者(指定障害者支援施設に入所する者を除く)、又は低所得者等である基準該当就労継続支援B型の利用者です。定員規模による単位数の違いはなく、一律30単位です。都道府県知事又は市町村長への届出が必要です。 この加算は令和9年3月31日までの間の経過措置で、この期限は附則ではなく条文本文に直接書き込まれています。令和6年度改定で、管理栄養士等による献立確認・摂食量の記録・体重又はBMIの記録という3つの栄養面の要件が加わりました。出前や市販弁当の購入・提供は対象になりません。利用者が施設入所支援を利用している日も、補足給付が支給されるため算定できません。 - 単位数: 30単位(1日につき、令和8年6月1日時点) - 経過措置の期限: 令和9年3月31日までの間(附則ではなく条文本文に明記) - 対象利用者: 低所得者等であって就労継続支援B型計画等により食事の提供を行うこととなっている利用者(指定障害者支援施設に入所する者を除く)、又は低所得者等である基準該当就労継続支援B型の利用者 - 体制要件: 事業所の調理員による食事提供、施設の責任のもとでの第三者への調理業務委託等。一定の条件を満たす施設外調理・搬入(クックチル等)も可。出前・市販弁当の購入提供は対象外 - 栄養面の要件(令和6年度改定で追加): (1)管理栄養士又は栄養士による献立確認(2)利用者ごとの摂食量の記録(3)利用者ごとの体重又はBMIをおおむね6月に1回記録 - 併給の制限: 利用者が施設入所支援を利用している日は算定できない(補足給付が支給されるため)。施設入所支援自体にはこの加算の項目が無い - 届出: 都道府県知事又は市町村長に対し、障害保健福祉部長が定める様式による届出を行った事業所が対象 根拠: 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第523号、令和8年6月1日適用版) ### 本文 ## 単位数は1日30単位。対象は低所得者等に限られる 食事提供体制加算は、低所得者等に食事提供の体制を整えた事業所が、1日につき30単位を算定できる加算です。 対象になるのは、低所得者等であって就労継続支援B型計画等により食事の提供を行うこととなっている利用者です。指定障害者支援施設に入所する者は除かれます。低所得者等である基準該当就労継続支援B型の利用者も対象です。区分(イ・ロ・ハ等)はなく、単位数は一律30単位です。 「低所得者等」は、生活保護世帯や市町村民税非課税世帯だけを指す言葉ではありません。本人と同一世帯の者(特定支給決定障害者は配偶者のみ)の市町村民税所得割の合算額が28万円未満(特定支給決定障害者は16万円未満)である利用者まで、算入の対象に含まれます。 ## 経過措置は令和9年3月31日まで。条文本文に明記されている この加算は、令和9年3月31日までの間の経過措置です。恒久的な加算ではありません。 期限を定めているのは附則ではなく、条文本文そのものです。「次の(1)から(3)までのいずれにも適合する食事の提供を行った場合に、令和9年3月31日までの間、1日につき所定単位数を加算する」と、注の中に直接書き込まれています。この期限は、就労継続支援B型・生活介護・就労継続支援A型の3サービスで一致しています。 ## 体制要件は施設内調理が原則。出前と市販弁当は対象外 体制要件は、事業所の調理員による食事提供、施設の責任のもとでの第三者委託等です。一定の条件を満たせば、施設外調理・搬入(クックチル等)でも算定できます。 告示は、事業所に従事する調理員による食事の提供であること、又は調理業務を第三者に委託していること等、事業所自身の責任において食事提供の体制を整えていることを求めています。委託していても、責任の所在は事業所側にあります。 施設外で調理したものを提供する場合も、方法が限られます。次のいずれかの調理方法で、かつ運搬手段等について衛生上適切な措置がある場合に限り認められます。 - クックチル - クックフリーズ - 真空調理(真空パック) - クックサーブ 出前の方法や市販の弁当を購入して提供する方法は、**加算の対象になりません**。 | 項目 | 可否・内容 | | --- | --- | | 施設内調理室での調理 | 原則の方法 | | 調理業務の第三者委託 | 施設の最終的責任のもとであれば可 | | 施設外調理・搬入 | クックチル・クックフリーズ・真空調理(真空パック)・クックサーブに限り、衛生上適切な運搬手段等の措置があれば可 | | 出前の利用 | 加算の対象外 | | 市販弁当の購入・提供 | 加算の対象外 | ## 令和6年度改定で栄養面の3要件が加わった 令和6年度改定で、栄養面に配慮した3つの要件が加わりました。 要件は3つあります。管理栄養士又は栄養士が食事の提供に係る献立を確認していること。食事の提供を行った場合に利用者ごとの摂食量を記録していること。利用者ごとの体重又はBMIをおおむね6月に1回記録していること。この3つすべてに適合しなければ算定できません。 | No. | 要件 | 運用の補足 | | --- | --- | --- | | (1) | 管理栄養士又は栄養士による献立確認 | 常勤・専従は不要。法人内外(栄養ケア・ステーション、保健所等)の管理栄養士等でも可。確認頻度は年に1回以上 | | (2) | 利用者ごとの摂食量の記録 | 目視や自己申告等による記録で足りる。「完食」「全体の1/2」等の記載でよい。ただし食事を提供した日は必ず記録する | | (3) | 利用者ごとの体重又はBMIの記録(おおむね6月に1回) | 身長測定が困難な利用者は体重のみで可。利用者本人の意向により、例外的に把握しないことも認められる | 管理栄養士等について、常勤・専従の配置は求められていません。**外部の栄養ケア・ステーションや保健所等の管理栄養士等が、献立の確認にかかわる形でもよいとされています**。作成済みの献立表を事後的に確認する方法でも要件を満たします。 摂食量の記録は、正確な計測までは求められていません。負担とのバランスを考慮したうえで、できるだけ正確な記録が望ましいとされています。ただし、食事を提供した日については必ず記録しなければなりません。体重又はBMIの記録は、利用者が体重を知られたくないと意向を示した場合、意向確認を記録に残せば、例外的に把握しなくても要件を満たします。 ## 生活介護・A型は同じ30単位。施設入所支援には加算自体が無い 生活介護・就労継続支援A型は、B型と同じ30単位・同じ期限で算定できます。施設入所支援には、この加算がありません。 | サービス | 単位数 | 経過措置の期限 | 根拠条文 | | --- | ---: | --- | --- | | 就労継続支援B型 | 30単位 | 令和9年3月31日までの間 | 告示第14の7 | | 生活介護 | 30単位 | 令和9年3月31日までの間 | 告示第6の10 | | 就労継続支援A型 | 30単位 | 令和9年3月31日までの間 | 告示第12の7 | | 施設入所支援 | 対象外(項目自体が存在しない) | ― | 告示第9の加算一覧に該当項目なし | 単位数・経過措置の期限・栄養面の3要件は、B型・生活介護・A型の3サービスで完全に一致しています。 施設入所支援の加算項目一覧(告示第9)には、食事提供体制加算という項目名がありません。かわりに、栄養マネジメント加算(12単位)・経口移行加算(28単位)・経口維持加算・療養食加算(23単位)という別体系の栄養関連加算があります。**利用者が施設入所支援を利用している日は、補足給付が支給されるため、B型等の食事提供体制加算は算定できません**。 ## 届出が必要。自動算定はされない この加算は自動的に算定されず、都道府県知事又は市町村長への届出が必要です。 告示は、食事提供のための体制を整えているものとして、都道府県知事又は市町村長に対して障害保健福祉部長が定める様式による届出を行った事業所において算定できると定めています。具体的な届出様式や提出時期は、一次資料の確認範囲では特定できていません。 体制を見直す前に、次を確かめてください。 - 対象になる利用者(低所得者等)が、自事業所の利用者にどれだけいるか - 調理員による提供か第三者委託か、体制をどちらにするか - 施設外調理を使う場合、方法と運搬手段の衛生上の措置が要件を満たすか - 管理栄養士等による献立確認・摂食量の記録・体重又はBMIの記録の3要件を、記録として残せる体制になっているか 3つの要件は、献立確認の頻度を先に固定してから、記録の様式を組み立てる順番にすると整理しやすくなります。外部の管理栄養士等と連携するときは、サイクルメニュー単位で年1回以上の確認を依頼する運用にできます。献立の作成時点から関わってもらえない場合は、作成済みの献立表を渡して事後確認してもらう形でも要件を満たします。 摂食量の記録は、食事の提供記録と同じ様式に並べておくと運用しやすくなります。食事を提供した日は必ず記録するという要求があるため、記録欄を空欄のまま残さない様式にしておく必要があります。提供日と記録日をつき合わせる欄を用意しておくと、書き忘れに気づきやすくなります。 体重を知られたくないという意向が本人から示された場合は、その申し出があった事実を個別支援記録等に残す必要があります。意向を確認した日付と確認した職員が分かる形で記録しておくと、あとから経緯をたどりやすくなります。この記録も、体重・BMIの記録と同じ個別支援記録の様式にまとめておくと、管理の窓口を1つにできます。 ## 関連する記事 - [欠席時対応加算とは](/column/kesseki-ji-taiou-kasan/) 同じく生活介護の規定を準用する加算の整理 - [送迎加算とは](/column/sougei-kasan/) 同じく生活介護の規定を準用する加算の整理 - [就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する](/column/b-gata-shushi-kouzou/) 基本報酬と加算の全体像 ### よくある質問 Q. 食事提供体制加算はいくら算定できますか? A. 1日につき30単位です。低所得者等に食事提供の体制を整えた事業所が、令和9年3月31日までの間の経過措置として算定できます。定員規模による区分はありません。 Q. 出前や市販の弁当を利用者に提供しても算定できますか? A. いいえ、出前や市販弁当の購入・提供は加算の対象になりません。留意事項通知が明記しています。施設内調理室での調理か、施設の責任のもとでの第三者委託、又は一定の条件を満たす施設外調理が原則です。 Q. 施設入所支援を利用している利用者にも算定できますか? A. いいえ、施設入所支援を利用している日は算定できません。利用者に補足給付が支給されているためです。施設入所支援の加算項目一覧には、この加算自体が存在しません。 Q. 経過措置の期限はいつまでですか? A. 令和9年3月31日までの間です。この期限は附則ではなく、条文本文(告示の注)に直接明記されています。B型・生活介護・就労継続支援A型で共通の期限です。 Q. 低所得者等とは生活保護世帯や非課税世帯のことですか? A. いいえ、それだけではありません。本人と同一世帯の者(特定支給決定障害者は配偶者のみ)の市町村民税所得割の合算額が28万円未満(特定支給決定障害者は16万円未満)の利用者まで含む、より広い基準です。 Q. 令和6年度改定で新しく必要になった要件は何ですか? A. 栄養面の3つの要件です。管理栄養士又は栄養士による献立確認、利用者ごとの摂食量の記録、利用者ごとの体重又はBMIのおおむね6月に1回の記録が加わりました。 ### 根拠資料 - 厚生労働省・こども家庭庁「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年6月施行分)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001663319.pdf(PDF29頁「就労継続支援B型サービス費」の加算一覧で食事提供体制加算30単位を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号、令和8年6月1日適用版)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=6(「第14 就労継続支援B型」中「7 食事提供体制加算」及びその注を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日 障発第1031001号、最終改正 令和8年5月28日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(PDF138〜140頁「⑭食事提供体制加算の取扱いについて」(生活介護の項)及びPDF300頁「⑩食事提供体制加算の取扱いについて」(就労継続支援B型の項・準用)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号、令和8年6月1日適用版)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=2(「第6 生活介護」中「10 食事提供体制加算」及びその注(「低所得者等」の定義の初出)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号、令和8年6月1日適用版)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=5(「第12 就労継続支援A型」中「7 食事提供体制加算」及びその注を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.5(令和6年8月29日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001297221.pdf(PDF2〜3頁「障害福祉サービス等における横断的事項」(食事提供体制加算)問1を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号、令和8年6月1日適用版)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=3(「第9 施設入所支援」の加算項目一覧(1〜14及び枝番)に食事提供体制加算の項目が無いことを確認・2026年08月19日確認) - e-Gov法令検索(政府)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行令(平成18年政令第10号)第17条」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418CO0000000010(第17条第1号〜第4号(負担上限月額の区分)を確認・2026年08月19日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.19 初回公開 --- ## 送迎加算とは 就労継続支援B型の単位数と (Ⅰ)(Ⅱ)の要件を整理する URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/sougei-kasan/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-19 / 更新: 2026-08-19 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 就労継続支援B型の送迎加算は、送迎加算(Ⅰ)と送迎加算(Ⅱ)の2区分です。単位数は片道につき、(Ⅰ)が21単位、(Ⅱ)が10単位です。(Ⅰ)は「1回の送迎につき平均10人以上」と「週3回以上の送迎」の両方を満たす必要があります。定員20人未満の事業所は、平均的に定員の100分の50以上で足ります。(Ⅱ)は、この2つの条件のどちらか一方で算定できます。 対象から除かれる利用者は、当該事業所と同一敷地内にあり、又は隣接する指定障害者支援施設を利用する施設入所者です。同一敷地内の他事業所等との間の送迎を行った場合は、所定単位数の100分の70を算定します。この加算は自動算定されず、都道府県知事への届出が必要です。国、地方公共団体又はのぞみの園が設置する事業所は、原則として対象外です。 - 単位数: 送迎加算(Ⅰ)21単位・送迎加算(Ⅱ)10単位(いずれも片道につき、令和8年6月1日時点) - (Ⅰ)の要件: 当該月において「1回の送迎につき平均10人以上(利用定員20人未満の事業所は平均的に定員の100分の50以上)」かつ「週3回以上の送迎」の両方 - (Ⅱ)の要件: 当該月において上記2条件のいずれか一方 - 所定単位数の100分の70になる場合: ①別に厚生労働大臣が定める送迎を実施している場合(告示注2)、②同一敷地内の他事業所等との間の送迎を行った場合(留意事項通知㈤)。条文上は別の規定 - 対象から除かれる利用者: 当該事業所と同一敷地内にあり、又は隣接する指定障害者支援施設を利用する施設入所者 - 対象外の事業所: 国、地方公共団体又はのぞみの園が設置する事業所(地方自治法第244条の2第3項の管理委託が行われている場合を除く) - 届出: 都道府県知事に対して、障害保健福祉部長が定める様式による届出が必要 - 他サービスとの比較: 就労継続支援A型・生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労選択支援も同じ片道21単位/10単位の基本ルールを準用。短期入所は186単位・区分なしの別ルール 根拠: 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第523号、令和8年6月1日適用版) ### 本文 ## 送迎加算の区分と単位数 就労継続支援B型の送迎加算は、送迎加算(Ⅰ)と送迎加算(Ⅱ)の2区分です。単位数は片道につき、(Ⅰ)が21単位、(Ⅱ)が10単位です。 | 区分 | 単位数 | 算定単位 | | --- | ---: | --- | | 送迎加算(Ⅰ) | 21単位 | 片道につき | | 送迎加算(Ⅱ) | 10単位 | 片道につき | 1日につきでも1回につきでもなく、片道の送迎ごとに算定します。確認できた範囲では、令和8年度改定でこの単位数に変更は見当たりません。 ## (Ⅰ)と(Ⅱ)を分ける要件 送迎加算(Ⅰ)は2つの条件を両方満たす必要があり、送迎加算(Ⅱ)はどちらか一方で足ります。 判定に使う条件は、次の2つです。 - 1回の送迎につき平均10人以上が利用(利用定員20人未満の事業所は、1回の送迎につき平均的に定員の100分の50以上) - 週3回以上の送迎を実施 | 区分 | 平均10人以上 | 週3回以上 | 判定 | | --- | --- | --- | --- | | 送迎加算(Ⅰ) | 必要 | 必要 | 両方を満たす(かつ) | | 送迎加算(Ⅱ) | いずれか | いずれか | どちらか一方(または) | (Ⅰ)は要件が重く、(Ⅱ)は要件が軽い代わりに単位数も低い構造です。**この2つの条件を取り違えないことが要点です。**判定は当該月において行います。居宅以外でも、事業所の最寄り駅や集合場所との間の送迎は対象になりますが、事前に利用者と合意のうえ特定の場所を定めておく必要があります。 ## 算定できる送迎とできない送迎 対象から除かれる利用者と、単位数が所定単位数の100分の70になる場合があります。 対象から除かれるのは、当該事業所と同一敷地内にあり、又は隣接する指定障害者支援施設を利用する施設入所者です。それ以外の利用者への送迎は、原則として対象になります。 所定単位数の100分の70になる場合は、条文上2つに分かれています。 | 規定 | 内容 | | --- | --- | | 告示第14の14注2 | 別に厚生労働大臣が定める送迎を実施している場合 | | 留意事項通知2の⑹の⑯㈤ | 同一敷地内の他の事業所等との間の送迎を行った場合 | この2つは条文上、別の規定として書かれています。告示注2にいう「別に厚生労働大臣が定める送迎」が具体的にどのような送迎を指すかは、一次情報の確認範囲では特定できていません。 ## 委託・他事業所との同乗はどう扱うか 送迎を外部事業者へ委託しても、他事業所の利用者を同乗させても、条件を満たせば算定の対象になります。 扱いは次の3つに整理できます。 - 送迎業務の委託: 外部事業者への委託でも対象。ただし利用者へ直接、公共交通機関の利用に係る費用を給付する場合等は対象外 - 共同での委託: 複数の事業所が同じ交通事業者に共同で委託する場合も対象 - 他事業所の利用者の同乗: 送迎を行う事業所の従業者が相手事業所と雇用契約を締結すること、又は相手事業所から送迎を受託する委託契約を締結すること等を通じて、条件を事業所間で決めれば、両事業所とも算定可能 同乗させる場合は、費用負担や事故発生時の責任の所在を、事業所間で事前に明確にしておく必要があります。送迎範囲は利用者の利便性を損なわない範囲で、かつ各事業所の通常の事業実施地域の範囲内にとどめることも条件です。 自家用車の使用や自動車運転代行業者の利用が対象になるかどうかは、一次情報の確認範囲では特定できていません。 ## 他のサービスとの違い(A型・生活介護) 送迎加算の単位数と基本ルールは、B型・A型・生活介護など多くのサービスで共通です。 | サービス | 単位数(片道) | 準用関係 | | --- | ---: | --- | | 就労継続支援B型 | 21単位/10単位 | 基本ルール㈠〜㈤を準用 | | 就労継続支援A型 | 21単位/10単位 | 基本ルール㈠〜㈤を準用(A型固有の留意事項あり) | | 生活介護 | 21単位/10単位 | 基本ルールそのもの | | 自立訓練(機能訓練・生活訓練) | 21単位/10単位 | 基本ルール㈠〜㈤を準用 | | 就労移行支援・就労選択支援 | 21単位/10単位 | 基本ルール㈠〜㈤を準用 | | 短期入所 | 186単位(区分なし) | 独自ルール。基本ルールの準用ではない | A型には、基本ルールの準用に加えて固有の留意事項があります。就労継続支援A型は、利用者と雇用契約を締結し、知識や能力向上のための訓練を行うサービスです。この点を踏まえ、送迎が利用者の自立能力の獲得を妨げないよう配慮することが必要です。送迎の必要性についても、地域の実情や障害特性等、個別の状況に応じて判断することが求められています。B型の項には、この追加の留意事項はありません。 短期入所だけは単位数・区分の立て付け自体が別です。(Ⅰ)(Ⅱ)の区分がなく、単一の186単位で、平均利用者数や週の送迎回数といった利用実績要件もありません。 参考として、児童発達支援・放課後等デイサービスの送迎加算は、算定構造上は次の単位数です。告示条文・留意事項通知の本文には確認範囲では到達できておらず、算定構造の資料と審議会資料にもとづく参考情報です。 | 区分 | 単位数 | | --- | ---: | | 障害児(重症心身障害児・医療的ケア児を除く) | 片道54単位 | | 重症心身障害児又は医療的ケア児 | +片道40単位 | | 医療的ケア児(16点以上) | +片道80単位 | ## 届出と記録 送迎加算は自動算定されず、都道府県知事への届出が必要です。 告示は、別に厚生労働大臣が定める送迎を実施しているものとして、都道府県知事に対して障害保健福祉部長が定める様式による届出を行った事業所において算定できると定めています。具体的な届出様式や提出時期は、一次情報の確認範囲では特定できていません。 国、地方公共団体又はのぞみの園が設置する事業所は、原則としてこの加算の対象外です。地方自治法第244条の2第3項に基づく公の施設の管理委託が行われている場合は、この限りではありません。 配置や体制を見直す前に、次を確かめてください。 - 自事業所が届出を行っているか - 送迎加算(Ⅰ)の要件(平均10人以上かつ週3回以上)を満たせるか、それとも(Ⅱ)の要件にとどまるか - 対象から除外される利用者(同一敷地内・隣接施設の施設入所者)がいないか - 委託や他事業所との同乗を行う場合、契約と費用負担・責任の所在を事前に明確にしているか 判定は当該月の実績で行われます。月末にまとめて集計すると、要件を割り込んでいたことに気づくのが遅れます。送迎のたびに乗車人数を記録し、週ごとの実施回数と合計人数を積み上げておくと、月の途中で見通しを立てられます。 送迎加算(Ⅰ)は、平均10人以上と週3回以上の両方を満たす必要があります。(Ⅱ)は、どちらか一方で足ります。月の後半で平均人数が10人を割り込みそうな場合でも、週3回以上さえ維持できていれば、その月は(Ⅱ)への切り替えが可能です。 定員20人未満の事業所は、判定の基準が「平均10人以上」ではなく「定員の100分の50以上」に変わります。どちらの基準に当たるかを、月ごとに追う数値として先に固定しておくと、計算のずれを防げます。 ## 関連する記事 - [欠席時対応加算とは](/column/kesseki-ji-taiou-kasan/) 同じく生活介護の規定を準用する加算の整理 - [就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する](/column/b-gata-shushi-kouzou/) 基本報酬と加算の全体像 - [目標工賃達成指導員配置加算とは](/column/mokuhyou-kouchin-tassei-shidouin-kasan/) 人員配置に関わる別の加算の整理 ### よくある質問 Q. 送迎加算はいくら算定できますか? A. 片道につき、送迎加算(Ⅰ)は21単位、送迎加算(Ⅱ)は10単位です。1日単位でも1回単位でもなく、片道の送迎ごとに算定します。 Q. 送迎加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは何ですか? A. 算定要件を両方満たすか、どちらか一方でよいかの違いです。(Ⅰ)は「1回の送迎につき平均10人以上」と「週3回以上の送迎」の両方が必要です。(Ⅱ)はどちらか一方で算定できます。単位数も(Ⅰ)が21単位、(Ⅱ)が10単位と異なります。 Q. 施設入所者は送迎加算の対象になりますか? A. 対象外の利用者がいます。当該事業所と同一敷地内にあり、又は隣接する指定障害者支援施設を利用する施設入所者です。それ以外の利用者への送迎は、原則として算定の対象になります。 Q. 送迎を外部の事業者に委託しても算定できますか? A. はい、委託していても算定できます。利用者へ直接、公共交通機関の利用費用を給付する場合等は対象外です。複数の事業所が同じ交通事業者に共同で委託する場合も対象になります。 Q. 他の事業所の利用者を同乗させても算定できますか? A. はい、条件を満たせば両事業所とも算定できます。雇用契約又は委託契約(共同での委託を含む)の締結等を通じて、費用負担や事故時の責任の所在などの条件を事業所間で決めておく必要があります。 Q. 就労継続支援A型や生活介護と単位数は同じですか? A. はい、片道21単位・10単位の基本ルールは共通です。就労継続支援A型・生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労選択支援も同じ基本ルールを準用しています。短期入所だけは186単位・区分なしの別のルールです。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号、令和8年6月1日適用版)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=6(「第14 就労継続支援B型」中「14 送迎加算」及び注1・注2を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日 障発第1031001号、最終改正 令和8年5月28日)(生活介護の項・基本ルール)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(PDF140〜142頁「⑯送迎加算の取扱いについて」(生活介護の項。就労継続支援B型が準用する基本ルール㈠〜㈤)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日 障発第1031001号、最終改正 令和8年5月28日)(就労継続支援A型の項)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(PDF285頁「⑮送迎加算の取扱いについて」(就労継続支援A型の項。基本ルール準用に加えたA型固有の留意事項)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日 障発第1031001号、最終改正 令和8年5月28日)(短期入所の項)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(PDF171頁「㉓送迎加算の取扱いについて」(短期入所の項。生活介護等とは別の独自ルール)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号、令和8年6月1日適用版)(就労移行支援・就労継続支援A型の項)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=5(「第12 就労移行支援」中「14 送迎加算」及び「第13 就労継続支援A型」中「13 送迎加算」を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.6(令和6年10月11日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001316215.pdf(PDF2頁「1.障害福祉サービス等における共通的事項(1)送迎加算」問1・問2(委託・他事業所の利用者の同乗)を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容(社会保障審議会障害者部会資料)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001217865.pdf(PDF23頁の施設入所者の送迎加算対象化、PDF39頁の児童発達支援・放課後等デイサービスの送迎加算改定前後比較を確認・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」(令和8年2月18日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf(全27頁を「送迎」で機械検索し該当なしを確認(令和8年度改定で送迎加算に変更が無いことの間接根拠)・2026年08月19日確認) - 厚生労働省「障害福祉サービス費等の算定構造(令和8年6月施行分)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001663319.pdf(PDF10・19・20・22・23・29・31頁で送迎加算(Ⅰ)(Ⅱ)21/10単位、PDF11頁で短期入所186単位、PDF41・50頁で児童発達支援・放課後等デイサービスの送迎加算を確認・2026年08月19日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.19 初回公開 --- ## 福祉専門職員配置等加算とは B型の対象資格と単位数を 3区分ごとに整理する URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/fukushi-senmon-shokuin-kasan/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-18 / 更新: 2026-08-18 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 福祉専門職員配置等加算は、就労継続支援B型では(Ⅰ)1日15単位・(Ⅱ)1日10単位・(Ⅲ)1日6単位の3区分です。(Ⅰ)を算定していれば(Ⅱ)は算定せず、(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定していれば(Ⅲ)は算定しません。3区分は積み上げではなく択一です。 対象になる資格は、B型では社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士・作業療法士・公認心理師の5職種です。生活介護は作業療法士を含まない4職種で、条文上の範囲がサービスごとに違います。数える対象は職業指導員又は生活支援員だけで、サービス管理責任者は含まれません。 - 単位数: (Ⅰ)1日15単位/(Ⅱ)1日10単位/(Ⅲ)1日6単位(就労継続支援B型) - 算定の関係: (Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)は択一。(Ⅰ)算定時は(Ⅱ)不可、(Ⅰ)または(Ⅱ)算定時は(Ⅲ)不可 - 対象資格(B型): 社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士・作業療法士・公認心理師の5職種 - (Ⅰ)(Ⅱ)の要件: 常勤で配置されている職業指導員等のうち有資格者の割合が(Ⅰ)35%以上/(Ⅱ)25%以上 - (Ⅲ)の要件: 職業指導員等のうち常勤配置の割合が75%以上、または常勤配置者のうち勤続3年以上の割合が30%以上のいずれか - 対象職種: 職業指導員又は生活支援員(職業指導員等)。サービス管理責任者は対象外 - 届出の算定開始: 毎月15日以前の届出は翌月から、16日以降の届出は翌々月から算定開始 根拠: 厚生労働省告示第523号「障害福祉サービス費等の算定に関する基準」(就労継続支援B型部分) ### 本文 ## 3区分の単位数は択一で、積み上げではない 福祉専門職員配置等加算は、就労継続支援B型では(Ⅰ)1日15単位、(Ⅱ)1日10単位、(Ⅲ)1日6単位の3区分です。3つとも算定できるわけではなく、上位区分を算定していれば下位区分は算定しません。 | 区分 | 単位数(1日につき) | 算定できる条件 | | --- | --- | --- | | 福祉専門職員配置等加算(Ⅰ) | 15単位 | 単独で算定可能 | | 福祉専門職員配置等加算(Ⅱ) | 10単位 | (Ⅰ)を算定していない場合のみ | | 福祉専門職員配置等加算(Ⅲ) | 6単位 | (Ⅰ)(Ⅱ)のいずれも算定していない場合のみ | 告示は、ロ(Ⅱ)について「イの福祉専門職員配置等加算(Ⅰ)を算定している場合は、算定しない」と定めています。ハ(Ⅲ)についても「イ又はロを算定している場合は、算定しない」と定めています。(Ⅰ)(Ⅱ)は有資格者の割合、(Ⅲ)は常勤割合と勤続年数という別の軸で判定します。そのため、(Ⅰ)を満たす事業所が(Ⅲ)を満たすとは限らず、逆に(Ⅲ)を満たす事業所が(Ⅰ)を満たすとも限りません。この排他規定により、実際に算定できるのは3区分のうち1つだけです。 なお、令和8年度の報酬改定でもこの単位数自体は変更されていません。報酬算定構造ではB型の基本報酬部分に工賃区分ごとの改定対象・対象外の注記がありますが、福祉専門職員配置等加算のイ・ロ・ハにはその注記が付いていません。 ## B型の対象資格は5職種。生活介護は作業療法士を含まない 福祉専門職員配置等加算の対象資格は、サービスによって範囲が異なります。B型は作業療法士を含む5職種、生活介護は作業療法士を含まない4職種です。 | サービス | 対象資格 | 職種数 | | --- | --- | --- | | 就労継続支援B型 | 社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士・作業療法士・公認心理師 | 5職種 | | 就労継続支援A型 | 社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士・作業療法士・公認心理師 | 5職種 | | 生活介護 | 社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士・公認心理師 | 4職種 | B型とA型は条文上まったく同じ5職種で、単位数も15・10・6単位で共通です。生活介護だけが作業療法士を含みません。福祉専門職員配置等加算の留意事項通知は生活介護向けに書かれており、就労継続支援B型はこの通知を準用しています。ただし対象資格の範囲は各サービスの告示条文が優先するため、通知の4職種表記をそのままB型に当てはめないよう注意してください。 ## (Ⅰ)(Ⅱ)は有資格者の割合、(Ⅲ)は常勤割合か勤続年数のどちらか (Ⅰ)と(Ⅱ)は、対象職種のうち有資格者が占める割合で決まります。(Ⅲ)は資格の有無を問わず、常勤配置の割合か勤続年数のどちらかで決まります。 | 区分 | 決まり方 | | --- | --- | | (Ⅰ) | 常勤で配置されている職業指導員等のうち、5職種の有資格者が占める割合が35%以上 | | (Ⅱ) | 同じ割合が25%以上 | | (Ⅲ) | 次のいずれか。(1)職業指導員等のうち常勤配置の割合が75%以上、(2)常勤配置者のうち勤続3年以上の割合が30%以上 | (Ⅰ)(Ⅱ)の割合は、常勤換算方法で算出した人数ではなく、「常勤で配置されている従業者」の頭数のうち有資格者の頭数が占める割合です。常勤換算方法による人数を分母に使うのは、(Ⅲ)の(1)を判定するときだけです。分子・分母の数え方が区分ごとに違うので、割合を出す前にどちらの数え方かを確かめてください。 ここでいう「常勤で配置されている従業者」は、雇用形態を問いません。正規・非正規のどちらでも、その事業所が定める常勤の従業者が勤務すべき時間数に達していれば該当します。 ## 数える対象は職業指導員と生活支援員だけ 福祉専門職員配置等加算の計算対象になるのは、指定基準上の配置義務がある職業指導員又は生活支援員だけです。サービス管理責任者は配置根拠の号が別なので、この加算の計算には入りません。 B型の職業指導員・生活支援員の配置根拠は、指定基準省令第186条第1項第1号です。この号は本来A型向けの規定ですが、第199条によって就労継続支援B型の事業にも準用されています。サービス管理責任者の配置は同項の別の号にあり、この加算が数える「職業指導員等」には含まれません。 ## 多機能型は事業所単位で合算、勤続年数は法人内で通算できる 多機能型事業所や障害者支援施設は、就労継続支援B型単体ではなく、事業所内の全サービス種別の直接処遇職員を合わせて要件を計算できます。要件を満たせば、その事業所を利用するすべての利用者に加算が適用されます。 複数のサービスを掛け持ちで勤務している職員も、案分した勤務時間の合計が常勤の時間数に達していれば「常勤で配置されている従業者」に含めます。例えば生活介護の生活支援員として0.5人分、就労移行支援の職業指導員として0.5人分を勤務している職員が該当します。 (Ⅲ)の勤続3年以上の判定でも通算が認められています。当該事業所での勤続年数だけでなく、同一法人が運営する障害福祉サービス事業所等での勤務年数を通算できます。対象は障害福祉サービス事業所に限らず、障害児通所支援事業所、病院、社会福祉施設等も含まれます。非常勤で勤務していた期間も通算に含められます。算定基準日は、加算の申請を行う前月の末日時点です。 ## 届出は15日ルール。算定開始月は届出日で決まる 加算の届出は、都道府県知事又は市町村長に対して所定の様式で行います。算定を開始できる時期は届出のタイミングで変わります。 | 届出のタイミング | 算定開始 | | --- | --- | | 毎月15日以前 | 翌月から | | 16日以降 | 翌々月から | 要件審査にかかる期間は、原則2週間以内、遅くとも概ね1月以内が目安とされています。この目安には、補正が必要になった場合の対応時間は含まれません。要件を満たしておらず補正にも応じない場合は、不受理として書類が返戻されます。算定を開始する月は、審査期間の長さではなく、届出をした日が15日以前か16日以降かで決まります。 ## 関連する記事 - [就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する](/column/b-gata-shushi-kouzou/) 基本報酬と加算の全体像 - [令和8年度の処遇改善加算](/column/shogu-kaizen-kasan-r8/) 別枠で計算する加算との違い - [処遇改善加算の算定要件](/column/shogu-kaizen-kasan-youken/) 加算の要件整理の進め方 ### よくある質問 Q. 福祉専門職員配置等加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)は重ねて算定できますか? A. いいえ、重ねて算定できません。(Ⅰ)を算定している場合は(Ⅱ)を算定せず、(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定している場合は(Ⅲ)を算定しないと定められています。3区分は要件を満たした最上位の1つだけを選ぶ仕組みです。 Q. B型の対象資格に作業療法士は含まれますか? A. はい、含まれます。就労継続支援B型の告示条文は社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士・作業療法士・公認心理師の5職種を挙げています。生活介護の告示条文は作業療法士を含まない4職種で、範囲が異なります。 Q. サービス管理責任者は加算の計算対象に入りますか? A. いいえ、入りません。加算の対象は指定基準上配置が義務付けられている職業指導員又は生活支援員(職業指導員等)で、サービス管理責任者の配置根拠は別の号のため対象になりません。 Q. (Ⅰ)(Ⅱ)の割合は常勤換算方法で計算しますか? A. いいえ、常勤換算方法ではありません。(Ⅰ)(Ⅱ)は「常勤で配置されている従業者」の頭数のうち有資格者の頭数が占める割合です。常勤換算方法で算出した人数を分母に使うのは、(Ⅲ)の常勤配置割合を判定するときだけです。 Q. 多機能型事業所は就労継続支援B型単体で要件を満たす必要がありますか? A. いいえ、単体で満たす必要はありません。多機能型事業所・障害者支援施設は、事業所内の全サービス種別の直接処遇職員を合わせて要件を計算でき、満たせば全利用者に加算できます。 Q. 加算を届け出た月からすぐ算定できますか? A. いいえ、届出のタイミングで開始月が変わります。毎月15日以前の届出は翌月から、16日以降の届出は翌々月から算定を開始します。これとは別に、要件審査には原則2週間以内、遅くとも概ね1月以内が目安とされています。 ### 根拠資料 - 厚生労働省・こども家庭庁「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年6月施行分)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001663319.pdf(p.26〜27「就労継続支援B型サービス費」内「福祉専門職員配置等加算」で単位数を確認・2026年08月18日確認) - 厚生労働省(法令等データベースシステム)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年9月29日厚生労働省告示第523号)― 就労継続支援B型部分」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=6(第14の8「福祉専門職員配置等加算」で単位数・要件・対象資格を確認・2026年08月18日確認) - 厚生労働省(法令等データベースシステム)「同告示 ― 就労継続支援A型部分」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=5(第13の8「福祉専門職員配置等加算」で対象資格がB型と同じ5職種であることを確認・2026年08月18日確認) - 厚生労働省(法令等データベースシステム)「同告示 ― 生活介護部分」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=2(第7の3「福祉専門職員配置等加算」で対象資格が作業療法士を含まない4職種であることを確認・2026年08月18日確認) - 厚生労働省(社会・援護局障害保健福祉部長通知)「障害福祉サービス費等の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(平成18年10月31日障発第1031001号・最終改正令和8年5月28日障発0528第1号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(PDF p.108〜110「福祉専門職員配置等加算の取扱いについて」(生活介護部分をB型に準用)とp.300のB型準用規定、p.4〜5の届出手続の運用を確認・2026年08月18日確認) - デジタル庁(e-Gov法令検索)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(第186条第1項第1号・第199条で職業指導員等の配置根拠を確認・2026年08月18日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.18 初回公開 --- ## 就労継続支援B型 医療連携体制加算 (Ⅰ)〜(Ⅵ)単位数と算定条件 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/iryo-renkei-taisei-kasan/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-18 / 更新: 2026-09-27 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 就労継続支援B型が算定する医療連携体制加算には(Ⅰ)から(Ⅵ)まで6つの区分があり、単位数はすべて「1日につき」で算定します。事業所が医療機関等と連携し、看護職員を訪問させて利用者に看護を行った場合などに評価される加算で、就労移行支援・就労継続支援A型でも同じ6区分を算定できます。単位数は(Ⅰ)32単位、(Ⅱ)63単位、(Ⅲ)125単位、(Ⅳ)は看護を受けた利用者数に応じて800・500・400単位、(Ⅴ)500単位、(Ⅵ)100単位です。 (Ⅰ)から(Ⅲ)は看護の提供時間、(Ⅳ)は看護を受けた人数で単位数が変わります。(Ⅴ)は看護職員が認定特定行為業務従事者に喀痰吸引等の指導を行った場合、(Ⅵ)は認定特定行為業務従事者が実際に喀痰吸引等を行った場合の加算で、対象も単位数も別です。看護職員1人の1回の訪問で加算の対象にできる利用者は、(Ⅰ)から(Ⅳ)は8人が上限です。(Ⅴ)(Ⅵ)には人数の限度の定めがありません。(Ⅳ)はイ〜ハ算定者、(Ⅵ)はイ〜ニ算定者には算定できません。短期入所には(Ⅶ)から(Ⅸ)まで独自の区分がありますが、B型が算定できるのは(Ⅰ)から(Ⅵ)までです。 算定するには、事業所が医療機関等とあらかじめ委託契約を結び、利用者ごとに主治医の指示を受け、その内容を書面で残す必要があります。看護の内容は個別支援計画等に記載し、主治医へ定期的に報告します。これは短期入所向けの基本ルールを、就労継続支援B型が準用する形で定められています。 - 単位数(令和8年6月1日時点): (Ⅰ)32単位/(Ⅱ)63単位/(Ⅲ)125単位/(Ⅳ)800・500・400単位(人数別)/(Ⅴ)500単位/(Ⅵ)100単位。すべて1日につき - (Ⅰ)〜(Ⅲ)の算定条件: 医療機関等との連携により看護職員が利用者に看護を行った時間の長さ(1時間未満/1時間以上2時間未満/2時間以上) - (Ⅳ)の算定条件: 「別に厚生労働大臣が定める者」に看護を行った場合。看護を受けた利用者数(1人/2人/3人以上8人以下)で単位数が変わる。(Ⅰ)〜(Ⅲ)算定者は対象外 - (Ⅴ)(Ⅵ)の違い: (Ⅴ)は看護職員が認定特定行為業務従事者に喀痰吸引等の指導を行った場合(看護職員1人につき500単位)。(Ⅵ)は認定特定行為業務従事者が喀痰吸引等を実施した場合(100単位)。(Ⅵ)は(Ⅰ)〜(Ⅳ)算定者は対象外 - 1回の訪問の上限: (Ⅰ)から(Ⅳ)は8人の利用者を限度に算定。(Ⅴ)(Ⅵ)には人数の限度の定めなし - 算定するまでの手続き: 医療機関等との委託契約・利用者ごとに主治医の指示を受け書面で残すこと・個別支援計画等への記載と定期報告・衛生材料等の費用負担(短期入所の基本ルールをB型が準用) - B型で算定できる区分: (Ⅰ)から(Ⅵ)まで。短期入所固有の(Ⅶ)(Ⅷ)(Ⅸ)は算定不可 - 制度基準日: 令和8年6月1日時点 根拠: 厚生労働省・こども家庭庁「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年6月施行分)」ほか ### 本文 ## 就労継続支援B型の医療連携体制加算は6区分、単位は「1日につき」 就労継続支援B型の医療連携体制加算には(Ⅰ)から(Ⅵ)まで6区分あり、単位はすべて「1日につき」です。 この加算は、事業所が医療機関等と連携し、看護職員を訪問させて利用者に看護を行った場合などに評価されます。就労継続支援B型のほか、就労移行支援や就労継続支援A型でも同じ6区分を算定できます。 「1回の看護提供につき単位が発生する」と説明している記事もあります。しかし告示の条文は、いずれの区分も一貫して「1日につき所定単位数を加算する」としています。訪問回数ではなく、1日を単位に算定すると押さえてください。 | 区分 | 単位数 | 算定単位 | 何を評価するか | | --- | ---: | --- | --- | | (Ⅰ) | 32単位 | 1日につき | 1時間未満の看護 | | (Ⅱ) | 63単位 | 1日につき | 1時間以上2時間未満の看護 | | (Ⅲ) | 125単位 | 1日につき | 2時間以上の看護 | | (Ⅳ) | 800/500/400単位 | 1日につき | 看護を受けた人数(1人/2人/3〜8人) | | (Ⅴ) | 500単位 | 1日につき | 喀痰吸引等の指導(看護職員1人につき) | | (Ⅵ) | 100単位 | 1日につき | 喀痰吸引等の実施 | ## (Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)は看護の提供時間で区分が変わる (Ⅰ)から(Ⅲ)は、看護職員が利用者に行った看護の提供時間の長さで区分が決まります。 医療機関等と連携し、看護職員を事業所に訪問させて利用者に看護を行った場合に算定します。時間が長いほど単位数も上がります。 | 区分 | 看護の提供時間 | 単位数 | | --- | --- | ---: | | (Ⅰ) | 1時間未満 | 32単位 | | (Ⅱ) | 1時間以上2時間未満 | 63単位 | | (Ⅲ) | 2時間以上 | 125単位 | (Ⅰ)には除外規定があります。特定基準該当生活介護または特定基準該当自立訓練(機能訓練)を提供する事業所は**対象外です**。(Ⅱ)にも同様の除外があります。 ## (Ⅳ)は看護を受けた人数で単位数が変わる (Ⅳ)は、看護を受けた利用者の人数によって単位数そのものが変わります。 | 看護を受けた利用者数 | 単位数 | | --- | ---: | | 1人 | 800単位 | | 2人 | 500単位 | | 3人以上8人以下 | 400単位 | 人数が増えるほど、1人あたりの単価は下がる仕組みです。 対象は「別に厚生労働大臣が定める者」と条文に書かれています。この文言の具体的な中身を定めた一次情報は、本記事の執筆時点で確認できていません。医療的ケア行為やスコアでの説明はせず、条文の文言のまま扱います。 (Ⅳ)には併給制限があります。(Ⅰ)から(Ⅲ)のいずれかを算定している利用者には**算定できません**。 ## (Ⅴ)は指導、(Ⅵ)は実施で対象も単位も違う (Ⅴ)と(Ⅵ)は、どちらも喀痰吸引等に関わる加算です。ただし対象も評価する行為も別です。 (Ⅴ)は、看護職員が認定特定行為業務従事者に喀痰吸引等の指導を行った場合の加算です。看護職員1人につき、1日500単位を算定します。 (Ⅵ)は、認定特定行為業務従事者が喀痰吸引等を実際に行った場合の加算です。1日100単位で、対象は喀痰吸引等が必要な利用者です。 (Ⅵ)には併給制限があります。(Ⅰ)から(Ⅳ)のいずれかを算定している利用者には**算定できません**。 ## 1回の訪問で数えられるのは(Ⅰ)から(Ⅳ)の8人まで (Ⅰ)から(Ⅳ)は、看護職員1人の1回の訪問で、加算の対象にできる利用者は**8人が上限**です。 告示の条文は、(Ⅰ)から(Ⅳ)まで各区分ごとに「1回の訪問につき8人の利用者を限度として」と定めています。(Ⅴ)(Ⅵ)の条文には、この人数の限度の文言がありません。短期入所向けの留意事項通知には、区分をまたいだ合算の限度規定もありますが、それがB型にそのまま及ぶかは、告示の条文だけでは確認できません。 併給できない組み合わせが2つあります。 - (Ⅳ)は、(Ⅰ)から(Ⅲ)のいずれかを算定している利用者には算定できません。 - (Ⅵ)は、(Ⅰ)から(Ⅳ)のいずれかを算定している利用者には算定できません。 ## 算定するには委託契約・主治医の指示・記録が要る 算定するには、医療機関等との委託契約と、利用者ごとの主治医の指示を書面で残すことが必要です。 この手続きは、留意事項通知が短期入所向けに定めた基本ルールです。告示(第14の10)にはこの手続きに当たる条文はありません。就労継続支援B型はこの基本ルールを準用しており、留意事項通知は「(Ⅰ)から(Ⅷ)」を「(Ⅰ)から(Ⅵ)」に読み替えると明記しています。押さえておく手続きは4つあります。 - あらかじめ医療機関等と、医療連携体制加算に係る業務についての委託契約を結び、看護の提供等に必要な費用を医療機関に支払う。利用者ごとに主治医の指示を受け、その内容を書面で残す。主治医以外の医師の指示でよいのは、その医師が主治医と十分に情報共有し、必要な指示ができる場合に限られる - 主治医の指示で受けた具体的な看護内容等を個別支援計画等に記載する。主治医に対しては、定期的に看護の提供状況等を報告する - 看護職員の派遣は、同一法人内の他の施設に勤務する看護職員を活用してもよい。この場合も、他の事業所の配置基準を守ったうえで、医師の指示を受けて提供する - 看護の提供または喀痰吸引等の指導に必要な衛生材料・医薬品等の費用は事業所が負担する。医薬品等が医療保険の算定対象になる場合は、適正な診療報酬を請求する 留意事項通知が明記しているのは、短期入所の基本ルール(㈠及び㈡)を準用することと、区分番号を(Ⅰ)から(Ⅵ)に読み替えることです。「指定短期入所事業所等」という文言自体をどう読み替えるかや、この4つの手続きをB型向けに書き下した条文は、本記事の執筆時点で確認できていません。 ## 誤解しやすい点と、短期入所固有の(Ⅶ)(Ⅷ)(Ⅸ)は算定できないこと 誤解しやすい点が5つあり、短期入所固有の(Ⅶ)(Ⅷ)(Ⅸ)は就労継続支援B型では算定できません。 - 単位はすべて「1日につき」で、「1回の看護提供につき」ではありません - (Ⅳ)は看護を受けた人数に応じて単位数そのものが変わり、利用者1人あたりの定額ではありません - 「1回の訪問につき8人まで」の上限があるのは(Ⅰ)から(Ⅳ)だけで、(Ⅴ)(Ⅵ)の条文には人数の限度の定めがありません - (Ⅴ)と(Ⅵ)は同じ加算ではありません。指導を評価するか、実施を評価するかで対象も単位数も異なります - 短期入所には(Ⅶ)から(Ⅸ)まで独自の区分がありますが、就労継続支援B型ではこれらを算定できません 留意事項通知は、短期入所の規定を準用する際、「(Ⅰ)から(Ⅷ)」という文言を「(Ⅰ)から(Ⅵ)」に読み替えると定めています。B型が算定できるのは(Ⅰ)から(Ⅵ)までです。 | サービス | 算定できる区分 | | --- | --- | | 就労継続支援B型 | (Ⅰ)から(Ⅵ) | | 就労移行支援 | (Ⅰ)から(Ⅵ) | | 就労継続支援A型 | (Ⅰ)から(Ⅵ) | | 短期入所 | (Ⅰ)から(Ⅸ) | B型の(Ⅴ)(Ⅵ)は、短期入所の(Ⅶ)(Ⅷ)が番号を詰めて移ったものではなく、喀痰吸引等の指導・実施を評価するB型側の区分です。 関連する記事を挙げます。 - [就労継続支援B型事業所の収支構造](/column/b-gata-shushi-kouzou/) … 基本報酬と加算の位置づけ - [就労継続支援B型の報酬単価はどう決まるか](/column/b-gata-houshu-tanka/) … 基本報酬の区分と単位数 - [福祉専門職員配置等加算](/column/fukushi-senmon-shokuin-kasan/) … B型の対象資格と単位数を区分ごとに整理 - [就労移行支援体制加算](/column/shurou-ikou-shien-taisei-kasan/) … 前年度の就労定着者数で決まる加算 - [欠席時対応加算](/column/kesseki-ji-taiou-kasan/) … 利用中止の連絡があった場合の加算 - [令和8年度の処遇改善加算](/column/shogu-kaizen-kasan-r8/) … 医療連携体制加算以外の加算の例 ### よくある質問 Q. 医療連携体制加算は1回の看護提供につき算定できますか? A. いいえ、算定単位は1日につきです。(Ⅰ)から(Ⅵ)まで、すべて「1日につき」の加算であり、1回の看護提供ごとに単位が発生する仕組みではありません。「1回につき」と説明している資料もありますが、告示の条文の文言とは異なります。 Q. 医療連携体制加算(Ⅰ)から(Ⅲ)はどう使い分けますか? A. 看護職員が利用者に行った看護の提供時間で区分が変わります。1時間未満なら(Ⅰ)32単位、1時間以上2時間未満なら(Ⅱ)63単位、2時間以上なら(Ⅲ)125単位です。医療機関等と連携して看護職員を事業所に訪問させ、看護を行った場合に、1回の訪問につき8人の利用者を限度に算定できます。 Q. 医療連携体制加算(Ⅳ)は利用者1人あたり定額ですか? A. いいえ、看護を受けた人数によって単位数そのものが変わります。1人なら800単位、2人なら500単位、3人以上8人以下なら400単位です。対象は「別に厚生労働大臣が定める者」で、(Ⅰ)から(Ⅲ)のいずれかを算定している利用者には算定できません。 Q. 医療連携体制加算の(Ⅴ)と(Ⅵ)は同じ加算ですか? A. いいえ、対象も評価する行為も異なります。(Ⅴ)は看護職員が認定特定行為業務従事者に喀痰吸引等の指導を行った場合の加算で、看護職員1人につき1日500単位です。(Ⅵ)は認定特定行為業務従事者が喀痰吸引等を実際に行った場合の加算で、1日100単位です。(Ⅵ)は(Ⅰ)から(Ⅳ)のいずれかを算定している利用者には算定できません。 Q. 就労継続支援B型は短期入所と同じ区分まで算定できますか? A. いいえ、B型が算定できるのは(Ⅰ)から(Ⅵ)までです。短期入所には(Ⅶ)から(Ⅸ)までの独自の区分がありますが、就労継続支援B型・就労移行支援・就労継続支援A型はこれらを持ちません。留意事項通知は、短期入所の規定を準用する際に「(Ⅰ)から(Ⅷ)」を「(Ⅰ)から(Ⅵ)」に読み替えると明記しています。 Q. 医療連携体制加算を算定するには何が必要ですか? A. 医療機関等との委託契約と、主治医の指示を書面で残すことが必要です。事業所は看護の提供に係る費用を医療機関に支払う委託契約をあらかじめ結び、利用者ごとに主治医から看護の内容等について指示を受け、その内容を書面で残します。看護の内容は個別支援計画等に記載し、主治医へ定期的に報告します。この手続きは短期入所の基本ルールを就労継続支援B型が準用する形で定められています。 ### 根拠資料 - 厚生労働省・こども家庭庁「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年6月施行分)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001663319.pdf(PDF29頁 就労継続支援B型サービス費中の医療連携体制加算欄で単位数を確認・2026年08月18日確認) - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号、令和8年6月1日適用版)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=6(第14の10 医療連携体制加算及び注1〜6を確認・2026年08月18日確認) - 厚生労働省「「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日 障発第1031001号、最終改正 令和8年5月28日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(PDF161〜164頁の短期入所の基本ルール(委託契約・主治医の指示等の手続きを含む)とPDF300〜301頁のB型準用規定を確認・2026年08月18日確認) - 厚生労働省「「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日 障発第1031001号、最終改正 令和8年5月28日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(PDF231頁(就労移行支援)・253頁(自立訓練生活訓練)・270頁(就労継続支援A型)の準用規定を比較のため確認・2026年08月18日確認) ### 更新履歴 - 2026.09.27 就労継続支援B型で算定するまでの流れ(委託契約・主治医の指示・記録)を追記した - 2026.08.18 初回公開 --- ## 就労移行支援体制加算は 前年度の就労定着者数で決まる 上限と3年間の重複算定禁止 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shurou-ikou-shien-taisei-kasan/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-18 / 更新: 2026-09-12 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 就労移行支援体制加算は、生活介護・自立訓練(機能訓練・生活訓練)・就労継続支援A型・就労継続支援B型の4サービスに置かれた加算です。就労移行支援自体には設けられていません。就職後の定着率は、就労移行支援の基本報酬の区分にすでに反映されているためです。加算額は、前年度に一般就労へ移行し雇用継続期間が6月に達した利用者(就労定着者)の数を、所定単位数に乗じて算定します。就労継続支援B型では、基本報酬の型によって所定単位数の決まり方が変わります。B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)を算定する事業所は、利用定員と平均工賃月額の組み合わせです。(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)を算定する事業所は、利用定員だけで単位数が決まります。 就労定着者を数える起算点は、利用者ごとの就職日です。前年度内に雇用継続期間が6月に達したかどうかで判定します(例:令和5年10月1日就職の場合、令和6年3月31日に6月到達)。就労継続支援A型事業所への移行や、施設外支援の対象となるトライアル雇用は数えません。前年度の就労定着者数には上限があり、当該年度の前年度9月30日時点における事業所の利用定員数までです。同一利用者について過去3年間に本加算の算定実績があれば、原則として再度は算定できません。就労移行支援体制加算に関する届出は、原則として当該年度の4月中に行います。 - 対象サービス: 生活介護・自立訓練(機能訓練・生活訓練)・就労継続支援A型・就労継続支援B型(就労移行支援自体には無い) - 加算額の決まり方: 所定単位数(利用定員・平均工賃月額等の区分による)×前年度の就労定着者数 - 就労定着者の定義: 前年度において、企業等での雇用継続期間が6月に達した者 - 「6月」の起算点: 利用者の就職日。前年度内に到達したかで判定(例:令和5年10月1日就職→令和6年3月31日に6月到達) - 数えられない例: 就労継続支援A型事業所への移行、施設外支援の対象となるトライアル雇用 - 人数の上限: 当該年度の前年度9月30日時点における事業所の利用定員数まで - 重複算定の禁止: 過去3年間(体制届を受理した年度の前年度末日から起算)に算定実績がある者は原則不可 - 届出の時期: 就労移行支援体制加算に関する届出は原則、当該年度4月中 根拠: 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」ほか報酬算定構造・留意事項通知 ### 本文 4月になると、前年度の名簿を開いて人数を数える作業が始まります。就労移行支援体制加算のことです。生活介護や就労継続支援B型を運営していると、ここで手が止まります。誰を数えていいのか。何人まで数えていいのか。去年も数えた人を、もう一度数えていいのか。しかも判定の起算点は、事業所の年度ではなく利用者ごとの就職日です。名簿を年度でまとめているほど、ずれます。 僕は埼玉県志木市で就労継続支援B型を運営していますが、開所は2026年5月です。前年度の実績を数える立場には、まだ来ていません。だからこの記事は、資料を読んで整理したものです。先に答えを書きます。加算額は「所定単位数×前年度の就労定着者数」で決まり、その人数には前年度9月30日時点の利用定員数という上限があります。同一の利用者は、過去3年間に算定実績があれば原則として二度は数えられません。 ## この加算は、何で金額が決まるのか 就労移行支援体制加算は、前年度の就労定着者数を所定単位数に乗じて算定する加算です。対象となるサービスは4つあります。 - 生活介護 - 自立訓練(機能訓練・生活訓練) - 就労継続支援A型 - 就労継続支援B型 **就労移行支援自体にはこの加算がありません**。就労移行支援は、就職後の定着率に応じた基本報酬の区分に、実績をすでに反映させているためです。別立ての加算は置かれていません。 正直、名前だけを見たときは、就労移行支援の事業所が取る加算だと思いました。実際は逆で、就労移行支援ではないサービスが一般就労へ送り出した分を評価する加算です。名前から意味を取ろうとせず、報酬算定構造の表で対象サービスを確かめるほうが早いです。 就労継続支援B型では、基本報酬の型によって所定単位数の決まり方が分かれます。B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)を算定する事業所は、利用定員と平均工賃月額の組み合わせです。(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)を算定する事業所は、利用定員だけで単位数が決まります。 | B型の基本報酬の型 | 就労移行支援体制加算の型 | 所定単位数の決まり方 | | --- | --- | --- | | (Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ) | (Ⅰ)(Ⅱ) | 利用定員×平均工賃月額 | | (Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ) | (Ⅲ)(Ⅳ) | 利用定員のみ | 自事業所がどちらの型かで、就労定着者ひとりあたりの単位数がまったく違います。だから、人数を数え始める前に、**自事業所がB型サービス費のどの区分か**を確かめてください。順番を逆にすると、数えた人数に掛ける数字が決まらないまま名簿と向き合うことになります。 ## 「6月に達した者」は、いつから数えるのか 起算点は事業所の年度ではなく利用者ごとの就職日で、前年度内に6月へ到達したかどうかで判定します。 留意事項通知は、前年度において企業等での雇用継続期間が6月に達した者を、就労定着者として扱うと定めています。判定するのは、6月への到達日が前年度の中に入っているかどうかです。例えば、令和5年10月1日に就職した者は、令和6年3月31日に6月に達した者となります。 就職日がいつであっても、6月の到達日が前年度に入っていれば、その年度の就労定着者数に数えます。到達日が翌年度にずれ込む場合は、数えるのは翌年度です。 ここが、この加算でいちばん間違えやすい場所だと思っています。数えるのは前年度に就職した人ではありません。**6月の到達日が前年度に入っているか**で決まります。年度の終わり近くに就職した人は、その年度ではなく翌年度の数に入ります。 うちは勤怠をDiscordのボットで記録していて、日報もクラウドに残しています。ただ、就職日とその6月後は、多くの場合うちの利用を終えたあとの日付です。支援の記録とは別に、就職した人の日付だけを並べた表が要ります。 起算点には、2つの救済的な扱いもあります。 1つ目は、労働時間の延長や休職からの復職で、当該事業所のB型を受けた場合です。この場合は、支援を受けた後から6月を数えます。例えば、令和5年10月1日に就職した後、令和5年12月31日まで支援を受けた場合は、令和6年6月30日に6月に達した者となります。 2つ目は、努力義務期間である就職から6月の間に、労働条件改善のための転職支援を行った場合です。離職後1月以内に再就職していれば、最初の就職から起算して6月に達した者を就労定着者として扱います。 転職した利用者を一律に対象外と判断しないでください。この2つの扱いに当たらないかを、まず確認する必要があります。 ## 誰を就労定着者に数えられないのか 就労継続支援A型事業所の利用者としての移行と、施設外支援の対象となるトライアル雇用は、就労定着者に数えられません。除かれるのは、次の2種類です。 - 就労継続支援A型事業所の利用者としての移行 - 施設外支援の対象となるトライアル雇用 この2つは、加算の定義でいう**「企業等への就労」に当たらない**ためです。留意事項通知は、企業等との雇用契約に基づく就労を対象とし、労働時間等の条件は問わないとしたうえで、この2つを明示的に除いています。 生活介護でも考え方は同じです。生活介護を経て就労継続支援A型事業所に雇用された場合も、就労定着者からは除かれます。 労働時間等の条件は問わない、という部分が効いてきます。週の労働時間が短くても、企業等との雇用契約に基づく就労であれば対象です。一方でA型事業所に利用者として移る場合は、雇用契約を結んでいても対象から外れます。見ているのは働いた時間の長さではなく、雇う側がどこかだと思います。 経営から見れば、B型からA型へ移れたことも支援の成果です。それでもこの加算では数えられません。そこはこの加算で評価される話ではない、と割り切るしかないところです。 ## 何人まで数えられるのか 前年度の就労定着者数に数えられるのは、当該年度の前年度9月30日時点における事業所の利用定員数までです。 令和8年6月以降、国保連システムは、就労定着者数が最低定員数(6人または10人)を上回る請求に警告を出します。市町村は、警告が出た事業所について前年度9月末時点の定員数を確認し、上限を超えていれば当月分の請求を修正させます。令和8年4月・5月分も確認し、過大請求であれば遡って返還させます。 読み違えやすいのは、**警告のしきい値は最低定員数**だという点です。自事業所の定員ではありません。定員が最低定員数より大きい事業所では、上限の内側でも警告が出ることがあります。警告そのものは誤りの通知ではなく、市町村に確認させるための印だと読みました。 もう一つ、上限を決める日付は固定です。数えるのは年度が明けてからですが、使うのは**前年度9月30日時点の定員数**です。定員を年度の途中で増やした場合でも、10月以降の変更は前年度実績の上限には乗らない、というのが僕の読み方です。 そして、修正は当月分だけでは終わりません。過大請求と分かれば、令和8年4月・5月分まで戻ることになります。数え方を決めきらないまま請求を出すのは、あとが重いです。 ## 同じ人で、もう一度取れるのか 同一の利用者について、過去3年間に本加算の算定実績があれば、原則として再度は算定できません。 3年間の起算点は、体制届を受理した年度の前年度末日です。令和8年4月に体制届を受理した場合、確認する期間は令和5年度から令和7年度になります。 例外は1つです。**やむを得ない事情による離職**で、市町村長が適当と認めた者に限り、再び就労定着者として数えられます。ハラスメントなどが該当例として挙げられています。 見落としやすいのは、この3年間を自事業所の中だけでは確かめられない点です。同一事業所だけでなく、**他の事業所での算定実績も含む**とされています。自事業所の名簿を見ても、その人が前の事業所で数えられていたかは分かりません。 確認の主体も分かれています。体制届は指定権者(都道府県・指定都市・中核市)が確認し、給付の審査は支給決定権者(市町村)が行います。市町村は、必要に応じて指定権者に照会します。 ここは事業所が単独で確定できない要件だと思っています。だから、過去3年以内に一般就労の経験がある利用者については、数える前に市町村へ相談しておくほうが安全だと考えています。 ## 令和8年度改定で何が変わり、届出はいつ出すのか 令和8年度改定で変わったのは年間の算定対象就職者数の上限で、前年度9月30日時点の事業所の定員数までと明確化されました。届出は原則として当該年度の4月中に行います。 令和6年度改定で入った重複算定の禁止とは、改定の年度が違います。区別して読んでください。 | 改定年度 | 変わった点 | | --- | --- | | 令和6年度改定 | 同一利用者について過去3年間に算定実績があれば、原則として再算定を不可とした(重複算定の禁止) | | 令和8年度改定 | 年間の算定対象就職者数の上限を事業所の定員数までとした。前年度9月30日時点の定員数が上限であることも明確化した | 2つを同じ改定だと思って読むと、経過の説明がずれます。**重複算定の禁止は令和6年度改定**で、人数の上限は令和8年度改定です。 年間の算定対象就職者数の上限は、告示改正により令和8年4月に施行されました。同一の利用者についてA型事業所と一般企業の間で複数回の離転職を繰り返し、そのたびに加算を取得する事例が報道されたことへの対応です。 制度が動いた理由がはっきりしている改定です。人数で積み上がる設計だったので、同じ人を何度も数える余地が残っていました。令和6年度改定で同じ人の重複を止め、令和8年度改定で人数そのものに蓋をした、という順番だと読んでいます。 届出の時期も押さえておく必要があります。就労移行支援体制加算に関する届出書は、令和8年4月に提出します。前年度実績に基づく加算の届出は、原則として当該年度の4月中に行うのが基本です。 4月は新年度の体制届が集中する時期です。前年度の名簿の下ごしらえは、3月のうちに終えておきたいところです。数え方で迷う人がひとりでもいれば、指定権者に聞く時間も要ります。 ## 開所したばかりの事業所はどうなるのか 前年度の就労定着者数が無ければ、所定単位数に乗じる数がゼロになるため、計算式の上では加算単位もゼロです。 加算額は「所定単位数×前年度の就労定着者数」という式で決まります。指定を受けて1年に満たない新規事業所は、通常この前年度実績を持てません。 この結論は、算定式の構造から導かれる帰結です。「新規事業所は算定できない」と明文で定めた条文は、**確認できていません**。判断に迷う場合は、指定権者に確認してください。 定員数の上限も、前年度の実績があってはじめて意味を持つ数字です。開設1年目の事業所には、この上限を当てはめる前年度実績自体がありません。 うちも前年度の実績を数える段階には来ていません。それでも、この加算を先に読んでおく意味はあると思っています。決まるのは前年度に何をしたかで、動かせるのは今年度だからです。 今年度に一般就労へ移った人がいれば、その人の6月到達日がどの年度に入るかで、数える年度が決まります。誰がいつ就職したかを、どこに記録しておくか。そこは今日から決められます。 結局、この加算で一番大事なのは、4月に数えることではなく、日付を先に記録しておくことだと思っています。要件はどれも過去の日付で決まります。就職日、6月の到達日、前年度9月30日時点の定員、過去3年間の算定実績。4月になってから集めようとすると、全部が探す作業に変わります。加算の金額そのものより、記録の置き方を先に決めておくほうが、あとで楽になります。 ## あわせて読む この加算は、基本報酬と並べて見ないと金額の感覚がつかめません。次の3本が続きです。 - [就労継続支援B型事業所の収支構造を分解する](/column/b-gata-shushi-kouzou/) … 基本報酬と加算の全体像。この加算が収支のどこに乗るかが分かります - [就労継続支援A型とB型は何が違うのか](/column/b-gata-a-gata-chigai/) … A型への移行が就労定着者から除かれる理由と、加算の型が分かれる背景 - [令和8年度の処遇改善加算](/column/shogu-kaizen-kasan-r8/) … 同じ令和8年度改定で変わった別の加算。改定の読み方をそろえるのに使えます ### よくある質問 Q. 就労移行支援体制加算は何を評価する加算ですか? A. 前年度に一般就労へ定着した実績を評価する加算です。生活介護・自立訓練(機能訓練・生活訓練)・就労継続支援A型・就労継続支援B型の4サービスに置かれています。就労移行支援自体には、この加算がありません。就職後の定着率は、基本報酬の区分にすでに反映されているためです。 Q. 「6月に達した者」の起算点はいつですか? A. 起算点は個々の利用者の就職日です。判定は、前年度内に到達したかで行います。例えば、令和5年10月1日に就職した者は、令和6年3月31日に6月に達した者となります。 Q. 就労継続支援A型に移行した利用者は就労定着者に数えられますか? A. いいえ、数えられません。A型事業所の利用者としての移行と、施設外支援の対象となるトライアル雇用は、加算でいう「企業等への就労」に当たらないため除かれます。 Q. 加算に算定できる人数に上限はありますか? A. はい、上限があります。前年度の就労定着者数は、当該年度の前年度9月30日時点における事業所の利用定員数が上限です。令和8年4月施行の改定で、この上限が明確化されました。 Q. 同じ利用者で加算を何度も取得できますか? A. いいえ、原則できません。過去3年間に同一事業所または他の事業所で、当該者の就労につき本加算が算定されている場合は対象外です。ハラスメントなどやむを得ない事情による離職で、市町村長が適当と認める者に限り例外です。3年間は、体制届を受理した年度の前年度末日から起算します。 Q. 新規指定の事業所でも加算は算定できますか? A. 前年度の実績が無ければ、計算式の上では単位はゼロになります。加算額は所定単位数に前年度の就労定着者数を乗じて決まるため、実績が無い新規事業所は構造上算定額がゼロになります。これを明文で定めた条文は確認できていません。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「別紙6 就労移行支援体制加算の見直し(イメージ/審査処理について)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001683303.pdf(p.1「見直しのイメージ」・p.2「審査処理について」を確認・2026年08月18日確認) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf(p.7〜8「2(1)就労移行支援体制加算の見直し」を確認・2026年08月18日確認) - 厚生労働省・こども家庭庁「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年6月施行分)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001663319.pdf(p.21で就労移行支援に加算が無いこと、p.23〜24でA型、p.26〜29でB型の単位数を確認・2026年08月18日確認) - 厚生労働省・こども家庭庁「障害福祉サービス費等の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(平成18年10月31日障発第1031001号、最終改正令和8年5月28日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(就労継続支援B型「⑤ 就労移行支援体制加算の取扱いについて」(PDF p.295〜298)を確認・2026年08月18日確認) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1」 https://www.mhlw.go.jp/content/001683290.pdf(問30・問32で届出の時期と3年間の起算点を確認・2026年08月18日確認) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について(一覧ページ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202214_00013.html(各資料のリンク元ページであることを確認・2026年08月18日確認) - 厚生労働省(法令等データベースサービス)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年9月29日厚生労働省告示第523号)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=1(告示の存在と最終改正日(令和8年3月31日)を確認。該当条文の該当ページは未特定・2026年08月18日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.18 初回公開 --- ## 就労継続支援A型とB型は 何が違うのか、雇用契約から 報酬構造・開設判断まで URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/b-gata-a-gata-chigai/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 A型とB型の違いは、利用者と雇用契約を結ぶかどうかから始まります。根拠は障害者総合支援法施行規則第6条の10です。同条はA型を「雇用契約に基づく就労が可能である」障害者に対するサービスとしています。B型は「雇用契約に基づく就労が困難である」障害者に対するサービスです。A型の利用者は労働者になります。最低賃金法をはじめとする労働関係法令が適用され、事業者が支払うのは賃金です。B型は雇用契約を結ばず、生産活動の収支から工賃を支払います。 経営から見て決定的なのは、A型だけにかかる生産活動収支の規制です。生産活動に係る事業の収入から必要な経費を控除した額が、利用者に支払う賃金の総額以上となるようにしなければなりません。根拠は指定障害福祉サービス基準第192条第2項です。その達成状況は、基本報酬のスコアを最大80点分動かします。B型にこの規制はありません。基本報酬の軸も違います。A型は評価点、B型は平均工賃月額で決まります。令和8年6月1日以降は、B型の区分基準だけが引き上げられました(2026年8月16日時点)。 - 対象者の書き分け: 施行規則第6条の10第1号(A型)は雇用契約に基づく就労が可能な者、第2号(B型)は雇用契約に基づく就労が困難な者 - 事業者が支払うもの: A型は賃金(最低賃金法の適用あり)、B型は工賃(平均月額3,000円を下回ってはならない。第201条第2項) - A型だけにかかる収支規制: 生産活動収支が利用者に支払う賃金の総額以上となるようにしなければならない(基準省令第192条第2項) - 共通する原資の規制: 賃金・工賃の支払いに要する額は原則として自立支援給付をもって充ててはならない(第192条第6項。B型は第202条で準用) - 基本報酬の決まり方: A型は利用定員×人員配置(7.5対1/10対1)×評価点、B型は利用定員×人員配置(6対1/7.5対1/10対1)×平均工賃月額等 - 人員基準: どちらも職業指導員及び生活支援員の総数が常勤換算で利用者の数を10で除した数以上(第186条。B型は第199条で準用) - 実施主体の制限: A型は社会福祉法人以外なら専ら社会福祉事業を行う者に限られ、障害者雇用促進法第44条の子会社は不可(第189条)。B型にこの制限はない - 令和8年度改定での扱い: 基本報酬区分の見直しと新規指定事業所の応急的な報酬単価(1000分の984)はB型が対象で、A型は対象外 根拠: 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」「厚生労働大臣が定める事項及び評価方法(令和3年厚生労働省告示第88号)」 ### 本文 ## 出発点は施行規則の一語の差 A型とB型の違いは、障害者総合支援法施行規則第6条の10まで戻ると見通しが良くなります。同条第1号は、A型の対象を「通常の事業所に雇用されることが困難な障害者であって雇用契約に基づく就労が可能であるもの」としています。第2号は、B型の対象を「雇用契約に基づく就労が困難であるもの」としています。**可能か困難かという一語の差**が、労働法の適用、支払う金銭の性質、報酬の決まり方までを分けていきます。これを受けて、A型事業者は利用者と雇用契約を締結しなければなりません(指定障害福祉サービス基準第190条第1項)。 ## 経営に効く違いを対比する | 項目 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | | --- | --- | --- | | 雇用契約と労働法 | 締結する。利用者は労働者となり最低賃金法等が適用される | 締結しない。労働関係法令は適用されない | | 生産活動収支の縛り | 生産活動収支が利用者に支払う賃金の総額以上となるようにしなければならない(第192条第2項) | 同様の規定はない。工賃は生産活動収支に相当する額(第201条第1項) | | 人員基準 | 職業指導員及び生活支援員の総数が常勤換算で利用者の数を10で除した数以上(第186条) | 同じ(第199条で準用) | | 実施主体の制限 | 社会福祉法人以外は専ら社会福祉事業を行う者に限る。障害者雇用促進法第44条の子会社は不可(第189条) | 相当する規定はない | | 基本報酬の軸 | 利用定員×人員配置(7.5対1/10対1)×評価点 | 利用定員×人員配置(6対1/7.5対1/10対1)×平均工賃月額等 | | 事業所数・利用者数 | 4,367か所・86,929人 | 20,274か所・425,938人 | 事業所数と利用者数は、いずれも国保連の令和8年3月実績です。B型の事業所数はA型の約4.6倍あります。 ## 賃金と工賃では、原資の縛り方が違う A型には、生産活動収支についての規制がかかります。生産活動に係る事業の収入から必要な経費を控除した額が、利用者に支払う賃金の総額以上となるようにしなければなりません(第192条第2項)。A型の賃金は生産活動の利益から出すのが原則で、**給付費で穴埋めする設計**は想定されていません。 B型では、工賃がそもそも生産活動収支に相当する額と定義されています(第201条第1項)。同じ趣旨が定義に織り込まれている形です。 両者に共通する規制もあります。賃金と工賃の支払いに要する額は、原則として自立支援給付をもって充ててはなりません。例外は、災害その他やむを得ない理由がある場合です。根拠は第192条第6項で、B型は第202条で準用しています。B型なら給付費から工賃を出してよい、ということにはなりません。収支の組み立ては[就労継続支援B型の収支構造](/column/b-gata-shushi-kouzou/)で扱っています。 ## 基本報酬の決まり方が根本的に違う B型の基本報酬は平均工賃月額の区分で決まります。A型は評価点、いわゆるスコアで決まります。スコアの中身は「厚生労働大臣が定める事項及び評価方法」(令和3年厚生労働省告示第88号)が定める7項目です。配点は次のとおりです。 - 労働時間 … 最高90点 - 生産活動 … 最高60点 - 多様な働き方 … 最高15点 - 支援力向上のための取組 … 最高15点 - 地域連携活動 … 最高10点 - 利用者の知識・能力の向上 … 最高10点 - 経営改善計画を期限までに提出していない場合 … マイナス50点 生産活動の項目は、生産活動収支が賃金総額以上だった年度がいくつあるかで決まります。 - 過去3年度すべて … 60点 - 過去2年度 … 50点 - 前年度だけ … 40点 - 前年度と前々年度がいずれも下回る … 10点の減点 - 3年度すべて下回る … 20点の減点 幅は最高60点から最低マイナス20点までの80点分です。A型の報酬区分は、**この1項目で動きます**。 次の表は就労継続支援A型サービス費です。定員20人以下の場合の、1日につきの単位数を示します。 | 評価点 | 7.5対1(Ⅰ) | 10対1(Ⅱ) | | --- | --- | --- | | 170点以上 | 791 | 727 | | 150点以上170点未満 | 733 | 671 | | 130点以上150点未満 | 701 | 641 | | 105点以上130点未満 | 666 | 608 | | 80点以上105点未満 | 533 | 486 | | 60点以上80点未満 | 419 | 382 | | 60点未満 | 325 | 296 | 上下で2.4倍以上の開きがあります。新規指定のA型事業所は初年度、評価点が80点以上105点未満とみなして算定します。 ## 令和8年度改定でA型とB型の扱いは分かれた 令和8年度の臨時応急的な改定は、B型に厚く当たりました。B型は基本報酬区分の基準額が、1月あたり3,000円ずつ引き上げられました。適用は令和8年6月1日からです。同日以降に新規指定を受けるB型事業所には、応急的な報酬単価もかかります。所定単位数の1000分の984を適用するものです。この特例の対象は次の4サービスで、**A型は含まれていません**。 - 就労継続支援B型 - 共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型) - 児童発達支援 - 放課後等デイサービス A型に関係する改定は2つです。1つは令和8年6月施行の処遇改善加算の拡充で、A型の加算率は加算Ⅰイ10.8%、Ⅰロ11.2%、Ⅲ9.1%などとなります。もう1つは、令和8年4月施行の就労移行支援体制加算の見直しです。見直しの背景には、同じ利用者がA型事業所と一般企業の間で離転職を繰り返し、その都度算定される事例の報道があります。これを受けて、一事業所で算定できる年間の就職者数の上限を定員数までとしました。A型の基本報酬の単位数そのものは、令和8年度改定で変わっていません。 ## どちらを開設するかを分ける論点 判断に効くのは3点です。第一に法人格です。A型は社会福祉法人以外なら、専ら社会福祉事業を行う者に限られます(第189条)。特例子会社も**指定を受けられません**。第二に賃金の原資です。最低賃金を満たす賃金を、生産活動の利益から支払える計画が要ります。第三に人材です。A型が利用者及び従業者以外の作業員を雇う場合は、人数に上限がかかります(第196条)。定員10人以上20人以下なら、定員の50%までです。 令和6年度の実績では、A型の平均賃金月額が91,451円、B型の平均工賃月額が24,141円でした。差は約3.8倍です。それでも令和7年経営概況調査の収支差率(補助金を含まない)は、A型6.8%、B型6.2%とほぼ並びます。利用者に渡る金額が3.8倍違って事業者の収支差率が並ぶのは、A型の生産活動が**賃金分だけ余計に稼いでいる**からです。B型側の採算感は[就労継続支援B型は儲かるのか](/column/b-gata-moukaru/)にまとめました。 どちらで指定を取るかを検討するときは、収支シミュレーションの前に定款を開くことをおすすめします。社会福祉法人以外のA型事業者は、専ら社会福祉事業を行う者でなければなりません(第189条)。他の事業を営む会社のままでは、指定にたどり着かない場合があります。確認事項は指定権者ごとに異なります。事業計画を固める前に事前相談で確かめておくと、手戻りが減ります。 A型で進める場合の試算は、収支の見込みよりも先に賃金を置くと判断が早くなります。まず、想定する最低賃金額に1日の平均労働時間、利用者数、年間の稼働日数を掛けて、年間の賃金総額を出します。次に、その金額を生産活動の粗利で賄えるかどうかを確かめます。この水準以上を保つことを求めているのが第192条第2項です。届かなければスコアの生産活動が減点側に振れ、報酬区分も下がります。 ### よくある質問 Q. A型とB型では、どちらのほうが収支は良いのですか? A. 令和6年度決算では大きな差はありません。数字は厚生労働省の令和7年障害福祉サービス等経営概況調査によります。物価高騰対策関連補助金を含まない収支差率は、A型が令和5年度6.6%から令和6年度6.8%です。B型は令和5年度6.0%から令和6年度6.2%です。全サービス平均(単純平均)が令和6年度4.6%なので、どちらも平均より高い水準にあります。ただし収支の組み立て方は違います。A型は生産活動収支が賃金総額以上であることを求められるため、給付費と生産活動収支の役割分担が構造的に違います。 Q. A型では必ず最低賃金以上を払わなければなりませんか? A. 原則として必要です。A型は雇用契約を締結するため、最低賃金法が適用されます。同法第4条は、使用者に最低賃金額以上の賃金の支払いを義務づけています。ただし同法第7条に減額の特例があります。対象は、精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者です。都道府県労働局長の許可を受けたときは減額できます。減額できるのは、最低賃金額に労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める率を乗じた額までです。許可を前提に賃金設計を組むかどうかは、事前に労働局に相談して判断してください。 Q. A型とB型で人員基準は違いますか? A. 指定基準上は同じです。どちらも職業指導員及び生活支援員の総数を、常勤換算方法で利用者の数を10で除した数以上とします。根拠は指定障害福祉サービス基準第186条第1項第1号イです。B型は第199条でこの規定を準用しています。サービス管理責任者の配置数も同じです。違うのは報酬側です。A型は7.5対1でサービス費(Ⅰ)、10対1で(Ⅱ)となります。B型は6対1・7.5対1・10対1の3段階で区分が分かれます。 Q. A型を運営できる法人に制限はありますか? A. あります。A型事業者が社会福祉法人以外の場合は、専ら社会福祉事業を行う者でなければなりません。さらに、障害者の雇用の促進等に関する法律第44条に規定する子会社(いわゆる特例子会社)は指定を受けられません。定めているのは指定障害福祉サービス基準第189条です。B型にはこれに相当する規定がありません。既存事業を営む会社がそのままA型の指定を取れるかは、定款の事業目的の書き方に関わります。指定権者への事前相談が必要です。 Q. 令和8年度の報酬改定はA型にも影響しますか? A. 影響しますが、B型ほど大きくはありません。A型に関係するのは2つです。1つは、令和8年6月施行の処遇改善加算の拡充です。A型の加算率は加算Ⅰイ10.8%・Ⅰロ11.2%・Ⅱイ10.6%・Ⅱロ11.0%・Ⅲ9.1%・Ⅳ7.5%です。もう1つは、令和8年4月施行の就労移行支援体制加算の見直しです。一事業所で算定できる年間就職者数の上限を、定員数までとしました。B型で行われた2つの措置は、A型には適用されません。基本報酬区分の基準額引き上げと、新規指定事業所への応急的な報酬単価(所定単位数の1000分の984)です。 Q. A型からB型へ、またはB型からA型へ変更できますか? A. できますが新規指定の手続きが必要です。A型からB型への事業種別の変更は、新規指定を要します。そのため令和8年6月1日以降に指定を受ける場合は、応急的な報酬単価(所定単位数の1000分の984)の対象になります。示しているのは厚生労働省の令和8年度報酬改定Q&A VOL.1です。逆にB型からA型への変更では、A型側の実施主体の制限や生産活動収支の規制が新たにかかります。どちらの方向でも、変更後の基本報酬は新規指定事業所としてみなし区分から始まります。 ### 根拠資料 - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年08月16日確認。第186条・第189条・第190条・第192条・第196条・第196条の3・第199条・第201条・第202条の原文を確認) - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(平成18年厚生労働省令第19号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100019(2026年08月16日確認。第6条の10第1号(A型)・第2号(B型)の対象者の書き分けを確認) - e-Gov法令検索「最低賃金法(昭和34年法律第137号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000137(2026年08月16日確認。第4条(最低賃金の効力)・第7条(最低賃金の減額の特例)を確認) - 厚生労働省「厚生労働大臣が定める事項及び評価方法(令和3年3月23日厚生労働省告示第88号/最終改正 令和6年3月15日厚生労働省告示第88号)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83ab8086&dataType=0&pageNo=1(2026年08月16日確認。労働時間・生産活動・多様な働き方・支援力向上のための取組・地域連携活動・経営改善計画・利用者の知識能力の向上の各配点を確認) - 厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年度改定後)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001658031.pdf(2026年08月16日確認。p.23〜24の就労継続支援A型サービス費、p.25〜28の就労継続支援B型サービス費を確認) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(令和8年2月18日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf(2026年08月16日確認。p.3の処遇改善加算率、p.7の就労移行支援体制加算の見直し、p.19の応急的な報酬単価の対象サービスを確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(障発第1031001号/最終改正 令和8年5月28日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(2026年08月16日確認。第2の14の(4)(就労継続支援A型サービス費)の区分・新規指定時のみなし・自己評価未公表減算を確認) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1(令和8年3月31日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001683290.pdf(2026年08月16日確認。A型からB型への変更が新規指定にあたる旨を確認) - 厚生労働省「就労系障害福祉サービスの概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001737834.pdf(2026年08月16日確認。事業所数・利用者数は国保連令和8年3月実績) - 厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について(令和8年3月修正版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001637154.pdf(2026年08月16日確認。A型91,451円/月・B型24,141円/月) - 厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果の概要(令和8年1月9日差し替え)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001599113.pdf(2026年08月16日確認。サービス別収支差率) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 就労継続支援B型はどんな人が使うのか。 対象者の4類型と就労選択支援の要否、 事業所が見学・相談で確認すること URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/b-gata-donna-hito/ カテゴリー: 利用者獲得 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 就労継続支援B型の対象者は、通常の事業所に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が困難な障害者です。根拠は障害者総合支援法施行規則第6条の10第2号です。厚生労働省の資料はこれを4類型に整理しています。 1つ目は、企業等や就労継続支援A型での就労経験があり、年齢や体力の面で雇用されることが困難となった人です。2つ目は、50歳に達している人または障害基礎年金1級の受給者です。3つ目は、1つ目と2つ目に該当せず、就労選択支援事業者によるアセスメントで就労面に係る課題等の把握が行われている人です。最も近い就労選択支援事業所であっても通所することが困難である等、近隣に事業所がない場合は就労移行支援事業者等によります。4つ目は、通常の事業所に雇用されていて、主務省令で定める事由により一時的に支援を必要とする人です。 令和7年10月から、3つ目は従来の就労アセスメントに代わり就労選択支援によることになりました。利用期間の制限はありません。誰が利用できるかを決めるのは市町村の支給決定です。事業所の側は、障害種別や程度で線を引く立場ではありません。自事業所の人員体制と作業内容、通所時間の設定を見ます。それが本人の希望と必要な配慮に合うかを確認する立場になります(2026年8月16日時点)。 - 制度上の定義: 通常の事業所に雇用されることが困難であって雇用契約に基づく就労が困難な障害者(障害者総合支援法施行規則第6条の10第2号) - 対象者の4類型: ①就労経験があり年齢・体力面で雇用が困難となった人/②50歳に達している人または障害基礎年金1級受給者/③就労選択支援事業者等のアセスメントで就労面の課題等の把握が行われている人/④在職中で主務省令で定める事由により一時的に支援が必要な人 - 就労選択支援が必要になる人: 上記③に当たる人。令和7年10月1日以降の新規利用が対象。最も近い就労選択支援事業所であっても通所することが困難である等、近隣に事業所がない場合と、利用可能な事業所数が少なく待機期間が生じる場合は、就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経た利用が認められる(障障発0331第3号 1の(2)) - 一般就労中でも利用できる場合: 労働時間延長支援型、復職支援型、所定労働時間が概ね週10時間未満で一般就労へ移行した場合(就労継続支援短時間型)の3類型。フリーランスや個人事業主も市町村が必要と認めれば支給決定できる - 事業所側の受け入れ義務: 正当な理由がなく提供を拒んではならない(指定基準第11条、第202条で準用)。自ら適切な支援を提供することが困難と認めた場合は、他の事業者の紹介その他の必要な措置を速やかに講じる(第13条) - 利用期間: 制限なし 根拠: 厚生労働省「就労系障害福祉サービスの概要」(事業所数20,274か所・利用者数425,938人/国保連令和8年3月実績) ### 本文 ## 制度が定義しているのは障害の種類ではなく「困難さ」 障害者総合支援法施行規則第6条の10第2号が、就労継続支援B型を定義しています。対象は「通常の事業所に雇用されることが困難であって雇用契約に基づく就労が困難であるもの」等です。内容は、就労の機会と生産活動の機会を提供し、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行う事業です。 ここに書かれているのは**働きづらさの性質**であって、障害の種類でも障害支援区分でもありません。条文は特定の障害種別を挙げておらず、**障害支援区分にも触れていません**。 雇用契約を結ばない点と、利用期間の制限がない点がA型との大きな違いです。両者の線引きは[A型とB型の違い](/column/b-gata-a-gata-chigai/)で扱っています。 ## 対象者の4類型と、就労選択支援が必要かどうか 厚生労働省の「就労系障害福祉サービスの概要」は、B型の対象者を次の4つに整理しています。相談を受けたときに最初に切り分けるのはこの区分です。 | 類型 | 内容 | 就労選択支援の要否 | | --- | --- | --- | | ① | 企業等や就労継続支援A型での就労経験があり、年齢や体力の面で雇用されることが困難となった人 | 不要 | | ② | 50歳に達している人、または障害基礎年金1級の受給者 | 不要 | | ③ | ①②に該当しない人 | 必要(就労選択支援事業者によるアセスメント) | | ④ | 通常の事業所に雇用されていて、主務省令で定める事由により一時的に支援を必要とする人 | 不要 | ③について、令和7年10月から、従来の就労移行支援事業所等による就労アセスメントに代わって就労選択支援によることになりました。ただし例外があります。課長通知「就労選択支援の実施について」は、2つの場合を挙げています。1つは、最も近い就労選択支援事業所であっても通所することが困難である等で、近隣に就労選択支援事業所がない場合です。もう1つは、利用可能な事業所数が少なく、就労選択支援を受けるまでに待機期間が生じる場合です。この2つでは、従来どおり就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経たB型利用を認めています。 留意事項通知(障障発0331第2号)も同じ例外を定めています。ただし、そちらは「近隣に就労選択支援事業所がない場合」と短く書いています。通所の困難さという判断材料が読み取れるのは前者の通知です。 就労選択支援そのものは、関連する記事にまとめました。 - [就労選択支援の対象者](/column/shurou-sentaku-shien-taishousha/) … 誰が対象になるかの詳細 - [就労選択支援とは何か](/column/shurou-sentaku-shien/) … 制度の全体像 同じ通知は、**趣旨が理解されていない**事例を2つ挙げています。1つは、B型の利用を前提とした形式的なアセスメントが行われている事例です。もう1つが、アセスメントを実施したのに結果が利用する事業所に引き継がれていない事例です。受け入れ側から見れば、アセスメント結果を受け取ることが前提です。受け取らないまま利用が始まる状態は、**行政が問題視している形**だということになります。 ## 一般就労をしながらB型を使う3つの型 ④の在職者の一時利用は**見落とされやすい類型**です。通知は次の3つを挙げています。 | 型 | 対象になる状況 | 期間の扱い | | --- | --- | --- | | 労働時間延長支援型 | 概ね週10時間以上20時間未満から段階的に労働時間の延長を図る場合 | 支給決定期間は1か月から6か月。原則3か月から6か月以内、延長は合計1年まで | | 復職支援型 | 休職からの復職を目指す場合で、雇用する企業、地域の就労支援機関や医療機関等による復職支援が見込めない、または困難な場合 | 支給決定期間は1か月から6か月。企業の定める休職期間の終了まで(上限2年) | | 就労継続支援短時間型 | 所定労働時間が概ね週10時間未満を目安に、非常勤のような形態で一般就労している場合 | 特段の定めなし | 短時間型は、フリーランスや個人事業主といった雇用以外の形態で就労している人も対象になり得ます。同様に通常の事業所に雇用されることが困難な障害者と認められるためです。日中活動サービスを受ける必要があると市町村が認めれば、支給決定できるとされています。地域の就労支援機関や特別支援学校からの相談で、この型を知らないまま断ってしまう場面が起こりやすいところです。 経営面では一点だけ注意が必要です。基本報酬の区分に使う前年度の平均工賃月額の算出では、在職者の一時利用にあたる利用者を除きます。工賃支払総額からも、分母の開所日1日当たりの平均利用者数からも外れるため、受け入れても**平均工賃月額の区分は動きません**。報酬の構造は[B型の収支構造](/column/b-gata-shushi-kouzou/)で扱っています。 ## 事業所は受け入れを断れるのか ここが誤解されやすい部分です。指定障害福祉サービス基準第11条は、正当な理由がなく指定サービスの提供を拒んではならないと定めています。第202条によって就労継続支援B型に準用されます。障害が重いから、工賃が上がらなさそうだからという理由で断ることは**想定されていません**。 断ることができるのは、第13条が定める場面です。通常の事業の実施地域等を勘案して、自ら適切な支援を提供することが困難であると認めた場合です。そのときは、適当な他の事業者等の紹介その他の必要な措置を速やかに講じなければならない、という構造になっています。つまり事業所に求められているのは、受け入れるか断るかの二択ではありません。自事業所の体制で必要な支援が提供できるかを判断し、できないなら**次の行き先まで用意する**ことです。 ## 見学・相談の場で確認しておく事項 同じ省令が、提供開始前に事業所がやるべきことも定めています。第9条は運営規程の概要や従業者の勤務体制などの重要事項を記した文書を交付して説明し、同意を得ることを求めています。第14条は、受給者証によって支給決定の有無、有効期間、支給量を確かめることを求めています。第16条は、利用者の心身の状況や置かれている環境、他の保健医療サービス・福祉サービスの利用状況の把握に努めることを求めています。これらはいずれも第202条でB型に準用されます。 相談を受けた段階で確認する順番を決めておくと、支給決定の手続きで手戻りが出にくくなります。最初に見るのは受給者証で、支給決定の有無と有効期間、支給量の3点です。まだ支給決定を受けていない場合は、本人の意向を踏まえて速やかに申請が行われるよう援助する義務があります(第15条)。市町村の障害福祉担当課と相談支援事業所につなぐところまでを、一連の流れとして手順に書いておくと抜けません。 次に、就労選択支援または就労アセスメントを経ているかどうかを確かめます。経ている場合は結果を引き継いでもらうよう相談支援専門員に依頼しておくと、個別支援計画の原案づくりを早く始められます。①②の類型に当たると本人が話していても、該当するかどうかを判断するのは支給決定を行う市町村です。事業所側で結論を出さずに確認を回すほうが安全です。 通所できる時間帯と日数も、相談の場で聞いておくと後の設計が楽になります。4時間未満の利用が中心になる見込みなら、個別支援計画に一般就労等に向けた利用時間延長のための支援を位置付けます。実際に実施すれば、短時間利用減算の割合の算定から除かれます。この減算は事業所全体の所定単位数に効くので、受け入れてから慌てるより、相談の段階で計画の組み立てまで想定しておくほうが確実です。 医療的ケアや、重度の視覚・聴覚・言語機能障害、高次脳機能障害への支援が必要な場合があります。そのときは、自事業所が該当する加算の体制要件を満たしているかどうかを、先に確かめておく必要があります。満たしていないなら、第13条に沿って地域の他事業所を紹介できるようにします。近隣の事業所を書き出した一覧を用意しておくと、相談の場で案内に困りません。 ## 「どんな人が使うか」は事業所ごとに違ってよい 令和6年度の平均工賃月額は全国で24,141円(1月あたり)でした。工賃を軸に生産活動を組み立てている事業所があります。体調の安定や生活リズムの立て直しを軸にしている事業所もあります。同じB型でも、提供している支援の中身が違います。制度が対象者を4類型としか定めていないのには理由があります。その差を制度側で埋めるのではなく、事業所ごとの支援内容と本人の希望を突き合わせて決める設計だからです。 受け入れの判断で見るべきなのは、**本人の障害の重さではありません**。自事業所の人員体制と作業内容、通所時間の設定が、本人の希望と必要な配慮に合うかどうかです。合わないと判断したときに他の事業所を紹介できるだけの地域の情報を持っておくことが、結果として自事業所への紹介経路を太くします。 なお、支給決定の運用や必要書類は市町村ごとに幅があります。個別の判断は、事業所の所在地を管轄する市町村の障害福祉担当課と指定権者に確認してください。 ### よくある質問 Q. 50歳未満でも、就労選択支援を受けずにB型を利用できますか? A. 条件に当たれば利用できます。企業等や就労継続支援A型での就労経験があり、年齢や体力の面で雇用されることが困難となった人は、就労選択支援を経ずにB型を利用できます。障害基礎年金1級の受給者も、年齢にかかわらず就労選択支援を経ずに利用できます。これらに当たらない人でも、例外が2つあります。1つは、最も近い就労選択支援事業所であっても通所することが困難である等で、近隣に事業所がない場合です。もう1つは、利用可能な事業所数が少なく、就労選択支援を受けるまでに待機期間が生じる場合です。この2つでは、就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経たB型利用が認められています(障障発0331第3号 1の(2))。留意事項通知 障障発0331第2号 1の(3)②ア(ア)は、同じ例外を「近隣に就労選択支援事業所がない場合」と短く記しています。 Q. 一般企業で働きながらB型を利用することはできますか? A. 3つの類型に限ってできます。厚生労働省の通知が挙げているのは次の3つです。通常の事業所に雇用された後に労働時間を延長しようとする場合(労働時間延長支援型)です。休職からの復職を目指す場合(復職支援型)です。所定労働時間が概ね週10時間未満であることを目安として一般就労へ移行した場合(就労継続支援短時間型)です。短時間型は、フリーランスや個人事業主として就労している人も対象になり得ます。市町村が日中活動サービスを受ける必要があると認めれば支給決定でき、利用期間に特段の定めはありません。 Q. 事業所は、見学や相談に来た人の受け入れを断ることができますか? A. 正当な理由がなければ断れません。指定障害福祉サービス基準第11条は、正当な理由なくサービスの提供を拒んではならないと定めています。第202条により就労継続支援B型に準用されます。断れるのは、通常の事業の実施地域等を勘案して、自ら適切な支援を提供することが困難であると認めた場合です。そのときは第13条により、適当な他の事業者等の紹介その他の必要な措置を速やかに講じる義務があります。 Q. 短時間しか通えない人を受け入れると、報酬は下がりますか? A. 事業所全体の割合によります。利用時間が4時間未満の利用者等の割合が事業所の利用者全体の100分の50以上になると、所定単位数の100分の70に減算されます。ただし、割合の算定から除かれる利用者がいます(留意事項通知 第2の3の⑸の②の㈣)。送迎に長時間を要する利用者と、やむを得ない理由がある利用者です。個別支援計画に一般就労等に向けた利用時間延長のための支援が位置付けられ、実際に支援を実施した利用者も除かれます。 Q. 就労選択支援のアセスメント結果は、受け入れる事業所に引き継がれますか? A. 引き継がれることが前提です。厚生労働省の通知は、結果が利用する事業所に引き継がれていない事例を問題視しています。アセスメントを実施したにもかかわらず引き継がれない状態を、趣旨が理解されていない取扱いとして具体的に挙げています。アセスメントは、一般就労への移行の希望や可能性も視野に入れて本人のニーズを把握するために行うものとされています。そのため受け入れ側は、結果を受け取り、個別支援計画に反映させる前提で相談を受けることになります。 Q. 在職中の人を受け入れると、平均工賃月額の計算はどうなりますか? A. 計算から除きます。基本報酬の区分に用いる前年度の平均工賃月額の算出では、除く利用者があると留意事項通知が定めています。通常の事業所に雇用されている利用者であって、当該事業所での就労に必要な知識及び能力の向上のための支援を一時的に受けるものです。工賃支払総額にも、開所日1日当たりの平均利用者数にも算入しないという整理です。 ### 根拠資料 - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(平成18年厚生労働省令第19号)第6条の9の2・第6条の10」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100019(2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第11条・第13条・第14条・第16条・第202条」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「就労系障害福祉サービスの概要(事業所数・利用者数は国保連令和8年3月実績)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001737834.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について(平成19年4月2日障障発第0402001号/最終改正 令和7年3月31日障障発0331第2号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001473458.pdf(1の(3)②ア(ア)の就労アセスメントの例外を原典で確認・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「就労選択支援の実施について(令和7年3月31日障障発0331第3号 障害福祉課長通知)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001489151.pdf(1の(2)の対象者と例外の文言を原典で確認・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「「就労選択支援の実施について」の一部改正について(令和7年9月30日障障発0930第3号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001571813.pdf(改正後も1の(2)の文言に変更がないことを確認・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(平成18年10月31日障発第1031001号/最終改正 令和8年5月28日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について(令和8年3月修正版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001637154.pdf(2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 就労継続支援B型は儲かるのか 収入の上限を決める要素と 黒字化に必要な条件 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/b-gata-moukaru/ カテゴリー: 経営・収支 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 就労継続支援B型の収支差率は、令和6年度決算の全国平均で6.2%です(物価高騰対策関連補助金を含まない場合。令和5年度決算は6.0%)。障害福祉サービス全体の単純平均4.6%より高く、事業として成立する水準ではあります。ただし同じ調査で、収入に対する給与費の割合は68.1%です。収入の7割近くが人件費で消えるため、手元に残るのは1割に届きません。 収入の上限は事業を始める前におおむね決まります。基本報酬は1日につきの単位数で定められ、その単位数は利用定員の区分・人員配置・前年度の平均工賃月額の3要素で決まるからです(令和8年6月1日以降)。これに地域区分ごとの1単位の単価と、実際に通った延べ利用者数を掛けたものが報酬額です。稼働率と工賃が動かなければ、収入も動きません。 令和8年6月1日以降に新規指定を受けたB型事業所には、所定単位数の1000分の984という応急的な単価が適用されます。厚生労働省はこの改定について「過度な新規参入を抑制することも必要」と明言しています。2026年8月16日時点の情報です。 - 収支差率(B型・令和6年度決算): 6.2%(物価高騰対策関連補助金を含まない。令和5年度決算6.0%、全サービス単純平均4.6%) - 収入に対する給与費の割合(B型・令和6年度決算): 68.1%(令和5年度決算66.2%から2.0ポイント上昇。全サービス単純平均66.4%) - 基本報酬の決まり方(令和8年6月1日以降): 利用定員の区分・人員配置・前年度の平均工賃月額の3要素で1日につきの単位数が決まる - 1単位の単価(就労継続支援): 10円に地域区分別の割合を乗じた額。その他地域10.00円、1級地11.14円 - 令和6年度の全国平均工賃月額: 24,141円/月(集計18,245か所。令和8年3月修正版) - 令和8年6月1日以降の新規指定事業所: 所定単位数の1000分の984(各種加算前の所定単位数に乗じる。令和9年度報酬改定までの間) 根拠: 厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果の概要」 ### 本文 ## 儲かるかどうかは、公表された収支差率で見るしかない 個々の事業所の決算は表に出ません。全体の水準を知る手がかりは、厚生労働省が報酬改定の基礎資料として実施している経営概況調査です。令和7年6月から7月にかけて令和5年度・令和6年度の決算を調べたもので、有効回答数は7,263施設・事業所(有効回答率50.5%)でした。物価高騰対策関連補助金を含まない場合の収支差率は次のとおりです。 | サービス | 令和5年度決算 | 令和6年度決算 | | --- | --- | --- | | 就労継続支援B型 | 6.0% | 6.2% | | 就労継続支援A型 | 6.6% | 6.8% | | 就労移行支援 | 8.2% | 6.0% | | 全サービス(単純平均) | 5.0% | 4.6% | | 全サービス(加重平均) | 6.7% | 6.5% | 全体平均より高く、前年度から微増している。この2点だけを見れば悪くない数字です。ただし収支差率は(収入額-支出額)÷収入額で、収入額には各種補助金収益や本部からの繰入金収益も含まれます。100万円の収入に対して残るのは6万円強で、1人の欠員や1件の減算で簡単に飛ぶ幅です。 ## 収入の上限は、開設前におおむね決まっている B型の報酬額は、おおまかに「1日につきの単位数 × 1単位の単価 × 延べ利用者数」です。このうち事業者が短期間で動かせるのは延べ利用者数だけです。 単位数は利用定員の区分(20人以下/21〜40人/41〜60人/61〜80人/81人以上)、人員配置、前年度の平均工賃月額という3つで決まります。令和8年6月1日以降、平均工賃月額に応じた報酬体系は就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)=6対1、(Ⅱ)=7.5対1、(Ⅲ)=10対1に分かれ、いずれも工賃向上計画の作成が算定要件です。前年度の実績で当年度の単位数が決まるため、今年の努力が効くのは翌年度になります。1単位の単価も動かせません。就労継続支援は10円に地域区分別の割合を乗じた額と告示で定められています。 | 地域区分 | 1級地 | 2級地 | 3級地 | 4級地 | 5級地 | 6級地 | 7級地 | その他 | | --- | --- | --- | --- | --- | --- | --- | --- | --- | | 就労継続支援の1単位の単価 | 11.14円 | 10.91円 | 10.86円 | 10.68円 | 10.57円 | 10.34円 | 10.17円 | 10.00円 | ## 公表単価から、収入だけを組み立ててみる 以下は特定の事業所の実績ではなく、公表単価から機械的に出した数字です。定員20人・人員配置6対1でB型サービス費(Ⅰ)を算定・その他地域・年間開所日数245日・1日平均利用者数17人(稼働率85%)とし、前年度の平均工賃月額は令和6年度の全国平均24,141円と置きます。この工賃月額は令和8年6月改定後の区分では「2万3千円以上2万5千円未満」に当たり、1日につき726単位です。 | 項目 | 計算 | 金額 | | --- | --- | --- | | 1人1日あたりの基本報酬 | 726単位 × 10.00円 | 7,260円 | | 年間の延べ利用者数 | 17人 × 245日 | 4,165人日 | | 年間の基本報酬 | 7,260円 × 4,165人日 | 約3,024万円 | 基本報酬だけの金額で、加算も生産活動の収入も含みません。定員20人規模のB型が公定価格から得る基本部分は年3,000万円前後の世界で、努力で数倍になる売上ではないということです。稼働率が85%から75%に落ちれば延べ利用者数は3,675人日、年間の基本報酬は約2,668万円まで下がります。稼働率10ポイントの低下が350万円を超える減収になる計算です。処遇改善加算を乗せれば総額は増えますが、受け取った額は職員の賃金改善に充てるものなので利益にはなりません([令和8年度の処遇改善加算](/column/shogu-kaizen-kasan-r8/))。 ## 費用の側は、ほとんどが人件費で固まっている 同じ調査で、B型の収入に対する給与費の割合は令和5年度決算66.2%、令和6年度決算68.1%です。1年で2.0ポイント上がり、全サービスの単純平均66.4%より高い水準にあります。収支差率が6.2%あっても、その裏で7割近くが人件費に固定されている構造です。 しかもこの人件費は、報酬を上げようとすると増える側にあります。指定基準省令が求める職業指導員及び生活支援員の最低ラインは常勤換算で利用者の数を10で除した数以上、つまり10対1です。ところが報酬区分(Ⅰ)を算定するには従業者の員数が利用者の数を6で除した数以上でなければなりません。単位数の高い区分を取りにいくことは、最低基準のおよそ1.7倍の職員を抱えることを意味します。収入は延べ利用者数に比例して動き、費用の7割は動かない。損益分岐は「何人が何日通えば人件費と固定費を回収できるか」で置くことになり、平均工賃月額の区分は1人1日あたりの単価を上下させる係数にすぎません。費目ごとの内訳は[B型の収支構造](/column/b-gata-shushi-kouzou/)、配置と採用の実務は[支援員の採用](/column/b-gata-shienin-saiyou/)で扱います。 稼働率は減算の判定式と同じ分母で毎月出しておくと二度手間になりません。定員超過利用減算は直近3か月の延べ利用者数が利用定員×開所日数×125/100を超えたかで判定されるので、月次で「延べ利用者数 ÷(利用定員 × 開所日数)」を記録しておけば、収支の管理と減算の予防を同じ数字で兼ねられます。あわせて、利用時間が4時間未満の利用者等の割合も同じ月次の表に入れておくと安心です。これが利用者全体の50/100以上になると短時間利用減算で所定単位数が70/100になるためで、送迎のみを実施する時間はこの利用時間に含まれません。 ## 工賃を上げれば区分は上がるが、原資は給付費ではない 報酬区分を押し上げる唯一の要素が平均工賃月額です。ただし工賃の出どころは限られています。指定基準省令第201条第1項は、工賃を生産活動に係る事業の収入から必要経費を控除した額に相当する金額から支払うと定めています。給付費から工賃を補填する運営について、厚生労働省は令和7年11月28日のガイドラインの鑑文で、そうした不適切な運営を行っている事業所があると指摘されている旨を明記しました。工賃を上げるには生産活動そのものを伸ばすほかなく、作業種目の選び方が収支に直結します([B型の作業種目](/column/b-gata-sagyou-shumoku/))。 同条第2項は、1月あたりの工賃の平均額が3,000円を下回ってはならないとしています。厚生労働省の留意事項通知は、この基準を満たしていない事業所に対して重点的に指導監査を実施すること、指導後も改善の見込みがない場合には地域活動支援センターへの移行や法に基づいた勧告、命令等の措置を講ずることを、都道府県等に求めています。監査に入るかどうかを決めるのは指定権者ですが、3,000円を割ったまま放置できる基準ではありません。 なお令和6年度の全国平均工賃月額は24,141円、令和5年度は22,649円です(いずれも令和8年3月修正版)。令和5年度から跳ね上がって見えるのは令和6年度改定で算定式の分母が変わったためで、それ以前の年度と単純には比較できません。 ## 令和8年6月から、新規開設の前提が変わった 令和8年度報酬改定は臨時応急的な改定で、B型では2つのことが起きました。第一に、令和6年度改定で算定方式が変わり平均工賃月額が約6千円上昇したことへの対応として、基本報酬区分の基準額が1月あたり3千円ずつ引き上げられました。ただし令和6年度改定の前後で区分が上がっていない事業所は対象外で従前の区分が適用され、区分が下がる事業所には中間的な区分が新設されています。令和8年6月以降のB型の区分は事業所ごとに3系統に分かれ、どれに当たるかは事業者の自己申告によります。区分表を1つだけ見て判断すると間違えます。 第二に、令和8年6月1日以降に新規指定を受けた事業所には所定単位数の1000分の984が適用されます。これは各種加算がなされる前の所定単位数に乗じるもので、加算を含めた合計に乗じるものではありません。適用は令和9年度報酬改定までの間です。離島・中山間地域に主たる事業所がある場合、都道府県の公募によりサービスが不足する地域に設置された場合、自治体から開設時の経済的支援を得た場合は適用されませんが、運営への補助や人材確保のための補助はここに含まれません。 厚生労働省はQ&Aで、この改定が収支差率が高く事業所が急増しているサービス類型への対応であり「過度な新規参入を抑制することも必要」と述べ、指定権者には過剰な兼任等が疑われる場合の現地調査等を求めています。数字の上で成立する事業ではありますが、行政の姿勢は引き締めの方向です。事業類型の選択は[A型とB型の違い](/column/b-gata-a-gata-chigai/)にまとめています。 ### よくある質問 Q. 就労継続支援B型は儲かりますか? A. 令和6年度決算の全国平均では、収支差率6.2%です。障害福祉サービス全体の単純平均4.6%よりは高いものの、収入の68.1%が給与費に充てられており、大きな利益が出る事業ではありません。同じ令和7年経営概況調査では就労継続支援A型6.8%、就労移行支援6.0%、生活介護6.3%で、B型が突出して高いわけでもありません。この数値は物価高騰対策関連補助金を含まない場合のもので、有効回答数7,263施設・事業所(有効回答率50.5%)の集計です。 Q. 報酬の金額は何で決まりますか? A. 利用定員の区分・人員配置・前年度の平均工賃月額の3要素で1日につきの単位数が決まり、それに地域区分別の1単位の単価と延べ利用者数を掛けます。令和8年6月1日以降、平均工賃月額に応じた報酬体系は就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)=6対1、(Ⅱ)=7.5対1、(Ⅲ)=10対1に分かれ、いずれも工賃向上計画の作成が算定要件です。定員20人以下・6対1・平均工賃月額2万3千円以上2万5千円未満なら1日につき726単位で、その他地域なら1人1日あたり7,260円になります。 Q. 平均工賃月額を上げれば報酬区分が上がって収支は改善しますか? A. 区分は上がりますが、工賃の原資は生産活動の収入なので自動的に収支が改善するわけではありません。指定基準省令第201条第1項は、工賃を生産活動に係る事業の収入から必要経費を控除した額に相当する金額から支払うと定めています。給付費から工賃を補填する運営は不適切とされ、厚生労働省は令和7年11月28日のガイドラインで、そうした事業所があると指摘されている旨を明記しています。加えて令和8年6月から区分の基準額が1月あたり3千円ずつ引き上げられたため、同じ工賃実績でも従来より上の区分に届きにくくなっています。 Q. 稼働率が下がるとどのくらい響きますか? A. 基本報酬は1日につきの単位数なので、延べ利用者数に比例してそのまま減ります。一方で人件費は利用者が来なくても発生する固定費で、収入の68.1%を占めます。さらに直近3か月の延べ利用者数が利用定員×開所日数×125/100を超えると定員超過利用減算で所定単位数が70/100になり、利用時間が4時間未満の利用者等の割合が利用者全体の50/100以上になると短時間利用減算でやはり70/100になります。稼働率は上にも下にも収支を動かします。 Q. これから新規開設しても採算は取れますか? A. 令和8年6月1日以降に新規指定を受けた場合、所定単位数の1000分の984が適用されるため、既存事業所より不利な条件から始まります。ただし離島・中山間地域に主たる事業所がある場合、都道府県の公募によりサービスが不足する地域に設置された場合、自治体から開設時の経済的支援を受けた場合は適用されません。適用期間は令和9年度報酬改定までの間です。厚生労働省はQ&Aで「過度な新規参入を抑制することも必要」としており、指定権者には人員配置の実態確認を求めています。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果の概要(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム第48回 資料4/令和8年1月9日差し替え)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001599113.pdf(収支差率・給与費割合を原典の表で確認・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム・令和8年2月18日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf(2026年08月16日確認) - こども家庭庁・厚生労働省「こども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定める一単位の単価並びに厚生労働大臣が定める一単位の単価(平成18年厚生労働省告示第539号/最終改正 令和7年3月31日こども家庭庁・厚生労働省告示第4号)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8493&dataType=0&pageNo=1(厚生労働省法令等データベースで告示本文を確認・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(障発第1031001号/最終改正 令和8年5月28日こ支障第148号・障発0528第1号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1(令和8年3月31日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001683290.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について(令和8年3月修正版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001637154.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(e-Gov法令検索・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドラインについて(障障発1128第1号・令和7年11月28日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001669924.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について(平成19年4月2日障障発第0402001号/最終改正 令和7年3月31日障障発0331第2号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001473458.pdf(1の(3)①ア「工賃の支払い等について」の本文を原典で確認・2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 就労継続支援B型の仕事内容は どう選ぶかで工賃も 利用者の集まりも変わる URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/b-gata-sagyou-shumoku/ カテゴリー: 利用者獲得 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 就労継続支援B型の仕事内容は、法令で種目が限定されているわけではありません。ただし厚生労働省は令和7年11月28日付けの障障発1128第1号で、公費による就労支援の生産活動として適さない可能性がある活動を具体的に例示し、指定権者に6つの観点で内容を確認するよう求めています。2026年8月16日時点の情報です。 種目の選定が経営判断になるのは、工賃の原資が生産活動の収入に限られているからです。指定基準省令第201条第1項は、生産活動に係る事業の収入から必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払うと定めており、第202条で準用する第192条第6項は、その支払いに要する額を原則として自立支援給付をもって充ててはならないとしています。売れない作業を選べば、そのまま工賃が出せません。 前年度の平均工賃月額は令和8年6月1日以降の基本報酬区分を決める要素でもあるため、種目の選択は翌年度の報酬にも効きます。一方で、どの種目の工賃が高いかを示す国の公表データは存在しません。令和6年度の工賃実績で公表されているのは全国・都道府県別の平均工賃月額までで、種目別の内訳はありません。 - 生産活動の適切性を見る6つの観点(令和7年11月28日 障障発1128第1号): 具体的な生産活動の場面があるか/当該生産活動により一般就労に必要な能力向上が見込まれるか/それにより安定した生産活動収入を得ることができるか/地域の中に当該生産活動により習得した能力が活かされる労働市場や求人があるか/生産活動の収益が適当か/業務委託費が妥当か - 適さない可能性があると例示された活動: eスポーツ、植物の水やりを1日数回行うだけの活動、卓球教室や麻雀教室での手伝いに相当するような活動、所定の場所に居ればよいというような活動 - 工賃の原資: 生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額。支払いに要する額は原則として自立支援給付をもって充ててはならない(指定基準省令第201条第1項、第202条で準用する第192条第6項) - 工賃の下限: 利用者それぞれに支払われる1月当たりの工賃の平均額は3,000円を下回ってはならない(同第201条第2項) - 取引先についての確認事項: 複数の生産活動、取引先を確保しているか。単一の取引先の場合は十分な量の生産活動を確保しているか - 令和6年度の全国平均工賃月額(B型): 24,141円/月(集計18,245か所。令和8年3月修正版。種目別の内訳は公表されていない) 根拠: 厚生労働省「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドラインについて」(障障発1128第1号・令和7年11月28日) ### 本文 ## 仕事内容の議論は、工賃をどこから出すかから始まる B型の仕事内容を「利用者に何をしてもらうか」から考えると、経営判断としては順序が逆になります。先に決まっているのは、工賃の出どころのほうです。 指定基準省令第201条第1項は、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払うと定めています。第202条が準用する第192条第6項は、その支払いに要する額を原則として自立支援給付をもって充ててはならないとしています。給付費で工賃を埋める運営はできない、という前提です。そのうえで第201条第2項が、利用者それぞれに支払われる1月当たりの工賃の平均額は3,000円を下回ってはならないと定めています。この基準を満たさない事業所に対しては、留意事項通知(障障発0331第2号)が重点的な指導監査の実施を指定権者に求めています。 厚生労働省は令和7年11月28日の通知の鑑文で、B型について「自立支援給付費から利用者への工賃を補填するなど、不適切な運営を行っている事業所があると指摘されている」と明記しました。仕事内容の選び方は、この指摘の当否がそのまま問われる場所です。 ## 国が示した6つの観点と、名指しされた活動 同じ通知の別紙は、指定権者が新規指定の審査で生産活動の適切性を確認する観点を具体的に列挙しています。既存事業所についても、運営指導で公費による就労支援の生産活動として適切な内容になっているかが確認されるため、種目を追加するときの自己点検にそのまま使えます。 | 確認の観点 | 何を見ているか | | --- | --- | | 具体的な生産活動の場面があるか | 作業として成立しているか | | 一般就労に必要な能力向上が見込まれるか | 訓練としての中身 | | それにより安定した生産活動収入を得ることができるか | 工賃の原資 | | 地域の中に習得した能力が活かされる労働市場や求人があるか | 出口との接続 | | 生産活動の収益が適当か(収入が支出と合っているか) | 採算 | | 業務委託費が妥当か(取引価格や単価が過大又は過小に設定されていないか) | 単価の妥当性 | そのうえで、公費による就労支援の生産活動として適さない可能性がある活動として、eスポーツ、植物の水やりを1日数回行うだけの活動、卓球教室や麻雀教室での手伝いに相当するような活動、所定の場所に居ればよいというような活動が例示されました。共通しているのは、収入が立たないことと、地域の求人につながらないことです。 ## 実際に選ばれている種目は、清掃と軽作業に寄っている 令和6年度障害者総合福祉推進事業の調査で、B型事業所に「収入(売上高)上位3つ」を尋ねた結果が公表されています。配布17,295件に対し回収5,243件(回収率30.3%)で、延べ13,398件の回答です。上位は次のとおりでした。 | 生産活動の種類 | 件数(上位3つの合計) | | --- | --- | | 清掃(公園、公共施設、企業、集合住宅等) | 1,358 | | 袋詰め | 1,119 | | 雑貨類(陶芸、和紙、木工、織物、藍染、革製品、ビーズ、縫製等) | 946 | | 組立 | 879 | | 箱折 | 586 | | 洋菓子系(焼き菓子、チョコ等) | 569 | | 農業(野菜・果物) | 563 | | ラベル・シール貼り | 542 | | 部品加工 | 495 | | リサイクル | 419 | 施設外就労を行っている事業所は1,954件(37.8%)で、その内訳は清掃が1,183件と突出し、農作業手伝い267件、植栽管理・環境整備176件が続きます。清掃が多いのは、設備投資が小さく、施設外就労として組み立てやすいためだと読めます。ただしこれは選ばれている数であって、儲かっている数ではありません。国が公表している工賃実績には種目別の内訳がなく、種目名から収益性を判断できる公的データは確認できませんでした。 ## 受注型と自主製品型で、抱えるリスクの種類が変わる 清掃や組立のように取引先から仕事を受ける形は、販路を持たなくてよい代わりに、単価と受注量の決定権が相手側にあります。だからこそガイドラインは、収支予算書の審査事項として「複数の生産活動、取引先を確保しているか」「単一の取引先の場合は、十分な量の生産活動を確保しているか」を挙げています。取引先が関係会社等の場合に取引価格の妥当性を確認する記述もあり、身内からの受注で売上を作る構図は真っ先に疑われます。 菓子や雑貨のような自主製品型は、単価を自分で決められる代わりに、販路と在庫のリスクを事業所が丸ごと抱えます。需要側の公的な仕組みとして働くのが、国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律(平成24年法律第50号)です。同法第9条は都道府県・市町村・地方独立行政法人に、毎年度の調達方針の作成と公表、年度終了後の調達実績の概要の公表を求めています。自治体が公表している調達方針は、自事業所の製品や役務が入る余地を確認できる一次情報です。 ## 利用者の適性を、減算と加算の境目で見直す 種目は工賃だけでなく、誰が通えるかも決めます。1日4時間以上の作業を前提に組み立てた種目は、体力や体調の面でそこまで通えない人を最初から外すことになります。この線引きは報酬にも直結していて、利用時間が4時間未満の利用者等の割合が利用者全体の100分の50以上になると、短時間利用減算で所定単位数が70/100になります。送迎のみを実施する時間はこの利用時間に含まれません。 逆に、重い障害のある利用者を受け入れる方向で工程を設計する道もあります。障害基礎年金1級受給者が利用者の100分の50以上で重度者支援体制加算(Ⅰ)を算定している場合、報酬算定に使う平均工賃月額に2,000円(1月あたり)を加えた額を用いることができます。どの層に来てほしいかという[利用者像の設計](/column/b-gata-donna-hito/)と、どの作業を置くかは同じ判断です。 ## 効いてくるのは翌年度からになる 種目を入れ替えて工賃が上がっても、報酬にはすぐ反映されません。基本報酬の区分は前年度の平均工賃月額で決まり、その算定式は「年間工賃支払総額 ÷(年間延べ利用者数 ÷ 年間開所日数)÷ 12月」です。分母が開所日1日当たりの平均利用者数なので、稼働率が低いまま工賃総額だけ増やしても数字は伸びますが、稼働率が上がると同じ工賃総額では区分が下がる関係にあります。区分の届出は原則として毎年度4月で、令和8年度は改めて6月にも届出を行います。この構造は[B型の収支構造](/column/b-gata-shushi-kouzou/)と合わせて見ないと判断を誤ります。 新しい種目を入れる前に確認する順番は、通知と様式から逆算できます。まず作業1件あたりの受注単価と職員が張り付く時間から、支援者人時売上(支援者が1人で1時間作業したとして得られる金額)を出し、次に生産活動収支を工賃総額で割った賃金・工賃カバー率を試算する順番です。生産活動シートの解説資料は、この比率が100%以上なら良好、80%未満はかなり足りない、という目安を示しています。100%を割る種目は、続ければ給付費からの補填に近づきます。そのうえで、施設外就労として行うなら運営規程への位置づけと個別支援計画への事前の位置付け、職員の同行、実施時の事業所内人員配置、緊急時対応まで先に固めておく必要があります。 ### よくある質問 Q. 就労継続支援B型で提供してはいけない仕事内容はありますか? A. 種目そのものを禁じる規定はありませんが、公費による就労支援の生産活動として適さない可能性がある活動が国から例示されています。令和7年11月28日の障障発1128第1号は、eスポーツ、植物の水やりを1日数回行うだけの活動、卓球教室や麻雀教室での手伝いに相当するような活動、所定の場所に居ればよいというような活動を挙げ、指定権者に事業計画書等の審査でその詳細を確認するよう求めています。判断の観点として示されているのは、具体的な生産活動の場面があるか、当該生産活動により一般就労に必要な能力向上が見込まれるか、それにより安定した生産活動収入を得ることができるか、地域の中にその能力が活かされる労働市場や求人があるか、生産活動の収益が適当か、業務委託費が妥当かの6つです。 Q. どの作業種目がいちばん工賃が高いですか? A. 国の公表資料では種目別の工賃実績が示されておらず、特定できません。厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」(令和8年3月修正版)が公表しているのは全国と都道府県別の平均工賃月額までで、令和6年度のB型全国平均は24,141円/月(集計18,245か所)です。種目ごとの平均は含まれていません。高賃金・高工賃を支払える生産活動を確保していないのに高工賃の支払いを確約すると誤解を与える募集は、指定権者が不適切と見る対象でもあります。種目名で収益性を判断せず、自事業所が受注できる単価と作業時間から試算する必要があります。 Q. 作業は1種類に絞ってもよいですか? A. 絞ること自体を禁じる規定はありませんが、指定権者は複数の生産活動と複数の取引先を確保しているかを確認します。令和7年11月28日のガイドラインは、収支予算書の審査で確認する事項として「複数の生産活動、取引先を確保しているか」「単一の取引先の場合は、十分な量の生産活動を確保しているか」を挙げています。同じ推進事業で作成された生産活動シートの解説資料も、活動内容が1つに大きく依存している場合は、それが何らかの理由で継続できなくなったときのリスクを考えると複数の活動で賄っている状態が望ましいとしています。 Q. 施設外就労で仕事を受ける場合、何が必要ですか? A. 報酬算定に係る6つの要件をすべて満たす必要があります。管理者及びサービス管理責任者が本体施設に配置されていること、運営規程に位置づけられていること、個別支援計画に事前に位置付けられていること、職員が施設外就労先に必ず同行し利用者に対して作業等の指導を行っていること、施設外就労実施時における当該事業所内の人員配置が基準を満たしていること、緊急時の対応ができることの6つです。請負契約の相手が特定の法人である場合は、契約事項や金額が内部間の取引価格として過大または過小に設定されていないかも確認の対象になります。 Q. 仕事内容を変えたら報酬はいつ変わりますか? A. 早くても翌年度です。基本報酬の区分は前年度の平均工賃月額で決まり、その届出は原則として毎年度4月に行います(令和8年度は改めて6月にも届出を行います)。平均工賃月額は「年間工賃支払総額 ÷(年間延べ利用者数 ÷ 年間開所日数)÷ 12月」で算定します。新規指定の事業所は初年度の1年間、平均工賃月額が1万円未満とみなして基本報酬を算定します(年度途中の指定は初年度及び2年度目の1年間。ただし支援提供開始から6月経過した月から当該年度3月までは、開始からの6月間の平均工賃月額に応じて算定できます)。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドラインについて(障障発1128第1号・令和7年11月28日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001669924.pdf(生産活動の適切性の観点と不適切例を原文で確認・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「生産活動シート 記入方法と確認点(解説資料)(令和6年度障害者総合福祉推進事業)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001600441.pdf(賃金・工賃カバー率と支援者人時売上の考え方を確認・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「自治体における就労継続支援事業所の要件確認、就労継続支援の報酬体系及び一般就労中の障害者の休職期間中における就労系障害福祉サービス等の実態に関する調査研究(令和6年度障害者総合福祉推進事業・株式会社インサイト)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001600447.pdf(B型5,243事業所の生産活動の種類の集計を確認・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(第201条・第202条の準用規定をe-Gov法令検索の条文で確認・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について(令和8年3月修正版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001637154.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(障発第1031001号/最終改正 令和8年5月28日こ支障第148号・障発0528第1号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(平均工賃月額の算定方法・短時間利用減算を確認・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について(障障発0331第2号・令和7年3月31日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001473458.pdf(工賃実績報告と工賃向上計画支援等事業の記載を確認・2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律(平成24年法律第50号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/424AC1000000050(第3条・第9条の条文を確認・2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 就労継続支援B型の支援員採用 求める要件の決め方と 募集要項で伝えること URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/b-gata-shienin-saiyou/ カテゴリー: 現場・人材 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 2026年8月時点で、就労継続支援B型の職業指導員と生活支援員に、国の基準による資格要件はありません。国の指定基準省令(平成18年厚生労働省令第171号)が定めていないためです。第199条が準用する第186条にあるのは員数の定めだけです。職業指導員と生活支援員の総数は、常勤換算方法で利用者の数を10で除した数以上とされています。利用者の数は前年度の平均値です。職業指導員1以上、生活支援員1以上を置き、うちいずれか1人以上は常勤とします。 したがって採用で先に決まるのは、資格ではなく人数です。その人数は人員基準の10対1ではなく、算定する基本報酬の区分から逆算します。就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅳ)は6対1です。(Ⅱ)(Ⅴ)は7.5対1、(Ⅲ)(Ⅵ)は10対1です。 全国の実態は、人員基準の下限より手厚い側にあります。令和6年社会福祉施設等調査は、令和6年10月1日現在の配置を示しています。B型の職業指導員は常勤換算36,680人、生活支援員は33,791人でした。同年9月中の利用実人員502,992人に対して、およそ7人に1人の配置です。 - 人員基準(省令第186条・第199条で準用): 職業指導員と生活支援員の総数は常勤換算方法で利用者の数を10で除した数以上。職業指導員1以上、生活支援員1以上。うちいずれか1人以上は常勤。利用者の数は前年度の平均値(新規指定は推定数) - 資格要件: 国の省令には定めがない。職業指導員・生活支援員に必須の資格はない。ただし指定基準は都道府県等の条例で定めるため、上乗せの有無は指定権者に確認する - 実際に必要な人数: 算定する報酬区分で決まる。B型サービス費(Ⅰ)(Ⅳ)=6対1、(Ⅱ)(Ⅴ)=7.5対1、(Ⅲ)(Ⅵ)=10対1。(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)は工賃向上計画の作成も要件(令和8年6月1日以降) - 有資格者を採った場合: 福祉専門職員配置等加算。直接処遇職員として常勤配置されている従業者のうち社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士・公認心理師が100分の35以上で1日につき15単位、100分の25以上で10単位 - 未経験者・無資格者を常勤で採った場合: 福祉専門職員配置等加算(Ⅲ)=1日につき6単位。直接処遇職員(常勤換算)のうち常勤の割合が100分の75以上、または常勤の直接処遇職員のうち勤続3年以上が100分の30以上のいずれかで算定する - 欠員が出たとき: 職業指導員・生活支援員が必要員数から1割を超えて減少すると翌月から、1割の範囲内なら翌々月から、所定単位数の100分の70(3月以上連続で100分の50)。1割の範囲内の減少は翌月末日までに満たせば減算されない - 全国の配置実態: 職業指導員36,680人・生活支援員33,791人(常勤換算、令和6年10月1日現在)、B型事業所17,973か所、9月中の利用実人員502,992人 根拠: 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」 ### 本文 ## 資格要件は国の基準にない。先に決まるのは人数 就労継続支援B型の人員基準は、指定基準省令の第199条にあります。この条は、就労継続支援A型の第186条を準用する形をとっています。その第186条第1項第1号が求めているのは3点です。 - 職業指導員と生活支援員の総数を、常勤換算方法で利用者の数を10で除した数以上とすること - 職業指導員を1以上置くこと - 生活支援員を1以上置くこと どちらの職種についても、**保有資格や実務経験年数の定め**は条文に置かれていません。 制度が縛っているのは、**人数と常勤の置き方だけ**です。募集要項に「社会福祉士歓迎」と書くかどうかは、経営判断の領域に入ります。ここを取り違えて資格から要件を組み立てると、応募母数を自分で狭めることになります。 条文で押さえておくべき点は、もう2つあります。 - 職業指導員または生活支援員のうち、いずれか1人以上は常勤でなければならないこと(第186条第4項) - ここでいう利用者の数は、前年度の平均値であること(同条第2項) 利用者の数が推定数になるのは、新規指定の場合だけです。来年度の採用計画は、今年度の実績が固まった時点で輪郭が決まります。なお常勤換算方法は、省令第2条第16号に定義があります。勤務延べ時間数を、常勤の従業者が勤務すべき時間数で除して算出します。 ## 何人採るかは、算定する報酬区分から逆算する 10対1は**人員基準の下限**であって、経営上の目標ではありません。令和8年6月1日以降の基本報酬では、配置区分そのものが報酬区分になっています。就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅳ)が6対1です。(Ⅱ)(Ⅴ)が7.5対1、(Ⅲ)(Ⅵ)が10対1です。(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)は工賃向上計画の作成も要件です。前年度の平均利用者数から必要な常勤換算人数を出すと次のようになります。いずれも「以上」なので、端数が出る場合は上回るように組みます。 | 前年度の平均利用者数 | 10対1(Ⅲ・Ⅵ) | 7.5対1(Ⅱ・Ⅴ) | 6対1(Ⅰ・Ⅳ) | | --- | --- | --- | --- | | 15人 | 1.5 | 2.0 | 2.5 | | 20人 | 2.0 | 2.67 | 3.34 | | 30人 | 3.0 | 4.0 | 5.0 | | 40人 | 4.0 | 5.34 | 6.67 | 目標工賃達成指導員配置加算を取るなら、基準がもう一段上がります。留意事項通知は、条件を2つ重ねて定めています。 - B型サービス費(Ⅰ)または(Ⅳ)を算定する事業所で、目標工賃達成指導員を常勤換算1人以上配置すること - 目標工賃達成指導員・職業指導員・生活支援員の総数が、利用者の数を5で除した数以上であること 利用者20人なら、3職種の合計は4.0人以上が必要です。指導員を1人置けば算定できるという説明は**正確ではありません**。 全国の実態も下限より上にあります。令和6年社会福祉施設等調査によれば、令和6年10月1日現在のB型事業所は17,973か所です。職業指導員は常勤換算36,680人、生活支援員は33,791人でした。合計70,471人を同年9月中の利用実人員502,992人で割ると、およそ7人に1人です。これは標本調査の推計値で、事業所ごとの配置を示すものではありません。それでも、10対1ぎりぎりで運営している事業所は多数派ではないと読めます。 ## 未経験者を採るときに見るべきなのは、資格より常勤かどうか 未経験・無資格の採用が報酬上不利になるかというと、そうとは限りません。福祉専門職員配置等加算は3区分あり、(Ⅲ)だけは**資格ではなく体制で判定**します。 | 区分 | 要件 | 単位数 | | --- | --- | --- | | (Ⅰ) | 直接処遇職員として常勤で配置されている従業者の総数のうち、社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士・公認心理師が100分の35以上 | 1日につき15単位 | | (Ⅱ) | 同じく100分の25以上 | 1日につき10単位 | | (Ⅲ) | 次のいずれか。ア 直接処遇職員(常勤換算)のうち常勤の割合が100分の75以上/イ 常勤の直接処遇職員のうち3年以上従事している者が100分の30以上 | 1日につき6単位 | ここで効いてくるのが「常勤」の定義です。留意事項通知は「常勤で配置されている従業者」の意味を定めています。正規か非正規かは問いません。各事業所において定められる常勤の従業者が勤務すべき時間数に達していれば、常勤にあたります。雇用形態ではなく**勤務時間で判定する**ため、フルタイムのパート職員も常勤に数えられます。短時間勤務を細かく組み合わせても、常勤換算の数値は同じに揃えられます。それでも(Ⅲ)のアの要件からは遠ざかります。 (Ⅲ)のイの勤続年数には、当該事業所での年数以外も含められます。同一法人が経営する障害福祉サービス事業所や病院、社会福祉施設等での年数です。利用者に直接サービスを提供する職員として勤務した期間が対象で、非常勤の期間も通算できます。 ## 募集要項に書くべきこと、採用後に必ず発生すること 運営規程には、従業者の職種、員数および職務の内容を定めます。根拠は省令第89条第2号で、第202条により準用されます。事業所の見やすい場所には、運営規程の概要と従業者の勤務の体制を掲示する義務もあります(同第92条)。募集で示す職種名・人数・職務内容は、**届け出て掲示している内容と一致**させます。求人票と運営規程がずれている状態は、実地指導で説明を求められる余地を残します。 採用後に発生する研修も、義務として先に確定しています。B型は第202条により次の規定を準用します。 | 研修・訓練 | 根拠条文(第202条で準用) | 実施頻度 | | --- | --- | --- | | 虐待の防止のための研修 | 第40条の2第2号 | 定期的に実施 | | 身体拘束等の適正化のための研修 | 第35条の2第3項第3号 | 定期的に実施 | | 感染症・食中毒の予防及びまん延の防止のための研修および訓練 | 第90条第2項第3号 | 定期的に実施 | | 業務継続計画についての研修および訓練 | 第33条の2第2項 | 定期的に実施 | 未経験者を採る前提なら、この4つが**入職後すぐに走ります**。募集の段階で研修体制として示せる材料でもあります。 求人票を出す前に次の4つを確定させておくと、選考中に条件がぶれません。 - 現に算定している基本報酬の区分(6対1か7.5対1か10対1か) - 前年度の平均利用者数 - その2つから出る必要な常勤換算人数と、現在の充足状況 - 常勤要件をどの職員が担保しているか 省令は、職業指導員または生活支援員のうちいずれか1人以上を常勤と定めています。常勤が1人しかいない体制では、その1人の離職が即座に基準割れになります。 ## 欠員が出たときに何が起きるか 職業指導員と生活支援員は、人員欠如減算の対象職種として留意事項通知に明記されています。減算が始まる月は、減少の幅で分かれます。必要員数から1割を超えて減少した場合は、その翌月からです。1割の範囲内で減少した場合は、その翌々月からです。解消された月まで、利用者全員について所定単位数の100分の70になります。3月以上連続すると100分の50です。1割の範囲内の減少であれば、翌月の末日までに人員基準を満たせば減算されません。員数は足りていても**常勤や専従といった要件**を満たしていない場合も、同じく翌々月から減算されます。 令和8年5月28日改正の留意事項通知で、この扱いに猶予が新設されました。対象になるのは、突発的で想定が困難な事象によりやむを得ない事情が生じた場合です。減少が1割の範囲内であることも要ります。猶予は1年に1回で、欠如が生じた日の属する月の翌々月までの間です。要件は4つあり、すべてを満たす必要があります。代表的なものを挙げます。 - 公共職業安定所または福祉人材センター等の無料職業紹介事業を活用して、職員の確保に取り組んでいること - 民間の職業紹介事業者を使う場合は、適正認定事業者を含めること - 一部の職員に過度な業務負担が生じないよう、労働時間管理を行うこと 手続では、別紙様式に取組と事情を記載します。報告時点で有効な求人票の写しを添えて、翌月までに都道府県知事へ報告します。 読み方を裏返すと、**有効な求人票がない状態**で欠員が出れば、この猶予は使えません。厚生労働省は同じ通知で、やむを得ない事情が生じていない場合の求人にも触れています。公共職業安定所や無料職業紹介事業の活用が望ましい、というものです。この備えを常時持っておくことを促す趣旨と読めます。採用を空きが出てから動くものとせず、常時開いておく体制の一部として設計する理由がここにあります。 なお、サービス管理責任者の欠員は、減算の起算も期間も別扱いになります。関連する記事を挙げます。 - [サービス管理責任者が採れない](/column/sabikan-saiyou/) … サビ管の欠員の扱い - [B型の職員が抱えやすい悩み](/column/b-gata-shokuin-nayami/) … 採ったあとに人が抜けていく要因 - [B型の仕事がきついと言われる理由](/column/b-gata-shokuin-kitsui/) … 現場の負担の中身 ### よくある質問 Q. 就労継続支援B型の職業指導員や生活支援員に資格は必要ですか? A. 国の基準では必要ありません。指定基準省令第199条が準用する第186条第1項第1号にあるのは、員数の定めだけです。職業指導員と生活支援員の総数を、常勤換算方法で利用者の数を10で除した数以上とします。職業指導員と生活支援員は、それぞれ1以上を置きます。保有資格には触れていません。同じ事業所でも、サービス管理責任者は扱いが異なります。実務経験要件と研修要件の両方を満たす人でなければ配置できません。なお指定基準は、都道府県および指定都市・中核市の条例で定められます。独自の上乗せがないかは指定権者に確認してください。 Q. 支援員は何人採用すればいいですか? A. 実務上は、算定する報酬区分から逆算して決めます。人員基準の下限は、前年度の平均利用者数を10で除した数(常勤換算)です。ただし、これは経営上の目標ではありません。要件になるのは従業者の員数です。就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅳ)は、利用者の数を6で除した数以上です。(Ⅱ)(Ⅴ)は7.5で除した数以上、(Ⅲ)(Ⅵ)は10で除した数以上です。前年度の平均利用者数が20人なら、10対1で常勤換算2.0人以上が目安になります。7.5対1で2.67人以上、6対1で3.34人以上です。目標工賃達成指導員配置加算を算定するなら、基準はもう一段上がります。この加算はB型サービス費(Ⅰ)または(Ⅳ)の算定が前提です。目標工賃達成指導員を常勤換算1人以上置きます。さらに、目標工賃達成指導員・職業指導員・生活支援員の総数にも要件があります。この3職種の合計が、利用者の数を5で除した数以上であることです。 Q. 未経験者を採用しても報酬上の不利はありますか? A. 資格の有無より、常勤で採るかどうかのほうが報酬に効きます。福祉専門職員配置等加算(Ⅲ)は1日につき6単位です。要件は2つあり、どちらかを満たせば算定できます。1つは、直接処遇職員として配置されている従業者(常勤換算)のうち、常勤の割合が100分の75以上であることです。もう1つは、常勤の直接処遇職員のうち3年以上従事している者が100分の30以上であることです。留意事項通知は「常勤で配置されている従業者」の意味を説明しています。正規か非正規かは問いません。各事業所で定められた常勤の従業者が勤務すべき時間数に達していれば、常勤にあたります。非正規雇用でもフルタイムであれば常勤として数えます。未経験者をフルタイムで迎える設計は、この要件と整合します。 Q. 職員が急に辞めて人員基準を満たせなくなったら、必ず減算になりますか? A. 条件を満たせば1年に1回に限り猶予されます。令和8年5月28日改正の留意事項通知が定めた特例です。対象は、突発的で想定が困難な事象によりやむを得ない事情が生じた場合です。減少が必要員数から1割の範囲内であることも要ります。要件は4つあり、すべてを満たす必要があります。代表的なものは、公共職業安定所や福祉人材センター等の無料職業紹介事業の活用です。これを通じて職員の確保に取り組んでいることが求められます。猶予される期間は、欠如が生じた日の属する月の翌々月までです。手続では、取組内容とやむを得ない事情を別紙様式に記載します。報告時点で有効な求人票の写しを添えて、翌月までに都道府県知事へ報告します。1割を超える減少は、この猶予の対象外です。 Q. 求人はハローワークを使わなければいけませんか? A. 義務ではありませんが、活用が望ましいとされています。留意事項通知に明記があります。やむを得ない事情が生じていない場合の求人でも、公共職業安定所または無料職業紹介事業の活用等が望まれます。人員欠如減算の猶予を受ける要件のなかにも、関連する定めがあります。民間の職業紹介事業者を利用する場合は、適正認定事業者を含めることとされています。適正認定事業者とは、医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者認定制度による認定を受けた事業者です。加えて、自ら採用情報をウェブサイトで公表することも挙げられています。こうした積極的な取組を行うことが望ましいとされています。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年08月16日確認。e-Gov法令検索の現行条文(第2条第16号、第33条の2、第35条の2、第40条の2、第89条、第90条、第186条、第199条、第202条、第215条)) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(障発第1031001号。最終改正 令和8年5月28日こ支障第148号・障発0528第1号)新旧対照表」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(2026年08月16日確認。第2の1(8)人員欠如に該当する場合の所定単位数の算定について(④㈠㈣㈥)、第2の2(5)④福祉専門職員配置等加算(第2の14(4)②⑪でB型に準用)、第2の14(4)②㈠および同⑰目標工賃達成指導員配置加算) - 厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年度報酬改定後)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001658031.pdf(2026年08月16日確認。就労継続支援B型のページ(福祉専門職員配置等加算 1日につき15/10/6単位)) - 厚生労働省「令和6(2024)年社会福祉施設等調査の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/fukushi/24/dl/gaikyo.pdf(2026年08月16日確認。表4(事業の種類別にみた事業所数)、表6(事業の種類別にみた利用状況)、表8(事業の種類別にみた職種別常勤換算従事者数)。令和6年10月1日現在、利用実人員は9月中の実績) - 厚生労働省「医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者認定制度(令和7年度版リーフレット)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/001122300.pdf(2026年08月16日確認。制度の概要と適正認定事業者の検索方法) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 就労継続支援B型の仕事はきついのか 負担が集中する場所と 経営側で外せる荷物 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/b-gata-shokuin-kitsui/ カテゴリー: 現場・人材 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 2026年8月時点で、就労継続支援B型の職員の負担は2つに分かれます。制度が形を決めている部分と、事業所の業務設計で決まっている部分です。制度側で動かせないのは3つあります。1つ目は、職業指導員及び生活支援員の総数が常勤換算方法で利用者の数を10で除した数以上という下限です。2つ目は、工賃を生産活動に係る事業の収入から必要経費を控除した額で支払う義務です。その支払いに要する額に原則として自立支援給付を充てられません。3つ目は、記録と会議が省令上の義務であることです。支援の提供の都度の記録、個別支援計画の6月に1回以上の見直しが要ります。身体拘束等の適正化と虐待の防止に関する委員会や研修の定期実施も義務です。 この3つが重なるため、支援と生産活動の売上づくりと書類作成が同じ職員の1日に同居します。一方で、誰がどの業務を持つかは事業所が決めています。記録の様式をどうするか、生産活動の受注を誰が担うかも同じです。 令和8年6月施行の福祉・介護職員等処遇改善加算は、負担を減らす取組そのものを要件にしています。加算Ⅰ・Ⅱの職場環境等要件では、生産性向上区分から3つ以上が求められます。現場の課題の見える化は必須です。 - 職員数の下限: 職業指導員及び生活支援員の総数は常勤換算方法で利用者の数を10で除した数以上。職業指導員1以上、生活支援員1以上で、うちいずれか1人以上が常勤(指定障害福祉サービス基準第186条、第199条で準用) - 報酬区分と人員配置: 令和8年6月1日以降の就労継続支援B型サービス費は、6対1が(Ⅰ)、7.5対1が(Ⅱ)、10対1が(Ⅲ)で、いずれも工賃向上計画の作成が要件。定員20人以下で前年度の平均工賃月額が3万3千円以上3万5千円未満の区分なら、1日につき758単位、669単位、611単位(令和8年6月の見直し後の区分が適用される事業所の場合) - 制度側で外せない荷物: 工賃は生産活動に係る事業の収入から必要経費を控除した額を支払い、その支払いに要する額は原則として自立支援給付をもって充ててはならない(同基準第201条第1項、第202条で準用する第192条第6項) - 記録と会議の義務: 支援の提供の都度の記録と利用者からの確認、個別支援計画の6月に1回以上の見直しとモニタリング結果の記録、記録の5年間保存、身体拘束等適正化委員会・虐待防止委員会の定期開催と研修、業務継続計画の研修と訓練 - 賃金水準(公表統計): 就労継続支援B型の福祉・介護職員(常勤)の平均給与額は令和6年9月で289,130円(月額)。令和5年9月の273,690円から15,440円増。同じ調査の全サービス合計は327,720円 - 経営側で動かせる範囲: 処遇改善加算の職場環境等要件のうち生産性向上区分(現場の課題の見える化、業務手順書の作成、記録様式の工夫、業務支援ソフトの導入、間接業務の役割見直し、委員会の共同設置など)。加算Ⅰ・Ⅱは同区分から3つ以上が要件 根拠: 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果の概要」 ### 本文 ## 「きつい」の中身を、動かせるものと動かせないものに割る 就労継続支援B型の職員が負担を感じる場面には、2種類のものが混ざっています。制度が形を決めている部分と、事業所が運営設計で決めている部分です。経営側が最初にやるべきなのは、**この2つを分けること**です。分けないまま「人を増やせば楽になる」と判断すると、人件費だけが固定費として増えます。負担の偏りはそのまま残ります。 制度側の3つは、どの事業所にも同じようにかかります。 | 制度が決めていること | 根拠 | 現場に出てくる形 | | --- | --- | --- | | 職業指導員及び生活支援員の総数は常勤換算方法で利用者の数を10で除した数以上 | 指定障害福祉サービス基準第186条(第199条で準用) | 利用者数(前年度の平均値)20人なら常勤換算2人から成立する。基準は利用者数だけで決まり、記録や送迎、受注先対応の業務量は反映されない | | 工賃は生産活動に係る事業の収入から必要経費を控除した額を支払い、その支払いに要する額に原則として自立支援給付を充ててはならない | 同第201条第1項、第202条で準用する第192条第6項 | 売れるものを作って売る仕事が、支援と同じ職員の1日に同居する | | 前年度の平均工賃月額が翌年度の基本報酬区分を決める | 令和8年5月28日改正の留意事項通知 | 工賃を上げる圧力が、工賃だけでなく給付収入にも効く | 2つ目が、他の障害福祉サービスと決定的に違うところです。工賃の原資を給付費で埋めることは、災害その他やむを得ない理由がある場合を除いて**認められていません**。支援の質を上げる仕事と、売上をつくる仕事が、別々の部署ではなく同じ人の予定表に並びます。 ## 配置を厚くすると単価は上がる。ただし人件費も上がる 令和8年6月1日以降の就労継続支援B型サービス費は、従業者の員数で区分が分かれます。 - 利用者の数を6で除した数以上なら(Ⅰ) - 7.5で除した数以上なら(Ⅱ) - 10で除した数以上なら(Ⅲ) いずれも**工賃向上計画の作成**が前提です。定員20人以下で前年度の平均工賃月額が3万3千円以上3万5千円未満の区分を例に取ります。単位数は1日につき(Ⅰ)758単位、(Ⅱ)669単位、(Ⅲ)611単位です。この区分は令和8年6月の見直し後のものです。令和6年度改定の前後で区分が上がっていない事業所には、従前の区分が適用されます。 6対1と10対1の差は、1日1人あたり147単位です。増員が単価に跳ね返る設計にはなっています。ただし1単位あたりの単価は地域区分で異なります。増えた人件費のほうは毎月の固定費になります。増員を先に決める順序ではありません。どの業務を誰から外すかを決めてから人数を決めます。収支全体の組み立ては[就労継続支援B型の収支構造](/column/b-gata-shushi-kouzou/)で扱っています。 ## 記録と会議は、1件いくらではなく年間の固定負担 省令が求めている記録と会議は、繁忙期かどうかに関わらず一定量が発生します。ここを「頑張って回す」ものと位置づけると、特定の職員に寄ります。 | 義務 | 内容 | 根拠(第202条で準用する条文を含む) | | --- | --- | --- | | 支援の提供の記録 | 提供日、内容その他必要な事項を提供の都度記録し、利用者から確認を受ける | 第19条 | | 個別支援計画 | サービス管理責任者がアセスメント、会議、同意、交付を行い、少なくとも6月に1回以上見直す | 第58条(就労継続支援B型計画と読み替え) | | モニタリング | 定期的に利用者に面接し、定期的に結果を記録する | 第58条第10項 | | 記録の保存 | 計画、提供の記録、市町村への通知に係る記録、身体拘束等、苦情、事故の記録を提供日から5年間保存 | 第75条第2項 | | 身体拘束等の適正化 | 委員会の定期開催と周知、指針の整備、研修の定期実施 | 第35条の2第3項 | | 虐待の防止 | 委員会の定期開催と周知、研修の定期実施、担当者の設置 | 第40条の2 | | 業務継続計画 | 策定、従業者への周知、研修及び訓練の定期実施、定期的な見直し | 第33条の2 | 省令が定めているのは、記録すべき事項と保存です。**書式の枚数や転記の回数**までは定めていません。同じ内容を紙とシステムに二度書く。日々の記録から月次のモニタリングへ手で転記する。こうした作業は制度の要求ではなく、**事業所の設計**です。委員会の開き方も事業所が決められます。身体拘束等の適正化と虐待の防止で別々に開くか、議題を分けて同じ枠で開くかを選べます。 ## 賃金の水準は、公表統計で確認できる範囲がある 賃金の水準は、令和6年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査で確認できます。調査は令和6年10月に実施され、有効回答は7,828施設・事業所でした。以下の額は、処遇改善加算を取得している事業所の福祉・介護職員(常勤の者)の平均給与額です。就労継続支援B型は令和6年9月で289,130円、令和5年9月で273,690円でした。令和5年9月から15,440円の増です。同じ調査の全サービス合計は327,720円です。基本給に手当と一時金(4月から9月の支給額の6分の1)を加えた額になります。両時点ともに在籍していた者を比べた数字です。 同じ調査では、届出の状況も分かります。就労継続支援B型で処遇改善加算を届け出ている事業所は87.3%でした。届出をしていない事業所は12.7%です(令和6年9月30日時点)。届出をしていない理由に事務作業の煩雑さを挙げた事業所では、処遇改善計画書の作成を理由とするものが81.3%を占めます。**取れるはずの加算が事務で止まる**状態は、賃金にも職員の納得感にも直接効きます。 ## 外せる荷物は、加算の要件そのものに書かれている 令和8年6月施行の福祉・介護職員等処遇改善加算には、職場環境等要件があります。そのうち生産性向上のための業務改善の取組は、加算Ⅰ・Ⅱでは3つ以上必要で、そのうち現場の課題の見える化は必須です。加算Ⅲ・Ⅳでは2つ以上が要ります。この区分に並んでいる項目が、そのまま**業務設計の見直しリスト**になります。 - 現場の課題の見える化(課題の抽出、課題の構造化、業務時間調査の実施等) - 業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減 - 業務支援ソフト(記録、情報共有、請求業務の転記が不要なもの)、情報端末の導入 - 業務内容の明確化と役割分担を行い、食事等の準備や片付け、清掃、ゴミ捨て等は間接支援業務に従事する者の配置や外注等で担う - 各種委員会の共同設置、各種指針・計画の共同策定、事務処理部門の集約等の協働化 別の区分にも、外せる荷物が置かれています。有給休暇の取得促進のため、情報共有や複数担当制等により業務の属人化と業務配分の偏りを解消する取組です。負担が一人に寄っている状態を放置しないことは、心情の問題ではなく**加算の評価対象**です。生産性向上や協働化に取り組む事業者向けの加算Ⅰロ・Ⅱロも新設されました。就労継続支援B型の加算率は、Ⅰイ10.5%に対しⅠロ10.9%、Ⅱイ10.3%に対しⅡロ10.7%です。 生産活動の側にも制度上の担い手があります。目標工賃達成指導員配置加算の要件は3つです。 - 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)または(Ⅳ)を算定していること - 目標工賃達成指導員を常勤換算1人以上配置すること - この指導員と職業指導員及び生活支援員の総数が、利用者の数を5で除して得た数以上であること 留意事項通知は、この指導員の仕事を3つ挙げています。 - 受注促進 - 農福連携等による新たな生産活動領域の開拓 - ICT機器等の導入による利用者の生産能力向上 営業と支援を同じ人に持たせ続けるのかどうかは、事業所が選べる部分です。 まず着手できるのは、業務時間調査です。職場環境等要件で必須とされる「現場の課題の見える化」の例示に挙がっています。 - 1週間、職員に15分単位で業務内容を記録してもらう - 支援、記録・書類、生産活動(受注・納品・検品)、送迎、その他に分類する - 働きぶりの評価が目的ではないことを先に伝える 集計したら、3つに印を付けてください。同じ情報を二度書いている作業、資格や経験がなくてもできる作業、担当が1人しかいない作業です。ここに外せる荷物が集まります。二度書きは様式の統合で外せます。資格不要の作業は役割分担または外注で、属人化は複数担当制で外せます。 ここまでが生産性向上区分に該当する取組そのものです。記録を残せば加算の根拠資料にもなります。 委員会は、身体拘束等の適正化と虐待の防止で開催記録の様式を揃えてください。年間の開催予定を年度当初に決めて共有すると、期末に慌てて開く事態を避けられます。 なお、加算の要件充足の判断や届出様式は指定権者が示します。取組を要件に当てる前に、所在地の指定権者に確認してください。 ## 人が欠けたときに、一部の職員へ寄せない 令和8年5月28日の留意事項通知の改正で、人員欠如減算に猶予の仕組みが設けられました。対象になるのは、突発的で想定が困難な事象によりやむを得ない事情が生じた場合です。減少が必要とされる員数から1割の範囲内であることも要ります。猶予されるのは1年に1回に限り、欠如が生じた日の属する月の翌々月までの間です。ただし猶予の要件は4つあり、その**すべてに該当する必要**があります。1つ目は、公共職業安定所や福祉人材センター等の無料職業紹介事業を活用した確保の取組です。2つ目は、民間の職業紹介事業者を使う場合に適正認定事業者であることです。3つ目は、自ら採用情報をウェブサイトで公表するなど、積極的に取り組むことです。4つ目は、一部の職員に負担が寄らないようにすることです。取組とやむを得ない事情を別紙様式に記載し、翌月までに都道府県知事へ報告することも求められます。 4つ目は、事業所への努力義務として書かれています。一時的に職員を確保できないことにより、一部の職員へ過度な業務負担とならないようにすることです。職員の適正な労働時間管理を行い、体制の整備を図るよう努めることと定められています。欠員が出たときに残った職員へ黙って寄せる運用は、**制度の側からも想定されていません**。 関連する記事にまとめています。 - [B型の支援員採用](/column/b-gata-shienin-saiyou/) … 採用の入口をどう設計するか - [B型職員の悩み](/column/b-gata-shokuin-nayami/) … 個々の職員が抱える悩みの中身 ### よくある質問 Q. 就労継続支援B型の職員の仕事は、他の障害福祉サービスよりきついのですか? A. サービス間で負担の大きさを比べられる公的な統計は確認できませんでした。確認できるのは賃金の水準です。出どころは令和6年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査です。就労継続支援B型の福祉・介護職員(常勤の者)の平均給与額は、令和6年9月で289,130円でした。同じ調査の全サービス合計は327,720円です。ただし、この差には職員構成や勤続年数の違いも含まれます。負担の中身で他サービスと違う点は1つあります。工賃の原資を給付費で埋めることが原則として認められていないことです。そのため生産活動の収益をつくる仕事が、支援と同じ職員の日課に入ります。 Q. 人員配置基準を満たしていれば、職員の負担は適正といえますか? A. いえません。基準は下限だからです。求められているのは、職業指導員及び生活支援員の総数が常勤換算方法で利用者の数を10で除した数以上であることです。根拠は指定障害福祉サービス基準第186条(第199条で準用)です。利用者の数(前年度の平均値)が20人なら、常勤換算2人から成り立ちます。この基準が定めているのは、利用者数に対する職員数の下限だけです。記録、送迎、受注先とのやり取り、家族や相談支援専門員との連絡といった支援時間外の業務量は勘定に入っていません。負担が特定の職員に寄っているかどうかは、基準の充足とは別に確認する必要があります。 Q. 職員を増やせば「きつい」は解消しますか? A. 増やすだけでは解消しません。配置を厚くすると基本報酬の単価は上がります。令和8年6月1日以降、定員20人以下で前年度の平均工賃月額が3万3千円以上3万5千円未満の区分を例に取ります。6対1の(Ⅰ)は1日につき758単位、10対1の(Ⅲ)は611単位です。差は1日1人あたり147単位になります。仮に定員20人が22日利用したとすると、月64,680単位の差です。ただし1単位あたりの単価は地域区分で異なります。一方で増えた人件費は確実に固定費になります。増員だけを先に決めると収支が悪化します。誰の何の業務を減らすかを決めてから、人数を決める順序になります。 Q. 記録や書類の負担を減らすと、運営指導で指摘されませんか? A. 様式や手順を変えること自体は問題になりません。記録すべき事項と保存期間を満たしていることが条件です。省令が求めていることは3つあります。1つ目は、支援を提供した日と内容その他必要な事項を提供の都度記録し、利用者の確認を受けることです。2つ目は、モニタリングの結果を定期的に記録することです。3つ目は、記録を整備して提供日から5年間保存することです。対象は個別支援計画、提供の記録、市町村への通知に係る記録、身体拘束等、苦情、事故の記録です。書式の枚数や転記の回数までは定められていません。むしろ処遇改善加算の職場環境等要件は、様式の工夫を評価される取組として挙げています。業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫による作業負担の軽減が並んでいます。 Q. 職員の負担を減らす取組は報酬につながりますか? A. つながります。令和8年6月施行の福祉・介護職員等処遇改善加算が直接の根拠です。加算Ⅰ・Ⅱの職場環境等要件では、生産性向上区分から3つ以上が求められます。そのうち現場の課題の見える化は必須です。加算Ⅲ・Ⅳでは2つ以上が必要です。さらに生産性向上や協働化に取り組む事業者向けの加算Ⅰロ・Ⅱロが新設されました。就労継続支援B型の加算率は、Ⅰイ10.5%に対しⅠロ10.9%、Ⅱイ10.3%に対しⅡロ10.7%です。加算Ⅰロ・Ⅱロに進むための令和8年度特例要件は2つの組み合わせです。1つ目は、生産性向上に関する取組を5つ以上行っているか、社会福祉連携推進法人に所属していることです。この5つ以上では、現場の課題の見える化と業務支援ソフト・情報端末の導入が必須です。2つ目は、加算Ⅱロ相当の加算額の2分の1以上を月給賃金で配分することです。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年08月16日確認。第19条、第33条の2、第35条の2、第40条の2、第58条第9項・第10項、第75条、第186条、第192条第6項、第199条、第201条、第202条) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf(2026年08月16日確認。p.2〜p.5(処遇改善加算の拡充、サービス区分別加算率、算定要件等、参考・職場環境等要件(令和8年度))) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(障発第1031001号。最終改正 令和8年5月28日こ支障第148号・障発0528第1号)新旧対照表」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(2026年08月16日確認。就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)〜(Ⅲ)の人員配置要件、人員欠如減算の猶予に係る新設規定(アからエ)、目標工賃達成指導員配置加算の取扱い) - 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果の概要」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/toukei/shogu_tyousa/dl/r06_gaiyou.pdf(2026年08月16日確認。調査時期は令和6年10月、有効回答7,828施設・事業所(有効回答率54.4%)。統計表第90表(サービス種類別平均給与額)、第17表(加算の取得状況)) - 厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年度改定後)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001658031.pdf(2026年08月16日確認。p.25〜p.28(就労継続支援B型の基本報酬・加算の単位数)) - こども家庭庁・厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1」 https://www.mhlw.go.jp/content/001683290.pdf(2026年08月16日確認。問30(基本報酬区分の届出と令和8年6月の再届出)) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 就労継続支援B型の職員が 抱えやすい悩みと 経営者が構造から手を打つ方法 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/b-gata-shokuin-nayami/ カテゴリー: 現場・人材 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 2026年8月時点で、就労継続支援B型の職員が抱えやすい悩みは、担当者の資質から生まれているのではありません。制度が事業所に課している業務の構造から生まれています。人員基準の下限は、職業指導員と生活支援員の総数が常勤換算で利用者の数を10で除した数以上です(指定障害福祉サービス基準第199条で準用する第186条第1項第1号イ)。この配置のまま、生産活動の運営、個別支援計画に沿った支援、法定の記録、委員会と研修の運営を同じ職員が担うことになります。 記録の量は減らせません。指定就労継続支援B型を提供した都度の記録が義務です(第202条で準用する第19条)。計画は少なくとも6月に1回以上見直します(同第58条第9項)。これらは5年間保存します(同第75条第2項)。 したがって経営者が動かせるのは3つです。1つ目は、記録の様式を重複しない形に整えることです。2つ目は、工賃向上の役割を目標工賃達成指導員という職種として切り出すことです。3つ目は、欠員が出たときに減算の猶予特例を使える求人体制をあらかじめ持っておくことです。この特例は令和8年5月28日の留意事項通知改正で新設されました。 - 配置の下限: 職業指導員・生活支援員の総数が常勤換算で利用者の数÷10以上。職業指導員1以上、生活支援員1以上、うちいずれか1人以上は常勤(第199条で準用する第186条) - 減らせない記録: 提供の都度の記録+利用者の確認、就労継続支援B型計画とモニタリング(6月に1回以上・面接と結果の記録)、5年間の保存 - 工賃の役割分離: 目標工賃達成指導員配置加算=常勤換算1人以上の配置に加え、目標工賃達成指導員・職業指導員・生活支援員の総数が利用者の数÷5以上。1日につき45単位(定員20人以下)から36単位(定員81人以上) - 欠員時の防衛線: 必要員数から1割の範囲内の減少で、求人活動等の要件を全て満たす場合に、1年に1回に限り欠如発生月の翌々月まで減算の適用を猶予。翌月までに別紙様式と有効な求人票の写しを都道府県知事へ報告 - 事業者の義務: 従業者の研修の機会の確保、ハラスメント防止の方針の明確化等の措置(第202条で準用する第68条第3項・第4項) - 確認できないこと: 就労継続支援B型の職員に限定した離職率の公的統計は、今回は特定できなかった。賃金水準は令和6年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査に、処遇改善加算を取得する事業所の福祉・介護職員(常勤の者)の平均給与額として公表がある(B型は令和6年9月で289,130円/月) 根拠: 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」 ### 本文 ## 悩みは人柄ではなく、業務が集まる場所から生まれる 就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに就労と生産活動の機会を提供する事業です。職員は、生産活動の段取りと個別支援という目的の違う仕事を同時に持ちます。人員基準の下限は薄く設定されています。職業指導員と生活支援員の総数は、常勤換算で利用者の数を10で除した数以上です。そのうち常勤でなければならないのは、**いずれか1人だけ**です。 利用者20人を10対1で運営すれば下限は常勤換算2人で、その体制で作業と支援と記録を回すことになります。職員が手が回らないと言うとき、その多くは本人の力量ではなく、**この配置の上に法定業務が積み上がっている**状態を指しています。 ## 悩みを条文に対応させると、動かせる場所が見える 表中の条番号は、就労継続支援B型に直接適用される第201条を除き、いずれも第202条により指定就労継続支援B型に準用される規定です。 | 職員が口にすること | 発生源となる規定 | 経営者が動かせるところ | | --- | --- | --- | | 記録が終わらない | 提供の都度の記録(第19条)、計画とモニタリング(第58条)、5年間の保存(第75条) | 様式の重複を消す | | 工賃を上げろと言われる | 工賃の平均額は月3,000円以上、年度ごとの目標水準の設定・通知・報告(第201条) | 目標工賃達成指導員を置く | | 利用者対応の判断に迷う | 身体拘束等の禁止と委員会・研修(第35条の2)、虐待防止の委員会・研修・担当者(第40条の2) | 委員会を検討の場として動かす | | 会議と研修が多い | 業務継続計画の周知・研修・訓練(第33条の2)、非常災害の訓練(第70条) | 年間計画に固定する | | 学ぶ時間がない | 従業者の資質向上のための研修の機会の確保(第68条第3項) | 勤務時間内に組む | | 言い方がきつい人がいる | ハラスメント防止のための方針の明確化等の措置(第68条第4項) | 方針を文書化し相談経路を決める | 第68条第3項と第4項は努力目標ではなく、**事業者に課された措置義務**です。研修に行けないことも職場の関係が悪いことも、職員が我慢する問題ではなく、講じるべき措置が講じられていない状態として整理できます。 ## 記録は量ではなく重複で膨らむ 提供の都度の記録には、利用者から提供したことについて確認を受けることまで含まれます。就労継続支援B型計画の手順は次のとおりです。 - 利用者に面接してアセスメントを行う - 原案を担当者の会議にかける - 文書で同意を得て交付する - 少なくとも6月に1回以上見直す モニタリングでは定期的に面接して結果を記録し、これらを5年間保存します。省略できる部分はなく、**減らせるのは重複だけ**です。 同じ出来事を日誌と支援記録とモニタリング記録に三度書いている事業所は珍しくありません。条文が求めているのは各記録が残っていることであって、**書く回数ではありません**。様式を条文に対応させ、一度書いた内容が転記なしで各記録に載る形にするのが最初の作業になります。手順は[個別支援計画のモニタリング](/column/kobetsu-shien-keikaku-monitoring/)で扱っています。 ## 工賃向上の圧力は、職種として切り出せる 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)から(Ⅲ)までを算定する事業所では、基本報酬が前年度の平均工賃月額に応じて決まります。工賃が経営指標である以上、それが生産活動の担当職員個人に降りていくところに無理があります。 目標工賃達成指導員配置加算の要件は2つです。1つは、常勤換算1人以上の目標工賃達成指導員を配置することです。もう1つは、目標工賃達成指導員・職業指導員・生活支援員の総数です。利用者の数を5で除して得た数以上であることが要ります。就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)または(Ⅳ)の算定が前提になります。 | 利用定員 | 目標工賃達成指導員配置加算(1日につき) | | --- | --- | | 20人以下 | 45単位 | | 21人以上40人以下 | 40単位 | | 41人以上60人以下 | 38単位 | | 61人以上80人以下 | 37単位 | | 81人以上 | 36単位 | 留意事項通知は、この職種の仕事を3つ挙げています。 - 物品や役務等の受注促進 - 地域と連携した農福連携等による新たな生産活動領域の開拓 - ICT機器等の導入による利用者の生産能力向上 営業と生産設計であって、**日々の支援とは別の技能**です。なお令和6年度のB型の全国平均工賃月額は24,141円(18,245か所の集計)でした。作業種目の選び方は[B型の作業種目](/column/b-gata-sagyou-shumoku/)で扱います。 利用時間が4時間未満の利用者等の割合が100分の50以上になると、所定単位数は100分の70に減算されます。ただし算定から除かれる利用者が2種類あります。1つは、送迎に長時間を要する利用者です。もう1つは、個別支援計画に一般就労等に向けた利用時間延長のための支援が位置付けられ、実際に支援を実施した利用者です。通所時間を延ばすよう職員に発破をかけるのではなく、**計画に位置付けて実施し記録する**手順を整えるのが正しい向き合い方です。 ## 人が抜けたときの猶予は、事前準備でしか使えない 令和8年5月28日の留意事項通知の改正で、人員欠如減算に猶予の特例が設けられました。対象になるのは、突発的で想定が困難な事象によりやむを得ない事情が生じた場合です。減少が人員基準上必要とされる員数から1割の範囲内であることも要ります。猶予されるのは1年に1回、欠如の発生が生じた日の属する月の翌々月までの間です。 主な要件は次のとおりです。 - 公共職業安定所や福祉人材センター等の無料職業紹介事業を活用して職員の確保に取り組んでいること - 民間職業紹介事業者を使う場合は適正認定事業者を含むこと - 適正な労働時間管理を行うこと **1割を超えて減少した場合**は対象になりません。Q&Aは、やむを得ない事情の例を2つ挙げています。体調不良等により1か月を超える不在が見込まれる場合と、自己都合による急な離職等が複数重なった場合です。 見落とせないのは、報告が欠如の発生月の翌月までで、**報告時点で有効な求人票の写し**を添付する点です。求人を常時出していない事業所は、この一枚を用意する段階でつまずきます。 欠員に備える段取りは4つです。 - 公共職業安定所への求人を常時掲出した状態にしておく - 民間の紹介会社を使うなら、契約前に認定の有無を確かめる - 自法人の採用ページにも募集職種と勤務条件を載せておく - 別紙様式と求人票の写しを一組にしたひな形を作り、誰が翌月までに提出するかまで決めておく 求人を常時掲出しておくと、特例が求める職員確保の取組に該当します。あわせて、報告に添付する有効な求人票がその場で用意できます。確かめる認定は、医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者認定制度です。採用ページに載せておけば、募集を続けている事実を示す材料が増えます。ひな形まで決めておけば、欠員が出てから様式を探さずに済みます。 記録の側では、対応表を作ってください。第19条の提供の記録、第58条の計画とモニタリング、第75条第2項の各号に掲げる記録を一覧にします。そのうえで、様式ごとにどの号を満たすかを書き込みます。様式の目的が曖昧なまま数だけ増えることが、記録の負担が膨らむ主な原因です。 ## 見通しを示せるかどうかは、加算の設計で決まる 令和8年6月施行の処遇改善加算の見直しは、キャリアの見通しに直接効きます。厚生労働省の改定事項資料は、2つの措置を示しています。1つは、障害福祉従事者を対象に幅広く月1.0万円(3.3%)の賃上げを実現する措置です。もう1つは、生産性向上や協働化に取り組む事業者の福祉・介護職員に月0.3万円(1.0%)を上乗せする措置です。定期昇給0.6万円を含めて最大月1.9万円(6.3%)としています。加算の対象は福祉・介護職員から障害福祉従事者に拡大され、加算Ⅰロと加算Ⅱロが新設されました。 就労継続支援B型の加算率は、加算Ⅰイが10.5%、Ⅰロが10.9%、Ⅱイが10.3%です。Ⅱロが10.7%、Ⅲが8.8%、Ⅳが7.4%と続きます。処遇改善加算を除く加減算後の総報酬単位数に乗じるため、**区分の違いはそのまま賃金原資の差**になります。区分を上げる鍵はキャリアパス要件と職場環境等要件で、昇給の仕組みや研修体制という、職員が見通しを持てるかどうかを問う要件です。中身は[処遇改善加算の要件](/column/shogu-kaizen-kasan-youken/)で扱っています。 なお、就労継続支援B型の職員に限定した離職率の公的統計は、今回の調査では特定できませんでした。賃金の水準については、令和6年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査が公表しています。対象は、処遇改善加算を取得している事業所の福祉・介護職員(常勤の者)の平均給与額です。就労継続支援B型は令和6年9月で289,130円(月額)でした。求人媒体などが示す離職率を配置の根拠にせず、自法人の在職期間と欠員の発生月を並べた表で判断してください。 関連する記事にまとめています。 - [B型の仕事はきついのか](/column/b-gata-shokuin-kitsui/) … 数字の中身 - [B型の支援員採用](/column/b-gata-shienin-saiyou/) … 採用の側 - [B型の収支構造](/column/b-gata-shushi-kouzou/) … 収支との関係 ### よくある質問 Q. 就労継続支援B型の職員は、何に一番悩みますか? A. 生産活動と支援と記録を同じ人が同時に担う構造そのものです。人員基準の下限は、職業指導員と生活支援員の総数が常勤換算で利用者の数を10で除した数以上です。この人数で、作業の段取り、個別の支援、提供の都度の記録までを回します。さらに虐待防止委員会や身体拘束適正化委員会の運営も加わります。特定の職員の適性や熱意の問題として扱うと打ち手が出ません。どの業務がどの条文から発生しているかを分解してから配置を決めてください。 Q. 記録の負担は減らせますか? A. 総量は減らせませんが、重複は減らせます。指定基準が求めているのは3つで、いずれも省略できません。サービスを提供した都度の記録と利用者からの確認です(第202条で準用する第19条)。就労継続支援B型計画とモニタリングの結果の記録です(同第58条)。これらを提供した日から5年間保存することです(同第75条第2項)。一方で、同じ内容を日誌、支援記録、モニタリング記録に三度書いている事業所は多くあります。様式を条文に対応させて一度だけ書く形に整理すれば、義務を落とさずに手数だけを減らせます。 Q. 工賃を上げる責任を支援員個人に負わせない方法はありますか? A. あります。目標工賃達成指導員を置いて役割として切り出す方法です。留意事項通知は、この職種を工賃向上計画に基づいて動く指導員と説明しています。仕事は、物品や役務の受注促進、農福連携などによる生産活動領域の開拓、ICT機器の導入による利用者の生産能力向上です。目標工賃達成指導員配置加算の要件は2つです。常勤換算1人以上の配置と、目標工賃達成指導員・職業指導員・生活支援員の総数が利用者の数を5で除して得た数以上であることです。就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)または(Ⅳ)を算定していることが前提です。 Q. 職員が急に辞めて人員基準を満たせなくなったら、必ず減算されますか? A. 条件を満たせば猶予される場合があります。令和8年5月28日の留意事項通知の改正で、人員欠如減算に猶予の特例が設けられました。突発的で想定が困難な事象によりやむを得ない事情が生じ、必要員数から1割の範囲内で減少した場合が対象です。猶予されるのは1年に1回、人員欠如の発生月の翌々月までの間です。公共職業安定所や無料職業紹介事業を活用して職員の確保に取り組んでいることなどが要件です。欠如の発生月の翌月までに、別紙様式と有効な求人票の写しを都道府県知事に報告する必要があります。1割を超えて減少した場合は対象外です。 Q. 職員の給与を上げる原資はどこから確保しますか? A. 令和8年6月施行の処遇改善加算の拡充が直接の原資になります。厚生労働省の改定事項資料は、2つの措置を示しています。1つは、障害福祉従事者を対象に月1.0万円(3.3%)の賃上げを実現する措置です。もう1つは、生産性向上や協働化に取り組む事業者の福祉・介護職員に月0.3万円(1.0%)を上乗せする措置です。定期昇給0.6万円を含めて最大月1.9万円(6.3%)としています。就労継続支援B型の加算率は、加算Ⅰイ10.5%、Ⅰロ10.9%、Ⅱイ10.3%です。Ⅱロ10.7%、Ⅲ8.8%、Ⅳ7.4%と続きます。区分の差がそのまま賃金原資の差になります。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年08月16日確認。第19条、第33条の2、第35条の2、第40条の2、第58条、第68条、第70条、第75条、第186条、第199条、第201条、第202条) - 厚生労働省「「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」の一部改正について(新旧対照表・最終改正 令和8年5月28日こ支障第148号・障発0528第1号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(2026年08月16日確認。第2の1の(2)④㈥(人員欠如減算の猶予特例)、第2の14の(4)②㈠・㈣、同⑰(目標工賃達成指導員配置加算)) - 厚生労働省「留意事項通知の一部改正の発出に伴うQ&A(令和8年5月28日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705652.pdf(2026年08月16日確認。問1(やむを得ない事情の例)、問2(1年の起算)、問3(自らのウェブサイトを持たない場合)) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(令和8年2月18日 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf(2026年08月16日確認。処遇改善加算の拡充(賃上げ幅・サービス別加算率)、基本報酬区分の基準の見直し) - 厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年度改定後)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001658031.pdf(2026年08月16日確認。就労継続支援B型の加算・減算の単位数) - 厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について(令和8年3月修正版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001637154.pdf(2026年08月16日確認。B型の平均工賃月額24,141円・18,245か所、令和5年度実績の22,649円への修正) - 厚生労働省「就労系障害福祉サービスの概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001737834.pdf(2026年08月16日確認。就労継続支援B型の事業所数20,274か所・利用者数425,938人(国保連令和8年3月実績)) - 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果の概要」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/toukei/shogu_tyousa/dl/r06_gaiyou.pdf(2026年08月16日確認。統計表第90表(サービス種類別の福祉・介護職員(常勤の者)の平均給与額)) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 就労継続支援B型事業所の 収支構造を分解する 基本報酬は何で決まるのか URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/b-gata-shushi-kouzou/ カテゴリー: 経営・収支 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 就労継続支援B型事業所の収入は、自立支援給付から支払われる障害福祉サービス費と、生産活動収入の二本立てです。このうち経営の土台になる基本報酬は、利用定員・人員配置・前年度の平均工賃月額の3つの掛け合わせで決まります。生産活動収入は工賃の原資であって、事業所の手元に残す前提の収入ではありません。指定基準省令は、生産活動に係る事業の収入から必要経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払わなければならないと定めています。 2026年8月16日時点で適用されているのは令和8年6月1日以降の区分です。令和8年6月から基本報酬区分の基準額がそれぞれ3千円(1月あたり)引き上げられたため、同じ平均工賃月額でも当てはまる区分が事業所によって変わります。令和6年度改定の前後で区分が上がっていない事業所は見直しの対象外となり、従前の区分がそのまま続きます。「平均工賃月額4万5千円以上なら1日837単位」という一本の説明は、令和8年6月以降は成り立ちません。 - 収入の構成: 障害福祉サービス費(自立支援給付)と生産活動収入。工賃の原資は生産活動収入(指定基準省令第201条第1項) - 基本報酬を決める3要素: 利用定員(20人以下/21〜40人/41〜60人/61〜80人/81人以上)×人員配置(6:1/7.5:1/10:1)×前年度の平均工賃月額 - 前年度の平均工賃月額の算定式: 年間工賃支払総額 ÷(年間延べ利用者数 ÷ 年間開所日数)÷ 12月 - 最も高い基本報酬: 定員20人以下・6:1・平均工賃月額4万8千円以上で1日につき837単位(令和8年6月1日以降) - 同じ定員・人員配置での最低区分: 平均工賃月額1万円未満で1日につき590単位(1日あたり247単位の差) - 平均工賃月額の下限: 1月当たり3,000円を下回ってはならない(指定基準省令第201条第2項) - 令和6年度のB型全国平均工賃月額: 24,141円/月(集計18,245か所) 根拠: 厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造」(令和8年度改定後) ### 本文 ## 入ってくるお金は性質が違う2つに分かれる B型事業所の収入は、自立支援給付から支払われる障害福祉サービス費と、生産活動収入の二本立てです。前者は単位数に地域区分ごとの単価を掛け、利用実績に応じて月単位で決まります。後者は請負や自主生産品の売上です。 この2つを一緒の財布として見ると判断を誤ります。指定基準省令は、指定就労継続支援B型事業者は利用者に、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払わなければならないと定めています。生産活動で稼いだ分は必要経費を引いたうえで工賃として出ていく建て付けで、事業所の利益として残す設計にはなっていません。さらに、利用者それぞれに支払われる1月当たりの工賃の平均額は3千円を下回ってはならず、年度ごとに工賃の目標水準を設定して利用者に通知し、都道府県に報告する義務も置かれています。 厚生労働省は令和7年11月28日のガイドラインで、自立支援給付費から利用者への工賃を補填するなど不適切な運営を行っている事業所があると指摘されている、という認識を示しました。給付費で工賃の不足を埋める運用は、収支の設計としても運営指導の観点としても前提から外れます。 ## 基本報酬は3つの変数の掛け合わせ 給付費の中心である基本報酬は、利用定員、人員配置、前年度の平均工賃月額の3つで決まります。就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)が平均工賃月額に応じた報酬体系で、人員配置はそれぞれ6:1、7.5:1、10:1です。いずれも工賃向上計画を作成していることが算定の要件になっています。一方の(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)は平均工賃月額を使わず、利用者の就労や生産活動等への参加等をもって一律に評価する報酬体系で、人員配置だけが区分を分けます。 ここで混同されやすいのが人員配置です。B型の人員基準そのものは、職業指導員および生活支援員の総数を常勤換算方法で利用者の数を10で除した数以上とする10:1です。6:1や7.5:1は基準ではなく、基準を超えて人を置いたことを評価する報酬区分にすぎません。単価は上がりますが人件費も同時に増えるので、両方を並べないと判断できません。職員体制の悩みは[B型の職員配置と人手の問題](/column/b-gata-shokuin-nayami/)でも扱います。 平均工賃月額の算定式は次のとおりです。 > 年間工賃支払総額 ÷(年間延べ利用者数 ÷ 年間開所日数)÷ 12月 分母は工賃を受け取った人数ではなく、開所日1日当たりの平均利用者数です。通常の事業所に雇用されていて一時的に支援を受ける利用者は除きます。重度者支援体制加算(Ⅰ)を算定している場合は、算出した額に2,000円を加えた額を報酬算定時の平均工賃月額とすることができます。 この式の形から確実に言えることが1つあります。年間の工賃支払総額が変わらないまま延べ利用者数が増えると、平均工賃月額は下がります。稼働率を上げる取り組みと報酬区分を維持する取り組みは、算式の上では逆方向に働く場面があるということです。 ## 令和8年6月から区分が3系統に分かれた 令和6年度改定で平均工賃月額の算定方式が変わり、分母が「工賃支払対象者数」から「開所日1日当たりの平均利用者数」に置き換わりました。これにより平均工賃月額が約6千円上昇し、想定以上に高い報酬区分の事業所が増えたことへの対応として、令和8年6月1日から区分の基準額がそれぞれ3千円(1月あたり)引き上げられています。引上げ幅は上昇幅の2分の1にとどめられました。 同時に3つの配慮措置が置かれた結果、令和8年6月以降に適用される区分は事業所ごとに次の3系統へ分かれます。 | 系統 | 対象となる事業所 | 中身 | | --- | --- | --- | | R8改定後の区分 | 令和5年度から令和6年度にかけて区分が上がった事業所(大多数) | 基準額を3千円引き上げ、(A)〜(F)の中間区分を新設 | | 改定なしの区分 | 平均工賃月額1万5千円未満の全事業所 | (七)1万円以上1万5千円未満と(八)1万円未満は据え置き | | 従前の区分 | 令和5年度と令和6年度で区分が変わらない、または下がった事業所 | 令和8年5月以前の区分がそのまま続く | 自事業所がどれに当たるかはシステムで判定できないため、事業者の自己申告によります。見直し対象外の事業所は区分変更の届出書ではなく、対象外であることが分かる根拠書類を提出します。二次情報の解説を読むときは、それが3系統のどれを前提にしているかを毎回確かめてください。 ## 定員20人以下・6:1の単位数 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)の単位数です。すべて1日につきの単位数で、R8改定後の区分にあたります。 | 前年度の平均工賃月額 | 20人以下 | 21〜40人 | 41〜60人 | 61〜80人 | 81人以上 | | --- | --- | --- | --- | --- | --- | | (一)4万8千円以上 | 837 | 746 | 700 | 688 | 666 | | (A)4万5千円以上4万8千円未満 | 812 | 724 | 679 | 668 | 647 | | (二)3万8千円以上4万5千円未満 | 805 | 717 | 674 | 662 | 640 | | (B)3万5千円以上3万8千円未満 | 781 | 696 | 654 | 643 | 621 | | (三)3万3千円以上3万5千円未満 | 758 | 676 | 636 | 625 | 605 | | (C)3万円以上3万3千円未満 | 738 | 660 | 620 | 609 | 590 | | (四)2万8千円以上3万円未満 | 738 | 660 | 620 | 609 | 590 | | (D)2万5千円以上2万8千円未満 | 726 | 641 | 602 | 591 | 573 | | (五)2万3千円以上2万5千円未満 | 726 | 637 | 600 | 589 | 570 | | (E)2万円以上2万3千円未満 | 705 | 624 | 586 | 575 | 557 | | (六)1万8千円以上2万円未満 | 703 | 624 | 586 | 575 | 557 | | (F)1万5千円以上1万8千円未満 | 682 | 606 | 569 | 558 | 541 | | (七)1万円以上1万5千円未満 | 673 | 600 | 563 | 553 | 535 | | (八)1万円未満 | 590 | 526 | 494 | 485 | 468 | 定員20人以下で見ると、最上位の837単位と最下位の590単位の差は1日247単位です。人員配置を7.5:1に落とすと(Ⅱ)となり、同じ定員20人以下でも最上位が748単位、最下位が537単位まで下がります。10:1の(Ⅲ)では682単位と490単位です。定員が大きくなるほど1人あたりの単価は下がるので、規模の拡大は単価の低下と引き換えになります。 なお、令和8年6月1日以降に新規指定を受けた事業所には、所定単位数の1000分の984という応急的な報酬単価が適用されます。所定単位数は各種加算がなされる前の単位数を指し、加算を含めた合計に掛けるものではありません。離島・中山間地域に所在する場合や、自治体の公募によりサービスが不足する地域に設置された場合などは適用されません。この応急的な報酬単価は、令和9年度報酬改定までの間のみ適用される措置とされています。 ## 加算は基本報酬の上に日単位・月単位で乗る 基本報酬が決まったら、そこに加算が積み上がります。単位の別がばらばらなので、月額に引き直すときは注意が必要です。 | 加算 | 単位数 | 主な内容 | | --- | --- | --- | | 目標工賃達成指導員配置加算 | 1日につき45/40/38/37/36単位(定員区分別) | 目標工賃達成指導員を常勤換算1人以上配置し、目標工賃達成指導員・職業指導員・生活支援員の総数が利用者の数を5で除して得た数以上 | | 重度者支援体制加算(Ⅰ) | 1日につき56/50/47/46/45単位(定員区分別) | 障害基礎年金1級受給者が利用者の100分の50以上 | | 就労移行支援体制加算(Ⅰ)定員20人以下 | 1日につき93〜48単位(平均工賃月額の区分別) | 前年度に一般就労へ移行し6月以上就労継続している者の人数を所定単位数に乗じて加算 | | 福祉専門職員配置等加算(Ⅰ)/(Ⅱ)/(Ⅲ) | 1日につき15/10/6単位 | 社会福祉士等の割合や常勤職員の割合による | | 食事提供体制加算 | 1日につき30単位 | | | 送迎加算(Ⅰ)/(Ⅱ) | 片道につき21/10単位 | 同一敷地内の場合は70/100 | | 目標工賃達成加算 | 1日につき10単位 | 工賃向上計画に掲げた工賃目標を達成した場合 | これらとは別に、福祉・介護職員等処遇改善加算が1月当たりの総単位数に率で乗ります。就労継続支援B型の加算Ⅰイは令和8年6月以降10.5%です。1日あたりではなく、処遇改善加算を除く加減算後の1月当たり総単位数に乗せる点が他の加算と違います。詳しくは[令和8年度の処遇改善加算](/column/shogu-kaizen-kasan-r8/)にまとめました。 減算も収支に直接効きます。職業指導員または生活支援員の員数が基準に満たない場合は減算適用月から2月目まで70/100、3月以上連続すると50/100です。サービス管理責任者の欠如は4月目まで70/100、5月以上連続で50/100になります。利用時間が4時間未満の利用者等の割合が利用者全体の100分の50以上になると、所定単位数が70/100に下がります。 ## 全国の水準を自事業所と並べる 自事業所の数字を評価するには全国値が要ります。令和6年度のB型の全国平均工賃月額は24,141円で、集計は18,245か所です。令和5年度は22,649円でした。この令和5年度の数値は令和8年3月に23,053円から修正されているので、古い数字を載せた二次情報には注意してください。令和5年度実績から新しい算定方式が反映されているため、令和4年度以前との単純比較もできません。 収支の面では、令和7年障害福祉サービス等経営概況調査でB型の収支差率は令和5年度決算6.0%、令和6年度決算6.2%でした(物価高騰対策関連補助金を含まない場合)。全サービス平均は単純平均で5.0%から4.6%へ下がっており、B型は横ばいから微増という位置にあります。事業所数は20,274か所、利用者数は425,938人です(いずれも国保連令和8年3月実績)。 自事業所の収入がどう決まっているかを押さえる順番は、まず前年度の年間工賃支払総額・年間延べ利用者数・年間開所日数の3つを確定させ、算定式に入れて平均工賃月額を出すことです。次に自事業所が3系統のどれに当たるかを、令和5年度と令和6年度の区分を並べて確認します。そのうえで定員と人員配置を掛け合わせれば、1日あたりの基本報酬が一意に決まります。ここまで出せば、加算と減算を足し引きして月額の見通しが立てられます。 ### よくある質問 Q. 就労継続支援B型事業所の基本報酬は何で決まりますか? A. 利用定員・人員配置・前年度の平均工賃月額の3つで決まります。就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)は平均工賃月額に応じた報酬体系で、人員配置はそれぞれ6:1・7.5:1・10:1、利用定員は20人以下から81人以上までの5段階に分かれます。(Ⅳ)(Ⅴ)(Ⅵ)は平均工賃月額を用いず、利用者の就労や生産活動等への参加等をもって一律に評価する報酬体系です。 Q. 平均工賃月額はどう計算しますか? A. 年間工賃支払総額を、開所日1日当たりの平均利用者数で割り、さらに12月で割ります。開所日1日当たりの平均利用者数は、前年度の延べ利用者数を前年度の年間開所日数で割って算出します。通常の事業所に雇用されていて一時的に支援を受ける利用者は除きます。重度者支援体制加算(Ⅰ)を算定している場合は、算出した平均工賃月額に2,000円を加えた額を報酬算定時の平均工賃月額とすることができます。 Q. 令和8年6月から基本報酬は下がりますか? A. 事業所によって異なり、まったく変わらない事業所もあります。令和6年度改定の前後で区分が上がっていない事業所は見直しの適用対象外で、従前の区分が続きます。平均工賃月額1万5千円未満の事業所は区分の基準が据え置かれています。区分が下がる事業所についても、基本報酬の減少額が3%程度に収まるよう(A)から(F)までの中間的な区分が新設されました。見直し対象に該当するかはシステムでの判定が困難なため、事業者の自己申告によります。 Q. 人員配置6:1は人員基準ですか? A. いいえ、6:1は報酬区分の要件であって人員基準ではありません。B型の人員基準は、職業指導員および生活支援員の総数が常勤換算方法で利用者の数を10で除した数以上、つまり10:1です。6:1や7.5:1の配置にすると基本報酬の単価が上がりますが、それは基準を超えて人を置いたことへの評価であり、増える人件費と単価の増加を並べて判断する必要があります。 Q. 生産活動収入は事業所の収益にしてよいですか? A. いいえ、生産活動に係る事業の収入から必要経費を控除した額に相当する金額は、工賃として利用者に支払わなければなりません。指定基準省令第201条第1項が定めています。利用者それぞれに支払われる1月当たりの工賃の平均額は3千円を下回ってはならず、年度ごとに工賃の目標水準を設定して利用者に通知し、都道府県に報告する義務もあります。 Q. 基本報酬の区分はいつ届け出ますか? A. 原則として毎年度4月ですが、令和8年度は改めて6月にも届出が必要です。前年度の実績に伴う届出は令和8年4月中、基本報酬区分の基準の見直しに係る届出は令和8年6月中に行うのが基本とされています。事務負担軽減のため、4月に「令和8年4月・5月分」と「令和8年6月以降分」を同時に提出させても差し支えないとされています。見直し対象外の事業所は区分変更の届出書ではなく、対象外であることが分かる根拠書類を提出します。平均工賃月額1万5千円未満の改定なしの区分は、6月以降も区分が変わらないため区分変更の届出書自体が不要です。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年度改定後)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001658031.pdf(p.25〜28の就労継続支援B型サービス費で単位数を確認・2026年08月16日確認) - 厚生労働省・こども家庭庁「障害福祉サービス費等の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(平成18年10月31日障発第1031001号/最終改正 令和8年5月28日こ支障第148号・障発0528第1号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(第2の14の(4)②で区分・平均工賃月額の算定方法を確認・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム・令和8年2月18日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf(p.8〜11の基本報酬区分の基準の見直しを確認・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1(令和8年3月31日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001683290.pdf(問27〜問30で3系統の区分と届出の取扱いを確認・2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(第186条(第199条で準用)・第201条を確認・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドラインについて(障障発1128第1号・令和7年11月28日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001669924.pdf(自立支援給付費から工賃を補填する不適切な運営の指摘に関する記述を確認・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について(令和8年3月修正版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001637154.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果の概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001599113.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「就労系障害福祉サービスの概要(事業所数・利用者数は国保連令和8年3月実績)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001737834.pdf(基本報酬の表は令和8年5月以前の区分のまま残っている点に注意・2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 障害福祉事業所のBCP。 義務化された内容と業務継続計画未策定減算、 小規模事業所での作り方 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/bcp-shogai-fukushi/ カテゴリー: 現場・人材 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2025.04.01 ### 結論 障害福祉サービス事業所の業務継続計画(BCP)は、指定基準の第33条の2として令和6年(2024年)4月1日から義務づけられています。令和3年4月1日から令和6年3月31日までは努力義務でしたが、3年間の経過措置が終わり、現在は策定していないこと自体が運営基準違反です。求められているのは、感染症と非常災害の発生時にサービス提供を継続し、非常時の体制で早期に業務を再開するための計画を作ること、計画に従って必要な措置を講じること、従業者へ周知して研修と訓練を定期的に行うこと、そして定期的に見直すことの4つです。 報酬面では業務継続計画未策定減算が置かれています。所定単位数の100分の3(療養介護、施設入所支援、共同生活援助、宿泊型自立訓練、障害児入所施設)または100分の1(生活介護、短期入所、就労移行支援、就労継続支援、居宅介護など)で、就労継続支援B型や生活介護のように1日につき算定するサービスでは、基本報酬の1日分ごとに1%が引かれます。ただし減算の算定要件は「計画を策定すること」と「計画に従い必要な措置を講ずること」の2つだけで、周知・研修・訓練・見直しの実施の有無は減算要件に含まれていません(2026年8月16日時点)。 - 義務化の時期: 令和6年(2024年)4月1日。令和3年4月1日から令和6年3月31日までは努力義務 - 根拠: 指定障害福祉サービス基準(平成18年厚生労働省令第171号)第33条の2 - 省令上の義務: ①計画の策定と計画に従った必要な措置 ②従業者への周知と定期的な研修・訓練 ③定期的な見直しと必要に応じた変更 - 研修・訓練の頻度: 解釈通知でいずれも年1回以上。訓練は机上と実地を適切に組み合わせる - 業務継続計画未策定減算の率: 所定単位数の100分の3(療養介護・施設入所支援・共同生活援助・宿泊型自立訓練・障害児入所施設)/100分の1(生活介護・短期入所・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援・居宅介護など) - 減算の算定要件: 「業務継続計画を策定すること」と「当該業務継続計画に従い必要な措置を講ずること」の2つのみ。感染症と災害のいずれか一方が未策定でも対象 - 減算の適用開始: 原則として令和7年(2025年)4月1日から。感染症の予防及びまん延の防止のための指針と非常災害に関する具体的計画のいずれも策定していない生活介護・就労継続支援等は令和6年4月から。就労選択支援は令和9年3月31日まで適用しない - 遡及: 運営指導で発見された時点ではなく「基準を満たさない事実が生じた時点」まで遡って適用される 根拠: 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(解釈通知・令和6年度改定 新旧対照表) ### 本文 ## 省令が求めているのは、策定と研修訓練と見直しの3層 第33条の2は3項に分かれていて、それぞれ違うことを求めています。第1項が計画の策定と計画に従った必要な措置、第2項が従業者への周知と定期的な研修および訓練の実施、第3項が定期的な見直しと必要に応じた変更です。義務化されたのは令和6年4月1日で、令和3年1月25日厚生労働省令第10号の附則第3条により、令和3年4月1日から令和6年3月31日までの3年間は努力義務でした。同じ日に感染症の予防およびまん延の防止のための措置も義務化されているので、両方をまとめて整備した事業所も多いはずです。 計画に何を書くかは省令には書かれておらず、解釈通知が項目を示しています。感染症と災害で構成が違う点が実務上の落とし穴です。 | 区分 | 記載する項目 | | --- | --- | | 感染症に係る業務継続計画 | 平時からの備え(体制構築・整備、感染症防止に向けた取組の実施、備蓄品の確保等)/初動対応/感染拡大防止体制の確立(保健所との連携、濃厚接触者への対応、関係者との情報共有等) | | 災害に係る業務継続計画 | 平常時の対応(建物・設備の安全対策、電気・水道等のライフラインが停止した場合の対策、必要品の備蓄等)/緊急時の対応(業務継続計画発動基準、対応体制等)/他施設及び地域との連携 | 解釈通知は、この2つを一体的に策定することを妨げないと述べています。1冊にまとめてもかまいませんが、感染症編の「初動対応」と災害編の「発動基準」は別物なので、両方が抜けずに入っているかを目次で確認してください。想定される災害は地域によって異なるため、項目は実態に応じて設定することとされています。 研修と訓練は、解釈通知でいずれも年1回以上です。研修は新規採用時に別途実施することが望ましいとされ、実施内容の記録も求められます。訓練は机上か実地かを問われませんが、机上と実地を適切に組み合わせることが適切とされています。感染症のBCPに係る研修・訓練は、感染症の予防およびまん延の防止のための研修・訓練と一体的に実施して差し支えありません。さらに、BCPの策定も研修・訓練の実施も、他のサービス事業者との連携等により行って差し支えないと明記されています。 ## 減算の要件は「策定したか」だけで、研修や訓練は入っていない 業務継続計画未策定減算は令和6年度報酬改定で新設されました。算定要件は、感染症や非常災害の発生時にサービス提供を継続的に実施するための計画を策定すること、および当該計画に従い必要な措置を講ずること、この2つだけです。令和6年度Q&A VOL.1の問14は、周知・研修・訓練・定期的な見直しの実施の有無は減算の算定要件ではないと明言しています。逆に、感染症と災害のどちらか一方の計画が欠けているだけでも減算の対象になります。 | 項目 | 内容 | | --- | --- | | 100分の3 | 療養介護、施設入所支援(施設入所支援のほか障害者支援施設が行う各サービスを含む)、共同生活援助、宿泊型自立訓練、障害児入所施設 | | 100分の1 | 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、短期入所、生活介護、自立生活援助、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、計画相談支援、地域移行支援、地域定着支援、障害児相談支援、児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援(障害者支援施設が行う各サービスを除く) | | 適用開始(原則) | 令和7年(2025年)4月1日 | | 令和6年4月から対象になる場合 | 生活介護、短期入所、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、共同生活援助、療養介護、施設入所支援、自立訓練などで、「感染症の予防及びまん延の防止のための指針の整備」と「非常災害に関する具体的計画」の策定のいずれも行っていない場合 | | 適用しない場合 | 就労選択支援は令和9年3月31日までの間、適用しない | 率は所定単位数に対する割合です。就労継続支援B型サービス費や生活介護サービス費は1日につき算定されるため、減算も1日分の基本報酬ごとにかかります。計画相談支援のサービス利用支援費は1月につき算定されるので、こちらは1月あたりの減算になります。なお同じ就労継続支援B型でも、障害者支援施設が行う場合は指定障害者支援施設基準第42条の2第1項が根拠となり100分の3です。 見落としやすいのが遡及です。令和6年度Q&A VOL.1の問15は、行政機関が運営指導等で不適切な取扱いを発見した時点ではなく「基準を満たさない事実が生じた時点」まで遡って減算を適用するとしています。示された例では、令和7年4月から減算対象となるサービスの事業所で令和7年10月の運営指導によりBCP未策定が判明した場合、令和7年4月分の報酬から減算対象です。半年分の返還が一度に立つ計算になるので、[運営指導](/column/unei-shido/)の連絡が来てから慌てて作っても間に合いません。 なお、令和8年度障害福祉サービス等報酬改定の改定事項資料および同改定に伴う留意事項通知の一部改正、令和8年度のQ&A VOL.1・VOL.2には、この減算の率や要件を変更する記載は見当たりませんでした(2026年8月16日確認)。 ## 運営指導では4点セットで見られる 減算の要件は策定の有無だけですが、運営指導で確認されるのはそれより広い範囲です。令和8年6月8日付けで新たに定められた「確認項目及び確認文書」の就労継続支援B型シートでは、業務継続計画の策定等(第202条において第33条の2を準用)について、次の3点が確認項目として並んでいます。感染症および非常災害に対応した業務継続計画を策定し計画に基づく必要な措置を講じているか、業務継続計画について従業者に周知するとともに研修および訓練を定期的に実施しているか、業務継続計画について定期的に見直しを行い必要に応じて変更しているか。 これに対応する確認文書は、業務継続計画、周知記録(配布記録、説明記録等)、研修・訓練記録、見直し記録等の4点です。生活介護や共同生活援助のシートも同じ構成でした。つまり計画そのものは減算に、周知記録から見直し記録までの3点は[運営指導での指摘](/column/unei-shido-shiteki/)に効いてきます。集団指導・運営指導マニュアルも、非常災害対応マニュアルに基づく避難・救出訓練の定期実施に加えて、BCPが策定されているか、その内容や運用状況についても確認することが必要と書いています。 ## 厚生労働省のガイドラインとひな形をそのまま使う 解釈通知は、記載内容について厚生労働省の2つの業務継続ガイドラインを参照するよう指示しています。つまり国が示した項目立てに沿って書けば、記載項目の要件は満たせる構造になっています。ひな形はいずれもWord形式で公開されているので、白紙から書き起こす必要はありません。 | 資料 | 公表 | 入手先 | | --- | --- | --- | | 自然災害発生時の業務継続ガイドライン | 令和3年3月 | [厚生労働省PDF](https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000756659.pdf) | | 自然災害BCPひな形(Word) | 掲載ページに公表年月の記載なし | [厚生労働省Word](https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000756661.doc) | | 新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン | 令和2年12月 | [厚生労働省PDF](https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000940032.pdf) | | 感染症BCPひな形(入所・入居系/通所系/訪問系)・様式ツール集 | 掲載ページに公表年月の記載なし | [厚生労働省の掲載ページ](https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15758.html) | 感染症側のひな形はサービス類型ごとに3種類あるので、自事業所の類型に合うものを選びます。自然災害ガイドラインの巻末には、感染症流行下で自然災害が発生した複合災害への留意事項も収められています。 小規模事業所で先に手を付けるなら、ひな形の全項目をいきなり埋めようとせず、埋まらない項目を洗い出すところから始めるのが早いです。備蓄品の数量、停電時に使う設備、緊急連絡網、参集基準といった項目は、事業所ごとの実情を書くしかない部分で、ここを決めるのに時間がかかります。逆に体制構築や保健所との連携の枠組みはひな形の記述をそのまま使える箇所が多く、埋める順番を分けるだけで初版の完成が早まります。 研修と訓練は、それぞれ別枠で年1回ずつ確保するより、既にある会議に載せるほうが続きます。感染症のBCPに係る研修・訓練は感染症の予防およびまん延の防止のための研修・訓練と一体的に実施してよいとされているので、感染症対策の年間計画にBCPの内容を組み込めば1回で両方の記録が残ります。訓練は机上で構わないため、計画の発動基準を読み合わせて役割分担を確認する形でも成立します。ただし机上と実地を組み合わせることが適切とされているので、避難訓練の際にBCPの緊急時対応を確認する回を1つ入れておくと形が整います。 記録の残し方は、計画本体・周知記録・研修訓練記録・見直し記録の4種類でフォルダを分け、実施した日付と参加者が分かる形で保存しておくと扱いやすくなります。国の確認文書がこの4区分なので、同じ区分で持っておけば運営指導の当日に探す時間がかかりません。見直しは年1回、職員体制や連絡先が変わったタイミングで更新日を入れて差し替えると、記録として説明しやすくなります。 ## 何から着手するかの順番 減算の観点だけで言えば、感染症と災害の両方の計画が存在していることが最優先です。まだ1本もないなら、ひな形をダウンロードして事業所名と組織図と連絡先を埋めた初版を先に成立させ、備蓄品リストや複合災害の記述は次の見直しに回すという順番になります。策定の有無だけが減算要件である以上、完成度を上げる作業と減算を止める作業は分けて考えたほうが合理的です。 そのうえで、周知記録・研修訓練記録・見直し記録の3点を1年かけて積み上げます。[運営指導の準備](/column/unei-shido-junbi/)の段階でこの3点が空だと、計画があっても第2項・第3項の違反として指摘されます。就労継続支援A型・B型と共同生活援助は3年に1回以上の頻度で運営指導を実施することとされているため、3年分の記録が残る形で運用を回しておくのが現実的な備え方です。 ### よくある質問 Q. BCPを作っていないと必ず減算されますか。 A. はい、業務継続計画未策定減算の対象になります。令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1の問14は、感染症と災害のいずれか一方、または両方の業務継続計画が未策定の場合や、計画に従い必要な措置が講じられていない場合に減算の対象になるとしています。減算率は所定単位数の100分の1(生活介護、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、短期入所、居宅介護など)または100分の3(療養介護、施設入所支援、共同生活援助、宿泊型自立訓練、障害児入所施設)です。 Q. 感染症のBCPと災害のBCPは1つにまとめてよいですか。 A. 一体的に策定して差し支えありません。解釈通知は「感染症及び災害の業務継続計画を一体的に策定することを妨げるものではない」と明記しています。ただし記載項目は別で、感染症編は平時からの備え・初動対応・感染拡大防止体制の確立、災害編は平常時の対応・緊急時の対応・他施設及び地域との連携が挙げられており、一体化しても両方の項目が揃っている必要があります。 Q. BCPの研修と訓練は年に何回必要ですか。 A. 解釈通知ではいずれも年1回以上です。研修は定期的(年1回以上)に実施したうえで新規採用時に別に研修を行うことが望ましいとされ、訓練(シミュレーション)も定期的(年1回以上)に実施するものとされています。訓練の手法は机上を含めて問われませんが、机上と実地で実施するものを適切に組み合わせることが適切とされています。なお感染症のBCPに係る研修・訓練は、感染症の予防及びまん延の防止のための研修・訓練と一体的に実施して差し支えありません。 Q. 研修や訓練をやっていない場合も減算されますか。 A. 減算にはなりませんが、運営基準違反として指摘されます。令和6年度Q&A VOL.1の問14は、業務継続計画の周知、研修、訓練及び定期的な見直しの実施の有無は業務継続計画未策定減算の算定要件ではないと明言しています。ただし省令第33条の2第2項・第3項の義務であることに変わりはなく、令和8年6月に示された「確認項目及び確認文書」でも、周知記録・研修訓練記録・見直し記録が運営指導の確認文書として挙げられています。 Q. 減算はいつまで遡って適用されますか。 A. 「基準を満たさない事実が生じた時点」まで遡ります。令和6年度Q&A VOL.1の問15は、行政機関が運営指導等で不適切な取扱いを発見した時点ではなく事実が生じた時点まで遡及するとし、令和7年4月から減算対象となるサービスの事業所で令和7年10月の運営指導によりBCP未策定が判明した場合は、令和7年4月分の報酬から減算対象になるという例を示しています。 ### 根拠資料 - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第33条の2」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(解釈通知・令和6年度報酬改定 新旧対照表)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001494357.pdf(2026年08月16日確認。(23)業務継続計画の策定等) - 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」 https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001217865.pdf(2026年08月16日確認。業務継続に向けた感染症や災害への対応力の取組の強化) - こども家庭庁・厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和6年こども家庭庁・厚生労働省告示第3号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001239565.pdf(2026年08月16日確認。就労継続支援B型は注13) - 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1(令和6年3月29日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001260473.pdf(2026年08月16日確認。問14・問15) - 厚生労働省「障害福祉サービス事業所等における自然災害発生時の業務継続ガイドライン(令和3年3月)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000756659.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「自然災害BCPひな形(Word)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000756661.doc(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「障害福祉サービス事業所等における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン(令和2年12月)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000940032.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「感染対策マニュアル・業務継続ガイドライン等について(感染症BCPひな形・様式ツール集の掲載ページ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15758.html(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「確認項目及び確認文書(令和8年6月8日・サービス別Excel)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260608-22.xlsx(2026年08月16日確認。就労継続支援B型シート「業務継続計画の策定等」) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等に対する集団指導・運営指導マニュアル(令和8年6月)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260609-2.pdf(2026年08月16日確認。運営指導の実施頻度と非常災害対策・BCPの確認に関する記述) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 障害者虐待防止法が事業所に 求める義務。通報の範囲と、 発見したときの動き方 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/gyakutai-boushi-hou/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2025.10.01 ### 結論 障害者虐待防止法(平成23年法律第79号、平成24年10月1日施行)は、障害福祉サービス事業所に対して、虐待を発見した者による市町村への通報義務を課しています。義務が生じるのは「障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した」時点で、虐待だと確定していなくても通報しなければなりません(第16条第1項)。義務を負うのは発見した者すべてで、外部の人だけでなく職員も、職員から相談を受けて疑いを感じた管理者やサービス管理責任者も同じです。通報した職員は守秘義務規定を理由に妨げられず、通報を理由とする解雇その他の不利益な取扱いも禁じられています(同条第3項・第4項)。市町村は通報を受けると都道府県に報告し(第17条)、市町村長または都道府県知事が社会福祉法や障害者総合支援法の権限を行使して事実確認と改善指導にあたります(第19条)。2026年8月16日時点で有効な内容です。 - 通報義務が生じる水準: 「虐待を受けたと思われる障害者を発見した」時点。事実が確認できていなくても通報する(第16条第1項) - 通報先: 市町村。実務上は虐待を受けた利用者の支給決定をした市町村の窓口(市町村障害者虐待防止センター) - 虐待の5類型: 身体的虐待(正当な理由のない身体拘束を含む)/性的虐待/心理的虐待(不当な差別的言動を含む)/放棄・放置/経済的虐待(第2条第7項第1号〜第5号) - 通報者の保護: 守秘義務規定は通報を妨げない(第16条第3項)/通報を理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(同条第4項)/通報者を特定させる事項を市町村・都道府県の職員が漏らすことの禁止(第18条) - 通報義務違反の罰則: 障害者虐待防止法に通報しなかったこと自体への罰則はない。ただし立入検査での虚偽答弁や検査拒否は障害者総合支援法第111条で30万円以下の罰金、同法第50条等により指定の効力停止・取消しの対象になりうる - 通報後の流れ: 市町村が都道府県に報告(第17条)→ 市町村・都道府県が事実確認 → 虐待が認められれば改善指導、従わない場合は勧告・命令・指定の取消し等(第19条) - 都道府県による公表: 都道府県知事は毎年度、虐待の状況、採った措置、施設等の種別、従事者の職種を公表する(第20条) 根拠: e-Gov法令検索「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」/厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月) ### 本文 ## 「障害者福祉施設従事者等」に相談支援も移動支援も入る 障害者虐待防止法が定める虐待は3種類あります。養護者によるもの、障害者福祉施設従事者等によるもの、使用者によるものです(第2条第2項)。事業所の経営として直接効いてくるのは2つ目ですが、就労継続支援A型のように利用者と雇用契約を結ぶ場合は3つ目も関係します。 「障害者福祉施設従事者等」の範囲は第2条第4項に列挙されています。障害者支援施設とのぞみの園に加えて、障害福祉サービス事業、一般相談支援事業と特定相談支援事業、移動支援事業、地域活動支援センターを経営する事業、福祉ホームを経営する事業などが対象で、手引きはここに障害児通所支援事業と障害児相談支援事業も並べています。条文はこれらの事業に「係る業務に従事する者」と定めているだけなので、直接支援に当たる職員に限られません。対象となる「障害者」の側も、障害者基本法第2条第1号の定義がそのまま使われる結果、手帳を取得していない人や18歳未満の人を含みます。 ## 5つの類型は条文にそのまま並んでいる 行為の類型は第2条第7項に第1号から第5号まで置かれています。身体的虐待といった呼び名は条文にはなく、厚生労働省の手引きや全国調査が整理のために使っているものです。 | 類型(手引きの呼称) | 条文の定義(第2条第7項) | | --- | --- | | 身体的虐待(第1号) | 身体に外傷が生じ、もしくは生じるおそれのある暴行を加え、または正当な理由なく身体を拘束すること | | 性的虐待(第2号) | わいせつな行為をすること、またはわいせつな行為をさせること | | 心理的虐待(第3号) | 著しい暴言、著しく拒絶的な対応または不当な差別的言動その他の著しい心理的外傷を与える言動を行うこと | | 放棄・放置(第4号) | 衰弱させるような著しい減食または長時間の放置、他の障害者による第1号から第3号までと同様の行為の放置その他の養護すべき職務上の義務を著しく怠ること | | 経済的虐待(第5号) | 財産を不当に処分することその他不当に財産上の利益を得ること | 経営の観点で見落としやすいのは第1号と第4号です。第1号は「正当な理由なく身体を拘束すること」を身体的虐待の中に取り込んでいるので、記録も手続きもないまま行われた身体拘束はそのまま虐待の定義に入ります。指定基準側の要件は[身体拘束の適正化](/column/shintai-kousoku-tekiseika/)で整理しました。第4号は、他の利用者による行為を職員が放置することを明示的に含んでいます。利用者どうしのトラブルを「本人たちの問題」として処理する運用は、この号に当たる余地があります。 ## 通報義務は「疑い」の段階で発生する 第16条第1項は、通報義務の対象を「障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者」と定めています。虐待だと確定した場合に限られていません。手引きは、明らかに虐待を受けた場面を目撃した場合だけでなく、虐待を受けたのではないかと疑いを持った場合は事実が確認できなくても通報する義務があると説明しています。虐待かどうかを認定するのは通報を受けた側であって、事業所ではないという建て付けです。 義務を負うのは「発見した者」なので、家族や外部の関係者だけでなく、同じ事業所の職員も含まれます。ここから先が経営者にとって重要な部分で、手引きは、管理者やサービス管理責任者等が内部で起きた虐待の疑いについて職員から相談を受け、相談内容や利用者の様子から疑いを感じた場合には、相談を受けた管理者等にも通報義務が生じると書いています。報告を受けて事業所の中だけで事実確認を進め、事態を収束させてしまうと通報義務に反します。 通報先は市町村です。手引きは、実務上は虐待を受けた利用者の支給決定をした市町村の窓口に通報するとしています。市町村は障害者の福祉に関する事務を所掌する部局または施設が市町村障害者虐待防止センターとしての機能を果たすこととされており、その業務の全部または一部を委託している自治体もあります(第32条・第33条)。 なお、就労継続支援A型のように雇用契約に基づく場面で生じた使用者による障害者虐待は、通報先が市町村または都道府県のどちらでもよく(第22条第1項)、都道府県から都道府県労働局に報告が上がります(第24条)。同じ法人でも通報のルートが変わるので、A型とB型を併設している場合はあらかじめ整理しておく必要があります。 ## 通報した職員を守る規定は3本ある 通報をためらわせる要因のほとんどは、通報したことが事業所に知られて不利益を受けるのではないかという不安です。法律はこれに3つの規定で応えています。 第一に、刑法の秘密漏示罪その他の守秘義務に関する法律の規定は、通報を妨げるものと解釈してはならないとされています(第16条第3項)。虚偽によるものと過失によるものは除かれます。第二に、障害者福祉施設従事者等は通報したことを理由として解雇その他不利益な取扱いを受けません(同条第4項)。手引きは、これに該当する法律行為は民事上無効と解されるとしています。第三に、通報を受けた市町村の職員と、報告を受けた都道府県の職員は、職務上知り得た事項のうち通報者を特定させるものを漏らしてはなりません(第18条)。通報の受理業務を市町村から委託された事業者にも同じ義務がかかります(第33条第3項)。手引きは、匿名での通報も可能であることを研修等を通じて職員に伝えるよう求めています。 一方で、通報しなかったこと自体を罰する規定は障害者虐待防止法に置かれていません。罰則は委託先の秘密漏示と、養護者による虐待の立入調査の拒否に関するものだけです(第45条・第46条)。ただし、通報せずに済むという意味ではありません。市町村・都道府県が障害者総合支援法に基づいて行う報告徴収や立入検査に対して虚偽の答弁をしたり検査を妨げたりすれば、同法第111条により30万円以下の罰金の対象になり、同法第50条第1項などにより指定の効力停止や取消しの対象にもなります。 ## 通報を受けた市町村と都道府県は何をするのか 市町村は通報や届出を受けると、その内容を事業所所在地の都道府県に報告しなければなりません(第17条)。そのうえで市町村長または都道府県知事が、社会福祉法や障害者総合支援法等の規定による権限を適切に行使することとされています(第19条)。手引きによれば、まず報告徴収等による事実確認が行われ、虐待が認められた場合には改善指導が行われます。指導の例として挙げられているのは、虐待防止改善計画の作成、第三者による虐待防止のための委員会の設置、改善計画に沿って事業が行われているかを第三者委員が定期的にチェックすることです。 事業所の側に求められるのは調査への協力です。手引きは、聞き取りを受ける利用者や家族が安心して話せる場所を提供すること、勤務表・個別支援計画・介護記録等の提出に最大限協力することを挙げています。運営指導の側から見ると、虐待が疑われている事業所には事前通知なしで指導に入ることができ、虐待等により利用者の生命または身体の安全に危害を及ぼしている疑いがあれば、運営指導は中止されて監査に切り替わります([運営指導と監査の違い](/column/unei-shido-kansa-chigai/))。 令和6年度に虐待の事実が認められた1,267件に対して、実際に行使された権限は次のとおりです。 | 市区町村・都道府県の対応(令和6年度) | 件数 | | --- | --- | | 報告徴収、出頭要請、質問、立入検査 | 262 | | 改善勧告 | 77 | | 改善勧告に従わない場合の公表 | 10 | | 改善命令 | 15 | | 指定の効力の全部または一部停止 | 32 | | 指定取消 | 5 | | (上記の合計) | 401 | | 都道府県等による一般指導 | 386 | | 事業所からの改善計画の提出 | 1,027 | | 管理者・経営層を事業に関与させない指導や助言 | 42 | 指定取消の5件は、虐待行為のほか人員配置基準違反や不正請求等の違反行為も理由として行われたものだと報告書に注記されています。目を引くのは最終行で、管理者や経営層を事業から外す方向の指導が現に行われています。 職員が異変に気づいたときに迷わない状態をつくるには、通報の順路をあらかじめ紙にしておくのが早いです。手引きが示す順路は、現場の職員が発見したら速やかに市町村の窓口へ通報する、事業所が「通報の手順」を定めている場合は直属の上司や管理責任者に報告して通報してもらってもよい、報告したのに通報されなければ期間を置かずに自ら通報する、という三段です。三段目まで書いておかないと、上司に上げたところで止まります。 管理者の側の手順も、同じ紙に並べて決めておく必要があります。報告を受けたら虐待だと明確に判断できない場合でも速やかに通報し、あわせて法人の理事長へ報告して臨時理事会の要否を検討する。利用者の安全確保を最優先にして、事実関係が明らかになるまでの間は当該職員を直接支援以外の部署に移すか出勤停止とする。時系列の記録を残し、行政の事実確認に備えて勤務表・個別支援計画・介護記録の類をすぐ出せるようにしておく。ここまでが手引きに書かれている内容で、事業所ごとの判断が入る余地はほとんどありません。 通報先の窓口名と電話番号は、指定権者の市町村に確認したうえで掲示物に載せておくと、職員が探さずに済みます。市町村障害者虐待防止センターの機能を委託している自治体があり、直営か委託かで連絡先が変わります。 ## 令和6年度の数字が示していること 厚生労働省が令和7年12月に公表した全国調査によると、令和6年度に全国の1,741市区町村と47都道府県が受け付けた障害者福祉施設従事者等による虐待の相談・通報は5,870件で、虐待の事実が認められたのは1,267件、被虐待者は2,010人でした。虐待が認められた事業所の種別は共同生活援助が31.6%で最も多く、障害者支援施設19.2%、放課後等デイサービス12.4%、生活介護11.3%、就労継続支援B型7.8%と続きます。 読み方を変える必要があるのは、次の2つの数字の組み合わせです。相談・通報の入り口を見ると、最も多いのは「当該施設・事業所職員」による通報で20.5%、次いで「当該施設・事業所の設置者・管理者」による通報が16.5%、本人による届出が13.8%、家族・親族による通報が10.0%です(1件に複数の通報者がある場合はそれぞれ計上されるため、合計は100%になりません)。事業所の内側から出た通報が、家族・親族からの通報を大きく上回っています。一方、虐待の事実が認められた1,267件について事実確認調査時に確認された取組を見ると、職員に対する虐待防止研修の実施が69.4%、虐待防止委員会の開催と検討結果の周知が59.7%あるのに対して、通報義務の履行は51.5%にとどまります。 研修も委員会も動いている事業所で虐待は起きており、そのうち半分近くは通報義務が果たされていなかったということです。委員会と研修を回すこと自体は[虐待防止体制の整備](/column/gyakutai-boushi-taisei/)として指定基準上の義務ですが、それをそろえても通報の判断とは別物だという結果が出ています。 なお、通報の受理や事実確認の運用は市町村ごとに幅があります。自事業所の通報先と手順は、指定権者と支給決定を行う市町村の障害福祉担当課に確認してください。 ### よくある質問 Q. 虐待かどうか確信が持てない段階でも通報しなければなりませんか? A. 通報しなければなりません。障害者虐待防止法第16条第1項の通報義務は「障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者」に課されており、厚生労働省・こども家庭庁の手引き(令和6年7月)は、明らかに虐待の場面を目撃した場合だけでなく、虐待を受けたのではないかと疑いを持った場合は事実が確認できなくても通報する義務があると説明しています。虐待に当たるかどうかを判断するのは通報を受けた市町村・都道府県であり、事業所の側で先に結論を出す仕組みにはなっていません。 Q. 職員から相談を受けた管理者にも通報義務がありますか? A. あります。手引きは、事業所の内部で起きた虐待の疑いについて管理者やサービス管理責任者等が職員から相談を受けた場合、相談内容や利用者の様子等から虐待の疑いを感じたときは、相談を受けた管理者等にも市町村への通報義務が生じると明記しています。市町村に通報しないまま事業所の中だけで事実確認を進めて事態を収束させると、通報義務に反することになります。 Q. 通報した職員を配置転換や懲戒の対象にできますか? A. できません。障害者虐待防止法第16条第4項は、障害者福祉施設従事者等は通報したことを理由として解雇その他不利益な取扱いを受けないと定めています(虚偽であるもの、および一般人であれば虐待と考えることに合理性がない過失によるものは除かれます)。手引きは、通報を理由とする解雇や不利益な取扱いに該当する法律行為は民事上無効と解されるとしています。通報した職員に対して事業所側が損害賠償請求を行った事案について、手引きは法の趣旨に沿わないものだと述べています。 Q. 通報先は市町村と都道府県のどちらですか? A. 障害者福祉施設従事者等による虐待は市町村です(第16条第1項)。実務上は虐待を受けた利用者の支給決定をした市町村の窓口、つまり市町村障害者虐待防止センターとしての機能を果たす部署に通報します。市町村は受理した内容を事業所所在地の都道府県に報告します(第17条)。これに対して、就労継続支援A型の雇用契約などで生じる使用者による障害者虐待は、市町村または都道府県のいずれに通報してもよいことになっており(第22条第1項)、都道府県は事業所所在地を管轄する都道府県労働局に報告します(第24条)。 Q. 通報すると事業所名が公表されますか? A. 通報だけで事業所名が公表される仕組みにはなっていません。障害者虐待防止法第20条に基づき都道府県知事が毎年度公表するのは、虐待の状況、採った措置、虐待があった施設等の種別、虐待を行った従事者の職種であり、手引きはこの公表制度が施設等に制裁を与えることを目的とするものではないと明記しています。ただし虐待等により指定取消しが行われた場合は、障害者総合支援法に基づきその旨が公示されます。自治体によっては法定の公表事項以外に指導等を公表する場合があります。 Q. 利用者どうしのトラブルを放置した場合も虐待になりますか? A. なる場合があります。障害者虐待防止法第2条第7項第4号は、放棄・放置(ネグレクト)の中に「他の障害者による前三号に掲げる行為と同様の行為の放置」を含めており、他の利用者による身体的・性的・心理的な行為を職員が放置することも、障害者を養護すべき職務上の義務を著しく怠ることとして虐待に当たりうる書き方になっています。手引きの類型例にも、他の利用者に暴力を振るう障害者に対して何ら予防的手立てをしていない例が挙げられています。 ### 根拠資料 - e-Gov法令検索「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(平成23年法律第79号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/423AC1000000079(第2条第4項・第7項、第15条〜第20条、第22条〜第24条、第32条、第45条・第46条、附則第1条の原文を確認。令和7年10月1日施行版・2026年08月16日確認) - 厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き(令和6年7月)」 https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/7692b729-5944-45ee-bbd8-f0283126b7db/0a23426e/20241101_policies_shougaijishien_shisaku_guideline_tebiki_18.pdf(Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ章の本文と類型例(表-1)を確認・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「令和6年度「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果報告書(令和7年12月)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12203000/001619246.pdf(相談・通報件数、虐待判断件数、事業所種別、通報者内訳、権限行使件数を確認・2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第111条」 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123(報告拒否・虚偽答弁・検査忌避に対する30万円以下の罰金を確認・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等指導指針(令和8年6月8日 障発0608第1号 別添1)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260608-1.pdf(虐待が疑われる場合の無通告実施、監査への変更の要件を確認・2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 障害者虐待防止の体制整備 委員会・研修・担当者の3点と 未実施なら基本報酬の1%減算 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/gyakutai-boushi-taisei/ カテゴリー: 現場・人材 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2024.04.01 ### 結論 2026年8月16日時点で、指定障害福祉サービス事業者に義務づけられている虐待防止の体制整備は3つです。虐待防止委員会を定期的に開催して結果を従業者に周知徹底すること、従業者に対して虐待の防止のための研修を定期的に実施すること、この2つを適切に実施するための担当者を置くこと。指定障害福祉サービス基準(平成18年厚生労働省令第171号)第40条の2が定めるのはこの3点だけで、指針の整備は条文に入っていません。委員会と研修の「定期的」は、解釈通知と留意事項通知でいずれも年1回以上と示されています。 3つのうちどれかを満たしていない事実が生じると、虐待防止措置未実施減算として所定単位数の100分の1が減算されます。減算率は全サービス共通の1%で、身体拘束廃止未実施減算と違って障害者支援施設でも10%にはなりません。減算されるのは事実が生じた月の翌月から改善が認められた月までで、その間は利用者全員について引かれます。 - 義務の根拠: 指定障害福祉サービス基準第40条の2。令和4年(2022年)4月1日から義務(令和3年度は努力義務) - 虐待防止委員会: 少なくとも年1回以上開催し、結果を従業者に周知徹底する。法人単位での設置も可 - 従業者への研修: 年1回以上。加えて新規採用時には必ず実施する - 担当者: 専任の虐待防止担当者を必ず置く。サービス提供責任者等を配置する - 虐待防止のための指針: 省令上の義務ではなく「作成することが望ましい」。義務なのは身体拘束等の適正化のための指針 - 虐待防止措置未実施減算: 所定単位数の100分の1(1%)。全サービス共通で、障害者支援施設でも1% - 減算される期間: 事実が生じた月の翌月から、改善が認められた月まで。利用者全員について減算 - 記録の保存: 虐待防止委員会における対応状況は適切に記録のうえ5年間保存する 根拠: 厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日障発第1031001号)第二の1 ### 本文 ## 省令が求めているのは3つの措置だけ 指定障害福祉サービス基準第40条の2は、虐待の発生またはその再発を防止するため、次の各号に掲げる措置を講じなければならない、として3つを並べています。虐待の防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催して結果を従業者に周知徹底すること、従業者に対し虐待の防止のための研修を定期的に実施すること、前二号の措置を適切に実施するための担当者を置くこと。条文はここで終わっていて、指針の整備は含まれていません。 現場では「虐待防止責任者」という呼び方をすることがありますが、省令の文言は「担当者を置くこと」です。解釈通知はこれを「専任の虐待防止担当者(必置)」と表現し、サービス提供責任者等を配置することとしています。呼称は事業所の判断で構いませんが、運営指導で示す実体は専任で置かれた担当者です。 この3つが義務になったのは令和4年(2022年)4月1日です。令和3年1月25日厚生労働省令第10号の附則により、令和3年4月1日から令和4年3月31日までは努力義務でしたが、その経過措置はすでに終わっています。 ## 委員会と研修は年1回以上。まとめてよい部分がある 「定期的に」の中身は省令ではなく解釈通知と留意事項通知が具体化しています。小規模な事業所ほど気になるのは開催頻度と人数ですが、いずれもかなり緩く設計されています。 | 求められること | 具体的な水準 | まとめてよい範囲 | | --- | --- | --- | | 虐待防止委員会 | 少なくとも年1回以上開催し、結果を従業者に周知徹底する | 法人単位での設置・開催が可。身体拘束適正化検討委員会と一体的に設置・運営してよい | | 委員会の構成 | 管理者と虐待防止担当者が参画していれば最低人数は問わない | 利用者・家族・専門的な知見のある外部の第三者も加えるよう努める | | 委員会の記録 | 対応状況を適切に記録し5年間保存する | ー | | 従業者への研修 | 年1回以上。加えて新規採用時には必ず実施する | 虐待防止の研修で身体拘束等の適正化を扱えば、身体拘束の研修も実施したものとみなされる | | 研修の実施方法 | 実施内容を記録する | 事業所内の職員研修のほか、協議会や基幹相談支援センター等が実施する研修への参加でもよい | | 担当者 | 専任の虐待防止担当者を置く(必置) | 担当者と管理者は都道府県が行う研修に参加することが望ましい | 一体開催と一体研修が認められている意味は大きく、年1回の会議と年1回の研修を丁寧に設計すれば、虐待防止と[身体拘束の適正化](/column/shintai-kousoku-tekiseika/)の両方の要件を同時に満たせます。ただし「みなす」ためには、その回で身体拘束等の適正化を検討・研修したことが議事録や研修記録から読み取れる必要があります。議題を一行足しておくかどうかで結論が変わる部分です。 解釈通知は委員会の役割を、虐待防止のための計画づくり、虐待が起こりやすい職場環境の確認などのチェックとモニタリング、虐待発生後の検証と再発防止策の検討、の3つに整理しています。年1回の会議で何を話すか迷ったときは、この3つをそのまま議題に据えるのが原典に沿った形です。 ## 減算は1%。効いてくるのは率ではなく期間 虐待防止措置未実施減算は令和6年度報酬改定で新設され、令和6年4月1日から適用されています。対象は全サービス、減算率は所定単位数の100分の1です。 留意事項通知が減算の対象として挙げているのは3つで、省令の3つの措置とそのまま対応しています。虐待防止委員会を1年に1回以上開催していない場合、研修を1年に1回以上実施していない場合、そして虐待防止措置を適切に実施するための担当者を配置していない場合です。 金額に効いてくるのは率ではなく期間のほうです。減算は事実が生じた月の翌月から改善が認められた月まで続き、その間は利用者全員について引かれます。「事実が生じた」とは運営基準を満たしていない状況が確認されたことを指すので、前回の委員会から1年が過ぎた翌月から対象になる、という数え方になります。速やかに改善計画を都道府県知事等に提出し、事実が生じた月から3か月後に改善状況を報告する手続も定められています。 就労継続支援B型サービス費は1日につき算定されます。令和8年6月に基本報酬区分の基準額が見直されたあとの単位数で、利用定員20人以下・平均工賃月額3万3千円以上3万5千円未満の区分(758単位)を例にとると、延べ利用日数が月400人日の事業所なら基本報酬は303,200単位、その1%にあたるおよそ3,000単位が毎月引かれる計算になります。改善が認められるまで数か月続けば、委員会を1回開き忘れただけの結果としては小さくない額です。 なお、この1%は各種加算がなされる前の基本報酬に対する割合で、加算を含めた合計に対する1%ではありません。複数の減算事由に該当する場合は、他の減算をしたあとの単位数に対して1%を計算します。身体拘束廃止未実施減算のように施設・居住系だけ10%になる区分はなく、障害者支援施設基準第54条の2に適合していない場合も1%です。事実が継続する場合は改善指導が行われ、指導に従わない場合は特別な事情がある場合を除き指定の取消しを検討する、とも書かれています。 ## 運営指導で出すのは3種類の書類 令和8年6月8日に整備された「確認項目及び確認文書」では、就労継続支援B型の「虐待の防止」について、確認文書が委員会議事録、研修を実施したことが分かる書類、担当者を配置していることが分かる書類の3つと明示されました。確認項目も省令の3つと同じです。求められる書類が事前に公開されている以上、[運営指導での指摘](/column/unei-shido-shiteki/)を避ける準備はこの3点に絞れます。 もう一か所、運営規程にも「虐待の防止のための措置に関する事項」を定める必要があります。厚生労働省・こども家庭庁の手引き(令和6年7月)は、その中身として担当者の選定、成年後見制度の利用支援、苦情解決体制の整備、従業者への研修の実施、虐待防止委員会の設置等を挙げています。委員会と研修を回していても、運営規程が古いままだとそちらで指摘を受けます。 ## 数字が示しているのは知識と組織風土の問題 令和6年度の全数調査では、障害者福祉施設従事者等による虐待の事実が認められたのは1,267件でした。市区町村等の職員が判断した発生要因は、教育・知識・介護技術等に関する問題が67.5%、倫理観や理念の欠如が60.2%、職員のストレスや感情コントロールの問題が58.7%と続きます。人員不足や人員配置の問題は29.8%で、上位3つとは差があります。 同じ調査で、虐待が認められた事業所において確認された取組の実施割合は、職員研修の実施が69.4%、虐待防止委員会の開催と検討結果の周知が59.7%、[通報義務](/column/gyakutai-boushi-hou/)の履行が51.5%でした。裏を返せば、虐待が起きた事業所の4割は委員会を開いていません。委員会と研修は減算を避けるための形式ではなく、上位の発生要因である知識と倫理観に直接効く手段として設計されている、というのが数字の読み方です。 年1回の委員会、年1回の研修、新規採用時の研修、そして担当者1名。小規模事業所がまず組むべきなのは、この4つを年間予定表と採用手続きに書き込んでしまうことです。法人単位の設置と身体拘束との一体運営を使えば、実際に増える手間は年に会議1回と研修1回に収まります。 ### よくある質問 Q. 虐待防止のための指針は必ず作らないといけませんか? A. いいえ、省令上の義務ではありません。指定障害福祉サービス基準第40条の2が挙げているのは委員会・研修・担当者の3つだけで、指針は条文にありません。解釈通知が「虐待防止のための指針を作成することが望ましい」として基本的な考え方など7項目を示しているにとどまります。指針の整備が義務なのは身体拘束等の適正化のほうで、こちらは第35条の2第3項第2号に明記されています。混同して「虐待防止指針がないと減算」と考える必要はありません。 Q. 虐待防止委員会は年に何回開けばよいですか? A. 少なくとも年1回以上です。解釈通知が「少なくとも1年に1回は開催することが必要」としており、留意事項通知も減算の対象を「1年に1回以上開催していない場合」と具体的に示しています。事業所単位ではなく法人単位で設置・開催することが認められており、身体拘束適正化検討委員会と一体的に設置・運営した場合(虐待防止委員会で身体拘束等の適正化を検討する場合を含む)は、当該委員会を開催しているものとみなして差し支えないとされています。 Q. 虐待防止措置未実施減算はいくら減りますか? A. 所定単位数の100分の1(1%)です。全サービス共通の率で、身体拘束廃止未実施減算のように施設・居住系だけ10%になるという区分はなく、障害者支援施設基準第54条の2に適合していない場合も1%です。この所定単位数は各種加算がなされる前の基本報酬の単位数で、加算を含めた合計に対する1%ではありません。複数の減算事由に該当する場合は、他の減算をしたあとの単位数(減算後基本報酬所定単位数)に対して1%を計算します。 Q. 減算はいつからいつまで続きますか? A. 事実が生じた月の翌月から、改善が認められた月までです。その間は利用者全員について所定単位数から減算されます。手続としては、速やかに改善計画を都道府県知事等に提出し、事実が生じた月から3か月後に改善計画に基づく改善状況を報告することとされています。「事実が生じた」とは運営基準を満たしていない状況が確認されたことを指します。事実が継続する場合は改善指導が行われ、指導に従わない場合は特別な事情がある場合を除き指定の取消しを検討するとされています。 Q. 新しく指定を受けた事業所は、いつまでに体制を整えればよいですか? A. 担当者の配置は指定と同時に行う必要があり、委員会の開催と研修の実施は指定後速やかに実施することが求められます。令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1の問84が、新規に指定を受ける事業所についてこの取扱いを示しています。指定日に担当者が決まっていない状態は、その時点で減算事由に該当することになります。 Q. 虐待防止の研修と身体拘束の研修は別々にやる必要がありますか? A. 一本にまとめられます。解釈通知は、虐待防止に関する研修において身体拘束等の適正化について取り扱う場合は、身体拘束等の適正化のための研修を実施しているものとみなして差し支えないとしています。ただし年1回以上という頻度と、新規採用時に必ず実施することは変わりません。研修の実施内容を記録することも求められているので、その回で身体拘束等の適正化を扱ったことが分かるように残しておく必要があります。 ### 根拠資料 - e-Gov法令検索(厚生労働省令)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第40条の2・第35条の2」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年08月16日確認。第40条の2の条文に指針の整備は含まれていないことを確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(解釈通知・新旧対照表)(31)虐待の防止(基準第40条の2)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001494357.pdf(2026年08月16日確認。委員会は年1回以上・記録は5年保存・研修は年1回以上と新規採用時・指針は「望ましい」) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(平成18年10月31日障発第1031001号)第二の1」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(2026年08月16日確認。虐待防止措置未実施減算の対象・単位数・適用期間。令和8年度改正の新旧対照表で改正前後の記載は同一) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和6年こども家庭庁・厚生労働省告示第3号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001239565.pdf(2026年08月16日確認。就労継続支援B型サービス費は「1日につき」。同注15で第40条の2不適合は100分の1) - 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容(障害者虐待の防止・権利擁護)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001217865.pdf(2026年08月16日確認。虐待防止措置未実施減算は令和6年度改定で新設・所定単位数の1%) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(令和8年2月18日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf(2026年08月16日確認。就労継続支援B型の基本報酬区分の基準の見直し(令和8年6月施行)。虐待防止・身体拘束・業務継続計画の3減算に関する改定項目の記載はなし) - 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1(令和6年3月29日)問84」 https://www.mhlw.go.jp/content/001260473.pdf(2026年08月16日確認。新規指定事業所の担当者配置は指定と同時、委員会と研修は指定後速やかに) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等に対する集団指導・運営指導マニュアル/確認項目及び確認文書(令和8年6月8日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260608-22.xlsx(2026年08月16日確認。就労継続支援B型シートの「虐待の防止」確認文書は委員会議事録・研修実施が分かる書類・担当者配置が分かる書類) - 厚生労働省「令和6年度「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果報告書(令和7年12月)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12203000/001619246.pdf(2026年08月16日確認。表58(発生要因)・表59(虐待防止の取組の実施状況)) - 厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き(令和6年7月)」 https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/7692b729-5944-45ee-bbd8-f0283126b7db/0a23426e/20241101_policies_shougaijishien_shisaku_guideline_tebiki_18.pdf(2026年08月16日確認。運営規程に定める「虐待の防止のための措置に関する事項」の中身) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 受給者証が交付される条件。 対象となる障害の範囲と、 障害支援区分が要るサービス URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/jukyusha-sho-joken/ カテゴリー: 利用者獲得 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-09-12 制度基準日: 2026.08.16 ### 結論 障害福祉サービス受給者証は、障害者総合支援法第4条第1項の障害者(または児童福祉法第4条第2項の障害児)に該当し、市町村が支給の要否を決定したうえで交付されます。対象となるのは4類型です。身体障害者福祉法第4条の身体障害者と、知的障害者福祉法にいう知的障害者のうち18歳以上の人が入ります。精神保健福祉法第5条第1項の精神障害者(発達障害者を含む)のうち18歳以上の人も対象です。政令で定める難病等による障害がある18歳以上の人も含まれます。厚生労働省の事務処理要領は「身体障害者を除き、支給決定又は地域相談支援給付決定を行うに際し、障害者手帳を有することは必須要件ではない」と明記しています。療育手帳や精神障害者保健福祉手帳がなくても、医師の診断書などで確認できれば対象になります。障害支援区分の認定が必要なのは、介護給付と共同生活援助に係る訓練等給付だけです。就労継続支援B型をはじめとする訓練等給付は、区分認定を経ずに支給決定されます(2026年8月16日時点)。 - 対象となる障害の範囲: 身体障害者/18歳以上の知的障害者/18歳以上の精神障害者(発達障害者を含む)/18歳以上の難病等対象者(障害者総合支援法第4条第1項) - 手帳が必須なのは: 身体障害者のみ。身体障害者福祉法第4条が「都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたもの」と定義しているため - 手帳がない場合の確認書類: 知的障害は知的障害者更生相談所の意見、精神障害は年金証書・自立支援医療受給者証(精神通院医療)・医師の診断書など、難病等は医師の診断書・特定医療費(指定難病)受給者証など - 難病等の範囲: 令和7年(2025年)4月1日から376疾病。障害の程度は「継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける程度」 - 障害支援区分の認定が必要: 介護給付費・特例介護給付費・訓練等給付費(共同生活援助に係るものに限る)・特例訓練等給付費(同)の支給決定(障害者総合支援法施行令第10条第1項) - 障害支援区分の認定が不要: 就労継続支援B型・就労移行支援・就労選択支援・就労定着支援・自立訓練・自立生活援助(共同生活援助のうち入浴・排せつ・食事等の介護を伴わない場合も不要) - 交付の根拠: 障害者総合支援法第22条第8項。市町村は支給決定を行ったときに受給者証を交付しなければならない 根拠: 厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領)」令和8年7月版 第2 Ⅰ 2 ### 本文 就労継続支援B型の新規相談で、「障害者手帳は持っていないのですが」という切り出しは想定しておきたい入口です。ここで「では対象外ですね」と答えると、本当は受給者証が出る人を追い返すことになります。対象に当たるかどうかと、いつから利用が始まるかは、別の話として扱う必要があります。 僕は埼玉県志木市で就労継続支援B型「ぽちぽちの道」を運営していて、利用者獲得の営業も自分でやっています。だから、この場面の判断は自分の事業所の損得に直結します。この記事は、障害者総合支援法と厚生労働省の事務処理要領を読んで、相談を受ける側の順番に並べ直したものです。 先に答えを書きます。手帳が必須なのは4類型のうち身体障害者だけです。そして就労継続支援B型は、障害支援区分の認定を受けていなくても支給決定されます。 ## 受給者証は、どういう人に交付されるのか 障害者総合支援法第4条第1項の障害者(障害児は児童福祉法第4条第2項)に該当し、市町村の支給決定を受けた人に交付されます。法律の組み立ては二段構えです。まず定義に当てはまるかどうかがあります。次に市町村が支給の要否を決めます。支給決定が行われて初めて、法第22条第8項に基づいて受給者証が交付されます。 この二段を混ぜると、事業所の判断が狂います。前段は、誰を見学に受け入れられるかの話です。後段は、いつから利用が始まるかの話です。問い合わせの電話で見るのは前段だけでいい、というのが僕の考えです。手帳がないという一言で入口を閉じるのは、もったいないと思います。 ## 対象になるのは、どんな障害のある人か 対象になるのは、障害者総合支援法第4条第1項が定める4類型で、いずれも18歳以上が前提です。 | 類型 | 定義の内容 | 年齢要件 | | --- | --- | --- | | 身体障害者 | 身体障害者福祉法第4条に規定する身体障害者 | 同法の定義上18歳以上 | | 知的障害者 | 知的障害者福祉法にいう知的障害者 | 18歳以上 | | 精神障害者 | 精神保健福祉法第5条第1項に規定する精神障害者(発達障害者支援法第2条第2項の発達障害者を含み、知的障害者を除く) | 18歳以上 | | 難病等対象者 | 治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が主務大臣の定める程度である者 | 18歳以上 | 正直に言うと、僕がこの表を最初に読んだときは、条文の引き写しにしか見えませんでした。実務で効くのは、表に載らない診断名をどう扱うかです。厚生労働省の事務処理要領は、高次脳機能障害を「器質性精神障害として精神障害に分類されるもの」と整理しています。精神障害者であることが確認できれば給付の対象になる、という書き方です。診断名から対象かどうかを判断しにくいときに、根拠として使える一文だと思っています。 ## 障害者手帳がないと、対象外なのか 手帳が必須なのは身体障害者だけで、知的障害・精神障害・難病等は手帳がなくても支給決定や地域相談支援給付決定の対象になります。事務処理要領は、4類型を並べた直後にこう書いています。「身体障害者を除き、支給決定又は地域相談支援給付決定を行うに際し、障害者手帳を有することは必須要件ではない」。 **身体障害者だけは手帳が前提**になります。身体障害者福祉法第4条が身体障害者を「別表に掲げる身体上の障害がある十八歳以上の者であつて、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたもの」と定義しているためです。定義そのものに手帳が組み込まれています。一方、精神保健福祉法第5条第1項の精神障害者の定義に手帳は登場しません。知的障害者福祉法には**知的障害者の定義規定自体がない**ので、条文をたどる限り、手帳で線を引いているのは身体障害者だけです。 市町村が実際に確認する書類は、要領が類型ごとに示しています。 | 類型 | 確認する書類・方法 | | --- | --- | | 身体障害者 | 身体障害者手帳 | | 知的障害者 | 療育手帳。ない場合は市町村が必要に応じて知的障害者更生相談所に意見を求めて確認 | | 精神障害者 | 精神障害者保健福祉手帳/精神障害を事由とする年金の証書等/同じく特別障害給付金の証明書類/自立支援医療受給者証(精神通院医療に限る)/医師の診断書 など(これらに限定されない) | | 難病等対象者 | 医師の診断書、特定医療費(指定難病)受給者証、登録者証(指定難病)、指定難病に罹患していることが記載されている難病医療費助成の却下通知 など | 要領は続けて「各種援助措置を受けやすくする観点から、できる限り障害者手帳の取得を勧奨することが望ましい」とも述べています。必須ではないが取得は勧める、という二段の書き方です。僕はこれを、案内の順番の話として読んでいます。先に、手帳がなくても申請はできると伝える。そのうえで、取得しておくと各種援助を受けやすくなる、と足す。順番が逆になると、相談は手帳の話で止まります。 うちはIT・パソコン作業に特化した就労継続支援B型で、利用者は精神・発達障害のある方が中心です。精神障害の類型なら、要領のとおり市町村が年金証書や医師の診断書でも確認できます。最初の電話で手帳の有無から聞く意味は薄い、と思っています。 なお、この表に出てくる自立支援医療受給者証や特定医療費(指定難病)受給者証は、障害福祉サービス受給者証とは別の制度の証票です。障害福祉サービス受給者証のほうは、支給決定を受けた人に交付されます。名前が似ているので、相談の場では取り違えが起きやすいところです。 ## 難病のある人は、対象になるのか 政令で定める難病等による障害の程度が主務大臣の定める程度である18歳以上の人が対象で、対象疾病は令和7年(2025年)4月1日から376疾病です。難病等が対象に加わったのは平成25年4月でした。対象疾病は施行令第1条に基づく告示で定められています。2026年8月16日時点で、令和7年4月1日からの376疾病より新しい見直しは公表されていません。障害の程度は厚生労働省告示第7号に書かれています。「継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける程度」です。 厚生労働省の周知用リーフレットは「対象となる方は、障害者手帳をお持ちでなくても、必要と認められた支援が受けられます」と書いています。あわせて「訓練系・就労系サービス等は障害支援区分の認定を受ける必要はありません」とも注記しています。就労系のサービスを運営している側からすると、この2行はそのまま案内に使えます。 気をつけたいのは疾病名の一覧です。載っているのは代表的な名称だけで、内含する疾病名までは書かれていません。一覧に見当たらないからといって、事業所の側で対象外と決めないほうがいいと思います。**個別の病名は市町村の担当窓口が判断**するので、そこは窓口に回すのが安全です。 ## 障害支援区分の認定は、どのサービスで要るのか 障害支援区分の認定が必要なのは、介護給付費・特例介護給付費と、共同生活援助に係る訓練等給付費・特例訓練等給付費の支給決定を受けようとする障害者だけです。根拠は障害者総合支援法施行令第10条第1項です。法第28条の給付の区分と突き合わせると、線引きは次のようになります。 | 給付の種類 | サービス | 障害支援区分の認定 | | --- | --- | --- | | 介護給付 | 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、療養介護、生活介護、短期入所、重度障害者等包括支援、施設入所支援 | 必要(同行援護は区分3以上支援加算の決定が不要な場合を除く) | | 訓練等給付 | 共同生活援助 | 入浴、排せつ又は食事等の介護を伴う場合は必要 | | 訓練等給付 | 自立訓練、就労選択支援、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、自立生活援助 | 不要 | | 地域相談支援給付 | 地域移行支援、地域定着支援 | 不要 | **就労継続支援B型は区分認定が不要**です。訓練等給付であり、共同生活援助でもないからです。介護給付の生活介護と並べると、性格の違いがはっきりします。生活介護は「障害支援区分が区分3(障害者支援施設に入所する場合は区分4)以上である者」を対象者に据えていて、区分そのものが利用要件です。B型の対象者要件は区分ではありません。就労経験や年齢、就労選択支援によるアセスメントの側で組まれています。 ただし、区分認定が不要であることと、市町村が何も調べないことは別です。要領はまず「障害者等の身体障害者手帳や療育手帳、精神保健福祉手帳等に記載されている障害の状況又は疾病名のみに着目するのではなく」と書いています。続けて「障害があるがゆえに日常生活を営むのに支障をきたしている状況等を含めて勘案する必要がある」としています。そのうえで、認定調査の調査項目を活用した本人・家族・相談支援専門員からの聞き取りを求めています。区分は出なくても、**市町村は心身の状況を把握する**という設計です。 新規の相談で手帳の有無を最初に聞くと、対象になる人を入口で落とします。就労継続支援B型の問い合わせなら、先に確認するのは市町村に支給申請をしているかどうかです。次に、相談支援事業所が決まっているかを聞きます。手帳はその後で足ります。 手帳がない場合の道筋も、要領を根拠に案内できます。精神障害なら自立支援医療受給者証や医師の診断書です。難病等なら特定医療費(指定難病)受給者証などで市町村が確認します。 区分認定が不要なサービスでも、市町村は認定調査の調査項目を使った聞き取りで心身の状況を把握します。見学や体験で気づいた生活面の状況をメモに残しておくと、相談支援専門員がサービス等利用計画案を組むときの材料になります。 ## 18歳未満の人や、介護保険が使える人はどうなるのか 18歳未満は障害児として児童福祉法第4条第2項の定義によりますが、15歳以上18歳未満は、障害者のみを対象とするサービスの利用が適当と児童相談所長が認めて市町村長に通知した場合に障害者とみなされます。要領は障害児について「必ずしも身体障害者手帳、療育手帳及び精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている必要はない」と念を押しています。年齢等を考慮して、必ずしも診断名がなくても障害が想定され支援の必要性が認められればよい、という整理です。難病等による障害の児童の場合だけは、医師の診断書等が必要です。 障害者のみを対象とするサービスを、15歳以上18歳未満の児童が使う場面もあります。根拠は児童福祉法附則第63条の2および第63条の3です。児童相談所長が利用を適当と認めて市町村長に通知した場合、その児童は障害者とみなされます。手続も障害者の側に沿って支給決定が行われます。この扱いでは、**申請者は保護者ではなく本人**になります。実務では見落としやすいところです。 もう一つ、法第7条が自立支援給付の他制度優先を定めています。同じ障害の状態について介護保険法の給付など政令で定める給付を受けられるときは、その限度で自立支援給付は行われません。65歳前後の相談では、ここが論点になります。事業所だけで結論を出せる話ではないので、市町村と相談支援専門員に早めに入ってもらうのが安全だと思っています。 条件を一言でまとめます。対象は法第4条第1項の4類型です。手帳が必須なのは身体障害者だけです。区分認定が必要なのは、介護給付と介護を伴う共同生活援助だけです。 結局、手帳の有無で入口を閉じないことが一番大事だと思っています。対象かどうかを決めるのは市町村であって、事業所ではありません。事業所にできるのは、断る前に申請の入口まで案内することです。そこで一人断ってしまうと、その人の選択肢も、事業所の側の機会も同時になくなります。 ## あわせて読む 受給者証そのものの読み方と、申請から更新までの流れは別の記事にまとめています。 - [受給者証とは](/column/jukyusha-sho-toha/) … 言葉の意味と、自立支援医療受給者証との違い - [障害福祉サービス受給者証とは](/column/shogai-fukushi-jukyusha-sho/) … 証票のどの面を事業所が読むか - [受給者証をもらうまで](/column/jukyusha-sho-morau/) … 申請から交付までの流れ - [受給者証の更新](/column/jukyusha-sho-koushin/) … 有効期間と更新の実務 区分ではなく就労経験や年齢で対象者を決めているのが、就労系サービスの特徴です。 - [就労選択支援の対象者](/column/shurou-sentaku-shien-taishousha/) … B型の利用手前で挟まるアセスメント ### よくある質問 Q. 障害者手帳がなくても受給者証は交付されますか? A. 身体障害者以外は、手帳がなくても交付されます。根拠は厚生労働省の事務処理要領(令和8年7月版)第2 Ⅰ 2です。同要領は「身体障害者を除き、支給決定又は地域相談支援給付決定を行うに際し、障害者手帳を有することは必須要件ではない」と明記しています。身体障害者だけは手帳が前提になります。身体障害者福祉法第4条が「都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたもの」を身体障害者と定義しているためです。知的障害は、療育手帳がなければ市町村が知的障害者更生相談所に意見を求めて確認します。精神障害は年金証書、自立支援医療受給者証(精神通院医療)、医師の診断書などで確認します。 Q. 就労継続支援B型を利用するのに障害支援区分の認定は必要ですか? A. 必要ありません。障害者総合支援法施行令第10条第1項が障害支援区分の認定を求める範囲は限られています。対象は、介護給付費・特例介護給付費と、共同生活援助に係る訓練等給付費・特例訓練等給付費の支給決定を受けようとする場合だけです。就労継続支援B型は訓練等給付であり、共同生活援助ではないため、区分認定を経ずに支給決定が行われます。ただし区分認定が不要な申請でも、市町村は心身の状況を把握したうえで支給決定を行うこととされています。把握の方法は、認定調査の調査項目を活用した聞き取りなどとされています。 Q. 難病の人は受給者証の対象になりますか? A. 対象になります。障害者総合支援法第4条第1項は、政令で定める特殊の疾病による障害の程度が主務大臣の定める程度である18歳以上の人を障害者に含めています。対象疾病は令和7年(2025年)4月1日から376疾病です。障害の程度は告示で「継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける程度」とされています。障害者手帳は要件ではなく、医師の診断書、特定医療費(指定難病)受給者証、登録者証(指定難病)などで市町村が確認します。 Q. 18歳未満でも就労継続支援B型などの受給者証は出ますか? A. 原則は出ませんが、15歳以上18歳未満には例外があります。障害福祉サービスのうち障害者のみを対象とするものは、18歳以上が前提です。例外の根拠は児童福祉法附則第63条の2および第63条の3です。児童相談所長が障害者支援施設への入所または障害福祉サービスの利用が適当と認めて市町村長に通知した場合、15歳以上の児童は障害者とみなされます。その場合は障害者の手続に沿って支給決定が行われます。この場合の申請者は保護者ではなく本人です。 Q. 対象に該当すれば必ず受給者証が交付されますか? A. 該当することは条件の一つで、交付はさらに市町村の支給決定を経ます。市町村は、障害者総合支援法施行規則第12条が定める10項目を勘案して支給の要否を決定します。10項目には、障害支援区分または障害の種類・程度その他の心身の状況、介護者の状況、就労選択支援を利用している場合はその評価・整理の結果が入ります。ほかに介護給付費等の受給状況、サービス利用意向の具体的内容、置かれている環境、サービス提供体制の整備状況などがあります。支給決定を行ったときは、第22条第8項に基づいて受給者証を交付します。 ### 根拠資料 - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123(2026年6月25日施行版。第4条第1項・第22条第8項・第28条を確認・2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行令(平成18年政令第10号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418CO0000000010(2026年7月1日施行版。第1条(特殊の疾病)・第10条第1項(障害支援区分の認定)を確認・2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(平成18年厚生労働省令第19号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100019(第12条(支給要否決定の勘案事項10項目)を確認・2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索「身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC1000000283(第4条が身体障害者を「都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたもの」と定義していることを確認・2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0100000123(第5条第1項の精神障害者の定義に手帳の要件がないことを確認・2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索「児童福祉法(昭和22年法律第164号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000164(第4条第2項(障害児)・附則第63条の2・第63条の3(15歳以上の児童の取扱い)を確認・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領・令和8年7月版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001721666.pdf(第2 Ⅰ 2「対象となる障害者等」、同 3(15)、同 4、同 5を原典で確認・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「障害者総合支援法の対象疾病(難病等)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/hani/index.html(掲載されている最新の見直しが令和7年4月からであることを確認・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「障害者総合支援法の対象となる難病が追加されます(周知用リーフレット・令和7年4月1日から適用/対象疾病一覧376疾病)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001398603.pdf(369疾病から376疾病への見直しと「障害者手帳をお持ちでなくても」の記載を確認・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「障害者総合支援法対象の難病患者等に対する障害支援区分認定マニュアル(令和7年4月)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001470213.pdf(厚生労働省告示第7号の「継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける程度」の文言を確認・2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 受給者証の更新と 支給決定の有効期間、 事業所側の期限管理 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/jukyusha-sho-koushin/ カテゴリー: 利用者獲得 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.07.01 ### 結論 支給決定の有効期間は市町村が定めます。就労継続支援は障害者総合支援法施行規則第15条で1月間から36月間の範囲とされていますが、厚生労働省の事務処理要領(令和8年7月版)は運用上、支給決定時に50歳未満の就労継続支援B型利用者について1年を上限としています。更新は自動ではなく、本人の支給申請に基づいて市町村が改めて行う支給決定です。有効期間が切れた後に提供したサービスには訓練等給付費が支給されないため、事業所は受給者証の終期月を自ら管理する必要があります。〔2026年8月16日時点〕 - 有効期間の上限(就労継続支援): 1月間から36月間の範囲内で市町村が定める(施行規則第15条第1項第2号) - B型の運用上の上限: 支給決定時に50歳未満の者は1年(事務処理要領 令和8年7月版) - 更新申請の時期: 「満了日の何日前まで」という全国一律の定めはなく、市町村が定めて周知する - 有効期間外に提供したサービス: 訓練等給付費の支給対象外(法第29条第1項) - 事業所側の義務: 受給者証による受給資格の確認と、更新申請への必要な援助(指定基準第14条・第15条第2項) 根拠: 厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領)」令和8年7月版 ### 本文 ## 有効期間はどう決まるか 障害者総合支援法第23条は、支給決定は主務省令で定める期間内に限って効力を持つと定めています。その期間を具体的に決めているのが同法施行規則第15条で、「支給決定を行った日からその日が属する月の末日までの期間」に、サービス種類ごとの期間を合算したものが有効期間になります。支給決定日が月の初日であれば、種類ごとの期間がそのまま有効期間です。 種類ごとの上限は次のとおりです(2026年8月16日時点の現行規定)。 | サービスの種類 | 施行規則第15条第1項が定める範囲 | |---|---| | 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、短期入所、重度障害者等包括支援、自立訓練、就労移行支援、就労定着支援、自立生活援助 | 1月間から12月間まで | | 療養介護、生活介護、施設入所支援、就労継続支援、共同生活援助 | 1月間から36月間まで | | 就労選択支援 | 1月間又は2月間 | | 就労移行支援・就労継続支援(在職者が一時的に利用する場合) | 1月間から6月間まで | | 就労移行支援(養成施設を利用する場合) | 1月間から60月間まで | この範囲の中で、実際に何か月にするかは市町村が定めます。事務処理要領(令和8年7月版)は、支給決定の有効期間は原則として障害支援区分の有効期間と同一期間とし、居宅介護等や標準利用期間を設定するサービスは最長1年間、就労選択支援は原則1か月とする考え方を示しています。 ## B型で見落としやすい「50歳未満は1年」 就労継続支援B型を運営していると、省令の「36月間まで」だけを見て3年の受給者証を前提に段取りを組んでしまいがちです。ところが事務処理要領は、運用による取扱いとして、**支給決定時に50歳未満の就労継続支援B型利用者については上限を1年**としています。同じB型でも、50歳未満の方は毎年更新が回ってくる前提で管理しなければなりません。 もう一点、事務処理要領は運用上、生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援を同じグループとして扱い、原則としてグループごとに有効期間の終期を合わせるとしています。就労移行支援からB型へ移る利用者などで、複数の終期がばらばらに動くことは想定されていません。 ## 更新は自動ではなく、新しい支給決定 事務処理要領は「支給決定の更新」を、有効期間が終了した場合に本人が引き続き利用を希望するときに、本人からの支給申請を受けて市町村が勘案事項を勘案し、利用継続の必要性が認められれば改めて行う支給決定と定義しています。手続としては通常の支給決定と同じもので、有効期間の満了によって自動的に延長される仕組みではありません。 就労継続支援については、さらに踏み込んだ記述があります。「通常の事業所に雇用されることが困難な障害者」に該当する利用者について、支給決定の更新の段階で、協議会や障害者雇用支援合同会議等において、それまでの利用実績とサービス管理責任者による評価等を踏まえ、一般就労や他の事業の利用の可能性を検討し、更新の要否を判断するとされています。更新は形式的な事務ではなく、サビ管の評価が判断材料として使われる場面です。個別支援計画の[モニタリング](/column/kobetsu-shien-keikaku-monitoring/)の記録が、そのまま更新の説明材料になります。 ## 「何日前までに申請」は市町村が決める ここが市町村差の出るところです。事務処理要領は、更新前の有効期間が満了するまでに(必要な場合は障害支援区分の認定を含めて)更新手続が終了するよう留意すべきとしたうえで、「制度上、支給決定又は地域相談支援給付決定の有効期間の満了する日の何日前までに更新に係る支給申請をすることは定められていない」と明記しています。そのため市町村が、自ら定める行政手続法上の標準処理期間を念頭に、満了日の何日前から何日前までに申請するよう本人へ周知し、相談支援事業者やサービス事業所にも適切な申請援助ができるよう併せて周知することとされています。 つまり「更新は2か月前から」といった全国共通のルールは存在しません。事業所が押さえるべきは、自分の利用者の支給決定を行っている各市町村が、それぞれ何日前からの申請を求めているかです。利用者が複数の市町村にまたがる事業所では、市町村ごとに期限が違う前提で台帳を作る必要があります。 ## 計画相談支援のモニタリングの月と終期月の関係 ここでいうモニタリングは、前節のサービス管理責任者が行う個別支援計画のモニタリングではなく、相談支援専門員が行う計画相談支援のモニタリングです。計画相談支援のモニタリング(継続サービス利用支援)の標準期間は施行規則第6条の16が定めており、就労継続支援B型の利用者で他の号に該当しない方は6月間、65歳以上の方は3月間が標準になります。ただしこれは標準であって、実際の期間は市町村が個別に必要と認める期間として定めます。 事務処理要領は、支給決定の有効期間の終期月に継続サービス利用支援を実施することを前提として、そこからモニタリング期間を勘案して開始月を設定するとしています。終期月には、対象者の状況に応じて、継続サービス利用支援と併せて更新のためのサービス利用支援を実施しますが、報酬はサービス利用支援の報酬のみを算定します。1人の利用者に複数の終期がある場合は、最長の有効期間の終期月にモニタリングを実施することが前提です。 言い換えると、更新の起点は相談支援事業所側のモニタリング月に組み込まれています。事業所としては、担当の相談支援専門員がいつモニタリングに来る予定になっているかを把握しておくと、更新の抜けに気づきやすくなります。 ## 更新が間に合わなかったときの請求 これがいちばん重い論点です。障害者総合支援法第29条第1項は、訓練等給付費・介護給付費を支給する対象を「支給決定の有効期間内において」受けた指定障害福祉サービス等としています。有効期間が切れた翌日以降に提供したサービスは、この条文の対象になりません。 救済の余地がまったくないわけではありません。同法第30条第1項第1号は、第20条第1項の申請をした日から当該支給決定の効力が生じた日の前日までの間に、緊急その他やむを得ない理由により指定障害福祉サービス等を受けたときは、市町村が必要があると認めるときに特例訓練等給付費を支給できると定めています。ただし条件は厳しめです。 | 論点 | 条文上の扱い | |---|---| | 対象になる期間 | 更新の支給申請をした日から、支給決定の効力が生じた日の前日まで(法第30条第1項第1号) | | 支給の可否 | 市町村が「必要があると認めるとき」の裁量。「緊急その他やむを得ない理由」も要件 | | 請求する人 | 支給決定障害者等本人が申請書を市町村に提出する(施行規則第31条)。事業所からの国保連請求ではない | 注目すべきは、対象期間の起点が「申請をした日」だという点です。申請自体をしていなければ、特例給付が届く期間にすらなりません。更新の書類が全部そろわなくても、**まず申請だけは有効期間内に出してもらう**ことが、事業所の収益を守るうえで決定的に効きます。 ## 事業所側の期限管理に落とす 指定基準(平成18年厚生労働省令第171号)は、サービス提供事業者に2つの義務を課しています。第14条は、サービスの提供を求められた場合に、本人が提示する受給者証によって支給決定の有無、支給決定の有効期間、支給量等を確かめることとしています。第15条第2項は、支給決定に通常要すべき標準的な期間を考慮し、支給決定の有効期間の終了に伴う支給申請について必要な援助を行わなければならないと定めています。就労継続支援B型には第202条によってこの2条が準用されます。 厚生労働省の解釈通知は、第15条第2項について「利用者の支給決定に係る支給期間の終了に伴い、引き続き当該利用者が当該事業者のサービスを利用する意向がある場合には、市町村の標準処理期間を勘案し、あらかじめ余裕をもって当該利用者が支給申請を行うことができるよう申請勧奨等の必要な援助を行うことを定めたもの」と説明しています。更新の遅れは、利用者の不手際である前に事業所の運営基準上の課題として見られる、ということです。 運営基準から素直に導ける手順は次の3つです。第1に、受給者証の写しを取った時点で、終期月と支給量、負担上限月額を利用者台帳に転記し、終期月でソートできる形にしておくこと。第14条は確認の場面を「サービスの提供を求められた場合」としており、契約時の1回に限る書き方をしていません。第2に、支給決定を行っている市町村ごとに「更新申請は満了の何日前から受け付けるか」を一度だけ問い合わせて記録し、その日数を差し引いた着手月を台帳に持たせること。市町村が違えば期限も違います。第3に、相談支援事業所のモニタリング実施月と終期月がそろっているかを確認し、ずれている利用者は早めに相談支援専門員へ共有すること。指定計画相談支援基準第13条は、相談支援事業者にも支給決定の有効期間の終了に伴う申請についての援助義務を課しています。 負担上限月額にも別のサイクルがあります。施行規則第7条第3項は、支給決定障害者等は毎年、負担上限月額の認定に必要な書類を市町村に提出しなければならないと定めています(市町村が公簿等で確認できるときは省略可能です)。事務処理要領は、認定した負担上限月額の適用期間を、有効期間が1年以内なら満了日まで、1年を超える場合は翌年(認定した日の属する月が1月から6月の間であれば当該年)の6月30日までとして1年ごとに見直すとしています。受給者証の有効期間が3年でも、上限額の欄は毎年動く可能性があるということです。受給者証の記載事項全体については[障害福祉サービス受給者証とは](/column/shogai-fukushi-jukyusha-sho/)も併せて確認してください。 ### よくある質問 Q. 受給者証の更新は自動で行われますか。 A. いいえ、自動では行われません。厚生労働省の事務処理要領(令和8年7月版)は、支給決定の有効期間が終了した場合に本人が引き続き利用を希望するときは、本人からの支給申請に基づいて市町村が勘案事項を勘案し、利用継続の必要性が認められれば改めて支給決定を行うと整理しています。これを「支給決定の更新」と呼びます。申請がなければ更新はされません。 Q. 更新申請は有効期間の何日前までに行う必要がありますか。 A. 全国一律の期限は定められていません。事務処理要領(令和8年7月版)は「制度上、支給決定又は地域相談支援給付決定の有効期間の満了する日の何日前までに更新に係る支給申請をすることは定められていない」としたうえで、市町村が自ら定める行政手続法上の標準処理期間を念頭に、満了日の何日前から何日前までに申請するかを本人と事業所に周知することとしています。実際の期限は支給決定を行う市町村に確認してください。 Q. 更新が間に合わず有効期間が切れた期間のサービスは請求できますか。 A. 原則として訓練等給付費としての請求はできません。障害者総合支援法第29条第1項は「支給決定の有効期間内において」受けた指定障害福祉サービス等を給付の対象としているためです。同法第30条第1項第1号の特例訓練等給付費は、第20条第1項の申請をした日から支給決定の効力が生じた日の前日までの間に緊急その他やむを得ない理由でサービスを受けたときに、市町村が必要と認める場合に支給できる仕組みで、同法施行規則第31条により本人が市町村へ申請する償還払いです。事業所が国民健康保険団体連合会へ請求する形にはなりません。 Q. 就労継続支援B型の支給決定期間は3年になりますか。 A. 年齢によって扱いが違います。施行規則第15条第1項第2号は就労継続支援を1月間から36月間の範囲としていますが、事務処理要領(令和8年7月版)は運用上、支給決定時に50歳未満の者に限って上限を1年としています。50歳以上の場合に実際に何年で決定されるかは市町村の判断によりますので、受給者証の記載で確認してください。 Q. 計画相談支援のモニタリングの実施月と受給者証の終期月はそろえる必要がありますか。 A. そろえる前提で設計されています。事務処理要領(令和8年7月版)は、支給決定の有効期間の終期月に継続サービス利用支援を実施することを前提として、モニタリング期間を勘案し継続サービス利用支援の開始月を設定するとしています。終期月には、対象者の状況に応じて、継続サービス利用支援と併せて更新のためのサービス利用支援を実施しますが、報酬はサービス利用支援の報酬のみを算定します。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領)令和8年7月版」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001721666.pdf(2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)2026年6月25日施行版」 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123(2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(平成18年厚生労働省令第19号)2026年5月20日施行版」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100019(2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索「障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)2025年10月1日施行版」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(平成18年12月6日障発第1206001号)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb4746&dataType=1&pageNo=1(2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索「障害者総合支援法に基づく指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第28号)2025年10月1日施行版」 https://laws.e-gov.go.jp/law/424M60000100028(2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 受給者証をもらうには 市町村への申請から交付までの流れと 事業所が関われる場面 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/jukyusha-sho-morau/ カテゴリー: 利用者獲得 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.07.01 ### 結論 障害福祉サービス受給者証は、本人または障害児の保護者が市町村へ支給申請を行い、市町村が支給決定をしたときに交付されます(障害者総合支援法第20条第1項・第22条第8項、2026年8月16日時点の現行法)。就労継続支援B型や就労移行支援などの訓練等給付は障害支援区分の認定を要しないため、医師意見書の徴取と一次判定・二次判定・区分認定の工程を通りません(同法施行令第10条第1項)。 申請から交付までに何日かかるかは法令に定めがなく、市町村が行政手続法上の標準処理期間を各自で定めています。全国一律の日数はないので、事業所は管轄の市町村に確認してください。なお事業所には、支給決定を受けていない人から利用の申込みがあったときに速やかな申請を援助する義務があります。 - 申請先: 原則として本人(障害児は保護者)の居住地の市町村。居住地がない、または明らかでないときは現在地の市町村(法第19条第2項) - 申請の名義人: 支給決定を受けようとする障害者本人、または障害児の保護者(法第20条第1項)。事業所が事業所の名前で申請することはできない - 申請の代行: 本人から依頼を受けた者であれば誰であっても可能。依頼は必ずしも書面でなくてよい(事務処理要領 第2 Ⅱ 1(2))。代行できるのは本人の意思表示を伝える部分であり、申請するかどうかを決めるのは本人 - 障害支援区分の認定: 介護給付と共同生活援助に係る訓練等給付のみ必要。B型・就労移行支援・就労選択支援・自立訓練などは不要(施行令第10条第1項) - サービス等利用計画案: 市町村が指定特定相談支援事業者の作成する計画案の提出を書面で求める(法第22条第4項、施行規則第12条の3) - 所要期間: 法令に一律の定めなし。市町村が定める標準処理期間による - 事業所の義務: 支給決定を受けていない人から利用の申込みがあったときは、その意向を踏まえて速やかに申請が行われるよう必要な援助を行う(指定障害福祉サービス基準第15条第1項。B型は第202条で準用) 根拠: 厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領・令和8年7月版)」 ### 本文 ## 受給者証は「支給決定」の結果として交付される 障害福祉サービス受給者証は、窓口で申し込めばもらえる証書ではありません。介護給付費等の支給を受けようとする障害者または障害児の保護者が市町村に申請し(障害者総合支援法第20条第1項)、市町村が勘案事項とサービス等利用計画案を踏まえて支給要否決定を行い(同法第22条第1項・第6項)、支給決定をしたときに、支給量その他の事項を記載した受給者証を交付しなければならないと定められています(同法第22条第8項)。つまり受給者証の交付は支給決定に付随する行為であって、独立した手続きではありません。 見学者から「受給者証はどこでもらえますか」と聞かれたときの正確な答えは、居住地の市町村の障害福祉担当課にサービスの支給申請をすると決定の結果として届く、になります。申請の名義人は本人(障害児の場合は保護者)であり、事業所が事業所の名前で申請することはできません。 ただしこれは、申請書を窓口へ持っていく行為まで本人がひとりで行わなければならない、という意味ではありません。事務処理要領は支給申請の代行を、障害者本人の支給申請の意思表示の内容を本人に代わり伝える行為と位置づけ、本人から代行の依頼を受けたものであれば誰であっても可能で、必ずしも書面により依頼されている必要はないとしています(第2 Ⅱ 1(2))。事業所の職員が書類の書き方を一緒に確認したり、本人の依頼を受けて申請書を窓口に届けたりすることは、制度上できます。順序としては本人が申請するかどうかを決めているのが先で、代行はその意思を窓口に伝えるための手段です。誰の名前で何を決めるのかという部分まで事業所が肩代わりするものではありません。 ## 申請から交付までの工程 厚生労働省の事務処理要領(令和8年7月版)は、支給決定の流れを工程ごとに整理しています。訓練等給付か介護給付かで通る工程が変わるため、そこを分けて並べます。 | 工程 | 行う人 | 根拠 | 訓練等給付(B型・就労移行支援等)の場合 | |---|---|---|---| | 支給申請 | 本人または障害児の保護者 → 市町村 | 法第20条第1項、施行規則第7条 | 同じ | | サービス等利用計画案の提出依頼 | 市町村 → 申請者(書面) | 法第22条第4項、施行規則第12条の3 | 同じ | | 障害支援区分認定調査・概況調査 | 市町村(指定一般相談支援事業者等に委託可) | 法第20条第2項・第3項 | 認定調査項目に係る調査は必ずしも要しない。市町村が聞き取り等で心身の状況を把握する | | 医師意見書の徴取 | 市町村 → 主治医等 | 事務処理要領 第2 Ⅰ 3(5) | 行わない | | 一次判定・二次判定・障害支援区分の認定 | 市町村・市町村審査会 | 法第21条第1項 | 行わない | | サービス利用意向の聴取 | 市町村 → 申請者 | 事務処理要領 第2 Ⅰ 3(9) | 行う | | サービス等利用計画案の提出 | 指定特定相談支援事業者 → 市町村 | 法第22条第4項 | 行う | | 支給決定案の作成・支給決定 | 市町村 | 法第22条第1項 | 行う | | 受給者証の交付 | 市町村 → 本人 | 法第22条第8項 | 行う | | サービス等利用計画の作成 | 指定特定相談支援事業者 | 法第5条第23項 | 行う | 区分認定を要するのは、介護給付費・特例介護給付費と、共同生活援助に係る訓練等給付費・特例訓練等給付費の支給決定を受けようとする障害者だけです(施行令第10条第1項)。就労継続支援B型、就労移行支援、就労選択支援、就労定着支援、自立訓練、自立生活援助は訓練等給付なので、認定調査から区分認定までの重い工程を通りません。「障害福祉サービスの利用にはすべて区分認定が必要」という説明を見かけますが、これは誤りです。 なお計画案の提出依頼は申請後に直ちに行われますが、介護給付に係るサービスは区分認定を踏まえて計画案を作成する必要があるため、市町村への計画案の提出は区分認定の後になります(相談支援に関するQ&A・令和7年3月18日 問35)。訓練等給付ではこの待ち時間が発生しません。 ## 所要期間は市町村ごとに違う 申請から支給決定までに何日かかるかは、法令にも通知にも定めがありません。事務処理要領は更新申請について「制度上、支給決定又は地域相談支援給付決定の有効期間の満了する日の何日前までに更新に係る支給申請をすることは定められていない」としたうえで、市町村が各々の行政手続法上の標準処理期間を念頭に置いて申請時期を周知し、指定一般相談支援事業者・指定特定相談支援事業者・サービス事業所・施設等に対しても、適切な申請援助ができるよう周知を図るよう求めています(第2 Ⅶ)。 裏を返せば、事業所側が管轄市町村の標準処理期間を把握していることが前提とされています。「申請から利用開始まで最大2か月」といった全国共通の数字には法令上の根拠がないので、商圏の市町村ごとに窓口へ確認し、受入計画に反映してください。 支給決定の有効期間も市町村が定めます。施行規則第15条の範囲は、就労継続支援(在職者が一時的に利用する場合を除く)が1月間から36月間まで、就労移行支援(在職者の一時利用と養成施設の場合を除く)が1月間から12月間まで、就労選択支援が1月間又は2月間です。実際の有効期間は、支給決定を行った日からその月の末日までの期間にこの期間を合算したものになります(支給決定日が月の初日の場合はこの期間そのもの)。更新の考え方は[受給者証の更新](/column/jukyusha-sho-koushin/)で扱っています。 ## まだ申請していない見学者に、事業所は何ができるか ここが経営上いちばん取りこぼしの出る場面です。指定障害福祉サービス基準は、支給決定を受けていない人からの利用の申込みへの対応を、努力義務ではなく義務として定めています。 第15条第1項は、支給決定を受けていない者から利用の申込みがあった場合は、その者の意向を踏まえて速やかに支給の申請が行われるよう必要な援助を行わなければならない、と定めています。条文自体は居宅介護の章に置かれていますが、第93条により生活介護へ、第184条により就労移行支援へ、第202条により就労継続支援B型へ準用されます。第2項では、支給決定に通常要すべき標準的な期間を考慮して、有効期間の終了に伴う支給申請についても必要な援助を行うこととされています。 具体的に取れる行動は次のとおりです。いずれも条文から導ける内容です。 - 市町村の障害福祉担当課への申請を案内する。申請書には申請者の氏名・居住地・生年月日・個人番号・連絡先や、介護給付費等の受給状況などを記載します(施行規則第7条第1項)。 - 手帳がないことを理由に断らない。精神障害者については精神障害者保健福祉手帳のほか、精神障害を事由とする年金証書等、特別障害給付金の証明書類、自立支援医療受給者証(精神通院医療)、医師の診断書などでも確認するとされ、これらに限定されないと明記されています。難病等対象者は医師の診断書、特定医療費(指定難病)受給者証、登録者証(指定難病)などです(事務処理要領 第1 Ⅱ 1(3))。 - 指定特定相談支援事業者につなぐ。計画案を作成するのはこの事業者であり、動かないと支給決定まで進みません。基準第12条は、市町村または一般相談支援事業・特定相談支援事業を行う者が行う連絡調整にできる限り協力することを求めています。 - 自事業所での受入れが難しいと判断した場合は、適当な他の事業者等の紹介その他の必要な措置を速やかに講じる(基準第13条)。 窓口へ行くこと自体が負担になっている人には、申請書の提出を手伝う余地もあります。事務処理要領は、支給申請の代行を本人の申請の意思表示を本人に代わって伝える行為とし、本人から依頼を受けたものであれば誰であっても可能としています(第2 Ⅱ 1(2))。委任状を求めるかどうかは市町村の判断だとしたうえで、本人に実際の申請意思があるかどうかは認定調査や勘案事項の聴取りの過程で確認できるため、申請時に一律に委任状の提出を求める必要はないとも書かれています。本人が代理権を授与した場合は代理人として申請でき、成年後見人が選任されている人については成年後見人が本人に代わって申請します(同(3))。 ただし、ここで事業所が担えるのはあくまで本人が決めたことを窓口へ届ける部分です。申請するかどうか、どのサービスを希望するかを事業所側で決めてしまわないよう、本人の意向を確認した記録を残しておいてください。個人番号の扱いにも制限があります。本人に代わって申請書等に個人番号を記載することはできず、本人が記入した申請書を職員が使者として提出する場合は、その職員が番号を見ることのないよう封筒に入れる等の措置をとることとされています(同(2))。 受給者証が届いた後の扱いも基準にあります。サービスの提供を求められたときは提示された受給者証で支給決定の有無・有効期間・支給量等を確かめること(第14条)、契約したときは契約支給量その他の受給者証記載事項を受給者証に記載し市町村に遅滞なく報告すること、契約支給量の総量が支給量を超えてはならないこと(第10条)です。 見学対応の記録用紙に「申請状況」の欄を設け、未申請・申請済・支給決定済のどれかを必ず埋める運用にしておくと、基準第15条の申請援助が抜けません。未申請だった場合は、管轄市町村の担当課名と地域の指定特定相談支援事業所の候補を書いた紙をその場で渡すところまでを標準手順に含めておくと、援助を行った事実がそのまま記録に残ります。なお相談支援事業所の指定権者は事業所所在地の市町村ですが、利用者は居住市町村以外の市町村が指定した事業所も利用できます(相談支援に関するQ&A・令和7年3月18日 問12)。候補を自市町村内に限る必要はありません。援助した内容を書き残しておくと、実地指導などで対応を尋ねられたときにも説明できます。 受給者証そのものの記載事項や読み方は[障害福祉サービス受給者証とは](/column/shogai-fukushi-jukyusha-sho/)、交付の条件は[受給者証の条件](/column/jukyusha-sho-joken/)、計画相談支援事業所との連携は[計画相談支援](/column/keikaku-soudan-shien/)で整理しています。 ### よくある質問 Q. 受給者証をもらうには障害者手帳が必要ですか。 A. いいえ、障害の種別によっては手帳がなくても申請できます。事務処理要領(令和8年7月版)は、市町村が支給申請を受けた際の対象者確認方法として、身体障害者は身体障害者手帳、知的障害者は療育手帳または知的障害者更生相談所の意見、精神障害者は精神障害者保健福祉手帳のほか精神障害を事由とする年金証書等・特別障害給付金の証明書類・自立支援医療受給者証(精神通院医療)・医師の診断書など(これらに限定されない)、難病等対象者は医師の診断書・特定医療費(指定難病)受給者証・登録者証(指定難病)などを挙げています。手帳を持たない見学者を門前払いする必要はありません。 Q. 事業所が本人に代わって支給申請をすることはできますか。 A. 申請の名義人になることはできませんが、本人から依頼を受けていれば、申請書を窓口に提出する行為を代行することはできます。申請できるのは支給決定を受けようとする障害者本人または障害児の保護者です(障害者総合支援法第20条第1項)。そのうえで事務処理要領(令和8年7月版)は、支給申請の代行を「障害者本人の支給申請の意思表示の内容を本人に代わり伝える行為」と位置づけ、本人から代行の依頼を受けたものであれば誰であっても可能で、必ずしも書面により依頼されている必要はないとしています(第2 Ⅱ 1(2))。代行できるのは本人の意思を窓口に伝える部分であり、申請するかどうかを決めるのは本人です。また指定障害福祉サービス基準第15条第1項は、支給決定を受けていない人から利用の申込みがあった場合に、その意向を踏まえて速やかに申請が行われるよう必要な援助を行うことを事業者に求めています(就労継続支援B型は同基準第202条、就労移行支援は第184条、生活介護は第93条で準用)。窓口の案内や相談支援事業所への橋渡しもこの援助にあたります。 Q. 就労継続支援B型を利用するのに障害支援区分の認定は必要ですか。 A. いいえ、必要ありません。区分認定が必要なのは介護給付費・特例介護給付費と、共同生活援助に係る訓練等給付費・特例訓練等給付費の支給決定を受けようとする障害者に限られます(障害者総合支援法施行令第10条第1項、2026年8月16日時点)。したがってB型では医師意見書の徴取・一次判定・二次判定・区分認定の4工程を行いません。ただし市町村は聞き取り等により障害の程度を含む心身の状況を把握します。 Q. 申請から受給者証の交付まで何日かかりますか。 A. 全国一律の日数は決まっていません。法令にも事務処理要領(令和8年7月版)にも申請から支給決定までの日数の定めはなく、市町村が行政手続法上の標準処理期間を各自で定めています。事務処理要領も、市町村が各々の標準処理期間を念頭に置いて申請時期を周知し、サービス事業所・施設等にも適切な申請援助ができるよう周知するよう求めています。受入計画を立てるときは管轄市町村に実際の期間を確認してください。 Q. 見学に来た人が相談支援事業所とつながっていない場合はどうすればよいですか。 A. 市町村への申請援助と、指定特定相談支援事業者への橋渡しの両方が必要です。サービス等利用計画案を作成するのは指定特定相談支援事業者であり(障害者総合支援法第22条第4項)、相談支援事業所は市町村が通知する計画作成依頼書によって依頼対象者であることを確認します(厚生労働省「相談支援に関するQ&A」令和7年3月18日 問2)。また指定障害福祉サービス基準第12条は、市町村または一般相談支援事業・特定相談支援事業を行う者が行う連絡調整にできる限り協力することを事業者に求めています。 ### 根拠資料 - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)2026年6月25日施行版」 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123(2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行令(平成18年政令第10号)2026年7月1日施行版」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418CO0000000010(2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(平成18年厚生労働省令第19号)2026年5月20日施行版」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100019(2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索「障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)2025年10月1日施行版」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年08月16日確認。第15条および第202条の準用規定を原文で確認) - 厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領・令和8年7月版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001721666.pdf(2026年08月16日確認。第1 Ⅱ 1(3)、第2 Ⅰ 3(1)〜(15)、第2 Ⅱ 1(2)・(3)、第2 Ⅶ) - 厚生労働省「相談支援に関するQ&A(令和7年3月18日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001335081.pdf(2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 受給者証とは 障害福祉・通所・自立支援医療で 根拠法も交付主体も別物 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/jukyusha-sho-toha/ カテゴリー: 用語集 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.08.01 ### 結論 「受給者証」という名前の証票は一つではありません。障害者総合支援法と児童福祉法だけでも6種類あり、それぞれ別の条文を根拠に交付されます。障害者総合支援法の体系にあるのは、障害福祉サービス受給者証、地域相談支援受給者証、自立支援医療受給者証、療養介護医療受給者証の4つです。児童福祉法にあるのは、通所受給者証と入所受給者証の2つです。根拠法も、交付する役所も、有効期間の決め方も、記載事項も違います。根拠条文は本文にまとめました(2026年8月16日時点で施行されている条文)。 事業所が手元の1枚を見分けるときは、記載欄を見るのが確実です。「障害支援区分」の欄があるのは障害福祉サービス受給者証です。名義が保護者で「障害児通所支援の種類及び支給量」が書かれていれば通所受給者証です。医療を受ける指定自立支援医療機関の名称・所在地が記載されていれば自立支援医療受給者証です。ハローワークが交付する雇用保険受給資格者証や、自治体の条例に基づく医療費助成の受給者証は、障害福祉の支給決定とは関係がありません。 - 障害福祉サービス受給者証: 障害者総合支援法第22条第8項/市町村が交付/記載事項8項目(同法施行規則第14条) - 通所受給者証: 児童福祉法第21条の5の7第9項/市町村が交付/記載事項7項目(同法施行規則第18条の18) - 自立支援医療受給者証: 障害者総合支援法第54条第3項/市町村が交付(精神通院医療は都道府県)/有効期間は1年以内 - 見分ける手がかり: 障害支援区分欄=障害福祉サービス/保護者名義=通所/指定自立支援医療機関の記載=自立支援医療 - 障害福祉とは別の制度のもの: 雇用保険受給資格者証(雇用保険法施行規則第19条第3項・公共職業安定所長が交付)、特定医療費の医療受給者証(難病法第7条第4項・都道府県が交付) 根拠: e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」「児童福祉法」および各施行令・施行規則(2026年8月16日確認) ### 本文 利用者やその家族から「受給者証を持ってきました」と言われて出てきた1枚が、自事業所の請求根拠になる証票とは限りません。障害者総合支援法と児童福祉法の体系だけでも、名称が「受給者証」で終わる証票は6つあります。ここでは検索されることの多い3つを軸に、根拠条文と交付主体の違いから整理します。以下はいずれも2026年8月16日時点で施行されている条文にもとづいています。 ## まず3つを見分ける | 名称 | 根拠条文 | 交付する主体 | 有効期間の決まり方 | 見分けやすい記載欄 | | --- | --- | --- | --- | --- | | 障害福祉サービス受給者証 | 障害者総合支援法第22条第8項 | 市町村 | 決定日からその月の末日までの期間に、サービスの種類ごとに1月間から12月間、1月間から36月間などの範囲で市町村が定める期間を合算(同法施行規則第15条) | 「障害支援区分」の欄がある | | 通所受給者証 | 児童福祉法第21条の5の7第9項 | 市町村 | 決定日からその月の末日までの期間に、1月間から12月間の範囲で市町村が定める期間を合算(同法施行規則第18条の17) | 名義が保護者。「障害児通所支援の種類及び支給量」の欄がある | | 自立支援医療受給者証 | 障害者総合支援法第54条第3項 | 市町村(精神通院医療は都道府県) | 1年以内(同法施行規則第43条) | 「指定自立支援医療機関の名称、所在地及び連絡先」の欄がある | 3つとも「支給決定(支給認定)を受けたことの証明」であり、サービスや医療を受けるときに提示させる点は共通しています。しかし根拠となる給付が違うので、**1枚で他の給付を兼ねることはできません**。 ## 障害福祉サービス受給者証 市町村が支給決定を行ったときに交付する証票です。記載事項は省令で8項目と定められています。内容は次のとおりです。 - 本人の氏名・居住地・生年月日 - 交付年月日と受給者証番号 - 支給量 - 支給決定の有効期間 - 障害支援区分 - 負担上限月額に関する事項など このうち「障害支援区分」の欄があるのは、**6つの受給者証のなかでこれだけ**です。ただし、区分欄が埋まっていないことがあります。区分の認定手続が置かれているのは、次の2つの支給決定を受けようとする場合だけです(同法施行令第10条第1項)。 - 介護給付費(特例介護給付費を含む) - 共同生活援助に係る訓練等給付費(特例訓練等給付費を含む) 就労継続支援B型や就労移行支援だけを利用する人には、この手続がありません。**区分欄が空欄でも受給者証としては有効**です。 関連する記事で詳しく扱っています。 - [受給者証をもらうまでの手続き](/column/jukyusha-sho-morau/) … 交付までの流れと必要書類 - [受給者証の更新](/column/jukyusha-sho-koushin/) … 有効期間の終期が近づいたときの取扱い - [障害福祉サービス受給者証の記載事項](/column/shogai-fukushi-jukyusha-sho/) … 証票そのものの読み方 ## 通所受給者証(障害児通所支援) 児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援などの障害児通所支援を利用するための証票です。交付するのは障害福祉サービス受給者証と同じ市町村ですが、**名義は障害児本人ではなく保護者**になります。児童福祉法は通所給付決定を受けた保護者を「通所給付決定保護者」と呼び、この保護者に対して交付すると定めています。 記載事項は7項目です。内容は次のとおりです。 - 通所給付決定保護者の氏名・居住地・生年月日 - 障害児の氏名・生年月日 - 交付年月日と通所受給者証番号 - 障害児通所支援の種類と支給量 - 通所給付決定の有効期間 - 障害児通所支援負担上限月額等に関する事項 **障害支援区分は含まれていません**。障害児通所支援の支給決定は、区分認定を経ずに行われるためです。 ## 自立支援医療受給者証 医療費の公費負担のための証票で、障害福祉サービスの利用とは**切り離された仕組み**です。自立支援医療は育成医療、更生医療、精神通院医療の3種類です。このうち精神通院医療については都道府県が支給認定を行います。育成医療と更生医療は市町村が行います。 もう一つの特徴が、受給者証に医療機関名が書かれていることです。市町村等は支給認定をしたときに、その人が医療を受ける機関を定めることとされています。選ぶ先は、都道府県知事が指定する指定自立支援医療機関です。その名称・所在地・連絡先が受給者証に記載されます。有効期間は1年以内です。 「精神科に通っているので受給者証を持っています」と言われることがあります。それが自立支援医療受給者証であれば、障害福祉サービスの**支給決定はまだ受けていない可能性**があります。B型や就労移行支援の見学から利用につなげる場面では、ここを取り違えると[計画相談支援](/column/keikaku-soudan-shien/)の依頼や支給申請の段取りがまるごと抜け落ちます。 ## 障害福祉の中にある、その他の受給者証 - 地域相談支援受給者証(障害者総合支援法第51条の7第8項)。地域移行支援・地域定着支援の給付決定を受けた人に市町村が交付します。 - 療養介護医療受給者証(同法施行規則第64条の2第3項)。療養介護に係る支給決定を受けた人に、障害福祉サービス受給者証とは別に市町村が交付します。 - 入所受給者証(児童福祉法第24条の3第6項)。障害児入所給付費の入所給付決定を受けた保護者に、都道府県が交付します。通所受給者証と交付主体が違う点に注意が必要です。 ## 障害福祉とは無関係の「受給者証」 雇用保険受給資格者証は、離職票を提出して受給資格の決定を受けた人に管轄公共職業安定所の長が交付するものです。個人番号カードを提示して手続きをした人が希望した場合は、受給資格者証ではなく雇用保険受給資格通知が交付されます。就労支援の場面で名前が出てきますが、障害福祉サービスの支給決定とは何の関係もありません。 医療費助成の受給者証も別系統です。指定難病の特定医療費については難病法にもとづき都道府県が医療受給者証を交付します。こども医療費や重度心身障害者医療費の助成は各自治体の条例にもとづくため、名称も様式も自治体ごとに異なります。これらは**障害福祉サービスの請求根拠にはなりません**。 利用契約の前に受給者証を見せてもらったら、まず表題を読んでください。「障害福祉サービス受給者証」でなければ、自事業所の請求根拠にはなりません。表題を確認したら、次の3点を押さえておくと契約支給量の記入で迷いません。 - サービスの種類の欄に、自事業所が提供するサービスが含まれているか - 支給量はどれだけか - 支給決定の有効期間はいつまでか 法律上、受給者証はサービスを受けるたびに提示することとされています(障害者総合支援法第29条第2項、同法施行規則第26条)。支給決定の変更があった場合、市町村は受給者証の提出を求めます(同法第24条第2項)。決定事項を記載したうえで返還します(同条第6項)。そのため、事業所が持っている写しは変更のたびに古くなります。契約時に取った写しをそのまま使い続けず、変更決定の連絡を受けたら差し替える運用にしておくと、報酬請求の根拠と手元の記録がずれません。 前後の手続きは次の記事で扱っています。 - [受給者証の交付条件](/column/jukyusha-sho-joken/) … 交付を受けるための条件そのもの - [サービス等利用計画](/column/service-riyou-keikaku/) … 支給決定の前段にある計画の作り方 ### よくある質問 Q. 受給者証は全部で何種類ありますか? A. 決まった総数はありません。「受給者証」は個別の法律がそれぞれ定めている名称です。障害者総合支援法と児童福祉法の範囲だけでも6つが条文上あります。障害福祉サービス受給者証、地域相談支援受給者証、自立支援医療受給者証、療養介護医療受給者証、通所受給者証、入所受給者証です。ここに雇用保険や難病医療費助成、自治体の条例に基づく医療費助成の受給者証が加わります。そのため「受給者証」だけでは何の証票か特定できません。 Q. 障害福祉サービス受給者証と通所受給者証は同じものですか? A. いいえ、別のものです。障害福祉サービス受給者証は、障害者総合支援法第22条第8項にもとづき支給決定を受けた本人に交付されます。通所受給者証は、児童福祉法第21条の5の7第9項にもとづき通所給付決定を受けた障害児の保護者に交付されます。どちらも交付するのは市町村ですが、記載事項が異なります。通所受給者証には障害支援区分の欄がありません。児童発達支援や放課後等デイサービスの請求根拠になるのは通所受給者証のほうです。 Q. 自立支援医療受給者証を持っていれば就労継続支援B型を利用できますか? A. いいえ、それだけでは利用できません。自立支援医療受給者証は、指定自立支援医療機関で医療を受けるための証票です。根拠は障害者総合支援法第54条第3項です。障害福祉サービスを利用するには、別途、市町村の支給決定が要ります。同法第22条第8項の障害福祉サービス受給者証の交付を受ける必要があります。両方を持っている人も珍しくありませんが、1枚で兼ねることはできません。 Q. 自立支援医療受給者証はどこが交付するのですか? A. 医療の種類によって変わります。自立支援医療は育成医療、更生医療、精神通院医療の3種類です(障害者総合支援法施行令第1条の2)。このうち精神通院医療に係る自立支援医療費の支給に関しては、都道府県が支給認定を行います。育成医療と更生医療は市町村が行います(同法第8条第1項、同法施行令第3条、同法施行規則第35条第1項)。有効期間はいずれも1年以内です(同法施行規則第43条)。 Q. 雇用保険受給資格者証は障害福祉の受給者証と関係がありますか? A. いいえ、関係ありません。雇用保険受給資格者証は、離職票を提出して受給資格の決定を受けた人に交付されます。交付するのは管轄公共職業安定所の長で、根拠は雇用保険法施行規則第19条第3項です。個人番号カードを提示して手続きした人が希望した場合は、受給資格者証に代えて雇用保険受給資格通知が交付されます。障害福祉サービスの支給決定とは制度も交付主体も別です。 Q. 受給者証は利用のたびに提示してもらう必要がありますか? A. はい、法律上はその都度提示することとされています。根拠は障害者総合支援法第29条第2項です。指定障害福祉サービス等を受けようとする支給決定障害者等は、事業者に受給者証を提示して受けるものとされています。例外は、緊急の場合その他やむを得ない事由のある場合に限られます。通所受給者証にも同じ構造の提示規定があります(児童福祉法第21条の5の7第10項)。自立支援医療受給者証も同じです(障害者総合支援法第58条第2項)。 ### 根拠資料 - デジタル庁 e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)2026年6月25日施行版」 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123(2026年08月16日確認) - デジタル庁 e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(平成18年厚生労働省令第19号)2026年5月20日施行版」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100019(2026年08月16日確認) - デジタル庁 e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行令(平成18年政令第10号)2026年7月1日施行版」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418CO0000000010(2026年08月16日確認) - デジタル庁 e-Gov法令検索「児童福祉法(昭和22年法律第164号)2026年6月25日施行版」 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000164(2026年08月16日確認) - デジタル庁 e-Gov法令検索「児童福祉法施行規則(昭和23年厚生省令第11号)2026年4月1日施行版」 https://laws.e-gov.go.jp/law/323M40000100011(2026年08月16日確認) - デジタル庁 e-Gov法令検索「雇用保険法施行規則(昭和50年労働省令第3号)2026年8月1日施行版」 https://laws.e-gov.go.jp/law/350M50002000003(2026年08月16日確認) - デジタル庁 e-Gov法令検索「難病の患者に対する医療等に関する法律(平成26年法律第50号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC0000000050(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領・令和8年7月版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001721666.pdf(2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 計画相談支援とは サービス等利用計画とモニタリングを 事業所側から理解する URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/keikaku-soudan-shien/ カテゴリー: 利用者獲得 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.07.01 ### 結論 計画相談支援とは、サービス利用支援と継続サービス利用支援の2つを指します。サービス利用支援は2段構えです。まず支給申請をした人の心身の状況や意向を勘案し、サービス等利用計画案を作成します。支給決定が行われた後は、関係者との連絡調整等を行ってサービス等利用計画を作成します。継続サービス利用支援は、いわゆるモニタリングです。支給決定の有効期間内に、計画が適切かどうかを主務省令で定める期間ごとに検証します。そのうえで計画を見直し、その結果に応じて計画の変更や申請の勧奨を行います(障害者総合支援法第5条第23項・第24項。2026年6月25日施行版)。行うのは指定特定相談支援事業者の相談支援専門員です。指定は市町村長が行い、6年ごとに更新されます。 サービス提供事業所から見ると、相談支援専門員は制度上いくつもの接点を持つ相手です。計画案の作成は支給申請の直後から始まります。どの事業所を計画に位置づけるかの検討は、利用者が見学に来るより前に動いていることがあります。サービス等利用計画は、利用者だけでなく計画に位置づけられた担当者にも交付されます。事業所の側も、個別支援計画を作成した際には指定特定相談支援事業者等に交付する義務を負います。連携は好意ではなく、省令が定めた双方向の手続きです(2026年8月時点)。 - 計画相談支援の中身: サービス利用支援(計画案の作成と、支給決定後の連絡調整・計画の作成)と、継続サービス利用支援(モニタリング)の2つ - 実施主体: 指定特定相談支援事業者。指定を行うのは市町村長で、指定は事業所ごと、6年ごとの更新 - 計画案の提出依頼: 市町村は支給申請があった場合に計画案の提出を求める(原則として全員が対象)。依頼は書面で、提出先と提出期限を通知する - 事業所が計画を受け取る根拠: 相談支援専門員はサービス等利用計画を利用者等及び担当者に交付しなければならない(指定計画相談支援基準第15条第2項第14号) - 事業所が計画を渡す義務: サービス管理責任者は個別支援計画を作成した際、利用者及び指定特定相談支援事業者等に交付しなければならない(指定障害福祉サービス基準第58条第8項ほか準用規定) - モニタリングの標準期間: 著しい変動があった者・単身等・就労選択支援利用者は1月間、就労移行支援や自立訓練、共同生活援助(日中サービス支援型)等は3月間、それ以外は6月間(施行規則第6条の16) - セルフプランの場合: 指定特定相談支援事業者以外の者が計画案を作成した場合は、継続サービス利用支援の対象外となる - 相談支援専門員の員数の標準: 計画相談支援対象障害者等の数が35又はその端数を増すごとに1人。ただし1人が受け持つ件数や人数の上限は設けられていない 根拠: 厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領)」(令和8年7月版)第3/障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第28号)第15条 ### 本文 ## 計画相談支援は2つの支援の総称 法律の言葉を先に押さえておくと、あとの実務が読みやすくなります。相談支援は、基本相談支援・地域相談支援・計画相談支援の総称です。このうち計画相談支援は、サービス利用支援と継続サービス利用支援の2つを指します。いずれも障害者総合支援法第5条第19項の定義です。基本相談支援と計画相談支援のいずれも行う事業が特定相談支援事業です。 サービス利用支援は2段構えです。まず申請者の心身の状況や環境、意向を勘案してサービス等利用計画案を作ります。支給決定等が行われた後は、関係者との連絡調整等を行ってサービス等利用計画を作ります。継続サービス利用支援は、モニタリングにあたる部分です。支給決定の有効期間内に、計画が適切かどうかを主務省令で定める期間ごとに検証します。その結果を踏まえて、計画を見直します。見直した結果に応じて、計画の変更と連絡調整を行うか、新たな支給決定等の申請を勧奨します。 条項番号には注意が必要です。就労選択支援が第5条第13項として新設された際に、後ろの項番号が繰り下がりました。現行はサービス利用支援が第23項、継続サービス利用支援が第24項です。厚生労働省の事務処理要領(令和8年7月版)には、旧番号の「第5条第23項」が継続サービス利用支援の根拠として残っています。法令の現行版では第24項です。 ## 相談支援専門員が動き出すのは、見学より前 紹介経路として相談支援事業所を見るなら、いつ相談支援専門員が動くのかを知っておく必要があります。市町村は支給申請があった場合に、指定特定相談支援事業者が作成する計画案の提出を求めます。原則として申請者全員が対象です。依頼は書面で行い、提出が必要である旨と提出先・提出期限を通知します。事務処理要領の支給決定フロー図では、この提出依頼は**申請の直後**に置かれています。障害支援区分の認定調査より前の工程です。 つまり、どの事業所を計画に位置づけるかの検討は、利用者が見学に来るより前に始まっていることがあります。この段階で効いてくるのは、自分の事業所が相談支援事業所に知られているかどうかです。空き状況や受け入れ可能な障害特性が伝わっているかが分かれ目になります。 | 工程 | 誰が動くか | 事業所の関わり | | --- | --- | --- | | 支給申請 | 本人・家族が市町村へ | 申請前の相談に応じている段階 | | 計画案の提出依頼(書面) | 市町村が申請者へ | ここで相談支援事業所を探し始める人がいる | | 障害支援区分の認定調査等 | 市町村(共同生活援助を除く訓練等給付は不要) | B型・就労移行支援等はこの工程が入らない | | サービス等利用計画案の作成 | 相談支援専門員 | 計画に位置づける事業所の検討が行われる | | 支給決定・受給者証の交付 | 市町村 | 受給者証の提示を受けて契約に進む | | サービス担当者会議 | 相談支援専門員が招集 | 事業所は担当者として参加し意見を述べる | | サービス等利用計画の作成・交付 | 相談支援専門員 | 利用者等と担当者に交付される | 障害支援区分の認定が必要なのは、介護給付費等と共同生活援助に係る訓練等給付費の支給決定を受けようとする場合です。就労継続支援B型、就労移行支援、就労選択支援、就労定着支援、自立生活援助、自立訓練は訓練等給付にあたります。医師意見書の徴取から一次判定・二次判定・区分認定までの工程が省かれます。「障害福祉サービスの利用には必ず区分認定が要る」という説明は誤りです。 ## 法令が定めた4つの接点 連携が属人的になりやすいのは、どこが義務でどこが任意かが整理されていないためです。省令の条文に戻ると、サービス提供事業所と相談支援事業所の接点は次の4つです。 | 接点 | 誰の義務か | 根拠 | | --- | --- | --- | | サービス担当者会議に担当者として参加し、専門的な見地からの意見を述べる | 相談支援専門員が招集する義務。事業所は担当者として参加 | 指定計画相談支援基準第15条第2項第12号 | | サービス等利用計画の交付を受ける | 相談支援専門員が利用者等及び担当者に交付する義務 | 同第15条第2項第14号 | | 個別支援計画を相談支援事業者へ交付する | サービス管理責任者の義務 | 指定障害福祉サービス基準第58条第8項(各サービスに準用) | | モニタリングのために相談支援専門員が訪問・面接する | 相談支援専門員が居宅等を訪問して面接する義務 | 指定計画相談支援基準第15条第3項第2号 | 3つ目は**事業所側の義務**であることを見落としがちです。個別支援計画を作った、あるいは変更したのに相談支援事業所へ渡していない状態は、条文上そのまま不履行にあたります。逆に言えば、この交付は事業所から相談支援専門員へ定期的に接触する正当な理由になります。 4つ目についても認識のずれが起きやすいところです。モニタリングの面接は、**利用者の居宅等を訪問**して行うのが原則です。事業所など一時的な滞在場所のみを訪問して面接した場合は、適切にモニタリングが行われたとは認められないとされています。居宅の訪問に加えて事業所で面接すること自体は差し支えありません。相談支援専門員が事業所に立ち寄っただけでは要件を満たしません。この前提で日程を考える必要があります。 ## モニタリング期間は省令で標準が決まっている 継続サービス利用支援をいつ行うかは、市町村が定めます。相談支援事業者の提案を踏まえ、個別に必要と認める期間として決める仕組みです。その勘案材料になるのが、施行規則第6条の16の標準期間です。 | 対象 | 期間 | | --- | --- | | 支給決定又は変更によりサービスの種類・内容・量に著しく変動があった者 | 1月間(利用開始日から起算して3月を経過するまでの間に限る) | | 障害者支援施設からの退所等で集中的支援が必要な者、単身世帯等で自ら連絡調整が困難な者、重度障害者等包括支援の対象となり得る者 | 1月間 | | 就労選択支援を利用する者 | 1月間 | | 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、短期入所、就労移行支援、自立訓練、就労定着支援、自立生活援助、共同生活援助(日中サービス支援型に限る)を利用する者、及びこれら以外で65歳以上の者 | 3月間 | | 療養介護・重度障害者等包括支援・施設入所支援の利用者、上記以外の障害福祉サービス利用者等 | 6月間 | 表の見方で2点補足します。ひとつは、就労選択支援の扱いが資料によって食い違うことです。1月間とする根拠は施行規則第3号に明記されています。一方、事務処理要領(令和8年7月版)の列挙には含まれていません。原文を突き合わせると、要領のa〜dの4区分に就労選択支援が現れません。根拠として強いのは省令です。就労選択支援の利用者は毎月と考えるのが安全です。 もうひとつは、就労継続支援B型がこの表のどこにも名指しで出てこないことです。B型の利用者は最後の行に落ちるので、標準は6月間になります。つまりB型の利用者は、標準どおりなら半年に1回しか相談支援専門員のモニタリングが入りません。就労移行支援の3月間と比べると、変化が共有される頻度は半分です。 ただしこれはあくまで標準で、**一律に当てはめてはならない**とされています。厚生労働省は、標準より短い期間で設定することが望ましい状態像を例示しています。 - 利用する事業所の頻繁な変更やそのおそれのある者 - 複数の障害福祉サービスを利用している者 - 医療機関等との連携が必要な者 - 意思決定支援のために頻回な関わりが必要となる者 期間は、相談支援事業者の提案を踏まえて市町村が決めます。事業所が把握している状況を相談支援専門員に伝えれば、そのまま提案の材料になります。 ## セルフプランの利用者には、この仕組みが働かない セルフプランを提出できるのは2つの場合だけです。身近な地域に指定特定相談支援事業者がない場合と、申請者本人が希望する場合です。利用者が希望していないのに市町村が求めることは、厳に慎むべきものとされています。 事業所にとっての実務的な差は、事務処理要領がはっきり書いています。指定特定相談支援事業者以外の者がサービス等利用計画案を作成した場合は、**継続サービス利用支援の対象外**です。定期的に外部の専門職が状況を検証する機能が回りません。必要なら支給決定の変更申請を勧奨する、という働きかけも入りません。更新申請について必要な援助を行う義務も働きません。これは指定特定相談支援事業者に課された義務だからです。 セルフプランの利用者が多い事業所は、事業所側で支える部分が増えます。支給決定の有効期間の管理と、状況が変わったときの支給量変更の手続きです。 ## 自法人で相談支援事業所を持つ場合の制約 相談支援事業所の併設を検討する場合は、中立性の制約を先に確認しておく必要があります。相談支援専門員がサービス提供事業所の職員と兼務する場合の話です。その事業所を利用する利用者のモニタリング等は、**兼務していない相談支援専門員**が行うことが基本とされています。利用者本人がその相談支援専門員を希望する場合でも、「やむを得ない場合」としては扱いません。制度の趣旨を説明して理解を求めることとされています。 一方で、同一法人の他の事業所を利用する利用者のモニタリングは実施できます。指定は市町村長が事業所ごとに行い、6年ごとの更新です。相談支援専門員の員数の標準は、計画相談支援対象障害者等の数が35又はその端数を増すごとに1人です。数え方は前6月の平均値で、新規指定は推定数を使います。これは配置の標準であって、担当件数の上限ではありません。 ## 連携に報酬が付く場面がある 事業所から相談支援専門員に声をかけることを遠慮する必要はありません。計画相談支援の報酬には、事業所側からの働きかけを前提にした加算が置かれています。 | 加算 | 単位数 | 内容 | | --- | --- | --- | | 集中支援加算(会議への参加) | 1月につき300単位 | 福祉サービス等提供機関の求めに応じ、当該機関が開催する会議に参加し、関係機関相互の連絡調整を行った場合 | | 集中支援加算(情報提供) | 1月につき150単位 | 福祉サービス等提供機関からの求めに応じて、必要な情報の提供を行った場合 | | サービス提供時モニタリング加算 | 1月につき100単位 | 障害福祉サービス等の提供現場を訪問し、提供状況等を確認し、及び記録した場合 | | サービス担当者会議実施加算 | 1月につき100単位 | 継続サービス利用支援を行うに当たりサービス担当者会議を開催し、実施状況を説明して担当者から意見を求めた場合 | いずれも計画相談支援対象障害者等1人につき1月に1回が限度です。集中支援加算には、サービス利用支援費等を算定する月を除くなどの制限が付きます。サービス担当者会議実施加算には、医療・保育・教育機関等連携加算との併給調整が付きます。単位数は令和6年4月1日施行の報酬告示によるものです。2026年8月時点で改定されていません。 なお、計画相談支援にも福祉・介護職員等処遇改善加算が新設されました。令和8年度の期中改定によるもので、それまでは対象外でした。加算率は1から18までにより算定した単位数の1000分の51です。令和8年6月1日から適用されています。相談支援事業所の経営環境は、この改定で少し動いています。 条文と加算要件から逆算すると、事業所側から定期的に発信できる材料は3つあります。個別支援計画の交付、モニタリング期間の見直しにつながる状況の共有、自分たちが開く会議への参加依頼です。いずれも義務か加算要件のどちらかに紐づいています。相手にとって断る理由が少ない接触です。 個別支援計画は、作成時と変更時に相談支援事業者へ渡すことが省令上の義務です。郵送やメールで送って終わりにせず、交付の記録を残す運用にしておけば、運営指導での確認文書として使えます。相談支援専門員との接触履歴としても残ります。 モニタリング期間の提案権は相談支援事業者にあります。事業所が把握している変化は、そのまま提案の材料になります。通所が不安定になった、医療機関との連携が必要になった、複数サービスの併用が始まったといった事実です。厚生労働省が短い期間の例として挙げている状態像と重なります。半年に1回のモニタリングでは間に合わないと感じたら、事業所側から状況を伝えるのが筋の通ったルートです。 会議への参加依頼は、集中支援加算の(3)が想定している場面そのものです。ただし1人につき1月に1回が限度で、サービス利用支援費等を算定する月は対象外です。相談支援事業所の側にも、算定できる月とできない月があります。日程を決める前に一言確認しておくと調整が早く済みます。 関連する内容は、次の記事で整理しています。 - [障害福祉サービス受給者証とは](/column/shogai-fukushi-jukyusha-sho/) … 受給者証の見方と支給決定の流れ - [サービス等利用計画](/column/service-riyou-keikaku/) … 計画そのものの記載事項 - [計画相談支援事業所](/column/keikaku-soudan-shien-jigyosho/) … 相談支援事業所の指定や運営の要件 ### よくある質問 Q. 計画相談支援とサービス等利用計画は同じものですか? A. いいえ、計画相談支援は事業の名称です。サービス等利用計画は、その事業の中で作られる書類を指します。計画相談支援はサービス利用支援と継続サービス利用支援の2つで構成されます。このうちサービス利用支援の成果物がサービス等利用計画です。支給決定の前に作るものは「サービス等利用計画案」と呼びます。支給決定後にサービス担当者会議等を経て作るものが「サービス等利用計画」です。案の段階の記載事項は6つあります。本人及び家族の意向、総合的な援助の方針、生活全般の解決すべき課題、目標及び達成時期、種類・内容・量・日時、留意事項です。本計画ではこれに利用料と担当する者が加わります(障害者総合支援法施行規則第6条の15)。 Q. 利用者が計画相談支援を使わずセルフプランで利用することはできますか? A. できますが、2つの場合に限られます。1つは、身近な地域に指定特定相談支援事業者がない場合です。もう1つは、申請者本人がセルフプランの提出を希望する場合です(障害者総合支援法第22条第5項、施行規則第12条の4)。利用者が希望していないのに市町村が提出を求めることは、厳に慎むべきものとされています。事業所にとって実務上大きいのは、継続サービス利用支援の扱いです。指定特定相談支援事業者以外の者が計画案を作成した場合は、その対象外になります。定期的に第三者が状況を確認する仕組みが働きません。変化の把握が事業所側の記録だけに寄ります。 Q. 就労継続支援B型の利用に障害支援区分の認定は必要ですか? A. 必要ありません。区分認定が求められるのは2つの給付です。介護給付費・特例介護給付費と、共同生活援助に係る訓練等給付費・特例訓練等給付費です(障害者総合支援法施行令第10条第1項)。就労継続支援B型、就労移行支援、就労選択支援、就労定着支援、自立生活援助、自立訓練は訓練等給付です。そのため医師意見書の徴取・審査会判定・障害支援区分の認定の工程が入りません。そのぶん申請から支給決定までの工程は短くなります。ただし所要日数に全国一律の定めはありません。市町村が行政手続法上の標準処理期間を各自定めています。 Q. 相談支援専門員が担当できる件数に上限はありますか? A. 件数の上限は設けられていません。省令が定める「35」は員数の標準です。計画相談支援対象障害者等の数が35又はその端数を増すごとに、相談支援専門員1人という配置の目安を示しています。根拠は指定計画相談支援基準第3条第2項です。厚生労働省のQ&Aも、1人が受け持つ件数や人数に制限は設けていないと回答しています。理由は、必要となるモニタリングの頻度が利用者ごとに異なることです。ただし1人が適切に対応できる件数や人数とすること、とも付け加えています。報酬側には、取扱件数40以上の部分の単位数が下がる逓減の仕組みがあります。この40と配置の35は別の数字です。 Q. 自法人で相談支援事業所を持てば、自分の事業所の利用者のモニタリングもできますか? A. 兼務している事業所の利用者については、原則としてできません。相談支援専門員がサービス提供事業所の職員と兼務する場合、そのモニタリング等は兼務していない相談支援専門員が行うことが基本とされています。中立性を確保するためです。利用者本人がその相談支援専門員を希望する場合でも、「やむを得ない場合」とは扱いません。制度の趣旨を説明して理解を求めることとされています。一方、同一法人の他の事業所の利用者のモニタリングは実施できます(相談支援に関するQ&A 令和7年3月18日 問43〜問45)。 Q. 事業所から相談支援専門員に会議への参加を頼んでもよいのですか? A. 頼んで差し支えありません。むしろ報酬上も想定されています。相談支援事業所の報酬には集中支援加算が置かれています。福祉サービス等提供機関の求めに応じて当該機関が開催する会議に参加し、関係機関相互の連絡調整を行った場合は300単位です。事業所からの求めに応じて利用者に関する必要な情報の提供を行った場合は150単位です。いずれも計画相談支援対象障害者等1人につき1月に1回が限度です。サービス利用支援費等を算定する月は除きます。事業所側から声をかけることは、相談支援事業所にとって持ち出しにはなりません。 ### 根拠資料 - e-Gov法令検索(デジタル庁)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第5条第19項・第23項・第24項、第19条、第22条、第23条、第51条の17、第51条の20、第51条の21」 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123(2026年08月16日確認(2026年6月25日施行版)) - e-Gov法令検索(デジタル庁)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(平成18年厚生労働省令第19号)第6条の15、第6条の16、第12条の2、第12条の3、第12条の4」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100019(2026年08月16日確認(2026年5月20日施行版)) - e-Gov法令検索(デジタル庁)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第28号)第3条、第10条、第13条、第15条、第15条の2、第16条、第29条」 https://laws.e-gov.go.jp/law/424M60000100028(2026年08月16日確認(2025年10月1日施行版)) - e-Gov法令検索(デジタル庁)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第58条第8項(個別支援計画の交付)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年08月16日確認(2025年10月1日施行版)) - e-Gov法令検索(デジタル庁)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行令(平成18年政令第10号)第10条第1項(障害支援区分の認定を要する者)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418CO0000000010(2026年08月16日確認(2026年7月1日施行版)) - 厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領)令和8年7月版 第2・第3」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001721666.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「相談支援に関するQ&A(令和7年3月18日)問2・問3・問4・問5・問6・問7・問36・問43〜問46・問50・問52」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001335081.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定計画相談支援に要する費用の額の算定に関する基準(平成24年厚生労働省告示第125号)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83ab2683&dataType=0&pageNo=1(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「相談支援業務に関する手引き(令和6年3月)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001335080.pdf(2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 計画相談支援事業所から 紹介がまわる事業所の共通点と 日常でできること URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/keikaku-soudan-shien-jigyosho/ カテゴリー: 利用者獲得 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.07.01 ### 結論 相談支援専門員が紹介先を選ぶときの土台になっているのは、指定計画相談支援基準が定める公正中立の原則と、地域の事業所情報を利用者へ適正に提供する義務です(2026年8月16日時点の現行制度)。事業所側にできるのは、正確な事業所情報を公表しておくこと、サービス担当者会議に出て情報を持ち帰ってもらうこと、個別支援計画を相談支援事業所へ交付する義務を確実に果たすことです。金品を渡して紹介を得る行為は、相談支援事業者側の収受も事業所側の供与も省令が明確に禁じています。 - 相談支援側の原則: 特定の事業者に不当に偏らず公正中立に行う(指定計画相談支援基準 第2条第4項) - 情報提供の義務: 計画作成の開始に当たり、地域の事業者のサービス内容・利用料等を利用者へ適正に提供(同 第15条第2項第4号) - 事業所側の交付義務: 個別支援計画を利用者と指定特定相談支援事業者等に交付(指定障害福祉サービス基準 第58条第8項。B型は第202条で準用) - 連携への協力: 市町村や特定相談支援事業者が行う連絡調整にできる限り協力(同 第12条。B型は第202条で準用) - 禁止されていること: 利用や紹介の対償としての金品その他の財産上の利益の収受・供与(指定計画相談支援基準 第26条第3項、指定障害福祉サービス基準 第38条) 根拠: 厚生労働省令「障害者総合支援法に基づく指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準」(2025年10月1日施行版) ### 本文 ## 相談支援専門員は何を基準に紹介先を選んでいるのか 計画相談支援事業所(指定特定相談支援事業者)は、利用者の希望や好みだけで事業所を選んでいるわけではありません。省令が方針を決めています。 指定計画相談支援基準の第2条は、事業の基本方針として、福祉サービス等が「多様な事業者から、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行われる」こと(第3項)、そして「特定の種類又は特定の障害福祉サービス事業を行う者に不当に偏ることのないよう、公正中立に行われる」こと(第4項)を定めています。特定の1事業所に集中させない義務が、はじめから相談支援側にかかっています。 そのうえで、同基準の第15条第2項第4号が具体的な行為を求めています。相談支援専門員はサービス等利用計画の作成を始めるにあたり、利用者によるサービスの選択に資するよう、その地域の指定障害福祉サービス事業者等に関するサービスの内容や利用料等の情報を、利用者や家族に適正に提供しなければなりません。第8号では、アセスメントに基づき、地域におけるサービスの提供体制を勘案して最も適切な組み合わせを検討することとされています。 つまり相談支援専門員は、地域の事業所の内容を説明する立場に立たされています。説明できない事業所は、選択肢の一覧に並びません。ここが利用者獲得の実務としての出発点になります。 ## 見返りは制度上、明確に禁止されている 同基準の第26条は「障害福祉サービス事業者等からの利益収受等の禁止」という見出しの条文です。第2項は相談支援専門員が利用者へ特定事業者のサービスを利用すべき旨の指示等を行うことを、第3項は、計画の作成・変更に関し、利用者に特定の事業者のサービスを利用させることの対償として、その事業者から金品その他の財産上の利益を収受することを禁じています。 渡す側も無関係ではありません。指定障害福祉サービス基準第38条は、利用者を紹介してもらうことの対償として事業者が金品その他の財産上の利益を供与することも禁じており、就労継続支援B型は第202条でこの規定を準用しています。受け取る側と渡す側の双方にそれぞれの指定基準で禁止がかかっているため、関係づくりの手段としては最初から使えません。使えるのは、制度が「やりなさい」と書いている連携の方です。 ## 事業所側にも連携の義務が置かれている 見落とされがちですが、サービス提供事業所の側にも連携に関する規定があります。就労継続支援B型では、指定障害福祉サービス基準第202条が、第9条から第17条までと第57条から第60条までを含む多くの規定を準用しています。 | 事業所側の規定 | 内容 | | --- | --- | | 第12条(連絡調整に対する協力) | 市町村または一般相談支援事業・特定相談支援事業を行う者が行う連絡調整に、できる限り協力する | | 第15条第2項(申請に係る援助) | 支給決定の有効期間の終了に伴う支給申請について、必要な援助を行う | | 第16条(心身の状況等の把握) | 利用者の心身の状況、環境、他の保健医療・福祉サービスの利用状況等の把握に努める | | 第17条(事業者等との連携等) | 地域および家庭との結び付きを重視し、市町村や他の事業者等との密接な連携に努める | | 第58条第8項(計画の交付) | 個別支援計画を作成した際、利用者および指定特定相談支援事業者等に交付する | | 第59条第1号(サビ管の責務) | 利用申込者について、他の事業者等への照会等により心身の状況や利用状況を把握する | 第58条第8項の交付義務は、B型では「就労継続支援B型計画」と読み替えて適用されます。計画を変更した場合も第2項から第8項までが準用されるため(同条第11項)、変更のたびに交付が必要です。ここを止めると、相談支援専門員は自分の作った計画がどう動いているのかを書面で確認できなくなります。交付を確実に回している事業所は、それだけで相手の業務を軽くしています([個別支援計画の書き方](/column/kobetsu-shien-keikaku/))。 ## サービス担当者会議での姿勢 サービス担当者会議は、相談支援専門員が利用者と担当者を招集して開く会議です(同基準第15条第2項第12号)。この場で相談支援専門員は、計画案の内容を説明し、担当者から専門的な見地からの意見を求めなければならないとされています。テレビ電話装置等を活用して行うことも認められています。 厚生労働省の「相談支援に関するQ&A」(令和7年3月18日)問7は、全担当者の参加が困難な場合は主要な担当者の参加を求めて開催し、その他の担当者は事前に個別に意見調整を行って当日共有する扱いで差し支えないとしています。出られない回があっても、事前に文書で意見を出しておけば会議は前に進みます。 なお、モニタリングの実施時に担当者会議を開いた場合、相談支援事業所はサービス担当者会議実施加算(1月につき100単位。利用者1人につき1月に1回が限度)を算定できます。事業所側が開く会議への参加を相談支援専門員に求め、その会議で関係機関相互の連絡調整が行われた場合も、相談支援側は集中支援加算(1月につき300単位。同じく利用者1人につき1月に1回が限度。ただし基本報酬などを算定する月は算定できません)を算定できます。相手の時間を使う依頼だという前提で、日程と目的を先に固めて持ちかけるのが現実的です。 相談支援事業所とのやり取りは、担当者ごとの記憶ではなく事務手順として置いておくと崩れません。個別支援計画を作成・変更したら交付日を控えて記録に残す、担当者会議の案内が来たら出欠と代替の意見提出をその場で返す、この2つは省令とQ&Aから直接導ける最低限の段取りです。 会議で利用者や家族の個人情報を扱う場合、相談支援事業者はあらかじめ文書で本人等の同意を得ておく必要があります(指定計画相談支援基準第22条第3項)。同意の範囲を超える情報を求められた場合は、その場で確認を挟むほうが安全です。 ## 計画相談支援のモニタリングの機会に何を渡すか 以下でモニタリングというのは、相談支援専門員が行う計画相談支援のモニタリングのことです。事業所のサービス管理責任者が行う個別支援計画のモニタリング(指定基準第58条第9項・第10項)とは、根拠条文も担い手も別のものです。継続サービス利用支援(モニタリング)では、相談支援専門員は主務省令で定める期間ごとに利用者の居宅等を訪問して面接し、結果を記録しなければなりません(同基準第15条第3項第2号)。通所先の事業所を訪問しただけではモニタリングとして認められません。Q&A問6は、事業所等の一時的な滞在場所のみを訪問して面接した場合は適切に行われたものと認められないとしつつ、居宅訪問に加えて事業所で面接することは差し支えないとしています。 つまり、事業所での様子が相談支援専門員に届く経路は限られています。提供現場を訪問する加算の仕組みはありますが、日常的には、通所状況や体調の変化、作業内容の変更といった事実を、モニタリング月の前に文書で渡しておくほうが確実です。モニタリング期間の考え方は[計画相談支援の仕組み](/column/keikaku-soudan-shien/)、計画の構造は[サービス等利用計画](/column/service-riyou-keikaku/)で整理しています。 就労継続支援B型・就労移行支援を提供している場合は、もう一つ接点があります。同基準第15条第3項第6号は、モニタリングの結果等を踏まえて就労選択支援の利用が必要と認められるときは、相談支援専門員が就労移行支援または就労継続支援の事業者と連携し、就労選択支援に関する情報の提供その他必要な援助を行うものとしています。制度上、事業所と相談支援専門員が並んで判断する場面です([就労選択支援の全体像](/column/shurou-sentaku-shien/))。 ## 情報公表を放置しない 最後に、最初の接点の話です。障害者総合支援法第76条の3は、指定障害福祉サービス事業者等を「対象事業者」とし、サービスの提供を開始しようとするときその他主務省令で定めるときに、事業所情報を所在地の都道府県知事へ報告することを義務づけています。都道府県知事は報告の内容を公表しなければならず、報告をしない場合や虚偽の報告をした場合には報告や是正を命ずることができ、命令に従わないときは指定の取消し等の対象になります。 公表された内容は、WAM NETの障害福祉サービス等情報公表システムで、地域・住所・法人名・事業所名・事業所番号から検索できます。相談支援専門員が地域の事業所を調べる入口の一つです。提供するサービスや対応できる障害種別といった基本情報が古いままだと、選択肢に挙がる前の段階で外れます。 なお、空き人数のような日々変動する情報をどう共有するかについては、法令や国の通知に定めがありません。地域の自立支援協議会や相談支援事業所の運用によるため、指定権者や地域の相談支援事業所に確認してください。制度としてできるのは、公表情報を正確に保ち、担当者会議と計画の交付を止めないところまでです。それを続けている事業所が、結果として相談支援専門員に説明してもらえる事業所になります。 ### よくある質問 Q. 相談支援事業所へのあいさつ回りや情報提供は、してもよいのですか。 A. 事業所の内容を正確に伝えるためのあいさつや資料提供は、制度上禁止されていません。禁止されているのは金品のやり取りで、指定計画相談支援基準第26条第3項は、自分の事業所のサービスを利用させることの対償として事業者から金品その他の財産上の利益を収受することを相談支援事業者側に禁じ、指定障害福祉サービス基準第38条(就労継続支援B型は第202条で準用)は、紹介の対償として金品等を供与することを事業所側にも禁じています。会食や物品を前提にした働きかけは、双方の指定基準に触れます。 Q. サービス担当者会議に管理者やサービス管理責任者が出られないときはどうすればよいですか。 A. 主要な担当者が参加すれば会議は開催でき、出られない担当者は事前の個別調整で意見を伝える扱いが認められています。厚生労働省「相談支援に関するQ&A」(令和7年3月18日)問7は、全担当者の参加が困難な場合、主要な担当者の参加を求めて会議を開催し、その他の担当者は事前に個別に意見調整を行って当日共有して差し支えないとしています。ただし、参加できなかった担当者にも議論内容を共有することとされています。 Q. 個別支援計画は相談支援事業所に渡す必要がありますか。 A. はい、交付が義務づけられています。指定障害福祉サービス基準第58条第8項は、サービス管理責任者が個別支援計画を作成した際に、利用者および指定特定相談支援事業者等へ交付しなければならないと定めています。就労継続支援B型は第202条でこの規定を準用しており、計画を変更したときも同じ手続きが準用されます(同条第11項)。 Q. 相談支援専門員が事業所に来て支援場面を見ていくのはなぜですか。 A. サービス提供時モニタリング加算という報酬上の仕組みがあるためです。令和6年4月1日施行の報酬告示では、サービス等利用計画を作成した利用者が使う障害福祉サービス等の提供現場を訪問し、提供状況等を確認して記録した場合に100単位を加算するとされ、利用者1人につき1月に1回が限度です。相談支援専門員1人当たりが担当する利用者の数が39を超える場合、39を超える分は算定できません。 Q. 空き情報はどこに出しておくのが基本ですか。 A. 制度上の基本は、障害者総合支援法第76条の3に基づく情報公表です。指定障害福祉サービス事業者はサービスの提供を開始しようとするときなどに事業所情報を都道府県知事へ報告し、都道府県知事がその内容を公表します。公表結果はWAM NETの障害福祉サービス等情報公表システムで誰でも検索できます。ただし、日々変動する空き人数の伝え方は法令に定めがなく、地域ごとの運用によります。 ### 根拠資料 - e-Gov法令検索「障害者総合支援法に基づく指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第28号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/424M60000100028(2025年10月1日施行版・2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索「障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2025年10月1日施行版・2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第76条の3」 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123(2026年6月25日施行版・2026年08月16日確認) - 厚生労働省「相談支援に関するQ&A(令和7年3月18日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001335081.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の実施上の留意事項について(令和8年度改定後)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和6年こども家庭庁・厚生労働省告示第3号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001239565.pdf(2026年08月16日確認) - 独立行政法人福祉医療機構「WAM NET 障害福祉サービス等情報公表システム(障害福祉サービス事業所検索)」 https://www.wam.go.jp/sfkohyoout/(2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 個別支援計画とは? 運営基準が定める作成の手順と 原案に書くべき記載事項 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/kobetsu-shien-keikaku/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.04.01 ### 結論 個別支援計画は、サービス管理責任者が定められた手順で作成する書面です。作成業務を担当させるのは管理者です。手順は条文の順に決まっています。まず利用者に面接してアセスメントを行い、原案を作成し、個別支援会議を開きます。会議には利用者本人も加わります。次に原案を説明し、文書により利用者の同意を得ます。完成した計画は、利用者と相談支援事業者に交付します。 作成後の見直しは、就労継続支援B型では少なくとも6か月に1回以上です。就労移行支援、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、自立生活援助は少なくとも3か月に1回以上になります。準用を定めた条文が第58条第9項の「六月」を「三月」に読み替えているためです。2026年4月1日時点の制度で、令和8年度報酬改定でこの手続は変更されていません。 この一連の業務のどれかが欠けていると、個別支援計画未作成減算の対象になります。計画書そのものが存在していても同じです。 - 作成する人: サービス管理責任者(管理者が担当させる/省令第58条第1項) - アセスメント: 利用者に面接して行う(第58条第4項) - 同意の方法: 利用者又は家族に説明し、文書により利用者の同意を得る(第7項) - 交付先: 利用者及び指定特定相談支援事業者等(第8項) - 見直しの頻度: 就労継続支援B型は少なくとも6か月に1回以上(第9項)。就労移行支援・自立訓練・自立生活援助は準用時の読み替えで少なくとも3か月に1回以上 - 未作成減算: 3か月未満は所定単位数の100分の70、3か月以上は100分の50 - 保存期間: サービスを提供した日から5年間(第75条第2項第1号) 根拠: 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」第58条 ### 本文 ## 個別支援計画は運営基準に根拠がある書面 個別支援計画の作成義務は、指定障害福祉サービスの人員・設備・運営基準にあります。定めているのは平成18年厚生労働省令第171号です。就労継続支援B型の場合、第202条が第57条と第58条を準用しています。条文中の「療養介護計画」を「就労継続支援B型計画」と読み替えて適用します。療養介護について書かれた条文が、そのままB型に効いているという構造です。 事業者は、個別支援計画に基づいて支援を行わなければなりません。提供が漫然かつ画一的なものにならないよう配慮することも求められています。第57条の定めです。計画は監査のために作る書面ではなく、日々の支援の根拠として位置づけられています。 計画の作成に関する業務は、管理者がサービス管理責任者に担当させるものとされています。根拠は第58条第1項です。書くのはサービス管理責任者です。ただし、**誰に担当させ、どう体制を組むか**を決める責任は管理者と事業者の側にあります。 ## 作成の手順は条文の順番で決まっている 手順は、第58条が第1項から第11項まで順番に並べています。事業所が自由に**省略できる項目はありません**。 | 手順 | 根拠 | 外せない点 | | --- | --- | --- | | アセスメント | 第2項・第4項 | 能力、環境、日常生活全般の状況を評価して希望と課題を把握する。利用者に面接して行い、面接の趣旨を説明して理解を得る | | 意思決定への配慮 | 第3項 | 自ら意思を決定することが困難な場合は、意思、選好、判断能力等を丁寧に把握する | | 原案の作成 | 第5項 | 事業所以外の保健医療サービスや福祉サービスとの連携も原案に位置付けるよう努める | | 個別支援会議 | 第6項 | 利用者と、支援に当たる担当者等を招集して開催する。テレビ電話装置等の活用も可 | | 説明と同意 | 第7項 | 原案を利用者又は家族に説明し、文書により利用者の同意を得る | | 交付 | 第8項 | 利用者と指定特定相談支援事業者等に交付する | | モニタリングと見直し | 第9項・第10項 | 就労継続支援B型は少なくとも6か月に1回以上見直す。就労移行支援や自立訓練は準用時の読み替えで3か月に1回以上。定期的な面接と、モニタリング結果の記録を行う | 会議に利用者本人を招集することが条文に明記されたのは令和6年度報酬改定です。基準解釈通知は、個別支援会議を原則として利用者が同席して行うものとしています。例外は、病状により同席自体が極めて困難な場合などやむを得ない場合に限られます。このときはテレビ電話装置の活用等で意向を確認して差し支えないと説明しています。 同じ解釈通知は、サービス管理責任者にさらに二つのことを求めています。一つは、相談支援事業者の作成したサービス等利用計画を踏まえて原案を作ることです。もう一つは、サービス担当者会議に参加して情報を共有することです。個別支援計画は事業所の中だけで完結する書面ではありません。 ## 見直しの周期はサービスによって6月と3月に分かれる 見直しの周期は、**すべてのサービスで同じではありません**。第58条第9項は「少なくとも六月に一回以上」と定めています。ただし準用を定めた条文の側で、「六月」を「三月」に読み替えているサービスがあります。 | 見直しの周期 | サービスと準用の根拠 | | --- | --- | | 少なくとも6月に1回以上 | 療養介護(第58条)、生活介護(第93条)、就労継続支援A型(第197条)、就労継続支援B型(第202条)、基準該当就労継続支援B型(第206条)、就労定着支援(第206条の12)、共同生活援助(第213条)、日中サービス支援型共同生活援助(第213条の11)、外部サービス利用型共同生活援助(第213条の22) | | 少なくとも3月に1回以上 | 自立訓練(機能訓練)(第162条)、自立訓練(生活訓練)(第171条)、就労移行支援(第184条)、自立生活援助(第206条の20) | 読み替えは条文にそのまま書かれています。たとえば就労移行支援の第184条には、次の一文が入っています。「第五十八条中「療養介護計画」とあるのは「就労移行支援計画」と、同条第九項中「六月」とあるのは「三月」と」。宿泊型自立訓練は指定自立訓練(生活訓練)の一形態なので、第171条の読み替えがそのまま及びます。 注意が必要なのは多機能型です。就労継続支援B型と就労移行支援を併設していると、同じ様式で計画を作っていても、見直しの期限は別々に走ります。就労移行支援の側を6か月の感覚で回すと、期限を過ぎてしまいます。その利用者について個別支援計画未作成減算の該当事由に当たる可能性があります。 なお、国の資料の側に食い違いもあります。厚生労働省の運営指導マニュアル別添「確認項目及び確認文書」です。自立訓練や就労移行支援の欄でも「少なくとも6か月に1回以上見直しを行っているか」と記載しており、省令の読み替えと合っていません。上位にあるのは省令なので、**3か月側のサービスは3か月で運用**しておくのが安全です。運用の確認方法に迷う場合は指定権者に確認してください。 ## 原案に書く5つの項目 原案に書く記載事項は次の5つです。挙げているのは第5項です。 - 利用者及びその家族の生活に対する意向 - 総合的な支援の方針 - 生活全般の質を向上させるための課題 - サービスの目標及びその達成時期 - サービスを提供する上での留意事項 この5つが揃っていない原案は、**条文の求める原案になっていません**。国が定めた統一様式は、省令にも告示にも通知にも見当たりませんでした。自治体が様式例や記載要領を示している場合があります。指定権者の公表資料を確認してください。書き方の具体例は[個別支援計画の書き方](/column/kobetsu-shien-keikaku-kakikata/)で扱います。 計画を変更するときも、第2項から第8項までが準用されます。第11項の定めです。目標を一つ変えるだけでも、アセスメントから文書同意、交付までを踏み直す必要があります。 ## 手順が欠けると減算になる 留意事項通知は、個別支援計画未作成減算の該当事由を二つ挙げています。一つは、サービス管理責任者の指揮の下で計画が作成されていないことです。もう一つは、指定基準に規定する一連の業務が適切に行われていないことです。**計画書が綴じてあっても**、後者に当たる場合があります。面接によるアセスメントや個別支援会議、文書同意、交付のどれかが抜けているときです。 | 期間 | 算定される単位数 | | --- | --- | | 減算が適用される月から3か月未満 | 所定単位数の100分の70 | | 減算が適用される月から連続して3か月以上 | 所定単位数の100分の50 | この所定単位数は、各種加算がなされる前の単位数です。加算を含めた合計に乗じるものではありません。減算は該当する利用者ごとに適用されます。期間は該当する月から、状態が解消された月の前月までです。都道府県知事は遵守するよう指導するものとされています。指導に従わない場合は、特別な事情がある場合を除き指定の取消しを検討するとされています。日々の運営としては見過ごされがちですが、**行政処分に直結する項目**です。 個別支援計画は、サービスを提供した日から5年間の保存が義務づけられています(第75条第2項第1号)。同意を得た文書や会議記録は、第75条の列挙には入っていません。それでも計画と併せて保存しておくのが安全です。一連の業務を行ったことを示せるのは、これらの書類だからです。 見直しの期限は利用者ごとに違います。同意日と交付日を利用者名簿に記録しておきます。そこにサービスごとの周期を足した月が、次の見直し期限です。周期は就労継続支援B型なら6か月、就労移行支援や自立訓練なら3か月です。一覧にしておくと、期限が近い利用者から会議日程を押さえられます。多機能型の場合は、名簿にサービスの列を設けて先に分け、それから期限を計算する組み方があります。同じ様式で計画を作っていても周期は別々に走ります。一覧の上でも分けておくほうが数え間違いを防げます。 会議の記録に残す項目は、出席者、利用者本人の同席の有無、本人が述べた意向の3つを先に決めておきます。そうしておくと、あとから一連の業務を行ったことを示しやすくなります。本人が同席できなかった場合は、その理由と、どの方法で意向を確認したかも書き添えます。そこまで残すと、記録として筋が通ります。 ## 就労選択支援には個別支援計画がない 令和7年10月に始まった就労選択支援は、**個別支援計画の作成を不要**としています。サービス管理責任者の配置も求めない設計です。多機能型で就労選択支援を追加するときも、他のサービスと同じ感覚で計画作成の体制を積む必要はありません。制度の全体像は[就労選択支援とは](/column/shurou-sentaku-shien/)で解説しています。 指定基準は、都道府県や市の条例に委任されています。そのため記録の保存期間の起算点など、細部が国の省令と異なる場合があります。実際の運用は指定権者の条例と要綱で確認してください。 関連する記事を挙げます。 - [個別支援計画のモニタリング](/column/kobetsu-shien-keikaku-monitoring/) … 見直しの進め方 - [サービス管理責任者の資格要件](/column/sabikan-shikaku-youken/) … 作成を担う人の要件 ### よくある質問 Q. 個別支援計画は誰が作るのですか。管理者が作ってもよいですか。 A. 作成業務を担当するのはサービス管理責任者です。管理者がサービス管理責任者に個別支援計画の作成に関する業務を担当させる、と省令第58条第1項が定めています。ただし、管理業務に支障がないときは、管理者が当該事業所のサービス管理責任者の職務を兼ねられます。そのため、兼務している人が作成することは可能です。基準解釈通知がそう示しています。 Q. 利用者の同意は口頭でもよいですか。 A. いいえ、文書による同意が必要です。まず原案の内容を利用者又はその家族に説明します。そのあと、文書により利用者の同意を得なければなりません。根拠は省令第58条第7項です。説明した記録だけでは要件を満たしません。 Q. 個別支援会議に利用者本人が出なくてもよいですか。 A. 原則として本人の参加が必要です。令和6年度報酬改定で条文が改められました。個別支援会議は「利用者及び当該利用者に対するサービスの提供に当たる担当者等」を招集して行う会議と定義されています。基準解釈通知も、原則として利用者が同席して行うものとしています。テレビ電話装置の活用等が認められるのは、病状などで同席が極めて困難な場合に限られます。 Q. 見直しは3か月に1回ですか、6か月に1回ですか。 A. サービスによって分かれます。少なくとも6か月に1回以上なのは、就労継続支援B型、生活介護、就労継続支援A型、療養介護、就労定着支援、共同生活援助です。根拠は省令第58条第9項です。少なくとも3か月に1回以上になるのは4つです。自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、自立生活援助が当たります。根拠は順に第162条、第171条、第184条、第206条の20です。いずれも準用に当たって第58条第9項の「六月」を「三月」と読み替えています。宿泊型自立訓練は自立訓練(生活訓練)の一形態なので3か月側です。どちらの周期でも、利用者の状況が変われば期限を待たずに変更する必要があります。 Q. 計画を作っていれば減算にはなりませんか。 A. いいえ、計画書があっても減算になることがあります。留意事項通知は減算の該当事由を二つ挙げています。一つは「サービス管理責任者による指揮の下、個別支援計画が作成されていないこと」です。もう一つは「個別支援計画の作成に係る一連の業務が適切に行われていないこと」です。面接によるアセスメント、個別支援会議、文書同意、交付、モニタリングのどれかが欠けていれば、後者に当たります。 ### 根拠資料 - e-Gov法令検索(デジタル庁)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第57条〜第59条、第75条、第93条、第162条、第171条、第184条、第197条、第202条、第206条、第206条の12、第206条の20、第213条」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年08月16日確認(令和7年10月1日施行の版)) - 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(平成18年12月6日障発第1206001号)新旧対照表(令和6年3月29日改正)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001472116.pdf(2026年08月16日確認) - こども家庭庁「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(平成18年10月31日障発第1031001号)新旧対照表(令和8年3月31日 こ支障第86号・障発0331第14号による一部改正)」 https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/2c5e1bb4-ee80-462b-992f-06f0d8c9b774/ab3d92fe/20260402_policies_shougaijishien_shisaku_r8hoshukaitei_19.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「(別添)指定障害福祉サービス事業者等に対する集団指導・運営指導マニュアル「確認項目及び確認文書」」 https://www.mhlw.go.jp/content/260608-22.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号)別表第14の1 就労継続支援B型サービス費 注10」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=6(2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 個別支援計画の書き方 運営基準が定める記載事項と 運営指導で見られる観点 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/kobetsu-shien-keikaku-kakikata/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.04.01 ### 結論 個別支援計画に何を書くかは、指定障害福祉サービス基準(平成18年厚生労働省令第171号)第58条第5項が定めています。原案に記載するのは、利用者及びその家族の生活に対する意向、総合的な支援の方針、生活全般の質を向上させるための課題、サービスの目標及びその達成時期、サービスを提供する上での留意事項の5つです。加えて、事業所が提供するサービス以外の保健医療サービスやその他の福祉サービス等との連携も原案に位置付けるよう努めることとされています。この規定は令和8年度報酬改定でも変更されていません(2026年4月時点)。 様式は省令にも告示にも定めがありません。したがって「どの欄に何を書くか」ではなく、5つの記載事項が漏れなく書かれているか、そしてアセスメントから交付・モニタリングまでの一連の業務が実際に行われた記録が残っているかが判断の基準になります。厚生労働省の令和8年6月版の運営指導マニュアルは、書類の有無ではなく一連の流れが適切に行われているかに重点を置いて確認するとし、利用者3名程度を抽出して関係する一連の文書を確認する方法を示しています。 - 記載事項の根拠: 指定障害福祉サービス基準(省令第171号)第58条第5項。各サービスに準用される - 記載事項: 意向/総合的な支援の方針/生活全般の質を向上させるための課題/目標及びその達成時期/提供上の留意事項の5つ - 他機関との連携: 事業所が提供するサービス以外の保健医療・福祉サービス等との連携も原案に位置付けるよう努める(努力義務) - 様式: 省令・告示に定めなし。自治体が点検表や参考様式を示している場合があるため指定権者に確認する - 見直し: 就労継続支援B型は少なくとも6月に1回以上(就労移行支援・自立訓練・自立生活援助は準用時の読み替えで3月に1回以上)。変更時もアセスメントから交付までの手続きを準用 - 保存期間: サービスを提供した日から5年間(自治体の条例で異なる定めがある場合がある) 根拠: 厚生労働省令第171号 第58条/厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等に対する集団指導・運営指導マニュアル(令和8年6月)」 ### 本文 ## 運営基準が定めているのは様式ではなく記載事項 個別支援計画の書き方を調べると様式の話から始まる情報が多いのですが、指定基準の省令にも報酬告示にも様式の定めはありません。定められているのは記載事項です。 指定障害福祉サービス基準(平成18年厚生労働省令第171号)第58条第5項は、サービス管理責任者がアセスメント及び支援内容の検討結果に基づいて原案を作成すること、その原案に次の内容を記載することを求めています。第58条は療養介護について書かれた条文ですが、生活介護は第93条、自立訓練(機能訓練)は第162条、自立訓練(生活訓練)は第171条、就労移行支援は第184条、就労継続支援A型は第197条、就労継続支援B型は第202条、自立生活援助は第206条の20、共同生活援助は第213条によって準用されており、計画の名称を各サービスの名称に読み替えて適用します。 読み替えられるのは名称だけではありません。自立訓練(機能訓練)の第162条、自立訓練(生活訓練)の第171条、就労移行支援の第184条、自立生活援助の第206条の20には、名称の読み替えに続けて「同条第九項中「六月」とあるのは「三月」と」という一文が置かれています。この4つのサービスでは、見直しの周期が少なくとも3月に1回以上になります。記載事項の5つはどのサービスでも同じですが、見直しの期限だけはここで分かれます。宿泊型自立訓練は指定自立訓練(生活訓練)の一形態なので、第171条の読み替えが及びます。 就労継続支援B型の第202条、生活介護の第93条、就労継続支援A型の第197条、共同生活援助の第213条にはこの読み替えがなく、第58条第9項どおり少なくとも6月に1回以上です。多機能型で就労継続支援B型と就労移行支援を併設している場合、同じ様式で計画を作っていても期限の管理は分ける必要があります。周期ごとの一覧は[個別支援計画とは](/column/kobetsu-shien-keikaku/)に整理しました。 | 記載事項(第58条第5項) | この欄が答えるべき問い | 抽象的だと言われる状態 | | --- | --- | --- | | 利用者及びその家族の生活に対する意向 | 本人と家族が、生活について何を望んでいるか | 支援者側の見立てが本人の言葉に置き換わっている | | 総合的な支援の方針 | この事業所が、どういう考え方で支援全体を組み立てるか | どの利用者にも当てはまる一般論しか書かれていない | | 生活全般の質を向上させるための課題 | 意向と現状の間に何があるか | 障害名や診断名の記述で課題の記述が代替されている | | サービスの目標及びその達成時期 | 何がどうなれば達成なのか、いつまでか | 達成時期が空欄、または達成したかどうかを後から判定できない目標 | | サービスを提供する上での留意事項 | 支援する側が具体的に何に気をつけるか | 「見守る」「配慮する」だけで、誰が読んでも同じ行動にならない | さらに同項の後段は、当該事業所が提供するサービス以外の保健医療サービスやその他の福祉サービス等との連携も含めて原案に位置付けるよう努めなければならないとしています。これは努力義務ですが、通院先や相談支援事業所、家族の支援などが計画の外に置かれたままになっていないかを確認する趣旨です。 この5つは令和8年度報酬改定でも変更されていません。令和8年3月31日付で発出された留意事項通知の一部改正(こ支障第86号・障発0331第14号)でも、個別支援計画未作成減算に係る項の記載は改正後と現行で同一です。 ## 「抽象的」と指摘されるのは、根拠が一段抜けているから 具体的に書きなさいという指摘の中身は、表現を細かくしろという意味ではありません。厚生労働省が令和8年6月に示した運営指導マニュアルは、判断の考え方をかなりはっきり書いています。 まず、アセスメントは利用者ごとに異なるのだから、それをもとに作成する計画が複数の利用者ですべて同じ内容というのは本来ありえない、としています。同じ作業種別の利用者だからといって、目標も留意事項も横並びになっている計画は、アセスメントの結果が計画に反映されていないと読まれます。 次に、これらの計画は利用者や家族の同意を得なければならないものであることから、指導にあたる担当者自身が利用者や家族の立場でそのサービス内容に同意できるかどうかが一つの判断基準になる、と述べています。読み手を支援者だけに想定して書いた計画は、この基準では通りません。 つまり抽象的だと言われる計画は、意向から課題へ、課題から目標へ、目標から留意事項へという筋道のどこかが飛んでいる状態です。書き分けの考え方としては、次の順に確認するのが実務的です。 1. 意向は本人の言葉として書かれているか。家族の意向と本人の意向が違う場合、両方が書き分けられているか 2. 課題は、その意向と現状の差として説明できるか。診断名や障害特性の記述だけになっていないか 3. 目標は、達成したかどうかを次の見直しの時点で判定できる形か。達成時期が入っているか 4. 留意事項は、その利用者を初めて担当する職員が読んで、同じ行動が取れる粒度か ## 運営指導で見られるのは書類の有無ではなく一連の流れ 運営指導マニュアルは、個別サービスの質に関する事項の確認について、すべての書類の有無を確認するのではなく、利用者がサービスの説明を受け、個別支援計画やサービス提供記録などが作成され、それに基づいてサービスが提供されているかという一連の流れが適切に行われているかに重点を置いて実態を確認する、としています。確認の方法も具体的で、施設内の巡回で気になった利用者など3名程度を抽出し、関係する一連の文書をたどる形が示されています。 ヒアリングの例も挙げられています。利用者の希望をどのように確認しているか、アセスメントをどのように、どのような時に行っているか、計画にある目標の達成状況をどう確認しているか、定期的にモニタリングを行っているか。いずれも計画書の記載だけでは答えられない質問です。 自治体側の資料からも同じ傾向が読み取れます。松本市が令和6年2月の集団指導で示した資料では、令和4年度の実地指導で指摘の多かった項目として個別支援計画の策定に係るもの(作成、交付、保管等)が挙げられ、特に計画の原案の検討会議、モニタリング、アセスメントの未実施、もしくは行った記録のないものが散見されると記載されています。同資料では就労系サービスの実施36件に対して総指摘338件(うち文書指摘56件)とされ、施設外就労の内容が個別支援計画に位置付けられていない例も挙がっています。 ## 計画書を整えても、手続きの証跡がなければ減算になる ここが経営上いちばん影響が大きい部分です。留意事項通知は、個別支援計画未作成減算について、サービス管理責任者による指揮の下で個別支援計画が作成されていないことに加えて、指定基準に規定する個別支援計画の作成に係る一連の業務が適切に行われていないことも減算の該当事由としています。減算は該当する月から状態が解消された月の前月まで、該当する利用者について適用され、率は適用月から3月未満が所定単位数の100分の70、連続して3月以上で100分の50です。この所定単位数は各種加算がなされる前の単位数であり、加算を含めた合計に乗じるものではありません。 第58条が求める手続きと、それぞれで残る記録を並べると次のようになります。 | 手続き | 根拠 | 記録として残るもの | | --- | --- | --- | | アセスメント(利用者に面接して行う。面接の趣旨を説明し理解を得る) | 第2項〜第4項 | アセスメント記録、面接の実施日 | | 原案の作成(5つの記載事項) | 第5項 | 個別支援計画の原案 | | 計画作成に係る会議の開催 | 第6項 | 会議録。利用者及び担当者等を招集する。テレビ電話装置等の活用も可 | | 利用者又は家族への説明と文書による同意 | 第7項 | 署名等のある同意欄 | | 利用者及び指定特定相談支援事業者等への交付 | 第8項 | 交付の記録。相談支援事業者への交付も必要 | | モニタリング(定期的な面接と結果の記録) | 第9項・第10項 | モニタリング記録。見直しは就労継続支援B型なら少なくとも6月に1回以上、就労移行支援・自立訓練・自立生活援助なら少なくとも3月に1回以上 | | 変更する場合 | 第11項 | 上記のアセスメントから交付までを準用 | 見落とされやすいのは3つあります。会議の招集対象に利用者本人が含まれること、交付先に指定特定相談支援事業者等が含まれること、そして変更のたびに同じ手続きが必要になることです。特に本人参加は令和6年度報酬改定で条文に加わった部分で、解釈通知は、この会議(個別支援会議)を原則として利用者が同席した上で行うものとし、病状により同席自体が極めて困難な場合などやむを得ない場合に限り、テレビ電話装置の活用など同席以外の方法で意向等を確認することを認めています。 なお、個別支援計画は記録の整備の対象で、サービスを提供した日から5年間の保存が省令で定められています。指定基準は条例に委任されているため、保存期間の起算点などを条例で別に定めている自治体がある可能性があります。使用する様式とあわせて、指定権者の条例と自主点検表を確認してください。 計画書のフォーマットを直すより先に、手続きの日付が並ぶ一覧を1枚作るほうが効きます。利用者ごとに、アセスメント実施日、原案作成日、会議開催日、同意取得日、本人と相談支援事業者への交付日、直近のモニタリング実施日、次回見直し期限を横に並べた表です。運営指導で3名程度を抽出して一連の文書をたどる確認方法が示されている以上、どの利用者を抜かれても同じ順で書類が出てくる状態にしておく必要があります。 この一覧は減算の予防にもそのまま使えます。未作成減算は該当する利用者ごとに適用されるので、事業所全体ではなく1人ずつ期限を管理する必要があります。見直し期限の列を自動計算にしておくと、月次の会議でその月に期限を迎える利用者を拾えます。このとき、加算する月数をサービス欄から引くように組んでおいてください。就労継続支援B型は6か月、就労移行支援や自立訓練は3か月です。多機能型で一律6か月の計算式にしていると、就労移行支援の利用者を取りこぼします。 制度全体の位置づけは[個別支援計画とは](/column/kobetsu-shien-keikaku/)、見直しの周期と記録の残し方は[個別支援計画のモニタリング](/column/kobetsu-shien-keikaku-monitoring/)、作成を担当するサービス管理責任者の要件は[サービス管理責任者の資格要件](/column/sabikan-shikaku-youken/)で整理しています。 ### よくある質問 Q. 個別支援計画には何を書けばよいですか? A. 運営基準が5つの記載事項を定めています。省令第171号第58条第5項により、利用者及びその家族の生活に対する意向、総合的な支援の方針、生活全般の質を向上させるための課題、サービスの目標及びその達成時期、サービスを提供する上での留意事項を記載します。さらに、自事業所のサービス以外の保健医療サービスやその他の福祉サービス等との連携も原案に位置付けるよう努めることとされています。 Q. 国が定めた個別支援計画の様式はありますか? A. 省令にも報酬告示にも様式の定めはありません。運営基準が定めているのは記載事項であり、欄の名前や並び順は事業所の様式に委ねられています。ただし自治体が自主点検表や参考様式を示していることがあり、指定基準は条例に委任されているため、使用する様式については指定権者に確認してください。 Q. 計画書さえ作ってあれば個別支援計画未作成減算は避けられますか? A. いいえ、避けられません。留意事項通知は、サービス管理責任者による指揮の下で個別支援計画が作成されていない場合に加えて、指定基準に規定する個別支援計画の作成に係る一連の業務が適切に行われていない場合も減算の対象としています。アセスメント、計画作成に係る会議、文書による同意、交付、モニタリングのいずれかが欠けていれば、計画書が存在していても該当します。減算率は適用月から3月未満が所定単位数の100分の70、連続して3月以上で100分の50です。 Q. 目標の達成時期は何か月に設定すればよいですか? A. 省令に期間の定めはなく、記載すること自体が求められています。第58条第5項はサービスの目標及びその達成時期を記載事項としており、長さの基準は置かれていません。ただし第9項が定期的な見直しを求めているため、達成時期を見直しの時期と切り離して設定すると、モニタリングの際に達成状況を確認しづらくなります。見直しの周期は就労継続支援B型なら少なくとも6月に1回以上、就労移行支援や自立訓練(機能訓練・生活訓練)、自立生活援助なら準用時の読み替えで少なくとも3月に1回以上なので、多機能型ではサービスごとに目安が変わります。 Q. 計画を変更するときも最初と同じ手続きが必要ですか? A. はい、必要です。第58条第11項が第2項から第8項までを変更の場合に準用しているため、変更時もアセスメント(利用者への面接を含む)、原案の作成、計画作成に係る会議の開催、利用者又は家族への説明と文書による同意、利用者及び指定特定相談支援事業者等への交付を行うことになります。モニタリングの結果として文言を書き換えるだけでは手続きを満たしません。 Q. 運営指導(旧・実地指導)では個別支援計画のどこを見られますか? A. 書類の有無より、一連の流れが実際に行われたかを見られます。厚生労働省の令和8年6月版の運営指導マニュアルは、すべての書類の有無を確認するのではなく、計画や記録が作成されそれに基づいてサービスが提供されているかという一連の流れに重点を置いて実態を確認するとし、利用者3名程度を抽出して関係文書を確認する方法を示しています。あわせて、アセスメントをどのように行っているか、目標の達成状況をどう確認しているか、定期的にモニタリングを行っているかといったヒアリング例が挙げられています。 ### 根拠資料 - e-Gov法令検索(デジタル庁)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第58条、第59条、第93条、第162条、第171条、第184条、第197条、第202条、第206条の20、第213条」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年08月16日確認(令和7年10月1日施行の版)) - 厚生労働省「(別添2)指定障害福祉サービス事業者等に対する集団指導・運営指導マニュアル(令和8年6月)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260609-2.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「障害福祉分野における指導監督」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kanriseibi/index.html(2026年08月16日確認) - こども家庭庁「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(平成18年10月31日障発第1031001号)新旧対照表(令和8年3月31日 こ支障第86号・障発0331第14号による一部改正)」 https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/2c5e1bb4-ee80-462b-992f-06f0d8c9b774/ab3d92fe/20260402_policies_shougaijishien_shisaku_r8hoshukaitei_19.pdf(2026年08月16日確認(令和8年度障害福祉サービス等報酬改定のページに掲載されている新旧対照表)) - 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(平成18年12月6日障発第1206001号)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb4746&dataType=1&pageNo=1(2026年08月16日確認) - 松本市「指定障害福祉サービス事業所集団指導資料「実地指導で多かった指摘事項について」(令和6年2月22日)」 https://www.city.matsumoto.nagano.jp/uploaded/attachment/86308.pdf(2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 個別支援計画のモニタリング 実施頻度と記録の残し方 未作成減算を避ける期限管理 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/kobetsu-shien-keikaku-monitoring/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 個別支援計画のモニタリングについて、指定基準は計画の作成後に定期的な見直しを行うことを求めています。周期はサービスによって分かれ、就労継続支援B型、生活介護、就労継続支援A型、療養介護、就労定着支援、共同生活援助は少なくとも6月に1回以上、自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、自立生活援助は少なくとも3月に1回以上です。後者は、準用を定めた条文が第58条第9項の「六月」を「三月」と読み替えているためです。モニタリングに当たっては、利用者及びその家族等との連絡を継続的に行い、特段の事情のない限り、定期的に利用者に面接することと、定期的にモニタリングの結果を記録することの2つが義務づけられています(平成18年厚生労働省令第171号 第58条第9項・第10項、第162条、第171条、第184条、第206条の20。令和7年10月1日施行の版)。 この一連の業務が適切に行われていない場合、個別支援計画未作成減算の対象になります。減算率は、減算が適用される月から3月未満の月が所定単位数の100分の70、連続して3月以上の月が100分の50です。計画書そのものが存在していても、アセスメント・会議・説明と文書同意・交付・モニタリングといった一連の業務のどこかが欠けていれば該当します(令和8年度報酬改定でもこの取扱いに変更はありません。2026年6月時点)。 - 見直しの周期(6月): 療養介護・生活介護・就労継続支援A型・就労継続支援B型・就労定着支援・共同生活援助は、計画作成後、実施状況の把握を行うとともに、少なくとも6月に1回以上見直す - 見直しの周期(3月): 自立訓練(機能訓練)・自立訓練(生活訓練)・就労移行支援・自立生活援助は、準用の条文が第58条第9項の「六月」を「三月」と読み替えるため少なくとも3月に1回以上 - モニタリングで必須の行為: 特段の事情のない限り、定期的に利用者に面接すること、定期的にモニタリングの結果を記録すること - 未作成減算の率: 減算適用月から3月未満は所定単位数の100分の70、連続して3月以上は100分の50(いずれも各種加算がなされる前の単位数に乗じる) - 減算の範囲と期間: 事業所全員ではなく該当する利用者につき、該当する月から当該状態が解消されるに至った月の前月まで - 減算の該当事由: サービス管理責任者による指揮の下で計画が作成されていないこと、又は指定基準に規定する個別支援計画の作成に係る一連の業務が適切に行われていないこと(いずれかに該当すれば対象) - 記録の保存期間: 個別支援計画を含む提供に関する記録は、当該サービスを提供した日から5年間(都道府県等の条例で異なる定めがある場合はそれに従う) 根拠: 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号)第58条/同「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日障発第1031001号)第二の2(10) ### 本文 ## 見直しの周期はサービスによって6月と3月に分かれる モニタリングの周期を定めているのは、指定障害福祉サービス基準(平成18年厚生労働省令第171号)の第58条第9項です。条文は、サービス管理責任者が計画の作成後、計画の実施状況の把握(利用者についての継続的なアセスメントを含み、これをモニタリングという)を行うとともに、少なくとも六月に一回以上、計画の見直しを行い、必要に応じて計画の変更を行うものとする、という構成になっています。 第58条は療養介護について定めた条文で、他のサービスには準用の規定を通じて及びます。ここで見落とされやすいのが、準用の際に読み替えられるのは計画の名称だけではないという点です。次の4つのサービスでは、準用を定めた条文が第9項の「六月」を「三月」に読み替えています。 | 見直しの周期 | サービスと準用の根拠条文 | | --- | --- | | 少なくとも6月に1回以上 | 療養介護(第58条)、生活介護(第93条)、就労継続支援A型(第197条)、就労継続支援B型(第202条)、基準該当就労継続支援B型(第206条)、就労定着支援(第206条の12)、共同生活援助(第213条)、日中サービス支援型共同生活援助(第213条の11)、外部サービス利用型共同生活援助(第213条の22) | | 少なくとも3月に1回以上 | 自立訓練(機能訓練)(第162条)、自立訓練(生活訓練)(第171条)、就労移行支援(第184条)、自立生活援助(第206条の20) | 読み替えは条文にそのまま書かれています。就労移行支援の第184条であれば「第五十八条中「療養介護計画」とあるのは「就労移行支援計画」と、同条第九項中「六月」とあるのは「三月」と」という形です。自立訓練の第162条・第171条、自立生活援助の第206条の20も同じ書きぶりです。宿泊型自立訓練は指定自立訓練(生活訓練)の一形態と定義されているため、第171条の読み替えが及ぶと読めます。基準該当サービスについては、第223条第1項が特定基準該当自立訓練(機能訓練・生活訓練)に係る計画に限って「三月」と読み替えています。 一方、共同生活援助の第213条には周期の読み替えがありません。共同生活援助を3か月に1回とする解説を見かけますが、省令の条文には対応する規定が見当たりませんでした。 実務でいちばん影響が出るのは多機能型です。就労継続支援B型と就労移行支援を併設していると、計画の様式が共通でも見直しの期限は別の周期で進みます。就労移行支援の側を6か月の感覚で回していると、その利用者について個別支援計画未作成減算の該当事由に当たる可能性があります。 なお、後述する国の運営指導マニュアル別添は、自立訓練や就労移行支援、自立生活援助の欄でも「少なくとも6か月に1回以上見直しを行っているか」と記載しており、省令の読み替えと食い違っています。原則として上位にあるのは省令なので、この4サービスは3か月で運用しておくのが安全です。判断に迷う場合は、指定権者に確認してください。 注意したいのは、この周期が事業所の年間カレンダーではなく利用者ごとに走ることです。計画の同意日と交付日が利用者ごとに違えば、期限も利用者ごとにばらけます。20人の事業所なら20本の期限が同時並行で進んでいると考えたほうが実態に近いはずです。 なお、指定基準は都道府県・政令指定市・中核市の条例に委任されています。条例で上乗せの定めが置かれている可能性があるため、周期と記録の扱いは指定権者の条例と要綱でも確認してください。 ## 条文が名指しで求めている行為は「面接」と「記録」 第58条第10項は、モニタリングに当たってサービス管理責任者が行うべきことを具体的に書いています。まず利用者及びその家族等との連絡を継続的に行うこと。そのうえで、特段の事情のない限り、定期的に利用者に面接すること、定期的にモニタリングの結果を記録することの2つを行わなければならない、という書き方です。 つまり、書面を作っただけでも、面談しただけでも足りません。両方が揃って初めて条文を満たします。 見直しの結果として計画を変更する場合は、さらに手続きが戻ってきます。第58条第11項により、第2項から第8項までの規定が計画の変更について準用されるためです。変更するのであれば、アセスメント、利用者への面接、原案の作成、計画作成に係る会議、利用者または家族への説明、文書による同意、利用者と指定特定相談支援事業者等への交付を、初回と同じようにもう一度通すことになります。会議はテレビ電話装置等を活用して行うことができるとされています。 ## 運営指導で見られる文書は7種類 令和8年6月、厚生労働省は障害福祉分野の運営指導・監査の強化として、集団指導・運営指導マニュアルと、その別添である「確認項目及び確認文書」を都道府県等に通知しました。これまで基準省令の内容をすべて記載した大部の資料しかなかったものを、運営指導の際に確認する事項に重点化して整理したものです。あわせて、事業所数が急増している就労継続支援A型、就労継続支援B型、共同生活援助、児童発達支援、放課後等デイサービスについて、3年に1回以上の頻度で運営指導を実施するよう通知されています。 この別添の「計画の作成等」の欄には、確認項目の一覧と、その確認に使う確認文書の一覧が並んでいます。就労継続支援B型(第202条において準用する第58条)の欄を例に取ると、主な項目は次のとおりです(項目と文書の対応づけは、欄の記載をもとにこちらで整理したものです)。 | 運営指導で確認される項目 | 対応する確認文書 | | --- | --- | | 管理者がサービス管理責任者に計画の作成業務を担当させているか | 就労継続支援B型計画 | | 適切な方法でアセスメントを行い、意思決定の支援に配慮しているか | アセスメント記録 | | アセスメントを利用者への面接により行い、趣旨を説明し理解を得ているか | 面接記録 | | 計画作成会議を開催し、利用者の意向を確認し原案について意見を求めているか | 会議記録 | | 原案を利用者又はその家族に説明し、文書により同意を得ているか | 説明・同意・交付記録 | | 計画を作成した際、利用者及び指定特定相談支援事業者等に交付しているか | 説明・同意・交付記録 | | 計画作成後、モニタリングを行うとともに、少なくとも6か月に1回以上見直しを行っているか | モニタリング記録 | | モニタリングに当たり、利用者及びその家族等との連絡を継続的に行うとともに、定期的に面接し、その結果を記録しているか | モニタリング記録・面接記録 | | 計画変更時に、作成時と同様の手続を行っているか | 計画変更記録等 | 確認文書として挙げられているのは、計画本体、アセスメント記録、モニタリング記録、面接記録、会議記録、説明・同意・交付記録、計画変更記録等の7種類です。生活介護や共同生活援助など他のサービスの欄も、準用の条番号が変わるだけで同じ構成になっています。書類の綴じ方を設計するときの目安として、この7分類はそのまま使えます。 ただし周期についてはこの別添をそのまま信用しないでください。省令が「三月」と読み替えている自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、自立生活援助の欄でも、別添の確認項目は「少なくとも6か月に1回以上見直しを行っているか」と書かれています。省令の条文と食い違う部分なので、期限の設計は省令の読み替えに合わせるほうが安全です。 ## 「記入例」を探す前に確認したいこと 国が定めた統一様式は、省令・告示・通知のいずれにも確認できませんでした。したがって「国の標準様式に沿って書く」という考え方は成り立ちません。自治体が参考様式を示している場合があるので、まずは指定権者の様式集を確認するのが先です。 様式が自由でも、記録が満たすべき中身は条文から決まります。モニタリング記録に何を残すかは、次のように条文と対応づけて考えると設計しやすくなります。 | 条文が求めている行為 | 記録から読み取れる必要があること | | --- | --- | | 計画の実施状況の把握(第9項) | 計画に書いた目標ごとに、支援が実施されたかどうかと現在の状況 | | 利用者についての継続的なアセスメント(第9項) | 前回の計画作成時からの変化と、新たに把握した課題 | | 定められた周期ごとの見直し(第9項。B型は6月、就労移行支援や自立訓練は3月) | 見直しを行った日と、計画を変更するかしないかの判断 | | 定期的に利用者に面接すること(第10項第1号) | 面接した日、面接した者、利用者本人が述べた内容 | | 利用者及びその家族等との連絡を継続的に行うこと(第10項) | 家族等と連絡を取った事実 | | 定期的にモニタリングの結果を記録すること(第10項第2号) | 上記が第三者に読み取れる形で残っていること | 利用者本人の言葉が一行も入っていない記録は、面接を行った証拠として弱くなります。第4項でアセスメントの面接が明示的に義務づけられ、第6項で会議への本人参加が原則とされている条文の作りから見ても、本人が何を言ったかを残す欄は必要です。 ## 未作成減算は「計画がない月」だけの話ではない 個別支援計画未作成減算の中身は、留意事項通知(平成18年10月31日障発第1031001号)第二の2(10)に書かれています。対象は療養介護、生活介護、施設入所支援、自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型(基準該当就労継続支援B型を含む)、就労定着支援、自立生活援助、共同生活援助です。 | 項目 | 内容 | | --- | --- | | 減算率(3月未満) | 所定単位数の100分の70 | | 減算率(連続して3月以上) | 所定単位数の100分の50 | | 所定単位数の意味 | 各種加算がなされる前の単位数。加算を含めた合計数に乗じるものではない | | 減算の対象 | 事業所の利用者全員ではなく、該当する利用者につき | | 減算の期間 | 該当する月から、当該状態が解消されるに至った月の前月まで | | 該当事由 | ㈠サービス管理責任者による指揮の下、個別支援計画が作成されていないこと ㈡指定基準に規定する個別支援計画の作成に係る一連の業務が適切に行われていないこと | | 指導に従わない場合 | 都道府県知事は、特別な事情がある場合を除き指定の取消しを検討する | 経営上の急所は該当事由の㈡です。文言が「作成されていないこと」ではなく「一連の業務が適切に行われていないこと」なので、計画書がファイルに綴じてあっても、その手前の面接や会議、文書による同意、交付、そしてモニタリングのどこかが欠けていれば該当し得ます。モニタリングの記録が空白のまま6か月を超えている利用者は、この㈡の側から見る必要があります。 報酬告示の書きぶりも確認しておきます。就労継続支援B型の場合は別表第14の1の注10(2)で、指定障害福祉サービス基準第202条等において準用する第58条の規定に従い就労継続支援B型計画等が作成されていない場合として、作成されていない期間が3月未満なら100分の70、3月以上なら100分の50と定められています。生活介護、就労移行支援、共同生活援助、施設入所支援にも同じ構造の規定があります。 この70%と50%の2段階は平成30年度報酬改定(平成30年4月1日施行)で導入されたもので、それ以前は期間にかかわらず所定単位数の95%でした。令和6年度改定で厳格化されたという説明を見かけますが、この2段階の率は平成30年度改定で導入されて以降変わっていません。令和8年度報酬改定でも、留意事項通知の(10)の項は改正後と現行で記載が同一であり、この取扱いは変わっていません。 ## 期限管理として何を持つか 条文と確認文書から逆算すると、利用者ごとに管理すべき日付は少なくとも4つあります。計画の同意を得た日、計画を交付した日、直近のモニタリング面接を行った日、次の見直しの期限です。このうち期限の起算をどの日付に置くかは条文に明示がないため、指定権者の運用を確認したうえで事業所として1つに固定しておく必要があります。 台帳は、確認項目及び確認文書の7分類をそのまま列にするのが分かりやすい形です。計画本体、アセスメント記録、面接記録、会議記録、説明・同意・交付記録、モニタリング記録、計画変更記録の7列に日付を入れ、空欄がある行を毎月洗い出す形にすると、抜けをその月のうちに拾えます。空欄はそのまま未作成減算の該当事由㈡の候補になります。 期限は利用者ごとにばらけるので、事業所単位の締切として運用すると必ず取りこぼしが出ます。翌月に期限が来る利用者を月初に抽出する運用に寄せたほうが確実です。多機能型の場合は、台帳にサービスの列を作り、周期が6か月なのか3か月なのかを先に確定させてから期限を計算してください。一律6か月で組んだ計算式が、就労移行支援や自立訓練の利用者をそのまま取りこぼします。 記録の保存は、省令上は当該サービスを提供した日から5年間です。ただし条例で起算点が異なる場合があるため、廃棄の基準は条例で確認してください。 運営指導の頻度は上がる方向にあります。就労継続支援A型・B型、共同生活援助、児童発達支援、放課後等デイサービスについては3年に1回以上という目安が示され、確認項目と確認文書が全国共通の形で公開されました。何を見られるかが事前に分かっている以上、指導の直前に整えるのではなく、7分類の台帳を平時から埋めておく形に寄せるのが現実的です。 計画そのものの作成手続きは[個別支援計画とは](/column/kobetsu-shien-keikaku/)、原案の記載事項は[個別支援計画の書き方](/column/kobetsu-shien-keikaku-kakikata/)、作成を担当するサービス管理責任者の要件は[サービス管理責任者の資格要件](/column/sabikan-shikaku-youken/)で整理しています。 ### よくある質問 Q. 個別支援計画のモニタリングは3か月に1回必要ですか? A. サービスによって異なります。就労移行支援、自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練)、自立生活援助の4つは3か月に1回以上が必要です。準用を定めた条文(順に第184条、第162条、第171条、第206条の20)が、第58条第9項の「六月」を「三月」と読み替えているためです。宿泊型自立訓練は自立訓練(生活訓練)の一形態なので、この3か月側に入ります。一方、就労継続支援B型(第202条)、生活介護(第93条)、就労継続支援A型(第197条)、共同生活援助(第213条)、療養介護(第58条)、就労定着支援(第206条の12)には読み替えがなく、少なくとも6月に1回以上です。指定基準は都道府県等の条例に委任されているため、条例や事業所自身の運営規程でこれより短い周期を定めている場合は、そちらが優先されます。 Q. モニタリング記録に国の統一様式や記入例はありますか? A. いいえ、省令・告示・通知のいずれにも国が定めた統一様式は確認できませんでした。自治体が参考様式を示している場合があるので、指定権者である都道府県・政令指定市・中核市の様式集を確認してください。様式が自由であっても記録に含めるべき内容は決まっており、第58条第9項の実施状況の把握と見直しの結果、第10項第1号の定期的な面接の事実、同項第2号のモニタリングの結果が読み取れることが必要です。 Q. 個別支援計画は作ってあるのに未作成減算になることはありますか? A. あります。留意事項通知は減算の該当事由を2つ挙げており、1つ目が「サービス管理責任者による指揮の下、個別支援計画が作成されていないこと」、2つ目が「指定基準に規定する個別支援計画の作成に係る一連の業務が適切に行われていないこと」です。計画書が綴じてあっても、アセスメントの面接、計画作成に係る会議、文書による同意、利用者と指定特定相談支援事業者等への交付、モニタリングのいずれかが欠けていれば2つ目に該当し得ます。 Q. 個別支援計画未作成減算はどのくらい報酬が減りますか? A. 減算が適用される月から3月未満の月は所定単位数の100分の70、連続して3月以上の月は100分の50です。この所定単位数は各種加算がなされる前の単位数であり、各種加算を含めた単位数の合計数に対して減算するものではないと留意事項通知に明記されています。減算は事業所の利用者全員ではなく、該当する利用者につき、該当する月から当該状態が解消されるに至った月の前月まで適用されます。 Q. モニタリングの結果、計画を変更しない場合も手続きが必要ですか? A. 記録は必要です。省令第58条第11項は第2項から第8項まで(アセスメント、面接、原案作成、会議、説明と文書同意、交付)を「計画の変更」について準用すると定めており、変更しない場合にこれらの手続きを行う定めは条文上ありません。ただし第10項第2号の「定期的にモニタリングの結果を記録すること」は変更の有無にかかわらず求められます。変更しないという判断も記録に残る形にしておく必要があります。取扱いに迷う場合は指定権者に確認してください。 Q. モニタリング記録は何年間保存する必要がありますか? A. 省令上は5年間です。第75条第2項は、個別支援計画、サービスの提供の記録、市町村への通知に係る記録、身体拘束等の記録、苦情の内容等の記録、事故の記録を整備し、当該サービスを提供した日から5年間保存しなければならないと定めています。指定基準は条例に委任されているため、自治体によって起算点を「完結の日から」とするなど異なる定めを置いている場合があります。管轄の条例を確認してください。 ### 根拠資料 - e-Gov法令検索(デジタル庁)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第58条、第75条、第93条、第162条、第171条、第184条、第197条、第202条、第206条、第206条の12、第206条の20、第213条、第213条の11、第213条の22、第223条」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年08月16日確認(令和7年10月1日施行の版)) - こども家庭庁「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(平成18年10月31日障発第1031001号)新旧対照表 第二の2(10)(令和8年3月31日 こ支障第86号・障発0331第14号による一部改正)」 https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/2c5e1bb4-ee80-462b-992f-06f0d8c9b774/ab3d92fe/20260402_policies_shougaijishien_shisaku_r8hoshukaitei_19.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号)別表 第14の1 注10」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=6(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等に対する集団指導・運営指導マニュアル 別添「確認項目及び確認文書」」 https://www.mhlw.go.jp/content/260608-22.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「障害福祉分野における運営指導・監査の強化について(令和8年6月)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260723-1.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「障害福祉分野における指導監督(通知・マニュアル等の掲載ページ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kanriseibi/index.html(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「平成30年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(各種減算の見直し)」 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000202403.pdf(2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## サービス管理責任者と管理者の違い 役割と資格要件はどこで分かれるのか 兼務はどこまで認められるか URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/sabikan-kanrisha-chigai/ カテゴリー: 現場・人材 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.04.01 ### 結論 サービス管理責任者と管理者は、指定基準の中で別々の条文に置かれた別の職です。サービス管理責任者は個別支援計画の作成を担当する職で、指定基準省令の人員基準(療養介護なら第50条第1項第4号)に員数が定められ、実務経験と研修の両方を満たした者しか就けません。一方の管理者は第51条に「専らその職務に従事する管理者を置かなければならない」と定められた職で、その責務は第66条の「従業者及び業務の管理その他の管理を一元的に行う」ことです。第51条には資格要件の定めがなく、研修の修了も求められていません(令和8年4月1日時点)。 兼務の幅は管理者のほうが広くなっています。管理者は第51条ただし書により、管理上支障がなければ同じ事業所の他の職務にも、他の事業所や施設等の職務にも従事できます。サービス管理責任者は、計画作成の客観性を担保する観点から原則として生活支援員等とは別の者とされ、兼務した場合はその勤務時間を兼務先の常勤換算に算入できません。ただし利用定員20人未満の事業所については、算入できる例外が基準解釈通知に置かれています。 - 根拠条文(サビ管): 指定基準省令 第50条第1項第4号ほか(員数)、第58条(計画作成)、第59条(責務) - 根拠条文(管理者): 指定基準省令 第51条(配置・専従)、第66条(責務) - 資格要件の有無: サビ管のみ実務経験要件と研修要件あり。管理者は第51条に定めなし - 管理者の兼務: 管理業務に支障がなければ、同一事業所の他職務も他事業所の管理者・サビ管・従業者も可 - サビ管の兼務: 原則は直接支援職員と別の者。支障がなければ他職務に従事できるが常勤換算には算入不可 - 常勤換算の例外: 利用定員20人未満の事業所は、兼務先の常勤換算に当該勤務時間を算入できる 根拠: 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(平成18年12月6日障発第1206001号) ### 本文 ## 条文の置かれ方が違う 両者の違いは、指定基準省令のどこに書かれているかを見ると整理しやすくなります。サービス管理責任者は人員基準の中に員数まで定められた職種で、業務内容は第58条(個別支援計画の作成等)と第59条(責務)に書かれています。第58条第1項が、管理者はサービス管理責任者に個別支援計画の作成に関する業務を担当させるものとすると定めているとおり、計画作成を担当させるのが管理者、実際に担当するのがサービス管理責任者という関係です。 管理者は第51条に単独で置かれ、責務は第66条にあります。「従業者及び業務の管理その他の管理を一元的に行わなければならない」ことと、「従業者にこの章の規定を遵守させるため必要な指揮命令を行う」ことの2つで、個別支援計画そのものを作る職ではありません。 | | サービス管理責任者 | 管理者 | |---|---|---| | 配置の根拠 | 第50条第1項第4号ほか(サービスごとに規定) | 第51条(各サービスへ準用) | | 員数 | 利用者60人以下で1人以上、61人以上は40人ごとに1人追加(生活介護・就労系等) | 事業所ごとに1人 | | 責務の条文 | 第59条 | 第66条 | | 主な業務 | アセスメント、個別支援計画の作成、モニタリング、他の従業者への技術指導・助言 | 従業者及び業務の一元的な管理、従業者への指揮命令 | | 常勤要件 | 配置する者のうち1人以上は常勤 | 定めなし(共同生活援助と居宅介護は常勤が必要) | | 資格要件 | 実務経験要件と研修要件の両方が必要 | 定めなし(療養介護は医師、共同生活援助は知識・経験が必要) | ## 資格要件があるのはサービス管理責任者だけ サービス管理責任者になるには、実務経験要件と研修要件の両方を満たす必要があります。実務経験は3つのパターンがあり、相談支援業務と有資格者等の直接支援業務が通算5年以上、それ以外の直接支援業務が通算8年以上、または相談支援業務等が通算3年以上かつ国家資格等による業務が通算3年以上のいずれかです。研修は基礎研修を修了して実務を経てから実践研修に進み、その後は5年度ごとに更新研修を受け続けます。詳しくは[サービス管理責任者の資格要件](/column/sabikan-shikaku-youken/)と[サービス管理責任者研修](/column/sabikan-kenshu/)で扱っています。 管理者にはこうした要件がありません。第51条は配置と専従について定めるだけで、資格にも研修にも触れていません。基準解釈通知が管理者の資格要件に言及しているのは療養介護だけで、事業所が病院であるため管理者は医師でなければならないとされています。共同生活援助は省令の側に定めがあり、第209条で常勤の管理者を置くことを求めたうえ、第2項で適切なサービスを提供するために必要な知識と経験を有する者であることを求めています。生活介護や就労継続支援A型・B型、就労移行支援には、こうした上乗せがありません。 ただし指定基準は条例に委任されているため、都道府県や指定都市が独自に要件を加えている場合があります。管理者の要件を人事計画に組み込む前に、指定権者の条例と手引を確認してください。 ## 管理者の兼務は条文本体で認められている 第51条は本文で専従を求めたうえ、ただし書で、事業所の管理上支障がない場合には、その事業所の他の職務に従事させ、又はその事業所以外の事業所、施設等の職務に従事させることができると定めています。兼務の余地が通知ではなく省令の条文そのものに書かれている点が、サービス管理責任者との大きな違いです。 基準解釈通知は、この「支障がない場合」を2つに分けて説明しています。ひとつは同じ事業所のサービス管理責任者または従業者としての職務に従事する場合です。もうひとつが他の事業所や指定障害者支援施設等の管理者・サービス管理責任者・従業者を兼ねる場合で、こちらには条件が付いています。他の事業所の職務に従事する時間帯であっても、自分の事業所の利用者へのサービス提供の場面等で生じる事象を適時かつ適切に把握でき、職員と業務の一元的な管理・指揮命令を支障なく行うことができ、さらに事故発生時等の緊急時の対応についてあらかじめ流れを定めたうえで必要に応じて管理者自身が速やかに出勤できること、という3点です。距離の離れた事業所どうしの兼務は3点目で無理が出やすいため、指定申請の前に指定権者へ相談しておくのが確実です。 ## サービス管理責任者の兼務は常勤換算が論点になる サービス管理責任者の兼務については、基準解釈通知が独立した項目を設けています。まず原則として、事業所の従業者は専従であり職種間の兼務は認められないこと、そしてサービス管理責任者は計画作成と評価の客観性を担保する必要があるため、直接サービスの提供を行う生活支援員等とは異なる者でなければならないことが示されています。そのうえで、利用者に対するサービス提供に支障がない場合は他の職務に従事できるとされ、この場合には兼務先の職務に係る常勤換算に当該サービス管理責任者の勤務時間を算入できないという扱いになります。ここが人件費に直結する部分です。サービス管理責任者を職業指導員として兼務させても、就労継続支援B型で必要な「常勤換算で利用者数を10で除した数以上」の職業指導員・生活支援員の員数には、その時間を数えられません。兼務させれば1人分浮くという計算にはならないわけです。 ただし例外があります。基準解釈通知の生活介護の項には、事業所の利用定員が20人未満である場合には兼務先の職務に係る勤務時間を常勤換算に算入することが可能である、と明記されています。この記載は就労移行支援と就労継続支援A型の項から参照され、就労継続支援B型はさらにA型の項を参照する構造になっているため、定員20人未満の就労系事業所にも同じ扱いが及びます。あわせて通知は、この例外の適用を受けるために定員規模を細分化することは認められないと釘を刺しています。なお、この例外そのものが書かれているのは生活介護の項であり、就労系サービスへは参照によって及ぶ形になっています。人件費の設計に関わる部分なので、実際に算入してよいかは指定権者に確認してください。 共同生活援助はさらに扱いが異なり、当該事業所に置かれる世話人または生活支援員のいずれかの職務との兼務は差し支えないとされています。ただし入居定員が20人以上である場合は、できる限り専従のサービス管理責任者を確保するよう努めることとされています。 | 兼務の形 | 可否 | 条件 | |---|---|---| | 管理者とサービス管理責任者(同一事業所) | 可 | 管理業務に支障がないこと | | 管理者と他事業所の管理者・サビ管・従業者 | 可 | 適時適切な把握、一元的な管理・指揮命令、緊急時に速やかに出勤できること | | サビ管と生活支援員・職業指導員(同一事業所) | 原則は別の者。支障がなければ可 | 兼務先の常勤換算に算入不可。利用定員20人未満は算入可 | | サビ管と他事業所のサビ管 | 相手先が限定される | 利用者60人までの範囲で、宿泊型自立訓練・自立生活援助・共同生活援助3類型、または大規模事業所の追加配置分 | | 共同生活援助のサビ管と世話人・生活支援員 | 可 | 入居定員20人以上はできる限り専従に努める | ## 他事業所のサービス管理責任者との兼務は相手が限られる 基準解釈通知は、1人のサービス管理責任者が最大利用者60人までの計画作成等の業務を行えることを前提に、その範囲内での他事業所との兼務を認めています。ただし相手先として挙げられているのは、指定宿泊型自立訓練事業所、指定自立生活援助事業所、共同生活援助の3類型に置くべきサービス管理責任者と、大規模な事業所において専従かつ常勤のサービス管理責任者1人に加えて配置すべきサービス管理責任者です。示されている例も、利用者20人の事業所のサービス管理責任者が利用者10人の宿泊型自立訓練事業所のサービス管理責任者を兼務する場合となっています。 通常規模の就労継続支援B型を2か所持っていて1人のサービス管理責任者に両方を担当させたいという形は、この例示の中にありません。多機能型として一体的に運営する場合には利用者数の合計で員数を判断する別の規定があるため、複数の事業を1人で回したいのであれば、兼務ではなく多機能型の枠組みで検討するほうが筋が通ります。 兼務は勤務形態一覧表の作り方まで含めて設計しておくと、指定申請でやり直しになりません。サービス管理責任者が生活支援員を兼ねる場合は常勤換算に算入できないのが原則ですから、一覧表の段階でサービス管理責任者として働く時間と生活支援員として働く時間を分けて書き、生活支援員側の常勤換算にサービス管理責任者の時間を含めない形にしておく必要があります。利用定員20人未満で算入の例外を使うのであれば、定員を細分化していないことも合わせて説明できるようにしておいてください。管理者が他事業所と兼務する場合は、緊急時にどちらの事業所へ何分で到着できるかと、その間の指揮命令を誰が代行するかを文書にしておくと、実地指導での説明が短く済みます。 ## 就労選択支援は管理者だけを置く 令和7年10月から始まった就労選択支援は、この2つの職の関係が例外的な形になっています。個別支援計画の作成を不要としているため、サービス管理責任者の配置は求められていません。一方で管理者は必要で、指定基準省令第173条の4が第51条を準用しています。サービス管理責任者を探さなくてよい代わりに就労選択支援員の確保が要件になりますので、[就労選択支援の全体像](/column/shurou-sentaku-shien/)もあわせて確認してください。 なお、この記事は指定基準省令(令和7年10月1日施行の版)、基準解釈通知(令和6年3月29日改正の新旧対照表)、告示第544号(令和8年4月1日適用)に基づいています。人員基準は条例に委任されているため、最終的な判断は指定権者の条例と手引によります。 ### よくある質問 Q. サービス管理責任者が管理者を兼ねることはできますか。 A. できます。指定基準省令第51条のただし書は、事業所の管理上支障がない場合には管理者を当該事業所の他の職務に従事させることができると定めており、基準解釈通知でも「当該事業所のサービス管理責任者又は従業者としての職務に従事する場合」が明示されています。管理者とサービス管理責任者の兼務は小規模事業所では一般的な形です。ただし管理者の責務である従業者と業務の一元的な管理に支障が出ていないことが前提で、実地指導ではその点が確認されます。 Q. サービス管理責任者が生活支援員や職業指導員を兼務できますか。 A. 条件付きでできます。基準解釈通知は、計画作成と評価の客観性を担保する観点から「原則として、サービス管理責任者と直接サービスの提供を行う生活支援員等とは異なる者でなければならない」としたうえで、利用者に対するサービス提供に支障がない場合は他の職務に従事できるとしています。注意すべきは常勤換算の扱いで、原則としてサービス管理責任者が兼務した時間を職業指導員や生活支援員の常勤換算に算入することはできません。つまり兼務させても直接支援職員の必要員数は別に確保する必要があります。 Q. 利用定員が小さい事業所にも常勤換算の例外はありますか。 A. あります。基準解釈通知の生活介護の項には、事業所の利用定員が20人未満である場合には兼務先の職務に係る勤務時間を常勤換算に算入することが可能である、という例外が置かれています。この記載は就労継続支援A型・B型および就労移行支援の項からも参照される形になっているため、定員20人未満の就労系事業所でも同じ取扱いになります。ただし通知は、この例外の適用を受けるために定員規模を細分化することは認められないと明記しています。実際の運用は指定権者に確認してください。 Q. 管理者は他の事業所の管理者と兼務できますか。 A. できます。ただし基準解釈通知は3つの条件を挙げています。他の事業所の職務に従事する時間帯も、①自事業所の利用者へのサービス提供の場面等で生じる事象を適時かつ適切に把握でき、②職員及び業務の一元的な管理・指揮命令を支障なく行うことができ、③事故発生時等の緊急時の対応についてあらかじめ対応の流れを定め、必要に応じて管理者自身が速やかに出勤できること、の3点です。距離的に離れた事業所同士の兼務は③で無理が生じやすいため、指定申請前に指定権者へ確認するのが安全です。 Q. 管理者になるのに資格や研修は必要ですか。 A. 多くのサービスでは必要ありません。指定基準省令第51条は管理者の資格要件を定めておらず、基準解釈通知が管理者の資格要件に触れているのは療養介護だけです(事業所が病院であることから医師とされています)。例外は共同生活援助で、省令第209条は管理者を常勤とすることを求めたうえで、第2項で「適切な指定共同生活援助を提供するために必要な知識及び経験を有する者」でなければならないと定めています。なお都道府県が条例で上乗せしている場合があるため、自治体の条例と要綱の確認は必要です。 Q. サービス管理責任者は他の事業所のサービス管理責任者と兼務できますか。 A. 相手先が限られます。基準解釈通知は、1人のサービス管理責任者が最大利用者60人までの計画作成等の業務を行えることを前提に、その範囲内で、指定宿泊型自立訓練事業所・指定自立生活援助事業所・指定共同生活援助事業所・日中サービス支援型・外部サービス利用型に置くべきサービス管理責任者、または大規模事業所において専従かつ常勤のサービス管理責任者1人に加えて配置すべきサービス管理責任者との兼務は差し支えないとしています。示されているのはこの範囲であり、通常規模の就労継続支援B型どうしで1人のサービス管理責任者を掛け持ちさせる形は、この例示には含まれていません。 Q. 就労選択支援にもサービス管理責任者は必要ですか。 A. 必要ありません。就労選択支援では個別支援計画の作成を不要とし、サービス管理責任者の配置は求められていません。一方で管理者は必要で、指定基準省令第173条の4が第51条を準用しています。サービス管理責任者は置かないが管理者は置く、という組み合わせになる点で、他の障害福祉サービスとは形が異なります。 ### 根拠資料 - e-Gov法令検索(デジタル庁)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年08月16日確認。第50条・第51条・第58条・第59条・第66条・第80条・第187条・第199条・第202条・第209条・第173条の4の条文を確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(平成18年12月6日障発第1206001号)【新旧対照表】」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001472116.pdf(2026年08月16日確認。第四の1の(6)(7)、第五の1の(4)、第十一の1、第十二の1、第十五の1の(5)(6)を確認。兼務と常勤換算の出典) - 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(法令等データベース収載版)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb4746&dataType=1&pageNo=1(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービスの提供に係るサービス管理を行う者として厚生労働大臣が定めるもの等(平成18年厚生労働省告示第544号)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8498&dataType=0&pageNo=1(2026年08月16日確認。最終改正 令和8年3月31日こども家庭庁・厚生労働省告示第6号(令和8年4月1日適用)。実務経験要件と研修要件の出典) - 厚生労働省「サービス管理責任者等研修制度について(社会保障審議会障害者部会 第135回 資料5)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001226975.pdf(令和5年2月27日。研修体系の変遷の出典) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## サービス管理責任者研修の 実施主体と基礎・実践・更新の 受講要件/申込の段取り URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/sabikan-kenshu/ カテゴリー: 現場・人材 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-09-12 制度基準日: 2026.04.01 ### 結論 サービス管理責任者研修の実施主体は都道府県、または都道府県知事が指定した研修事業者です。国が直接実施しているのは講師を養成する指導者養成研修だけで、職員が受ける基礎研修・実践研修・更新研修の募集は都道府県または指定研修事業者が行います。したがって申込先は自治体側であり、厚生労働省のサイトを見ても募集は出ていません(令和5年6月30日改正の実施要綱時点)。 段取りとして押さえるのは3点です。基礎研修は配置に必要な実務経験年数の2年前から受けられること、基礎研修修了後に原則2年の実務(OJT)を経ないと実践研修を受けられないこと、実践研修の修了後は5年度ごとに更新研修が必要なことです。募集時期・定員・受講料・県外事業所の受入可否は都道府県ごとに異なるため、研修を実施する都道府県の募集ページで確認してください。 - 実施主体: 都道府県、または都道府県知事が指定した研修事業者 - 研修の種類: 基礎研修・実践研修・更新研修・専門コース別研修 - 時間数: 基礎研修15時間(別途、相談支援従事者初任者研修の講義部分11時間)、実践研修14.5時間、更新研修13時間 - 基礎研修を受けられる時期: 配置に必要な実務経験年数に達する日の2年前から - 実践研修までの実務: 基礎研修修了後に原則2年。条件を満たせば6月に短縮 - 更新の期限: 実践研修を修了した年度の翌年度を初年度とする5年度ごとの各年度末日まで - 費用の負担: 資料等の実費相当分・旅費・宿泊費は受講者(所属する事業者を含む)の負担 根拠: 厚生労働省・こども家庭庁「サービス管理責任者研修事業の実施について」(平成18年8月30日障発第0830004号、最終改正 令和5年6月30日) ### 本文 「来年度にサービス管理責任者を1人増やそう」と考えた時点で、その年度の募集がもう終わっていることがあります。埼玉県の委託研修も群馬県の基礎研修も、令和8年度の申込は6月で締め切られました。しかも募集をかけているのは国ではありません。厚生労働省のサイトを探しても、職員が受ける研修の募集は見つからないからです。 僕は埼玉県志木市で就労継続支援B型を運営しています。うちはサービス管理責任者を管理者と兼務している常勤1名の体制なので、研修の日程は完全に自分ごとです。先に答えを2行で書きます。申込先は都道府県、または都道府県知事が指定した研修事業者です。段取りは「基礎研修は2年前から」「実践研修まで原則2年」「その後は5年度ごとに更新」の3つで決まります。 ## 研修を募集しているのはどこか。国ではなく都道府県です サービス管理責任者研修を実施するのは、都道府県または都道府県知事が指定した研修事業者です。国の実施要綱には「実施主体は都道府県又は都道府県知事の指定した研修事業者(以下「指定研修事業者」という。)とする」と書かれています。国が費用を補助するのも「都道府県が研修を実施する場合に限り」とされています。研修を開くこと自体が都道府県側の仕事です。 国が直接実施しているのは、講師を養成する指導者養成研修のほうです。実施要綱は講師の要件をこう定めています。「国が実施するサービス管理責任者等指導者養成研修を修了した者又はこれに準ずる者が務めること」。国は講師を育て、都道府県は職員向けの研修を開く。役割はそこで分かれています。 ここを取り違えると、探す場所を間違えます。同じ障害福祉の研修でも、就労選択支援員養成研修は国が主体で実施していて、申込も厚生労働省のサイトから直接行います。研修ごとに窓口が違うわけです。サービス管理責任者研修については、実施主体である都道府県の障害福祉主管課のページを見ることになります。 ここは迷いやすいところだと思います。事業所の指定権者が政令市・中核市の場合でも、要綱上この研修を実施するのは都道府県又は指定研修事業者です。この研修の申込先は**都道府県または指定研修事業者**だと、指定申請の窓口とは切り離して覚えておくほうが早いです。 ## 研修は何種類あって、どの順で進むのか 基礎研修を修了し、実務(OJT)を経て実践研修を修了して初めて配置でき、その後は5年度ごとに更新研修が必要です。現在の体系は令和元年度から適用されています。それ以前は、実務経験を満たした人が研修を1回修了すればすぐ配置できました。厚生労働省の資料は、この見直しによって「サービス管理責任者等としての養成開始から2年以上を要することとなった」と説明しています。 | 研修 | 位置づけ | 受講できる人 | 時間数 | | --- | --- | --- | --- | | 相談支援従事者初任者研修(講義部分) | 基礎研修修了者となるために必要 | 都道府県の募集による | 11時間 | | サービス管理責任者基礎研修 | 入口の研修 | 実務経験者、または実務経験者となる日まで2年以内の者 | 15時間(講義7.5+演習7.5) | | サービス管理責任者実践研修 | 配置の要件を満たす研修 | 基礎研修修了後に通算2年以上(条件により6月以上)の実務がある者 | 14.5時間 | | サービス管理責任者更新研修 | 5年度ごとの更新 | 現に従事している実践研修修了者、または直近5年で通算2年以上従事した実践研修修了者 | 13時間 | | 専門コース別研修 | 意思決定支援などテーマ別の上乗せ | 基礎研修の受講対象者と同じ | コースにより異なる(実施要綱別表4) | 見落としやすいのは表の1行目です。告示上「基礎研修修了者」となるには、基礎研修に加えて相談支援従事者初任者研修の講義部分を修了している必要があります。厚生労働省の資料はこの2つを合わせて26時間と説明しています。ただし実務上は、別々の研修として募集される場合があります。 群馬県の案内が分かりやすい例です。令和8年度の基礎研修の受講要件に相談支援従事者初任者研修(基礎課程)の修了を挙げたうえで、こう書いています。「令和8年度相談支援従事者初任者研修(基礎課程)をお申込みした方は、受講決定された後に本研修の申し込みをしてください」。群馬県では、2つの研修に別々に申し込む段取りになります。 僕が怖いと思うのはここです。基礎研修の募集だけ押さえて安心していると、もう一方の募集を逃します。基礎研修修了者になるには**相談支援従事者初任者研修も別に必要**だという前提で、年度はじめに自分の県の案内を通しで読むほうが確実です。都道府県によって組み方が違うので、他県の段取りをそのまま当てにはできません。 ## 基礎研修はいつから受けられるのか 基礎研修を受けられるのは、配置に必要な実務経験年数に達する日までの期間が2年以内の者と、実務経験者です。告示は基礎研修を「実務経験者となるために必要な年数に達する日までの期間が2年以内である者又は実務経験者に対して行われる研修」と定めています。つまり2年前倒しで受講できます。群馬県の募集要領は、この差を表で示しています。 | 業務の区分 | 基礎研修を受講できる年数 | 配置に必要な年数 | | --- | --- | --- | | 相談支援業務 | 3年 | 5年 | | 社会福祉主事任用資格等を有しない者の直接支援業務 | 6年 | 8年 | | 社会福祉主事任用資格等を有する者の直接支援業務 | 3年 | 5年 | | 国家資格等による業務に3年以上従事している者の相談支援業務・直接支援業務 | 1年 | 3年 | 配置に必要な年数まで待ってから基礎研修に出すと、そこから実践研修までさらに2年かかります。実務経験の要件を満たす2年前に送り出せば、年数が足りた頃には実践研修の受講要件も見えてきます。育成の順番で分かれ目になるのは、勤続3年目の職員を候補として押さえておくかどうかです。 ここは制度の話というより経営判断の領域です。基礎研修に出せば、その日数だけ現場を空けてもらうことになります。目の前の人員繰りだけを見れば、来年でいいという結論になりがちです。ただ、1年送れば配置できる時期も後ろにずれます。**欠員が出てから育て始めると間に合わない**のがこの研修の性質なので、基礎研修だけは早すぎるくらいでちょうどいいと考えています。 ## 実践研修までの2年は縮められないのか 基礎研修の受講開始日において既に実務経験者だった職員は、条件を満たせば6月で実践研修を受けられます。原則の要件は別に置かれています。基礎研修修了者となった日以後、受講開始日前5年間に通算2年以上従事していることです。対象になるのは相談支援業務または直接支援業務です。 短縮の道は告示に書かれています。基礎研修の受講開始日に既に実務経験者だった職員が、基礎研修修了後に個別支援計画の作成に関する業務へ通算6月以上従事した場合は、6月で実践研修を受けられます。ここでいう業務は、指定基準第58条第2項から第5項、アセスメントから原案の作成までです。 この6月ルートの前提になるのが、告示第544号一ホの取扱いです。サービス管理責任者が配置されている事業所では、基礎研修修了者にアセスメントから原案作成までの業務を行わせることができます。そのうえで、その基礎研修修了者を置くことで配置すべき人数に達したものとみなせます。既存のサービス管理責任者の下で計画作成の実務に就かせながら育てる形が、制度上も想定されているわけです。 正直、この一ホは分かりにくいと思います。読み違えやすいのは、1人目のサービス管理責任者を置く代わりにはならない点です。すでに配置がある事業所が次の1人を育てるための仕組みだ、というのが僕の読み方です。 ただし、この取扱いを使うには自治体への手続きが必要な場合があります。兵庫県は「上記業務に従事することについて、指定権者に届出を行っている」ことを6月ルートの条件に挙げ、届出書の様式まで用意しています。**業務に就かせる前に届出の要否を確認する**ほうが安全です。従事させてから届出が必要だったと分かると、その期間を6月に算入できるかどうかで揉めます。 ## 更新の期日はどこを見れば分かるのか 職員が持っている実践研修・更新研修の修了証書に、次に更新研修を修了すべき期日が記載されています。実施要綱が、修了証書について「次に更新研修を修了すべき期日を記載するものとする」と定めているからです。年度計算で迷う必要はありません。 期日の決まりも確認しておきます。更新研修は、実践研修を修了した日の属する年度の翌年度を初年度とします。そこから5年度ごとの各年度の末日までに修了する必要があります。期日までに修了しなかった場合、その職員は基礎研修修了者とみなされ、実践研修を受け直すことになります。 都道府県の側にも配慮が求められています。更新研修の募集に当たって「受講が必要な者の実践研修修了年度を募集要領等に明記する等、受講漏れが生じないよう適切な措置を講ずる」という書き方です。ただ、県が明記してくれるとしても、期限を追うのは事業所の仕事です。人員基準を満たす人がいなくなれば、サービス管理責任者欠如減算に直結します。 うちはサービス管理責任者が管理者と兼務の常勤1名なので、この節は特に重く読んでいます。1人が更新を落とせば、配置できる実践研修修了者がいなくなります。**更新研修は代わりがきかない**という前提で年度計画を組むのが筋です。 職員名簿とは別に、サービス管理責任者と候補者だけの一覧を作る組み方が実際的です。持たせる項目は4つで、氏名・基礎研修修了日・実践研修修了日・修了証書に記載された次回更新期日です。更新期日は年度末なので、その年度の更新研修の募集を見落とさないよう、前年度末の時点で確認の予定を入れておくと安全です。更新研修を落とすと基礎研修修了者とみなされて配置できなくなるため、期限の管理はほかの研修より重くなります。 基礎研修に出す候補は、配置に必要な年数ではなく「その2年前」で拾うのが実際的です。勤続年数の一覧から、相談支援業務3年・直接支援業務6年に到達する職員を毎年度はじめに洗い出します。そのうえで募集開始を待つ形にしておくと、欠員が出てから慌てて探す状況を避けられます。 6月ルートで実践研修を早める場合は、個別支援計画の原案作成に従事させる前に指定権者へ届出の要否を確認してください。届出が必要な自治体では、従事開始が届出より前だとその期間を算入できない可能性があります。 ## いつ申し込めばいいのか。都道府県ごとに違います 募集の回数・時期・受講料・県外事業所の受入可否は都道府県ごとに決まるため、実施する都道府県の募集ページで確認します。研修の内容は全国共通のカリキュラムです。違うのは、年に何回開くか、いつ募集するか、いくらかかるか、県外の事業所を受け入れるかです。 次の表は2026年8月16日に各県のページで確認した内容です。募集が終わっているものは、その旨も併記します。 | 都道府県 | 令和8年度の運用 | 募集・申込(2026年8月16日時点) | | --- | --- | --- | | 兵庫県 | 基礎研修は上半期(6〜7月)と下半期(11月〜令和9年1月頃)の2回。実践研修も上半期(10〜11月)と下半期(令和9年1月〜2月頃)の2回。更新研修は令和8年12月〜令和9年1月 | 上半期の基礎研修と実践研修は募集終了。下半期の基礎研修は令和8年9月頃、下半期の実践研修は令和8年10〜11月頃に募集開始の予定。更新研修の募集期間は令和8年7月15日〜8月28日 | | 群馬県 | 基礎研修は年1回。講義は令和8年7月下旬〜8月中旬の動画配信、演習は9月1日・9月25日・10月7日・10月16日のいずれか1日 | 申込期限が令和8年6月29日(消印有効)で、募集は終了。定員250名程度、受講費用6,000円、県外事業者の申込は不可 | | 埼玉県 | 委託研修(令和8年度は有限会社プログレ総合研究所へ委託)は4日間で、相談支援従事者初任者研修との共通講義2日と専門講義1日をWEBで視聴し、演習1日は会場。演習は令和8年8月7日から10月2日までの5日程のいずれか1日。これとは別に、県の指定を受けた2事業者が独自の日程で基礎研修を実施 | 委託研修の応募期限は電子申請が令和8年6月5日、郵送書類が6月8日必着で、いずれも終了。定員500名程度、受講費用は4日間で15,000円。県外の事業所からの申込は受け付けていない。指定事業者の研修は日程も受講料も事業者ごとに異なり、申込は各事業者へ直接 | 読み取れることが3つあります。第一に、申込の締切は研修の実施よりかなり前に来ます。群馬県は6月29日締切で演習が9月から10月です。埼玉県の委託研修は6月上旬締切で演習が8月から10月です。第二に、**募集が年1回しかない自治体がある**ことです。群馬県の令和8年度基礎研修は6月29日で締め切られており、次は令和9年度の募集を待つことになります。第三に、指定研修事業者を使っている自治体では選択肢が増えます。埼玉県では、委託研修の応募期限が過ぎたあとも、県の指定を受けた2事業者が独自の日程で基礎研修を実施しています。 ただし、埼玉県のページに載っている指定事業者の日程には年の誤記が混じっています。ある事業者の第3回は、講義が令和8年6月25日から27日なのに演習だけ令和7年6月28日と書かれています。第10回は、講義が令和9年1月28日から30日なのに演習が令和8年1月31日と書かれています。開催回数や実施月を県のページの表だけで判断せず、申し込む前に各事業者のサイトで日程を確認してください。 申込の主体も確認が要ります。兵庫県の案内はこうです。「サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者の配置が必要な障害福祉サービス事業所及び配置の予定のある個人から申込みを受け付けています」。兵庫県では、新規開設の場合も予定の事業所名を記載すれば申し込めます。一方で、兵庫県の受講決定は先着順ではありません。県のページは「例年は定員以上の申込数があり、選考により受講者を決定しています」と明記しています。事業所への配置の必要性等で選考されます。群馬県も、法人または事業所等からの推薦を受けていることを受講要件に入れています。 だから、個人が思い立って申し込む研修ではありません。事業所として誰を出すかを先に決める研修です。第1希望で受講できない前提に立って、年度内の別日程まで見込んだ計画にしておくほうが安全です。 費用の考え方は要綱に書かれています。資料等に係る実費相当部分、会場までの旅費、宿泊費は、受講者(所属する事業者を含む)の負担です。金額は都道府県ごとに違います。令和8年度の基礎研修でいえば、群馬県は6,000円、埼玉県の委託研修は4日間で15,000円です。埼玉県は、相談支援従事者初任者研修との共通講義を令和7年度以降に修了していて免除になる場合は9,000円になります。指定研修事業者が実施するものは、さらに事業者ごとに受講料が異なります。 ## 年度計画に落とすとき、どこを確認すればよいか 事業所が決めるのは「誰を」「どの研修に」「いつ申し込むか」の3つで、確認先はそれぞれ違います。誰をは、実務経験年数の2年前で拾います。どの研修には、その職員の現在の修了状況で決まります。いつ申し込むかは、都道府県の募集ページ次第です。 確認先を取り違えないことも大事です。募集回数・定員・受講料・県外事業所の受入可否・6月ルートの届出様式は、この記事で挙げた3県の例のとおり自治体ごとに異なります。指定基準そのものも都道府県・指定都市・中核市の条例に委任されています。配置や減算の扱いは自法人の指定権者の条例・要綱で確認してください。研修の募集は都道府県の募集要領で確認してください。国の実施要綱で全国共通なのは、実施主体・カリキュラム・修了証書の扱い・費用負担の考え方までです。 書きながら改めて思ったのは、サービス管理責任者は採用の問題と研修の問題が別だということです。人を採れば配置できるわけではなく、研修の順番と都道府県の日程が先に決まっています。逆算する先は求人票ではなく、都道府県の募集ページです。結局、配置が必要になる年度から逆算して候補を決めておくことが一番大事だと思っています。 ## あわせて読む サービス管理責任者の段取りでつながる記事を挙げます。 - [サービス管理責任者の資格要件](/column/sabikan-shikaku-youken/) … 実務経験の3ルートの数え方を条文に沿って整理しています - [個別支援計画の作成の流れ](/column/kobetsu-shien-keikaku/) … 6月ルートで従事させる業務そのものの手順です - [個別支援計画の書き方](/column/kobetsu-shien-keikaku-kakikata/) … 基礎研修修了者に原案を書かせるときに手渡す型になります - [就労選択支援員養成研修](/column/shurou-sentaku-shien-in-kenshu/) … 国が実施する研修の例。窓口が研修ごとに違うことが分かります ### よくある質問 Q. サービス管理責任者研修は国が実施しているのですか。 A. いいえ、実施主体は都道府県または都道府県知事が指定した研修事業者です。国の実施要綱「サービス管理責任者研修事業実施要綱」の第2項に「実施主体は都道府県又は都道府県知事の指定した研修事業者とする」と明記されています。国が実施するのは講師となる者を養成する指導者養成研修で、要綱は講師について「国が実施するサービス管理責任者等指導者養成研修を修了した者又はこれに準ずる者が務めること」と定めています。申込先は都道府県または指定研修事業者です。 Q. 実務経験が5年に達していないと基礎研修は受けられませんか。 A. 受けられます。告示第544号は基礎研修を「実務経験者となるために必要な年数に達する日までの期間が2年以内である者又は実務経験者に対して行われる研修」と定めており、配置に必要な年数の2年前から受講できます。群馬県の令和8年度基礎研修も、従事に必要な実務経験が相談支援業務5年・無資格者の直接支援業務8年であるのに対し、受講要件はそれぞれ3年・6年としています。5年目まで待つと配置がその分だけ後ろにずれます。 Q. 基礎研修を修了すればサービス管理責任者として配置できますか。 A. できません。配置には実践研修の修了が必要です。ただし告示第544号一ホに例外が置かれています。サービス管理責任者が既に配置されている事業所では、基礎研修修了者にアセスメントから個別支援計画の原案作成まで(指定基準第58条第2項から第5項の業務)を行わせることができます。そのうえで、その基礎研修修了者を置くことで配置すべき人数に達したものとみなせます。1人目としては配置できない点に注意してください。 Q. 実践研修を受けるには必ず2年待つ必要がありますか。 A. 条件を満たせば6月に短縮できます。告示第544号は、基礎研修の受講開始日において既に実務経験者だった者が、基礎研修修了後に個別支援計画の作成に関する業務へ通算6月以上従事した場合を実践研修の受講要件として認めています。兵庫県のようにこの取扱いを使う際は指定権者への届出を求めている自治体があるため、業務に就かせる前に届出の要否を確認してください。 Q. 更新研修を期限までに受けられなかった場合はどうなりますか。 A. 基礎研修修了者とみなされ、実践研修を受け直すことになります。告示第544号一ニは、期日までに更新研修を修了しなかった実践研修修了者は基礎研修修了者とみなし、改めて実践研修を修了した日に実践研修修了者となると定めています。次に更新研修を修了すべき期日は、実践研修・更新研修の修了証書に記載することになっているため、職員の修了証書を確認すれば期限が分かります。 Q. 申し込めば必ず受講できますか。 A. 都道府県によります。兵庫県は「受講決定は先着順ではありません」「例年は定員以上の申込数があり、選考により受講者を決定しています」と案内しており、事業所への配置の必要性等で選考されます。群馬県の令和8年度基礎研修は定員250名程度で、県外の事業者からの申込みを受け付けておらず、募集は令和8年6月29日で終了しています。第1希望で受講できない前提で、年度内の別日程まで見込んだ計画にしておくほうが安全です。 ### 根拠資料 - こども家庭庁・厚生労働省「サービス管理責任者研修事業の実施について(平成18年8月30日障発第0830004号、最終改正 令和5年6月30日こ支障第34号・障発0630第7号)」 https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf08/documents/02_kokuzi0630.pdf(2026年08月16日確認。兵庫県ホームページ掲載分。実施主体・修了証書・費用負担の出典) - 厚生労働省「サービス管理責任者研修事業の実施について(法令等データベース収載版)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb4757&dataType=1&pageNo=1(2026年08月16日確認。実施主体の記載を照合) - 厚生労働省「指定障害福祉サービスの提供に係るサービス管理を行う者として厚生労働大臣が定めるもの等(平成18年厚生労働省告示第544号)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8498&dataType=0&pageNo=1(2026年08月16日確認。最終改正 令和8年3月31日こども家庭庁・厚生労働省告示第6号(令和8年4月1日適用)。受講要件と、別表第一(基礎研修15時間)・別表第二(相談支援従事者初任者研修の講義部分11時間)・別表第三(実践研修14.5時間)・別表第四(更新研修13時間)の出典) - 厚生労働省「サービス管理責任者等研修制度について(社会保障審議会障害者部会 第135回 資料5)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001226975.pdf(2026年08月16日確認。研修体系の見直し経緯とカリキュラム別表の出典) - 兵庫県「サービス管理責任者研修・児童発達支援管理責任者研修「令和8年度実施・募集スケジュール」及び研修事業者指定申請手続き」 https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf08/04sabikankenshu.html(2026年08月16日確認。令和8年度の実施時期・募集期間・選考方法の出典。上半期の基礎研修と実践研修は「募集終了」と表示されている) - 兵庫県「サービス管理責任者研修・児童発達支援管理責任者研修「受講時期」」 https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf08/04sabikanzyukouziki.html(2026年08月16日確認。実践研修6月ルートの届出条件・届出様式の出典) - 群馬県「【募集は終了しました】令和8年度サービス管理責任者等基礎研修を開催します」 https://www.pref.gunma.jp/page/651392.html(2026年08月16日確認(ページ更新日は令和8年7月1日)。実施主体・申込期限・定員・受講費用の出典。令和8年度の募集は終了と表示されている) - 埼玉県「埼玉県サービス管理責任者等基礎研修」 https://www.pref.saitama.lg.jp/a0605/sabikan01.html(2026年08月16日確認(ページ掲載日は令和8年4月28日)。委託研修の応募期限・県外事業所の取扱いと、指定研修事業者2社の掲載状況の出典。掲載された指定事業者の日程には年の誤記があり、第3回の演習が令和7年6月28日、第10回の演習が令和8年1月31日と記載されている) - 埼玉県「令和8年度 埼玉県サービス管理責任者等基礎研修実施要領」 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/19606/r8_jissiyouryou.pdf(2026年08月16日確認。委託研修の実施主体・4日間の構成・演習日程(令和8年8月7日〜10月2日の5日程)・定員500名程度・受講費用15,000円の出典) - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年08月16日確認。第58条(個別支援計画の作成)の出典) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## サービス管理責任者が採れない 人材市場の構造と 事業所が取れる打ち手 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/sabikan-saiyou/ カテゴリー: 現場・人材 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.04.01 ### 結論 サービス管理責任者として配置できるのは、実務経験要件と研修要件をともに満たす人だけです。求人を出しても埋まらない直接の原因は、この2つの要件が採用できる人の母数を決めていることにあります。根拠は平成18年厚生労働省告示第544号です。2026年8月時点で使うのは令和8年4月1日適用の版です。 母数が年単位でしか増えないのは、研修の順番が決まっているためです。研修を実施するのは都道府県です。実践研修を受けるには、基礎研修の修了後に原則2年の実務が必要です。例外として6か月で足りる場合があります。 配置の実数は公表統計で確認できます。数字は厚生労働省の令和6年社会福祉施設等調査によるものです(令和6年10月1日現在)。就労継続支援B型は事業所17,973か所に対し、常勤換算の従事者数が15,970人です。共同生活援助は事業所14,241か所に対し、9,976人です。 配置できない状態が続くと報酬が下がります。サービス管理責任者欠如減算により、欠如の翌々月から所定単位数の100分の70になります。5月以上連続すると100分の50です。ただし翌月の末日までに人員基準を満たせば減算されません。 - 配置の要件: 実務経験要件と研修要件の両方(告示544号 一イ)。片方だけでは配置できない - 自法人で育てる最短年数: 相談支援・有資格の直接支援ルートで5年、無資格の直接支援ルートで8年、国家資格等ルートで3年(いずれも告示上の最短で、研修の開催時期により延びる) - 中途採用の近道: 基礎研修の受講開始日に実務経験者だった人を採り、自事業所のサービス管理責任者の下で個別支援計画の原案作成まで担当させると、通算6か月以上の従事で実践研修を受講できる - 配置できない場合: サービス管理責任者欠如減算=欠如の翌々月から所定単位数の100分の70、5月以上連続で100分の50。対象は利用者全員。翌月末日までに満たせば減算なし - 配置の実数(常勤換算): 就労継続支援B型15,970人、共同生活援助9,976人、生活介護8,413人(令和6年10月1日現在) - 確認できないこと: サービス管理責任者に限定した有効求人倍率や全国の不足数は、公的統計としては確認できない 根拠: 厚生労働省「令和6(2024)年社会福祉施設等調査の概況」 ### 本文 ## 求人が埋まらないのは、母数が制度で決まっているから サービス管理責任者の採用には、他職種と決定的に違う点が1つあります。応募できる人の集合が、国の告示で確定していることです。配置できるのは実務経験要件と研修要件の**両方を満たす者だけ**です。実務経験だけでも、研修修了だけでも足りません。根拠は平成18年厚生労働省告示第544号です。詳しい条文の読み方は[サービス管理責任者の資格要件](/column/sabikan-shikaku-youken/)で扱っています。 この母数を絞っているのが研修体系です。令和元年度に大きな見直しがありました。それ以前は、実務経験要件を満たせば研修修了後すぐ配置できました。見直し後は、基礎研修を修了し、原則2年の実務を経て実践研修を修了する形に変わりました。厚生労働省の審議会資料は、この見直しにより「サービス管理責任者等としての養成開始から2年以上を要することとなった」と説明しています。 同じ資料には研修修了者数の推移が載っています。基礎研修の修了者は次のとおりです。 - 平成31年度 18,632人 - 令和2年度 14,762人 - 令和3年度 19,004人(速報値) これに対し、実践研修の修了者は令和3年度で5,784人でした。つまり、その年にすぐ配置できる状態になる人は、基礎研修まで進んだ人の3分の1程度にとどまります。この資料の数値は令和3年度までです。それ以降の修了者数を示した公表資料は確認できませんでした。 ## 配置が必要な事業所は毎年増えている 一方で、サービス管理責任者を置かなければならない事業所は増え続けています。令和6年社会福祉施設等調査(令和6年10月1日現在)の数字は次のとおりです。従事者数は常勤換算で、標本調査による推計値です。 | 事業の種類 | 事業所数 | 前年からの増減 | サービス管理責任者等の常勤換算従事者数 | | --- | --- | --- | --- | | 就労継続支援(B型) | 17,973 | +1,260 | 15,970 | | 共同生活援助 | 14,241 | +890 | 9,976 | | 生活介護 | 10,404 | +372 | 8,413 | | 就労継続支援(A型) | 4,634 | △42 | 4,099 | | 就労移行支援 | 3,240 | △61 | 2,489 | | 就労定着支援 | 1,885 | +76 | 1,373 | | 自立訓練(生活訓練) | 1,681 | +51 | 1,137 | | 児童発達支援 | 14,855 | +1,443 | 12,203 | | 放課後等デイサービス | 22,643 | +1,521 | 21,554 | 児童発達支援と放課後等デイサービスの欄は、児童発達支援管理責任者の人数です。両者の研修はカリキュラムが統一され、共通で実施されています。都道府県の研修枠という意味では、同じ資源を分け合っています。児童分野だけで年に約3,000事業所が増えており、障害福祉サービス側の採用にも影響します。 この表から**不足数を計算することはできません**。常勤換算の値であって頭数ではなく、管理者との兼務や非常勤での配置が広く行われているためです。サービス管理責任者に限定した有効求人倍率や充足率を示す公的統計は、今回は確認できませんでした。求人媒体が示す相場や充足率の数字を、**経営判断の前提に置かないでください**。自法人の要員が要件のどこにいるかで判断します。 ## 自法人で育てるなら何年かかるか 基礎研修は、実務経験要件を満たす前から受けられます。告示544号は、基礎研修の対象を次のように定めています。「実務経験者となるために必要な年数に達する日までの期間が2年以内である者又は実務経験者」です。実務経験を積みながら基礎研修を先に済ませられるため、育成期間は実務経験の年数とほぼ重なります。 | 実務経験のルート | 基礎研修を受けられる時期 | 実践研修に進める時期 | 配置までの最短 | | --- | --- | --- | --- | | 相談支援業務・有資格者の直接支援業務が通算5年 | 3年経過後から | 基礎研修修了後2年 | 5年 | | 無資格者の直接支援業務が通算8年 | 6年経過後から | 基礎研修修了後2年 | 8年 | | 上記が通算3年かつ国家資格等の業務が通算3年 | 1年経過後から | 基礎研修修了後2年 | 3年 | 最も短いのは、**国家資格等のルートで3年**です。看護師や介護福祉士など、国家資格に基づく業務経験を3年持つ人を採用し、直接支援に就いてもらう形です。無資格から育てる場合は8年かかります。採用の面接で職歴を分類しておくと、その人がどのルートで何年後に配置できるかが計算できます。 中途採用でさらに短くする方法もあります。対象は、基礎研修の受講開始日にすでに実務経験者だった人です。この人が基礎研修の修了後に、アセスメントから個別支援計画の原案作成までの業務に従事した場合は、実践研修の受講に必要な実務が**通算6か月以上で足ります**。実践研修修了者だけを探すより早く決まることがあります。実務経験者かつ基礎研修修了者を採り、半年で実践研修に送り出すほうが現実的です。この人に原案作成までを担当させることも、置くべき員数に算入することも認められています(告示544号一ホ)。 ## 配置できないときに失うもの サービス管理責任者を欠いた場合の減算は、他職種の欠如より重く設計されています。生活支援員などは、1割を超えて欠けた翌月から減算されます。サービス管理責任者は、**員数を満たさない状態そのものが対象**です。翌々月から利用者全員の報酬が下がります。 | 状態 | 減算率(所定単位数に乗じる割合) | 適用の始まり | | --- | --- | --- | | サービス管理責任者の欠如が5月未満 | 100分の70 | 欠如の翌々月から | | 同じ状態が5月以上連続 | 100分の50 | 5月目から | | 常勤・専従など員数以外の要件を満たさない | 上と同じ | 翌々月から | いずれも、翌月の末日において人員基準を満たすに至っている場合は減算されません。ここが実務上の分かれ目です。所定単位数は各種加算を含める前の単位数で、対象は**該当する利用者ではなく利用者全員**です。個別支援計画の作成に係る一連の業務が滞れば、[個別支援計画未作成減算](/column/kobetsu-shien-keikaku/)が別に発生します。こちらは該当する利用者につき、3月未満で100分の70、3月以上で100分の50となります。留意事項通知には、著しい人員欠如が続く場合の扱いも定められています。都道府県知事が増員や事業の休止を指導し、従わなければ指定の取消しを検討するという内容です。 退職の申し出を受けた日のうちに決めておきたいことが3つあります。 第一に、減算の起算を避けられる期限が「翌月の末日」であることを確認します。そこから逆算して、採用と届出の日程を引きます。 第二に、在籍者の名簿を実務経験と研修修了の状況で並べ替えます。実践研修修了者、基礎研修修了者、実務経験者の3層に分けます。基礎研修修了者が欠如の発生日以前から在籍していれば、猶予が延びる可能性があります。告示544号一ヘのみなし配置で、最長2年です。 第三に、みなし配置の可否と変更届の様式を指定権者に照会します。「やむを得ない事由」に当たるかどうかの判断は指定権者が行います。自己判断で配置を続けるのは危険です。 日常的な備えもあります。実践研修の修了年月日から、更新研修の期限を算出した一覧を作ります。期限の1年前に受講申込を管理してください。更新研修を落とすと基礎研修修了者とみなされ、配置できなくなります。 ## 採用以外に打てる手 配置の設計そのものを見直す余地もあります。1人のサービス管理責任者は、最大60人までの計画作成等の業務を行えます。基準解釈通知は、その範囲内で次の事業所のサービス管理責任者との兼務を認めています。 - 宿泊型自立訓練事業所 - 自立生活援助事業所 - 共同生活援助事業所など 管理者についても、管理業務に支障がなければサービス管理責任者を兼ねられます。ただし他の職務を兼務した場合、その職務に係る常勤換算に当該サービス管理責任者の勤務時間を算入することは原則としてできません。兼務で人員基準を通しても、**生活支援員の常勤換算は別に確保**する必要があります。 事業を増やす局面では、多機能型という選択肢があります。一体的に行う形であれば、利用者数の合計が60人以下ならサービス管理責任者は1人で足ります。従たる事業所を設ける場合も、サービス管理責任者を各事業所に別々に置く必要はありません。それぞれに常勤かつ専従の従業者を1人以上置く要件から、サービス管理責任者は除かれているためです。また、令和7年10月1日から実施されている就労選択支援は、個別支援計画の作成を求めていません。サービス管理責任者の配置も不要です。 いずれの手も、人員基準の解釈は指定権者が行います。指定基準は都道府県・指定都市・中核市の条例に委任されています。兼務や多機能型の扱いを条例や要綱で細かく定めている自治体もあります。設計を決める前に**所在地の指定権者に照会**してください。採用した人に長く務めてもらう側の話は[サービス管理責任者の定着](/column/sabikan-teichaku/)で扱います。 ### よくある質問 Q. サービス管理責任者の求人はなぜ埋まらないのですか? A. 応募できる人が制度で限定されているためです。配置には実務経験要件と研修要件の両方が必要です。研修を実施するのは都道府県です。基礎研修を修了してから実践研修を受けるまでには、原則2年の実務を挟みます。厚生労働省の資料では、令和3年度の基礎研修修了者は19,004人(速報値)でした。同じ年度に実践研修を修了したのは5,784人です。一方で事業所は増え続けています。令和6年10月1日現在で、就労継続支援B型事業所は前年より1,260か所増えました。共同生活援助事業所は890か所増えています。配置が必要な事業所の増え方に対して、すぐ配置できる人の増え方が小さい構造です。 Q. 自法人の職員をサービス管理責任者に育てると何年かかりますか? A. 実務経験のルートによって最短で3年から8年です。告示544号は実務経験要件を3通りで定めています。相談支援業務と有資格者による直接支援業務なら通算5年です。無資格者の直接支援業務なら通算8年です。これらが通算3年あり、かつ国家資格等に基づく業務が通算3年なら3年です。基礎研修は実務経験要件を満たす日の2年前から受講できます。基礎研修の修了後は、原則2年の実務を経て実践研修を受けます。この2つが並行するため、最短では実務経験要件を満たした時点で実践研修に進めます。ただし研修の開催は都道府県ごとに年に限られた回数です。実際にはこれより長くなります。 Q. サービス管理責任者が退職して補充できないと、報酬はどうなりますか? A. 欠如の翌々月から下がります。減算は、欠如が解消された月まで続きます。対象は利用者全員の所定単位数です。減算率は、欠如が5月未満なら100分の70です。5月以上連続すると100分の50になります(留意事項通知)。ただし翌月の末日において人員基準を満たすに至っている場合は除かれます。そのため、退職の申し出を受けた時点では「翌月末日」が最初の防衛ラインになります。常勤や専従といった員数以外の要件を満たしていない場合も、同じ取扱いです。 Q. 求人が間に合わないとき、実務経験がある職員をサービス管理責任者とみなして配置できますか? A. できる場合がありますが、事由が限定されています。やむを得ない事由でサービス管理責任者が欠けた場合が対象です。その事由の発生日から1年間は、実務経験者を研修要件を満たすものとみなせます(告示544号一ヘ)。厚生労働省の審議会資料は、この「やむを得ない事由」を次のように説明しています。退職や病休など事業者の責に帰さない事由により欠如し、かつ直ちに配置することが困難な場合です。採用が間に合わないこと一般の救済ではありません。なお、欠如発生日以前から在籍していた基礎研修修了者であれば、期間はさらに延びます。実践研修を修了するまで、最長2年です。 Q. 基礎研修しか修了していない人を採用しても意味がありますか? A. あります。すでにサービス管理責任者が配置されている事業所が対象です。アセスメントから個別支援計画の原案作成までの業務を、基礎研修修了者に行わせることができます。この業務を担う基礎研修修了者を、サービス管理責任者に加えて置いたときは、置くべきサービス管理責任者の数に達したものとみなされます。根拠は告示544号一ホです。さらに、基礎研修の受講開始日にすでに実務経験者だった人には短縮があります。その人がこの業務に従事した場合、実践研修の受講に必要な実務は通算6か月以上で足ります。実践研修修了者を待つより早く配置につながる可能性があります。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「令和6(2024)年社会福祉施設等調査の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/fukushi/24/dl/gaikyo.pdf(2026年08月16日確認。表4(事業の種類別にみた事業所数)および表8(事業の種類別にみた職種別常勤換算従事者数)。令和6年10月1日現在) - 厚生労働省「指定障害福祉サービスの提供に係るサービス管理を行う者として厚生労働大臣が定めるもの等(平成18年9月29日厚生労働省告示第544号。最終改正 令和8年3月31日こども家庭庁・厚生労働省告示第6号、令和8年4月1日適用)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8498&dataType=0&pageNo=1(2026年08月16日確認。一イ(1)(2)、一ホ、一ヘの条文) - 厚生労働省「サービス管理責任者等研修制度について(社会保障審議会障害者部会 第135回 資料5)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001226975.pdf(2026年08月16日確認。研修修了者数の推移(平成18年度〜令和3年度)、研修カリキュラムの統一、やむを得ない事由の考え方) - こども家庭庁「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(障発第1031001号)新旧対照表」 https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/253aba4f-3ce0-4aa1-a777-3d42440f1ca2/97015afc/20250812_policies_shougaijishien_shisaku_hoshukaitei_123.pdf(2026年08月16日確認。第二の2(8)人員欠如に該当する場合の所定単位数の算定について) - 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(障発第1206001号)新旧対照表」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001472116.pdf(2026年08月16日確認。第4の1(6)サービス管理責任者と他の職務との兼務について、(7)管理者の専従) - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年08月16日確認。第50条第1項第4号、第78条、第186条、第208条、第215条第2項) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## サービス管理責任者の資格要件 実務経験3ルートと研修の 修了要件を告示の条文から URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/sabikan-shikaku-youken/ カテゴリー: 現場・人材 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.04.01 ### 結論 サービス管理責任者に配置できるのは、実務経験要件と研修要件の両方を満たす者だけです。片方だけでは配置できません。根拠は平成18年厚生労働省告示第544号の一イです(令和8年4月1日適用の版)。 実務経験要件は3ルートあります。①相談支援業務と社会福祉主事任用資格者等による直接支援業務が通算5年以上。②資格のない者による直接支援業務が通算8年以上。③①②の業務が通算3年以上、かつ国家資格等に基づく業務が通算3年以上。いずれかに該当すれば「実務経験者」です。 研修体系は基礎研修・実践研修・更新研修の3段階です。研修要件として求められるのは、はじめの2つの修了です。まず相談支援従事者初任者研修(講義部分)とサービス管理責任者基礎研修、次に実践研修を修了します。実践研修の修了後は、5年度ごとに更新研修を修了し続けます。 - 満たすべき要件: 実務経験要件と研修要件の両方(片方だけでは配置できない) - 実務経験ルート①: 相談支援業務+社会福祉主事任用資格者等による直接支援業務が通算5年以上 - 実務経験ルート②: 社会福祉主事任用資格者等でない者による直接支援業務が通算8年以上 - 実務経験ルート③: 上記①②の業務が通算3年以上、かつ国家資格等に基づく業務が通算3年以上 - 研修要件: 相談支援従事者初任者研修(講義部分)11時間+基礎研修15時間+実践研修14.5時間の修了 - 更新: 実践研修修了年度の翌年度を初年度とする5年度ごとの年度末までに更新研修13時間を修了 - 根拠: 平成18年厚生労働省告示第544号 一イ(最終改正 令和8年3月31日、令和8年4月1日適用) 根拠: 厚生労働省「指定障害福祉サービスの提供に係るサービス管理を行う者として厚生労働大臣が定めるもの等(平成18年厚生労働省告示第544号)」 ### 本文 ## 要件は省令ではなく告示にある サービス管理責任者に配置できるのは、実務経験の要件と研修の要件の**両方を満たす者だけ**です。指定基準省令は「サービス管理を行う者として厚生労働大臣が定めるもの」と書いているだけです。中身を定めているのは平成18年厚生労働省告示第544号です。その一イが、(1)実務経験の要件と(2)研修の要件を並べて掲げています。 片方だけでは足りません。応募者が研修修了証を持っていても、実務経験の年数が足りなければ配置できません。経験年数が長くても、実践研修が済んでいなければ配置できません。 以下は障害福祉サービス側のサービス管理責任者の話です。児童発達支援管理責任者は、児童福祉法側の基準で別に定められています。同じ研修体系でも、要件の条文は異なります。 ## 実務経験は3ルート。5年だけで判断しない 告示は、次の3つのいずれかに該当する者を「実務経験者」と呼んでいます。年数はいずれも通算です。 | ルート | 必要な期間 | 算入できる業務 | | --- | --- | --- | | ① | 通算5年以上 | (一)相談支援業務と、(二)社会福祉主事任用資格者等が行う直接支援業務 | | ② | 通算8年以上 | (三)社会福祉主事任用資格者等でない者が行う直接支援業務 | | ③ | (一)〜(三)が通算3年以上、かつ(四)が通算3年以上 | 上記に加えて、(四)国家資格等に基づき当該資格に係る業務に従事した期間 | 採用の場面で誤りが起きやすいのは②と③です。「サビ管は実務経験5年」とだけ理解していると、要件を満たす応募者を要件外と判断してしまいます。無資格で長く直接支援に就いてきた職員や、看護師・栄養士として働いた期間を持つ応募者がそれに当たります。 (一)の相談支援業務は、日常生活を営むのに支障がある人の自立に関する相談に応じる業務です。助言・指導その他の支援を行います。対象となる勤務先は次のとおりです。 - 一般相談支援事業・特定相談支援事業・障害児相談支援事業・地域生活支援事業・居宅介護支援事業などの従事者 - 児童相談所・身体障害者更生相談所・知的障害者更生相談所・福祉事務所・発達障害者支援センター・高次脳機能障害者支援センターなどの従業者 - 障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターの従業者 - 特別支援学校の従業者 病院・診療所の従業者も対象です。ただしこちらだけは限定が付いています。社会福祉主事任用資格に該当すること、他の区分での従事期間が1年以上あることなどです。 (二)と(三)の分かれ目は、本人が「社会福祉主事任用資格者等」に当たるかどうかだけです。告示はこの語を次のような者と定義しています。 - 社会福祉法第19条第1項各号のいずれかに該当する者 - 相談支援の業務に関する基礎的な研修の修了等により、必要な知識および技術を修得したと認められる者 - 保育士 - 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第43条第1項各号のいずれかに該当する者 このほかにも該当する区分があります。判定に迷えば指定権者に確認してください。 同じ職場で同じ支援をしていても、この該当性で**必要年数が5年と8年に分かれます**。 (四)の国家資格等は23あります。 - 医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師 - 理学療法士、作業療法士、視能訓練士、義肢装具士、言語聴覚士、歯科衛生士 - あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師 - 社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士、公認心理師 - 管理栄養士、栄養士 条文は「その資格に基づき当該資格に係る業務に従事した期間」と書いています。**資格を持ったまま別の職種**で働いていた期間は算入できません。 ## 研修は4つ。修了証で確認する 研修要件は、基礎研修と実践研修を修了していることです。さらに実践研修の修了後は、5年度ごとに更新研修を修了し続けます。時間数は告示の別表に定められています。 | 研修 | 時間数 | 受講できる時期・位置づけ | | --- | --- | --- | | 相談支援従事者初任者研修(講義部分) | 11時間 | 基礎研修とあわせて修了することで「基礎研修修了者」となる | | サービス管理責任者基礎研修 | 講義7.5時間+演習7.5時間=15時間 | 実務経験者、または実務経験者となる日まで2年以内の者 | | サービス管理責任者実践研修 | 14.5時間 | 基礎研修修了後、原則として通算2年以上の業務従事が必要 | | サービス管理責任者更新研修 | 13時間 | 実践研修修了年度の翌年度を初年度とする5年度ごとの年度末まで | 基礎研修は**実務経験の充足より2年早く**受けられます。この点が採用と育成の計画に直結します。5年ルートなら経験3年、8年ルートなら6年に達した時点から受講対象になります。既存職員をサービス管理責任者に育てるなら、実務経験の満了を待ってから研修を探してはいけません。それでは2年を無駄にします。 実践研修の受講には、業務に従事した期間も必要です。原則は受講開始日前5年間で通算2年以上です。ただし通算6か月以上で受講できる例外があります。対象は、基礎研修の受講開始日にすでに実務経験者だった人が、修了後にアセスメントから個別支援計画の原案作成までの業務(指定基準第58条第2項から第5項)に従事した場合です。埼玉県のように、この例外を周知している自治体もあります。 なお、期日までに更新研修を修了しなかった実践研修修了者は基礎研修修了者とみなされます。改めて実践研修を修了するまで、サービス管理責任者として配置できません。実務上は退職と同じ影響が出ます。 ## 欠員が出たときの2つの緩和 配置が途切れる場面には、2つの緩和が置かれています。どちらも告示544号にあります。 ひとつは一ホのみなしです。サービス管理責任者が配置されている事業所が対象になります。アセスメントから個別支援計画の原案作成までの業務を、基礎研修修了者に行わせることができます。そのサービス管理責任者に加えて基礎研修修了者を置けば、置くべき員数に達したものとみなせます。常勤配置が求められる場合は、そのサービス管理責任者が常勤であることが前提です。 もうひとつは一ヘのみなしです。やむを得ない事由により欠けた場合に、実務経験者を1年間に限り研修要件を満たすものとみなします。欠如発生日以前から在籍し、その時点で基礎研修を修了していた人なら、最長2年間まで延びます。延長は実践研修を修了するまでの間が限度です。 「やむを得ない事由」の範囲は、厚生労働省の審議会資料が説明しています。退職や病休など、事業者の責に帰さない事由により欠如した場合です。加えて、直ちに配置することが困難な場合であることも求めています。採用が間に合わないときの**一般的な救済ではありません**。 みなしの期間が切れると、人員基準を満たさない状態になります。報酬はサービス管理責任者欠如減算の対象です。要件を満たす人を採り、辞めさせない体制のほうが先になります。 - [サービス管理責任者の採用](/column/sabikan-saiyou/) … 要件を満たす応募者の集め方 - [サービス管理責任者の定着](/column/sabikan-teichaku/) … 辞めさせない体制のつくり方 応募書類が届いた時点で、確認の順番を決めておくと判断が速くなります。 第一に研修の修了証です。実践研修の修了証がなければ、実務経験がどれだけ長くても単独では配置できません。修了証には修了年月日が入ります。そこから更新研修の期限を先に計算しておくと、採用後の受講計画まで一度に決められます。期限は修了年度の翌年度を初年度とする5年度ごとの年度末です。 第二に実務経験です。職歴を勤務先の種別ごとに分けます。相談支援業務・直接支援業務・国家資格等に基づく業務のどれに当たるかを振り分けます。最後に3ルートのどれで満たすかを判定します。 第三に、直接支援業務の期間について本人が社会福祉主事任用資格者等に当たるかどうかを確認してください。ここが5年と8年の分かれ目です。 判定に迷う職歴が1件でもあれば、雇用条件を決める前に指定権者に照会してください。 ## 自治体に確認すべきこと 告示は「期間」としか定めていません。1年としてカウントするための従事日数や勤務形態の扱いは、条文にありません。 研修を実施するのは都道府県です。受講申込の際には、実務経験証明書の提出が求められます。群馬県のように、様式と提出先を指定している例があります。この段階で実務経験が要件に足りないと判断されると、受講できません。 実務経験の判定は、最終的に指定権者の判断になります。様式と記載要領は、必ず所在地の自治体のものを使ってください。 指定基準は条例に委任されています。都道府県・指定都市・中核市の条例で上乗せがある可能性もあります。配置の可否は採用の可否に直結します。告示の条文で当たりをつけ、**最後は指定権者に確認する**のが安全です。 ### よくある質問 Q. 実務経験は5年あれば足りますか? A. ルートによります。相談支援業務であれば通算5年以上で足ります。社会福祉主事任用資格者等が行う直接支援業務も、同じく通算5年以上です。これに当たらない人が行った直接支援業務は、通算8年以上が必要になります。告示544号は5年・8年・3年+国家資格等3年の3ルートを並べて定めています。「サビ管は実務経験5年」とだけ覚えていると、8年ルートや国家資格ルートの応募者を取りこぼします。 Q. 看護師や介護福祉士の資格があれば実務経験3年でよいのですか? A. いいえ、3年ではなく2種類の3年が必要です。告示544号一イ(1)が求めるのは2つです。相談支援業務・直接支援業務が通算3年以上であることです。加えて、国家資格等に基づき当該資格に係る業務に従事した期間が通算3年以上であることです。対象は23の資格です。医師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士が含まれます。言語聴覚士、管理栄養士、栄養士、精神保健福祉士、公認心理師も対象です。資格を保有しているだけでは期間に算入されません。その資格に基づく業務に従事した期間であることが必要です。 Q. 基礎研修だけを修了した人をサービス管理責任者として配置できますか? A. 原則としてできません。研修要件が実践研修の修了までを求めているためです。ただし告示544号一ホに例外があります。サービス管理責任者が配置されている事業所が対象です。アセスメントから個別支援計画の原案作成までの業務を、基礎研修修了者に行わせることができます。そのサービス管理責任者に加えて基礎研修修了者を置けば、置くべきサービス管理責任者の数に達したものとみなせます。常勤配置が求められる場合は、そのサービス管理責任者が常勤であることが前提です。 Q. サービス管理責任者が急に退職した場合、代わりの人をすぐ置けますか? A. 実務経験者であれば置けます。やむを得ない事由によりサービス管理責任者が欠けた事業所の特例です。その事由が発生した日から1年間は、実務経験者が研修要件を満たすものとみなされます。根拠は告示544号一ヘです。さらに、みなしが2年間まで延びる場合があります。欠如発生日以前から引き続き当該事業所に配置されていた人であり、発生日の時点で既に基礎研修を修了していることが条件です。この場合は実践研修修了者となるまでの間、欠如発生日から2年間を限度とします。実務経験要件そのものは免除されません。 Q. 更新研修を受け忘れるとどうなりますか? A. 基礎研修修了者とみなされ、配置できなくなります。期日までに更新研修修了者とならなかった実践研修修了者が対象です。根拠は告示544号一ニです。改めて実践研修を修了した日に、再び実践研修修了者となります。研修は都道府県が実施し、受講時期も限られます。実践研修の修了年度から逆算して、5年度ごとの期限を管理してください。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「指定障害福祉サービスの提供に係るサービス管理を行う者として厚生労働大臣が定めるもの等(平成18年9月29日厚生労働省告示第544号。最終改正 令和8年3月31日こども家庭庁・厚生労働省告示第6号、令和8年4月1日適用)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8498&dataType=0&pageNo=1(2026年08月16日確認。一イ(1)(2)、一ニ、一ホ、一ヘおよび別表第一〜第四の全文を確認) - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年08月16日確認。第50条第1項第4号(サービス管理責任者の定義)、第58条第2項〜第5項) - 厚生労働省「サービス管理責任者等研修制度について(社会保障審議会障害者部会 第135回 資料5)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001226975.pdf(2026年08月16日確認。基礎研修26時間・実践研修14.5時間の位置づけ、令和元年度からの研修体系、やむを得ない事由の考え方) - 群馬県「令和8年度サービス管理責任者等基礎研修を開催します」 https://www.pref.gunma.jp/page/651392.html(2026年08月16日確認。受講申込時に「実務経験証明書【研修受講用】」の提出を求めている例として参照) - 埼玉県「埼玉県サービス管理責任者等実践研修」 https://www.pref.saitama.lg.jp/a0605/kensyu/sabikan-jissen.html(2026年08月16日確認。実践研修受講に必要な実務経験が例外的に6か月以上となる場合がある旨の周知例) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## サービス管理責任者が きついと言われる理由と 辞めさせないための配置設計 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/sabikan-teichaku/ カテゴリー: 現場・人材 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.04.01 ### 結論 サービス管理責任者の負担が重くなる理由は、指定基準省令(平成18年厚生労働省令第171号)第58条が、利用者1人ごとにアセスメント(面接必須)、原案の作成、個別支援会議の開催、説明と文書による同意、利用者と相談支援事業者への交付、モニタリング、少なくとも6月に1回以上の見直しという一連の業務を義務づけており、しかも第11項により計画を変更するたびに第2項から第8項までをやり直させる構造になっているためです。加えて解釈通知は1人のサービス管理責任者が担当できる範囲を最大利用者60人までとしています。2026年8月時点で、この配置基準と計画作成の手続は令和8年度報酬改定でも変更されていません。経営者が減らせるのは、基礎研修修了者へのアセスメントと原案作成の分担(告示544号一ホ)、個別支援会議のテレビ電話装置等の活用(第58条第6項)、記録と交付の電磁化(第224条)、直接支援業務との兼務の整理の4つです。ただし兼務については、基準解釈通知の生活介護の項に、利用定員が20人未満である場合には兼務先の職務に係る勤務時間を常勤換算に算入できるという例外が置かれています。就労継続支援A型・B型にこの例外が及ぶかは通知の参照の連鎖から読み取る形になるため、自事業所の扱いは指定権者に確認してください。 - 業務が重くなる根拠: 指定基準省令第58条第2項〜第11項(アセスメントから交付・モニタリングまでの一連の業務) - 見直しの頻度: 少なくとも6月に1回以上。計画を変更する場合は第2項〜第8項を準用(面接・会議・同意・交付をやり直す) - 1人が担当できる範囲: 最大利用者60人まで(基準解釈通知。共同生活援助等への当てはめは指定権者に確認) - 抜けたときの損失: サービス管理責任者欠如減算は翌々月から利用者全員につき所定単位数の100分の70、5月以上で100分の50 - 分担できる業務: アセスメントから原案作成まで(省令第58条第2項〜第5項)は基礎研修修了者に行わせることができる - 兼務と常勤換算: 兼務先の常勤換算に算入できないのが原則。利用定員20人未満は算入可能とする例外が基準解釈通知の生活介護の項にある(定員規模の細分化による適用は不可。就労系への適用は指定権者に確認) - 時点: 令和8年4月1日時点。サービス管理責任者の配置基準と計画作成手続は令和8年度報酬改定で変更なし 根拠: 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」 ### 本文 ## 「きつい」の正体は条文に書いてある サービス管理責任者の負担が重いのは、その人の段取りが悪いからではありません。指定基準省令第58条が、利用者1人ごとに踏むべき手順をすべて書いているからです。第1項は、管理者がサービス管理責任者に個別支援計画の作成に関する業務を担当させるものとすると定め、第2項から第11項までがその中身を並べています。 | 条項 | 業務 | いつ行うか | | --- | --- | --- | | 第2項〜第4項 | アセスメント。利用者に面接して行い、面接の趣旨を説明して理解を得る | 作成時と変更時 | | 第5項 | 原案の作成。意向、総合的な支援の方針、課題、目標と達成時期、留意事項等を記載 | 作成時と変更時 | | 第6項 | 個別支援会議の開催。利用者と担当者等を招集する。テレビ電話装置等の活用可 | 作成時と変更時 | | 第7項 | 原案の説明と、文書による利用者の同意 | 作成時と変更時 | | 第8項 | 利用者と指定特定相談支援事業者等への交付 | 作成時と変更時 | | 第9項・第10項 | モニタリング。定期的に面接し、定期的に結果を記録する。少なくとも6月に1回以上の見直し | 継続 | | 第11項 | 計画を変更する場合は第2項から第8項までを準用 | 変更のつど | 重いのは第11項です。計画を変更するたびに、面接からやり直して会議を開き、文書で同意を得て、また交付します。年2回の見直しで終わる仕事ではなく、利用者の状況が動けば動いた分だけ手順が増えます。定員40人の事業所なら、定期の見直しだけで年80件、そこに新規利用者の計画と途中の変更が乗ります。モニタリングの詳しい要件は[モニタリングの運用](/column/kobetsu-shien-keikaku-monitoring/)で扱っています。 さらに第59条が別の業務を積みます。利用申込者について他の事業者への照会等により心身の状況や利用状況を把握すること、利用者が自立した日常生活を営めるか定期的に検討すること、他の従業者に対する技術指導と助言を行うことの3つです。作成した個別支援計画は、提供した日から5年間の保存義務があります(第75条第2項)。 ## 担当の上限は60人。これが配置の設計値になる 基準解釈通知は、1人のサービス管理責任者が行える計画作成等の業務を最大利用者60人までとしています。配置基準もこの数字に沿っています。 | サービス | 置くべきサービス管理責任者 | | --- | --- | | 療養介護・生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援A型B型・就労定着支援 | 利用者60人以下は1人以上、61人以上は1人に40人またはその端数を増すごとに1人を加えた数以上 | | 共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型・外部サービス利用型) | 利用者30人以下は1人以上、31人以上は1人に30人またはその端数を増すごとに1人を加えた数以上 | | 自立生活援助 | 常勤の場合は60人以下で1人以上、常勤でない場合は30人以下で1人以上 | 利用者の数は前年度の平均値で数えます。表の1行目に挙げたサービスでは、配置したサービス管理責任者のうち1人以上は常勤でなければなりません(宿泊型自立訓練を行う自立訓練(生活訓練)事業所で利用者の支援に支障がない場合を除きます)。一方、共同生活援助と自立生活援助の条文には、サービス管理責任者の常勤要件は置かれていません。共同生活援助の配置基準は30人単位なので、解釈通知の60人という数字をここにどう当てはめるかは通知の文面からは読み取れません。複数事業所の兼務を組む場合は指定権者に確認してください。 兼務については誤解が多いところです。解釈通知は、計画の作成と提供したサービスの客観的な評価という役割の客観性を担保する観点から、サービス管理責任者は原則として直接サービスの提供を行う生活支援員等とは異なる者でなければならないとしています。利用者へのサービス提供に支障がない場合は他の職務に従事できますが、そのとき兼務先の常勤換算に当該サービス管理責任者の勤務時間を算入することは原則としてできません。 ただし通知には例外が置かれています。生活介護の項は、この原則を示したうえで「当該指定生活介護事業所の利用定員が20人未満である場合には、当該他の職務に係る勤務時間を算入することが可能であること」と続け、さらに「この例外的な取扱いの適用を受けるため、定員規模を細分化することは認められない」と釘を刺しています。就労継続支援A型のサービス管理責任者の項は「指定療養介護及び指定生活介護の場合と同趣旨であるため、第四の1の(4)及び第五の1の(4)を参照されたい」とされ、B型の人員基準は省令第199条でA型の第186条を準用したうえで、通知でもA型の項を参照する構成になっています。この参照の連鎖をたどれば定員20人未満のA型・B型にも例外が及ぶと読めますが、20人未満という例外を明記しているのは生活介護の項です。自事業所に当てはまるかどうかは指定権者に確認してください。 定員が20人以上の事業所では、生活支援員が足りないからサービス管理責任者に入ってもらう、という運用は、人員基準上は原則として何も埋めていません。管理者との関係は[管理者とサービス管理責任者の違い](/column/sabikan-kanrisha-chigai/)で整理しています。 ## 1人抜けたときに事業所が失うもの 負担を放置した結果としてサービス管理責任者が辞めると、報酬に2種類の穴が空きます。 | | 個別支援計画未作成減算 | サービス管理責任者欠如減算 | | --- | --- | --- | | 減算の対象 | 該当する利用者につき | 利用者の全員につき | | 始まる時期 | 該当する月から | 欠如の翌々月から。翌月の末日までに満たせば減算しない | | 減算率 | 3月未満は100分の70、連続3月以上は100分の50 | 5月未満は100分の70、連続5月以上は100分の50 | | 終わる時期 | 解消するに至った月の前月まで | 解消するに至った月まで | どちらも所定単位数、つまり各種加算がなされる前の単位数に乗じます。加算を含めた合計に乗じるのではありません。個別支援計画未作成減算は、計画書が存在していても、アセスメントから交付までの一連の業務が適切に行われていなければ対象になります。都道府県知事は遵守するよう指導し、従わない場合は特別な事情がある場合を除いて指定の取消しを検討するとされています。 なお、令和8年4月28日の第55回障害福祉サービス等報酬改定検討チームには、突発的で想定が困難な事象によりやむを得ない事情が生じて人員欠如が発生した場合に、公共職業安定所の活用等により職員の確保に取り組んでいる事業所について、1年に1回に限り3か月を超えない期間は減算を猶予するという取扱いが報告されています。ただし障害福祉分野の説明で挙げられているのは生活支援員や看護職員等で、サービス管理責任者が対象に含まれるかどうかも、いつから適用されるかも、この資料からは読み取れません。 ## 経営者が減らせるのは4つ 手順の数は法令が決めているので減りません。減らせるのは1人に集まる量と、1件あたりの重さです。 第一に、業務の分担です。告示544号の一ホは、サービス管理責任者が配置されている事業所において、第58条第2項から第5項まで、つまりアセスメントから原案の作成までを基礎研修修了者に行わせることができるとしています。しかもそのサービス管理責任者に加えて基礎研修修了者を置くことで、置くべきサービス管理責任者の数に達したものとみなせます。基礎研修は実務経験者となる日まで2年以内の者も受講できるため、育成と負担分散を同時に進められます。要件の詳細は[サービス管理責任者の資格要件](/column/sabikan-shikaku-youken/)にまとめています。 第二に、会議のやり方です。第58条第6項は個別支援会議をテレビ電話装置等を活用して行うことができると明記しています。令和6年度報酬改定で利用者本人の参加が原則になった分、日程調整の負担は増えました。関係者を1か所に集める前提を外すだけで、開催までの時間はかなり変わります。 第三に、記録です。第224条第1項は、この命令で書面によることが規定または想定されているものについて、書面に代えて電磁的記録により行うことができるとしています。第2項は交付、説明、同意、締結等について、相手方の承諾を得たうえで、相手方が利用者である場合は障害の特性に応じた適切な配慮をしつつ、電磁的方法によることができるとしています。5年間の保存義務がある書類を紙で回している事業所は、ここだけで作業時間が動きます。 第四に、兼務の整理です。ここは事業所の利用定員で結論が分かれます。定員20人以上の事業所では、サービス管理責任者が直接支援に入っている時間は兼務先の常勤換算に算入されないうえ、計画作成の客観性という観点でも原則から外れます。人員配置を見直す順番としては、直接支援からサービス管理責任者を外すことが先で、採用はその次になります。 一方、定員20人未満の事業所では、基準解釈通知の生活介護の項が兼務先の常勤換算への算入を認めています。この例外が使えるなら、兼務させた時間を職業指導員・生活支援員の員数として数えられるので、兼務を外すことが人員基準の面で得策とは限りません。ただし前の節に書いたとおり、就労継続支援A型・B型にこの例外が及ぶことは通知に直接書かれておらず、生活介護の項を参照する構成から読み取る形になります。定員を確認したうえで、指定権者がどう扱っているかを聞いてから判断してください。定員規模を細分化して例外の適用を受けることは通知が認めていません。なお、計画作成の客観性を担保するという原則のほうは、定員の大小にかかわらず残ります。採用の設計は[サービス管理責任者の採用](/column/sabikan-saiyou/)で扱います。 配置を見直すときは、事業所全体の年間の期限表を先に作っておくと、負荷が集中する月が見えます。利用者ごとに、直近の計画の作成日と同意日、次の見直し期限(作成から6月以内)、モニタリングの面接予定を1枚に並べる形です。第11項により変更のたびに面接から交付までをやり直すことになるので、変更が見込まれる利用者に印を付けておき、月ごとの件数が偏らないように見直し時期を分散させると、特定の月に業務が寄りません。そのうえで、アセスメントと原案作成のどこまでを基礎研修修了者に渡すかを決め、渡す範囲を書面にしておくと、担当が代わっても引き継げます。会議はテレビ電話装置等を使える相手と使えない相手を分けたうえで日程の取り方を変えると、調整の手数が減ります。ここまで決めたところで、1人あたりの担当利用者数が60人以内に収まっているかを確かめてください。 ## 今の時点で確定していないこと 令和9年度報酬改定に向けた検討は令和8年4月28日に始まり、令和8年6月から8月にかけて関係団体ヒアリングが行われている段階です。検討の進め方を示した資料では、ヒアリングの意見まとめと論点整理を経て、令和9年に改定案をとりまとめる日程が示されています。サービス管理責任者の配置基準や個別支援計画の手続について結論は出ていないため、現行の条文を前提に配置を組んでください。 指定基準は条例に委任されているため、記録の保存期間の起算点など、都道府県・指定都市・中核市の条例で国の省令と異なる定めが置かれていることがあります。年間の期限表を作る前に、所在地の自治体の条例と要綱を確認してください。なお、令和7年10月に始まった[就労選択支援](/column/shurou-sentaku-shien/)は、個別支援計画の作成を不要とし、サービス管理責任者の配置を求めない設計になっています。事業を広げるときは、この違いも配置計画に織り込めます。 ### よくある質問 Q. サービス管理責任者の業務量は、事業所の工夫で減らせますか? A. 一部は減らせます。指定基準省令第58条が定めるアセスメント、個別支援会議、説明と文書同意、交付、モニタリングそのものは省略できませんが、告示544号一ホにより、アセスメントから原案作成まで(第58条第2項〜第5項)は基礎研修修了者に行わせることができます。個別支援会議は第58条第6項によりテレビ電話装置等を活用でき、記録の作成・保存は第224条第1項により電磁的記録で行えます。減らせるのは手順の重さであって、手順の数ではありません。 Q. サービス管理責任者に生活支援員を兼務させてもよいのですか? A. 利用者へのサービス提供に支障がない場合に限り可能ですが、人員基準の面で意味があるかどうかは事業所の利用定員によって変わります。基準解釈通知は、計画の作成と提供したサービスの客観的な評価という役割の客観性を担保する観点から、サービス管理責任者は原則として直接サービスの提供を行う生活支援員等とは異なる者でなければならないとしています。そのうえで、兼務先の職務に係る常勤換算に当該サービス管理責任者の勤務時間を算入することは原則としてできないとしつつ、生活介護の項には「当該指定生活介護事業所の利用定員が20人未満である場合には、当該他の職務に係る勤務時間を算入することが可能であること」という例外を置き、この例外の適用を受けるために定員規模を細分化することは認められないとも明記しています。就労継続支援A型のサービス管理責任者の項はこの生活介護の項を参照する形になっており、B型の人員基準はA型の規定を準用しています。定員20人未満の就労系事業所で例外を使えるかどうかは、指定権者に確認してください。 Q. 1人のサービス管理責任者が何人まで担当できますか? A. 基準解釈通知は最大利用者60人までとしています。配置基準も、療養介護・生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援A型B型・就労定着支援では利用者60人以下で1人以上、61人以上は40人またはその端数を増すごとに1人を加えた数以上と定めています。共同生活援助は利用者30人以下で1人以上、31人以上は30人ごとに1人追加です。共同生活援助に60人という数字をどう当てはめるかは通知から読み取れないため、指定権者に確認してください。 Q. サービス管理責任者が退職すると、いつから減算になりますか? A. 欠如が生じた月の翌々月からです。ただし翌月の末日において人員基準を満たすに至っている場合は減算されません。減算は利用者の全員について行われ、減算が適用される月から5月未満は所定単位数の100分の70、連続して5月以上になると100分の50です。所定単位数は各種加算がなされる前の単位数で、加算を含めた合計に乗じるものではありません。常勤や専従といった員数以外の要件を満たしていない場合も同じ扱いになります。 Q. 令和9年度の報酬改定でサービス管理責任者の負担は軽くなりますか? A. 2026年8月16日時点では分かりません。令和9年度報酬改定に向けた検討は令和8年4月28日の第55回障害福祉サービス等報酬改定検討チームから始まり、令和8年6月から8月にかけて関係団体ヒアリングが行われている段階です。検討の進め方を示した資料では、ヒアリングの意見まとめと論点整理を経て令和9年に改定案をとりまとめる日程が示されており、サービス管理責任者の配置や個別支援計画に関する結論は出ていません。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年08月16日確認。第58条(計画の作成等)、第59条(責務)、第75条第2項(記録の5年保存)、第186条(就労継続支援A型の員数。第199条によりB型に準用)、第224条(電磁的記録等)の条文を確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(平成18年12月6日障発第1206001号)【新旧対照表】」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001472116.pdf(2026年08月16日確認。第四の1の(6)サービス管理責任者と他の職務との兼務について、第四の1の(7)管理者の専従、第五の1の(4)生活介護のサービス管理責任者(利用定員20人未満の場合の常勤換算算入の例外と、定員規模の細分化の禁止)、第十一の1の(2)就労継続支援A型、第十二の1就労継続支援B型の全文を確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービスの提供に係るサービス管理を行う者として厚生労働大臣が定めるもの等(平成18年9月29日厚生労働省告示第544号。最終改正 令和8年3月31日こども家庭庁・厚生労働省告示第6号、令和8年4月1日適用)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8498&dataType=0&pageNo=1(2026年08月16日確認。一ホ(基礎研修修了者への業務分担と員数算入)、一ヘ(やむを得ない事由による欠如時のみなし)) - こども家庭庁「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(平成18年10月31日障発第1031001号)【新旧対照表】」 https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/253aba4f-3ce0-4aa1-a777-3d42440f1ca2/97015afc/20250812_policies_shougaijishien_shisaku_hoshukaitei_123.pdf(2026年08月16日確認。第二の2(8)人員欠如減算、第二の2(10)個別支援計画未作成減算) - 厚生労働省「やむを得ない事情における人員欠如に係る特例的な取扱い(報告)(第55回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 資料3)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001696191.pdf(2026年08月16日確認。令和8年4月28日開催。障害福祉分野における人員基準欠如減算の特例的な取扱いの説明を確認) - 厚生労働省「令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に向けた検討の進め方について(案)(第55回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 資料5)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001696206.pdf(2026年08月16日確認。令和8年4月の検討開始から令和9年のとりまとめまでの日程) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## サービス等利用計画と個別支援計画 作る人も根拠条文も違う 2つの計画の関係 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/service-riyou-keikaku/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.04.01 ### 結論 サービス等利用計画は、指定特定相談支援事業所の相談支援専門員が作る計画です(障害者総合支援法第5条第23項)。個別支援計画は、サービス事業所のサービス管理責任者が作る計画です(指定障害福祉サービス基準第58条。就労継続支援B型は第202条が準用)。作る人も根拠条文も別で、どちらかがどちらかを兼ねることはできません。 省令の条文には「サービス等利用計画に沿って個別支援計画を作れ」という一文はありません。2026年8月16日時点の現行の省令(令和7年10月1日施行版)を通しで確認しても、「サービス等利用計画」という語は一度も出てきません。義務の根拠は解釈通知の側にあり、サービス管理責任者は指定特定相談支援事業者等が作成したサービス等利用計画を踏まえて個別支援計画の原案を作成するものとされています。 - 作る人: サービス等利用計画は相談支援専門員/個別支援計画はサービス管理責任者 - 根拠条文: 法第5条第23項・施行規則第6条の15/指定障害福祉サービス基準第58条(B型は第202条で準用) - 作る順序: 支給決定の前にサービス等利用計画案、決定後に本計画。個別支援計画はそれを踏まえて原案を作る(解釈通知 第四の3の(7)②) - 交付の義務: 個別支援計画は利用者と指定特定相談支援事業者等に交付する(第58条第8項。令和6年度改定で義務付け) - 量の上限: 契約支給量の総量は受給者証の支給量を超えてはならない(第10条第2項) - 見直しの周期: 個別支援計画はB型で少なくとも6月に1回以上/サービス等利用計画のモニタリング期間は市町村が定める(B型利用者の標準は6月間、65歳以上は3月間。介護保険の居宅介護支援等の利用者を除く) 根拠: 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(平成18年12月6日障発第1206001号)」第四の3の(7) ### 本文 ## 2つの計画は、根拠にしている法令からして別物 サービス等利用計画の根拠は、障害者総合支援法第5条第23項です。同項は「サービス利用支援」を、申請者の心身の状況や意向等を勘案してサービス等利用計画案を作成し、支給決定等が行われた後に関係者との連絡調整を行ったうえでサービス等利用計画を作成すること、と定義しています。これを行うのが指定特定相談支援事業所の相談支援専門員です。 個別支援計画の根拠は、指定障害福祉サービス基準(平成18年厚生労働省令第171号)第58条です。就労継続支援B型では第202条が第57条から第60条までを準用し、条文中の「療養介護計画」を「就労継続支援B型計画」と読み替えて適用します。作成業務は、管理者がサービス管理責任者に担当させる建て付けです(第58条第1項)。 つまり、片方は市町村の支給決定を挟んで生活全体を組み立てる計画、もう片方は支給決定を受けたあとに自事業所の中で提供する支援を具体化する計画です。作成者の所属も監督する法令も違うため、片方があればもう片方が要らない、という関係にはなりません。 ## 誰が何を書くのかを並べる 省令が定める記載事項と手続を、2つの計画で並べると次のようになります。 | | サービス等利用計画 | 個別支援計画 | |---|---|---| | 作る人 | 相談支援専門員 | サービス管理責任者 | | 根拠 | 法第5条第23項、施行規則第6条の15、指定計画相談支援基準第15条 | 指定障害福祉サービス基準第58条(B型は第202条で準用) | | 対象範囲 | 障害福祉サービス以外の福祉サービスや地域の活動も含めた生活全般 | 自事業所が提供する支援の内容 | | 主な記載事項 | 本人と家族の意向、総合的な援助の方針、生活全般の解決すべき課題、目標と達成時期、サービスの種類・内容・量・日時、利用料、担当する者、留意事項 | 本人と家族の意向、総合的な支援の方針、生活全般の質を向上させるための課題、目標と達成時期、提供上の留意事項 | | 会議 | サービス担当者会議(第15条第2項第12号) | 個別支援会議(第58条第6項) | | 同意 | 文書により利用者等の同意(第13号) | 文書により利用者の同意(第58条第7項) | | 交付先 | 利用者等と担当者(第14号) | 利用者と指定特定相談支援事業者等(第58条第8項) | | 見直し | 市町村が定めるモニタリング期間ごと | 少なくとも6月に1回以上(B型の場合) | サービス等利用計画の記載事項は、案の段階では施行規則第6条の15第1項の6項目で、支給決定後の本計画では第2項によって「利用料」と「これを担当する者」が加わります。担当する者、つまり事業所名が計画に載るのは支給決定のあとだという点は、受け入れ前の問い合わせ対応で押さえておくと話が早くなります。 個別支援計画の側の手順は[個別支援計画とは?運営基準が定める作成の手順と原案に書くべき記載事項](/column/kobetsu-shien-keikaku/)で条文に沿って整理しています。相談支援事業所の側の仕組みは[計画相談支援](/column/keikaku-soudan-shien/)を参照してください。 ## 「サービス等利用計画に沿って作れ」と条文は書いていない 個別支援計画をサービス等利用計画に沿わせる法的義務があるのかは、省令の条文だけを追っても答えが見つかりません。e-Gov法令検索が公開している指定障害福祉サービス基準の全文(令和7年10月1日施行の版)を本則から附則まで検索しても、「サービス等利用計画」という語は一度も出てきません。省令が事業所に課しているのは、作成した個別支援計画を指定特定相談支援事業者等に交付すること(第58条第8項)、市町村や相談支援事業者が行う連絡調整にできる限り協力すること(第12条)です。 義務の根拠は解釈通知の側にあります。基準解釈通知の第四の3の(7)②は、サービス管理責任者の役割として次のように書いています。指定特定相談支援事業者等が作成したサービス等利用計画を踏まえて、当該事業所以外の保健医療サービス等との連携も含めて計画の原案を作成する、というものです。同じ箇所は計画の交付についても、サービス等利用計画を踏まえた個別支援計画の作成等を可能とするため、相談支援事業者が実施するサービス担当者会議に参加して必要な情報を共有し、相互に連携を図ることを求めています。就労継続支援B型については、第十二の3の(2)がこの第四の3の(6)から(9)までを参照する形になっているので、そのままB型に効きます。 なお、個別支援計画を相談支援事業所へ交付する義務は令和6年度報酬改定で新設されたものです。厚生労働省の改定資料には、障害児者の状況を踏まえたサービス等利用計画の作成を推進する観点から交付を義務付ける、と趣旨が書かれています。それ以前の条文(令和5年4月1日施行の版)では、第58条第7項が「当該療養介護計画を利用者に交付しなければならない」とだけ定めていて、交付先に相談支援事業者は入っていませんでした。令和6年4月1日施行の改正で「利用者及び指定特定相談支援事業者等に交付」となり、現在の第58条第8項になっています。 一方、相談支援専門員がサービス等利用計画を担当者に交付する義務は、この改正より前からありました。令和5年4月1日施行の版では指定計画相談支援基準第15条第2項第13号、現在は同項第14号です。つまり、相談支援事業所から事業所へ計画が渡る仕組みは以前からあり、事業所から相談支援事業所へ渡す義務が令和6年4月1日に加わったことで、両方向の交付が省令上そろいました。 ## 食い違いが起きたとき、どこで直すか 2つの計画に上下関係を定めた条文はありません。ただし量については答えが決まっています。事業所が契約できる量の総量は、受給者証に記載された支給量を超えられません(第10条第2項)。個別支援計画に週5日の通所と書いても、支給量が月15日であれば、超えた分は報酬の対象になりません。受給者証で支給決定の有無、有効期間、支給量を確かめる義務が第14条にあるのは、そのためです。受給者証の読み方は[障害福祉サービス受給者証](/column/shogai-fukushi-jukyusha-sho/)で扱っています。 支給量そのものを変える必要があるときは、事業所が単独で決められる話ではなくなります。相談支援専門員がモニタリングでサービス等利用計画を見直し、必要に応じて支給決定の変更申請を勧奨する、というのが法第5条第24項が定める継続サービス利用支援の流れです。事業所の側は、支援の実態と計画のずれをモニタリングで拾い、担当者会議やモニタリング結果の交換を通じて相談支援専門員に伝えることになります。事業所側のモニタリングの詰め方は[個別支援計画のモニタリング](/column/kobetsu-shien-keikaku-monitoring/)にまとめました。 解釈通知は、モニタリングに際しても相談支援事業者との相互連携を求めており、モニタリング結果を相互に交付すること、サービス担当者会議と個別支援会議を合同で開催するか相互の会議に出席することを、連携強化の方法として挙げています。合同開催が認められている点は、日程調整の負担を減らす材料として押さえておく価値があります。 サービス等利用計画の写しは、利用申込みを受けた時点で担当の相談支援事業所に依頼しておく方法があります。相談支援専門員には作成した計画を担当者に交付する義務があるので(指定計画相談支援基準第15条第2項第14号)、届くのを待つよりも、こちらから依頼するほうが早く動けます。受け取った写しを利用者ごとのファイルの先頭に綴じておけば、個別支援計画の原案を書くときに横に置いて確認できます。 受給者証の支給量と契約支給量の突き合わせは、いつ行うかをあらかじめ決めておくと抜けにくくなります。契約時と支給決定の更新時の2回を最低ラインに置く組み方なら、支給量が動く場面をひととおり拾えます。個別支援計画の目標に通所日数を書き込む前に支給量を見る順番にしておくと、書き直しが減ります。 ## セルフプランの利用者は、連携相手がいない セルフプランは、身近な地域に指定特定相談支援事業者がない場合か、申請者本人がその提出を希望する場合に限って認められます(法第22条第5項、施行規則第12条の4)。この場合、事業所には情報をやり取りする相談支援専門員がいません。第58条第8項の交付先である指定特定相談支援事業者等が存在しないためです。 さらに、厚生労働省の事務処理要領は、指定特定相談支援事業者以外の者がサービス等利用計画案を作成した場合は継続サービス利用支援の対象外になると明記しています。相談支援側の定期的なモニタリングが働かないということです。生活状況の変化に気づく機能を事業所のモニタリングだけで担うことになるので、セルフプランの利用者が何名いるかは、受け入れ時に把握しておく価値があります。 ### よくある質問 Q. 個別支援計画は、サービス等利用計画に沿って作らなければならないのですか。 A. 省令の条文に明文はありませんが、解釈通知が「踏まえて作る」ことを求めています。指定障害福祉サービス基準(平成18年厚生労働省令第171号)の本文には「サービス等利用計画」という語が一度も出てきません。一方、基準解釈通知の第四の3の(7)②は「サービス管理責任者は、指定特定相談支援事業者等が作成したサービス等利用計画を踏まえて、当該指定療養介護事業所以外の保健医療サービス又はその他の福祉サービス等との連携も含めて、療養介護計画の原案を作成し」と定めており、就労継続支援B型はこの「療養介護計画」を「就労継続支援B型計画」と読み替えたうえで、この部分を参照する扱いです。 Q. サービス等利用計画の写しが届いていません。個別支援計画を先に作ってもよいですか。 A. 作成を止める規定はありませんが、写しを取り寄せてから仕上げるのが安全です。個別支援計画の作成手順を定めた第58条には、サービス等利用計画の到着を待てという条件はありません。ただし解釈通知はサービス等利用計画を踏まえた作成を前提にしており、相談支援専門員には作成したサービス等利用計画を担当者に交付する義務があります(指定計画相談支援基準第15条第2項第14号)。届いていない場合は、担当の相談支援事業所に交付を求めてください。 Q. サービス等利用計画と個別支援計画の内容が食い違ったら、どちらに合わせるのですか。 A. 上下関係を定めた条文はないため、担当者会議で調整して両方を直します。ただし量については答えが決まっていて、事業所が契約できる量の総量は受給者証に記載された支給量を超えられません(第10条第2項)。支給量そのものを変える必要があるときは、相談支援専門員がサービス等利用計画を見直し、利用者に市町村への変更申請を勧奨する流れになります(法第5条第24項)。申請するのは利用者本人または保護者です。 Q. 作った個別支援計画を相談支援事業所に渡さないといけませんか。 A. はい、交付は義務です。第58条第8項は、サービス管理責任者が個別支援計画を作成した際には、利用者及び指定特定相談支援事業者等に交付しなければならないと定めています。これは令和6年度報酬改定で新たに義務付けられたもので、厚生労働省の改定資料でも「サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者が作成した個別支援計画について相談支援事業者への交付を義務付け」と説明されています。 Q. セルフプランの利用者の場合はどうなりますか。 A. 個別支援計画の作成義務は変わりませんが、連携相手がいません。セルフプランは、身近な地域に指定特定相談支援事業者がない場合か、申請者本人がその提出を希望する場合に限って認められるものです(法第22条第5項、施行規則第12条の4)。この場合は相談支援専門員が付かないため、第58条第8項の交付先となる指定特定相談支援事業者等が存在せず、厚生労働省の事務処理要領では継続サービス利用支援(相談支援側のモニタリング)の対象外とされています。利用者の状況の変化に気づく役割を、事業所側のモニタリングだけで担うことになります。 ### 根拠資料 - e-Gov法令検索(デジタル庁)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第3条、第10条、第12条、第14条、第26条、第57条〜第59条、第75条、第202条」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年08月16日確認(令和7年10月1日施行の版。本則から附則まで全文を検索し「サービス等利用計画」の語がないことを確認)。令和5年4月1日施行の版(第58条第7項は交付先が利用者のみ)と令和6年4月1日施行の版(第58条第8項で指定特定相談支援事業者等を追加)も同じ方法で照合) - 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(平成18年12月6日障発第1206001号)新旧対照表(令和6年3月29日改正)第四の3の(7)、第十二の3の(2)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001472116.pdf(2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索(デジタル庁)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第5条第23項・第24項、第22条第4項〜第8項」 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123(2026年08月16日確認(令和8年6月25日施行の版)) - e-Gov法令検索(デジタル庁)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(平成18年厚生労働省令第19号)第6条の15、第6条の16、第12条の4」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100019(2026年08月16日確認(令和8年5月20日施行の版)) - e-Gov法令検索(デジタル庁)「障害者総合支援法に基づく指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第28号)第15条、第16条」 https://laws.e-gov.go.jp/law/424M60000100028(2026年08月16日確認(令和7年10月1日施行の版)。第15条第2項第14号「相談支援専門員は、サービス等利用計画を作成した際には、当該サービス等利用計画を利用者等及び担当者に交付しなければならない」の出典。同じ規定は令和5年4月1日施行の版では第15条第2項第13号) - 厚生労働省「障害者総合支援法に基づく指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準について(解釈通知)新旧対照表」 https://www.mhlw.go.jp/content/001469879.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」 https://www.mhlw.go.jp/content/001216034.pdf(2026年08月16日確認(意思決定支援の推進・個別支援計画の相談支援事業者への交付義務付け)) - 厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領)令和8年7月版」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001721666.pdf(2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 身体拘束適正化検討委員会は 年1回以上。指針・研修・記録が そろわないと減算になる URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shintai-kousoku-tekiseika/ カテゴリー: 現場・人材 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-09-12 制度基準日: 2026.05.28 ### 結論 身体拘束等の適正化のための体制整備は、2026年8月16日時点で、身体拘束を行っているかどうかに関係なく指定基準上の義務です。指定基準(平成18年厚生労働省令第171号)第35条の2第3項は、次の3つを求めています。①身体拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を定期的に開催して結果を従業者に周知徹底すること。②身体拘束等の適正化のための指針を整備すること。③従業者に対し身体拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること。この規定は就労継続支援B型にも第202条により準用されており、通所系サービスだから不要ということはありません。 身体拘束廃止未実施減算が発動するのは、拘束を行ったこと自体ではなく、記録・委員会・指針・研修のいずれかが欠けた場合です。減算率は所定単位数の100分の10(施設・居住系)または100分の1(訪問・通所系)で、事実が生じた月の翌月から改善が認められた月までの間、利用者全員について適用されます。委員会と研修は「1年に1回以上」が具体的な基準として留意事項通知に明記されています。 - 根拠条文: 指定基準(平成18年厚生労働省令第171号)第35条の2。就労継続支援B型は第202条により準用 - 義務化の時期: 適正化措置(委員会・指針・研修)は令和4年(2022年)4月1日から義務。令和4年3月31日までは努力義務 - 委員会: 身体拘束適正化検討委員会。1年に1回以上開催。テレビ電話装置等の活用可。法人単位での設置・開催も可。虐待防止委員会と一体的に開催してもよい - 研修: 1年に1回以上。新規採用時には必ず実施。虐待防止研修で身体拘束等の適正化を扱えば実施したものとみなして差し支えない - 記録: やむを得ず拘束する場合は態様・時間・利用者の心身の状況・緊急やむを得ない理由その他必要な事項を記録。提供日から5年間保存 - 3要件: 切迫性・非代替性・一時性の3つをすべて満たし、かつ組織として要件を確認した手続きを行った旨を記録すること - 減算率: 施設・居住系は所定単位数の100分の10、訪問・通所系は100分の1。令和6年3月31日までは1日につき5単位だった - 減算期間: 事実が生じた月の翌月から改善が認められた月まで、利用者全員について減算。改善計画を提出し、事実が生じた月から3月後に改善状況を報告する 根拠: 厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日障発第1031001号・最終改正 令和8年5月28日) ### 本文 運営指導の準備で書類を並べていて、「身体拘束等に関する記録」「委員会議事録」という行で手が止まる。就労継続支援B型の経営者が最初に迷うのは、たぶんここです。拘束を1件も行っていない事業所に、なぜ委員会と指針と研修が要るのか。素朴な疑問です。 僕は埼玉県志木市で就労継続支援B型を運営しています。2026年5月に開所した、IT・パソコン作業が中心の事業所です。利用者は精神・発達障害のある方が中心です。この記事は、指定基準と厚生労働省の通知を読んで、経営者が押さえる順に並べ直したものです。 先に答えを書きます。委員会・指針・研修の3つは、拘束の有無に関係なく指定基準上の義務です。身体拘束廃止未実施減算が発動するのも、拘束したことではなく、記録・委員会・指針・研修のいずれかが欠けたときです。 ## 拘束が1件もなくても、委員会と指針と研修は要るのか 要ります。指定基準第35条の2第3項が掲げる委員会・指針・研修の3つは、拘束の有無と切り離された義務だからです。 言葉の確認から入ります。検索では「身体拘束適正化委員会」と呼ばれることが多い言葉です。厚生労働省の解釈通知や留意事項通知が使う呼称は「身体拘束適正化検討委員会」です。 体制整備を定めているのは、指定基準(平成18年厚生労働省令第171号)第35条の2です。第1項が禁止、第2項がやむを得ず拘束する場合の記録義務、第3項が適正化措置です。第3項が掲げているのが、委員会・指針・研修の3つになります。 経営者が押さえるべきなのは、第3項が第1項・第2項と切り離された独立の義務だという点です。**拘束を1件も行っていない事業所**でも、第3項の3つは講じなければなりません。適正化措置が義務になったのは令和4年(2022年)4月1日です。令和4年3月31日までは努力義務でした。 委員会の作り方にも決まりがあります。専任の身体拘束等の適正化対応策を担当する者を決めておくことが必要とされています。第三者や専門家の活用に努めることともされていて、挙がっているのは医師(精神科専門医等)、看護職員等です。 負担を軽くする決まりも置かれています。事業所単位でなく法人単位での設置・開催が可能です。虐待防止委員会の中で身体拘束等の適正化を検討することをもって、委員会を開催しているとみなして差し支えないとされています。これは留意事項通知に明記されています。 うちはサービス管理責任者を管理者と兼務している常勤1名の体制です。小さい事業所で委員会を別立てにすると、それだけで回らなくなると思います。規模の小さい事業所からすると、**法人単位と一体開催を認める扱い**は実務に即した決まりだと思っています。 ## 就労継続支援B型にも、この3つは準用されるのか 準用されます。指定基準第202条が「第三十五条の二から第四十一条まで」を就労継続支援B型の事業に準用しているためです。条文上まったく争いのない部分です。 書類の側からも確かめられます。令和8年(2026年)6月8日に「確認項目及び確認文書」が新設されました。その就労継続支援B型シートには、「身体拘束等の禁止(第202条)(第35条の2を準用)」として5つの確認項目が並んでいます。確認文書として挙がっているのは次のものです。 - 個別支援計画 - 身体拘束等に関する記録 - 委員会議事録 - 指針 - 研修を実施したことが分かる書類 解釈通知はさらに踏み込んでいます。委員会に報告された事例がない場合の扱いにも触れていて、未然防止の観点から利用者に対する支援の状況等を確認することが必要としています。報告がゼロの年でも**支援状況の確認は必要**だ、という書き方です。 拘束ゼロの事業所の委員会を「今年も0件でした」で終わらせない、という意味だと思います。支援の状況を点検する場として使うことが想定されている、というのが僕の読み方です。年1回しか開かないなら、その1回の中身はここで決まります。 数字も見ておきます。令和6年度の国の全数調査では、障害者福祉施設従事者等による虐待の事実が認められたのは1,267件でした。このうち就労継続支援B型が99件(7.8%)を占めています。身体的虐待654件のうち、身体拘束を含むものは104件ありました。通所のサービスだから縁遠い、とまでは言えない数字だと受け止めています。 ## 減算はどんなときに発動して、いくら引かれるのか 身体拘束廃止未実施減算が発動するのは、記録・委員会・指針・研修のいずれかが欠けたときです。減算率は施設・居住系が所定単位数の100分の10、訪問・通所系が100分の1です。 留意事項通知は、身体拘束廃止未実施減算の発動事由を4つに整理しています。 - 求められる身体拘束等に係る記録が行われていない場合 - 身体拘束適正化検討委員会を1年に1回以上開催していない場合 - 身体拘束等の適正化のための指針を整備していない場合 - 身体拘束等の適正化のための研修を1年に1回以上実施していない場合 1つ目には、通知がわざわざ注意を書き添えています。「施設等において身体拘束等が行われていた場合ではなく、記録が行われていない場合である点」に留意すること、としています。1つ目の分かれ目は**拘束の有無ではなく記録の有無**だ、と読める書き方です。 率は2区分に分かれています。 | 区分 | 対象サービス | 減算率 | | --- | --- | --- | | 施設・居住系 | 障害者支援施設(施設入所支援のほか障害者支援施設が行う各サービスを含む)、療養介護、障害児入所施設、共同生活援助、宿泊型自立訓練 | 所定単位数の100分の10 | | 訪問・通所系 | 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、生活介護、短期入所、自立訓練(宿泊型を除く)、就労移行支援、就労継続支援A型・B型 ほか | 所定単位数の100分の1 | 同じ就労継続支援B型でも、**障害者支援施設が行うもの**は100分の10です。それ以外は100分の1になります。令和8年度の報酬算定構造でも、就労継続支援B型サービス費の減算欄は2本立てです。「障害者支援施設が行う場合」が×90/100、「障害者支援施設以外が行う場合」が×99/100と載っています。 令和6年3月31日までは1日につき5単位の定額でした。古い解説を下敷きにした自己点検表は差し替えが必要です。 効き方も押さえておきます。4つのいずれかに該当する事実が生じた場合、速やかに改善計画を都道府県知事等に提出することとされています。そのうえで、事実が生じた月から3月後に改善状況を報告します。減算は、事実が生じた月の翌月から改善が認められた月までの間、利用者全員について所定単位数から行われます。 計算の順序にも決まりがあります。乗じる相手は、各種加算がなされる前の単位数です。複数の減算事由に該当する場合は、各種減算をした後の単位数に率を乗じます。さらに通知は、該当する事実が継続して改善の指導にも従わない場合に触れています。特別な事情がある場合を除き、指定の取消しを検討するものとしています。 100分の1なら小さい、という受け取り方は危ういと思っています。対象は利用者全員で、改善が認められる月まで続くからです。逆に言えば、発動事由は4つとも体制の側にあります。手を打てる範囲にある、というのが救いです。 ## やむを得ず拘束するとき、何を満たして何を記録するのか やむを得ず身体拘束を行う場合は、切迫性・非代替性・一時性の3要件をすべて満たすこととされています。かつ、組織としてそれらの要件の確認等の手続きを行った旨を記録しなければならないとされています。 3要件の中身は、「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月)が説明しています。 - 切迫性 … 生命・身体・権利が危険にさらされる可能性が著しく高いこと - 非代替性 … 拘束せずに支援する全ての方法を検討したうえで、他に代替手法がないことを複数職員で確認すること - 一時性 … 本人の状態像に応じて必要とされる最も短い拘束時間を想定すること 手続きとして挙げられているのは次の4つです。 - 個別支援会議等で組織として検討・決定すること - 個別支援計画に態様及び時間と緊急やむを得ない理由を記載すること - 本人や家族に十分に説明して了解を得ること - 市町村の障害者虐待防止センター等に相談・報告すること 並べて読むと、**判断を職員個人に負わせない設計**が求められていることが分かります。現場の職員が一人で決めて実行する形は、この手続きとかみ合いません。会議、計画、説明、相談と、確認する相手が要件の側から指定されているからです。 逆向きの注意もあります。手引きは、肢体不自由、特に体幹機能障害がある利用者の着座姿勢を保持するために、ベルト類を装着する行為について書いています。残存機能を活かせるよう安定した姿勢を保つ工夫として行う場合です。これは「やむを得ない身体拘束」ではなく、行わないことがかえって虐待に該当するとしています。何でも拘束扱いにして外すのが正解ではありません。 ## 指針には何を書けばよいのか 指針に盛り込む項目は、解釈通知が7つ示しています。基本的な考え方から、利用者等に対する当該指針の閲覧に関する基本方針までの7つです。 - ①基本的な考え方 - ②身体拘束適正化検討委員会その他事業所内の組織に関する事項 - ③職員研修に関する基本方針 - ④事業所内で発生した身体拘束等の報告方法等の方策に関する基本方針 - ⑤身体拘束等発生時の対応に関する基本方針 - ⑥利用者等に対する当該指針の閲覧に関する基本方針 - ⑦その他必要な基本方針 僕が目を留めたのは⑥です。閲覧の基本方針が項目に入っているので、指針は引き出しにしまうものではないと分かります。利用者や家族が見られる状態にしておくもの、と読むのが素直です。 紛らわしい点を1つ補います。虐待防止のための指針は、解釈通知上「作成することが望ましい」とされているだけで、省令上の義務ではありません。省令上の義務があるのは、**身体拘束等の適正化のための指針**のほうです。この2つは名前が似ていますが、根拠の強さは同じではありません。 1年単位の段取りに落とすと、次の順序になります。 まず年度のはじめに、虐待防止委員会と身体拘束適正化検討委員会を一体で開く日を決めます。年1回以上、日付まで年間計画に書き込んでおくと、期末に慌てずに済みます。通知が一体開催を認めているので、別々に組む必要はありません。 次に、その委員会の議題を2つ固定しておくと確実です。今期の身体拘束等の報告件数と、報告がない場合の支援状況の確認です。報告ゼロでも支援状況の確認は必要だと解釈通知が明記しています。議事録に検討の跡が残る形にしておく必要があります。 研修は、虐待防止研修に身体拘束等の適正化を組み込んで年1回以上とします。新規採用時には必ず実施して、受講記録を残します。委員会の議事録は5年間保存です。 結局、委員会・指針・研修・記録の4つを1年の型にしてしまうことが一番大事だと思っています。拘束の有無で要否が変わらない以上、思い出したときにやる運用では続きません。年度のはじめに日付を決めておき、虐待防止側と一体で開き、議事録を5年残します。ここまで型にすれば、運営指導で書類を求められても探す場所は決まっています。 ## あわせて読む 体制側の書類は、この記事だけでは揃いません。近いところから3本挙げます。 - [虐待防止の体制整備](/column/gyakutai-boushi-taisei/) … 委員会・研修・担当者の3点。身体拘束の委員会と一体で開くなら、先に読む相手はここです - [障害福祉のBCP](/column/bcp-shogai-fukushi/) … 業務継続計画。計画・周知・訓練・見直しの記録が、同じ形で問われます - [運営指導とは何か](/column/unei-shido/) … これらの書類がまとめて確認される場面の全体像です ### よくある質問 Q. 就労継続支援B型のように身体拘束がまず起きないサービスでも、委員会や指針は必要ですか。 A. 必要です。指定基準第202条は第35条の2を就労継続支援B型に準用しています。委員会の定期開催・指針の整備・研修の定期実施は、いずれも拘束の有無に関係なく求められます。厚生労働省の解釈通知は、身体拘束等の報告事例がない場合にも、未然防止の観点から利用者に対する支援の状況等を確認することが必要としています。令和8年6月8日付けで「確認項目及び確認文書」が新設されました。その就労継続支援B型シートにも、身体拘束等に関する記録、委員会議事録、指針、研修を実施したことが分かる書類が確認文書として並んでいます。 Q. 身体拘束適正化委員会は年に何回開けばよいですか。 A. 1年に1回以上です。厚生労働省の留意事項通知は、身体拘束適正化検討委員会を「定期的に開催していない場合」を減算事由として挙げています。そのうえで、具体的には1年に1回以上開催していない場合とすると明記しています。委員会は事業所単位でなく法人単位で設置・開催してよいとされています。虐待防止委員会と一体的に設置・運営すること(虐待防止委員会で身体拘束等の適正化を検討する場合を含む)をもって、開催しているとみなして差し支えないとされています。テレビ電話装置等を活用して行うことも認められています。 Q. 身体拘束をしていなくても身体拘束廃止未実施減算になりますか。 A. なります。減算の発動事由は次の4つです。①求められる身体拘束等に係る記録が行われていない場合。②身体拘束適正化検討委員会を1年に1回以上開催していない場合。③身体拘束等の適正化のための指針を整備していない場合。④身体拘束等の適正化のための研修を1年に1回以上実施していない場合。拘束を行ったこと自体は要件になっていません。留意事項通知は①について、「施設等において身体拘束等が行われていた場合ではなく、記録が行われていない場合である点」に留意するよう明記しています。 Q. 身体拘束廃止未実施減算はいくらで、いつからいつまで続きますか。 A. 減算率は所定単位数の100分の10または100分の1です。施設・居住系が100分の10、訪問・通所系が100分の1です。事実が生じた月の翌月から改善が認められた月までの間、利用者全員について適用されます。事実が生じた場合は、速やかに改善計画を都道府県知事等に提出することとされています。事実が生じた月から3月後に、改善計画に基づく改善状況を報告することともされています。令和6年3月31日までは1日につき5単位の定額でした。令和6年4月1日から率方式に変わりました。 Q. 虐待防止の研修と身体拘束の研修は別々にやらなければいけませんか。 A. 分けなくて構いません。厚生労働省の解釈通知は、他の研修プログラムにおいて身体拘束等の適正化について取り扱う場合に触れています。例えば虐待防止に関する研修において身体拘束等の適正化について取り扱う場合です。この場合は、身体拘束等の適正化のための研修を実施しているものとみなして差し支えないとしています。ただし研修の実施内容を記録することは必要とされています。定期的な研修(年1回以上)に加えて、新規採用時には必ず実施することが重要とされています。 ### 根拠資料 - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第35条の2・第202条」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(平成18年10月31日障発第1031001号・令和8年一部改正 新旧対照表)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(2026年08月16日確認。身体拘束廃止未実施減算の対象・率・発動事由・減算期間) - 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(解釈通知・令和6年度報酬改定 新旧対照表)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001494357.pdf(2026年08月16日確認。(26)身体拘束等の禁止) - 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」 https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001217865.pdf(2026年08月16日確認。5単位から10%・1%への見直しと対象サービスの区分) - 厚生労働省「確認項目及び確認文書(令和8年6月8日・サービス別Excel)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260608-22.xlsx(2026年08月16日確認。就労継続支援B型シート「身体拘束等の禁止」) - 厚生労働省・こども家庭庁「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年度)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001658031.pdf(2026年08月16日確認。就労継続支援B型の減算欄) - 厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き(令和6年7月)」 https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/7692b729-5944-45ee-bbd8-f0283126b7db/0a23426e/20241101_policies_shougaijishien_shisaku_guideline_tebiki_18.pdf(2026年08月16日確認。3要件の定義と手続き、身体拘束の具体例) - 厚生労働省「令和6年度「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果報告書(令和7年12月)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12203000/001619246.pdf(2026年08月16日確認。虐待判断件数と身体拘束を含む件数) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等に対する集団指導・運営指導マニュアル(令和8年6月・別添2)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260609-2.pdf(2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 障害福祉サービス受給者証 事業所が見るべき記載事項と 読み違えやすいところ URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shogai-fukushi-jukyusha-sho/ カテゴリー: 利用者獲得 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-09-12 制度基準日: 2026.07.01 ### 結論 障害福祉サービス受給者証は、市町村が支給決定を行ったときに支給決定障害者等へ交付する証票です(障害者総合支援法第22条第8項)。記載事項は施行規則第14条が8つ定めています。まず氏名・居住地・生年月日、障害児の氏名と生年月日、交付年月日と受給者証番号、支給量の4つです。続いて、支給決定の有効期間、障害支援区分、負担上限月額に関する事項、その他必要な事項が並びます(2026年5月20日施行版)。 受け入れ側の事業所が実際に読むのは3か所です。1つ目が二面から四面で、サービス種別・支給量等・支給決定期間が並びます。2つ目が六面で、負担上限月額と利用者負担上限額管理欄があります。3つ目が事業者記入欄で、自事業所が契約支給量を書き込みます。厚生労働省の事務処理要領(令和8年7月版)を読むかぎり、請求事故につながるのは4か所です。1つ目は決定支給量と契約支給量の取り違えです。2つ目は、支給決定期間がサービス種別ごとに設定されていることの見落としです。3つ目は、支給量等欄に書かれた加算判別の記載の読み落としです。4つ目は上限額管理事業所名の確認漏れです。 - 法令上の記載事項: 8項目(障害者総合支援法施行規則第14条) - 受給者証番号: 市町村が付番する10桁。10桁目は検証番号(チェックデジット) - 提示のタイミング: サービスを受けるに当たりその都度(緊急その他やむを得ない事由がある場合を除く) - 就労系・生活介護の支給量の記載例: 当該月の日数から8日を控除した日数/月 - 事業所が書き込む欄: 事業者・事業所名、サービス内容、契約支給量、契約日、サービス提供終了日、終了月中の既提供量 - 六面の上限額管理欄: 「利用者負担上限額管理対象者該当の有無」と「利用者負担上限額管理事業所名」 根拠: 厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領)」(令和8年7月版) ### 本文 新しい利用者の受け入れが決まり、面談の席で受給者証を見せてもらう。事業所がこの証票と正面から向き合うのは、たいていその場面です。ところが様式第11号は十四面もあります。どの面を見ればよいかは、証票のどこにも書いてありません。読む場所を間違えると、あとで過誤請求という形で返ってきます。 僕は埼玉県志木市で就労継続支援B型「ぽちぽちの道」を運営しています。2026年5月に開所した事業所なので、この記事は僕自身の確認メモでもあります。先に答えを言います。B型や就労移行支援が読むのは四面と六面で、書き込むのは十面です。そして請求事故につながる読み違えは、事務処理要領を読むかぎり4か所に集まっています。 ## 受給者証のどこを見ればいいのか 就労継続支援B型と就労移行支援であれば、読むのは四面と六面、書き込むのは十面です。厚生労働省が標準様式として示している様式第11号は、一面から十四面までで構成されています。市町村ごとに多少の工夫は認められています。ただし必要な記載事項が網羅されていることが前提とされているため、面の並びはおおむね共通です。 | 面 | 内容 | |---|---| | 一面 | 受給者証番号、支給決定障害者等の居住地・氏名・生年月日、障害児欄、障害種別、交付年月日、支給市町村名 | | 二面・三面 | 介護給付費の支給決定内容(障害支援区分と認定有効期間、サービス種別・支給量等・支給決定期間) | | 四面 | 訓練等給付費の支給決定内容(同上と予備欄) | | 五面 | 計画相談支援給付費の支給内容、特定障害者特別給付費の支給内容 | | 六面 | 利用者負担に関する事項(負担上限月額、食事提供体制加算、利用者負担上限額管理) | | 七面・八面 | 訪問系サービス事業者記入欄 | | 九面 | 短期入所事業者実績記入欄 | | 十面 | 生活介護・自立訓練・就労選択支援・就労移行支援・就労継続支援事業者記入欄 | | 十一面 | 療養介護・共同生活援助・施設入所支援事業者記入欄 | | 十二面 | 就労定着支援・自立生活援助事業者記入欄 | | 十三面・十四面 | 注意事項欄 | 就労継続支援B型や就労移行支援であれば、**読むのは四面・六面、書き込むのは十面**ということになります。介護給付のサービスをあわせて使っている人なら二面・三面も見ます。 正直なところ、十四面を頭から読む時間は現場にありません。僕も面の数には身構えます。ただ、事業所が毎回見る面は限られます。四面で何のサービスをいつまで使えるかを確かめ、六面でお金の扱いを確かめ、十面に自分の事業所の契約を書き込む。まずはこの3か所を押さえるところから始めればいいと思っています。 法令が定めている記載事項は8つだけです。 - 氏名・居住地・生年月日 - 障害児の氏名と生年月日 - 交付年月日と受給者証番号 - 支給量 - 支給決定の有効期間 - 障害支援区分 - 負担上限月額に関する事項 - その他必要な事項 実務で効いてくる情報の多くは、**8番目の「その他必要な事項」**として支給量等欄や特記事項欄に書き込まれています。なお受給者証番号は市町村が付番する10桁です。1桁目から9桁目は任意番号、10桁目は検証番号(チェックデジット)です。 法令の側から見ると、受給者証の中身は意外とあっさりしています。現場が振り回される情報は、ほとんどが8番目の袋に入っているわけです。だから記載事項の一覧を覚えるより、支給量等欄と特記事項欄を読む癖をつけるほうが早い。これが僕の読み方です。 ## どこを読み違えると過誤請求になるのか 事務処理要領を読むかぎり、請求事故につながる読み違えは、決定支給量と契約支給量の取り違えなど4か所です。どれも証票に書いてある文字を読めば分かることばかりです。それでも起きるのは、見る順番を決めていないからだと思っています。 ### 1. 決定支給量をそのまま上限として扱う 支給決定は、申請された種類の障害福祉サービスを公費で助成することの要否を判断するものです。特定の事業者からサービス提供を受けるべき旨を決定するものではありません。そのため、事業所が守るべき上限は受給者証に書かれた決定支給量そのものではなく、その範囲内で**利用者と結んだ契約支給量**です。 すでに別の事業者が同じ区分で契約支給量を記入している場合、後から契約する事業所が使えるのは**残りの分だけ**です。事務処理要領は、決定支給量100に対してA事業者が30で契約していれば、B事業者が契約できるのは70の範囲内という例を挙げています。市町村は請求があったときに、請求内容と支給管理台帳を突合して既提供量が契約支給量を超えていないかを確認します。 支給量管理の対象になるのは、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、短期入所、生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援の9つです。就労定着支援、自立生活援助、地域移行支援、地域定着支援は同一月に複数事業者からの利用が想定されないため、支給量管理は不要とされています。 先に契約している事業所があるかどうかは、十面を見れば分かります。ここを確かめずに契約すると、残りの範囲を超えた分は契約できず、請求も通りません。契約書を出す前に十面をめくるほうが先だと思っています。 ### 2. 支給決定期間をひとつだと思い込む 支給決定の有効期間は**サービス種別ごとに記載**されます。施行規則第15条は、支給決定を行った日からその月の末日までの期間に、次の期間を合算した期間としています。支給決定日が月の初日の場合は、この期間そのものです。 | サービス種別 | 施行規則第15条が定める期間 | |---|---| | 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、短期入所、重度障害者等包括支援、自立訓練、就労移行支援(下記の在職者一時利用・養成施設の場合を除く)、就労定着支援、自立生活援助 | 1月間から12月間までの範囲内で月を単位として市町村が定める期間 | | 療養介護、生活介護、施設入所支援、就労継続支援(下記の在職者一時利用の場合を除く)、共同生活援助 | 1月間から36月間までの範囲内で月を単位として市町村が定める期間 | | 就労選択支援 | 1月間又は2月間のうち市町村が定める期間 | | 就労移行支援・就労継続支援(在職者が一時的に利用する場合) | 1月間から6月間までの範囲内で月を単位として市町村が定める期間 | | 就労移行支援(養成施設の場合) | 1月間から60月間までの範囲内で月を単位として市町村が定める期間 | 最長36月間まで取れる就労継続支援と、原則1か月しかない[就労選択支援](/column/shurou-sentaku-shien/)を同じ人が続けて使えば、終期は当然そろいません。加えて、障害支援区分の認定有効期間は支給決定の有効期間とは別枠で記載されます。更新の管理については[受給者証の更新](/column/jukyusha-sho-koushin/)で扱います。 終期はそろわないものだと考えて、事業所の側でも一覧を持っておくのが安全だと思っています。受給者証は提示を受けて確かめるものなので、手元に控えがなければ期限を追えません。面談で見せてもらった時点で、種別ごとの終期だけは書き写しておく。地味な作業ですが、ここが一番効きます。 ### 3. 支給量等欄の但し書きを読み飛ばす 支給量等欄には、支給量のほかに「当該サービスに係る報酬の算定上あらかじめ市町村において決定、確認等が必要な事項」が書き込まれます。事務処理要領は、判別が困難な事項を明記するよう市町村に求めています。行動関連項目等に関連する加算など、事業所が請求業務を行うにあたり**対象の判別が困難とされる事項**が該当します。 就労継続支援B型であれば、支給量は「当該月の日数から8日を控除した日数/月」と記載されます。あわせて次のような記載が入り得ます。 - 障害年金1級 - 在宅利用 - 在宅時生活支援 - 社会生活支援(令和○年○月○日から令和○年○月○日まで) 就労継続支援A型では「雇用有」「雇用無」の別が書かれます。この一行を見落とすと、算定できる加算を落とすか、算定できないものを付けるかのどちらかになります。 暫定支給決定を伴う場合は、四面の予備欄にその旨が記載されます。文言は「支給決定期間のうち令和○年○月○日から令和○年○月○日までは暫定支給決定期間とする」です。B型と就労選択支援、就労定着支援は暫定支給決定の対象外です。 この一行は報酬に直結します。加算を落とせば収入が減りますし、付けてはいけないものを付ければ、過誤として返すことになります。僕は支給量等欄と四面の予備欄を、支給決定期間と同じ重さで見るべき欄だと考えています。 ### 4. 六面の上限額管理欄を確認しない 六面に並ぶのは、負担上限月額とその適用期間、食事提供体制加算の対象者該当です。あわせて「利用者負担上限額管理対象者該当の有無」と「利用者負担上限額管理事業所名」があります。負担上限月額は所得区分で4段階に分かれます(施行令第17条)。 - 市町村民税非課税世帯・生活保護の被保護者等 … 1月につき0円 - 一定の所得区分の障害者 … 1月につき9,300円 - 障害児の保護者で一定の区分に該当する場合 … 1月につき4,600円 - それ以外 … 1月につき37,200円 上限額管理者は**事業所が名乗り出て決まるものではなく**、事務処理要領の上限額管理者決定ルールの順序で決まります。居住系サービスの事業者と、毎月モニタリングを行う指定特定相談支援事業者は、利用者の依頼によらず管理者となります。日中活動系・訪問系・短期入所などは、ルールに基づく依頼を受けて管理者になります。日中活動系で同順位の事業所が複数あるときは、原則として契約日数の多い事業所です。 管理者になった場合の月内の段取りは決まっています。関係事業所は毎月3日(サービス提供月の翌月3日)までに、利用者負担額一覧表を上限額管理者へ提出します。上限額管理者は毎月6日までに、利用者負担上限額管理結果票を各関係事業所へ送付します。請求明細書には実績記録票と管理結果票を添付します。**翌月10日の請求に間に合わせるための日程**なので、ここを崩すと関係事業所側の請求まで巻き添えになります。 就労継続支援B型の場合、利用者負担上限額管理加算は月1回を限度に、1回につき150単位です(令和6年4月1日の報酬算定構造)。令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号による令和8年度の改定で、この加算は改正されていません。 うちはサービス管理責任者が管理者と兼務で、常勤1名です。月初の数日に事務が集中する怖さはよく分かります。3日(関係事業所の提出)と6日(管理者の送付)は、要領が期日として置いている日付です。だから自分の事業所がどちらの側になるのかは、受け入れの時点で見当をつけておきたいところです。加算の150単位は、その段取りを引き受ける手間に対する対価だと考えています。 受け入れ面談で受給者証の提示を受けたら、その場で確認したいのは4点です。 - 四面のサービス種別と支給決定期間の終期(介護給付を併用しているなら二面も) - 支給量等欄の但し書き - 六面の上限額管理欄。自事業所が管理者になるのか関係事業所になるのかの判断 - 十面の事業者記入欄。同じ区分にすでに他事業所の契約支給量が入っていないか 契約したら、十面に事業者名・サービス内容・契約支給量・契約日を記入します。あわせて契約内容(障害福祉サービス受給者証記載事項)報告書を市町村へ提出することになります。報告は遅滞なくとされています。翌月10日までに請求書等を出す必要があることに留意して、速やかに行うよう事務処理要領が求めています。 市町村が審査支払事務を国保連に委託していて、契約内容情報を別途管理する必要がない場合もあります。その場合は市町村の判断で報告書の提出を省略できる扱いがあるため、管内市町村の運用は先に確認しておくのが確実です。 ## 申請から交付まで、どれくらいかかるのか 申請から支給決定までの標準処理期間は、法令にも通知にも定めがありません。受給者証は法定代理受領(現物給付)のための証票なので、交付前の段階では支給決定の内容を事業所が確認する手立てもありません。市町村が行政手続法上の標準処理期間を各自定めることとされています。**全国一律の日数は存在しない**ため、管内市町村に個別に確認するしかありません。 ここは僕も具体的な日数を確認していません。というより、全国の話としては確認しようがないのだと思います。見込みを知りたいなら、管内の市町村に聞くのが一番早い。相談支援事業所が間に入っているなら、そちらからも聞けます。いずれにしても、交付前の見込みだけで受け入れ日を確定させるのは避けたほうがいいと思っています。 受給者証は、利用者にとっては権利を示す証票です。事業所から見れば、請求の前提が書かれた紙でもあります。B型や就労移行支援なら、読む面は四面・六面・十面の3か所に絞れます(介護給付をあわせて使う人は二面・三面も見ます)。読み違えやすいのは、決定支給量と契約支給量の関係、期間の終期、支給量等欄の但し書き、六面の上限額管理欄です。この4つのうち3つは契約前に確かめられます。上限額管理の欄だけは、契約のあとで管理者が変わることがあります。結局、契約書を出す前に十面をめくる習慣が一番大事だと思っています。 ## あわせて読む 受給者証の周辺の手続きは、別の記事にまとめています。 - [受給者証をもらうまで](/column/jukyusha-sho-morau/) … 支給決定までの手続きの流れ - [受給者証が出る条件](/column/jukyusha-sho-joken/) … 誰が対象になるか - [計画相談支援](/column/keikaku-soudan-shien/) … 計画相談支援事業所との連携 - [受給者証とは](/column/jukyusha-sho-toha/) … 通所受給者証や自立支援医療受給者証など、別制度の証票との違い ### よくある質問 Q. 受給者証に書かれた量を超えてサービスを提供した場合、請求できますか? A. できません。市町村は、事業者から介護給付費等の請求があったときに支給管理台帳と突合します。請求のあったサービス既提供量が、当該サービス提供月における契約支給量を超えていないかを確認したうえで支払うこととされています。事業所が見るべき上限は、市町村が決めた決定支給量そのものではありません。そこから他事業所の契約分を差し引いて自事業所が契約した、契約支給量です。 Q. 決定支給量と契約支給量はどう違うのですか? A. 別の量です。決定支給量は市町村が支給決定した1月当たりの量です。特定の事業者からサービス提供を受けるべき旨を決定するものではありません。契約支給量は、その決定支給量の範囲内で利用者と各事業者が定める1月当たりの提供量です。事業者が受給者証の事業者記入欄に記入します。すでに他の事業者が同一区分で契約支給量を記入していることがあります。その場合は、決定支給量から既記入分を差し引いた残りの範囲でしか契約できません。 Q. 受給者証はいつ提示してもらえばよいですか? A. サービスを受けるに当たり、その都度です。根拠は障害者総合支援法第29条第2項と施行規則第26条です。支給決定障害者等は、指定障害福祉サービス事業者等に対してその都度受給者証を提示しなければならないとされています。ただし緊急の場合その他やむを得ない事由がある場合はこの限りではありません。 Q. 就労継続支援B型でも障害支援区分の欄を確認する必要がありますか? A. 支給決定の要件としては不要です。障害支援区分の認定が必要なのは、次の支給決定を受けようとする障害者です(障害者総合支援法施行令第10条第1項)。介護給付費・特例介護給付費と、共同生活援助に係る訓練等給付費・特例訓練等給付費です。B型を含む訓練等給付は区分認定を要しません。受給者証の四面に区分欄はありますが、認定を行わない場合は「-」と記載されます。 Q. 上限額管理事業所になるかどうかは、事業所側で選べますか? A. 選べません。上限額管理者は、事務処理要領が定める上限額管理者決定ルールの順序で決まります。居住系サービスの事業者と、毎月モニタリングを行う指定特定相談支援事業者は、利用者からの依頼によらず上限額管理者となります。日中活動系や訪問系、短期入所の事業者は、そのルールに基づく利用者からの依頼を受けて上限額管理者となります。日中活動系には、生活介護・就労選択支援・就労移行支援・就労継続支援などが含まれます。 Q. 支給決定期間が切れているのに気づかず提供してしまったら、どうなりますか? A. その分は介護給付費等の支給を受けられません。受給者証の様式(様式第11号)の注意事項欄にも、2つのことが明記されています。1つは、支給決定期間を経過したときは介護給付費等の支給を受けられない旨です。もう1つは、支給決定の内容欄に記載されていない障害福祉サービスについては支給を受けられない旨です。支給決定期間はサービス種別ごとに記載されます。複数サービスを併用している人では、終期がそろっていないことがあります。 ### 根拠資料 - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第22条・第23条・第29条」 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123(2026年06月25日施行版/2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(平成18年厚生労働省令第19号)第14条・第15条・第26条」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100019(2026年05月20日施行版/2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行令(平成18年政令第10号)第10条・第17条」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418CO0000000010(2026年07月01日施行版/2026年08月16日確認) - 厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領)令和8年7月版」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001721666.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「様式第11号 障害福祉サービス受給者証(例)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000763477.xls(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和6年4月1日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/2024040100006.pdf(2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 処遇改善加算の配分ルール。 誰にいくら配れるのか、 事業所の裁量と制約の線引き URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shogu-kaizen-kasan-haibun/ カテゴリー: 経営・収支 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 福祉・介護職員等処遇改善加算は、加算を算定している事業所で働く全職種に配分できます。国の通知とQ&A(令和8年度分)は、施設長・管理者、サービス管理責任者、看護職員、相談支援専門員、管理栄養士・栄養士、調理員、事務員なども対象に含まれるとしており、事業所内での職種間の配分割合は事業者の判断で柔軟に決めてよいとされています。制約は3つで、一部の職員や法人内の一部事業所に集中させるような、職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分は行わないこと、加算Ⅳの加算額の2分の1以上を基本給または決まって毎月支払われる手当の改善に充てること、そして賃金改善額の合計が加算額以上になることです。令和7年度と比べて増えた加算額については、新規の賃金改善をベースアップで行うことが基本とされています(2026年8月16日時点、令和8年6月1日適用の取扱い)。 - 配分できる職員: 加算を算定している事業所の全職種(施設長・管理者、サビ管、児発管、看護職員、PT・OT・ST、相談支援専門員、管理栄養士・栄養士、調理員、事務員等を含む) - 配分できない職員: 加算を算定していない事業所の職員、障害福祉サービス等以外の事業所の職員 - 条件つきで配分できる職員: 法人本部の職員(加算の算定対象サービス事業所の業務を行っていると判断できる場合)/派遣労働者・在籍型出向者・業務委託職員(派遣の場合は派遣元と協議) - 配分割合の決め方: 事業所内での職種間配分は事業者の判断で柔軟に決めてよい。ただし著しく偏った配分は行わない - 基本給に回す最低額: 加算Ⅳの加算額の2分の1以上(加算Ⅳ以外を算定する場合は、仮に加算Ⅳを算定した場合に見込まれる加算額の2分の1以上) - 令和8年度の増加分の扱い: 過去の賃金改善の実績に関わらず新規に賃金改善を実施し、ベースアップで行うことが基本 - 全体で満たすべき水準: 事業所(法人)全体での賃金改善に要する額が、加算による収入以上であること 根拠: 厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」(令和8年3月31日障障発0331第1号・こ支障第78号) ### 本文 ## 配分できるのは「加算を算定している事業所の職員」 配分を考えるとき、最初に確定させるのは金額ではなく人の範囲です。令和8年度分の通知は賃金改善の対象を「福祉・介護職員その他の職員」と書いており、職種で線を引いていません。国のQ&A問2-1-2はさらに踏み込んで、配分の対象には福祉・介護職員以外の全職種が含まれると明示しています。 範囲の外側にははっきりした線があります。加算を算定していない事業所の職員と、障害福祉サービス等以外の事業所の職員には配分できません。法人としてまとめて受け取ったお金であっても、加算を算定していない事業所や障害福祉サービス等以外の事業へ流すことはできない仕組みです。 | 職員の区分 | 配分の可否 | 根拠 | |---|---|---| | 施設長・管理者、サビ管・児発管、看護職員、PT・OT・ST、相談支援専門員、管理栄養士・栄養士、調理員、事務員等 | 配分できる | Q&A 問2-1-2 | | 改善前の賃金が1人当たり年額460万円以上の職員 | 配分できる | Q&A 問2-2 | | EPAによる介護福祉士候補者、介護職種の技能実習生、1号特定技能外国人 | 配分できる | Q&A 問2-3 | | 派遣労働者、在籍型出向者、業務委託職員 | 配分できる(派遣は派遣元と協議) | Q&A 問2-4、問2-5 | | 事業所の職員として実際に業務を行っている代表取締役等の役員 | 配分できる | Q&A 問2-9 | | 法人本部の人事・事業部等の職員 | 加算の算定対象サービス事業所の業務を行っていると判断できる場合に限り配分できる | Q&A 問2-8 | | 加算を算定していない事業所(加算の対象外サービスの事業所を含む)の職員 | 配分できない | Q&A 問2-8 | | 障害福祉サービス等以外のサービスの事業所の職員 | 配分できない | Q&A 問2-8 | 障害福祉と介護保険の両方を運営していて職員が兼務している場合、賃金は原則として常勤換算方法で按分して計算します。計算が困難な場合は、実際にその職員が収入として得ている額で判断しても差し支えありません。 ## 配分割合は事業者が決める。ただし偏りすぎは認められない 誰にいくら配るかという割合について、国は職種別の比率も1人当たりの上限額も定めていません。通知は、福祉・介護職員、特に経験・技能のある福祉・介護職員の処遇改善が重要であることに留意しつつ、事業者の判断により事業所内で柔軟な配分を認める、と書いています。 制約はひとつだけ置かれています。一部の職員に加算を原資とする賃金改善を集中させることや、同一法人内の一部の事業所だけに集中させることなど、職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分は行わない、というものです。何割までなら偏っていないという数字は通知にもQ&Aにも書かれていないため、判断に迷う配分は事前に指定権者へ確認しておくほうが安全です。 誰にいくらという配分に関して数字で示されている水準は、事業所(法人)全体での賃金改善に要する額が加算による収入以上になることだけです。この総額を満たしていれば、内訳の設計は事業者に委ねられていると読めます。 複数の事業所を持つ法人は、処遇改善計画書と実績報告書を法人単位で一括して作成して差し支えありません。ただし一括して作成できることと、事業所をまたいで自由に配分できることは別の話です。加算を算定していない事業所は対象外という制約も、一部の事業所に集中させないという制約も、法人単位で申請する場合にそのまま残ります。 ## 基本給・手当・一時金の選び方には3つの制約がある 賃金改善は基本給・手当・賞与等のうち対象とする項目を特定したうえで行うこととされ、どれを使うかは事業者が選べます。ただし選び方には3つの制約がかかります。 1つ目は月額賃金改善要件です。加算Ⅳの加算額の2分の1以上を基本給等の改善に充てる必要があり、加算Ⅳ以外の区分を算定する場合は、仮に加算Ⅳを算定した場合に見込まれる加算額の2分の1以上が基準になります。ここでいう基本給等は、基本給または決まって毎月支払われる手当を指します。なお、加算を未算定の事業所が新規に算定し始める場合を除き、この要件を満たすために賃金総額を新たに増加させる必要はありません。手当や一時金による賃金改善の一部を減額して基本給等に付け替える形でも構わないとされています。 2つ目は令和8年度の増加分の扱いです。令和7年度と比べて増加した加算額については、過去の賃金改善の実績に関わらず新規に賃金改善を実施しなければならず、その新規分はベースアップで行うことが基本とされています。賃金体系を整備途上であるなど、ベースアップだけでは対応できない場合には、その他の手当や一時金を組み合わせて実施しても差し支えありません。 3つ目は賃金水準の維持です。特別事情届出書を提出する場合を除き、特定した項目を含めて賃金水準を低下させてはならないと定められています。 | 改善の方法 | 位置づけ | 実務上の注意 | |---|---|---| | 基本給の引上げ | 安定的な処遇改善の観点から望ましいとされる | 時給制の時給引上げ、日給制の日給引上げも基本給の引上げとして扱ってよい | | 決まって毎月支払われる手当 | 基本給等に含まれ、月額賃金改善要件の2分の1に算入できる | 職能手当・資格手当・役職手当・地域手当等の名称でもよい。通勤手当・扶養手当は含まれない | | 賞与・一時金 | 賃金改善としては認められる | 基本給等ではないため、月額賃金改善要件の2分の1には算入されない | | 退職手当 | 対象外 | 通知が定義する「賃金」から除かれている | 金額の数え方にも決まりがあります。賃金改善額には、賃金改善分に応じて増加した法定福利費の事業主負担分と、法人事業税の外形標準課税の付加価値額増加分を含められます。一方、退職手当共済制度の掛金など任意加入の制度に係る増加分は含みません。キャリアパス要件や職場環境等要件を満たすために取り組む費用も、賃金改善額に含めてはならないとされています。 配分を設計するときは、金額を割り振る前に対象者の名簿を確定させると手戻りが減ります。派遣職員を含めるかどうか、法人本部の誰までを算定対象事業所の業務を行っている職員として扱うかは、処遇改善計画書と実績報告書の両方に影響します。 次に、仮に加算Ⅳを算定した場合の加算額を先に計算し、その2分の1以上を基本給等に割り付けてから、残りの配分を検討します。この順番にしておくと、月額賃金改善要件を満たしていないことが実績報告の段階で判明する事態を避けられます。 決めた配分方法は書面にまとめて職員に周知しておく必要があります。通知は、職員から賃金改善に関する照会があった場合に、その職員の賃金改善に係る内容を書面を用いるなど分かりやすく回答することを求めています。 ## 配分を決めたあとに残る手続き 支給の時期は算定対象月と同一でなくても差し支えありません。当月の労働時間に基づき当月中に見込額で支払う、当月の労働時間に基づき翌月中に支払う、国保連から報酬が振り込まれる月(サービス提供の翌々月)に支払うという3つのパターンから、事業者が任意に選択します。あわせて、配分のあり方について予め労使の合意を得るよう努めることとされています。 一部の職員の賃金水準を引き下げた場合でも、事業所の職員全体の賃金水準が低下していなければ特別事情届出書の提出は不要です。ただし一部の職員の賃金水準を引き下げることは不利益変更に当たると考えられるため、合理的な理由に基づいて適切に労使の合意を得る必要があります。基本給は改善したものの賞与を引き下げ、賃金全体として水準が下がった場合は、特別事情届出書を提出することになります。 実績報告の段階で賃金改善額が加算額を下回った場合は、算定要件を満たさないものとして返還の対象になります。不足する部分を賞与等の一時金として追加的に配分すれば返還を求めない取扱いとしても差し支えないとされていますが、年度の途中で配分の進捗を確認しておけば、この精算に頼らずに済みます。 加算区分ごとの要件については[処遇改善加算の要件](/column/shogu-kaizen-kasan-youken/)、加算額の計算方法については[処遇改善加算の計算方法](/column/shogu-kaizen-kasan-keisan/)、基本給への反映については[処遇改善加算と基本給](/column/shogu-kaizen-kasan-kihonkyu/)で扱っています。 ### よくある質問 Q. 事務員や調理員にも処遇改善加算を配分できますか? A. できます。国のQ&A(令和8年4月9日事務連絡)問2-1-2は、事業所内での配分の対象には福祉・介護職員以外の全職種が含まれるとしたうえで、施設長・管理者、サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者、医師、看護職員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、相談支援専門員、管理栄養士・栄養士、調理員、事務員等を想定される職種として挙げています。人員基準上置くべきこととされている職種かどうかは問われません。 Q. 一部の職員に配分を集中させることはできますか? A. 著しく偏った配分は認められません。国の通知は、事業所内での柔軟な配分を認めたうえで、一部の職員に加算を原資とする賃金改善を集中させることや、同一法人内の一部の事業所だけに賃金改善を集中させることなど、職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分は行わないと定めています。何割までなら偏っていないという定量的な基準は通知にもQ&Aにも示されていないため、判断に迷う配分は指定権者に確認してください。 Q. 全額を一時金や賞与で配ってもよいですか? A. できません。月額賃金改善要件により、加算Ⅳの加算額の2分の1以上を基本給または決まって毎月支払われる手当の改善に充てる必要があります。加算Ⅳ以外の区分を算定する場合も、仮に加算Ⅳを算定した場合に見込まれる加算額の2分の1以上が基準になります。残りの部分を賞与や一時金に充てることは差し支えありません。 Q. 法人本部の職員に配分できますか? A. 加算の算定対象となるサービス事業所における業務を行っていると判断できる場合に限り、配分できます。国のQ&A問2-8は、法人本部の人事や事業部で働く職員についてこの取扱いを示す一方、加算を算定していない事業所(加算の対象外サービスの事業所を含む)や障害福祉サービス等以外の事業所の職員は、加算を原資とする賃金改善の対象に含めることはできないとしています。 Q. 派遣職員にも配分できますか? A. できます。国のQ&A問2-4は、派遣労働者も加算の対象とすることが可能とし、賃金改善を行う方法等について派遣元と相談したうえで、対象とする派遣労働者を含めて処遇改善計画書や実績報告書を作成することとしています。その際、加算を原資とする派遣料等の上乗せが派遣元から派遣職員の給与に上乗せされるよう、派遣元と協議することが求められます。在籍型出向者と業務委託職員も同様に扱われます。 Q. 賃金改善額が加算額に届かなかった場合はどうなりますか? A. 原則として返還の対象になります。処遇改善加算の算定要件は賃金改善額が加算額以上となることであるため、実績報告で下回れば要件を満たさないものとして返還の対象になります。ただし国のQ&A問1-9は、不足する部分の賃金改善を賞与等の一時金として追加的に配分することで、返還を求めない取扱いとしても差し支えないとしています。 Q. 配分の方法について労使の合意は必要ですか? A. 賃金水準を引き下げる場合など不利益変更に当たる場合は必要で、それ以外の場合も合意を得るよう努めることとされています。国のQ&A問1-8-1は、支給時期の設定にあたって配分のあり方について予め労使の合意を得るよう努めることとしており、問1-10は就業規則の不利益変更に当たるような場合には合理的な理由に基づき適切に労使の合意を得る必要があるとしています。あわせて通知は、賃金改善を行う方法等を職員に周知することを求めています。 ### 根拠資料 - 厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)(令和8年3月31日障障発0331第1号・こ支障第78号/大阪府掲載の写し)」 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/126420/r8_4_syoguukaizen_jimusyoritejyun.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)(令和8年4月9日事務連絡/大阪府掲載の写し)」 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/126420/r8_4_syoguu_qa.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(令和8年2月18日 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省・こども家庭庁「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001684450.pdf(2026年08月16日確認) - 大阪府「令和8年度福祉・介護職員等処遇改善加算」 https://www.pref.osaka.lg.jp/o090080/r8_syoguukaizen.html(2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 処遇改善加算の計算方法 総単位数×加算率の構造を 就労継続支援B型の数字で追う URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shogu-kaizen-kasan-keisan/ カテゴリー: 経営・収支 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 福祉・介護職員等処遇改善加算の額は、1月当たりの総単位数に加算率を乗じて計算します。総単位数は、基本サービス費に各種加算減算を加えた合計です。この合計から処遇改善加算だけを除きます。乗じる加算率は、加算区分とサービス類型ごとに定められています。就労継続支援B型の場合、令和8年6月以降は加算Ⅰイ10.5%、Ⅰロ10.9%、Ⅱイ10.3%、Ⅱロ10.7%、Ⅲ8.8%、Ⅳ7.4%です。根拠は令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号で、令和8年6月1日から適用されています。 令和8年4月・5月は改正前の率が適用されます。加算Ⅰ9.3%、Ⅱ9.1%、Ⅲ7.6%、Ⅳ6.2%になります。年度の加算額を見込むときは、この2か月分と6月以降の10か月分を分けて計算します。 - 計算式: 1月当たりの総単位数(処遇改善加算を除く)× 加算率 - B型の加算率(令和8年6月以降): Ⅰイ10.5%/Ⅰロ10.9%/Ⅱイ10.3%/Ⅱロ10.7%/Ⅲ8.8%/Ⅳ7.4% - B型の加算率(令和8年4月・5月): Ⅰ9.3%/Ⅱ9.1%/Ⅲ7.6%/Ⅳ6.2% - 端数処理: 単位数は小数点以下を四捨五入、金額換算時の1円未満は切り捨て - 入金時期: サービス提供月の報酬は国保連の審査を経て通常2か月後に振り込まれる 根拠: 厚生労働省「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和8年3月31日 障障発0331第1号・こ支障第78号) ### 本文 ## 加算額は1月当たりの総単位数に加算率を乗じて決まる 処遇改善加算の額は、職員数や賃金表から積み上げて決めるものではありません。決め方は国の事務処理手順通知にあります。加算の単位数は「サービス別の基本サービス費に各種加算減算(処遇改善加算を除く。)を加えた1月当たりの総単位数に、加算区分及びサービス類型別の加算率を乗じた単位数を算定する」と定められています。 告示では加算率が1000分のいくつという形で書かれています。就労継続支援B型の加算Ⅰイは「1から16の4までにより算定した単位数の1000分の105に相当する単位数」です。「1から16の4まで」は、基本サービス費から処遇改善加算の直前までの項目を指します。処遇改善加算そのものは対象に入りません。加算に加算を重ねる構造にはなっていないということです。 乗じる対象になる総単位数には、その月に算定した加算も減算もすべて反映させます。自治体が独自に設定している加算も同じです。国のQ&Aは、処遇改善加算の算定における障害福祉サービス等報酬総単位数に含める取扱いだとしています。稼働率が落ちて基本報酬が下がった月は、**処遇改善加算も同じ割合で下がります**。加算額が毎月一定にならないのは、この構造によるものです。 端数の扱いも決まっています。留意事項通知は次のように定めています。処遇改善加算は、基本報酬および各種加算を算定した単位数の合計に加算の割合を乗じて算定します。乗じて得た単位数は小数点以下を四捨五入します。単位数から金額に換算する際に生じる1円未満は切り捨てます。 ## 加算率はサービス種別ごとに違う 加算率は、サービスごとの常勤換算職員数に基づいて設定されています。居宅介護などの訪問系では40%を超える率が設定されています。これに対して就労継続支援B型は10%前後にとどまります。同じ加算区分を取っても、サービスが違えば入ってくる額の水準はまったく違います。 就労継続支援B型の加算率は次のとおりです。令和8年度は期中改定の年にあたるため、4月・5月と6月以降で率が変わります。 | 加算区分 | 就労継続支援B型 | 障害者支援施設が行う就労継続支援B型 | | --- | --- | --- | | Ⅰ(令和8年4月・5月) | 9.3% | 10.4% | | Ⅱ(令和8年4月・5月) | 9.1% | 設定なし | | Ⅲ(令和8年4月・5月) | 7.6% | 8.6% | | Ⅳ(令和8年4月・5月) | 6.2% | 6.9% | | Ⅰイ(令和8年6月以降) | 10.5% | 11.6% | | Ⅰロ(令和8年6月以降) | 10.9% | 12.0% | | Ⅱイ(令和8年6月以降) | 10.3% | 設定なし | | Ⅱロ(令和8年6月以降) | 10.7% | 設定なし | | Ⅲ(令和8年6月以降) | 8.8% | 9.8% | | Ⅳ(令和8年6月以降) | 7.4% | 8.1% | ⅠイとⅠロ、ⅡイとⅡロの差はいずれも0.4ポイントです。生産性向上や協働化の取組を満たして上乗せ区分のロを取ると、この0.4ポイント分が上乗せされます。区分ごとの要件は[処遇改善加算の区分の違い](/column/shogu-kaizen-kasan-kubun-chigai/)で扱います。 ## B型の数字で1か月分を計算する 以下は計算の手順を示すための仮の前提で、国が示した数値ではありません。1か月の総単位数(処遇改善加算を除く)を250,000単位、地域区分はその他地域とします。就労継続支援の1単位の単価は、その他地域では10円に1000分の1000を乗じた10円です。一級地では1000分の1114を乗じるため11.14円になります。 | 加算区分 | 加算率 | 加算単位数 | 加算額(その他地域) | | --- | --- | --- | --- | | Ⅰイ | 10.5% | 26,250単位 | 262,500円 | | Ⅰロ | 10.9% | 27,250単位 | 272,500円 | | Ⅱイ | 10.3% | 25,750単位 | 257,500円 | | Ⅱロ | 10.7% | 26,750単位 | 267,500円 | | Ⅲ | 8.8% | 22,000単位 | 220,000円 | | Ⅳ | 7.4% | 18,500単位 | 185,000円 | | (参考)令和8年4月・5月のⅠ | 9.3% | 23,250単位 | 232,500円 | 同じ総単位数でも、加算Ⅰイと加算Ⅳでは月77,500円の差が出ます。令和8年4月・5月の加算Ⅰと6月以降の加算Ⅰイを比べると、月30,000円の増加になります。この増加分の扱いが、あとで賃金改善の話につながります。 ## 年度の合計は月数を分けて出す 処遇改善計画書の個票(別紙様式2-2、2-3)は、(a×b×c)で加算額の見込額を出す構成になっています。(a)は1か月あたりの障害福祉サービス等報酬総額(処遇改善加算を除く)です。(b)が加算率、(c)が算定対象月にあたります。様式は4月・5月用と6月以降用に分かれています。算定対象月は通常、前者が令和8年4月から5月、後者が令和8年6月から令和9年3月とされています。 先ほどの前提だと(a)は2,500,000円です。加算Ⅰ・Ⅰイを算定した場合の年度合計は次のように出ます。 | 期間 | 計算 | 加算額の見込額 | | --- | --- | --- | | 令和8年4月・5月(2か月) | 2,500,000円 × 9.3% × 2 | 465,000円 | | 令和8年6月〜令和9年3月(10か月) | 2,500,000円 × 10.5% × 10 | 2,625,000円 | | 令和8年度合計 | ― | 3,090,000円 | 計画書には令和7年度と比較して増加する加算額の見込額を書く欄もあります。加算率が上がった6月以降の分がここに反映されます。 ## 入金額の読み方 加算額がそのまま**満額振り込まれるとは限りません**。加算額は障害福祉サービス等報酬の一部です。利用者負担が生じる利用者の分については、その負担分を控除した額が給付費として支払われます。訓練等給付費の額は、算定基準による費用額の合計から一定額を控除して得た額とされています。控除するのは、利用者の負担能力に応じて政令で定める額(費用額の1割を上限とする額)です。根拠は障害者総合支援法第29条第3項です。 入金の時期も押さえておく必要があります。6月サービス提供分の報酬は、7月の国保連の審査を経て8月に事業所へ振り込まれます。これは、6月に算定する加算の配分について国のQ&Aが示している説明です。加算率が上がるのは6月サービス提供分からなので、増えた加算が口座に反映されるのは8月になります。 賃金改善の支給時期は、算定対象月と同一である必要はありません。事業者は次の3つから任意に選べます。 - 当月に見込額で支払う方法 - 翌月に支払う方法 - 入金される翌々月に支払う方法 ## 加算額と賃金改善所要額の関係 計算した加算額は、そのまま賃金改善の所要額になります。事業者は、加算の算定額に相当する職員の賃金改善を実施しなければなりません。この賃金には基本給・手当・賞与等が含まれます。賃金改善に伴う法定福利費等の事業主負担の増加分も算入できます。実績報告で賃金改善額が**加算額を下回った場合は返還の対象**になります。不足分を賞与等の一時金として追加配分すれば、返還を求めない取扱いも示されています。 加算額のうち一定額は、配分先の形が指定されています。月額賃金改善要件は、加算Ⅳの加算額の2分の1以上を基本給等の改善に充てることを求めています。加算Ⅳ以外の区分を算定する場合も、基準の考え方は同じです。仮に加算Ⅳを算定したときに見込まれる加算額の2分の1以上になります。先ほどの前提なら、加算Ⅳ相当額は月185,000円です。その2分の1にあたる月92,500円分を、基本給または毎月決まって支払われる手当で改善している状態が必要です。 令和7年度と比べて増加した加算額には、別の扱いがあります。過去の賃金改善の実績に関わらず、新規に賃金改善を実施しなければなりません。その新規分はベースアップで行うことが基本とされています。加算率の引上げによる増加分もここに含まれます。配分の考え方は[加算の配分ルール](/column/shogu-kaizen-kasan-haibun/)で詳しく扱います。 加算額の見込みは、直近月の請求データを出発点に置くと説明しやすくなります。処遇改善加算の単位数を差し引いた総単位数を、計画書の(a)欄を埋める際の根拠にすると再現しやすくなります。実績のある数字に加算率を掛ける形なので、後から根拠を尋ねられても同じ数字を再現できます。 令和8年度は4月・5月と6月以降で加算率が違うため、年間見込みは2本立てで計算する必要があります。1年分をまとめて新しい率で計算すると、4月・5月分を過大に見積もることになります。 月々の加算額は稼働率で動きます。実績報告で賃金改善額が加算額を下回ると返還になります。加算額の実績を毎月記録し、年度後半に一時金で調整できる余地を残しておく運用が安全です。 関連する記事は次のとおりです。 - [令和8年度の処遇改善加算](/column/shogu-kaizen-kasan-r8/) … 令和8年度改定の全体像 - [処遇改善加算の要件](/column/shogu-kaizen-kasan-youken/) … 算定要件の整理 ### よくある質問 Q. 処遇改善加算の額はどうやって計算しますか? A. 1月当たりの総単位数に加算率を乗じて計算します。総単位数は、サービス別の基本サービス費に各種加算減算を加えた合計です。この合計から処遇改善加算だけを除きます。総単位数に、加算区分とサービス類型別の加算率を乗じます。得られた単位数は小数点以下を四捨五入します。 Q. 就労継続支援B型の加算率は何%ですか? A. 令和8年6月以降は7.4%から10.9%で、加算区分によって違います。加算Ⅰイ10.5%、Ⅰロ10.9%、Ⅱイ10.3%、Ⅱロ10.7%、Ⅲ8.8%、Ⅳ7.4%です。令和8年4月・5月は改正前の率が適用されます。加算Ⅰ9.3%、Ⅱ9.1%、Ⅲ7.6%、Ⅳ6.2%です。障害者支援施設が行う就労継続支援B型は率が別に定められています。令和8年6月以降は加算Ⅰイ11.6%、Ⅰロ12.0%、Ⅲ9.8%、Ⅳ8.1%です。 Q. 総単位数には送迎加算や自治体独自の加算も含めますか? A. 含めます。総単位数は処遇改善加算だけを除いた合計です。その月に算定した他の加算と減算はすべて反映させます。自治体が独自に設定している加算も同じです。処遇改善加算の算定における障害福祉サービス等報酬総単位数に含める取扱いです。 Q. 処遇改善加算はいつ事業所に入金されますか? A. 通常はサービス提供月の2か月後です。報酬は国保連の審査を経て振り込まれます。例えば令和8年6月にサービスを提供した分は、7月の国保連の審査を経て8月に振り込まれます。賃金改善の支給時期は算定対象月と同一でなくてもかまいません。この入金月に合わせて支払う方法も認められています。 Q. 加算額の全額を職員の賃金に充てる必要がありますか? A. 賃金そのものだけで埋める必要はありません。必要なのは、加算の算定額に相当する賃金改善です。基本給・手当・賞与等の改善が対象になります。賃金改善に伴う法定福利費等の事業主負担の増加分も含められます。実績報告で賃金改善額が加算額を下回った場合は返還の対象になります。 ### 根拠資料 - こども家庭庁・厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001684450.pdf(令和8年6月1日適用(第1条の規定は令和8年4月1日施行)。2026年08月16日確認) - 厚生労働省「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年3月31日 障障発0331第1号・こ支障第78号)」 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/126420/r8_4_syoguukaizen_jimusyoritejyun.pdf(国の通知。大阪府掲載の写しで2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(端数処理の取扱い。2026年08月16日確認) - 厚生労働省「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)(令和8年4月9日事務連絡)」 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/126420/r8_4_syoguu_qa.pdf(国の事務連絡。大阪府掲載の写しで2026年08月16日確認) - 厚生労働省「こども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定める一単位の単価並びに厚生労働大臣が定める一単位の単価(平成18年厚生労働省告示第539号)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8493&dataType=0&pageNo=1(地域区分別の1単位の単価。2026年08月16日確認) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(令和8年2月18日 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf(2026年08月16日確認) - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(第29条第3項)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123(2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 処遇改善加算は基本給に含めるべきか 手当・一時金との制度上の違いと 「あとから下げられない」問題 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shogu-kaizen-kasan-kihonkyu/ カテゴリー: 現場・人材 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 処遇改善加算をどの賃金項目で配分するかは事業者の判断ですが、制度上の下限があります。月額賃金改善要件により、処遇改善加算Ⅳの加算額の2分の1以上は基本給等(基本給または決まって毎月支払われる手当)の改善に充てなければなりません。全額を賞与や一時金で配ると、この要件を満たしません(令和8年度の届出から適用される事務処理手順通知に基づく要件)。 国の通知は「安定的な処遇改善が重要であることから、基本給による賃金改善が望ましい」としています。一方で、基本給に入れた分は特別事情届出書を届け出る場合を除いて水準を下げられないため、加算率が変動したときに戻す余地が小さくなります。この不可逆性を織り込んだうえで、基本給・毎月の手当・一時金の3層に分けて設計するのが実務的な組み立てになります。 - 基本給等で改善すべき最低額: 加算Ⅳの加算額の2分の1以上(加算Ⅳ以外を算定する場合は、仮に加算Ⅳを算定した場合に見込まれる加算額の2分の1以上) - 「基本給等」の範囲: 基本給、または決まって毎月支払われる手当。通勤手当・扶養手当、月ごとに支払の有無が変動する手当は含まない - 令和7年度からの増加分: 過去の実績に関わらず新規に賃金改善が必要。ベースアップ(賃金表の改訂による基本給等の一律引上げ)で行うことが基本 - 加算Ⅰロ・Ⅱロを算定する場合: 上記に加えて、加算Ⅱロの加算額の2分の1以上を基本給等の改善に充てることが必要(令和8年6月以降) - 引下げの制限: 特別事情届出書を届け出る場合を除き、特定した項目を含め賃金水準を低下させてはならない 根拠: 厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和8年度分) ### 本文 ## 制度が縛っているのは「金額」と「一部の項目」だけ 通知は、賃金改善は基本給、手当、賞与等のうち対象とする項目を特定したうえで行うものとし、その配分を事業者の判断に委ねています。同時に、安定的な処遇改善が重要であることから基本給による賃金改善が望ましいとも書いています。 「望ましい」は努力目標であって、基本給に入れないと加算が算定できないわけではありません。ただし月額賃金改善要件が実質的な下限を設けているため、一時金だけで配るという選択肢は制度上取れません。 ## 「基本給等」に入るもの、入らないもの 要件のカウントに使えるのは「基本給等」、すなわち基本給または決まって毎月支払われる手当です。何がここに入るかは国のQ&Aで整理されています。 | 賃金項目 | 「基本給等」に当たるか | 根拠 | | --- | --- | --- | | 月給の基本給の引上げ | 当たる | 通知 記2(2)の「基本給等」の定義 | | 時給・日給の引上げ | 当たる(基本給の引上げとして取り扱う) | Q&A 問1-4 | | 職能手当・資格手当・役職手当・地域手当など毎月支払う手当 | 当たる(名称は問わない) | Q&A 問1-3 | | 月ごとに支払われるか否かが変動する手当 | 当たらない | Q&A 問1-3 | | 通勤手当・扶養手当 | 当たらない | Q&A 問1-3 | | 賞与・一時金 | 当たらない | 通知 記2(2)の「基本給等」の定義 | 「当たらない」ものも賃金改善の総額そのものには算入できます。加算額に相当する賃金改善という大枠は満たせるが、要件の分子には数えられないという関係です。 ## 基本給等で出すべき下限は区分によって二段構えになる 令和8年度は、算定する区分によって基本給等で行うべき額が変わります。 | 算定する区分 | 基本給等の改善に充てるべき額 | | --- | --- | | 加算Ⅳ | 加算Ⅳの加算額の2分の1以上 | | 加算Ⅲ・Ⅱイ・Ⅰイ | 仮に加算Ⅳを算定した場合に見込まれる加算額の2分の1以上 | | 加算Ⅱロ・Ⅰロ(令和8年6月以降) | 上記に加えて、加算Ⅱロの加算額の2分の1以上 | 上乗せ区分のⅠロ・Ⅱロを取る場合は、令和8年度特例要件の(ウ)として加算Ⅱロの加算額の2分の1以上を基本給等に充てることが加わります。重度障害者等包括支援、施設入所支援、短期入所、就労定着支援、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援は加算Ⅱロの加算率がないため、加算Ⅰロの加算額の2分の1以上に読み替えます。要件の全体像は[処遇改善加算の算定要件](/column/shogu-kaizen-kasan-youken/)で扱っています。 この下限を満たすために賃金総額を新たに増やす必要はありません。加算を未算定の事業所が新規に算定し始める場合を除き、基本給等以外の手当や一時金で行っている賃金改善の一部を減額し、その分を基本給等に付け替えることで要件を満たして差し支えないとされています。ただし国のQ&A 問3は、付け替えの結果として事業所全体の賃金水準が下がらないようにするだけでなく、各職員の賃金水準が低下しないよう努めることを求めています。 ## 増えた分はベースアップが基本になる 令和7年度と比較して令和8年度に増加した加算額は、過去の賃金改善の実績に関わらず新規に賃金改善を行わなければならず、その新規分はベースアップにより行うことが基本とされています。通知はベースアップを「賃金表の改訂により基本給又は決まって毎月支払われる手当の額を変更し、賃金水準を一律に引き上げること」と定義しており、個別査定による昇給とは区別しています。 賃金体系を整備している途中であるなどベースアップのみでは対応できない場合は、その他の手当や一時金を組み合わせても差し支えありません。処遇改善計画書(別紙様式2-1)は増加分の配分をベースアップによる額とそれ以外の手当・一時金等による額に分けて記入させる構成なので、どちらでいくら出すかは様式に着手する前に決めておくことになります。加算額の計算は[処遇改善加算の計算方法](/column/shogu-kaizen-kasan-keisan/)を参照してください。 ## 基本給に入れた分は、あとから下げにくい ここが経営判断として最も重い論点です。通知は、賃金改善の対象として特定した項目を含め、特別事情届出書(別紙様式5)を届け出る場合を除いて賃金水準を低下させてはならないと定めています。届出をせずに引下げを行えば、加算の返還または取消しの対象になります。 届出書に書くのは、収支が赤字である等の経営悪化の状況、賃金水準の引下げの内容、経営と賃金水準の改善の見込み、労使の合意の時期と方法等の4項目です。国のQ&A 問1-12は、引下げの要因である特別な状況が改善したら可能な限り速やかに引下げ前の水準に戻す必要があるとしています。 ただし、賃金全体の水準が下がっていなければ、個々の賃金項目の水準が低下しても届出は不要です(問1-12)。一部の職員だけ引き下げた場合も全体が低下していなければ届出は要りませんが、Q&A 問1-13は「一部の職員の賃金水準を引き下げることは不利益変更に当たると考えられる」として、合理的な理由に基づく適切な労使の合意を求めています。 制度の側から言えるのはここまでです。どこまでが有効な変更かは労働契約上の判断になるため、賃金規程の改定を伴う設計は社会保険労務士などに確認しながら進めることになります。手当なら自由に下げられるという意味ではない点も同じです。 ## 就業規則・賃金規程に何を残すか キャリアパス要件Ⅰは、職位・職責・職務内容等に応じた任用等の要件とそれに応じた賃金体系を定め、就業規則等の明確な根拠規程として書面で整備し、全ての福祉・介護職員に周知することを求めています。キャリアパス要件Ⅲの昇給の仕組みも同様に書面整備と周知が必要です。昇給の方式自体は基本給・手当・賞与等を問いませんが、Q&A 問4-7は基本給によるものが望ましいとしています。常時雇用する者が10人未満など就業規則の作成義務がない事業所は、内規等の整備・周知でも差し支えありません。 配分の設計は、金額の下限を先に固定してから残りを振り分ける順番で進めると迷いません。 1. 加算Ⅳ相当額の2分の1を計算し、基本給等で出す下限額を確定する。Ⅰロ・Ⅱロを狙う場合は加算Ⅱロ相当額の2分の1も並行して計算し、大きいほうを下限とする。 2. 下限を超える部分を、ベースアップで出す額と手当・一時金で出す額に分ける。計画書はこの2つを別の欄に書かせるため、曖昧なまま様式に着手すると手戻りになる。 3. 賃金表や賃金規程を改める場合は改訂内容を書面にして職員に周知し、就業規則を改訂したときは改訂の概要を変更届出書に記載して提出する。 4. 通知8(1)は、職員からの照会に書面を用いるなど分かりやすく回答することを求めている。1人当たりの改善額の内訳を残しておく。 計画書と実績報告書、その根拠資料は2年間保管し、指定権者から求めがあれば速やかに提示します。保管対象には労働基準法第89条に規定する就業規則等が含まれます。職種間の配分は[処遇改善加算の職員への配分](/column/shogu-kaizen-kasan-haibun/)で扱っています。 ### よくある質問 Q. 処遇改善加算を全額、賞与や一時金で配ってもよいですか? A. いいえ、全額を賞与・一時金にすると月額賃金改善要件を満たしません。加算Ⅳの加算額の2分の1以上は基本給または決まって毎月支払われる手当で改善する必要があり、加算Ⅳ以外の区分を算定する場合も、仮に加算Ⅳを算定した場合に見込まれる加算額の2分の1以上が基準になります。残りの部分の配分は事業者の判断ですが、令和7年度から増加した加算額についてはベースアップにより賃金改善を行うことが基本とされています。 Q. 通勤手当や扶養手当を増額した分は「基本給等」に数えられますか? A. いいえ、数えられません。国のQ&A(令和8年4月9日事務連絡 問1-3)は、通勤手当・扶養手当のように労働と直接的な関係が薄く労働者の個人的事情により支給される手当は「決まって毎月支払われる手当」に含まれないとしています。月ごとに支払われるか否かが変動する手当も同様です。ただし賃金改善の総額そのものには算入して差し支えありません。 Q. 時給を引き上げた場合は基本給の引上げになりますか? A. はい、なります。国のQ&A(問1-4)は、基本給が時給制の職員の時給引上げ、日給制の職員の日給引上げを、基本給の引上げとして取り扱って差し支えないとしています。時給や日給への上乗せの形で支給される手当は「決まって毎月支払われる手当」と同等に扱われます。 Q. 加算率が下がったら、上げた基本給を下げられますか? A. 条件付きです。通知は、特別事情届出書を届け出る場合を除き、賃金改善の対象として特定した項目を含めて賃金水準を低下させてはならないとしています。特別事情届出書には経営悪化の状況、引下げの内容、改善の見込み、労使の合意の時期と方法等を記載します。国のQ&A(問1-11)は、経営悪化などの理由があっても引下げには合理的な理由に基づく適切な労使の合意が必要としており、実際の可否は労働契約上の判断を伴うため社会保険労務士等への確認が必要です。 Q. 処遇改善加算のために就業規則を変えたら、届け出は必要ですか? A. はい、必要です。通知5(1)⑥は、福祉・介護職員の処遇に関する内容について就業規則を改訂した場合、改訂の概要を変更届出書(別紙様式4)に記載して提出することとしています。就業規則の改訂のみが変更内容である場合は、実績報告書を提出する際に併せて届け出ます。 ### 根拠資料 - 厚生労働省・こども家庭庁「「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和8年度分)令和8年3月31日 障障発0331第1号・こ支障第78号」 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/126420/r8_4_syoguukaizen_jimusyoritejyun.pdf(2026年08月16日確認(大阪府サイト掲載の国通知)) - 厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)令和8年4月9日事務連絡」 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/126420/r8_4_syoguu_qa.pdf(2026年08月16日確認(大阪府サイト掲載の国事務連絡)) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」 https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について(告示・通知・Q&Aの掲載ページ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202214_00013.html(2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 処遇改善加算ⅠとⅡの違いは 配置等要件だけ 上位区分は取りに行くべきか URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shogu-kaizen-kasan-kubun-chigai/ カテゴリー: 経営・収支 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 令和8年6月以降の福祉・介護職員等処遇改善加算で、加算Ⅰイと加算Ⅱイの算定要件の違いは、キャリアパス要件Ⅴ(配置等要件)を満たすかどうかの1点だけです。配置等要件とは福祉専門職員配置等加算(居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護では特定事業所加算)の届出を行っていることを指し、加算Ⅱイはこれを満たさなくても算定できます。ほかの6つの要件(月額賃金改善要件、キャリアパス要件ⅠからⅣ、職場環境等要件)はどちらも同じです。加算率の差は小さく、就労継続支援B型では加算Ⅰイ10.5%に対して加算Ⅱイ10.3%の0.2ポイントにとどまります(2026年8月16日時点)。 一方で、加算Ⅲから加算Ⅱイへ、加算Ⅳから加算Ⅲへ上げるときの差は1.4から1.5ポイントあり、ⅠとⅡの差の7倍以上になります。上位区分を狙うなら、まずどの段を上がろうとしているのかを確かめたほうが費用対効果を見誤りません。 - 加算Ⅰイと加算Ⅱイの要件の差: キャリアパス要件Ⅴ(配置等要件)のみ。ほかの要件はすべて共通 - 配置等要件の中身: 福祉専門職員配置等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲのいずれかの届出を行っていること(居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護は特定事業所加算の届出) - 加算率の差(就労継続支援B型・令和8年6月以降): Ⅰイ10.5%/Ⅰロ10.9%/Ⅱイ10.3%/Ⅱロ10.7%/Ⅲ8.8%/Ⅳ7.4% - 差が大きい段: Ⅳ→Ⅲが1.4ポイント、Ⅲ→Ⅱイが1.5ポイント、Ⅱイ→Ⅰイは0.2ポイント - 加算率を乗じる対象: 処遇改善加算を除く1月当たりの総単位数(1日当たりではない) - イとロの違い: ロは令和8年度特例要件(生産性向上5項目または社会福祉連携推進法人への所属+基本給等への充当)を追加で満たす区分 根拠: 厚生労働省「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和8年3月31日障障発0331第1号・こ支障第78号) ### 本文 ## 区分の呼び方が令和8年6月に変わっている まず前提を揃えておきます。令和8年度は令和9年度報酬改定を待たずに実施された期中改定の年で、同じ年度内でも4月・5月と6月以降で区分の構成が違います。4月・5月はⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳの4区分ですが、6月以降はⅠイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳの6区分になりました。ロが付く2つが新設分です。経過措置区分だった加算Ⅴは令和7年3月31日までの措置で、今回の告示改正で規定そのものが削られています。 令和7年度以前の解説記事は区分の数から違っている可能性があります。以下は令和8年6月1日から適用される内容です。 ## ⅠとⅡを分けているのは要件ひとつ 通知は要件を8つに整理しています。①月額賃金改善要件、②から⑥のキャリアパス要件ⅠからⅤ、⑦職場環境等要件、⑧令和8年度特例要件です。加算Ⅰイはこのうち①から⑦をすべて満たすことが条件で、そこから区分が下がるにつれて免除される要件が増えていく構造になっています。 | 区分 | 満たさなくてよい要件 | 実質的な追加負担 | |---|---|---| | Ⅰイ | なし(①〜⑦すべて必要) | 配置等要件まで満たす | | Ⅰロ | なし(①〜⑦+⑧特例要件) | Ⅰイに生産性向上5項目等を追加 | | Ⅱイ | ⑥キャリアパス要件Ⅴ | 配置等要件が不要 | | Ⅱロ | ⑥キャリアパス要件Ⅴ(+⑧が必要) | Ⅱイに生産性向上5項目等を追加 | | Ⅲ | ⑤キャリアパス要件Ⅳ、⑥同Ⅴ | 年額460万円の職員も不要 | | Ⅳ | ④キャリアパス要件Ⅲ、⑤同Ⅳ、⑥同Ⅴ | 昇給の仕組みの整備も不要 | つまり加算Ⅰと加算Ⅱの違いは、キャリアパス要件Ⅴ(配置等要件)だけです。賃金改善のルールも、キャリアパス要件ⅠからⅣも、職場環境等要件のレベルも、ⅠとⅡで完全に同じです。「Ⅰは要件が厳しくてとても無理」と考えて最初から外している事業所は、実際には要件1つ分の距離しか離れていない可能性があります。 配置等要件の中身は、福祉専門職員配置等加算の届出を行っていることです。居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護では特定事業所加算の届出を指します。なお重度障害者等包括支援、施設入所支援、短期入所、就労定着支援、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援は、そもそも配置等要件に関する加算が設定されていないため配置等要件は不要とされ、加算Ⅱイ・Ⅱロの加算率自体が設定されていません。 ## 上げる段によって増収額が7倍違う 肝心の加算率です。加算率は1月当たりの総単位数に乗じる率で、1日当たりでも月額の定額でもありません。就労継続支援B型を例に、令和8年6月以降の率を並べます。 | 区分 | 加算率(B型) | 前の段からの差 | |---|---|---| | Ⅳ | 7.4% | ― | | Ⅲ | 8.8% | +1.4ポイント | | Ⅱイ | 10.3% | +1.5ポイント | | Ⅱロ | 10.7% | +0.4ポイント | | Ⅰイ | 10.5% | Ⅱイから+0.2ポイント | | Ⅰロ | 10.9% | Ⅰイから+0.4ポイント | ここで目を引くのは、加算Ⅱロ(10.7%)が加算Ⅰイ(10.5%)を上回っている点です。配置等要件を満たせなくても、令和8年度特例要件を取りにいけば加算Ⅰイより高い率になります。これはB型だけの現象ではなく、生活介護、療養介護、自立訓練、就労移行支援、共同生活援助、児童発達支援、放課後等デイサービスなど多くのサービスで同じ逆転が起きます。例外は居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護の訪問系4サービスで、ここだけは加算Ⅰイのほうが高くなります。 金額に置き換えます。**以下は当サイトによる試算で、国が示した数値ではありません。** 1月当たりの総単位数(処遇改善加算を除く)を28万単位、1単位10円と仮定した場合の年額です。単位数も地域区分による単価も事業所ごとに違うので、必ず自事業所の実績値で計算し直してください。 | 引き上げる段 | 年間の増収見込み | |---|---| | Ⅳ → Ⅲ | 約47.0万円 | | Ⅲ → Ⅱイ | 約50.4万円 | | Ⅱイ → Ⅰイ | 約6.7万円 | | Ⅱイ → Ⅱロ | 約13.4万円 | | Ⅰイ → Ⅰロ | 約13.4万円 | ⅣからⅢ、ⅢからⅡイの2段は年50万円前後動きますが、ⅡイからⅠイは7万円弱です。ここに人件費をかけて有資格者を採用するのは、加算率だけを見れば割に合いません。判断が変わるのは、届け出る福祉専門職員配置等加算そのものの報酬が別途入ってくる点を勘定に入れたときです。処遇改善加算の区分アップは、福祉専門職員配置等加算を取ることの副産物として考えるほうが実態に近くなります。加算率を自事業所の総単位数に当てはめる手順は[処遇改善加算の計算方法](/column/shogu-kaizen-kasan-keisan/)で詳しく扱っています。 ## 要件を満たすために増える事務は何か 増収額の反対側にある負担も並べておきます。加算Ⅳから加算Ⅲに上げるにはキャリアパス要件Ⅲが必要で、経験に応じた昇給、資格等に応じた昇給、人事評価などの一定の基準による定期判定のいずれかの仕組みを設け、就業規則等の書面で整備して全ての福祉・介護職員に周知します。常時雇用する者が10人未満で就業規則の作成義務がない事業所は、内規等の整備と周知で足ります。昇給の方式は基本給でも手当でも賞与でもかまいません。 加算Ⅲから加算Ⅱイに上げるにはキャリアパス要件Ⅳが加わります。経験・技能のある福祉・介護職員のうち1人以上について、賃金改善後の見込額が年額460万円以上であることが原則です。ただし職場環境等要件の28項目のうち全体から14以上の取組を実施している場合は、この要件を満たしているものとして扱われます。人件費を動かさずに要件を通せる余地があるということです。 さらに加算Ⅰ・Ⅱでは職場環境等要件のレベルが上がります。加算Ⅲ・Ⅳが「生産性向上を除く5区分ごとに1以上、生産性向上区分から2以上、あわせて全体で8以上」なのに対し、加算Ⅰ・Ⅱは「5区分ごとに2以上、生産性向上区分から3以上(⑱の現場の課題の見える化は必須)」です。加えて加算Ⅰ・Ⅱでは、職場環境等の改善に係る取組を障害福祉サービス等情報公表制度などで公表し、実施した取組項目と具体的な取組内容を記載する義務が生じます。一度書いたら実態と合わせ続ける必要がある部分です。要件の全体像は[処遇改善加算の要件](/column/shogu-kaizen-kasan-youken/)に整理しています。 ロ区分を狙う場合の令和8年度特例要件は、(ア)生産性向上区分から5以上の取組(⑱と㉑が必須)または(イ)社会福祉連携推進法人への所属、のいずれかに加えて、(ウ)加算Ⅱロの加算額の2分の1以上を基本給等の改善に充てることが必要です。㉑は業務支援ソフトや情報端末の導入なので、記録システムを入れている事業所なら実質的に済んでいることが多い項目です。 上位区分を検討するときは、加算率の比較より先に直接処遇職員の名簿を1枚作ってしまうほうが早く判断できます。福祉専門職員配置等加算は、常勤の直接処遇職員に占める社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士・公認心理師の割合が35%以上でⅠ、25%以上でⅡですが、Ⅲには資格を問わないルートがあり、直接処遇職員(常勤換算)に占める常勤職員の割合が75%以上、または常勤の直接処遇職員のうち3年以上従事している者の割合が30%以上のいずれかで届出ができます。キャリアパス要件Ⅴはこの加算の「届出を行っていること」を求めるだけなので、ⅠでもⅢでも要件は通ります。名簿に常勤か否かと勤続年数を書き入れて数えれば、採用をせずに配置等要件へ届くかどうかがその場で分かります。届かない場合、訪問系以外のサービスであれば加算Ⅰイを追わずに加算Ⅱロへ回すほうが加算率は高くなります。 ## 判断の順番 加算Ⅳを算定しているなら、キャリアパス要件Ⅲの整備で加算Ⅲへ上げるのが最も費用対効果の高い一手です。次に加算Ⅲなら、職場環境等要件を全体14以上まで積むことでキャリアパス要件Ⅳをクリアし、加算Ⅱイへ上げられないかを見ます。ここまでで年間100万円規模が動きます。加算Ⅱイに到達したら配置等要件を満たせるかどうかで分岐し、満たせるなら加算Ⅰイ、満たせず訪問系以外のサービスなら生産性向上の取組を5項目まで積んで加算Ⅱロを狙う、という順です。訪問系4サービスでは加算Ⅰイが最上位になるため、特定事業所加算の届出を先に検討することになります。 最後に注意点をひとつ。加算区分を上げれば加算額は増えますが、増えた分は職員の賃金改善に充てる義務が発生します。令和7年度と比べて令和8年度に増加した加算額については、過去の賃金改善の実績に関わらず新規に賃金改善を行う必要があり、その新規分はベースアップにより行うことが基本とされています。増収がそのまま利益になるわけではないので、区分を上げる判断は賃金原資をどこまで増やす意思があるかとセットで考えることになります。年度途中で区分を上げる場合の変更の届出は、算定を開始する月の前月15日までです。提出方法や自治体独自の締切は指定権者によって異なるため、動く前に確認してください。 ### よくある質問 Q. 処遇改善加算1と2の違いは何ですか? A. 違いはキャリアパス要件Ⅴ(配置等要件)の1点だけです。加算Ⅰ(令和8年6月以降は加算Ⅰイ)は月額賃金改善要件、キャリアパス要件ⅠからⅤ、職場環境等要件のすべてを満たす必要がありますが、加算Ⅱ(同Ⅱイ)はこのうちキャリアパス要件Ⅴを満たさなくても算定できます。配置等要件とは福祉専門職員配置等加算の届出を行っていることで、居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護では特定事業所加算の届出を指します。賃金改善のルールや職場環境等要件のレベルはどちらも同じです。 Q. 加算Ⅱから加算Ⅰに上げると、どれくらい収入が増えますか? A. 通所・施設系では増収幅が小さく、多くのサービスで0.1から0.4ポイント程度にとどまります。就労継続支援B型では加算Ⅱイ10.3%に対して加算Ⅰイ10.5%で差は0.2ポイント、生活介護は9.2%と9.3%で0.1ポイント、児童発達支援は14.9%と15.2%で0.3ポイントです。一方で訪問系は差が大きく、居宅介護は43.1%と44.6%、重度訪問介護は35.7%と37.2%でいずれも1.5ポイントあります。サービス区分によって判断が変わります。B型で1月当たりの総単位数が28万単位、1単位10円の事業所なら、ⅡイからⅠイへの引き上げによる増収は年約6.7万円です。加算区分そのものより、要件を満たすために届け出る福祉専門職員配置等加算の報酬のほうが大きい場合があります。 Q. 配置等要件を満たせない場合、上位の加算率を取る方法はありますか? A. あります。訪問系以外のサービスなら、令和8年6月以降に新設された加算Ⅱロを算定すると加算Ⅰイより高い加算率になります。就労継続支援B型では加算Ⅱロが10.7%で加算Ⅰイの10.5%を上回り、生活介護(9.6%と9.3%)や児童発達支援(15.5%と15.2%)でも同じ逆転が起きます。ただし居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護の4サービスは加算Ⅰイのほうが高いため、この方法は使えません。加算Ⅱロは加算Ⅱイの要件に令和8年度特例要件を加えたもので、職場環境等要件の生産性向上区分から5以上の取組(⑱と㉑は必須)を実施するか、社会福祉連携推進法人に所属していることに加えて、加算Ⅱロの加算額の2分の1以上を基本給等の改善に充てることが必要です。配置等要件のために有資格者を採用するより、生産性向上の取組を積み上げるほうが現実的な事業所もあります。 Q. 加算Ⅲと加算Ⅳの違いは何ですか? A. キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組みの整備等)を満たすかどうかが違いです。加算Ⅳはキャリアパス要件Ⅲ・Ⅳ・Ⅴを満たさなくても算定でき、加算Ⅲはこのうちキャリアパス要件Ⅲを満たす必要があります。キャリアパス要件Ⅲは、経験や資格等に応じて昇給する仕組み、または人事評価などの一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設け、就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備して全ての福祉・介護職員に周知することを求めるものです。常時雇用する者が10人未満で就業規則の作成義務がない事業所は、内規等の整備と周知でかまいません。就労継続支援B型では加算Ⅳ7.4%と加算Ⅲ8.8%で1.4ポイントの差があり、区分間で最も費用対効果が高い段のひとつです。 Q. 年度の途中で加算区分を上げることはできますか? A. できます。変更の届出(別紙様式4)を、変更後の加算の算定を開始する月の前月15日までに都道府県知事等へ提出します。処遇改善計画書についても変更が生じた場合は届け出ます。逆に、キャリアパス要件Ⅴに関する適合状況が変わり、特定事業所加算を算定できない状況が常態化して3か月以上継続した場合も変更の届出が必要で、4か月以上継続する場合は4か月目以降に加算区分の変更が必要になります。提出方法や独自の締切は自治体によって異なるため、指定権者への確認が必要です。 ### 根拠資料 - 厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年3月31日障障発0331第1号・こ支障第78号)」 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/126420/r8_4_syoguukaizen_jimusyoritejyun.pdf(2026年08月16日確認(大阪府掲載の国通知の写し)) - こども家庭庁・厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001684450.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」 https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム資料)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)(令和8年4月9日事務連絡)」 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/126420/r8_4_syoguu_qa.pdf(2026年08月16日確認(大阪府掲載の国通知の写し)) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 令和8年度の処遇改善加算を 障害福祉の事業所向けに わかりやすく整理する URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shogu-kaizen-kasan-r8/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 令和8年度の福祉・介護職員等処遇改善加算は、令和9年度報酬改定を待たずに実施された期中改定によるものです。このため令和8年度は1年を通して同じ内容ではありません。令和8年4月・5月はⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳの4区分、令和8年6月以降はⅠイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳの6区分で、加算率も算定要件も期間ごとに分かれています。 2026年8月16日時点で適用されているのは令和8年6月以降の内容です。加算率はサービスごと・区分ごとに定められた率を、処遇改善加算を除く各種加算減算後の1月当たりの総単位数に乗じて算定します。月額いくらという金額でも、1日当たりの率でもありません。 - 根拠告示の適用日: 令和8年6月1日(第1条の規定のみ令和8年4月1日から施行) - 加算区分: 令和8年4月・5月はⅠ/Ⅱ/Ⅲ/Ⅳ、令和8年6月以降はⅠイ/Ⅰロ/Ⅱイ/Ⅱロ/Ⅲ/Ⅳ - 加算額の算定方法: 処遇改善加算を除く加減算後の1月当たり総単位数 × 加算区分・サービス類型別の加算率 - 賃上げ水準: 障害福祉従事者に幅広く1人当たり月額1.0万円(3.3%)、生産性向上等に取り組む事業者の福祉・介護職員にさらに1人当たり月額0.3万円(1.0%) - 新たに対象となったサービス: 計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援(令和8年6月以降・一律5.1%) - 令和8年度の実績報告書の期日: 通常の場合、令和9年7月31日 根拠: 厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」(令和8年3月31日障障発0331第1号・こ支障第78号) ### 本文 ## 令和8年度は年度の途中で中身が変わる 令和8年度障害福祉サービス等報酬改定は、令和9年度報酬改定を待たずに実施された期中改定です。国の課長通知は、「『強い経済』を実現する総合経済対策」(令和7年11月21日閣議決定)で人材不足が厳しい障害福祉分野についても賃上げ措置等の支援を行うとされたことを踏まえ、期中改定を実施することとしたと説明しています。 経営側が最初に押さえるのは、この改定が年度の途中から効くという点です。根拠となる令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号の適用は令和8年6月1日で、第1条の規定だけが令和8年4月1日から施行されています。加算率も算定要件も、令和8年4月・5月と令和8年6月以降で別々に定められました。令和8年度を1本の表で処理することはできません。加算の資料を読むときは、それが4月・5月の話なのか6月以降の話なのかを毎回確認する必要があります。 ## 賃上げの水準と、変わった4点 国が示した水準は、職員1人当たりの月額です。事業所当たりでも年額でもありません。障害福祉従事者を対象に幅広く1人当たり月額1.0万円(3.3%)の賃上げを実現する措置に加え、生産性向上や協働化に取り組む事業者の福祉・介護職員を対象に1人当たり月額0.3万円(1.0%)を上乗せする、という組み立てです。通知はさらに、定期昇給0.6万円を含めると福祉・介護職員について合計で最大1人当たり月額1.9万円(6.3%)の賃上げが実現する措置だと注記しています。 制度として変わったのは次の4点です。第一に、加算の対象が福祉・介護職員のみから障害福祉従事者に拡大され、その分が加算率の引上げとして反映されました。第二に、生産性向上や協働化に取り組む事業者への上乗せ区分として加算Ⅰロと加算Ⅱロが新設されました。第三に、これまで対象外だった計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援に加算が新設されました。第四に、ベースアップによる賃上げや生産性向上の取組を後押しする措置が置かれました。いずれも令和8年6月施行です。改定前後の対応関係は[令和8年度改定で何が変わったか](/column/shogu-kaizen-kasan-r8-kaitei/)で扱います。 ## 区分は6つ、加算Ⅴはもうない | 期間 | 選べる加算区分 | | --- | --- | | 令和8年4月・5月 | Ⅰ/Ⅱ/Ⅲ/Ⅳ | | 令和8年6月以降 | Ⅰイ/Ⅰロ/Ⅱイ/Ⅱロ/Ⅲ/Ⅳ | 新設されたロの区分は、独立した別の加算ではありません。加算Ⅰロは加算Ⅰイの算定要件に令和8年度特例要件を加えたもの、加算Ⅱロは加算Ⅱイの算定要件に同じ特例要件を加えたものです。つまり上位区分を取れている事業所が、生産性向上の取組か社会福祉連携推進法人への所属に加えて、加算Ⅱロの加算額の2分の1以上を基本給等の改善に充てるという条件をさらに満たすと、加算率が上に伸びる構造になっています。 経過措置区分だった加算Ⅴは令和7年3月31日までの措置で、今回の告示改正で規定そのものが削られました。令和8年度に加算Ⅴという選択肢はありません。それぞれの区分で何が求められるかは[加算区分の違い](/column/shogu-kaizen-kasan-kubun-chigai/)と[算定要件](/column/shogu-kaizen-kasan-youken/)に整理しています。 ## 加算額は1月当たりの総単位数に率を乗せる 加算の単位数は、サービス別の基本サービス費に処遇改善加算を除く各種加算減算を加えた1月当たりの総単位数に、加算区分とサービス類型別の加算率を乗じて算定します。1日当たりの率ではないため、月の稼働状況がそのまま加算額に効きます。加算率はサービスごとの常勤換算職員数に基づいて設定されているので、サービス間で率の高低を比べても意味はありません。 令和8年6月以降の加算率のうち、主なサービスを抜き出すと次のとおりです。 | サービス | Ⅰイ | Ⅰロ | Ⅱイ | Ⅱロ | Ⅲ | Ⅳ | | --- | --- | --- | --- | --- | --- | --- | | 生活介護 | 9.3% | 9.7% | 9.2% | 9.6% | 7.9% | 6.7% | | 就労移行支援 | 11.5% | 11.9% | 11.3% | 11.7% | 9.8% | 8.1% | | 就労継続支援A型 | 10.8% | 11.2% | 10.6% | 11.0% | 9.1% | 7.5% | | 就労継続支援B型 | 10.5% | 10.9% | 10.3% | 10.7% | 8.8% | 7.4% | | 共同生活援助(介護サービス包括型) | 16.3% | 16.9% | 16.0% | 16.6% | 14.4% | 12.1% | | 放課後等デイサービス | 15.5% | 16.1% | 15.2% | 15.8% | 14.2% | 11.9% | | 児童発達支援 | 15.2% | 15.8% | 14.9% | 15.5% | 13.9% | 11.7% | 新たに対象となった計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援は、区分の枝分かれがなく一律5.1%です。令和8年4月・5月はこれらのサービスの加算率が0%で、算定対象外でした。「令和8年度から対象になった」ではなく「令和8年6月から対象になった」が正確な言い方です。 自事業所のサービスが上に載っていない場合は、通知の別紙1表1-2で確認してください。実際の計算手順は[加算額の計算方法](/column/shogu-kaizen-kasan-keisan/)で扱います。 受け取った加算額は、福祉・介護職員その他の職員の賃金改善に充てます。基本給・手当・賞与等が対象で退職手当は除かれ、賃金改善に伴う法定福利費等の事業主負担の増加分を含めることができます。令和7年度と比べて令和8年度に増えた加算額については、過去の改善実績に関わらず新規に賃金改善を行うこととされ、その新規分はベースアップによることが基本とされました。職種間の配分の考え方は[配分のルール](/column/shogu-kaizen-kasan-haibun/)、基本給での改善については[基本給の扱い](/column/shogu-kaizen-kasan-kihonkyu/)にまとめています。 ## 年間の手続きは届出・計画書・実績報告の3本 | 手続き | 原則の期日 | 令和8年度の取扱い | | --- | --- | --- | | 体制届出 | 算定を開始する月の前月15日まで | 令和8年4月から新規算定または区分変更する場合は令和8年4月1日(都道府県知事等の判断で4月15日でも可)。4月・5月分を算定せず6月以降に算定する場合は令和8年5月15日(同じく6月15日でも可) | | 処遇改善計画書 | 当該事業年度に初めて算定する月の前々月の末日まで | 4月・5月分は6月以降分とあわせて令和8年4月15日。4月・5月分を算定しない事業者は令和8年6月15日 | | 変更の届出 | 変更後の区分で算定を開始する月の前月15日まで | 同左 | | 実績報告書 | 各事業年度の最終の加算の支払があった月の翌々月の末日まで | 令和8年度分は通常の場合、令和9年7月31日 | 計画書と実績報告書は、根拠資料と併せて2年間保存します。複数の事業所を持つ場合は事業者単位で一括して作成して差し支えありません。様式への押印は不要です。都道府県等が様式に変更を加えることは原則として認められず、届出時に全事業者から一律に根拠資料の添付を求めることも認められていません。ただし確認の事務時間が確保できる場合などには都道府県知事等が提出期日を延長できるとされているため、実際の締切は指定権者の案内で確認してください。 賃金改善が加算の算定額に相当する額に届いていない場合や、賃金水準を引き下げながら特別事情届出書を出していない場合は、既に支給された加算の返還または加算の取消しの対象になります。 ## 令和8年度だけの誓約という緩和がある 令和8年度は、要件が申請時点で整っていなくても、処遇改善計画書で令和9年3月末までに対応すると誓約すれば申請時点から満たしているものとして扱う取扱いが置かれました。対象になるのはキャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ、キャリアパス要件Ⅳ、職場環境等要件、そして令和8年度特例要件の一部です。 ただし、キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ・Ⅲと職場環境等要件について誓約が使えるのは、令和8年度特例要件を満たす事業所に限られます。加算Ⅲ・Ⅳで求められる「全体で8以上」の取組の誓約は、特例要件を満たすかどうかに関わらずすべての事業所が使えます。誓約した要件が令和9年3月末までに未対応だったことが確認されると、加算額の一部または全部が返還の対象になります。誓約は締切の先延ばしではなく、年度内に実行する前提の仕組みです。 自事業所がいまどこにいるかは、通知から次の順で確認できます。 1つ目は、令和8年6月以降の体制届出と処遇改善計画書の控えを開いて、算定している区分がⅠイなのかⅠロなのか、あるいはⅡ以下なのかを特定することです。ロが付いているかどうかで、令和8年度特例要件を満たしていると届け出たかが分かります。 2つ目は、ロを取っていない場合に、上の加算率表で自分のサービスのイとロの差を見ることです。上の表の7サービスでは差は0.4〜0.6ポイントです。通知の表1-2に載る全サービスまで広げると、障害児入所施設のように1.5ポイントに達するものもあります。1月当たりの総単位数に乗せる率なので、月の請求規模がそのまま差額になります。区分を上げる場合の変更届は、変更後の区分で算定を開始する月の前月15日までです。 3つ目は、計画書で誓約した要件があるかどうかを確認し、あるなら令和9年3月末までの実施予定日と担当者を決めておくことです。未対応のまま実績報告を迎えると返還になります。実績報告書の期日は通常の場合、令和9年7月31日です。 ## 職員への説明までが加算の実務 加算Ⅰ・Ⅱ(イ・ロを含む)を算定する事業所には、職場環境等の改善に係る取組をホームページ掲載等で公表することが求められます。具体的には障害福祉サービス等情報公表制度を活用し、加算の算定状況と、要件を満たすために実施した取組項目およびその具体的な内容を記載します。加算の話は事業所の外にも出ていくことになります。 社内向けにも、増えた加算額をどう配ったのかを職員に説明できる状態にしておく必要があります。賃金改善は基本給・手当・賞与等のうち対象項目を特定して行うものとされており、どの項目をいくら動かしたかは記録として残ります。説明の組み立て方は[職員への説明](/column/shogu-kaizen-kasan-setsumei/)で扱います。 なお、令和8年度の措置はあくまで期中改定によるものです。令和9年度報酬改定で処遇改善加算がどう扱われるかについては、2026年8月16日時点で公表された一次情報がありません。現時点で分かっているのは令和8年度の枠組みまでです。 ### よくある質問 Q. 令和8年度の処遇改善加算は、令和8年4月から新しい加算率になりますか? A. いいえ、新しい加算率が適用されるのは令和8年6月以降です。令和8年4月・5月はⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳの4区分で通知別紙1表1-1の加算率が適用され、令和8年6月以降にⅠイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳの6区分と表1-2の加算率に切り替わります。根拠告示(令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号)の適用は令和8年6月1日で、第1条の規定のみ令和8年4月1日から施行されています。 Q. 加算率は「月にいくら入る」という意味ですか? A. いいえ、加算率は金額ではなく、1月当たりの総単位数に乗じる率です。基本サービス費に処遇改善加算以外の各種加算減算を加えた1月当たりの総単位数に、加算区分とサービス類型別の加算率を乗じて単位数を算定します。たとえば就労継続支援B型の加算Ⅰイは令和8年6月以降10.5%で、1日当たりではなく1か月分の総単位数に乗せます。 Q. 令和8年度の処遇改善計画書はいつまでに提出しますか? A. 令和8年4月・5月分を算定する事業者は令和8年4月15日まで、4月・5月分を算定せず6月以降に算定する事業者は令和8年6月15日までです。原則は当該事業年度に初めて加算を算定する月の前々月の末日までなので、年度の途中から新規に算定を始める場合はその原則によります。実績報告書は令和9年3月分の加算の支払が令和9年5月であることから、通常の場合、令和9年7月31日が期日です。都道府県知事等は提出期日を延長できるため、指定権者の案内も確認してください。 Q. 加算Ⅰロ・Ⅱロは要件を満たせばすぐ算定できますか? A. 令和8年度特例要件を満たしたうえで、区分変更の届出が必要です。特例要件は、職場環境等要件の生産性向上区分の取組を5つ以上(⑱と㉑は必須)実施するか、事業所が所属する法人が社会福祉連携推進法人に所属していることのいずれかに加えて、加算Ⅱロの加算額の2分の1以上を基本給等の改善に充てることです。変更の届出は、変更後の区分で算定を開始する月の前月15日までに指定権者へ提出します。 Q. 加算Ⅴは令和8年度も算定できますか? A. いいえ、算定できません。加算Ⅴは令和7年3月31日までの経過措置区分で、令和8年の告示改正で規定が削られています。令和8年度に選べる区分は、令和8年4月・5月がⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ、令和8年6月以降がⅠイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳです。 Q. 相談支援も処遇改善加算の対象になりましたか? A. はい、ただし令和8年6月以降です。計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援は令和8年4月・5月は加算率0%で算定対象外、令和8年6月以降は区分の枝分かれがない一律5.1%です。算定要件は、令和8年度特例要件か、加算Ⅳの取得に準ずる要件(キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱと職場環境等要件)のいずれかを満たすことです。 ### 根拠資料 - 厚生労働省・こども家庭庁「「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和8年度分)(令和8年3月31日障障発0331第1号・こ支障第78号)」 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/126420/r8_4_syoguukaizen_jimusyoritejyun.pdf(大阪府ウェブサイト掲載の国通知の写しで確認・2026年8月16日確認) - 厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)(令和8年4月9日事務連絡)」 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/126420/r8_4_syoguu_qa.pdf(大阪府ウェブサイト掲載の国事務連絡の写しで確認・2026年8月16日確認) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム・令和8年2月18日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省・こども家庭庁「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001684450.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について(告示・通知・Q&Aの掲載ページ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202214_00013.html(2026年8月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 令和8年度改定で 処遇改善加算はどう変わったか。 障害福祉事業所への影響を整理 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shogu-kaizen-kasan-r8-kaitei/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 令和8年度の処遇改善加算は、令和8年6月1日から加算率が引き上げられ、生産性向上や協働化に取り組む事業者向けの加算Ⅰロ・Ⅱロが新設されました。令和8年4月・5月は従来どおりⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳの4区分・従来の加算率のままで、同じ年度内でも2つの時期に分かれます(令和8年6月1日適用の告示に基づく、2026年8月16日時点の情報)。 変わったのは加算率(賃上げの対象を福祉・介護職員から障害福祉従事者に広げるための引上げ)、加算区分、対象サービスの範囲、キャリアパス要件Ⅳの金額の4点です。加算額の計算方法(1月当たりの総単位数に加算率を乗じる)と、要件①〜⑦の骨格は変わっていません。 - 改定の適用日: 令和8年6月1日(告示第1条のみ令和8年4月1日施行) - 加算率の例(就労継続支援B型): 4月・5月は加算Ⅰ9.3%/6月以降は加算Ⅰイ10.5%・加算Ⅰロ10.9% - 新設された区分: 加算Ⅰロ・加算Ⅱロ(令和8年6月以降) - 新たに対象となったサービス: 計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援(令和8年6月以降、一律5.1%) - キャリアパス要件Ⅳの金額: 令和8年4月・5月は年額440万円、6月以降は年額460万円 根拠: 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」(令和8年2月18日) ### 本文 ## 同じ令和8年度でも4月・5月と6月以降で中身が違う 令和8年度の報酬改定は、令和9年度報酬改定を待たずに実施された期中改定です。「『強い経済』を実現する総合経済対策」(令和7年11月21日閣議決定)を受けたもので、改定内容は令和8年2月18日の障害福祉サービス等報酬改定検討チームで決まりました。 そのため、令和8年度は年度の途中で加算の姿が切り替わります。改定を反映した告示の適用日は令和8年6月1日で、令和8年4月と5月については従来の加算率・従来の4区分がそのまま続きます。加算率も要件も「いつ時点の話か」を確認しないと読み違える年度です。 ## 加算率はどれだけ上がったのか 今回の引上げには、賃上げの対象を福祉・介護職員のみから障害福祉従事者に広げるという趣旨があります。そのうえで引上げ幅はサービスごと・区分ごとに違い、国は「一律に何%上げた」という示し方をしていません。主なサービスについて、令和8年4月・5月の加算Ⅰと、令和8年6月以降の加算Ⅰイ・Ⅰロを並べると次のようになります。いずれも1月当たりの総単位数に乗じる率です。 | サービス | 4月・5月 加算Ⅰ | 6月以降 加算Ⅰイ | 6月以降 加算Ⅰロ | 4月・5月 加算Ⅳ | 6月以降 加算Ⅳ | | --- | --- | --- | --- | --- | --- | | 就労継続支援B型 | 9.3% | 10.5% | 10.9% | 6.2% | 7.4% | | 就労継続支援A型 | 9.6% | 10.8% | 11.2% | 6.3% | 7.5% | | 就労移行支援 | 10.3% | 11.5% | 11.9% | 6.9% | 8.1% | | 生活介護 | 8.1% | 9.3% | 9.7% | 5.5% | 6.7% | | 共同生活援助(介護サービス包括型) | 14.7% | 16.3% | 16.9% | 10.5% | 12.1% | | 施設入所支援 | 15.9% | 18.6% | 19.3% | 11.5% | 14.2% | | 児童発達支援 | 13.1% | 15.2% | 15.8% | 9.6% | 11.7% | | 放課後等デイサービス | 13.4% | 15.5% | 16.1% | 9.8% | 11.9% | | 居宅介護 | 41.7% | 44.6% | 45.6% | 27.3% | 30.2% | 引上げ幅が特に大きいのは障害児入所施設で、福祉型障害児入所施設の加算Ⅰは21.1%から加算Ⅰイ30.5%、加算Ⅰロ32.0%になりました。一方で就労系サービスの上げ幅は1.2ポイント前後にとどまります。自事業所の率は必ず告示か通知の別紙1で確認してください。 なお、行動援護の加算Ⅰイについては、事務処理手順通知の別紙1表1-2に44.1%という記載がありますが、告示は「1000分の411」、改定事項資料も41.1%としています。宿泊型自立訓練の加算Ⅳについても、通知の表は12.6%ですが、告示の自立訓練(生活訓練)の規定は「1000分の106」です。告示の数値で確認するのが確実です。 ## 新設された加算Ⅰロ・Ⅱロと令和8年度特例要件 令和8年6月以降、加算区分はⅠイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳの6区分になりました。ロの区分は、イの区分の算定要件に加えて「令和8年度特例要件」を満たす場合に算定できる上乗せ区分です。 令和8年度特例要件は、(ア)職場環境等要件の生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組のうち5以上(⑱の現場の課題の見える化と、㉑の業務支援ソフト・情報端末の導入は必須)を実施すること、または(イ)法人が社会福祉連携推進法人に所属していること、のいずれかを満たし、あわせて(ウ)加算Ⅱロの加算額の2分の1以上を基本給等の改善に充てることです。施設入所支援や短期入所のように加算Ⅱロの率が設定されていないサービスでは、(ウ)は加算Ⅰロの加算額の2分の1以上で判定します。 令和8年度に限り、(ア)と(ウ)は令和9年3月末までに対応すると処遇改善計画書で誓約すれば、申請時点から満たしているものとして扱われます。ただし誓約した内容が未対応と確認された場合は、加算額の一部または全部が返還の対象になります。 ## 相談支援3系統が新たに対象になった これまで処遇改善加算の対象外だった計画相談支援、障害児相談支援、地域相談支援(地域移行支援・地域定着支援)に、加算が新設されました。加算率は区分の枝分かれがなく一律5.1%です。 ただしこれも令和8年6月以降の話で、令和8年4月・5月の加算率は0%、つまり対象外です。「令和8年度から対象」とまとめて書くと誤りになります。これらのサービスは、令和8年度特例要件を満たすか、加算Ⅳの取得に準ずる要件(キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱと職場環境等要件)を満たすかのいずれかで算定でき、令和8年度特例要件のうち(ウ)は求められません。 ## 変わった点・変わらなかった点 | 項目 | 令和8年4月・5月 | 令和8年6月以降 | | --- | --- | --- | | 加算区分 | Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳの4区分 | Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳの6区分 | | 加算率 | 従来の率 | 引上げ後の率 | | 相談支援3系統 | 対象外(0%) | 一律5.1% | | キャリアパス要件Ⅳの金額 | 年額440万円以上 | 年額460万円以上 | | 令和8年度特例要件 | 適用なし | 加算Ⅰロ・Ⅱロの算定要件 | | 加算額の計算方法 | 1月当たり総単位数×加算率 | 変更なし | | 要件①〜⑦の骨格 | 月額賃金改善要件・キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅴ・職場環境等要件 | 変更なし(⑧が加わる) | | 月額賃金改善要件の水準 | 加算Ⅳ相当額の2分の1以上 | 変更なし | キャリアパス要件Ⅳの金額は440万円から460万円に上がりましたが、この要件は職場環境等要件を全体で14以上実施していれば満たしているものとして扱われる点は変わりません。年額460万円の判定に法定福利費等の事業主負担は含めません。 加算Ⅴについては、もともと令和7年3月31日までの経過措置として置かれていた規定で、今回の告示改正で条文が削られました。令和8年度に加算Ⅴという選択肢はありません。 ## 手続きで押さえる期日 処遇改善計画書は、令和8年4月・5月分と6月以降分をあわせて令和8年4月15日が提出期日です。様式も別紙様式2-2(4月・5月の個票)と別紙様式2-3(6月以降の個票)に分かれており、1回の提出で両方の期間を計画する建て付けになっています。 体制届出については、令和8年4月から新規に算定する場合や区分を変更する場合の期日が令和8年4月1日とされ、都道府県知事等が令和8年4月15日として差し支えないとされています。令和8年度の実績報告書は、令和9年3月分の加算の支払が令和9年5月であることから、通常の場合は令和9年7月31日が期日です。提出方法や期日の延長の有無は自治体によって異なるため、指定権者の案内で確認してください。 期中改定の年は、加算率の確認を1回で済ませないほうが安全です。まず告示の自事業所のサービスの条文で令和8年6月以降の率を押さえ、そのうえで通知の別紙1表1-1で4月・5月の率を確認してください。通知の表と告示で数値が食い違う箇所があるため、食い違ったときは告示側を正として扱うのが安全です。 ロの区分を狙うかどうかは、職場環境等要件の生産性向上区分で⑱と㉑を含む5項目に届くかで判断が分かれます。㉑の業務支援ソフト・情報端末の導入は費用と導入期間が読める項目なので、ここを起点に残り3項目を洗い出すと計画書の誓約欄まで一気に埋まります。誓約した項目は令和9年3月末までに実施し実績報告書で報告する必要があるため、実施時期まで決めてから誓約してください。 区分ごとの要件の違いは[処遇改善加算の区分の違い](/column/shogu-kaizen-kasan-kubun-chigai/)で、制度の全体像は[令和8年度の福祉・介護職員等処遇改善加算](/column/shogu-kaizen-kasan-r8/)で整理しています。 ### よくある質問 Q. 令和8年4月と5月も加算率は上がりますか。 A. いいえ、令和8年4月・5月の加算率は従来のままです。引き上げられた加算率が適用されるのは令和8年6月1日からで、4月・5月は加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳの4区分と従来の率で算定します。就労継続支援B型であれば4月・5月が加算Ⅰ9.3%、6月以降が加算Ⅰイ10.5%です。 Q. 加算Ⅰロを算定するには何が必要ですか。 A. 加算Ⅰイの算定要件をすべて満たしたうえで、令和8年度特例要件を満たすことが必要です。令和8年度特例要件は、(ア)職場環境等要件の生産性向上区分から5以上の取組(⑱と㉑は必須)を実施するか、(イ)法人が社会福祉連携推進法人に所属していることのいずれかと、(ウ)加算Ⅱロの加算額の2分の1以上を基本給等の改善に充てることの両方です。なお、施設入所支援など加算Ⅱロの率が設定されていないサービスでは、(ウ)は加算Ⅰロの加算額で判定します。 Q. 加算Ⅴは令和8年度も算定できますか。 A. いいえ、令和8年度に加算Ⅴという区分はありません。加算Ⅴは令和7年3月31日までの経過措置として置かれていた規定で、令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号によって条文そのものが削られています。 Q. 加算率が上がった分の賃金改善はどう扱えばよいですか。 A. 令和7年度と比べて増えた加算額は、過去の賃金改善の実績にかかわらず新規に賃金改善を実施する必要があり、その新規分はベースアップにより行うことが基本とされています。賃金体系を整備している途中などベースアップのみでは対応できない場合は、その他の手当や一時金を組み合わせても差し支えないとされています。 Q. 令和8年度の処遇改善計画書はいつまでに出しますか。 A. 令和8年4月・5月分と6月以降分をあわせて、令和8年4月15日が提出期日です。計画相談支援など新たに加算の対象となった事業所のみを運営する事業者など、4月・5月分を算定せず6月以降に算定する場合は令和8年6月15日が期限になります。ただし都道府県知事等が期日を延長することがあるため、指定権者の案内を確認してください。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム、令和8年2月18日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001684450.pdf(2026年08月16日確認。令和8年6月1日適用) - 厚生労働省「指定地域相談支援に要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和8年厚生労働省告示第130号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001684361.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年3月31日 障障発0331第1号・こ支障第78号)」 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/126420/r8_4_syoguukaizen_jimusyoritejyun.pdf(2026年08月16日確認。大阪府サイト掲載の国通知の写し) - 厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)(令和8年4月9日事務連絡)」 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/126420/r8_4_syoguu_qa.pdf(2026年08月16日確認。大阪府サイト掲載の国通知の写し) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(掲載ページ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70634.html(2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 処遇改善加算の「ピンハネ」と 言われないために、 事業所がやるべき説明と記録 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shogu-kaizen-kasan-setsumei/ カテゴリー: 現場・人材 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-09-12 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 処遇改善加算の額と、職員一人ひとりの給与明細に出てくる増額分は、そもそも一致しません。加算額は1月当たりの総単位数に加算率を乗じて計算されるため、月ごとに変動します。配分先は福祉・介護職員だけでなく、施設長や事務員を含む全職種です。賃金改善額には、法定福利費等の事業主負担の増加分も含めることができます。この3つのずれが、職員から見て「加算はいくら入っているのか」「自分の分はどこへ行ったのか」が分からない状態を作ります。国の通知(令和8年度分)は、この見えにくさを事業者側が埋めることを求めています。賃金改善を行う方法等を職員に周知することが定められています。職員から照会があった場合は、当該職員の賃金改善に係る内容を書面を用いるなど分かりやすく回答することも定められています。処遇改善計画書の確認事項にも「本計画書の内容及び賃金改善の方法を雇用する全ての職員に対して周知しました」というチェック欄があり、証明資料の例として会議録と周知文書が挙げられています。誠実に配分していても、周知と記録がなければ疑いを晴らす材料が残りません(2026年8月16日時点、令和8年6月1日適用の取扱い)。 - 職員への周知: 賃金改善を行う方法等を職員に周知する。就業規則等の内容についても周知する(通知8(1)) - 照会があったとき: 当該職員の賃金改善に係る内容について、書面を用いるなど分かりやすく回答する(通知8(1)、Q&A問2-6) - 計画書での誓約: 「本計画書の内容及び賃金改善の方法を雇用する全ての職員に対して周知しました」にチェック。証明資料の例は会議録、周知文書 - キャリアパス要件の周知: キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ・Ⅲは、就業規則等の根拠規程や研修計画を書面で整備し、全ての福祉・介護職員に周知することが要件 - 実績報告での突合: 令和8年度の加算額と令和8年度の賃金改善額を並べ、賃金改善額が加算額以上であることを報告する(別紙様式3-1) - 下回った場合: 算定要件を満たさないものとして返還の対象。ただし不足分を賞与等の一時金として追加配分すれば返還を求めない取扱いも可(Q&A問1-9) - 記録の保存: 処遇改善計画書・実績報告書は根拠資料と併せて2年間保存 根拠: 厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」(令和8年3月31日障障発0331第1号・こ支障第78号) ### 本文 「処遇改善加算って、うちはちゃんと配られているんですか」。職員からこう聞かれて言葉に詰まる場面は、事業所の規模に関係なく起きます。聞かれる側は、必ずしも配分を怠っているわけではありません。それでも聞かれます。加算の額が、職員の側から検算できないからです。 僕は埼玉県志木市で就労継続支援B型の事業所を運営していて、福祉・介護職員等処遇改善加算も算定しています。2026年度の配分は、自分で設計しました。だから、説明する側の面倒くささも分かるつもりです。 先に答えを書きます。加算額と給与明細の増額分は、そもそも一致しません。そして、その見えにくさを埋める周知は、事業所の親切ではなく通知が事業者に求めていることです。 ## なぜ「ピンハネされている」と疑われるのか 疑いが生まれる原因は3つで、加算額が月ごとに動くこと、配分先が全職種であること、金額の性質がずれることです。 不信を持たれる事業所が、配分を怠っているとは限りません。制度の作りそのものが、職員の側から検算できない構造になっています。順に書きます。 1つ目は、加算額が固定額ではないことです。加算の単位数は、1月当たりの総単位数に、加算区分とサービス類型ごとの加算率を乗じて算定します。総単位数は、基本サービス費に各種の加算減算(処遇改善加算を除く)を加えたものです。利用者の出欠や加算の算定状況で総単位数が動けば、加算額も毎月動きます。給与明細に毎月同じ額の手当が並んでいれば、職員からは「加算はもっと入っているのではないか」と見えます。制度上は、年間を通じて加算額以上の賃金改善になるよう、事業者が配分を設計する前提になっています。 うちの2026年度の配分も、僕が自分で設計しました。全部を毎月の固定手当にする形は選ばず、月々の手当と賞与に分けています。賞与の回数は年2回で、多くても年3回までに収めました。理由は単純で、加算額は月ごとに動くのに、毎月の固定手当は簡単には動かせないからです。一度上げた手当を下げるとなれば、就業規則の不利益変更の話になりかねません。**年単位で配分を設計する**ほうが制度の作りに素直だ、というのが僕の読み方です。 2つ目は、配分先が福祉・介護職員に限られないことです。国のQ&Aは、配分の対象に福祉・介護職員以外の全職種が含まれるとしています。想定される職種として挙げられているのは、施設長・管理者、サービス管理責任者、看護職員、相談支援専門員、管理栄養士・栄養士、調理員、事務員等です。生活支援員から見れば、自分の手当が加算額を職員数で割った額より小さいのは当然です。ただ、その前提が共有されていないと不信の材料になります。 3つ目は、金額の性質のずれです。賃金改善額には、賃金改善に伴う法定福利費等の事業主負担の増加分を含めることができます。社会保険料の事業主負担が増えた分は、誰の明細にも現れません。明細上の増額を全職員分足しても、加算額には届かないわけです。 | 職員から見えるもの | 職員から見えないもの | |---|---| | 自分の給与明細の手当・基本給の額 | 月ごとに変動する加算額の実額 | | 賞与の支給額 | 事業所全体の配分の設計と職種ごとの配分 | | 求人票や情報公表制度の記載 | 法定福利費の事業主負担増加分 | | 就業規則・賃金規程 | 加算の支払時期と賃金改善の支給時期のずれ | 支給時期のずれも誤解を生みます。国のQ&Aは、支払の時期を3つ示しています。当月の労働時間に基づき当月中に見込額で支払う方法、翌月中に支払う方法、報酬が振り込まれる翌々月中に支払う方法です。この3つから、事業者が任意に選択してよいとされています。翌々月払いを選べば、4月分の加算に対応する賃金改善は6月の給与になります。この選択を説明していないと、加算率が上がった月と手当が増える月がずれます。その間に不信が育ちます。 正直、この3つのずれを一度の説明で伝えるのは無理だと感じています。だから僕は、話す順番のほうを決めるつもりです。まず加算額は毎月動くと言い、次に配る先は全職種だと言い、そのあとで明細に出ない部分の話をします。金額の話から入らないほうが、最後まで聞いてもらえると思っています。 ## 職員への周知は、どこまでやれば足りるのか 職員への周知は通知8(1)が事業者に求めていて、賃金改善を行う方法等と就業規則等の内容の両方が対象です。 見えにくさを埋める作業は、事業所の親切ではなく通知上の要求です。通知の8(1)は、処遇改善加算を算定する事業者に向けた定めです。当該事業所における賃金改善を行う方法等について、処遇改善計画書を用いるなどにより職員に周知することを求めています。あわせて、就業規則等の内容についても職員に周知することとされています。さらに、職員から処遇改善加算に係る賃金改善に関する照会があった場合の定めがあります。当該職員の賃金改善に係る内容について、書面を用いるなど分かりやすく回答することとされています。同じ内容はQ&A問2-6にも重ねて書かれています。 読み飛ばしやすいのは、周知の対象が賃金改善の方法だけではないところです。**就業規則等の内容も周知の対象**になっています。うちは就業規則と賃金規程を社労士と一緒に整備していますが、整備していて思うのは、**整備と周知は別の作業**だということです。キャリアパス要件Ⅰ・Ⅲは、書面で整備したうえで全ての福祉・介護職員に周知することまでを求めています。しまい込んだままの規程は、要件の側から見れば無いのと同じだと考えています。 周知は算定要件の側からも求められています。整理すると次のとおりです。 | 場面 | 求められていること | 根拠 | |---|---|---| | 計画書の提出時 | 「本計画書の内容及び賃金改善の方法を雇用する全ての職員に対して周知しました」にチェック。証明資料の例は会議録、周知文書 | 別紙様式2-1 確認事項 | | キャリアパス要件Ⅰ | 任用要件と賃金体系を就業規則等の明確な根拠規程として書面で整備し、全ての福祉・介護職員に周知 | 通知3(1)② | | キャリアパス要件Ⅱ | 資質向上の目標と具体的な計画を策定し、研修の実施または研修機会の確保を行い、全ての福祉・介護職員に周知 | 通知3(1)③ | | キャリアパス要件Ⅲ | 昇給の仕組みを就業規則等で書面整備し、全ての福祉・介護職員に周知 | 通知3(1)④ | | 加算Ⅰ・Ⅱの算定時 | 職場環境等の改善に係る取組を、障害福祉サービス等情報公表制度やホームページで外部から見える形で公表 | 通知3(1)⑦ | | 職員から照会があったとき | 当該職員の賃金改善に係る内容を、書面を用いるなど分かりやすく回答 | 通知8(1)、Q&A問2-6 | 常時雇用する者が10人未満で、就業規則の作成義務がない事業所もあります。その場合は、就業規則の代わりに内規等を整備して周知すれば要件を満たします。規模の小ささは、周知を省略してよい理由にはなりません。小さい事業所ほど口頭で済ませたくなりますが、口頭だと手元に残るものがありません。 ## 疑いを晴らす材料は、どこから持ってくるのか 説明の材料の軸は、国民健康保険団体連合会から届く加算額のお知らせと、実績報告書(別紙様式3-1)で突合する数字です。 令和8年度分の実績報告書は、その年度に算定した加算の合計額と、その年度の賃金改善額を並べて書かせる様式です。賃金改善額が加算額以上であることが確認できなければ、算定要件を満たしていないことになります。あわせて、令和7年度の加算と独自の賃金改善の影響を除いた賃金額を比較する欄があります。加算による賃金改善以外の部分で賃金水準を下げていないかも、ここで確認されます。 加算額の書き方は、様式の記入上の注意に定められています。国民健康保険団体連合会から送付される「福祉・介護職員処遇改善加算等総額のお知らせ」および「内訳のお知らせ」に基づいて記入します。事業者が自分で試算した金額ではなく、国保連から届く通知が加算額の根拠になります。 職員への説明でも、この書類が一番強い材料になると思っています。自分で作った集計表は、作った側の都合が入っていると見られても仕方がありません。**国保連から届いた通知**なら、その疑いが立ちません。だから僕は、このお知らせを実績報告用の書類としてだけでなく、説明の材料としても見ています。 実績報告で賃金改善額が加算額を下回った場合は、返還の対象です。ただしQ&A問1-9は、不足する部分を賞与等の一時金として追加的に配分した場合の扱いを示しています。その場合は、返還を求めない取扱いとしても差し支えないとしています。年度が終わってから気づくと、打てる手が限られます。期中に加算額の累計と賃金改善額の累計を突き合わせておく必要があります。 なお通知7は、既に支給された加算の一部もしくは全部を不正受給として返還させるか、加算を取り消すと定めています。対象になるのは次の場合です。 - 加算の算定額に相当する賃金改善が行われていない場合 - 賃金水準の引下げを行いながら、特別事情届出書の届出が行われていない場合 - 虚偽または不正の手段により加算を受けた場合 実務上の争点は、着服の有無ではありません。賃金改善額が加算額に達しているかどうかと、それを証明する記録が残っているかどうかです。ここが押さえられていれば、疑いを向けられたときに出せる材料があります。 説明と記録を、別の作業にしないのが要点です。実務では、次のように組めます。 処遇改善計画書は、職員説明にそのまま使える資料として通知が名指ししています。計画書を提出したら、同じ内容で職員会議の議題に載せます。会議録に日付と出席者と配布資料名を残せば、説明した事実がそのまま記録になります。欠席者に周知文書を配って受領を確認する手順も決めておくと、全員に届いたことを示せます。 国保連から「福祉・介護職員処遇改善加算等総額のお知らせ」が届いたら、月ごとに保管して累計を控えておきます。実績報告のときに加算額を積み直さずに済みます。職員から照会があったときは、その職員の賃金改善の内訳を書いた回答書を作ります。写しは計画書と同じ場所に綴じておく運用が考えられます。 計画書と実績報告書は、根拠資料と併せて2年間の保存が必要です。会議録も周知文書も回答書の写しも同じ2年で管理すれば、実地指導と職員説明の両方に同じ束で対応できます。 ## 取組の公表は、しなければならないのか 加算Ⅰ・Ⅱを算定する事業所は、職場環境等要件を満たすために実施した取組項目とその具体的な取組内容を公表することになっています。 公表の場は、障害福祉サービス等情報公表制度です。処遇改善加算の算定状況も、あわせて報告します。この公表は、求人に応募する人も在籍している職員も見ることができます。取組を書き込んでいる事業所と、項目だけ選んで中身が空欄の事業所では、外から見える誠実さが変わります。 僕はこの欄を、採用と定着の材料として見ています。在籍している職員が読める場所に、事業所が何をしたかが並ぶからです。空欄のまま出すと、真面目に配っている事業所ほど損をすると思っています。書く手間はかかりますが、**中身のある取組内容**を残しておけば、説明を求められたときの材料になります。 制度が求めているのは、加算をいくら受け取ったかの開示ではありません。どういう方法で賃金改善に回したかを、職員が理解できる状態にすることです。順番をつけるなら、配分の設計、周知の記録、国保連の通知の保管の順です。設計だけが先に走ると、説明の材料が手元に残りません。結局、いくら配ったかより、配り方を説明できることが一番大事だと思っています。 ## あわせて読む 配分と要件の全体像は、別の記事にまとめています。 - [処遇改善加算の配分ルール](/column/shogu-kaizen-kasan-haibun/) … 誰にどう配れるかの考え方 - [処遇改善加算の算定要件](/column/shogu-kaizen-kasan-youken/) … 要件の全体像 - [処遇改善加算の計算方法](/column/shogu-kaizen-kasan-keisan/) … 加算額そのものの出し方 - [令和8年度の処遇改善加算](/column/shogu-kaizen-kasan-r8/) … 令和8年度の改定内容 ### よくある質問 Q. 処遇改善加算の額を職員に開示する義務はありますか? A. 加算額そのものを一覧で開示する義務は、通知に定められていません。ただし賃金改善を行う方法等の周知は求められています。通知8(1)は、事業者が賃金改善を行う方法等について処遇改善計画書を用いるなどにより職員に周知し、就業規則等の内容についても周知することとしています。あわせて、職員から賃金改善に関する照会があった場合は、当該職員の賃金改善に係る内容について書面を用いるなど分かりやすく回答することとされています。個々の職員に対する回答は義務に近い扱いになっているため、照会があれば口頭で済ませず書面を残してください。 Q. 加算額と職員の手当の合計が一致しないのは違反ですか? A. 違反とは限りません。賃金改善額には、賃金改善に伴う法定福利費等の事業主負担の増加分を含めることができるとされています。対象は健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・労災保険料等の事業主負担です。その増加分だけ、給与明細に現れる金額の合計は加算額より小さくなります。また配分対象は施設長・管理者、サービス管理責任者、看護職員、相談支援専門員、調理員、事務員等を含む全職種であり、賞与や一時金で配分した分は月々の明細には現れません。ただし合計額が加算額を下回れば返還の対象になります。 Q. 職員から「ピンハネされている」と言われたらどう対応すればよいですか? A. まず書面で回答してください。通知8(1)とQ&A問2-6は、職員から処遇改善加算に係る賃金改善に関する照会があった場合、当該職員の賃金改善に係る内容について書面を用いるなど分かりやすく回答することを求めています。示す材料は、国民健康保険団体連合会から送付される「福祉・介護職員処遇改善加算等総額のお知らせ」による加算額、処遇改善計画書に記載した配分の方法、その職員に適用した改善内容の3点です。回答した書面の写しは実績報告の根拠資料と一緒に保管してください。 Q. 賃金改善が加算額に届かなかった場合はどうなりますか? A. 原則として返還の対象になります。処遇改善加算の算定要件は賃金改善額が加算額以上となることであるため、実績報告で下回れば算定要件を満たさないものとして加算の返還の対象になります。ただしQ&A問1-9は、不足する部分の賃金改善を賞与等の一時金として追加的に配分することで返還を求めない取扱いとしても差し支えないとしています。実績報告書の提出期日(令和8年度分は通常の場合、令和9年7月31日)から逆算して、年度末までに不足の有無を確認してください。 Q. 賃金改善の方法を決めるとき、労使の協議は必要ですか? A. 就業規則の不利益変更に当たる場合は労使の合意が必要です。Q&A問1-10は、処遇改善計画書の内容とキャリアパス要件Ⅰ〜Ⅲを満たすことの書類を、全ての福祉・介護職員等に周知することが必要であるとしています。そのうえで、万が一就業規則の不利益変更に当たるような場合には、合理的な理由に基づき適切に労使の合意を得る必要があるとしています。経営悪化により賃金水準を引き下げる場合も同様に労使の合意が必要で、別紙様式5の特別事情届出書の届出も求められます。 Q. 職場環境等要件の取組は外部に公表する必要がありますか? A. 加算Ⅰ・Ⅱ(Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロを含む)を算定する場合は必要です。通知は、職場環境等の改善に係る取組について、ホームページへの掲載等により公表することとしています。具体的には、障害福祉サービス等情報公表制度を活用して処遇改善加算の算定状況を報告することとしています。あわせて、職場環境等要件を満たすために実施した取組項目とその具体的な取組内容を記載することとしています。同制度以外でも自社サイトを活用するなど、外部から見える形で公表することが求められています。 ### 根拠資料 - 厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)(令和8年3月31日障障発0331第1号・こ支障第78号/大阪府掲載の写し)」 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/126420/r8_4_syoguukaizen_jimusyoritejyun.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)(令和8年4月9日事務連絡/大阪府掲載の写し)」 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/126420/r8_4_syoguu_qa.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(令和8年2月18日 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省・こども家庭庁「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001684450.pdf(2026年08月16日確認) - 大阪府「令和8年度福祉・介護職員等処遇改善加算」 https://www.pref.osaka.lg.jp/o090080/r8_syoguukaizen.html(2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 処遇改善加算の要件一覧 キャリアパス・月額賃金改善・ 職場環境等を区分別に整理 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shogu-kaizen-kasan-youken/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.06.01 ### 結論 令和8年6月以降の福祉・介護職員等処遇改善加算の算定要件は、①月額賃金改善要件、②から⑥のキャリアパス要件Ⅰ〜Ⅴ、⑦職場環境等要件、⑧令和8年度特例要件の8つです(従来から対象のサービス。令和8年3月31日付け障障発0331第1号・こ支障第78号による)。加算Ⅰイは①から⑦をすべて満たす必要があり、加算Ⅱイはキャリアパス要件Ⅴ、加算Ⅲはキャリアパス要件Ⅳ・Ⅴ、加算Ⅳはキャリアパス要件Ⅲ・Ⅳ・Ⅴを満たさなくても算定できます。加算Ⅰロ・Ⅱロは、それぞれ加算Ⅰイ・Ⅱイの要件に⑧を加えて満たします。 - 要件の数: 8つ(①月額賃金改善/②〜⑥キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅴ/⑦職場環境等/⑧令和8年度特例) - 加算Ⅰイ: ①から⑦のすべてを満たす - 加算Ⅳ: ①②③⑦を満たす(キャリアパス要件Ⅲ・Ⅳ・Ⅴは不要) - 加算Ⅰロ・Ⅱロ: 加算Ⅰイ・Ⅱイの要件に⑧令和8年度特例要件を追加 - 職場環境等要件: 全28項目。加算Ⅰ・Ⅱ系は区分ごとに2以上、生産性向上は3以上(⑱必須) - キャリアパス要件Ⅳ: 年額460万円以上の職員を1人以上、または職場環境等要件を全体から14以上 根拠: 厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和8年度分) ### 本文 ## 要件は8つある。「3つの要件」ではない 処遇改善加算の要件を「キャリアパス要件・職場環境等要件・月額賃金改善要件の3つ」と説明する記事をよく見かけますが、令和8年度の通知が定めている要件は8つです。①月額賃金改善要件、②から⑥のキャリアパス要件Ⅰ〜Ⅴ、⑦職場環境等要件、⑧令和8年度特例要件に分かれており、加算区分ごとに必要な組み合わせが違います。 以下は、従来から処遇改善加算の対象だったサービス(通知別紙1の表1-1・表1-2に掲げるサービス)の話です。令和8年6月から新たに対象になった計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援は要件の立て付けが別なので、最後に触れます。 ## どの要件がどの区分に必要か 通知は、加算Ⅰイについて①から⑦をすべて満たすことを求めたうえで、下位区分では免除される要件を示す形をとっています。令和8年6月以降の6区分を整理すると次のようになります。 | 要件 | Ⅰイ | Ⅰロ | Ⅱイ | Ⅱロ | Ⅲ | Ⅳ | | --- | --- | --- | --- | --- | --- | --- | | ①月額賃金改善要件 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | | ②キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系の整備等) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | | ③キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | | ④キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組みの整備等) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | - | | ⑤キャリアパス要件Ⅳ(改善後の年額賃金要件) | ○ | ○ | ○ | ○ | - | - | | ⑥キャリアパス要件Ⅴ(配置等要件) | ○ | ○ | - | - | - | - | | ⑦職場環境等要件 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | | ⑧令和8年度特例要件 | - | ○ | - | ○ | - | - | 上の区分ほど要件が積み上がる構造です。特に⑥キャリアパス要件Ⅴは福祉専門職員配置等加算(居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護では特定事業所加算)の届出があるかどうかで機械的に決まるため、加算Ⅰイ・Ⅰロを狙えるかどうかはここで先に切り分けられます。ただし重度障害者等包括支援、施設入所支援、短期入所、就労定着支援、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援は、配置等要件に関する加算がないためこの要件自体が不要です。 ## ①月額賃金改善要件は「付け替え」で満たせる ①は、加算Ⅳの加算額の2分の1以上を基本給等(基本給または決まって毎月支払われる手当)の改善に充てる要件です。加算Ⅳ以外の区分を算定する場合は、仮に加算Ⅳを算定したとしたら見込まれる加算額の2分の1以上が基準になります。 見落とされがちですが、通知は「処遇改善加算を未算定の事業所が新規に算定し始める場合を除き、本要件を満たすために、賃金総額を新たに増加させる必要はない」と明記しています。手当や一時金で行っている賃金改善の一部を減額し、基本給等に付け替える形でも構いません。なお、通勤手当や扶養手当は「決まって毎月支払われる手当」に含まれません。 ## ②〜⑥キャリアパス要件は5本立て キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ・Ⅲは書面と周知が中心です。Ⅰは職位・職責・職務内容等に応じた任用等の要件とそれに対応する賃金体系を定め、就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備して全ての福祉・介護職員に周知することを求めます。Ⅱは資質向上の目標と具体的な計画を福祉・介護職員と意見を交換しながら策定し、研修の実施または研修機会の確保を行って周知することです。Ⅲは経験や資格等に応じて昇給する仕組み、または一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けて書面で整備し、周知することを求めます。このうちⅠとⅢの書面整備は、常時雇用する者の数が10人未満など労働法規上の就業規則の作成義務がない事業所であれば、就業規則の代わりに内規等の整備と周知で足ります。 キャリアパス要件Ⅳは性格が違い、経験・技能のある福祉・介護職員のうち1人以上について、賃金改善後の賃金見込額が年額460万円以上であることを求めます(改善前に既に年額460万円以上の職員は除きます)。ここには代替ルートがあり、⑦職場環境等要件で全体から14以上の取組を実施していれば満たしているものとして扱われます。年額460万円は令和8年6月以降の金額で、令和8年4月・5月に適用される通知別紙1表2-1の見出しでは440万円と示されています。 「経験・技能のある福祉・介護職員」は、介護福祉士等の資格を持ち所属法人での勤続年数が10年以上の職員を基本としつつ、各事業者の裁量で設定できます。国のQ&Aは、介護福祉士の資格を持つ職員がいない小規模事業所では資格を有さない職員を計上して差し支えないとしています。 要件の確認は、上位区分から順に見るよりも、⑥配置等要件と⑤年額460万円の2つを先に潰したほうが早く終わります。⑥は福祉専門職員配置等加算等の届出があるかどうかだけで決まり、⑤は職場環境等要件を全体から14以上実施すれば代替できるためです。この2つの結論が出た時点で、狙える上限の区分がほぼ確定します。 加算Ⅰイ・Ⅰロを算定している場合は、元になる加算の算定状況を毎月見ておく必要があります。特定事業所加算を算定できない状況が常態化して4か月以上続くと、4か月目以降は区分変更が必要になります。 ## ⑦職場環境等要件は6区分28項目 職場環境等要件は全28項目で、次の6区分に分かれます。必要な取組数は、区分と加算区分の組み合わせで決まります。 | 職場環境等要件の区分 | 加算Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ | 加算Ⅲ・Ⅳ | ⑧特例要件(ア) | | --- | --- | --- | --- | | 入職促進に向けた取組 | 2以上 | 1以上 | - | | 資質の向上やキャリアアップに向けた支援 | 2以上 | 1以上 | - | | 両立支援・多様な働き方の推進 | 2以上 | 1以上 | - | | 腰痛を含む心身の健康管理 | 2以上 | 1以上 | - | | やりがい・働きがいの醸成 | 2以上 | 1以上 | - | | 生産性向上のための取組 | 3以上(⑱は必須) | 2以上 | 5以上(⑱と㉑は必須) | | 全体 | 通知本文に規定なし | 8以上 | - | 各項目は、項目内に列挙されている取組のうち1つ以上を満たせば足ります。1法人あたり1施設または1事業所のみを運営するような小規模事業者は、㉔(各種委員会の共同設置など協働化を通じた職場環境の改善)を実施していれば生産性向上区分の要件を満たします。前年度から継続して算定する場合は、従前の取組を続けていれば足ります。 加算Ⅰ・Ⅱ系の区分では、取組内容をホームページ掲載等により公表することも求められます。具体的には障害福祉サービス等情報公表制度を使い、加算の算定状況と、要件を満たすために実施した取組項目およびその具体的な取組内容を記載します。 なお「全体で14以上」は、通知本文では加算Ⅰ・Ⅱ系の必須要件ではなく、キャリアパス要件Ⅳの代替として位置づけられています。一方で通知別紙1の表2-2には加算Ⅰ・Ⅱ系の欄にも記載があるため、実際の扱いは指定権者に確認してください。 ## ⑧令和8年度特例要件は加算Ⅰロ・Ⅱロの入口 加算Ⅰロ・Ⅱロは令和8年6月に新設された上乗せ区分で、それぞれ加算Ⅰイ・Ⅱイの要件に⑧を加えて算定します。⑧は、(ア)生産性向上区分から5以上の取組(うち⑱と㉑は必須)を実施すること、または(イ)法人が社会福祉法第128条第1号イに規定する社会福祉連携推進法人に所属していることのいずれかに加えて、(ウ)加算Ⅱロの加算額の2分の1以上を基本給等の改善に充てることで構成されます。 ⑧が重要なのは、加算率の上乗せだけが理由ではありません。令和8年度に限り、キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ・Ⅲと職場環境等要件について令和9年3月末までの対応を誓約して申請できるのは、申請時点で⑧を満たす(誓約を含む)事業所に限られます。要件整備が途上の事業所ほど、⑧を満たせるかどうかが取れる区分を左右します。誓約した要件が未対応と確認された場合は、加算額の一部または全部が返還の対象になります。 ## 相談支援3サービスは立て付けが別 令和8年6月から新たに対象になった計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援は、①令和8年度特例要件、または②加算Ⅳの取得に準ずる要件(キャリアパス要件Ⅰ、キャリアパス要件Ⅱ、職場環境等要件で区分ごとに1以上・生産性向上は2以上)のいずれかを満たせば算定できます。①の場合は(ア)または(イ)だけでよく、(ウ)の基本給等への充当は求められません。 区分ごとの加算率や届出の期日は[令和8年度の処遇改善加算](/column/shogu-kaizen-kasan-r8/)、改定前後の差分は[令和8年度改定で処遇改善加算はどう変わったか](/column/shogu-kaizen-kasan-r8-kaitei/)、加算額の計算方法は[処遇改善加算の計算方法](/column/shogu-kaizen-kasan-keisan/)で扱っています。 ### よくある質問 Q. 加算Ⅰイと加算Ⅱイの違いは何ですか? A. 要件上の違いはキャリアパス要件Ⅴ(配置等要件)の1点だけです。加算Ⅰイは福祉専門職員配置等加算(居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護は特定事業所加算)の届出を行っていることが必要で、加算Ⅱイはこれを満たさなくても算定できます。他の①から⑤および⑦の要件は同じです。 Q. キャリアパス要件Ⅳの「年額460万円以上」は必ず1人以上必要ですか? A. いいえ、職場環境等要件で全体から14以上の取組を実施している場合は、キャリアパス要件Ⅳを満たしているものとして扱われます。年額460万円の判定は手当等を含めて行い、社会保険料等の事業主負担その他の法定福利費等は含めません。法人単位で申請する場合は、一括申請する事業所の数以上の人数が法人全体でこの水準を満たしていれば足ります。 Q. 就業規則がない事業所でもキャリアパス要件Ⅰは満たせますか? A. 満たせます。常時雇用する者の数が10人未満など労働法規上の就業規則の作成義務がない事業所は、就業規則の代わりに内規等を整備して全ての福祉・介護職員に周知することで、書面整備・周知の要件を満たすものとされています。国のQ&A(令和8年4月9日事務連絡)は、法人全体の取扱要領や内規等を想定していると説明しています。 Q. 令和8年度中に要件がまだ整っていなくても加算は算定できますか? A. 条件付きで算定できます。令和8年度特例要件を満たす事業所に限り、キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ・Ⅲと職場環境等要件について、令和9年3月末までに対応すると処遇改善計画書で誓約すれば、申請時点から要件を満たしているものとして扱われます。加算Ⅲ・Ⅳの「全体で8以上」の取組は、特例要件を満たさない事業所でも誓約が認められます。誓約した要件が未対応と確認された場合は加算額の一部または全部が返還の対象になります。 Q. 加算Ⅰロ・Ⅱロを算定するには何が追加で必要ですか? A. ⑧令和8年度特例要件が追加で必要です。(ア)職場環境等要件の生産性向上区分から5以上の取組(うち⑱と㉑は必須)を実施するか、(イ)法人が社会福祉連携推進法人に所属していることのいずれかに加えて、(ウ)加算Ⅱロの加算額の2分の1以上を基本給等の改善に充てることを満たします。加算Ⅱロの加算率が設定されていないサービスでは、(ウ)は加算Ⅰロの加算額の2分の1以上となります。 ### 根拠資料 - 厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)(令和8年3月31日 障障発0331第1号・こ支障第78号)」 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/126420/r8_4_syoguukaizen_jimusyoritejyun.pdf(2026年08月16日確認。国が発出した通知だが、2026年8月16日時点で厚生労働省サイトに令和8年度分の掲載を確認できないため大阪府掲載の写しを参照した) - 厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)(令和8年4月9日事務連絡)」 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/126420/r8_4_syoguu_qa.pdf(2026年08月16日確認。大阪府掲載の写し) - こども家庭庁・厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001684450.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(令和8年2月18日 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf(2026年08月16日確認) - 大阪府「令和8年度福祉・介護職員等処遇改善加算」 https://www.pref.osaka.lg.jp/o090080/r8_syoguukaizen.html(2026年08月16日確認。国通知の掲載元) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 就労選択支援とは? 事業所運営者が押さえる 制度の全体像 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shurou-sentaku-shien/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2025.10.01 ### 結論 就労選択支援は、2025年10月1日に施行された障害福祉サービスです。障害のある本人が、就労先や働き方をより良く選べるようにすることを目的としています。手法は就労アセスメントで、本人の希望・就労能力・適性に合った選択を支援します。 2026年8月16日時点では、新たに就労継続支援B型を利用する意向のある人が、原則としてこのサービスを先に利用します。2027年4月以降は対象が広がる予定とされています。加わるのは、新たに就労継続支援A型を利用する場合と、就労移行支援を標準利用期間を超えて利用する場合の2つです。 - 施行日: 2025年10月1日(令和7年10月1日) - 対象者: 就労移行支援または就労継続支援を利用する意向がある人、および現に利用している人 - 基本報酬: 就労選択支援サービス費 1,210単位/日 - 人員基準: 就労選択支援員を常勤換算で利用者数÷15以上(サービス管理責任者の配置は不要) - 支給決定期間: 1か月または2か月のうち市町村が定める期間(原則1か月) - 全国の事業所数: 965事業所(令和8年6月時点) 根拠: 厚生労働省「就労選択支援の実施について」(令和7年3月31日障障発0331第3号/令和7年9月30日改正) ### 本文 ## 何のために作られた制度か 就労選択支援は、法律の改正によって新しく置かれた障害福祉サービスです。根拠は障害者総合支援法第5条第13項です。この条は、障害者総合支援法と児童福祉法の一部を改正する法律(令和4年法律第104号)で新設されました。 厚生労働省は、このサービスの狙いを次のように説明しています。障害のある本人が就労先や働き方についてより良い選択ができるようにすることです。その手段が就労アセスメントで、本人の希望、就労能力や適性等に合った選択を支援します。 制度上の対象は、就労移行支援または就労継続支援を利用する意向を有する人と、現にそれらを利用している人です。これから就労系サービスに入る人だけが対象ではありません。すでに使っている人が働き方を選び直す場面も想定されています。 もともと就労継続支援B型の利用にあたっては、就労移行支援事業者等による就労アセスメントが必要でした。就労選択支援は、その役割を**専門的・中立的な立場の事業所に切り出した**ものです。多機関でのケース会議を通じて結果をつくるところまでを、一つのサービスにしました。こう理解すると位置づけをつかみやすくなります。 ## サービスの骨格 運営者としてまず押さえるのは、次の枠組みです。日中活動系のサービスとは設計思想がかなり違います。 | 項目 | 内容 | | --- | --- | | 根拠 | 障害者総合支援法第5条第13項(令和4年法律第104号による改正) | | 施行 | 2025年10月1日 | | 事業内容 | 本人への情報提供、作業場面等を活用した状況把握、多機関連携によるケース会議、アセスメント結果の作成と連絡調整 | | 支給決定期間 | 1か月または2か月のうち市町村が定める期間(原則1か月) | | 利用日数上限 | 各月の暦日数から8日を控除した日数 | | 基本報酬 | 就労選択支援サービス費 1,210単位/日 | | 人員 | 就労選択支援員を常勤換算で利用者数÷15以上 | | 個別支援計画 | 作成不要。サービス管理責任者の配置も求められない | | 主な減算 | 特定事業所集中減算 1日につき200単位 | 短期間で完結し、**個別支援計画もサービス管理責任者も不要**という点が特徴です。その代わり、事業内容のうち未実施の項目があると、基本報酬そのものが算定できません。支援記録を1日単位で残すことも前提になっています。利用の流れと期間の考え方は[利用の流れと期間](/column/shurou-sentaku-shien-nagare-kikan/)で詳しく扱います。 ## 既存の就労系サービスとどう接続するか 対象は一度に広がるのではなく、**段階的に広がる設計**です。 | 時期 | 就労継続支援B型 | 就労継続支援A型 | 就労移行支援 | | --- | --- | --- | --- | | 2025年10月〜 | 新規利用希望者は就労選択支援事業所のアセスメントが要件 | 従来どおり | 従来どおり | | 2027年4月〜(予定) | 引き続き対象 | 新たに利用する場合が対象 | 標準利用期間を超えて利用する場合が対象 | B型については、従来からの対象者の扱いが変わっていません。次の人はこれまでどおりです。 - 就労経験があり、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった人 - 50歳に達している人または障害基礎年金1級受給者 変わったのは、そのどちらにも当てはまらない**利用希望者の要件**です。2025年10月以降は、就労選択支援事業所によるアセスメントが要ります。そこで就労面の課題等の把握が行われていることが求められます。 ただし、地域の事情による例外が2つ置かれています。次のどちらかに当たる場合は、従来どおり就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経たB型利用が認められます(障障発0331第3号 1の(2))。 - 最も近い就労選択支援事業所であっても通所することが困難である等で、近隣に事業所がない場合 - 利用可能な事業所数が少なく、就労選択支援を受けるまでに待機期間が生じる場合 2027年4月以降の取扱いは、厚生労働省が改めて示すとしています。2026年8月16日時点で詳細な通知は出ていません。 関連する記事にまとめています。 - [対象者の範囲](/column/shurou-sentaku-shien-taishousha/) … 誰が対象になるかの詳細 - [施行時期](/column/shurou-sentaku-shien-itsukara/) … いつ何が変わるかの整理 ## 自事業所への影響を2つの立場で見る **利用者を受け入れる側**(B型・A型・就労移行支援)から見ると、入口の手続きが変わります。B型では、新規の相談を受けた時点で相談支援専門員に確認することが2つあります。その人が就労選択支援の対象かどうかと、対象なら支給決定がどうなっているかです。どちらも早い段階で確認する必要があります。 また、就労系サービスの事業者には、計画相談支援を行う者と連携することが求められています。支給決定の更新時など定期的に就労選択支援に関する情報提供を行い、利用を促すことも求められています。 **参入する側**から見ると、指定のハードルと中立性の制約が判断材料になります。実施主体になれるのは、次の両方を満たす事業者だけです。 - 就労移行支援または就労継続支援の指定障害福祉サービス事業者であること - 過去3年以内に、その事業者の事業所から合計3人以上の利用者が新たに通常の事業所に雇用されたこと(これと同等の実績があると都道府県知事が認める場合を含む) 「過去3年以内」の起算日は、指定申請があった日の前月の末日です。参入の可否は[実施主体と参入条件](/column/shurou-sentaku-shien-doko-ga-yaru/)で詳しく整理します。 全国の指定状況は、令和8年6月時点で965事業所です(都道府県532、指定都市213、中核市220)。空白の指定権者もまだ残っており、地域によって供給には差があります。 ## 中立性の制約が経営判断を縛る この制度でもっとも独特なのは、**自法人への送客が構造的に封じられている**点です。 就労継続支援や就労移行支援を利用中の人が、受給者証の更新や事業所の変更を検討して就労選択支援を使う場面があります。このとき、いま通っている事業所と同一法人が運営する就労選択支援は利用できません。近隣に別法人の事業所がない場合だけ例外が認められます。 さらに、半年ごとの判定期間ごとに、アセスメントを終えた利用者の移行先を集計します。就労移行支援・A型・B型のいずれかで**同一法人の占める割合が80%を超える**と、特定事業所集中減算が適用されます。集計書類は80%を超えなかった場合も5年間の保存が必要です。 アセスメント結果の位置づけも通知に明記されています。就労選択支援事業者が判断・決定するものではない、という内容です。決めないのは、本人の就労の可否、利用すべきサービス、利用する事業所の3つです。利用サービスのあっせんを行う立場ではない、という前提になります。この制約をどう読むかは[デメリットと課題](/column/shurou-sentaku-shien-demerit/)でも取り上げます。 受け入れ側の事業所が用意しておく段取りは、通知から3つに整理できます。 1つ目は、新規の見学・相談を受けた時点で、相談支援専門員に就労選択支援の利用状況と支給決定の見通しを確認することです。B型の場合、対象者に当たるかどうかで入口の手順が変わります。 2つ目は、多機関連携によるケース会議に呼ばれたときの対応者と日程調整の窓口を決めておくことです。会議は個々のケースに応じて必要な機関を集める形なので、依頼は不定期に来ます。 3つ目は、受け取ったアセスメント結果を個別支援計画にどう引き継ぐかを決めておくことです。アセスメントは原則1年以内に実施されたものを活用する扱いなので、実施時期も合わせて記録に残しておく必要があります。 ## 人員と研修をどう手当てするか 就労選択支援員は、常勤換算方法で利用者の数を15で除した数以上を配置します。一体的に運営する就労移行支援事業所等の常勤の職業指導員など直接処遇職員は、サービス提供に支障がなければ兼務できます。その勤務時間は常勤換算に算入できます。 要件は就労選択支援員養成研修の修了です。ただし令和9年度末までは経過措置があります。**基礎的研修または同等以上の研修の修了者**を、就労選択支援員とみなすことができます。令和8年度の養成研修は国が実施し、東京会場と大阪会場でそれぞれ10回、受講料は無料です。受講要件と申込みの流れは[就労選択支援員養成研修](/column/shurou-sentaku-shien-in-kenshu/)にまとめています。 なお、就労移行支援と就労選択支援は名前も対象も似ています。それでも支援の目的も期間も報酬の考え方も別物です。違いの整理は[就労移行支援との違い](/column/shurou-sentaku-shien-ikou-chigai/)を参照してください。 ### よくある質問 Q. 就労継続支援B型を新しく利用してもらうとき、必ず就労選択支援を経由しますか? A. 原則として経由しますが、例外があります。2025年10月以降、B型の新規利用希望者には新しい要件が加わりました。就労選択支援事業者によるアセスメントで、就労面の課題等の把握が行われていることです。ただし、次の3つに当たる人は除かれます。就労経験があり年齢や体力の面で一般企業への雇用が困難になった人、50歳に達している人、障害基礎年金1級受給者です。地域の事情による例外も2つあります。1つは、最も近い就労選択支援事業所であっても通所することが困難である等で、近隣に事業所がない場合です。もう1つは、利用可能な事業所数が少なく、就労選択支援を受けるまでに待機期間が生じる場合です。この2つに当たるときは、従来どおり就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経たB型利用が認められています。 Q. 就労選択支援の基本報酬はいくらですか? A. 就労選択支援サービス費は1日につき1,210単位です。根拠は令和8年6月施行分の報酬算定構造です。1か月あたりの利用日数は、各月の暦日数から8日を控除した日数が上限です。支給決定期間は原則1か月です。算定できるのは、利用者に直接支援を行った日です。利用者が同席するケース会議や企業訪問は算定対象になります。関係機関との連絡調整だけを行った日は算定できません。 Q. 自法人のB型に利用者を集める目的で就労選択支援を始められますか? A. できません。就労継続支援や就労移行支援を利用中の人が、受給者証の更新や事業所の変更を検討して就労選択支援を使う場面を考えます。このとき、いま通っている事業所と同一法人が運営する就労選択支援は利用できません。近隣に別法人の事業所がない場合だけが例外です。加えて、アセスメント後の移行先が同一法人に80%を超えて集中すると、特定事業所集中減算として1日につき200単位が減算されます。 Q. 就労選択支援員をすぐに配置できますか? A. 経過措置に該当すれば配置できます。本来の要件は、就労選択支援員養成研修の修了です。ただし令和9年度末までは、基礎的研修または同等以上の研修の修了者を就労選択支援員とみなせます。同等以上の研修は4つあります。就業支援基礎研修と、訪問型職場適応援助者養成研修が該当します。サービス管理責任者研修と相談支援従事者研修は、いずれも専門コース別研修の就労支援コースが該当します。令和8年度の養成研修は東京・大阪の各会場で10回ずつ、定員は各回100人予定、受講料は無料です。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「就労選択支援について(掲載ページ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_56733.html(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「「就労選択支援の実施について」の一部改正について(令和7年9月30日障障発0930第3号/新旧対照表)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001571813.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年6月施行分)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001663319.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「就労選択支援について(社会保障審議会障害者部会 第145回 資料6・令和7年1月30日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001389440.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「就労選択支援事業所数(令和8年6月31日現在)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001737866.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「令和8年度就労選択支援員養成研修のご案内」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001698718.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」等の一部改正について(令和7年3月31日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001472120.pdf(2026年8月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 就労選択支援の デメリットと課題を 事業所経営の視点で整理する URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shurou-sentaku-shien-demerit/ カテゴリー: 経営・収支 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2025.10.01 ### 結論 就労選択支援は2025年10月1日に施行され、新たに就労継続支援B型を利用する意向がある人は、原則として先に就労選択支援を利用することになりました。事業所側の負担は大きく3つに分かれます。B型の受け入れまでに支給決定と利用の期間が一段挟まること、実施する側では支給決定期間が原則1か月の日払い報酬であること、そして移行先が同一法人に偏ると減算がかかる形で中立性が求められることです(2026年8月16日時点)。 - 施行日: 2025年10月1日(令和7年10月1日) - 支給決定期間: 原則1か月(例外事由に該当する場合のみ2か月または再度1か月) - 基本報酬: 就労選択支援サービス費 1,210単位/日 - 中立性の制約: 特定事業所集中減算 200単位/日(同一法人への移行が80%超のとき) - 実施事業所数: 全国965か所(令和8年6月時点の指定状況) 根拠: 厚生労働省「就労選択支援の実施について」(令和7年3月31日障障発0331第3号、最終改正 令和7年9月30日障障発0930第3号) ### 本文 ## 何のために作られた制度なのか 就労選択支援は、障害者総合支援法と児童福祉法の改正法(令和4年法律第104号)にもとづいて創設され、2025年10月1日から新たな障害福祉サービスとして始まりました。厚生労働省の説明では、本人が就労先や働き方をより良く選べるように、就労アセスメントの手法を使って希望や就労能力、適性に合った選択を支援するサービスと位置づけられています。 この趣旨そのものに反対する事業所は少ないと思います。困るのは、趣旨と、日々の運営で発生する手間や収支のあいだにあるずれのほうです。以下では確認できる範囲の制度の中身に絞って、事業所側で何が起きるかを整理します。 ## B型を運営する側から見た受け入れ導線の変化 2025年10月から、就労継続支援B型は「就労選択支援事業者によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者」が利用対象に加わりました。新たにB型を利用する意向がある場合は、あらかじめ就労選択支援を利用することになります。 一方で、50歳に達している人、障害基礎年金1級の受給者、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった人については、就労選択支援を経ずにB型を利用できます。見学の段階でどちらに当たるかを確認できるかどうかで、その後の段取りが変わります。 見落としやすいのは、就労選択支援の支給決定期間が原則1か月とされている点です。B型の支給決定は就労選択支援が終わったあとに改めて必要になるため、市区町村が短期間に複数回の支給決定を行うことになります。この点は通知にも明記されていて、認定調査の簡略化などの取扱いが示されています。制度上、受け入れまでの日数が従来より長くなる方向に働くため、見学から利用開始までの期間は余裕を持って伝えたほうが無難です。 新規の見学を受けた段階で、就労選択支援を経ずにB型を利用できる要件(50歳以上、障害基礎年金1級、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業への雇用が困難)に当たるかどうかを先に確認しておくと、その後の案内が変わります。 要件に当たらない場合は、相談支援事業所と近隣の就労選択支援事業所を早い段階でつなぎ、就労選択支援の支給決定に原則1か月かかることを前提にスケジュールを組んでおくと、見込みのずれが小さくなります。 ## 実施する側の負担と収支の読みにくさ 就労選択支援を自事業所で実施する場合、報酬は就労選択支援サービス費として1日あたり1,210単位が設定されています。ここで注意が必要なのは、算定できるのが利用者に直接支援を行った日に限られることです。利用者が同席する多機関連携会議や企業訪問は算定の対象になりますが、関係機関との連絡調整だけを行った日は対象になりません。 さらに、サービス提供記録には1日単位で支援内容を記録することとされ、事業内容のうち未実施の事項がある場合は「適切に提供していない」として全体が報酬算定の対象外になります。アセスメント、ケース会議、アセスメントシートの作成、事業者等との連絡調整という4つの工程を、記録として揃えられるかどうかが収入に直結します。 人員配置は、就労選択支援員を常勤換算で利用者数を15で除した数以上とされ、1人未満の配置でも差し支えないとされています。一体的に運営する就労移行支援事業所等の常勤の職業指導員などが兼務することも可能です。ただし兼務でまかなうということは、既存事業の人手を割くということでもあります。 ## 中立性の確保が事業運営に課す制約 就労選択支援には「専門的・中立的な役割」が期待されており、アセスメントシートに想定される事業所名を書くことはあっても、それは支給決定に向けた参考情報にすぎず、利用サービスのあっせんを行うものではないと通知に書かれています。 これを担保する仕組みが特定事業所集中減算です。判定期間にアセスメントを終えた利用者の移行先を集計し、就労移行支援、A型、B型のいずれかで移行先として最も多い法人の割合が80%を超えると、1日あたり200単位が減算されます。判定は年2回で、書類の作成はすべての就労選択支援事業者に求められ、80%を超えた場合は指定権者への提出、超えなかった場合も5年間の保存が必要です。移行先が決まっていない利用者については、アセスメント終了から少なくとも1年間、定期的に移行先を把握し続けることとされています。 自法人のB型に引き継ぐこと自体が禁じられているわけではありませんが、割合を管理し記録に残す作業が恒常的に発生します。地域にそのサービスの事業所が5事業所未満である場合など、正当な理由として例示されているものもあるため、該当しそうなら根拠を残しておく価値があります。 ## 実施事業所の数と地域差 厚生労働省が公表している指定状況では、就労選択支援事業所は全国で965か所です(令和8年6月時点、都道府県532、指定都市213、中核市220の合計)。都道府県が指定権者となる区域では、福島県と岡山県が0か所と記載されています。 制度側もこの点は織り込んでおり、最も近い就労選択支援事業所であっても通所が困難な場合や、利用できる事業所が少なく待機期間が生じる場合には、従来どおり就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経たB型の利用を認めるとされています。自分の商圏でこの扱いになるかどうかは市町村の判断になるため、あらかじめ確認しておくのが現実的です。 ## 論点と打てる手 | 論点 | 事業所への影響 | 打てる手 | | --- | --- | --- | | 利用開始までの段取りが増える | 新規B型利用者は就労選択支援の支給決定(原則1か月)と利用を挟むため、見学から利用開始までが長くなる | 見学時に除外要件の該当を確認し、該当しない場合は相談支援事業所と就労選択支援事業所へ早めにつなぐ | | 近隣に実施事業所がない・待機が出る | 受け入れ時期が読めなくなる | 近隣にない場合や待機が生じる場合は従来の就労アセスメントを経たB型利用が認められているため、市町村に取扱いを確認しておく | | 報酬が日ごとの出来高になる | 直接支援を行った日のみ算定。連絡調整だけの日は対象外。未実施の工程があると全体が算定対象外 | サービス提供記録を1日単位で残し、4工程の実施を記録で示せる形にする | | 支給決定が原則1か月 | 1人あたりの利用が短く、新規の紹介が途切れると稼働が空く | 相談支援事業所、特別支援学校、行政など紹介経路を複数持つ | | 中立性の確保が求められる | 移行先が同一法人に80%超集中すると200単位/日の減算。全事業者に年2回の書類作成と5年保存 | 判定期間ごとに移行先の内訳を集計し、正当な理由に当たる事情は根拠を残す | | 就労選択支援員の確保 | 養成研修は東京・大阪の2会場、各10回、各回定員100人(予定) | 令和9年度末までの経過措置の期間内に受講計画を立てる | ## 現時点で見通せないこと 令和9年4月以降は、新たにA型を利用する場合や、標準利用期間を超えて就労移行支援を利用する場合も就労選択支援の対象とする予定とされています。ただし通知は「令和9年4月以降の取扱いについては改めてお示しします」と述べるにとどまり、2026年8月16日時点でその取扱いを示した通知は確認できませんでした。対象が広がる前提で準備を進めること自体は妥当ですが、確定した条件として計画に織り込むのは早いという段階です。 制度の全体像は[就労選択支援とは](/column/shurou-sentaku-shien/)、参入の可否は[どこがやるのか](/column/shurou-sentaku-shien-doko-ga-yaru/)、利用の段取りは[利用の流れと期間](/column/shurou-sentaku-shien-nagare-kikan/)で整理しています。 ### よくある質問 Q. 就労選択支援を使わずに就労継続支援B型を利用することはできますか? A. 条件に当てはまれば利用できます。50歳に達している人、障害基礎年金1級の受給者、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった人は、就労選択支援によるアセスメントを経ずにB型を利用できます。加えて、最も近い就労選択支援事業所であっても通所が困難な場合や、利用できる事業所が少なく待機期間が生じる場合は、従来どおり就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経たB型利用が認められています。 Q. 就労選択支援を実施すると、自法人のB型に利用者を引き継ぎにくくなりますか? A. 引き継ぐこと自体は禁じられていませんが、割合が偏ると減算の対象になります。アセスメント後に就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型のいずれかで、移行先として最も多い法人が占める割合が80%を超えた場合、特定事業所集中減算として1日あたり200単位が減算されます。ただし、通常の事業の実施地域にそのサービスの事業所が5事業所未満である場合など、正当な理由が指定権者に認められれば適用されません。 Q. 就労選択支援は収支の見通しを立てにくいサービスですか? A. 月ごとの利用者数が読みにくい構造になっています。支給決定期間が原則1か月と短く、報酬は利用者に直接支援を行った日ごとの1日1,210単位で、1か月あたりの利用日数の上限は各月の暦日数から8日を控除した日数です。さらに、利用者の参加を伴わない関係機関との連絡調整だけの日は算定対象になりません。定員をひと月単位で埋め続ける前提ではなく、新規の紹介がどれだけ入るかを前提にした計画が必要になります。 Q. 就労選択支援員はすぐに確保できますか? A. 研修の受講枠が限られるため、すぐに確保できるとは限りません。令和8年度の就労選択支援員養成研修は東京会場と大阪会場でそれぞれ10回、各回の定員は100人(予定)とされており、オンデマンド講義6時間と対面演習5時間の両方の受講が必要です。ただし令和9年度末までは経過措置があり、基礎的研修またはこれと同等以上の研修を修了した人を就労選択支援員とみなすことができます。 Q. 令和9年4月から対象はどう変わりますか? A. 新たに就労継続支援A型を利用する場合と、標準利用期間を超えて就労移行支援を利用する場合も対象とする予定とされていますが、詳細は決まっていません。厚生労働省の通知は「令和9年4月以降の取扱いについては改めてお示しします」と記載しており、2026年8月16日時点でその取扱いを示した通知は確認できません。準備は必要ですが、断定した前提で設備投資や人員計画を固めるのは避けたほうが安全です。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「就労選択支援の実施について(令和7年3月31日障障発0331第3号、最終改正 令和7年9月30日障障発0930第3号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001571813.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「就労選択支援について(社会保障審議会障害者部会 第145回・こども家庭審議会障害児支援部会 第10回 資料)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001389440.pdf(2026年8月16日確認。基本報酬1,210単位/日、特定事業所集中減算200単位/日、施行期日の記載) - 厚生労働省「就労選択支援事業所数(6月31日時点)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001737866.pdf(2026年8月16日確認。令和8年6月時点の指定状況として公表されているもの) - 厚生労働省「令和8年度就労選択支援員養成研修のご案内」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001698718.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「就労選択支援について(施策ページ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_56733.html(2026年8月16日確認。通知・マニュアル・Q&A・指定状況の掲載元) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(令和8年2月18日 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf(2026年8月16日確認。処遇改善加算の拡充等が内容で、就労選択支援も処遇改善加算の対象サービスに含まれる) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 就労選択支援はどこがやるのか 指定を受けられる事業者の要件と 参入を判断するための材料 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shurou-sentaku-shien-doko-ga-yaru/ カテゴリー: 経営・収支 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2025.10.01 ### 結論 就労選択支援の指定を受けられるのは、就労移行支援または就労継続支援に係る指定障害福祉サービス事業者のうち、過去3年以内に当該事業者の事業所の3人以上の利用者が新たに通常の事業所に雇用された実績を持つ事業者です(指定基準省令第173条の6)。障害者就業・生活支援センターの受託法人など、これと同等の就労支援の経験と実績があると都道府県知事等が認める事業者も実施主体になれます。2026年8月16日に確認した時点で、2025年10月1日施行のこの要件に変更はありません。 就労継続支援B型だけを運営している法人でも、実績要件を満たせば既存事業所への併設で指定を取れます。ただし就労選択支援は多機能型事業所の対象サービスに含まれておらず、定員規模別単価もありません。基本報酬は事業所の規模にかかわらず1日1,210単位の一本値です。 - 実施主体の要件: 就労移行支援または就労継続支援の指定事業者で、過去3年以内に自らの事業所の利用者3人以上が新たに一般就労したこと - 同一法人の他事業所の実績: 流用も合算もできない(就労選択支援に関するQ&A VOL.1 問5) - 多機能型事業所内の実績: 一体的に行う複数事業の実績は合算してよい(同 問4) - 人員: 就労選択支援員を常勤換算で利用者数を15で除した数以上。サービス管理責任者の配置を求める規定はない - 管理者: 専従が原則。管理上支障がない場合は他の職務や他事業所の職務との兼務が可能 - 基本報酬: 就労選択支援サービス費 1日につき1,210単位。定員規模別単価の対象外 - 情報公表未報告減算: 報酬告示上は所定単位数の5%減算。ただし情報公表システムの報告・公表機能が整備されるまでの間は適用しない取扱い(Q&A VOL.1 問7) - 支給決定期間と日数: 原則1か月。1月の利用日数上限は各月の暦日数から8日を控除した日数 - 中立性の制約: 就労移行支援や就労継続支援を利用中の人が更新や事業所変更を検討して使う場合、同一法人が運営する就労選択支援は利用できない - 指定の有効期間: 実施主体要件による指定は次期更新の際まで有効で、更新時の要件は別途定めるとされている - 全国の事業所数: 令和8年6月時点で965か所(都道府県532・指定都市213・中核市220)。厚生労働省が指定権者別の数と事業所一覧を公表している 根拠: 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号)第173条の3〜第173条の9 ### 本文 ## 手を挙げられる事業者は最初から絞られている 就労選択支援は、指定基準省令のなかで実施主体そのものに条件が置かれている珍しいサービスです。第173条の6は、指定就労選択支援事業者を「就労移行支援又は就労継続支援に係る指定障害福祉サービス事業者であって、過去三年以内に当該事業者の事業所の三人以上の利用者が新たに通常の事業所に雇用されたもの」、またはこれと同等の就労支援の経験と実績があると都道府県知事等が認める事業者に限っています。就労系サービスを持たない法人が新規に参入する道は、基本的に用意されていません。 同等と認める例として、解釈通知は障害者就業・生活支援センター事業の受託法人、自治体設置の就労支援センター、障害者能力開発助成金による障害者能力開発訓練事業を行う機関を挙げています。いずれも過去3年以内に合計3人以上の一般就労実績があることが前提です。 実績が足りない事業者向けの緩和も二つ置かれています。同一市区町村内に就労選択支援事業所が存在しない場合は、指定申請前の過去10年間の連続する3年間で合計3人以上という数え方が認められます。事業運営が3年に満たない事業所でも、その利用を経て一般就労した人が合計3人以上いれば要件を満たします。 参入判断で見落としやすいのが、実績を誰の名義で数えるかです。就労選択支援に関するQ&A VOL.1は、多機能型事業所として複数の事業を一体的に行っている場合、就労移行支援から1人・B型から2人といった事業をまたいだ合算を認めています(問4)。一方で、同一法人が運営する別の事業所の実績を流用したり合算したりすることはできず、その場合は実施主体要件を満たさないとしています(問5)。指定を取ろうとしている事業所そのものに3人分の実績がなければならない、という整理です。 ## 人員・設備・運営の要件 国が定めている要件を整理すると次のようになります。 | 区分 | 国の基準 | 根拠 | | --- | --- | --- | | 実施主体 | 就労移行支援または就労継続支援の指定事業者で、過去3年以内に当該事業者の事業所の3人以上の利用者が新たに通常の事業所に雇用されたもの。同等の経験・実績があると都道府県知事等が認める事業者も可 | 省令第173条の6 | | 就労選択支援員の員数 | 常勤換算方法で、利用者の数を15で除した数以上。利用者の数は前年度の平均値(新規指定は推定数)。1人未満の配置でも差し支えないとされている | 省令第173条の3、解釈通知第九の二の1(1) | | 就労選択支援員の資格 | 就労選択支援員養成研修の修了。2028年3月31日までは基礎的研修またはこれと同等以上の研修の修了者をみなして配置できる | 令和7年厚生労働省告示第89号 | | サービス管理責任者 | 配置を求める規定は置かれていない。個別支援計画の作成義務もない | 省令第173条の3、第173条の9 | | 管理者 | 事業所ごとに専らその職務に従事する管理者を置く。管理上支障がない場合は他の職務や他の事業所の職務に従事させてよい | 省令第173条の4(第51条を準用) | | 設備 | 訓練・作業室、相談室、洗面所、便所、多目的室その他運営に必要な設備。相談室と多目的室は兼用可。専用が原則だが、利用者の支援に支障がない場合はこの限りでない | 省令第173条の5(第81条を準用) | | 訓練・作業室の面積 | 国は具体的な面積の基準を明示していない | Q&A VOL.1 問1 | | 運営 | アセスメントは対面での実施が基本。本人と市町村、相談支援事業者、公共職業安定所等を招集した会議を開き、結果を本人と相談支援事業者に提供する | 省令第173条の7 | サービス管理責任者が不要で個別支援計画も要らない点は、就労移行支援やB型と比べたときの人員コストの差になります。反面、アセスメントの会議開催と結果提供は省令上の義務で、未実施の事項があると当該利用者の基本報酬を算定できないと留意事項通知に明記されています。 ## 多機能型には入らないが、併設と兼務は広く認められている 省令第215条が定める多機能型事業所の対象は、生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、児童発達支援、放課後等デイサービスで、就労選択支援は入っていません。定員規模別単価の対象サービスにも含まれていないため、既存事業所の定員に上乗せする形での設計はできません。 その代わり、併設と兼務は広く認められています。解釈通知は、一体的に運営する生活介護等の事業所に配置される常勤の職業指導員、生活支援員、就労移行支援員等の直接処遇職員が、サービス提供に支障がない場合に就労選択支援員に従事でき、その兼務時間を就労選択支援員の常勤換算に算入できるとしています。設備も同一敷地内の他事業所の備品を使え、賃借でも構いません。Q&Aの早見表では、常勤8時間の直接処遇職員が就労定着支援員と就労選択支援員を4時間ずつ兼務する形は可、両方を8時間ずつ並行して兼務する形は不可と示されています。 ## 収支は1日1,210単位から逆算する 基本報酬は就労選択支援サービス費が1日につき1,210単位で、令和8年度報酬改定でも変更されていません。定員規模別単価がないので、小さく始めても単価は下がりません。ただし利用は積み上がりません。支給決定期間は原則1か月で、延長は例外事由に該当する場合に一度だけ、1月の利用日数上限は各月の暦日数から8日を控除した日数です。1人の利用者から得られる報酬は最大でもおおむね1か月分にとどまり、常に新しい利用者が入ってこないと稼働が止まります。 だからこそ、地域に何人分の需要があるかを先に見積もる必要があります。対象は2025年10月から新たにB型を利用する意向がある人が中心で、2027年4月以降はA型の新規利用と就労移行支援の標準利用期間超過にも広げる予定です。時期ごとの広がりは[就労選択支援はいつから](/column/shurou-sentaku-shien-itsukara/)で整理しました。 情報公表未報告減算については、収支に見込む必要が今のところありません。報酬告示第11の2の1の注3は、情報公表対象サービス等情報の報告を行っていない場合に所定単位数の5%を減算すると定めていますが、就労選択支援に関するQ&A VOL.1(令和7年9月5日)の問7は、情報公表システムを改修中であることから令和7年10月1日時点でのシステムへの入力は不要としたうえで、「情報公表システムにおける報告及び公表の機能が整備されるまでの間は、情報公表未報告減算を適用しない取扱いとする」と示しています。いつまで適用しないのかという期日はQ&Aに書かれておらず、具体的な報告開始時期は追って事務連絡等で周知する予定とされています。2026年8月16日に確認した時点でその事務連絡は見当たりませんでした。機能が整備されれば適用が始まる減算なので、周知が出ていないかを定期的に確かめておいてください。 ## 全国965か所という現在地 厚生労働省は指定権者別の事業所数と事業所一覧を公表しています。令和8年6月時点で全国965か所、内訳は都道府県分が532、指定都市分が213、中核市分が220です。施行から8か月あまりでこの水準ですから、就労移行支援やB型に比べれば供給はまだ薄い状態にあります。 ただし地域差が大きく、東京都45、愛知県35、大阪市34のように積み上がっている指定権者がある一方で、0の県や市も残っています。実施主体要件の緩和のうち過去10年間の連続する3年間で3人以上という数え方は、同一市区町村内に就労選択支援事業所が存在しない場合に使えるものです。事業所一覧はExcelで公開されているので、参入判断に入る前に自分の商圏の行を抜き出してください。 ## 中立性は「自法人へ戻せない」という形で効く 報酬の留意事項通知は、就労継続支援や就労移行支援を利用中の人が受給者証の更新や事業所の変更を検討して就労選択支援を利用する場合、アセスメントや情報提供の客観性を担保するため、当該サービスを提供している事業所と同一の法人が運営する就労選択支援は利用できないと定めています。例外は近隣に別の法人が運営する就労選択支援事業所や就労移行支援事業所がない場合だけです。自事業所の利用者の受け皿として使う設計は成り立ちません。特定事業所集中減算も設けられ、紹介の対償として金品を授受する利益供与等の禁止も準用されます。 指定の入口でも中立性は問われます。実施について通知は、指定権者が確認することが望ましい観点として、事業の目的や理念、アセスメント環境と支援員の確保状況、協議会や近隣企業との連携体制、第三者からの評価、他の就労系サービスの支援状況と経営状況、情報公表の状況を挙げています。指定権者が必要と認める場合は、申請にあたって協議会等に運営方針を説明し、その評価内容を都道府県知事に提出することとされています。参入の難所は書類より地域からの評価のほうだと見ておいたほうが実態に近いはずです。課題の全体像は[就労選択支援のデメリット](/column/shurou-sentaku-shien-demerit/)にまとめています。 指定申請の前に指定権者へ確認しておく項目は、国の基準が幅を残している部分に集中します。第一に利用定員です。省令の第十章の二には利用定員の下限を定めた規定がありませんが、愛知県と栃木県はいずれも自県の案内で定員10人以上と示しています。運営規程には利用定員を記載する必要があるので(第173条の9で準用する第89条第4号)、自分の指定権者がどう扱っているかを先に聞いてください。 第二に訓練・作業室の面積です。Q&A VOL.1は国として具体的な面積の基準までは明示していないと明言していますが、愛知県は定員×2平方メートルの専用の訓練・作業室を求めています。図面相談の期限を別に設けている自治体もあるので、内装や賃貸借を決める前に確認してください。第三に協議会等の評価の要否、第四に実施主体要件の実績の数え方です。どの範囲の一般就労を3人に数えてよいかは、事前に突き合わせておくと安全です。 期限の管理もあわせて要ります。基礎的研修等の修了者を就労選択支援員とみなせる経過措置は2028年3月31日で終わります。研修の内容と受講の段取りは就労選択支援員養成研修にまとめています。 ### よくある質問 Q. 就労継続支援B型だけを運営している法人でも指定を受けられますか? A. 受けられます。指定基準省令第173条の6は実施主体を「就労移行支援又は就労継続支援に係る指定障害福祉サービス事業者」と定めており、B型のみを運営する事業者も含まれます。条件は、過去3年以内に当該事業者の事業所の3人以上の利用者が新たに通常の事業所に雇用されたことです。この実績を同一法人が運営する他の事業所から流用したり合算したりすることはできないと、就労選択支援に関するQ&A VOL.1(令和7年9月5日)問5で明示されています。 Q. 一般就労3人の実績がない場合は参入できませんか? A. 条件付きで認められる場合があります。同一市区町村内に就労選択支援事業所が存在しない場合は、指定申請前の過去10年間の連続する3年間に合計3人以上という緩和が示されています。また就労移行支援事業所等の事業運営が3年に満たない場合でも、その事業所の利用を経て新たに通常の事業所に雇用された者が合計3人以上いれば要件を満たすとされています。いずれも認定するのは都道府県知事等なので、指定申請の前に指定権者へ確認してください。 Q. 既存のB型事業所と同じ建物、同じ職員で運営できますか? A. できます。設備は利用者の支援に支障がない場合は専用でなくてよく、同一敷地内にある他の事業所の備品や設備も使用できます。人員も、一体的に運営する生活介護、自立訓練、就労移行支援、A型、B型に配置される常勤の職業指導員や生活支援員等が就労選択支援員に従事でき、その勤務時間を常勤換算に算入できます。ただし常勤8時間の職員が就労定着支援員と就労選択支援員を同じ時間帯に並行して兼務することはできません。 Q. 就労選択支援の基本報酬はいくらですか? A. 就労選択支援サービス費は1日につき1,210単位です(平成18年厚生労働省告示第523号 第11の2)。療養介護や就労移行支援と異なり定員規模別単価の対象ではないため、定員の大小で単価は変わりません。算定できるのは利用者に対して直接支援を行った日で、利用者が同席する多機関連携のケース会議や企業訪問は対象になりますが、利用者の参加を伴わない関係機関との連絡調整だけの日は対象外です。令和8年度障害福祉サービス等報酬改定でもこの単位数は変わっていません。 Q. 就労選択支援事業所は全国にどれくらいありますか。一覧はどこで見られますか? A. 令和8年6月時点で全国965か所です(都道府県分532、指定都市分213、中核市分220)。厚生労働省の「就労選択支援について」のページに、指定権者別の事業所数のPDFと事業所一覧のExcelが掲載されており、誰でもダウンロードできます。事業所数には地域差があり、東京都45、愛知県35、大阪市34のように積み上がっている指定権者がある一方で、事業所数が0の県や市も残っています。 Q. 自法人のB型を利用している人に、自法人の就労選択支援を使ってもらえますか? A. 原則としてできません。就労継続支援や就労移行支援を利用中の人が受給者証の更新や事業所の変更を検討して就労選択支援を利用する場合、アセスメントや情報提供の客観性を担保するため、当該サービスを提供している事業所と同一の法人が運営する就労選択支援は利用できないとされています。例外は、近隣に別の法人が運営する就労選択支援事業所や就労移行支援事業所がない場合だけです。あわせて特定事業所集中減算が設けられ、紹介の対償として金品を授受する利益供与等の禁止も準用されます。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「就労選択支援について(制度の案内ページ・通知やマニュアルの掲載元)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_56733.html(2026年8月16日確認) - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第十章の二 就労選択支援」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年8月16日確認。第173条の2〜第173条の9、第215条の多機能型の対象サービスを参照) - 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(平成18年12月6日障発第1206001号)第九の二 就労選択支援」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001472116.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「「就労選択支援の実施について」の一部改正について(令和7年9月30日障障発0930第3号・新旧対照表を含む)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001571813.pdf(2026年8月16日確認。原通知は令和7年3月31日障障発0331第3号) - 厚生労働省「就労選択支援に関するQ&A VOL.1(令和7年9月5日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001571785.pdf(2026年8月16日確認。問1〜問7。問7に情報公表未報告減算を適用しない取扱い、参考3に報酬告示第11の2の抜粋を含む) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(就労選択支援サービス費の取扱いを含む)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001472120.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」 https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001217865.pdf(2026年8月16日確認。就労選択支援サービス費1,210単位/日の新設) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(令和8年2月18日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf(2026年8月16日確認。就労選択支援の基本報酬に変更はなし) - 厚生労働省「就労選択支援事業所数(令和8年6月現在)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001737866.pdf(2026年8月16日確認。合計965か所(都道府県532・指定都市213・中核市220)) - 厚生労働省「就労選択支援事業所一覧(令和8年6月現在)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001737867.xlsx(2026年8月16日確認) - 愛知県「就労選択支援について」 https://www.pref.aichi.jp/soshiki/shogai/shasentaku.html(2026年8月16日確認。定員10人以上、訓練・作業室は定員×2平方メートルと案内) - 栃木県「就労選択支援について」 https://www.pref.tochigi.lg.jp/e05/welfare/shougaisha/service/shurousentakusien.html(2026年8月16日確認。定員10人以上と案内) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 就労選択支援と就労移行支援、 従来の就労アセスメントは 何がどう違うのか URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shurou-sentaku-shien-ikou-chigai/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2025.10.01 ### 結論 就労選択支援は就労先や働き方を選ぶための評価を行う障害福祉サービスで、就労移行支援は一般就労に必要な知識と能力を高めるための訓練を行うサービスです。目的が「選ぶ」と「訓練する」で分かれており、支給決定期間も原則1か月と標準2年で大きく違います。従来の就労アセスメントは、就労継続支援B型の新規利用にあたって就労移行支援事業所等が実施してきた評価で、令和7年10月(2025年10月)から原則として就労選択支援に置き換わりました。ただし、最も近い就労選択支援事業所であっても通所することが困難である等で近隣に事業所がない場合と、利用可能な事業所数が少なく待機期間が生じる場合は、従来どおり就労移行支援事業所等の就労アセスメントを経たB型利用が認められています(2026年8月16日時点)。 - 就労選択支援の目的: 短期間の生産活動等を通じた適性・知識・能力の評価と就労に関する意向の整理 - 就労移行支援の目的: 就労に必要な知識及び能力の向上のための訓練と就職に向けた支援 - 期間の違い: 就労選択支援は支給決定期間が原則1か月/就労移行支援は標準利用期間2年 - 報酬の違い: 就労選択支援サービス費は1日につき1,210単位/就労移行支援サービス費(Ⅰ)は利用定員と就労定着者の割合に応じた区分 - 従来の就労アセスメントの現在地: B型の新規利用では原則として就労選択支援に置き換わったが、近隣に事業所がない場合や待機期間が生じる場合は引き続き認められる - 用語の重なり: 「就労アセスメント」は手法の名称でもあり、就労選択支援もこの手法を活用するサービスとして創設された 根拠: 厚生労働省「就労選択支援の実施について」(令和7年3月31日障障発0331第3号/最終改正 令和7年9月30日障障発0930第3号) ### 本文 ## 混乱の元は「就労アセスメント」という言葉が二重に使われていること 就労選択支援は、令和4年法律第104号による障害者総合支援法等の改正を受けて、令和7年10月1日から始まった障害福祉サービスです。厚生労働省の説明では「就労アセスメントの手法を活用して、本人の希望、就労能力や適性等に合った選択を支援する」サービスと位置づけられています。 ここで話がややこしくなります。「就労アセスメント」という言葉は、就労選択支援が使う手法の名前であると同時に、それ以前からB型の利用手続きの中で就労移行支援事業所等が行ってきた評価そのものを指す言葉でもありました。同じ言葉が制度の内側と外側で使われているため、3つが並ぶと関係が見えにくくなります。 ## 3つを列で並べて対比する | 項目 | 就労選択支援 | 就労移行支援 | 従来の就労アセスメント | | --- | --- | --- | --- | | 制度上の位置づけ | 障害福祉サービス(令和7年10月創設) | 障害福祉サービス | サービスではなく、B型の利用に先立つ評価の手続き | | 目的 | 就労に関する適性・知識・能力の評価と意向の整理を行い、進路の選択を支援する | 就労に必要な知識及び能力の向上のための訓練を行い、就職と定着まで支援する | 就労面の課題等を把握したうえでB型を利用できるようにする | | 実施主体 | 指定就労選択支援事業者(就労選択支援員を配置) | 指定就労移行支援事業者 | 就労移行支援事業所等 | | 期間 | 支給決定期間は原則1か月(例外事由に該当する場合のみ2か月、または一度だけ再度1か月) | 標準利用期間2年 | 就労移行支援等の枠組みの中で実施 | | 報酬 | 就労選択支援サービス費 1,210単位/日 | 就労移行支援サービス費(Ⅰ)は利用定員と就労定着者の割合に応じた区分 | 独立したサービス費の区分はない | | 利用者から見た位置づけ | 進路を決めるための入口 | 一般就労を目指して通う場 | B型に入るための前提となる手続き | 期間の差は運営上の性格の違いをそのまま表しています。就労選択支援は1か月で結論を出し、アセスメント結果を作成して関係機関に引き継ぐところまでが仕事です。利用者を長く抱えるサービスではありません。詳しい進め方は[就労選択支援の利用の流れと期間](/column/shurou-sentaku-shien-nagare-kikan/)で扱っています。 ## 従来の就労アセスメントはどう扱われることになったのか いちばん確認したいのはここでしょう。令和7年3月31日付で改正された留意事項通知の新旧対照表では、B型の支給決定手続について次のように書き加えられました。令和7年10月からは就労選択支援事業者によるアセスメントにより就労面の課題等を把握したうえでB型を利用することとし、ただし近隣に就労選択支援事業所がない場合や、利用可能な事業所数が少なく就労選択支援を受けるまでに待機期間が生じる場合は、就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経たB型の利用を認める、という内容です。 つまり従来の就労アセスメントは、原則としては就労選択支援に置き換わり、例外的な場合に限って併存しています。全国一律に廃止されたわけでも、選択制になったわけでもありません。この例外は期限を切った経過措置としてではなく、地域の事業所整備の状況に応じた例外事由として書かれている点も押さえておきたいところです。 なお、50歳に達している人、障害基礎年金1級の受給者、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった人などは、そもそも就労選択支援事業者によるアセスメントを行わずにB型を利用できます。対象と例外の線引きは[就労選択支援の対象者](/column/shurou-sentaku-shien-taishousha/)で詳しく整理しています。 ## A型と就労移行支援の扱いは令和9年4月に動く 現時点で原則利用が求められているのはB型の新規利用だけです。A型を新たに利用する場合や就労移行支援を利用する場合は、本人の希望に応じて就労選択支援を使えますが、必須ではありません。留意事項通知にも、当面の間はA型の利用にあたって就労選択支援の利用は必須ではないと明記されています。 厚生労働省は、令和9年4月以降は新たにA型を利用する場合と、標準利用期間を超えて就労移行支援を利用する場合についても就労選択支援によるアセスメントが行われている者を対象とする予定で、取扱いは改めて示すとしています。A型や就労移行支援を運営している事業者は、この時期に利用申込みの入口が変わる前提で準備しておく必要があります。 B型の新規利用の申込みを受けたときは、まず本人が就労選択支援を経ているかどうかを確かめておくと、その後の案内が変わります。経ていない場合は、50歳到達・障害基礎年金1級・就労経験があり年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難といった、就労選択支援を経ずに利用できる要件に当てはまるかどうかを見ることになります。 いずれにも当てはまらない場合は、就労選択支援を先に利用してもらうのが原則です。近隣に就労選択支援事業所がない、または待機期間が生じるために従来の就労アセスメントで進めたいときは、その扱いを認めるかどうかを判断するのは支給決定を行う市町村なので、申込みの段階で市町村に確認しておくと手戻りが減ります。 ## 経営判断として見たときの3つの違い 自事業所で就労選択支援の指定を取るかどうかを考えるなら、就労移行支援との違いは収支構造の違いとして読むことになります。就労選択支援は1人あたり原則1か月で終わる日額報酬なので、利用者の回転が前提です。就労移行支援のように2年かけて関係を作るサービスとは、必要な人員配置も営業の仕方も変わります。 一方で、これまでB型の利用者確保のために就労アセスメントを引き受けてきた就労移行支援事業所にとっては、その役割の受け皿が就労選択支援へ移ったことになります。指定を取らなければ、地域でB型につながる入口から外れる可能性があります。制度の全体像は[就労選択支援とは](/column/shurou-sentaku-shien/)にまとめました。 ### よくある質問 Q. 従来の就労アセスメントは廃止されたのですか? A. 廃止されてはいませんが、就労継続支援B型の新規利用については原則として就労選択支援に置き換わりました。厚生労働省の留意事項通知は「令和7年10月からは就労選択支援事業者によるアセスメントにより、就労面の課題等を把握した上で就労継続支援B型を利用することとしている」と改められています。ただし同じ通知が、近隣に就労選択支援事業所がない場合や、利用可能な事業所数が少なく待機期間が生じる場合には、就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経たB型の利用を認めると定めています。 Q. 就労選択支援と就労移行支援は何が一番違いますか? A. 目的が違います。就労選択支援は短期間の生産活動等を通じて就労に関する適性・知識・能力を評価し、意向を整理して進路の選択を支援するサービスで、就労移行支援は就労に必要な知識及び能力の向上のための訓練を行い、就職とその後の定着まで支援するサービスです。この違いが期間にも表れており、就労選択支援の支給決定期間は原則1か月、就労移行支援の標準利用期間は2年とされています。 Q. 就労移行支援事業所が就労選択支援も行うことはできますか? A. できます。指定を受ければ両方を運営でき、人員面でも配慮があります。厚生労働省の通知は、一体的に運営する就労移行支援事業所等の常勤の職業指導員等について、利用者へのサービス提供に支障がなければ就労選択支援員として従事でき、その勤務時間を就労選択支援員の常勤換算に算入できるとしています。ただし就労選択支援員は就労選択支援員養成研修の修了が要件で、令和9年度末までは基礎的研修またはこれと同等以上の研修の修了者を就労選択支援員とみなす経過措置があります。 Q. 同じ日に就労選択支援と就労移行支援やB型を利用できますか? A. 利用自体は妨げられませんが、報酬は重複して算定できません。通知は、生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援(A型・B型)といった日中活動サービスについて、就労選択支援の報酬を算定した日には他の日中活動サービスの報酬を算定できないと定めています。事業所間の合議による報酬の按分によって両サービスを同一日に提供することは可能で、時間帯で分ける場合は利用時間に基づく按分、同時間に提供する場合は等分といった方法が示されています。 Q. 就労継続支援A型を新規に利用する場合も就労選択支援が必要ですか? A. 現時点では必須ではありません。就労選択支援の対象者ではあるものの、A型の新規利用にあたって利用するかどうかは本人の希望によります。厚生労働省の通知は、令和9年4月以降は新たにA型を利用する場合や標準利用期間を超えて就労移行支援を利用する場合についても就労選択支援によるアセスメントが行われている者を対象とする予定であり、その取扱いは改めて示すとしています。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「就労選択支援について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_56733.html(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「「就労選択支援の実施について」の一部改正について(令和7年9月30日障障発0930第3号/新旧対照表を含む)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001571813.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」の一部改正(令和7年3月31日障障発0331第2号/新旧対照表)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001472111.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「就労選択支援について(社会保障審議会障害者部会第145回・こども家庭審議会障害児支援部会第10回 資料6/令和7年1月30日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001389440.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」 https://www.mhlw.go.jp/content/001216034.pdf(2026年8月16日確認。就労選択支援サービス費1,210単位/日の新設を確認) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202214_00013.html(2026年8月16日確認。就労選択支援の基本報酬に変更がないことを確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 就労選択支援員養成研修の 受講要件と令和8年度の日程 職員を出すまでの段取り URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shurou-sentaku-shien-in-kenshu/ カテゴリー: 現場・人材 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.05.15 ### 結論 就労選択支援員養成研修は、令和8年度も都道府県ではなく国が主体となって実施しています。受講料は無料で、オンデマンド講義6時間と対面演習5時間の合計11時間を修了する必要があります。対面演習の会場は東京と大阪の2か所だけで、それぞれ年10回、各回の定員は100人程度です(令和8年5月15日付け厚生労働省事務連絡時点)。 受講できるのは、障害者の就労支援分野で通算5年以上の実務経験がある職員か、基礎的研修を修了した職員です。就労継続支援B型の管理者・職業指導員・生活支援員・サービス管理責任者として働いた期間も5年に算入できるため、自法人の在職者から候補を出せる場合が多いはずです。 - 実施主体: 国(厚生労働省)。会場は東京・大阪の2か所のみ - 受講料: 無料(交通費・宿泊費・通信費は受講者負担) - 研修時間: オンデマンド講義6時間+対面演習5時間=計11時間 - 受講要件: 基礎的研修の修了、または就労支援分野で通算5年以上の実務 - 令和8年度の回数: 東京10回・大阪10回(各回の定員は100人予定) 根拠: 厚生労働省「令和8年度就労選択支援員養成研修の実施について」(令和8年5月15日事務連絡) ### 本文 ## 研修を実施しているのは国で、都道府県ではありません 就労選択支援員養成研修について調べると都道府県のホームページが多く出てきますが、それらは国の研修を管内に周知しているだけで、都道府県が自前で開催しているわけではありません。厚生労働省が令和8年5月15日に都道府県・指定都市・中核市の障害保健福祉主管課長あてに出した事務連絡には、令和8年度も「国が主体となり就労選択支援員養成研修を実施します」と書かれています。大阪府のように、この事務連絡とチラシをそのまま掲載している自治体が実際にあります。 つまり、自治体からの募集案内を待っていても始まりません。申込は厚生労働省の専用サイトから直接行います。 ## 受講要件は「通算5年の実務」か「基礎的研修の修了」のどちらか 要件告示では、一定の職種として障害者の就労に係る支援を直接行う業務等に従事した期間が通算5年以上あること、または基礎的研修を修了していることと定められています。両方は必要なく、どちらか一方で構いません。 まず確認したいのは、5年の実務でカウントできる職種の範囲です。通知が挙げているのは次のとおりで、就労継続支援B型の職員が広く含まれます。 | 区分 | 5年に算入できる職種 | | --- | --- | | 就労移行支援・就労継続支援・就労定着支援 | 管理者、職業指導員、生活支援員、就労支援員、サービス管理責任者、就労定着支援員 | | 就労選択支援 | 経過措置で養成研修修了者とみなされた従事者 | | 雇用側の支援機関 | 職場適応援助者(企業在籍型を除く)、障害者職業カウンセラー、障害者就業・生活支援センターの主任就業支援担当者・就業支援担当者・生活支援担当職員 | | その他 | 自治体が条例等に基づき行う就労支援事業の従事者、障害者能力開発助成金による訓練機関の訓練担当者・就職支援責任者 | 自法人にB型やA型を長く続けている職員がいるなら、その在職期間だけで要件を満たしている可能性があります。まず在職者の職歴を洗い出すところから始めるほうが早く進みます。 5年に届かない職員を出したい場合は、先に基礎的研修を修了させる道があります。基礎的研修はJEEDが実施していて、全14科目・合計900分です。内訳はオンデマンド研修が9科目560分、地域障害者職業センターで受ける集合研修が5科目340分に分かれています。受講料は無料ですが、オンデマンド研修の通信費と、集合研修の会場までの交通費や宿泊費は受講者の負担になります。養成研修とは別に申込と日程調整が必要になる点にも注意してください。 なお令和9年度末までは経過措置があり、就業支援基礎研修(就労支援員対応型)、訪問型職場適応援助者養成研修、サービス管理責任者研修専門コース別研修(就労支援コース)、相談支援従事者研修専門コース別研修(就労支援コース)などの修了者も養成研修を受講できます。 ## 研修は11時間。オンデマンド6時間と対面演習5時間に分かれます カリキュラムは告示で合計11時間以上と定められていて、令和8年度の国の研修はちょうど11時間の構成です。動画を見るだけでは終わらず、対面演習に出席しなければ修了になりません。 | 科目 | オンデマンド講義 | 対面演習 | | --- | --- | --- | | 1. 就労選択支援の目的と役割 | 60分 | ー | | 2. 就労アセスメントの目的と手法 | 90分 | ー | | 3. ニーズアセスメントの手法 | 60分 | 60分 | | 4. アセスメントシートの具体的活用 | 60分 | 120分 | | 5. 関係機関との連携 | 60分 | ー | | 6. アセスメント情報の整理と活用 | 30分 | 120分 | | 合計 | 6時間 | 5時間 | 受講料は無料ですが、対面演習の会場は東京と大阪の2か所だけなので、それ以外の地域から出す場合は交通費と宿泊費が実費でかかります。 オンデマンド講義には約3週間の視聴期間が設定されていて、すべての確認テストで満点を取ることが修了の要件になっています。期間内に視聴が確認できないと対面演習に参加できません。 ## 令和8年度の日程と申込期間 東京・大阪ともに年10回で、各回の定員は100人程度です。申込は各回の申込開始日10時から終了日17時までの受付で、2026年8月16日時点でまだ申込が先の回は次のとおりです。 | 会場 | 対面演習実施日 | 申込開始 | 申込終了 | | --- | --- | --- | --- | | 東京(戸山サンライズ) | 令和8年10月9日・10日 | 令和8年8月17日 | 令和8年8月31日 | | 大阪(KITENA新大阪) | 令和8年10月30日・31日 | 令和8年9月9日 | 令和8年9月25日 | | 東京(戸山サンライズ) | 令和8年12月21日・22日 | 令和8年11月2日 | 令和8年11月16日 | | 大阪(KITENA新大阪) | 令和8年12月25日・26日 | 令和8年11月6日 | 令和8年11月20日 | | 東京(戸山サンライズ) | 令和9年2月15日・16日 | 令和8年12月24日 | 令和9年1月12日 | | 大阪(KITENA新大阪) | 令和9年2月26日・27日 | 令和9年1月6日 | 令和9年1月20日 | 東京と大阪のどちらで受講しても構わないとされているので、日程の都合で選んで問題ありません。年度内に確実に修了させたい職員がいるなら、まだ申込期間が残っている東京10月回が最も早い機会になります。 ## 申し込めば受講できるとは限りません この研修で見落としやすいのは、申込がそのまま受講決定にはならない点です。申込後に受講可否がメールで通知され、その通知は各回の申込期間の終了日から6営業日以内に届きます。受講不可になった場合は別の日程に再度申し込むことになり、可否の理由は問い合わせても回答されないと案内されています。 対面演習の当日は遅刻・早退・途中離席が一切認められず、その場合は未修了として申込からやり直しになります。受付は9時10分、終了は16時15分です。修了証は演習後2週間以内のアンケート回答と受講状況の精査を経て発行されます。 年度計画に落とすときは、対面演習の実施日ではなく、その約3週間前から始まるオンデマンド視聴期間から逆算して押さえておく必要があります。動画6時間分と確認テストを勤務時間内で消化させるのか別途手当を出すのかを先に決めておかないと、視聴が間に合わず対面演習に出られません。 対面演習の当日は途中離席が認められないため、半日ではなく丸一日シフトから外す前提で組んでおくほうが安全です。第1希望の回で受講不可になることもあるので、年度内に予備日を空けておくと確実です。 ## 配置のタイムリミットは令和9年度末です 就労選択支援の提供に当たる者は養成研修の修了者とされていますが、令和9年度末までは基礎的研修またはこれと同等以上の研修の修了者を修了者とみなす経過措置が置かれています。逆に言えば、2028年3月31日を過ぎるとみなしでの配置ができなくなります。 人員基準としては、就労選択支援員の総数が常勤換算方法で利用者数を15で除した数以上であることが求められています。1人未満の配置でも差し支えないとされていますが、適切な支援を提供できる体制であることが前提です。 参入を検討している段階であれば、[就労選択支援はどこがやるのか](/column/shurou-sentaku-shien-doko-ga-yaru/)と[就労選択支援はいつから始まるのか](/column/shurou-sentaku-shien-itsukara/)もあわせて確認しておくと、誰を研修に出すかの判断がしやすくなります。制度の全体像は[就労選択支援とは](/column/shurou-sentaku-shien/)にまとめています。 ### よくある質問 Q. 就労選択支援員養成研修は都道府県が実施しているのですか。 A. いいえ、令和8年度は国が主体となって実施しています。厚生労働省が令和8年5月15日に都道府県・指定都市・中核市あてに出した事務連絡で「国が主体となり就労選択支援員養成研修を実施します」と明記されており、申込も厚生労働省のサイト(sentaku-yousei.mhlw.go.jp)から直接行います。都道府県が独自に募集をかける形ではないため、自治体からの通知を待つのではなく国の申込サイトを直接見に行く必要があります。 Q. 基礎的研修を修了していないと受講できませんか。 A. いいえ、基礎的研修を修了していなくても、障害者の就労支援分野での実務経験が通算5年以上あれば受講できます。要件告示では「通算して5年以上であること又は基礎的研修を修了していること」と定められており、どちらか一方を満たせば足ります。加えて令和9年度末までの経過措置として、就業支援基礎研修(就労支援員対応型)や訪問型職場適応援助者養成研修など、基礎的研修と同等以上とされる研修の修了者も受講できます。 Q. 就労継続支援B型での勤務経験は5年の実務に算入できますか。 A. 算入できます。厚生労働省の通知では、就労移行支援・就労継続支援・就労定着支援の従事者として、指定基準に定める管理者、職業指導員、生活支援員、就労支援員、サービス管理責任者、就労定着支援員のいずれかで従事した期間を通算できるとされています。B型で管理者やサービス管理責任者を長く務めている職員は、それだけで受講要件を満たしている可能性があります。 Q. 申し込めば必ず受講できますか。 A. いいえ、申し込んでも受講できない場合があります。令和8年度の各回の定員は100人程度で、申込後に受講可否がメールで通知される仕組みです。通知は各回の申込期間の終了日から6営業日以内に届き、受講不可となった場合は別の日程に再度申し込む必要があります。可否の理由を問い合わせても回答されないと案内されているため、第1希望の回に落ちる前提で年度内の予備日を確保しておくほうが安全です。 Q. 対面演習を途中で抜けることはできますか。 A. できません。厚生労働省の案内では、対面演習について遅刻・早退・途中離席は一切認められず、その場合は未修了となって再度申込からやり直しになると明記されています。演習は9時10分の受付開始から16時15分の終了まで続くため、当日は丸一日シフトから外す前提で人員配置を組む必要があります。 Q. 令和9年度末を過ぎるとどうなりますか。 A. 令和9年度末(2028年3月31日)を過ぎると、基礎的研修などの修了だけでは就労選択支援員として配置できなくなります。要件告示では、就労選択支援の提供に当たる者は就労選択支援員養成研修の修了者とされたうえで、令和9年度末までに限り基礎的研修またはこれと同等以上の研修の修了者を修了者とみなす経過措置が置かれています。みなしで配置している事業所は、期限までに養成研修そのものを修了させておく必要があります。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「就労選択支援について(就労選択支援員養成研修について)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_56733.html(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「令和8年度 就労選択支援員養成研修のご案内(チラシ)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001698718.pdf(2026年8月16日確認。カリキュラム・日程・定員・受講料の出典) - 厚生労働省「令和8年度就労選択支援員養成研修の実施について(令和8年5月15日事務連絡)」 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/109904/01jimurenraku.pdf(2026年8月16日確認。大阪府ホームページ掲載分。実施主体の出典) - 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係省令の整備に関する省令等の公布等について(通知)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001535013.pdf(障発0331第3号・令和7年3月31日。受講要件と経過措置の出典) - 厚生労働省「「就労選択支援の実施について」の一部改正について(障障発0930第3号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001571813.pdf(令和7年9月30日。就労選択支援員の員数(常勤換算で利用者数÷15以上)の出典) - 厚生労働省「令和8年度 就労選択支援員養成研修 申込サイト」 https://sentaku-yousei.mhlw.go.jp/(2026年8月16日確認) - 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者の就労支援に関する基礎的研修」 https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/seminar/kisoteki.html(2026年8月16日確認。「12.受講料」に受講料は無料と明記(通信費・交通費・宿泊費は受講者負担)) - 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「基礎的研修カリキュラム」 https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/seminar/hrkdpo00000023tt-att/hrkdpo0000002414.pdf(2026年8月16日確認。全14科目900分の内訳(オンデマンド9科目560分・集合研修5科目340分)の出典) - 大阪府「令和8年度就労選択支援員養成研修の実施について」 https://www.pref.osaka.lg.jp/o090080/shuurousenntakushiennkennshu.html(2026年8月16日確認。都道府県が国の研修を周知している例) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 就労選択支援はいつから? B型は2025年10月、A型は2027年4月 施行スケジュールと事業所の準備 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shurou-sentaku-shien-itsukara/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2025.10.01 ### 結論 就労選択支援は2025年(令和7年)10月1日に施行されました。同日以降、新たに就労継続支援B型を利用する意向がある人は、原則として先に就労選択支援を利用することになっています。2027年(令和9年)4月以降は、新たに就労継続支援A型を利用する場合と、標準利用期間を超えて就労移行支援を利用する場合も対象とする予定が通知で示されていますが、2026年8月16日に確認した時点では、その詳細な取扱いを示す通知はまだ出ていません。 「必須」になるのは事業所の開設義務ではなく、利用者がB型の対象者要件を満たすための条件です。就労選択支援事業所を新たに開く義務は、どの事業者にもありません。 - 施行日: 2025年10月1日(令和7年10月1日) - B型を新たに利用する人: 2025年10月1日から、就労選択支援の事前利用が原則 - A型・就労移行支援: 2027年4月(令和9年4月)以降に対象を広げる予定(詳細は未提示) - 就労選択支援員の経過措置: 2028年3月末(令和9年度末)まで基礎的研修等の修了者をみなし配置できる - 義務の向き: 事業所への開設義務ではなく、B型の利用対象者の要件 根拠: 厚生労働省「就労選択支援の実施について」(令和7年3月31日障障発0331第3号、令和7年9月30日最終改正) ### 本文 ## 制度が動き出したのは2025年10月1日 就労選択支援は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律(令和4年法律第104号)の施行にともなって創設された障害福祉サービスです。指定基準を定めた省令と報酬告示が2025年(令和7年)10月1日から施行され、同じ日に制度が動き出しました。 創設の趣旨は、厚生労働省の課長通知の冒頭に書かれています。障害者本人が就労先・働き方についてより良い選択ができるよう、就労アセスメントの手法を活用して、本人の希望、就労能力や適性等に合った選択を支援するものだ、という説明です。事業所の側から見ると、これまで就労移行支援事業所などが片手間で担ってきた就労アセスメントを、独立した一つのサービスとして切り出したものだと捉えると分かりやすいと思います。制度そのものの中身は[就労選択支援とは](/column/shurou-sentaku-shien/)で詳しく扱っています。 ## 施行スケジュールと事業所側で発生すること 段階施行の年次を並べると次のようになります。2027年4月以降の行だけは、通知に「予定」と書かれている段階です。 | 時期 | 対象・制度上の変化 | 事業所側で発生すること | | --- | --- | --- | | 2025年10月1日(令和7年10月1日) | 制度施行。新たに就労継続支援B型を利用する意向がある人は、原則として先に就労選択支援を利用する | B型は新規の利用相談で、就労選択支援事業者によるアセスメント済みかを確認する運用に切り替える | | 2025年10月〜2027年3月(令和7年10月〜令和9年3月) | 通知上、この期間の就労選択支援は就労継続支援B型を利用する人が対象 | 就労選択支援に参入する事業者は指定申請と支援員の確保を進める | | 2027年4月1日(令和9年4月1日)以降・予定 | 新たに就労継続支援A型を利用する場合と、標準利用期間を超えて就労移行支援を利用する場合も、アセスメントを受けた人が対象になる予定 | A型は新規受入れの手順、就労移行支援は標準利用期間を超えるときの更新手順を見直す | | 2028年3月31日(令和9年度末)まで | 就労選択支援員の経過措置期間 | 基礎的研修またはこれと同等以上の研修の修了者を就労選択支援員とみなして配置できる | | 2028年4月1日(令和10年4月1日)以降 | 経過措置の終了 | 就労選択支援員養成研修の修了者を確保しておく必要がある | ## 2025年10月からの「必須」は誰にかかっているのか ここを取り違えると準備の方向を間違えます。就労選択支援の事業所を開設する義務は、どの事業者にもありません。必須にあたるのは利用者側の要件です。通知は、就労継続支援B型の利用対象が「就労選択支援事業者によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者」になったことを受けて、新たに就労継続支援B型を利用する意向がある場合は就労選択支援を予め利用すること、と書いています。 この原則には除外があります。50歳に達している人、障害基礎年金1級受給者、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった人などは、就労選択支援事業者のアセスメントを受けなくてもB型を利用できます。さらに、最も近い就労選択支援事業所であっても通所することが困難な場合や、利用可能な事業所数が少なく待機期間が生じる場合には、従来どおり就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経たB型の利用が認められます。誰がどちらに当たるかは[就労選択支援の対象者](/column/shurou-sentaku-shien-taishousha/)で整理しています。 B型で新規の利用相談を受けたときは、支給決定の話に入る前に3点を確認しておくと手戻りがありません。就労選択支援事業者によるアセスメントを受けているか、受けているならその実施日はいつか、受けていない場合は除外事由(50歳以上・障害基礎年金1級・年齢や体力の面で一般企業への雇用が困難になった就労経験者)に当たるか、の3点です。 実施日を確認するのは、通知でアセスメントは原則1年以内に実施されたものを活用することとされているためです。1年を超えていれば改めて実施が必要になります。また、就労選択支援の支給決定期間は原則1か月とされているので、アセスメント未了の人を受け入れる場合は、B型の利用開始までに最低でも1か月前後の助走期間が要ると見て日程を逆算し、相談支援専門員と早い段階で共有しておくことになります。 ## 2027年4月に何が広がるのか 通知には、令和9年4月以降は新たに就労継続支援A型を利用する場合や標準利用期間を超えて就労移行支援を利用する場合についても、就労選択支援事業所によるアセスメントが行われている者を対象とする予定だ、と書かれています。ただし続けて、令和9年4月以降の取扱いについては改めて示す、とも書かれています。2026年8月16日に厚生労働省の掲載ページと自治体の案内を確認した限りでは、その「改めて示す」通知はまだ出ていません。 したがって、A型や就労移行支援を運営している事業所が今の時点でできるのは、2027年4月という時期を前提に受入れ手順の見直しを検討しておくところまでです。除外事由や代替措置がB型と同じ形で置かれるかどうかは、続報を待つことになります。 ## 参入を考えるなら期限は2028年3月末 就労選択支援を自分の事業所で実施する側に回るかどうかを考えている場合、効いてくるのは支援員の経過措置です。就労選択支援員は就労選択支援員養成研修の修了が要件ですが、令和9年度末までは経過措置として、基礎的研修またはこれと同等以上の研修を修了した人を就労選択支援員とみなすことができます。養成研修の受講要件についても、令和9年度末までは同等以上の研修の修了者が受講できるという緩和が置かれています。 裏を返すと、2028年3月末を過ぎれば、みなし配置は使えなくなります。厚生労働省は令和8年度の就労選択支援員養成研修を実施しており、受講の申込みも同省のフォームで受け付けています。参入の可能性があるなら、経過措置の残り期間を見ながら受講計画を立てておく段階です。研修の詳細は[就労選択支援員養成研修](/column/shurou-sentaku-shien-in-kenshu/)に、実施主体の要件や参入判断は[就労選択支援はどこがやるのか](/column/shurou-sentaku-shien-doko-ga-yaru/)にまとめています。 ### よくある質問 Q. 就労選択支援は事業所にとって必須ですか? A. いいえ、就労選択支援の事業所を開設する義務はありません。必須にあたるのは利用者側の要件で、2025年10月1日以降に新たに就労継続支援B型を利用する意向がある人は、原則として先に就労選択支援を利用することとされています。50歳に達している人、障害基礎年金1級受給者、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった人などは、この原則の対象外です。 Q. 就労継続支援A型はいつから就労選択支援が必要になりますか? A. 2027年(令和9年)4月以降の予定です。厚生労働省の通知では、令和9年4月以降は新たに就労継続支援A型を利用する場合や標準利用期間を超えて就労移行支援を利用する場合についても、就労選択支援事業所によるアセスメントが行われている者を対象とする予定とされ、詳細な取扱いは改めて示すと書かれています。2026年8月16日の確認時点で、その詳細を示す通知は確認できていません。 Q. 近くに就労選択支援事業所がない場合、B型は利用できなくなりますか? A. 利用できます。最も近い就労選択支援事業所であっても通所することが困難である等、近隣に就労選択支援事業所がない場合と、利用可能な事業所数が少なく就労選択支援を受けるまでに待機期間が生じる場合は、従来どおり就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経た就労継続支援B型の利用が認められています。 Q. なぜ就労選択支援が創設されたのですか? A. 障害者本人が就労先や働き方についてより良い選択ができるようにするためです。令和4年法律第104号による障害者総合支援法等の改正で新たな障害福祉サービスとして位置づけられ、就労アセスメントの手法を活用して、本人の希望、就労能力や適性等に合った選択を支援することを趣旨としています。 Q. 就労選択支援員には養成研修の修了が必ず必要ですか? A. 2028年3月末(令和9年度末)までは経過措置があり、基礎的研修またはこれと同等以上の研修を修了した人を就労選択支援員とみなすことができます。経過措置が終わる2028年4月以降は、就労選択支援員養成研修の修了が要件になります。養成研修の受講要件そのものにも、令和9年度末までは同等以上の研修の修了者が受講できるという緩和が置かれています。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「就労選択支援について(制度の案内ページ・通知やマニュアルの掲載元)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_56733.html(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「「就労選択支援の実施について」の一部改正について(令和7年9月30日障障発0930第3号・新旧対照表を含む)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001571813.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省・文部科学省「特別支援学校等における就労選択支援の取扱いについて(令和7年5月15日7初特支第1号・障障発0515第2号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001488515.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「就労選択支援に関するQ&A VOL.1(令和7年9月5日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001571785.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(令和8年2月18日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf(2026年8月16日確認。就労選択支援の対象者スケジュールに関する変更はなし) - 栃木県「就労選択支援について」 https://www.pref.tochigi.lg.jp/e05/welfare/shougaisha/service/shurousentakusien.html(2026年8月16日確認。令和8年度養成研修の事務連絡(令和8年5月18日付)の案内あり) - 愛知県「就労選択支援について」 https://www.pref.aichi.jp/soshiki/shogai/shasentaku.html(2026年8月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 就労選択支援の流れと利用期間 B型・就労移行支援が 受け入れ側で備えること URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shurou-sentaku-shien-nagare-kikan/ カテゴリー: 利用者獲得 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2025.10.01 ### 結論 就労選択支援の支給決定期間は原則1か月です。厚生労働省の実施マニュアルは、1週目から4週目にかけて本人への情報提供、作業場面等を活用した状況把握、多機関連携によるケース会議、アセスメントシートの作成、事業者等との連絡調整を進める「標準1か月イメージ」を示しています(2025年10月1日施行、令和7年9月30日改正通知時点)。 受け入れ側から見ると、新たに就労継続支援B型を利用する人については、従来の暫定支給決定によるアセスメントに代えて、この1か月と、その前後に2回発生する支給決定手続きが挟まります。問い合わせから利用開始までの所要期間は市町村の支給決定事務によって変わるため、管内市町村への確認が必要です。 - 支給決定期間: 原則1か月(例外事由に該当する場合のみ一度だけ再度1か月、または当初から2か月) - 1か月の利用日数上限: 各月の暦日数から8日を控除した日数 - B型を新たに利用する場合: 2025年10月から、原則としてあらかじめ就労選択支援を利用する - アセスメント結果の有効期間: 原則1年以内に実施されたものを活用する - 受け入れ側の制約: 利用中のサービスと同一法人が運営する就労選択支援は原則利用できない 根拠: 厚生労働省「就労選択支援の実施について」(令和7年9月30日 障障発0930第3号による一部改正) ### 本文 ## 相談から利用開始までに、1か月分の工程が増えた 就労選択支援は、障害者総合支援法の改正に伴う新しい障害福祉サービスとして、2025年(令和7年)10月1日から実施されています。就労移行支援または就労継続支援を利用する意向がある人と、現に利用している人が対象です。 受け入れ側にとって影響が大きいのは、就労継続支援B型の利用対象者の書き換えです。2025年10月から、B型は従来の就労アセスメントに代わり「就労選択支援事業所によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者」が対象になりました。つまり新たにB型を利用する意向がある人は、あらかじめ就労選択支援を利用することになります。 ただし全員ではありません。50歳に達している人、障害基礎年金1級の受給者、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった人などは、就労選択支援を経ずにB型を利用できます。また、最も近い就労選択支援事業所であっても通所が困難であるなど近隣に事業所がない場合や、利用可能な事業所数が少なく待機期間が生じる場合は、従来どおり就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経たB型利用が認められています。 なお、就労継続支援A型を新たに利用する場合と、標準利用期間を超えて就労移行支援を利用する場合についても、令和9年4月以降は就労選択支援事業所によるアセスメントを受けた人を対象とする予定とされています。取扱いは改めて示されることになっているため、現時点で確定しているのはB型の部分だけです。 ## 相談から利用開始までの流れ 厚生労働省の実施マニュアルと通知から、時系列を並べると次のようになります。段階ごとの手続きの細部は市町村によって異なります。 | 段階 | 主な主体 | 受け入れ側の事業所で発生すること | | --- | --- | --- | | 1. 働くことについての相談 | 本人/市町村・相談支援事業所・学校・就労支援機関 | この時点で見学や問い合わせが入ることがある。利用するサービスはまだ決まっていない | | 2. 就労選択支援の申請とサービス等利用計画案の作成 | 本人/指定特定相談支援事業所 | 特になし | | 3. 就労選択支援の支給決定 | 市町村 | 原則1か月の支給決定が行われる | | 4. 利用契約とサービス担当者会議 | 就労選択支援事業所/指定特定相談支援事業所 | 現に利用中の事業所は関係機関として会議に呼ばれることがある | | 5. 本人への情報提供、作業場面等を活用した状況把握 | 就労選択支援事業所 | 他の就労系サービス事業所の作業場面での観察も想定されている | | 6. 多機関連携によるケース会議 | 就労選択支援事業所が招集 | 関係機関として参集を依頼されることがある。指定特定相談支援事業者は原則参加 | | 7. アセスメントシートの作成と本人へのフィードバック | 就労選択支援事業所/本人 | 特になし | | 8. 事業者等との連絡調整 | 就労選択支援事業所 | 面談・見学・実習の依頼がこの段階で入る | | 9. 就労系サービスの申請と計画案の作成 | 本人/指定特定相談支援事業所 | 特になし | | 10. 支給決定と利用開始 | 市町村/受け入れ事業所 | 利用契約、個別支援計画の作成へ | ケース会議は利用状況に合わせて随時開催されるもので、利用初期にスケジュールを共有し、中期にアセスメント結果を共有し、後期に進路の方向性を共有するといった開催例が示されています。1回しか開かれないわけではありません。 ## 期間は原則1か月、延長は例外に限られる 支給決定期間は原則1か月です。通知は延長を原則想定していないと明記したうえで、1か月の支給決定を行い、支援開始後に次の例外事由に該当することが明らかになった場合に限り、一度だけ再度1か月の支給決定を行って差し支えないとしています。 - 進路に関する自己理解に大きな課題があり、改善に向けて1か月以上の時間をかけた継続的な作業体験を行う必要がある場合 - 集中力や体力の持続、体調や精神面の安定等に課題があり、進路を確定するに当たって1か月以上の時間をかけた観察が必要な場合 当初から例外事由に該当することが明らかな場合に限り、最初から2か月の支給決定を行うこともできますが、その場合は延長できません。1か月あたりの利用日数の上限は、就労移行支援等と同じく各月の暦日数から8日を控除した日数です。 アセスメントそのものに実施日数の定めはありません。実施マニュアルは1週目から2週目に面談と作業観察を置く「標準1か月イメージ」を示しており、新潟市の集団指導資料は約2週間程度が想定されているものの規定日数はなく5日間程度でも構わないと説明しています。 気をつけたいのは、この1か月が「相談から利用開始まで」の全体ではないことです。前後に就労選択支援の支給決定と就労系サービスの支給決定という2回の手続きが入るため、実際のリードタイムはそれより長くなります。所要期間は市町村の支給決定事務の運び方によって差が出るので、管内市町村に確認しておくのが確実です。 ## 受け入れ側が先に知っておくべき制度上の制約 まず、自法人で就労選択支援を立ち上げても、自法人のB型へ利用者を送り込む装置にはなりません。通知は、就労継続支援や就労移行支援を利用中の人が受給者証の更新や事業所の変更を検討して就労選択支援を利用する場合、そのサービスを提供している事業所と同一法人が運営する就労選択支援は利用できないとしています。近隣に別法人の就労選択支援事業所も就労移行支援事業所もない場合に限って例外が認められます。 加えて特定事業所集中減算があります。就労選択支援事業所は年度に2回、判定期間中にアセスメントを終了した利用者について、就労移行支援・A型・B型それぞれの移行先を集計し、移行率が最も高い法人の割合が80%を超えた場合に減算が適用されます。判定期間が前期(1月1日から6月末日)なら適用期間は10月1日から3月31日まで、後期(7月1日から12月末日)なら4月1日から9月30日までです。 そして、就労選択支援事業所は振り分けを行いません。通知は、就労選択支援事業者が本人の就労の可否や利用すべきサービス、利用する事業所を判断・決定するものではないとしたうえで、アセスメントシートに想定される事業所名を記載する場合も、今後の支給決定に向けた参考情報に過ぎず、あっせんを行うものではないと念を押しています。選ぶのは本人です。 一方で、制度は情報が本人に届く経路を用意しています。指定基準は就労選択支援事業所に対して、利用者に就労に必要な知識や能力の向上に資する事業所等を適切に情報提供できるよう、協議会への定期的な参加等により日頃から地域の社会資源に関する情報収集に努めることを求めています。通知では、概ね1年に1回以上協議会に参加して運営状況を報告し、要望や助言を聞く機会を設けるといった取組が例示されています。受け入れ側が協議会の就労支援部会に出ていくことは、制度に沿った接点の持ち方だと言えます。 既存の利用者についても役割が示されています。通知は、他の就労系障害福祉サービス事業者に対して、計画相談支援を行う者と連携し、支給決定の更新時など定期的に就労選択支援に関する情報提供を行い、その利用を促すよう求めています。B型を運営する側にも動きが求められている部分です。 ## 定員計画と見学対応で見込んでおきたいこと ここから先は制度の条文から直接導けるものではないので、備え方の候補として挙げます。 見学の位置づけは変わる可能性があります。通知は、就労選択支援を利用した人がアセスメント結果を踏まえ、面談、見学、実習その他の支援によって進路選択を支援することを「事業者等との連絡調整」の内容としています。従来の「本人や家族が直接見学に来て、そのまま申請へ」という流れに加えて、就労選択支援事業所や相談支援専門員を経由した見学・実習の依頼が入る場面が増えることが見込まれます。窓口を電話とフォームだけに絞らず、支援機関からの依頼にも答えられる形にしておく備え方が考えられます。 空き情報の伝え方も同じです。就労選択支援事業所は地域の社会資源の情報収集に努めることとされているので、定員の空き状況、受け入れ可能な時期、作業の種類や通所日数の柔軟性といった項目を、協議会の場や問い合わせで即答できる形に整理しておくことが考えられます。 定員計画については、新規のB型利用者に就労選択支援の1か月と前後の支給決定手続きが挟まる分、問い合わせから利用開始までの期間が従来より延びる前提で見ておく必要があります。具体的に何日延びるかは市町村の事務の運び方次第なので、まずは管内市町村と、日頃つながりのある相談支援事業所に実際の所要日数を確認するところから始めるのが現実的です。 就労選択支援を経由して来る問い合わせでは、相談支援専門員との連絡の際に次の項目を確認しておくと、受け入れの段取りが組みやすくなります。就労選択支援の支給決定期間の開始日と終了予定日、多機関連携によるケース会議に呼ばれるかどうかと日程、アセスメントシートを共有してもらえるかどうかと時期、見学や実習の希望時期の4点です。 見学の受付から利用開始までの間には、就労系サービスの申請、サービス等利用計画案の作成、市町村の支給決定が順に入ります。見学の場で利用開始日を約束できる段階ではないことを、本人と家族に先に伝えておく必要があります。 制度の全体像は[就労選択支援とは](/column/shurou-sentaku-shien/)、対象になる人の範囲は[就労選択支援の対象者](/column/shurou-sentaku-shien-taishousha/)、運用上の課題は[就労選択支援のデメリットと課題](/column/shurou-sentaku-shien-demerit/)で整理しています。 ### よくある質問 Q. 就労選択支援の利用期間はどれくらいですか? A. 支給決定期間は原則1か月です。延長は原則想定されておらず、1か月の支給決定を行った後、支援開始後に進路に関する自己理解に大きな課題があるなどの例外事由に該当することが明らかになった場合に限り、一度だけ再度1か月の支給決定を行うことができます。当初から例外事由に該当することが明らかな場合は2か月の支給決定も可能ですが、その場合は延長できません。 Q. 新たに就労継続支援B型を使う人は、必ず就労選択支援を経る必要がありますか? A. 原則として必要ですが、対象外となる人と例外の取扱いがあります。2025年10月から、新たにB型を利用する意向がある場合はあらかじめ就労選択支援を利用することとされていますが、50歳に達している人、障害基礎年金1級の受給者、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった人などは対象外です。また、最も近い就労選択支援事業所であっても通所することが困難である等で近隣に事業所がない場合と、利用可能な事業所数が少なく就労選択支援を受けるまでに待機期間が生じる場合は、従来どおり就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経たB型利用が認められます。 Q. 自法人で就労選択支援を運営すれば、自法人のB型につなげられますか? A. いいえ、つなげる仕組みにはなりません。就労継続支援や就労移行支援を利用中の人が受給者証の更新や事業所の変更を検討して就労選択支援を利用する場合、そのサービスを提供している事業所と同一法人が運営する就労選択支援は原則として利用できないとされています。さらに特定事業所集中減算があり、判定期間にアセスメントを終了した利用者のうち、移行率が最も高い法人へ移った割合が80%を超えた場合は減算が適用されます。 Q. 就労選択支援のアセスメントは何日くらい行うのですか? A. 実施日数の規定はありません。厚生労働省の実施マニュアルは1週目から2週目に面談と作業観察を配置した「標準1か月イメージ」を示していますが、日数の定めはなく、新潟市の集団指導資料は「厚生労働省は約2週間程度の期間と想定しているが、規定日数はなく、5日間程度の短期間実施でも構わない」と説明しています。1か月あたりの利用日数の上限は、各月の暦日数から8日を控除した日数です。 Q. すでにB型を利用している人にも就労選択支援は関係しますか? A. 関係します。現に就労移行支援または就労継続支援を利用している人も就労選択支援の対象で、本人の希望に応じて利用できます。厚生労働省の通知は、他の就労系障害福祉サービス事業者に対して、計画相談支援を行う者と連携し、支給決定の更新時など定期的に就労選択支援に関する情報提供を行い、その利用を促すよう求めています。 Q. 就労選択支援事業所が利用先の事業所を決めるのですか? A. いいえ、決めません。厚生労働省の通知は、就労選択支援事業者が本人の就労の可否や利用すべき就労系障害福祉サービス、利用する事業所等を判断・決定するものではないとしています。アセスメントシートに想定される事業所名を記載する場合もありますが、今後の支給決定に向けた参考情報に過ぎず、利用サービス等のあっせんを行うものではないとされています。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「就労選択支援の実施について(令和7年3月31日 障障発0331第3号/令和7年9月30日 障障発0930第3号により一部改正)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001571813.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「就労選択支援実施マニュアル」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001480295.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「就労選択支援に関するQ&A VOL.1(令和7年9月5日/令和7年9月30日改正)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001571785.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「就労選択支援について(関係通知・資料の掲載ページ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_56733.html(2026年8月16日確認) - 新潟市「就労選択支援について(障害福祉サービス事業者等 集団指導資料)」 https://www.city.niigata.lg.jp/iryo/kenfuku/sidoukansa/syuudansidou/syougaisyuudan.files/4R7syuurousenntakusien.pdf(2026年8月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 就労選択支援の対象者は誰か。 B型・A型・特別支援学校の線引きと 受給者証の扱い URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/shurou-sentaku-shien-taishousha/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2025.10.01 ### 結論 就労選択支援の対象者は、就労移行支援または就労継続支援を利用する意向がある人と、現にこれらを利用している人です。このうち令和7年10月(2025年10月)以降に新たに就労継続支援B型を利用する場合は、原則として就労選択支援を先に利用する必要があります。ただし50歳に達している人、障害基礎年金1級の受給者、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった人などは、就労選択支援を経なくてもB型を利用できます。就労継続支援A型と就労移行支援は現時点では本人の希望による任意利用で、令和9年4月以降に原則利用へ移る予定です(2026年8月16日時点)。 - 原則として利用が必要な人: 令和7年10月以降に新たに就労継続支援B型を利用する意向がある人 - 例外(アセスメントなしでB型を利用できる人): 50歳に達している人/障害基礎年金1級の受給者/就労経験があり年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった人 など - 任意で利用できる人: 新たにA型・就労移行支援を利用する人、既に就労系サービスを利用中で支給決定の更新等を検討する人、例外3類型でB型を新規利用する人 - 令和9年4月以降の予定: 新たにA型を利用する場合と、標準利用期間を超えて就労移行支援を利用する場合も対象とする予定(取扱いは改めて示されるとされている) - 支給決定期間: 原則1か月。例外事由に該当することが支援開始後に判明した場合に限り一度のみ再度1か月、当初から明らかな場合は2か月 - 特別支援学校等の在学者: 高等部1年次から利用可能・在学中に複数回も可。15歳以上18歳未満は児童相談所長が適当と認め市町村長に通知することが必要 根拠: 厚生労働省「就労選択支援の実施について」(令和7年3月31日障障発0331第3号/最終改正 令和7年9月30日障障発0930第3号) ### 本文 ## 対象者の定義は2つの層でできている 厚生労働省の課長通知は、就労選択支援の対象者を「就労移行支援又は就労継続支援を利用する意向を有する者及び現に就労移行支援又は就労継続支援を利用している者」と定義しています。これから就労系サービスを使おうとしている人と、いま使っている人の両方が入るという、かなり広い定義です。 この広い定義の上に、もう一段の線引きが乗っています。令和7年10月から、就労継続支援B型の利用対象が「就労選択支援事業者によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者」に変わりました。この入口要件の変更により、新規にB型を利用する人だけが実質的に就労選択支援を必須とされています。 ## 類型ごとの対象と対象外 相談を受けたときに判断が必要になるのは、次の切り分けです。 | 利用者の類型 | 就労選択支援の扱い(2026年8月時点) | | --- | --- | | 新たにB型を利用する(下の例外に当たらない) | 原則として先に利用が必要 | | 新たにB型を利用するが、50歳に達している/障害基礎年金1級受給者/就労経験があり年齢や体力の面で一般企業への雇用が困難になった | 必須ではない。本人の希望に応じて利用できる | | 新たに就労継続支援A型を利用する | 必須ではない。令和9年4月から原則利用の予定 | | 新たに就労移行支援を利用する | 必須ではない。本人の希望に応じて利用できる | | すでに就労移行支援・就労継続支援を利用中で、支給決定の更新等を検討している | 必須ではない。本人の希望に応じて利用できる | | 就労移行支援を標準利用期間を超えて更新する | 現時点では任意。令和9年4月から原則利用の予定 | | 新たにB型を利用したいが、近隣に就労選択支援事業所がない/待機が生じる | 就労移行支援事業所等による従来の就労アセスメントを経てB型を利用できる | | 特別支援学校高等部等の在学者 | 高等部1年次から利用可能。在学中に複数回も可 | 「必須ではない」と書いた行も対象者の定義からは外れていません。使えるけれども義務ではない、という位置づけです。制度の枠組みは[就労選択支援とは何か](/column/shurou-sentaku-shien/)、施行時期は[いつから始まるのか](/column/shurou-sentaku-shien-itsukara/)で扱っています。 この表は類型を並べたものなので、実際に相談を受けたときの確認の順番は図1のように上から下へたどることになります。 ## 例外3類型と、事業所がない場合の逃げ道 B型の新規利用で就労選択支援を経なくてよいのは、50歳に達している人、障害基礎年金1級の受給者、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった人などです。従来の就労アセスメントでも同じ扱いだった区分が引き継がれています。 もう一つ、地域の事情による例外があります。課長通知は、最も近い就労選択支援事業所であっても通所することが困難である等で近隣に就労選択支援事業所がない場合と、利用可能な事業所数が少なくて待機期間が生じる場合の2つを挙げ、従来どおり就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経たB型利用を認めています。同じ例外は留意事項通知(障障発0331第2号 1の(3)②ア(ア))にもありますが、そちらの書き方は「近隣に就労選択支援事業所がない場合」までで、通所の困難さに触れているのは課長通知のほうです。近さだけでなく通所できるかどうかで判断してよいという根拠は、課長通知に当たることになります。事業所数は令和8年6月時点で全国965か所ですが、指定権者別に見ると0か所の県や市も残っており、この例外が実務上まだ生きている地域があります。実施主体の要件は[どこがやるのか](/column/shurou-sentaku-shien-doko-ga-yaru/)で整理しました。 ## 支給決定と受給者証の扱い 就労選択支援は障害福祉サービスなので、市町村への申請と支給決定を経て、法第22条第8項に基づく受給者証が交付されます。すでにB型などの受給者証を持っている人でも、就労選択支援について改めて申請と支給決定が必要です。 支給決定期間は原則1か月です。進路に関する自己理解に大きな課題がある場合など、通知が挙げる例外事由に該当することが支援開始後に判明したときに限り、一度だけ再度1か月の支給決定を行えます。当初から明らかなら最初から2か月の支給決定も可能ですが、その場合は延長ができません。詳細は[利用の流れと期間](/column/shurou-sentaku-shien-nagare-kikan/)にまとめています。 もう一点、見落としやすいのが同一法人の制限です。就労継続支援や就労移行支援を利用中の人が受給者証の更新や事業所の変更を検討して就労選択支援を使う場合、そのサービスを提供している事業所と同一法人が運営する就労選択支援は利用できません。近隣に別法人の事業所がない場合だけ例外が認められます。 相談を受けた時点でまず確認するのは、新規に利用するのか、いま利用しているサービスの更新かという点です。新規でB型なら原則として就労選択支援が先に必要になり、更新なら本人の希望次第で扱いが変わります。 次に例外の3類型に当たるかを見ますが、年齢や障害基礎年金の等級は市町村が支給決定の場面で判断する事項です。事業所側で結論を出さず、相談支援専門員を通じて市町村の障害福祉担当に確認を回すほうが安全です。同一法人の制限もあるので、受給者証で現在の利用サービスと支給決定期間を確認したうえで案内先を組み立てることになります。 ## 特別支援学校の在校生をどう扱うか 就労選択支援は18歳以上の障害者向けのサービスですが、特別支援学校高等部、高等学校、中等教育学校の後期課程に在籍する生徒は、1年次から利用できます。在学中に複数回受けることも、職場実習のタイミングで受けることも可能です。 15歳以上18歳未満の生徒が利用する場合は、児童相談所長が障害福祉サービスを受けることが適当と認め、その旨を市町村長に通知することが必要になります。授業日に通所する場合の出欠は、校長の判断で「出席停止・忌引等の日数」に計上することも、学校の教育活動に位置づけて出席として扱うこともできるとされています。作業観察は、生徒が事業所に通所する形のほか、教育課程に位置づけられた校内実習や実習の場面に事業者が出向いて行うことも認められています。 ## 令和9年4月に何が変わるか 新たに就労継続支援A型を利用する場合と、標準利用期間を超えて就労移行支援を利用する場合についても、令和9年4月以降は就労選択支援事業所によるアセスメントが行われている人を対象とする予定とされています。ただし通知は「令和9年4月以降の取扱いについては改めてお示しする」と述べるにとどまっており、2026年8月16日時点で詳細な要件は示されていません。 対象が広がれば、商圏で受けられる就労選択支援の枠が足りるかどうかが直接効いてきます。B型の新規利用だけで待機が出ている地域は、A型と就労移行支援が加わったときの負荷を先に見積もっておきたいところです。運用上の論点は[デメリットと課題](/column/shurou-sentaku-shien-demerit/)でも触れています。 なお、対象者の判断や支給決定の運用は市町村ごとに幅があります。手続きの進め方や必要書類は、事業所の所在地を管轄する市町村の障害福祉担当課と指定権者に確認してください。 ### よくある質問 Q. 新しく就労継続支援B型を利用したい人は、必ず就労選択支援を経る必要がありますか? A. 原則として必要です。令和7年10月から、就労継続支援B型は「就労選択支援事業者によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者」が利用対象となったため、新たにB型を利用する意向がある場合は就労選択支援をあらかじめ利用します。ただし50歳に達している人、障害基礎年金1級の受給者、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった人などは、就労選択支援事業者によるアセスメントを行うことなくB型を利用できます。 Q. 近くに就労選択支援事業所がない場合はどうなりますか? A. 就労移行支援事業所等による従来の就労アセスメントを経てB型を利用できます。課長通知「就労選択支援の実施について」(障障発0331第3号 1の(2))は、最も近い就労選択支援事業所であっても通所することが困難である等、近隣に事業所がない場合と、利用可能な事業所数が少なく就労選択支援を受けるまでに待機期間が生じる場合の2つを挙げています。同じ例外は留意事項通知(障障発0331第2号 1の(3)②ア(ア))にも置かれていますが、そちらは「近隣に就労選択支援事業所がない場合」と短く記されています。事業所数は令和8年6月時点で全国965か所(都道府県532・指定都市213・中核市220)で、指定権者によって0か所の地域も残っています。 Q. すでに就労継続支援B型を利用している人も対象になりますか? A. 対象になりますが、利用は任意です。現に就労移行支援または就労継続支援を利用している人も就労選択支援の対象者に含まれ、支給決定の更新や事業所の変更を検討するときに本人の希望に応じて利用できます。令和7年10月の施行によって既存の利用者にさかのぼって義務が生じるものではありません。 Q. 就労選択支援を利用するのに受給者証は必要ですか? A. 必要です。就労選択支援は障害福祉サービスなので、市町村に申請して支給決定を受け、障害者総合支援法第22条第8項に基づいて受給者証が交付されます。支給決定期間は原則1か月です。すでに他のサービスの受給者証を持っている人でも、就労選択支援について改めて申請と支給決定が必要になります。 Q. 特別支援学校の生徒はいつから利用できますか? A. 高等部の1年次から利用でき、在学中に複数回受けることもできます。就労選択支援は18歳以上の障害者向けのサービスですが、特別支援学校高等部・高等学校・中等教育学校の後期課程に在籍する生徒は学年を問わず利用可能とされています。15歳以上18歳未満の生徒が利用する場合は、児童相談所長が障害福祉サービスを受けることが適当と認め、その旨を市町村長に通知することが必要です。 Q. 自法人のB型利用者に、自法人の就労選択支援を提供できますか? A. 原則としてできません。就労継続支援や就労移行支援を利用中の人が受給者証の更新や事業所の変更を検討するにあたって就労選択支援を利用する場合、そのサービスを提供している事業所と同一の法人が運営する就労選択支援は利用できないと通知に定められています。ただし、最も近い就労選択支援事業所であっても通所が困難であるなど、近隣に別法人が運営する就労選択支援事業所や就労移行支援事業所がない場合は認められます。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「就労選択支援について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_56733.html(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「就労選択支援の実施について(令和7年3月31日障障発0331第3号 障害福祉課長通知)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001489151.pdf(1の(2)の対象者と例外の文言を原典で確認・2026年8月16日確認) - 厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について(平成19年4月2日障障発第0402001号/最終改正 令和7年3月31日障障発0331第2号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001473458.pdf(1の(3)②ア(ア)が同じ例外を短い表現で記していることを原典で確認・2026年8月16日確認) - 厚生労働省「「就労選択支援の実施について」の一部改正について(令和7年9月30日障障発0930第3号・新旧対照表)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001571813.pdf(2026年8月16日確認) - 文部科学省・厚生労働省「特別支援学校等における就労選択支援の取扱いについて(令和7年5月15日7初特支第1号・障障発0515第2号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001488515.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「就労選択支援実施マニュアル」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001480295.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「就労選択支援事業所数(令和8年6月末現在)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001737866.pdf(2026年8月16日確認) - 厚生労働省「介護給付費等の支給決定等について(事務処理要領の一部改正)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001472928.pdf(2026年8月16日確認) - e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 第22条第8項」 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123(2026年8月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 運営指導とは何か。 実地指導から名称が変わった経緯と、 通知から当日までの流れ URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/unei-shido/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.06.08 ### 結論 運営指導(旧・実地指導)は、都道府県または市町村が事業所ごとに、サービスの質・運営体制・報酬請求の状況を確認して必要な指導を行うものです。障害福祉サービスの根拠は、2026年8月16日時点では令和8年(2026年)6月8日付けの障発0608第1号です。表題は「指定障害福祉サービス事業者等の指導監査について」です。この通知の発出により、従来参考とされてきた平成26年1月23日障発0123第2号は廃止されました。旧通知は指導の形態を「集団指導」と「実地指導」と定めていました。新しい指導指針は、これを「集団指導」と「運営指導」として整理しています。 運営指導は原則として実地で行われます。就労継続支援A型・就労継続支援B型・共同生活援助の事業所は、3年に1回以上の頻度で実施することとされました。実施は原則として実施予定日の1か月前までに文書で通知されます。ただし例外があります。障害者虐待が疑われているなどの理由で、事前に知らせては日常のサービス提供状況を確認できないと認められる場合です。この場合は指導開始時に通知して行われます。 - 現行の根拠通知: 令和8年6月8日 障発0608第1号(別添1〜4。平成26年1月23日障発0123第2号は廃止) - 指導の形態: 集団指導(年1回以上)と運営指導(原則、実地)の2つ - 実施頻度: 就労継続支援A型・B型・共同生活援助は3年に1回以上。その他は原則として指定の有効期間内に少なくとも1回以上 - 新規事業所: 指定後3年以内。ただし就労継続支援A型は新規指定の半年後を目途に初回を実施 - 事前通知: 原則として実施予定日の1か月前までに文書。虐待が疑われる場合等は指導開始時に通知 - 確認される書類: 原則として前年度から直近の実績に係る書類。提出部数は1部。利用者の記録の確認は原則3名以内 - 終了後: 改善を要すると認められた事項は後日文書で通知され、改善報告書の提出を求められる 根拠: 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等指導指針」(令和8年6月8日障発0608第1号 別添1) ### 本文 ## 「実地指導」がいつ「運営指導」になったのか 呼称が先に変わったのは介護保険分野です。厚生労働省老健局が令和4年(2022年)3月に「介護保険施設等 運営指導マニュアル」を出しました。このマニュアルは名称を改めた理由まで書いています。この指導をこれまで実地指導としてきたが、今後は実地で行わない場合もあるため、というものです。実地に行くかどうかではなく、**事業所の運営そのものを見る指導**だという整理です。 障害福祉サービスについては、事情がもう少し込み入っています。長らく参考通知とされてきた平成26年1月23日障発0123第2号は、指導の形態を「集団指導」と「実地指導」と規定していました。この通知は、令和8年(2026年)6月8日付けの障発0608第1号の発出をもって廃止されました。新しい通知は、4本を別添として新たに定めています。指導指針、集団指導と運営指導のマニュアル、監査指針、監査マニュアルです。そこでは指導の形態が「集団指導」と「運営指導」になっています。 障害福祉分野で何年何月から呼称が切り替わったのかを断定する解説を見かけますが、原典で確認できるのはここまでです。少なくとも2026年8月時点で事業所が読むべき文書は、令和8年6月8日通知の別添です。それ以前の解説記事を下敷きにした自己点検表は、**作り直す必要があります**。 ## 運営指導は3つの指導の束である 運営指導という1つの検査があるわけではなく、指導指針は次の3つに分けています。この3つは、効率的な実施の観点から分割して実施しても差し支えないとされています。別々の時期に行った場合でも、すべてを完了すれば運営指導の実績があるものとみなされます。年度内に「体制と請求だけ先に見ます」という連絡が来ても、**それは正規の運営指導**です。 | 指導の種類 | 主に見られるもの | 実地かどうか | | --- | --- | --- | | ①自立支援給付対象サービス等の実施状況指導 | 施設・設備、利用者へのサービス提供の実態。虐待や不当な身体的拘束の有無も現場で確認される | 現地でなければ確認できないため実地 | | ②最低基準等運営体制指導 | 人員・設備・運営基準に定められた運営体制。委員会・研修・指針・計画の整備状況 | 実地が基本。確認可能ならオンライン等も可 | | ③報酬請求指導 | 加算の算定要件を満たしているか、請求事務が適正か | 実地が基本。状況に応じてオンライン等も可 | ①と②については、サービス種別ごとに定められた「確認項目及び確認文書」に基づいて実施されます。確認項目以外の項目は、**特段の事情がない限り確認しません**。確認文書以外の文書も、原則として求めないことになっています。 この確認項目及び確認文書は令和8年6月に新設されました。それ以前は、基準省令の内容をすべて並べた「主眼事項及び着眼点等」しかありませんでした。自分の事業所のサービスのシートを開けば、当日何を見られるかが項目単位で分かります。 ## 実施頻度は、サービスによって明確に差がついた | 対象 | 頻度 | | --- | --- | | 就労継続支援A型・就労継続支援B型・共同生活援助 | 3年に1回以上 | | 上記以外のサービス | 3年に1回までは求めないが、原則として指定の有効期間内に少なくとも1回以上 | | 指定後まもない事業所 | 指定後3年以内。ただし就労継続支援A型は新規指定の半年後を目途に初回 | | 通報等により不適切な運営・報酬請求が疑われる事業所 | 優先的に実施 | | 集団指導 | 内容に応じて年1回以上。実施日の2か月前までに文書で通知。新規に開始した事業者はおおむね1年以内に全てを対象 | 背景には運営指導・監査の強化があります。厚生労働省とこども家庭庁は、令和7年度から強化を進めているとしています。重点化の対象は5サービスです。就労継続支援A型・B型・共同生活援助・児童発達支援・放課後等デイサービスです。この5サービス平均の運営指導実施率は令和5年度18.0%、令和6年度19.0%で、3年に1回に相当する**約33%には届いていません**。頻度を上げる方向で制度が動いているという前提で構えたほうがよいということです。 なお、児童発達支援や放課後等デイサービスは別の通知によります。「指定障害児通所支援事業者等の指導監査について」(平成26年3月28日障発0328第4号、最終改正 令和7年3月31日)です。障害児の事業所も併設している法人は、**根拠通知が2本ある**ことに注意してください。 ## 通知から改善報告書までの流れ | 段階 | 内容 | | --- | --- | | 実施通知 | 原則として実施予定日の1か月前までに文書。根拠規定と目的、日時と場所、指導担当者、出席者、準備すべき書類等の5項目に加え、当日のおおむねの流れも示される | | 事前準備 | 事前提出資料を求められることがある(必須ではない)。自治体が既に保有している文書は再提出不要。自己点検シートの提出を求める自治体が多い | | 当日 | 確認項目及び確認文書に基づき、書類を閲覧しながら関係者への面談方式。確認する文書は原則として前年度から直近の実績に係るもの、提出部数は1部、利用者の記録の確認は特に必要な場合を除き原則3名以内 | | 終了時 | その場で口頭の講評が行われることが多いが、当日必ず講評しなければならないわけではない | | 後日 | 改善を要すると認められた事項について、文書で指導内容が通知される | | 改善報告 | 文書で指摘された事項について、期限を定めて改善報告書の提出を求められる | 指摘は重さで3段階に分かれます。法令・基準・通知・告示・条例等に違反している場合は文書指導となり、改善報告が必要です。違反はあるが程度が軽微な場合や、文書指導をしなくても改善が見込まれる場合は口頭指導となり、改善報告は求められません。違反していないが今後のために伝えられるものは助言です。文書指導と口頭指導のいずれも、法令等の具体的かつ直接的な根拠を示すことが必要とされているので、指摘の根拠規定は**その場で確認して構いません**。 指導指針には、担当者の主観に基づく指導や前回の指導内容と根拠なく大きく異なる指導を行わないこと、高圧的な言動は控えることが明記されました。運営指導のうち事前準備と現地調査は、障害者総合支援法第10条第1項・第11条第2項に基づく法定の調査権限です。そこから先の改善指示は行政手続法上の行政指導であり、任意の協力に基づくものです。**この2つは法的な性質が違います**。 ## 運営指導が監査に切り替わる4つの場合 運営指導の最中に次のいずれかを確認した場合、自治体は**運営指導を中止して直ちに監査を行います**。監査は勧告・命令・指定の効力停止・指定取消といった行政上の措置につながる手続きで、運営指導とは目的も法的な位置づけも異なります。 - 人員、施設・設備および運営に関する基準に従っていない状況が著しいと認められる場合、またはその疑いがある場合 - 自立支援給付に係る費用の請求等について不正があると認められる場合、またはその疑いがある場合 - 不正の手段による指定等を受けていると認められる場合、またはその疑いがある場合 - 障害者虐待等により利用者等の生命または身体の安全に危害を及ぼしていると認められる場合、またはその疑いがある場合 この4類型のうち2つに虐待と不正請求が入っている点は、経営者として押さえておく価値があります。 運営指導そのものについては、関連する記事にまとめています。 - [運営指導と監査は何が違うのか](/column/unei-shido-kansa-chigai/) … 監査になったときに何が起きるか - [運営指導の準備](/column/unei-shido-junbi/) … 当日までに何を用意するか - [運営指導で指摘されやすい項目](/column/unei-shido-shiteki/) … 実際に指摘が多い論点 個別の体制整備は次の記事で扱っています。 - [虐待防止の体制整備](/column/gyakutai-boushi-taisei/) - [身体拘束の適正化](/column/shintai-kousoku-tekiseika/) - [業務継続計画(BCP)](/column/bcp-shogai-fukushi/) 体制整備とは別に、虐待を疑った時点で発生する通報義務は[障害者虐待防止法](/column/gyakutai-boushi-hou/)にまとめています。 ### よくある質問 Q. 実地指導と運営指導は別のものですか。 A. 別の制度ではなく、同じ枠組みの指導の呼び方が変わったものです。障害福祉サービスについては、令和8年(2026年)6月8日付け障発0608第1号の別添1が定めています。別添1「指定障害福祉サービス事業者等指導指針」は、指導の形態を「集団指導」と「運営指導」としました。指導形態を「集団指導」と「実地指導」としていた平成26年1月23日障発0123第2号は、同日付けで廃止されました。なお介護保険分野では先行して呼称が改められています。令和4年3月の「介護保険施設等運営指導マニュアル」は、実地で行わない場合もあることから運営指導と名称を改めたと説明しています。 Q. 運営指導は何年に1回来ますか。 A. サービスによって異なります。就労継続支援A型、就労継続支援B型、共同生活援助を行う事業所は、3年に1回以上の頻度で実施することとされました。その他のサービスは3年に1回までは求められません。ただし原則として、指定の有効期間内に少なくとも1回以上実施することとされています。根拠は令和8年6月8日障発0608第1号 別添1 第3の2(2)です。指定後まもない事業所は指定後3年以内です。就労継続支援A型のみ、新規指定の半年後を目途に初回が実施されます。 Q. 事前の通知なしに運営指導が来ることはありますか。 A. あります。原則は実施予定日の1か月前までの文書通知です。ただし、あらかじめ通知したのでは日常のサービス提供状況を確認できないと認められる場合があります。指導対象の事業所で障害者虐待が疑われているときなどです。この場合は、指導開始時に文書で通知して実施することができます。集団指導・運営指導マニュアルは、不正請求のための文書改ざんが疑われる場合も同様に挙げています。そのうえで、運営指導ではなく監査(立入検査)として対応する場合も示しています。利用者の生命・身体に危害が及ぶおそれがある場合や、証拠保全が必要な場合です。 Q. 運営指導の当日は管理者が対応しなければいけませんか。 A. 管理者に限定する必要はありません。指導指針は、事業者側の対応者を管理者に限定しないと明記しています(別添1 第7(3)③)。実情に詳しい従業者や、事業所を経営する法人の労務・会計等の担当者が同席することは問題ないとされています。報酬請求指導では請求実務の担当者、運営体制の確認では労務担当者というように、答えられる人を席に着かせるほうが確認は早く終わります。 Q. 運営指導で指摘を受けたら必ず改善報告書を出すのですか。 A. 文書で指摘された事項については提出を求められます。指導指針は、都道府県または市町村が文書で指摘した事項に係る改善報告書の提出を求めるものとしています。集団指導・運営指導マニュアルは、改善報告書に具体的な改善内容を書くことを求めています。未完了なら「いつまでに何を行うのか」を明示します。「努力します」のような抽象的な表現は認められません。一方、軽微な違反等で口頭指導にとどまった事項は改善報告が不要と整理されています。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等の指導監査について(令和8年6月8日障発0608第1号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260608-0.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等指導指針(令和8年6月8日障発0608第1号 別添1)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260608-1.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等に対する集団指導・運営指導マニュアル(令和8年6月・別添2)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260609-2.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「確認項目及び確認文書(令和8年6月8日・サービス別Excel)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260608-22.xlsx(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等監査指針(令和8年6月8日障発0608第1号 別添3)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260608-3.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等の指導監査について(平成26年1月23日障発0123第2号・廃止済み)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb9830&dataType=1&pageNo=1(2026年08月16日確認。沿革の確認用) - 厚生労働省「障害福祉分野における運営指導・監査の強化について」 https://www.mhlw.go.jp/content/260723-1.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「介護保険施設等 運営指導マニュアル(令和4年3月・老健局総務課介護保険指導室)」 https://www.mhlw.go.jp/content/000925349.pdf(2026年08月16日確認。介護保険分野での呼称変更の理由の確認用) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 運営指導の通知が届いた 何年分の書類を見られるか 当日までに決めること URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/unei-shido-junbi/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-09-11 制度基準日: 2026.06.08 ### 結論 運営指導(旧・実地指導)で確認されるのは、原則として運営指導の前年度から直近の実績に係る書類です。国が自治体に示した指導指針「指定障害福祉サービス事業者等指導指針」(令和8年(2026年)6月8日 障発0608第1号 別添1 第5の2(3)④)がそう定めています。準備の目安もここに置けますが、実際に何を出すかは通知の「準備すべき書類等」が決めます。ただしこの指針は技術的助言で、実際に求める年数は指定権者ごとに幅があります。通知の「準備すべき書類等」で対象期間を確かめ、書いていなければ担当者に聞いてください。 一方で、記録を残す義務は5年間です。前年度分だけ見られるからといって、古い記録を捨ててよいわけではありません。国の省令は「提供した日から五年間」としていますが、東京都のように条例で「当該記録に係る事象の完結の日から五年間」と起算日を変えている自治体があります。年数と起算日は、省令ではなく所在地の条例で確認します。 - 確認文書の範囲: 原則として運営指導の前年度から直近の実績に係る書類(令和8年6月8日 障発0608第1号 別添1 第5の2(3)④) - 記録の保存義務: サービス提供に関する記録は5年間。国の省令は「提供した日から」起算 - 条例による違い: 東京都の条例は「当該記録に係る事象の完結の日から五年間」。年数・起算日・条番号は条例で確認する - 事前通知: 原則として実施予定日の1か月前まで。虐待や文書改ざんが疑われる場合は事前通知なし - 提出部数: 事前・当日とも1部。自治体が既に保有している文書は再提出不要 - 利用者記録の確認人数: 特に必要と判断する場合を除き原則3名以内 根拠: 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等の指導監査について」(令和8年6月8日 障発0608第1号) ### 本文 運営指導の通知は、原則として実施予定日の1か月前までに届きます。僕も就労継続支援B型を運営しているので、この通知は他人事ではありません。経営者が最初に困るのは「準備すべき書類等」の一覧の長さで、しかも何年分なのかが一覧から読み取れないこともあります。5年分の段ボールを積むのか、去年の分だけでいいのか、ここで迷います。読み違えると、当日までの1か月がまるごと書類探しで消えます。 この記事は、僕が指導指針と運営指導マニュアルを読んで、経営者はこの順番で決めればいいと整理したものです。うちは2026年5月に開所したばかりの事業所なので、僕自身の準備メモでもあります。先に答えを言うと、見られるのは原則「前年度から直近」、残すのは「5年分」です。この2つは別の数字なので、混ぜると判断を誤ります。 ## 見られるのは何年分か。原則は「前年度から直近」 見られるのは、原則として運営指導の前年度から直近の実績に係る書類です。国が自治体に示している指導指針に、はっきりそう書いてあります。準備の目安もここに置けます。ただし実際に何を出すかは、通知の「準備すべき書類等」が決めます。残す義務はまた別の話で、次の節で書きます。 正直、僕も最初に読んだときは「前年度からでいいのか」と思いました。ただ、この「原則」には但し書きが2つあって、ここを飛ばすとあとで困ります。 1つ目は指針の性格です。この通知は地方自治法第245条の4第1項に基づく技術的な助言で、自治体を縛る命令ではありません。だから「前年度から直近」がどこでも同じに運用される保証はないわけです。実際に何年分を出すかは、実施通知の「準備すべき書類等」で確かめるのが確実です。年度が読み取れなければ、指定権者の担当者に電話で聞く。1本の電話で残り1か月の作業量が決まるので、ここをためらう理由はないと思っています。 2つ目は加算です。運営指導マニュアルは、各種加算に係る自立支援給付請求の確認について、人員体制に関するもの等のほかは確認文書に限定せず、それぞれの要件にかかる文書等を求めるとしています。**人員体制以外の加算は確認文書に限らない**ということです。長く算定している加算ほど、算定を始めた時点の届出や要件を満たしていた記録まで遡って求められる可能性があります。加算を多く取っている事業所ほど「前年度から」を鵜呑みにしてはいけない、というのが僕の読み方です。 ## では古い記録は捨ててよいのか。5年は残す 捨ててはいけません。見られるのが前年度からでも、記録を残す義務は別に置かれていて、期間は5年です。根拠は平成18年厚生労働省令第171号(指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準)の「記録の整備」の条文です。就労継続支援B型は第202条で療養介護の第75条を準用する形になっていて、次の6種類の記録を、サービスを提供した日から5年間保存することが求められます。 | 保存対象の記録(就労継続支援B型の例) | 根拠(準用元) | | --- | --- | | 就労継続支援B型計画 | 第58条第1項 | | サービスの提供の記録 | 第19条第1項 | | 市町村への通知に係る記録 | 第88条 | | 身体拘束等の記録 | 第35条の2第2項 | | 苦情の内容等の記録 | 第39条第2項 | | 事故の状況及び事故に際して採った処置についての記録 | 第40条第2項 | 同じ条文の第1項にある「従業者、設備、備品及び会計に関する諸記録」には、省令上の保存年限がありません。整備する義務だけが置かれています。 ここからが、僕が「知らなかったら怖い」と思った部分です。省令に書いていないのに5年とされている記録があります。虐待防止委員会と身体拘束適正化検討委員会の議事録です。国の解釈通知が、どちらの対応状況も適切に記録したうえで5年間保存するよう求めています。**議事録を3年などで運用している事業所**は、見直しておきたい部分です。対応状況の記録の中心は議事録なので、5年で揃えるのが安全だと思っています。 労務の書類は別の法律です。労働基準法第109条は、労働者名簿・賃金台帳・雇入れ・解雇・災害補償・賃金その他労働関係に関する重要な書類を5年間保存すると定めています。ただし同法附則第143条第1項により、当分の間は3年間と読み替えられます。とはいえ運営指導では出勤簿や雇用契約書も確認文書に挙がります。3年で捨てると、労基法の上では問題なくても障害福祉側の確認で困ります。だから僕は、労務の書類も5年に揃えておくほうが安全だと考えています。「3年で捨ててよい」は法律としては正しくても、経営判断としては損だと思います。 ## その5年は、いつから数えるのか。自治体で違う 数え始めの日は、所在地の条例で決まります。これは見落としやすいところです。指定障害福祉サービスの基準は都道府県・指定都市・中核市が条例で定めることになっていて、国の省令はその条例を作るときの基準を示すものです。省令第1条は、どの規定が「従うべき基準」でどれが「参酌すべき基準」かを列挙しています。記録の整備の条文はこの列挙に入っていません。つまり参酌すべき基準なので、自治体は地域の実情に応じて中身を変えられます。 「変えられる」と言われても実感がわかないと思うので、実際に読み比べます。 | | 記録の保存に関する定め | | --- | --- | | 国の省令(平成18年厚生労働省令第171号 第42条第2項) | 当該指定居宅介護を提供した日から五年間保存 | | 石川県条例(平成24年12月27日条例第53号 第43条第2項) | 当該指定居宅介護を提供した日から五年間保存 | | 東京都条例(平成24年東京都条例第155号 第42条第2項) | 当該記録に係る事象の完結の日から五年間保存 | 年数はどれも5年です。違うのは起算日で、東京都は「当該記録に係る事象の完結の日」から数えます。契約期間が長い利用者では、国の省令どおりに提供日から数えた場合より保存期間が長くなります。条番号も国と条例で一致しません。石川県は同じ内容が第43条にあります。 運営指導の指摘で引用されるのは、条例の条番号です。だから一度でいいので、所在地の条例を開いてください。見るのは2点だけです。「記録の整備」が何条にあるかと、起算日がどう書かれているかです。短い作業ですが、当日に条番号を言われて慌てるのを防げます。 ## 通知から当日まで、何がどの順で起きるか 流れは5段階で、通知が1か月前、当日は巡回と書類の確認、後日に文書で指摘が来ます。指導指針とマニュアルから読み取れる標準的な流れは次のとおりです。 | 時期 | 起きること・やること | | --- | --- | | 実施予定日の1か月前まで | 実施通知が届く。根拠規定・目的、日時・場所、指導担当者、出席者、準備すべき書類等、当日のおおむねの流れが記載される | | 通知後 | 自治体から事前提出資料を求められる場合がある(必須ではない)。自己点検シートの提出を求める自治体が多い | | 当日の冒頭 | 平面図を見ながら施設内を巡回。設備の実態と、虐待や不適切な身体拘束の予兆を目視で確認される | | 当日 | 利用者3名程度を抽出し、個別支援計画からサービス提供記録までの一連の流れを確認。続いて運営体制、報酬請求の確認 | | 後日 | 改善を要する事項について文書で通知。指摘事項に係る改善報告書の提出を求められる | 準備の量を減らせる決まりが3つあります。読んでいて「それを先に言ってほしい」と思った部分です。まず、準備すべき書類は原則として一次資料ですが、写しでも構わないとされています。次に、提出部数は事前・当日とも1部で、指定申請等で提出済みかつ内容に変更のない書類は再提出不要です。事前提出資料と当日確認資料の重複や、法人内で同じ書類を事業所ごとに重ねて出すことも避けるよう明記されています。最後に、書類を電子で管理している事業者には、印刷を求めずパソコン画面上で確認するなど配慮した方法をとるとされています。**画面での確認が認められている**ので、事前に伝えておくと当日の印刷を避けられます。うちはパソコン作業が中心で、勤怠も日報もクラウドに残している事業所なので、助かる決まりだと思っています。 なお、通知なしで来ることもあります。障害者虐待が疑われる場合や、不正請求のための文書改ざんが疑われる場合などです。事前に知らせると日常のサービス提供状況を確認できないと認められるときは、通知なしで実施し、指導開始時に文書で通知することができます。 通知が届いた日に決めることは、3つに絞れると思っています。 1つ目は、出す年度を確定させることです。通知の「準備すべき書類等」に年度の記載がなければ、その日のうちに指定権者の担当者へ確認します。ここが決まらないと、残りの準備の量が決まりません。 2つ目は、減らせる提出物を先に申し出ることです。指定申請時に出して以降変更のない書類は再提出不要とされているので、該当するものを挙げて確認します。電子で管理しているなら、画面での確認を希望する旨もこのときに伝えます。 3つ目は、自治体が公開している確認項目・確認文書の一覧と手元の書類を突き合わせて、無いものを洗い出すことです。国の様式は確認項目ごとに必要な文書を列挙しているので、項目単位でファイルを分けると当日の出し入れが速くなります。 ## 当日、書類で何を証明させられるか 証明させられるのは「体制があること」ではなく、「体制があると書類で示せること」です。令和8年6月に新設された「確認項目及び確認文書」は、サービスごとに「個別サービスの質に関する事項」と「個別サービスの質を確保するための体制に関する事項」の2区分に分かれています。就労継続支援B型の体制側には、たとえば次のような項目が並びます。原典の並びではなく、書類の性格でまとめ直しています。 - 従業者の員数、管理者、勤務体制の確保等、定員の遵守 - 受給資格の確認、利用者負担額等の受領、運営規程 - 緊急時等の対応、事故発生時の対応、非常災害対策、業務継続計画の策定等 - 虐待の防止 - 秘密保持等、情報の提供等、苦情解決、衛生管理等 たとえば虐待の防止なら、確認文書は3点です。委員会議事録、研修を実施したことが分かる書類、担当者を配置していることが分かる書類です。業務継続計画の策定等なら、計画そのものに加えて、周知記録(配布記録、説明記録等)、研修・訓練記録、見直し記録等が挙がっています。 つまり、委員会を開いていても研修をやっていても、記録が残っていなければ「実施していない」と扱われる可能性があります。補助金の申請代行をしていても同じ場面に出会います。証憑が揃わない経費は、実際に使っていても補助の対象から落ちます。**やった証拠を紙か画面で出せるか**が、当日に問われることの中心です。「やっていない」と言われるより、「やったのに証明できない」ほうがよほど悔しいと思います。だから僕は、記録は支援のおまけではなく、支援の一部だと考えています。 最後に。運営指導は怖いものとして語られがちですが、指針とマニュアルを読む限り、求められているのは「やっていることを書類で示す」ことに尽きます。通知から当日まで、原則1か月あります。その1か月を書類探しで消さないための順番が、まず電話、次に条例、それから突合です。結局、この順番が一番大事だと思っています。 ## あわせて読む 運営指導そのものの位置づけと、指摘の傾向は別の記事にまとめています。 - [運営指導とは何か](/column/unei-shido/) … 指導の対象範囲と目的 - [運営指導と監査の違い](/column/unei-shido-kansa-chigai/) … 監査に切り替わる条件 - [運営指導で指摘されやすいこと](/column/unei-shido-shiteki/) … 実際に多い指摘項目 体制側の書類をこれから整える場合は、次の3本が入口です。 - [虐待防止の体制整備](/column/gyakutai-boushi-taisei/) … 委員会・研修・担当者の3点 - [身体拘束の適正化](/column/shintai-kousoku-tekiseika/) … 検討委員会と記録 - [障害福祉のBCP](/column/bcp-shogai-fukushi/) … 計画・周知・訓練・見直しの記録 ### よくある質問 Q. 運営指導では何年分の書類を見られますか? A. 原則として、運営指導の前年度から直近の分です。根拠は国の指導指針(令和8年6月8日 障発0608第1号 別添1 第5の2(3)④)です。ただしこの通知は地方自治法第245条の4第1項に基づく技術的助言で、法的拘束力のある命令ではありません。実際の運用は指定権者ごとに幅があり、加算の算定要件に関する確認は確認文書に限定しないとされているため、対象期間は実施通知の「準備すべき書類等」で確認するか、指定権者に直接問い合わせてください。 Q. サービス提供の記録は何年保存すればよいですか? A. 5年間です。国の基準省令(平成18年厚生労働省令第171号)は、サービス提供に関する記録を「当該指定〇〇を提供した日から五年間保存しなければならない」と定めています。ただし実際に適用されるのは都道府県・指定都市・中核市の条例なので、年数と起算日は所在地の条例で確認してください。東京都の条例は「当該記録に係る事象の完結の日から五年間」としており、国の省令より保存期間が長くなる場合があります。 Q. 虐待防止委員会や身体拘束適正化検討委員会の記録も5年ですか? A. 5年間です。国の解釈通知は、虐待防止委員会における対応状況、身体拘束適正化検討委員会における対応状況のいずれについても「適切に記録の上、5年間保存すること」としています。委員会は一体的に設置・運営して差し支えないとされていますが、その場合も議事録は5年保存の対象になります。 Q. 運営指導の通知はいつ届きますか? A. 原則として実施予定日の1か月前までです。通知には根拠規定・目的、日時・場所、指導担当者、出席者、準備すべき書類等が記載され、当日のおおむねの流れもあらかじめ示されます。ただし、事前通知なしで実施される場合があります。障害者虐待や不正請求のための文書改ざんが疑われるなど、事前に通知したのでは日常のサービス提供状況を確認できないと認められるときです。その場合は通知なしで実施し、指導開始時に文書で通知することができます。 Q. 書類を電子データで管理していても大丈夫ですか? A. 問題ありません。国の運営指導マニュアルは、ICTで書類管理をしている事業者について「電子管理の文書の印刷をもとめることなく、パソコン画面上で確認するなど、事業者等に配慮した方法で文書確認を行います」としています。電子で管理している旨を事前に伝えておくと、当日の印刷作業を避けられます。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等の指導監査について(令和8年6月8日 障発0608第1号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260608-0.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等指導指針(令和8年6月8日 障発0608第1号 別添1)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260608-1.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等に対する集団指導・運営指導マニュアル(令和8年6月 別添2)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260609-2.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「確認項目及び確認文書(令和8年6月8日・Excel版・22サービス別シート)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260608-22.xlsx(2026年08月16日確認。就労継続支援B型シートを参照) - e-Gov法令検索(デジタル庁)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(2026年08月16日確認。第1条、第42条、第75条、第202条) - 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(解釈通知・令和6年度改定 新旧対照表)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001494357.pdf(2026年08月16日確認。(26)身体拘束等の禁止、(31)虐待の防止、(33)記録の整備) - 東京都「東京都指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営の基準に関する条例(平成24年東京都条例第155号)」 https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00004365.html(2026年08月16日確認。第42条第2項ほか) - 石川県「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例(平成24年12月27日条例第53号)」 https://www1.g-reiki.net/ishikawa/reiki_honbun/i101RG00001313.html(2026年08月16日確認。第43条第2項ほか) - e-Gov法令検索(デジタル庁)「労働基準法(昭和22年法律第49号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049(2026年08月16日確認。第109条、附則第143条第1項) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 運営指導と監査は何が違うのか 根拠条文と目的で切り分ける 監査に切り替わる4つの場面 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/unei-shido-kansa-chigai/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.06.08 ### 結論 運営指導(旧・実地指導)と監査は、根拠となる条文が別です。運営指導は障害者総合支援法(平成17年法律第123号)第10条第1項および第11条第2項に基づく行政指導で、基準等に定める取扱いを事業者に周知徹底させることを方針としています。監査は同法第48条(報告等・立入検査)、第49条(勧告、命令等)、第50条(指定の取消し等)に基づき、指定基準違反等について事実関係を的確に把握し、公正かつ適切な措置をとることを主眼とするものです。厚生労働省の集団指導・運営指導マニュアルも「指導と監査の権限が法律により明確に分けられている」と述べています(令和8年6月時点)。 結果として起こることも別です。運営指導では改善を要すると認められた事項が後日文書で通知され、事業者は改善報告書の提出を求められます。監査で指定基準違反等が認められた場合は、法第49条の勧告(従わなければ公表することができる)、同条第4項の命令(命令をしたときは公示しなければならない)、法第50条第1項の指定の取消しまたは期間を定めた効力の全部・一部停止へ進みます。不正の行為による給付費の受給があれば、法第8条第2項により、原則として返還額に100分の40を乗じた額が併せて徴収されます。 - 運営指導の根拠: 障害者総合支援法 第10条第1項、第11条第2項(行政指導) - 監査の根拠: 同法 第48条(報告等・立入検査)、第49条(勧告・命令)、第50条(指定の取消し等) - 事前通知: 運営指導は原則1か月前までに文書。監査は監査開始時に文書で足り、当日でも差し支えない - 監査へ変更する事由: ①著しい基準違反 ②請求の不正 ③不正の手段による指定 ④障害者虐待等による生命・身体への危害(いずれも疑いを含む) - 勧告できる範囲: 人員基準違反・運営基準違反・便宜提供義務違反に限られる。人格尊重義務違反と不正請求は勧告の対象外 - 経済上の措置: 返還させるべき額に加え、原則としてその額の100分の40を併せて徴収(法第8条第2項) 根拠: 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等の指導監査について」(令和8年6月8日障発0608第1号)別添1・別添3・別添4 ### 本文 ## 根拠条文が最初から別になっている 運営指導と監査を混同しやすいのは、どちらも自治体の職員が事業所に来て書類を見るからです。しかし障害者総合支援法の中では、この2つは別々の条文で立てられています。 指導指針第1は、運営指導の根拠を法第10条第1項(市町村等が自立支援給付に関して行う報告の求め等)と法第11条第2項(都道府県知事が自立支援給付対象サービス等を行った者に対して行う質問等)としています。一方の監査指針第1は、監査の根拠を法第48条、第49条および第50条としています。監査マニュアル3.1も、普段行われている運営指導は法第10条第1項および第11条第2項に基づいて実施されるものだと明記したうえで、監査としての立入検査はそれとは別の目的で行うと説明しています。 集団指導・運営指導マニュアルは自治体向けの記述の中で、障害福祉制度においては指導と監査の権限が法律により明確に分けられている、と書いています。事業所に届く通知書の「根拠規定」の欄を見れば、いま何をされているのかが判別できるということです。 ## 4点で切り分ける | | 運営指導(旧・実地指導) | 監査 | |---|---|---| | 根拠条文 | 法第10条第1項、第11条第2項 | 法第48条、第49条、第50条 | | 法的性質 | 行政指導(行政手続法第2条第6号) | 立入検査等の行政調査と、それに続く行政処分 | | 目的・方針 | 基準等に定める取扱いや請求に関する事項を周知徹底させること | 指定基準違反等について事実関係を的確に把握し、公正かつ適切な措置をとること | | 実施主体 | 都道府県または市町村。単独実施が一般指導、都道府県と市町村(指定都市・中核市を除く)の合同実施が合同指導 | 指定権限のある都道府県知事または市町村長 | | 事前通知 | 原則として実施予定日の1か月前までに文書。障害者虐待が疑われている等の場合は指導開始時に文書で通知 | 監査開始時に文書で実施通知。当日で構わない。運営指導からの移行時は口頭通告も可 | | 結果 | 改善を要する事項を後日文書で通知し、改善報告書の提出を求める | 軽微な事項は文書通知と報告。指定基準違反等が認められれば勧告・命令・指定の取消し等 | 法的性質の違いは、指摘への向き合い方に直結します。集団指導・運営指導マニュアルは、指導が行政指導である以上、相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであり、行政指導に従わなかったことのみを理由に不利益な取扱いをすることはできない(行政手続法第32条第2項)と説明しています。ただし同じ箇所で、従わなかった場合には理由を分析して対応を検討し、法令違反やその疑いが認められる場合には監査を実施すると続きます。運営指導の指摘を放置することは、処分に直結しない代わりに監査の端緒になります。 監査の側には強制力の裏付けがあります。監査マニュアル3.6によれば、監査を忌避した場合は指定取消や効力停止の対象になるだけでなく、法第111条により30万円以下の罰金が科され、法人の業務として行われた場合は法第112条の両罰規定により法人にも罰金刑が科されます。 ## 監査に切り替わる4つの場面 指導指針第6は、運営指導中に次のいずれかを確認した場合、運営指導を中止して直ちに監査を行うと定めています。4つとも「その疑いがあると認められる場合」を含む書き方になっている点が重要です。確定していなくても移行します。 1. 人員、施設・設備および運営に関する基準に従っていない状況が著しいと認められる場合 2. 自立支援給付に係る費用の請求等について不正があると認められる場合 3. 不正の手段による指定等を受けていると認められる場合 4. 障害者虐待等により利用者等の生命または身体の安全に危害を及ぼしていると認められる場合 集団指導・運営指導マニュアルは、それぞれについて具体例を挙げています。1つ目は、単なる解釈上の誤りとはいえず改善指導では改善が期待できない場合として、同様の誤りが数多く見られる場合、それが長期にわたる場合、確認文書の不備等により確認項目が確認できない場合、虚偽報告や虚偽答弁が疑われる場合を挙げています。2つ目は、報酬基準の解釈誤りではなく架空請求等の請求する根拠のない請求です。3つ目は、初めから勤務する予定のない者を勤務するかのように装って指定を受けたような場合が典型として示されています。4つ目については、適切な手続きを経ていない身体的拘束等が行われている場合も含めて、直ちに監査に変更するとされています。身体拘束の記録や手続きの整備状況は、[身体拘束の適正化](/column/shintai-kousoku-tekiseika/)の記事で扱う省令上の義務であると同時に、監査への分岐点にもなっているということです。 運営指導の実施通知が届いたら、まず通知書の「運営指導の根拠規定及び目的」の欄を確認してください。指導指針第5の2(1)は、根拠規定と目的、日時・場所、指導担当者、出席者、準備すべき書類等の5点を文書で通知することと、当日のおおむねの流れをあらかじめ示すことを求めています。ここに法第10条第1項・第11条第2項と書かれていれば運営指導、法第48条であれば監査です。 そのうえで、令和8年6月に新設されたサービス別の「確認項目及び確認文書」で自己点検を行っておくと、当日に見られる範囲を事前に読めます。指導指針第3の2(3)は、運営指導(実施状況指導と最低基準等運営体制指導に限る)では確認項目以外の項目は特段の事情がない限り確認せず、確認文書以外の文書は原則求めないと定めているため、点検範囲はこのシートで確定できます。準備する書類は原則として前年度から直近の実績に係るもの、提出部数は1部、自治体が既に保有している文書の再提出は不要です。対応者を管理者に限る必要はなく、実情に詳しい従業者や法人の労務・会計担当者が同席して差し支えないと通知に明記されています。 ## 監査の先にある行政上の措置 監査指針第4(3)は、指定基準違反等が認められた場合の行政上の措置を、勧告、命令、指定の取消し等の順で示しています。条文で追うと次の流れです。 法第49条第1項・第2項により、期限を定めて基準を遵守すべきことを勧告できます。期限内に従わなかったときは、同条第3項により、その旨を公表することができます。正当な理由なく勧告に係る措置をとらなかったときは、同条第4項により命令ができ、命令をしたときは同条第5項により公示しなければなりません。そして法第50条第1項各号のいずれかに該当する場合は、指定の取消しまたは期間を定めた指定の全部もしくは一部の効力停止ができます。 ここで見落とされやすいのが、勧告から始まるとは限らないという点です。監査マニュアル4.2.2は、勧告を行うことができるのは人員基準違反、運営基準違反、事業を休廃止する際の便宜提供義務違反に限られると述べ、人格尊重義務違反や不正請求については勧告を行うことができないと明記しています。障害者虐待は法第42条第3項の人格尊重義務の違反として扱われるため、段階を踏まずに法第50条の処分の検討に入ります。 令和8年6月の監査マニュアルには、処分の程度を分類した「処分基準の考え方の例」が新たに置かれました。 | 処分事由 | 態様 | 基本となる処分内容 | 根拠条文 | |---|---|---|---| | 人員基準違反 | A級 | 勧告 | 法第50条第1項第4号 | | 運営基準違反 | A級 | 勧告 | 法第50条第1項第5号 | | 人格尊重義務違反 | C級 | 指定の全部効力停止 | 法第50条第1項第3号 | | 不正請求 | C級 | 指定の全部効力停止 | 法第50条第1項第6号 | | 不正の手段による指定 | C級 | 指定の全部効力停止 | 法第50条第1項第9号 | 態様の内容は、A級が勧告(人員基準違反・運営基準違反時のみ)または勧告以外の行政指導、B級2号が指定の一部効力停止3月(新規利用者受入停止等)、C級2号が指定の全部効力停止3月、D級が指定取消です。これはあくまで基本形で、個別事情による加重・軽減が行われます。監査マニュアル4.4.1のSTEP2が挙げる着眼点は、利用者被害と法益侵害の様態・程度、故意性の有無、常習性の有無、組織性の有無、悪質性の有無の5つです。組織性の欄には、問題を認識した後に隠ぺいを図るなど悪質な行為が認められたかという観点が含まれています。効力の一部停止の具体的内容としては、新規利用者の受入停止のほか、期間を限定して報酬額を通常の70%とするなどの請求額の上限設定が想定されています。 処分の前には手続きが入ります。監査指針第4(4)により、命令または指定の取消し等に該当すると認められる場合は、行政手続法第13条第1項各号に基づく聴聞または弁明の機会の付与を行わなければなりません。監査マニュアル4.2.5は、指定取消を行う際は必ず事前に聴聞を行わなければならず、弁明の機会の付与をもって聴聞に代えることはできないとしています。 金銭面では、監査指針第4(5)が経済上の措置を定めています。取消処分等(命令を除く)を行った場合に、偽りその他不正の行為により自立支援給付費の支給を受けていたときは、支払った額につき返還させたうえで、原則としてその返還させるべき額に100分の40を乗じて得た額を併せて徴収します。根拠は法第8条第2項です。 ## 廃止届で逃げる想定はすでに封じられている 監査マニュアル3.7は、処分逃れを目的とした廃止届への対策を2段構えで説明しています。1つは事前届出制で、事業の廃止の届出は廃止日の1か月前までに行う必要があるため(法第46条第2項)、廃止届が出ても少なくとも1か月は事業所が存在し、その間に指定取消等を行うことができます。もう1つは欠格事由で、立入検査が行われた日から10日以内に聴聞決定予定日を通知した場合、立入検査の日から聴聞決定予定日までの間に廃止届を提出した事業者は、相当の理由がある場合を除いて指定・更新の欠格事由に該当します(法第36条第3項第9号)。聴聞決定予定日は、立入検査を行った日から聴聞の要否が決定すると見込まれる60日以内の特定の日です。 なお、指定を取り消したときは法第51条第4号により公示されます。指定の全部または一部の効力を停止した場合については法令上の公示義務はありませんが、監査マニュアルは指定権者が必要に応じて情報提供を行うことがあるとしています。 ## 頻度が上がっている前提で構える 厚生労働省とこども家庭庁は、令和7年度から運営指導・監査の強化を進めているとしています。就労継続支援A型、就労継続支援B型、共同生活援助、児童発達支援、放課後等デイサービスの5サービスが重点化の対象で、指導指針第3の2(2)は、就労継続支援A型・B型と共同生活援助の事業所について3年に1回以上の頻度で運営指導を実施すると定めました。就労継続支援A型は、新規指定の半年後を目途に初回の運営指導を実施するとされています。 対象5サービス平均の運営指導実施率は令和5年度が18.0%、令和6年度が19.0%で、3年に1回に相当する約33%とはまだ差があります。令和7年度の実績は令和8年夏以降に集計される予定で、2026年8月16日時点では公表されていません。実施率が目標に向かって上がれば、これまで運営指導を受けずに済んでいた事業所にも順番が回ります。準備の進め方は[運営指導の準備](/column/unei-shido-junbi/)で、指摘されやすい項目は[運営指導で指摘される項目](/column/unei-shido-shiteki/)で個別に扱います。 ### よくある質問 Q. 実地指導と運営指導は違うものですか。 A. 同じ流れにある指導ですが、現行の通知が使う呼称は「運営指導」です。令和8年6月8日の障発0608第1号は、別添1「指定障害福祉サービス事業者等指導指針」で指導の形態を「集団指導」と「運営指導」の2つに整理し、同時に、指導形態を「集団指導」と「実地指導」と規定していた平成26年1月23日障発0123第2号を廃止しました。運営指導は原則として実地に行われますが、施設・設備や利用者のサービス利用状況以外の実地でなくても確認できる内容(最低基準等運営体制指導および報酬請求指導に限る)は、情報セキュリティの確保を前提にオンライン等を活用できます。 Q. 運営指導が途中で監査に切り替わることはありますか。 A. あります。指導指針第6は、運営指導中に次のいずれかを確認した場合は運営指導を中止し、直ちに監査を行うと定めています。①人員・施設設備・運営基準に従っていない状況が著しい、②給付費の請求について不正がある、③不正の手段による指定を受けている、④障害者虐待等により利用者等の生命または身体の安全に危害を及ぼしている、の4つで、いずれも「その疑いがあると認められる場合」を含みます。監査マニュアルは、運営指導中に移行する場合は口頭で監査を実施する旨を通告したうえで監査を行うことも可能としています。 Q. 監査は事前に通知されますか。 A. 通知はありますが、監査当日で差し支えないとされています。監査マニュアル3.2は、監査の実施を決定した場合は監査開始時に文書で実施通知を行う必要があり、この通知は監査当日でも構わないとしています。通知する内容は、監査の根拠規定、日時・場所、監査担当者、事業者側の出席者、必要な書類等、虚偽報告や検査忌避等に関する罰則規定の6点です。同マニュアルは、監査を実施する理由については証拠保全や通報者保護の観点から伝える必要はないとも明記しています。運営指導の原則1か月前通知とは前提が違います。 Q. 運営指導の指摘に従わなかった場合、それだけで処分されますか。 A. 従わなかったこと自体を理由に不利益な取扱いを受けることはありません。集団指導・運営指導マニュアルは、指導は行政手続法第2条第6号の行政指導であり、あくまで相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであるとしたうえで、行政指導に従わなかったことのみを理由として不利益な取扱いをすることはできない(行政手続法第32条第2項)と説明しています。ただし同マニュアルは、従わなかった場合は理由を分析し、法令違反やその疑いが認められる場合には監査を実施すると続けています。指摘を放置すれば監査の端緒になります。 Q. 虐待や不正請求でも、まず勧告から始まりますか。 A. いいえ。勧告を行えるのは人員基準違反、運営基準違反、事業を休廃止する際の便宜提供義務違反の場合に限られます(法第49条第1項・第2項)。監査マニュアル4.2.2は、人格尊重義務違反や不正請求については勧告を行うことができないと明記しており、これらは法第50条による行政処分を検討する事由になります。令和8年6月に新設された「処分基準の考え方の例」でも、人格尊重義務違反・不正請求・不正の手段による指定は、基本となる処分内容がいずれも「指定の全部効力停止」とされています。 Q. 監査中に廃止届を出せば処分を避けられますか。 A. 避けられません。事業の廃止の届出は廃止日の1か月前までに行う事前届出制であるため(法第46条第2項)、廃止届が出ても少なくとも1か月間は事業所が存在し、その間に指定取消等を行うことが可能です。さらに、立入検査が行われた日から10日以内に聴聞決定予定日を通知した場合、立入検査の日から聴聞決定予定日までの間に廃止届を提出した事業者は、相当の理由がある場合を除いて指定・更新の欠格事由に該当します(法第36条第3項第9号)。聴聞決定予定日は立入検査日から60日以内の特定の日です。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等の指導監査について(令和8年6月8日障発0608第1号 社会・援護局障害保健福祉部長通知)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260608-0.pdf(2026年08月16日確認。平成26年1月23日障発0123第2号の廃止、別添1〜4の構成、地方自治法第245条の4第1項に基づく技術的助言である旨を確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等指導指針(令和8年6月8日障発0608第1号 別添1)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260608-1.pdf(2026年08月16日確認。第1(目的・根拠条文)、第2(指導方針)、第3(指導形態等・実施頻度)、第5の2(実施通知・指導方法・指導結果の通知・改善報告書)、第6(監査への変更)を確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等監査指針(令和8年6月8日障発0608第1号 別添3)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260608-3.pdf(2026年08月16日確認。第1(目的・根拠条文)、第2(監査方針)、第3(選定基準)、第4(報告等・監査結果の通知・行政上の措置・聴聞等・経済上の措置)を確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等に対する監査マニュアル(令和8年6月 別添4)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260609-4.pdf(2026年08月16日確認。1.1監査の目的、3.1立入検査と出頭、3.2実施通知、3.6監査を実施できない場合、3.7処分逃れ防止、4.2行政上の措置の違い、4.4処分程度の考え方を確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等に対する集団指導・運営指導マニュアル(令和8年6月 別添2)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260609-2.pdf(2026年08月16日確認。指導・監査の全体像、行政指導について、6.監査への変更を確認) - 厚生労働省「障害福祉分野における運営指導・監査の強化について(第156回社会保障審議会障害者部会 令和8年6月5日 資料3ほか)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260723-1.pdf(2026年08月16日確認。「処分基準の考え方の例」の態様A級〜D級と処分事由別の基本となる処分内容の表を確認) - e-Gov法令検索(デジタル庁)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123(2026年08月16日確認(令和8年6月25日施行の改正を反映した現行版)。第8条第2項、第10条、第11条、第42条第3項、第48条、第49条、第50条、第51条、第111条、第112条の条文を確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 --- ## 運営指導で指摘されやすい項目と 個別支援計画・記録・人員基準を 事前に潰しておく順番 URL: https://fukushi-keiei-navi.jp/column/unei-shido-shiteki/ カテゴリー: 制度・加算 公開: 2026-08-16 / 更新: 2026-08-16 制度基準日: 2026.06.08 ### 結論 運営指導で何を見られるかは、令和8年(2026年)6月8日付けの厚生労働省通知(障発0608第1号)別添1「指定障害福祉サービス事業者等指導指針」で範囲が示されました。運営指導は①実施状況指導、②最低基準等運営体制指導、③報酬請求指導の3つに分かれ、このうち①と②については「確認項目以外の項目は、特段の事情がない限り確認を行わないものとし、確認文書以外の文書は原則求めない」とされています。サービス種別ごとの確認項目及び確認文書は厚生労働省が公表しており、就労継続支援B型は22項目です。 一方、③報酬請求指導はこの限定の外にあります。集団指導・運営指導マニュアルは、加算については、人員体制に関するものなどを除き「確認文書に限定せず、それぞれの要件にかかる文書等を求め」るとしています。つまり、範囲が読めるのは基準の側で、読めないのは加算の側です。事前に潰す順番も、監査に切り替わる事由、報酬の返還につながる加算要件、減算、記録や届出という順になります(2026年8月16日時点)。 - 確認される範囲: 実施状況指導・最低基準等運営体制指導は「確認項目及び確認文書」に限定される。報酬請求指導は限定されない - 就労継続支援B型の確認項目数: サービスの質に関する事項6項目、体制に関する事項16項目の計22項目 - 見られる書類の期間: 原則として運営指導の前年度から直近の実績に係る書類。提出部数は1部 - 利用者記録の確認人数: 特に必要と判断する場合を除き、原則として3名以内 - 事前通知: 原則、実施予定日の1か月前まで。虐待が疑われる等の場合は指導開始時に通知(=事前通知なし) - 実施頻度: 就労継続支援A型・就労継続支援B型・共同生活援助は3年に1回以上 - 監査に切り替わる場合: 基準違反が著しい/請求に不正/不正の手段による指定/虐待等で利用者の生命・身体に危害(いずれも疑いを含む) - 返還の境目: 基本報酬は運営基準違反(記録の不備等)だけでは返還・過誤調整の根拠にならない。加算は算定要件を一つでも満たさなければ是正の対象 根拠: 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等指導指針」(令和8年6月8日障発0608第1号 別添1)第3の2(3) ### 本文 ## 見られる範囲は通知に書かれている 令和8年(2026年)6月8日、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知「指定障害福祉サービス事業者等の指導監査について」(障発0608第1号)が発出され、別添1「指導指針」、別添2「集団指導・運営指導マニュアル」、別添3「監査指針」、別添4「監査マニュアル」の4本が新たに定められました。従前の平成26年1月23日付け障発0123第2号は、この通知の発出をもって廃止されています。 指導指針は、運営指導を3つの内容に分けています。①自立支援給付対象サービス等の実施状況指導、②最低基準等運営体制指導、③報酬請求指導です。そのうえで①と②については、「確認項目以外の項目は、特段の事情がない限り確認を行わないものとし、確認文書以外の文書は原則求めないものとする」と書かれています。何を見られるかが事前に読める、という設計になりました。 ただし③は別です。マニュアルは、加算に係る請求の確認について「人員体制に関するもの等の他は、確認文書に限定せず、それぞれの要件にかかる文書等を求め、それにより算定要件の適合状況を確認することになります」と説明しています。基準の側は範囲が閉じていて、加算の側は閉じていません。この差が、事前に潰す順番を決めます。 ## 就労継続支援B型の確認項目は22項目 「確認項目及び確認文書」はサービス種別ごとに22シートで公表されています。就労継続支援B型のシートは、サービスの質に関する事項が6項目、質を確保するための体制に関する事項が16項目で、合計22項目です。うち、書類が揃っていないと指摘に直結しやすいものを抜き出すと次のようになります。 | 区分 | 確認項目(かっこ内は準用元の条番号) | 確認文書として挙がっているもの | | --- | --- | --- | | 質 | 内容及び手続の説明及び同意(第9条) | 重要事項説明書、利用契約書、説明・交付記録 | | 質 | 心身の状況等の把握(第16条) | アセスメント記録、ケース記録 | | 質 | サービスの提供の記録(第19条) | サービス提供記録、利用者等の確認が分かる記録 | | 質 | 身体拘束等の禁止(第35条の2) | 個別支援計画、身体拘束等に関する記録、委員会議事録、指針、研修を実施したことが分かる書類 | | 質 | 就労継続支援B型計画の作成等(第58条) | 計画、アセスメント記録、モニタリング記録、面接記録、会議記録、説明・同意・交付記録、計画変更記録 | | 体制 | 従業者の員数(第186条) | 勤務実績表、出勤簿、資格証、勤務体制一覧表、利用者数が分かる書類 | | 体制 | 勤務体制の確保等(第68条) | 勤務表、勤務形態一覧表、研修計画、研修実施記録、ハラスメント防止関係書類 | | 体制 | 業務継続計画の策定等(第33条の2) | 業務継続計画、周知記録、研修・訓練記録、見直し記録 | | 体制 | 虐待の防止(第40条の2) | 委員会議事録、研修を実施したことが分かる書類、担当者を配置していることが分かる書類 | | 体制 | 運営規程(第89条) | 運営規程、重要事項説明書、掲示物、従業者への周知状況が分かる書類 | 残る12項目は、設備、管理者、緊急時等の対応、受給資格の確認、秘密保持等、情報の提供等、苦情解決、事故発生時の対応、定員の遵守、非常災害対策、衛生管理等、利用者負担額等の受領です。他のサービスを運営している場合は、同じExcelの該当シートを開いてください。項目名も準用元の条番号もサービスごとに違います。 確認文書は「原則として運営指導の前年度から直近の実績に係る書類」で、提出部数は1部、自治体が既に保有している文書は再提出を求めないとされています。利用者の記録を確認する対象は、特に必要と判断する場合を除き原則3名以内です。全利用者分を持ち出す準備は求められていません。 ## 自治体が公表している指摘事項はどこに集中しているか 国の確認項目は「何を見るか」のリストであって、「どこでつまずいたか」は書かれていません。そこは指定権者が公表している資料に出ます。 宮城県は集団指導の資料として「令和7年度運営指導の結果について」を公開し、主な指摘事項を領域別に列挙しています。仙台市は「よくある指摘事項事例集」を令和7年5月版まで更新しており、18項目立てで事例と注意点をまとめています。 | 領域 | 公表資料に挙がっている具体的な指摘 | | --- | --- | | 個別支援計画 | アセスメントが利用契約日より前に行われていた/面接の記録が確認できない/原案が記録として残っていない/作成に係る会議が開催されておらず会議録がない/同意がサービス提供開始前に行われていない/6か月ごとの見直しがされていない/直接支援員が確認できる場所に計画がない | | 記録 | 研修や避難訓練を実施しているが実施結果を記録していない/サービス提供の記録について利用者から確認を受けていない/実績記録票を月末にまとめて確認・押印している | | 人員基準 | 人員配置上必要な職員が不在のままサービスを提供していた/県に届け出ている勤務形態一覧表と実際の職員配置(職員数や勤務時間)が異なっていた | | 加算 | 欠席時対応加算で欠席の確認のみで相談援助の記録が残っていない/算定要件に係る職員の退職で要件を満たさなくなったのに算定を終了していない/送迎加算で運行の記録がない/個別支援計画が未作成なのに減算していない | | 虐待防止・身体拘束 | 虐待防止に関する対応マニュアルや研修計画が策定されていない/虐待防止委員会が開催されておらず会議録が残っていない | | 運営・届出 | 運営規程の概要や重要事項、勤務の体制、各種マニュアルが掲示されていない/人員や設備の用途を変更したのに変更届が出ていない/福祉事業会計と就労支援事業会計が区分されていない | 並べてみると、指摘の多くは「やっていない」ではなく「やったが記録がない」「順番が逆になっている」に寄っています。仙台市の事例集は記録の章で、適切に運営していても記録がなければ「行わなかった」ことになりかねない、記録がないために一度受け取った給付費を返還しなければならないこともある、と書いています。宮城県の資料にも、令和7年度に要件を満たさないまま請求しており給付費を返還した事例があったと記載されています。 これらは特定の自治体が公表している資料です。指定権者が違えば公表の有無も内容も変わりますので、自分の指定権者が同種の資料を出していないか確認してください。 ## 潰す順番は「監査に切り替わるか」から決める 優先順位を付ける基準は、指摘されたときに何が起きるかです。指導指針は、運営指導中に次の状況を確認した場合は運営指導を中止して直ちに監査を行うと定めています。①人員・設備・運営基準に従っていない状況が著しい、②給付費の請求に不正がある、③不正の手段による指定を受けている、④障害者虐待等により利用者の生命または身体の安全に危害を及ぼしている。いずれも「その疑いがあると認められる場合」を含みます。 | 順番 | 潰す対象 | 放置したときに起きること | | --- | --- | --- | | 1 | 虐待防止委員会・研修・担当者、身体拘束等の記録と委員会・指針・研修 | 虐待等の疑いと判断されれば運営指導が中止され、その場で監査に切り替わる | | 1 | 勤務形態一覧表と実際の勤務実績の一致 | 基準違反が著しいと判断されれば監査へ。人員基準減算が設定されているのに減算せず通常の単位数で請求していた場合、解釈誤りや単純な事務的ミスである場合を除き不正請求と同等に扱われうる | | 2 | 算定している加算の要件と挙証資料 | 要件を一つでも満たしていなければ是正。不正の疑いがなければ自己点検と過誤調整、疑いがあれば監査 | | 3 | 個別支援計画の一連の業務 | 個別支援計画未作成減算(減算適用月から3か月未満は所定単位数の100分の70、連続3か月以上は100分の50) | | 3 | 業務継続計画の策定 | 業務継続計画未策定減算 | | 4 | 掲示物、変更届、会計の区分、サービス提供記録の利用者確認 | 文書による指摘と、改善報告書の提出 | 順番1と順番2の違いは、返還の有無ではなく監査に移るかどうかです。順番2と順番4の違いは、報酬の返還につながるかどうかです。マニュアルは、基本報酬部分については運営基準違反、たとえばサービス記録の不備だけでは返還や過誤調整の根拠にならないとしたうえで、サービスを提供していないのに請求した場合や減算せずに請求した場合は不正請求と判断され監査を経て返還が求められることがある、と整理しています。記録の不備そのものより、記録がないために加算の要件充足を説明できなくなることのほうが金額的な影響は大きくなります。 個別支援計画は順番3に置いていますが、宮城県・仙台市どちらの資料でも指摘の量がいちばん多い領域です。手順そのものは条文に順番どおり並んでいるので、[個別支援計画の作成手順](/column/kobetsu-shien-keikaku/)で条文と突き合わせ、[書き方](/column/kobetsu-shien-keikaku-kakikata/)と[モニタリング](/column/kobetsu-shien-keikaku-monitoring/)で運用側を確認してください。 自己点検は、確認項目及び確認文書のExcelから自事業所のシートだけを印刷し、確認文書の欄に挙がっている書類名をそのまま用意リストに写すところから始めると、抜けが出にくくなります。マニュアルは、業務管理体制の届出で選任している法令遵守責任者の指揮の下で自己点検を実施することが期待される、としています。担当者任せにせず、責任者の名前で回す仕組みにしておくと、指導の場で誰が答えるかも決まります。 集める書類の期間は、前年度から直近の実績に係る分に絞れます。利用者の記録は原則3名以内しか見られないので、直近に計画を見直した利用者を3名選び、その3名分だけアセスメント記録から会議録、同意書、交付記録、モニタリング記録までを通しで並べて、抜けがないかを先に確かめる方法が効率的です。1名で抜けが見つかれば、他の利用者でも同じ抜け方をしている可能性が高くなります。 加算については、算定している加算を一覧にし、それぞれの算定要件と、要件を満たしていることを示す書類を1行ずつ突き合わせておくと、当日の説明が短く済みます。要件に人の配置が絡む加算は、職員が退職・異動した月をまたいで要件が切れていないかも合わせて確かめてください。 ## 運営指導の頻度は上がっている 厚生労働省は令和8年6月の資料で、事業所数、特に営利法人が運営する事業所数が急増するなか、多くの利用者に影響を及ぼす処分事例も発生していることを背景に、令和7年度から運営指導・監査の強化を進めているとしています。重点化の対象は就労継続支援A型、就労継続支援B型、共同生活援助、児童発達支援、放課後等デイサービスの5サービスで、3年に1回以上の頻度で実施するよう都道府県等に通知されました。 対象5サービス平均の運営指導実施率は令和5年度18.0%、令和6年度19.0%で、令和7年度の実績は令和8年夏以降に集計するとされています(2026年8月16日時点で未公表)。3年に1回は年33%程度の実施率にあたるため、当面は実施率が上がっていく前提で考えておくのが現実的です。 指導指針は事業所側への配慮も明記しています。担当者の主観に基づく指導や、前回の指導内容と根拠なく大きく異なる指導を行わないよう留意すること、対応者は管理者に限定する必要がなく、実情に詳しい従業者や法人の労務・会計担当者が同席して差し支えないことが書かれています。指定基準は都道府県や市の条例に委任されているため、確認項目の細部や様式は指定権者によって異なります。実際の運用は指定権者が公表している資料と条例で確認してください。 ### よくある質問 Q. 「実地指導」に引っかかるのが不安です。今も実地指導という名前ですか。 A. 現行の通知では「運営指導」です。令和8年6月8日付け障発0608第1号が別添1「指定障害福祉サービス事業者等指導指針」を新たに定め、指導の形態を集団指導と運営指導に整理しました。従前の平成26年1月23日付け障発0123第2号は同通知の発出をもって廃止されています。運営指導は原則として実地に行い、施設・設備や利用者のサービス利用状況以外の確認に限りオンライン等を活用できるとされています。 Q. 何を準備すればよいか、事前に分かりますか。 A. 分かります。厚生労働省がサービス種別ごとに「確認項目及び確認文書」を公表しており、就労継続支援B型は22項目です。指導指針は、実施状況指導と最低基準等運営体制指導については確認項目以外の項目を特段の事情がない限り確認せず、確認文書以外の文書は原則求めないとしています。ただし加算に関する確認は例外で、人員体制に関するものなどを除き、加算ごとの要件に応じた資料の提出を求められます。 Q. 何年分の書類を見られますか。 A. 原則として運営指導の前年度から直近の実績に係る書類です。指導指針は併せて、事前または当日に提出を求める資料の部数は1部とすること、自治体が既に保有している文書は再提出を求めないことを定めています。ICTで書類を管理している事業所については、パソコン画面上で確認するなど配慮した方法に留意するとされています。 Q. 記録の不備があると、報酬を返還することになりますか。 A. 加算と基本報酬で扱いが違います。加算報酬は算定要件を一つでも満たしていなければ是正を求められ、不正の疑いがなければ自己点検のうえ過誤調整による訂正を行う行政指導の対象になります。一方、基本報酬部分については、集団指導・運営指導マニュアルが「運営基準違反(例:サービス記録の不備等)だけでは、報酬の返還や過誤調整の根拠とはなりません」と明記しています。返還が必要になるのは、サービスを提供していないのに請求した場合や、減算せずに請求した場合など報酬基準に違反している場合です。 Q. 事前通知なしで来ることはありますか。 A. あります。運営指導の事前通知は原則として実施予定日の1か月前までですが、指導対象事業所で障害者虐待が疑われているなど、あらかじめ通知したのでは日常のサービス提供状況を確認できないと認められる場合は、指導開始時に通知することとされています。 Q. 指摘されたあとはどうなりますか。 A. 改善を要すると認められた事項について後日文書で指導内容が通知され、その事項に係る改善報告書の提出を求められます。指導結果の通知と改善報告書の内容は、都道府県から市町村へ(市町村が実施した場合は都道府県へ)情報提供され、利用者保護の観点からできる限り開示するとされています。 ### 根拠資料 - 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等の指導監査について(令和8年6月8日障発0608第1号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260608-0.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等指導指針(令和8年6月8日障発0608第1号 別添1)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260608-1.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等に対する集団指導・運営指導マニュアル(令和8年6月 別添2)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260609-2.pdf(2026年08月16日確認) - 厚生労働省「確認項目及び確認文書(サービス種別ごと・Excel版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/260608-22.xlsx(2026年08月16日確認(就労継続支援B型シート)) - 厚生労働省「障害福祉分野における運営指導・監査の強化について(概要)令和8年6月」 https://www.mhlw.go.jp/content/260723-1.pdf(2026年08月16日確認) - 宮城県「令和8年度第1回障害福祉サービス事業者等集団指導【資料4】令和7年度運営指導の結果について」 https://www.pref.miyagi.jp/documents/7258/shiryou4.pdf(2026年08月16日確認) - 宮城県「令和8年度第1回障害福祉サービス事業者等集団指導【資料5】運営指導における指摘事項を踏まえた注意点等について」 https://www.pref.miyagi.jp/documents/7258/shiryou5.pdf(2026年08月16日確認) - 仙台市障害福祉サービス指導課「よくある指摘事項事例集(令和7年5月)」 https://www.city.sendai.jp/shogaishien-shido/jigyosha/fukushi/fukushi/shogai/shidokansa/documents/202505_yokuarysiteki.pdf(2026年08月16日確認) - こども家庭庁・厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(令和8年度報酬改定後)第2の1(10)個別支援計画未作成減算」 https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/2c5e1bb4-ee80-462b-992f-06f0d8c9b774/ab3d92fe/20260402_policies_shougaijishien_shisaku_r8hoshukaitei_19.pdf(2026年08月16日確認) ### 更新履歴 - 2026.08.16 初回公開 ---